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プログラムの著作権−知的財産権の基礎講座
(C)1991.12-1997.7  弁理士 松下正

3.2ソフトウエアと著作権

(1)プログラムも著作権で保護される
 プログラムが著作物として保護されるようになったのは1985年(昭和60年)です。したがって、他人のプログラムを無断で複製することは著作権侵害となります。
 ここにいうプログラムには同様なプログラムも含みます。例えば、PC用のパッケージプログラム、スマホのアプリは、もちろん、自動販売機などの制御プログラムも該当します。また、提供方法は問わず、ダウンロードされるもの、記録媒体(DVDなど)で配布されるものも含みます。ソースコードで記載されたものはもちろん、オブジェクトプログラムも該当します。アプリケ−ションプログラムに限らず、OS、コンパイラ等も含みます。プログラミング言語についても限定されません。
 ただし、創作性がないプログラムは保護されません。例えば、単純なインターフェイスのドライバーなどで、やりとりが決まっており誰がコーディングしても、ほぼ同じ表現のプログムになるのであれば、創作性を発揮できないので、できたプログラミングは著作権法上保護されません。

(2)コンピュータプログラムに関する特色について
@著作者について
 一般的な著作物は、従業員等が職務として創作し、かつ、会社名義で公表された場合には、会社が著作者となります。これに対して、プログラムの場合は、従業員等が職務として創作したプログラムであれば、会社名義で公表されなくとも、会社が著作者になります。下請製作された場合など会社名義で公表されることがないものや、さらには社内だけで使うプログラムのように公表されないものもあるからです。

A正当理由の特例
 プログラムを記憶したDVD-ROMなどの所有者が、そのプログラムを利用するために必要と認められる範囲で複製や翻案することには、著作権の効力は及びません。
 ただ、2020年現在、バックアップの必要性は、ほとんど考えられないため、現実は殆ど問題とはならないでしょう。

(3)その他
@データベースも保護される
 データベースも編集著作物として著作権法で保護されます。ただ、データベースの場合、一般の編集著作物と異なり、データの配列に創作性があるものは少なく、逆にどのように検索できるか重要です。したがって、データの選択または体系的な構成に創作性があれば、編集著作物として保護されます。
 たとえば、マンション開発業者向けに作成されたリレーショナルデータベースについて、は「マンションの建物・敷地・地域の属性等」「マンションの販売の期分けごとの概略等」「各部屋ごとの詳細」「各マンション販売の広告出稿の内容」「初月の販売から各月の百分率表示の売れ行きの推移等」「各マンションの間取りタイプ別に集計された販売結果」「各マンションの価格帯別に集計された販売結果」「首都圏の鉄道各社の各路線と駅名、「住所」、「広告媒体の名称」「間取り区分」「価格帯区分」などをレコードとして記憶するデータベースは創作性ありと判断された事例があります(平成14年2月21日東京地裁 平成12年(ワ)第9426号)。

Aプログラム言語、規約、解法は保護されない
 プログラム言語、規約、解法には著作権の効力は及びません。これは、もしプログラム言語自体に著作権が発生するとしたら、その言語を用いて作成したプログラムすべてに、言語の開発者の権利が及ぶこととなり、実質的に誰もその言語を用いることができなくなるからです。これは、規約、解法についても同様です。規約とは、いわゆるインターフェイスやプロトコルにおけるルールを意味します。解法とは、いわゆるアルゴリズムを意味します。
 つまり、著作権法は、あくまでも表現それ自体を保護するものであって、表現の手段となる言語、表現をするにあたってのルール、または表現の背後にあるアイデアを保護するものではないということです。

B私的使用のための複製は許されるか
 私的使用のための複製行為には著作権の効力は及びません。しかし、この私的使用のために複製したプログラムを譲渡などすることは目的外使用となるので、認められていません。なお、既述したように、2020年現在、プログラムをバックアップのために複製する必要性がほとんどないため、実務上は私的使用のための複製は、ほとんど問題とならないと思われます。


C学校その他の教育機関における複製は許されるか
  学校その他の教育機関における複製行為には著作権の効力は及びません。しかし、「著作権者の利益が不当に害しない」という条件が課されています。したがって、学校にて授業で使用するとしても、1ライセンスで複数の生徒のPCにプログラムをインストールすることは許されません。

Dプログラムの設計書は保護されるのか
 プログラム作成のために作られた設計書とプログラムとは、次のような関係にあります。設計書は表現物ですから、従来から著作物として保護されていました。これに加えて、昭和60年の法律改正によってプログラムも著作物として保護される様になったということです。したがって、プログラムの設計書を無断で複製すると、設計書の著作権の侵害となります。仕様書やフローチャートも同様です。

(4)登録制度について(なぜ、登録制度があるのか)
 プログラムを登録しておくと、以下のようなメリットがあります。たとえば、創作年月日を登録しておくと、「誰が、〜という内容のプログラムを、いつ創作した」という点が明確になります。したがって、裁判でプログラムの内容と創作時期の立証が容易となります。また、権利移転について登録しておくと、不動産の登記と同様に、権利の移転の効力を第三者に対抗できます。さらに、副次的な効果として、権利者であるとの立証が容易になるので、取り引きの円滑化およびプログラムの価値に対する信頼性も拡大します。
 プログラムの登録は、文化庁の指定団体であるソフトウェア情報センター(SOFTIC)に行ないます。なお、プログラム以外の著作物についても登録制度はありますが、あまり利用されていないようです。


3.3 トピック
 (1)ゲームのプログラムの保護について
 一般の著作物(映画を除く)には、頒布権が認められておらず、1回譲渡すると権利が消尽する譲渡権だけが認められています。 例えば、あなたがある小説の単行本を購入し、読み終ったので、これを第三者に有償で譲る場合に、著作権者に承諾をもらう必要はありません。この小説の著作権者の譲渡権はあなたが購入した際に、使われたので消尽しているからです。
 これに対して、映画の著作物だけは、譲渡権の代わりに頒布権が認められています。これは映画の配給についてコントロールできるようにする為です。
 ところで、裁判所は、パックマン事件(東京地裁昭和59年9月28日判決)で、ゲームの画面を映画の著作物に類似するとして、ゲームについて頒布権を認めました。さらに、その後、中古ゲームソフト事件(最高裁平成14年4月25日)において最高裁が映画の著作物として認めています。したがって、プログラムが異なっても、同じ様な画面が登場するゲームであれば、映画の著作権を侵害したとして、責任追求ができます。


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(本章は、弁理士 松下正が執筆を担当しました)

 


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(c)1991-1997 Tadashi MATSUSHITA / http://www.furutani.co.jp

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