2020.11.20
令和1(行ケ)10153 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 令和2年11月11日 知的財産高等裁判所
用語「臀部の頂上部よりも上側」とはいかなる位置かが争われました。裁判所は、拒絶審決を維持しました。
1) 以上によれば,本願発明1の特許請求の範囲(請求項1)及び本願
明細書には,本願発明1の「臀部の頂上部よりも上側」は,「下方窄ま\nり」の状態の設定の開始位置(起点)を規定したものであることの開示
はあるが,その用語の意義や技術的意義について述べた記載はない。
しかるところ,「頂上」の用語は,一般に,「いただき,てっぺん」
などを意味すること(広辞苑(第七版)),ヒップサイズの寸法は,人
体を側方から見て臀部が最も後方に突き出している位置(最も高い位置)\nをメジャーで測定するのが一般的であることに鑑みると,本願発明1の
「臀部の頂上部よりも上側」にいう「臀\部の頂上部」の用語は,臀部が\n最も後方に突き出している位置(最も高い位置)を意味するものと理解
することができ,身頃の展開状態(展開平面図)においては,その位置
は,「臀部における点」として観念できるものと解される。\n
そうすると,本願発明1の「臀部の頂上部よりも上側」は,臀\部が最
も後方に突き出している位置(最も高い位置)よりも,上方であれば,
それが多少の上方であっても,「臀部の頂上部よりも上側」に含まれる\nものと解される。
イ これに対し原告は,本願明細書の記載(【0010】,【0013】等)
によれば,相違点1に係る本願発明1の構成は,下方窄まりにする領域の\n開始位置(臀部の形状と不整合にする領域の開始位置)を「臀\部の頂上部
よりも上側」に設定(相違点1に係る本願発明1の構成)し,この設定に\nより,生地が「臀部の頂上部」に対して「下方窄まり」の形状で接するこ\nとになるため,「臀部の頂上部」を押圧する力には上向きの成分(上向き\nのベクトル)が含まれることになり,これが臀部の頂上部をも上方に持ち\n上げる作用を果たすので,「ショーツ等衣料のヒップ下部該当部位周りを
ヒップ下部体形にフィットすべく絞ることができ」,「背面覆い部分の下
部がヒップ下部の膨らみ体形にぴったり合って該下半分を絞り込むように
深く包み込むことができる」という作用効果を奏する旨主張する。
しかしながら,前記ア認定のとおり,本願明細書の【0010】及び【0
013】の記載は,「下方窄まり」の状態に設定した構成によれば,ヒッ\nプ下部体形の半球形状の下半分を深く立体的に包み込むことができるので,
ヒップ下部へのフィット性に優れ,ヒップ裾ラインのずり上がりを確実に
防止できるとともに,直立姿勢時にショーツ等衣料のヒップ下部や臀溝部\nに相当する個所に弛み皺やだぶつきが発生することが無くなり,美しいヒ
ップ裾ラインを出すことことができるという効果を奏する旨を開示するも
のであるが,本願明細書には,この効果が「下方窄まり」の状態の設定の
開始位置(起点)を「臀部の頂上部よりも上側」としたことによるもので\nあることについての記載はない。
また,前記ア認定のとおり,本願明細書には,本願発明1の「臀部の頂\n上部よりも上側」の具体的な位置を示した記載はないし,「下方窄まり」
の状態の設定の開始位置(起点)を「臀部の頂上部よりも上側」とするこ\nとの技術的意義について述べた記載もない。ましてや,「下方窄まり」の
状態の設定の開始位置(起点)を「臀部の頂上部よりも上側」とすること\nによって,生地が「臀部の頂上部」に対して「下方窄まり」の形状で接す\nることになるため,「臀部の頂上部」を押圧する力には上向きの成分(上\n向きのベクトル)が含まれることになり,これが臀部の頂上部をも上方に\n持ち上げる作用を果たすことについては,記載も示唆もない。
したがって,原告の上記主張は,本願明細書の記載に基づかないもので
あるから,採用することができない。
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2020.10.27
令和1(行ケ)10161 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 令和2年10月21日 知的財産高等裁判所
本件発明の認定誤りを理由として、拒絶審決が取り消されました。
本件審決は,相違点の認定において,本件補正発明が,「ダンパを囲繞す
る空間が,二つの該剪断部の間の空間に一連である」点と,「想定される入力方向に
対して機能する向きに設置され」,「上記想定される入力方向に対し,二つの上記剪断部の面内方向が傾斜するように上記剪断部が設置され」る点とを分けて認定して\nいる。
しかし,本件補正発明は物の発明であること及び前記1で認定した本件明細書の
