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2010年5月 Archive
無効審判
- 2010年5月29日 07:36
- 特許
本日の用語は「無効審判」です。http://www.furutani.co.jp/cgi-bin/term.cgi?title=%96%b3%8c%f8%90R%94%bb
キルビー判決が出るまでは、特許権の無効は、特許庁だけが判断できるとなっていました。たとえば、裁判所に侵害訴訟が提起されたときに、被告がその特許が無効であると考えた場合、被告は特許庁に対して特許無効審判を起こすことになります。この場合、侵害訴訟を審理する裁判所としては、特許庁の無効審判の結果を待つことになります。無効審判の審決がすぐに出ればよいのですが、3年以上もかかったりしていました。そうすると、侵害訴訟の審理が進みません。
キルビー判決で、裁判所も無効の判断をしてよいということになりました(これを受けて、104条の3が新設された)。上のような問題は解決したのですが、ダブルトラックという新たな問題が浮上しています。裁判所の判断と特許庁の判断が違った場合にどうなるか等が問題となっています。裁判所でも特許庁でも無効判断ができるとしたのですから当然の結果ともいえます。
本来の姿は、無効判断は特許庁だけができ、特許庁の無効審判は数ヶ月で審決を出すとするのがよかったのでしょうが、今となっては後戻りは難しいでしょう。あるいは、無効判断(特許査定に対する取消訴訟)は裁判所だけができるとする考え方もありそうです。
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日米欧の発明の成立性
- 2010年5月13日 08:29
- その他
外国金融機関の日本出願につき、拒絶理由通知が来ました。出願時の見込みどおり、発明の成立性がないとする拒絶理由が含まれています。本件は、米国、ヨーロッパにも出願されていますので、各国の審査状況を比較するという意味でも、成立性があることをどのように説得するかという観点からも楽しみにしていた件です。
日本では、ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されていなければ、「発明」ではないとして保護対象になりません。ただし、「発明」であると認定されると、技術的な部分も非技術的な部分もまとめて一体として、進歩性の判断対象となります。したがって、ビジネスモデル自体に斬新性があるというだけの場合であっても、コンピュータを用いた具体的処理を特定している場合には、特許取得の可能\\\性があります。
米国では、Bilski判決前は、コンピュータを使わないビジネス方法も保護対象(法定の主題)であるとされていました。Bilski判決後は、(1)特定の機械または装置に関連付けられていること、または(2)対象物を異なる状態あるいは物に変化させるものでないと保護対象にならないとされています。進歩性(非自明性)の判断については、日本と同様です。
ヨーロッパでは、ビジネス方法であったとしても、コンピュータを用いているというだけで保護対象になります。つまり、「発明の成立性」という点だけをみると、ヨーロッパが最も緩やかということになります。しかし、非技術的な部分は、進歩性の判断において考慮されません。このため、ビジネスモデルは斬新であるが、技術的には普通であるという場合(多くのビジネスモデルはそうである)には、進歩性がないとして拒絶されることになります。結局のところ、ヨーロッパにおけるビジネス方法特許の取得は困難であるということになっています。
今回の出願時点のクレームでは、コンピュータについての言及が全くありませんでした。当時の予想は次のとおりでした。Bilski判決が出ていませんでしたので、米国ではこのまま許可される。ヨーロッパではコンピュータの使用に言及することによって「発明」であるが「進歩性」がないとして拒絶理由を受ける。日本では「発明」でないとして拒絶理由を受けると予測していました。
米国については、Bilski判決の影響により、コンピュータに言及することで、特許査定が出ました。bilski判決における「特定の機械または装置に関連付けられていること」という要件は、日本における「ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」よりもかなり緩やかに判断されています。特に、「具体的に実現されている」という点については、(昔からそうでしたが)、米国の方が緩いという印象が、そのまま妥当した結果となっています。
ヨーロッパについては、コンピュータに言及しないクレームについて「発明」でないとされる拒絶理由が出て、その後、コンピュータへの言及をしたクレームにより、「発明」であるが「進歩性」がないとする拒絶理由が出ています。技術性があることを審査官に認めさせるため、代理人が奮闘しています。
日本については、上述のように発明の成立性がないとする拒絶理由が出ています。
ビジネス方法については、日・米・欧の違いが際だっています。
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