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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

本件発明

平成26(行ケ)10044  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年11月20日  知的財産高等裁判所

 Appleの特許について進歩性なしと審決が取り消されました。「セキュリティ特権」という用語の意義が争点です。
 被告は,本願の請求項1には「セキュリティ特権」の明確な定義はないことを前提に,本願明細書の記載を参酌すると,本願発明に特定された「セキュリティ特権」の技術的意義は,所定の機能と関連付けられたアクセス権に対応するものであり,審決の認定するように「Eメールなどの機能\と登録した指紋とを結び付けるもの」(審決書14頁8〜9行目等)であると合理的に理解することができ,審決における本願発明のセキュリティ特権の技術的意義の認定に誤りはない旨主張する(前記第4の1)。 しかし,被告の上記主張は,審決における「Eメール機能はセキュリティ特権の中の一であって,「セキュリティ特権」は,Eメールなどの「機能\」と登録した「指紋」とを結び付けるものであり,「機能」や「指紋」から独立して設定可能\な「セキュリティ特権」があるものではないと解される。」(審決書14頁7行目〜10行目)との認定判断を前提とするものであるところ,本願発明における「セキュリティ特権」は,指紋と機能とを結び付けるものであるとしても,「機能\」とは異なるものとして理解できることは前記ウの説示のとおりである。そうすると,上記審決の認定は誤っているというほかなく,したがって,被告の上記主張は採用することができない。
オ まとめ
以上によれば,本願発明の「セキュリティ特権」の意義に関する審決の認定には誤りがある。

◆判決本文

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平成25(行ケ)10134  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟  平成25年11月27日  知的財産高等裁判所

 1年くらい前の判決ですが、「請求項1の要旨認定については,発明の詳細な説明を参酌する必要はない」とのくだりがおもしろいので、あげておきます。知財高裁は新規性有りとした審決を取り消しました。
 上記アによると,本件訂正発明と甲7発明との一応の相違点は,審決が認定するとおり,本件訂正発明では,目的物質が「基剤に保持され」ているのに対して,甲7発明では,目的物質が基剤からなる医療用針内に設けられたチャンバに封止されているか,縦孔に収容されることにより保持されている点となる。審決は,この一応の相違点について,「目的物質が,基剤にではなく,基剤に設けられた空間に保持されている点で,両者は,相違する。したがって,本件訂正発明は,甲第7号証に記載された発明であるとはいえない。」と判断した。この審決の判断は,請求項1の記載を当業者が読めば,「基剤に保持された目的物質とを有し」とは,目的物質が基剤に混合されて基剤とともに存在していると理解されること,及び,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確ではないとして,本件訂正明細書の記載(【0005】【0006】【0008】〜【0010】【0070】等)をみても,同様に解されることを前提とするものである。しかし,請求項1の「基剤に保持された目的物質」との記載は,目的物質が基剤に保持されていることを規定しているのであり,その保持の態様について何らこれを限定するものでないことは,その記載自体から明らかである。そして,「保持」とは,広辞苑(甲12)にあるとおり,たもちつづけること,手放さずに持っていることを意味する用語であり,その意味は明確である。したがって,請求項1の「保持」の技術的意義は,目的物質を基剤で保持する(たもちつづける)という意味のものとして一義的に明確に理解することができるのであるから,審決が,請求項1の「基剤に保持された目的物質」との記載について,目的物質が基剤に混合されて基剤とともに存在していると理解されることと解したのは,請求項1を「基剤に混合されて保持された目的物質」と解したのと同義であって,誤りであるといわざるを得ない。また,本件訂正発明の請求項1の記載は,上記のとおり,請求項の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないなど,発明の詳細な説明を参酌することができる特段の事情がある場合にも当たらないから,少なくとも請求項1の要旨認定については,発明の詳細な説明を参酌する必要はないところである(最高裁判所平成3年3月8日第二小法廷判決民集45巻3号123頁参照)。そうすると,甲7発明の,目的物質が基剤からなる医療用針内に設けられたチャンバに封止されていることや縦孔に収容されていることは,本件訂正発明の目的物質が「基剤に保持された」構成に含まれているといえる。そうすると,本件訂正発明は,甲7公報に記載された発明といえるから,特許法29条1 項3号の規定により特許を受けることができないものであり,この点に関する審決の判断は誤りである。