記載からすると,本件補正発明の,「想定される入力方向に対して機能する向きに設置され」,「上記想定される入力方向に対し,二つの上記剪断部の面内方向が傾斜す\nるように上記剪断部が設置され」との構成は,「端部の連結部を介して一連に設けられ」,「ダンパを囲繞する空間が,二つの該剪断部の間の空間に一連である」二つの\n剪断部の形状について,いずれの剪断部も,想定される方向からの入力に対して機
能し,想定される入力方向に対し面内方向に傾斜するように設置できる形状であることを特定したものと解するのが相当であるから,本件補正発明の,「二つの剪断部\nが,当該ダンパの端部を成す連結部を介して一連に設けられ」との構成,弾塑性履歴型ダンパが「想定される入力方向に対して機能\する向きに設置され」,「上記想定される入力方向に対し,二つの上記剪断部の面内方向が傾斜するように上記剪断部
が設置され」との構成及び「ダンパを囲繞する空間が,二つの該剪断部の間の空間に一連である」との構\成は,いずれも,ダンパの形状を特定するものである。そして,これらの形状の構成は相互に関連して,ダンパが振動エネルギーを吸収する機序に影響を与えるものであるから,上記の各構\成を別個の相違点として,それぞれ独立に容易想到性の判断をするのは相当ではないというべきである。これに反する
被告の主張は理由がない。
(2) 相違点4’の容易想到性について
ア 前記2(1)で認定した引用文献1の記載からすると,引用発明1は,水平
方向の全方向からの震動エネルギを,X)成分とY成分に分担して極低降伏点鋼製パ
ネルが塑性変形して吸収する制震パネルダンパであること,従来は,水平方向の全
方向からの震動エネルギを吸収するために,極低降伏点鋼製パネルの向きが直角と
なるように二つのダンパをL字状やT字状に並べて配置していたところ,そのよう
なダンパの配置方法では,それぞれのパネル毎に一対のエンドプレートを設置する
ため,取り付けのためのスペースが大きくなり,また,取り付けのための手間がか
かるという課題があり,同課題を解決するために,引用発明1−2は,ダンパの形
状を,平面視した場合に断面が中空の矩形になる四角柱状とし,これを一対のエン
ドプレートの間に設置する構成にしたもの,引用発明1−1は,ダンパの形状を,平面視した場合に断面が互いに直交する十\字状としたものであり,それぞれこれを一対のエンドプレートの間に設置する構成にしたものであることが認められる。一方,本件補正発明の特許請求の範囲の「想定される入力方向に対して機能\する向きに設置される弾塑性履歴型ダンパであって」,「上記想定される入力方向に対し,
二つの上記剪断部の面内方向が傾斜するように上記剪断部が設置され」との記載及
び前記1で認定した本件明細書の記載によると,本件補正発明は,振動エネルギー
の入力方向を想定し,特定の入力方向からの振動に対応するダンパであること,本
件補正発明の従来技術であるダンパは,剪断部を一つしか有していないために,地
震の際にいずれの方向から水平力の入力があるかは予測困難であるのに,一方向からの水平力に対してしか機能\せず,また,想定される入力方向に対して高精度にダンパの剪断変形方向を合わせる設置角度設定が必要であるという課題があったこと,
本件補正発明は,剪断部を二つ設け,これらを端部で連結させたことにより大きな
振動エネルギーを吸収できるようにし,また,向きの異なる二つの剪断部を想定さ
れる入力方向に対し面内方向に傾斜するように設置できる形状とすることにより,
入力の許容範囲及び許容角度が広くなり,据付誤差を吸収することができるように
したことが認められる。
このように,引用発明1は,水平方向の全方向からの震動エネルギーを吸収する
ためのダンパであるのに対し,本件補正発明は,振動エネルギーの入力方向を想定
し,その想定される方向及びその方向に近い一定の範囲の方向からの振動エネルギ
ーを吸収するためのダンパであり,両発明の技術的思想は大きく異なる。これに反
する被告の主張は理由がない。
そして,相違点4’に係る本件補正発明の構成は,上記のような技術的思想に基づくものであるから,引用発明1−2との実質的な相違点であり,それが設計事項\nにすぎないということはできない。
イ(ア) 前記2(2)で認定した引用文献2の記載からすると,引用文献2には,
本件審決が認定した引用発明2(前記第2の3(1)イ)が記載されているが,引用発
明2の略L字状に配置された二つの剪断パネル型ダンパー90の各パネル部は,端
部で連結されていないことが認められる。
引用発明1−2においては,各側面のパネルはすべて端部で隣接するパネルと連
結されているが,引用発明1−2のこの構成に代えて,引用発明1−2に,二つの剪断パネル型ダンパー90のパネル部を,端部を連結することなく,略L字状に配\n置するという引用発明2の上記構成を適用して,ダンパの断面形状をL字状とするなど2枚のパネルを端部で連結する構\成とすることの動機付けは認められない。