◆判決本文

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平成25(行ケ)10087 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年01月22日 知的財産高等裁判所

 本件発明の認定に誤りがあるものの、結果的に相違点は容易に発明できるとして拒絶審決が維持されました。
 本願発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載中には,「ローカル無線ゾーン内のモバイル端末に位置ベース情報を提供するための方法」,「アクセスポイントを介したモバイル端末とのローカル無線通信が可能である,一意のゾーン識別子に関連付けられたローカル無線ゾーン内のモバイル端末を認識すること」との記載があるが,「モバイル端末が複数のローカル無線ゾーン内に位置していること」,すなわち,モバイル端末が,別紙1の図2に示すような,複数のローカル無線ゾーンが重複するエリアに位置することを発明の特定事項とする旨の記載はない。そうすると,本件審決が認定した相違点である「本願発明は,モバイル端末が複数のローカル無線ゾーン内に位置していることを前提として,アクセスポイントに関連付けられたサーバを選択するために一意のゾーン識別子を使用するのに対して,引用発明は,アクセスポイントに関連付けられたサーバから位置ベース情報を得るものの,そのようなサーバを一意のゾーン識別子を使用して選択するものか否か明確ではない点。」のうち,「本願発明は,モバイル端末が複数のローカル無線ゾーン内に位置していることを前提として」との部分は適切とはいえない。したがって,本願発明と引用発明の相違点は,本件審決が認定した相違点から上記部分を除き,「本願発明が,アクセスポイントに関連付けられたサーバを選択するために一意のゾーン識別子を使用するのに対して,引用発明は,その点が不明である点。」(以下「本件相違点」という。)と認定すべきであったものというべきである。そこで,本件相違点について検討するに,引用発明は,無線端末装置5a〜5cは,それぞれ最寄りの無線基地局装置2a〜2cとの無線接続を確立し(S1),無線基地局装置固有の無線基地局識別番号を取得して(S2),その識別番号をアドレス提供サーバ3に送信し(S3),アドレス提供サーバ3は,受信した無線基地局識別番号に対応する情報のURLを,自己が保有する対応表\から取得し,無線端末装置5a〜5cに送信し(S4),URLを受信した無線端末装置5a〜5cは,そのURLを元に情報サーバ1a〜1cに接続し(S5),その地域に応じた情報を取得する(S6)方法である(引用文献の段落【0031】,【0032】及び別紙2の図3参照)。引用文献には,アクセスポイントに関連付けられたサーバを選択するために,無線基地局識別番号を使用するとの明示の記載はない。しかしながら,引用発明においては,無線端末装置5a〜5cは,アドレス提供サーバ3から送信された情報のURLを元に情報サーバ1a〜1cに接続し,接続した情報サーバ1a〜1c内の地域に応じた情報を取得し,しかも,情報のURLは無線基地局識別番号に対応するものであるから,無線基地局識別番号は,無線基地局装置2a〜2cに関連付けられた情報サーバ1a〜1cを選択するために使用されているものと認められる。そして,引用発明の「無線基地局識別番号」は本願発明の「一意のゾーン識別子」に,「無線基地局装置2a〜2c」は本願発明の「アクセスポイント」に,「情報サーバ1a〜1c」は本願発明の「サーバ」に,情報サーバ1a〜1c内の「地域に応じた情報」は本願発明の「位置ベース情報」にそれぞれ相当することは,前記1で認定したとおりである。そうすると,引用文献には,アクセスポイントに関連付けられたサーバを選択するために「無線基地局識別番号」(一意のゾーン識別子)を使用するとの明示の記載はないものの,引用発明においては,情報サーバ1a〜1c内の地域に応じた情報を選択する前提として,無線基地局識別番号がサーバを選択するために使用されており,本件相違点は,本願発明と引用発明の実質的な相違点とはいえないから,当業者であれば,相違点に係る本願発明の構成(「アクセスポイントに関連付けられたサーバを選択するために一意のゾーン識別子を使用する構\成」)を容易に想到し得たものと認められる。

◆判決本文

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