(イ) 前記2(3),(4)で認定した引用文献3,4の記載によると,塑性変形す
る部材を用いて震動を吸収するダンパー部材において,塑性変形する部材の降伏強
度を調整するなどの目的で,穴又はスリットを設けることは,周知技術であること
が認められるが,引用発明1−2にこの周知技術を適用したとしても,ダンパを囲
繞する空間と一連とはなるが,ダンパの断面形状をL字状とするなど2枚のパネル
を端部で連結する構成となるものではない。
(ウ) その他,相違点4’に係る本件補正発明の構成を引用発明1−2に基づいて容易に想到することができたというべき事情は認められない。\n
(エ) 以上からすると,その余の点について判断するまでもなく,引用発明
1−2に基づいて本件補正発明を容易に発明することができたとは認められない。
(オ) なお,本件審決は,引用文献1には,断面が十字状や中空の矩形の形状の引用発明1のほか,断面が円状のダンパも記載されていることから,引用文献1\nにおける極低降伏点鋼パネルの数や配置及び交点の接合形態については,異なる方
向成分の震動を分担して塑性変形により吸収する機能が維持される範囲で,自由度がある,引用文献1は,断面が略L字状となるダンパを排除していないと判断する。\nしかし,本件補正発明を引用発明1−2に基づいて容易に発明することができた
ということができないことは,既に判示したとおりであって,引用文献1において,
極低降伏点鋼パネルの数や配置及び交点の接合形態については自由度があり,また,
断面が略L字状となるダンパを排除していないとしても,そのことから直ちに本件
補正発明を発明する動機付けがあるということができないことは明らかである。
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2020.09.17
令和1(行ケ)10150 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 令和2年9月15日 知的財産高等裁判所
新規性・進歩性違反については、一致点と相違点の認定を誤っているとして取り消しました。その他の記載要件(実施可能要件・サポート要件)については無効理由無しについても判断しています。\n
イ 本件審決は,引用発明1を前記第2の3(2)アのとおり,低純度酸素の生成に
関し,「高純度酸素が側塔から抜き取られる位置よりも15〜25平衡段高い位置で
側塔から液体として抜き出され,液体ポンプを通過することにより高い圧力に圧送
され,主熱交換器を通過することによって気化され」るものと認定した。
原告は,上記認定を争い,引用発明1は,低純度酸素を専ら液体として抜き出す
ものではないと主張し,その根拠として記載Aを指摘する。
ウ 記載Aは,「Either or both of the lower purity oxygen and the higher
purity oxygen may be withdrawn from side column 11 as liquid or vapor for
recovery.」というものである(甲1の1。5欄8行〜10行)。引用例1の他の箇所
(例えば,5欄11行〜22行,23行〜32行,33行〜39行)において,
“recover”の用語が最終的な製品を得ることという意味で用いられていることから
すると,記載A文末の“recovery”も最終製品の回収のことを意味し,他方で文中の
“withdrawn”は,中間的な生成物の抜き出しのことを意味するものと解される(4
欄40行の“withdrawn”,5欄43行の“withdrawal”も同様である。)。そうすると,記載Aは,前記ア gのとおり,低純度酸素及び高純度酸素のいずれか又は両方は,
回収のために,液体又は気化ガスとして側塔11から抜き出されてもよいと訳すの
が相当である。
そうだとすると,記載Aからは,引用発明1が低純度酸素を専ら液体として抜き
出すもので,気体としての抜き出しは排除されている,と理解するのは困難である。
しかも,引用例1の全体をみると,引用発明1が解決しようとする課題は,低純
度酸素及び高純度酸素の両方を高回収率で効果的に精製することができる極低温精
留システムを提供することであり ,課題を解決する手段は,空気成分の
沸点の差,すなわち低沸点の成分は気化ガス相に濃縮する傾向があり,高沸点の成
分は液相に濃縮する傾向があることを利用したものである(同 と認められ,図
1に示されたのは,あくまで,好ましい実施形態にすぎない 。図1の説明
においては,低純度酸素を液体として抜き出し,それにより大量の高純度酸素を得
られるとしても,それは,最も好ましい実施形態を示したものであって,引用例1
に側塔11から低純度酸素を気体として抜き出すことが記載されていないとはいえ
ない。
エ また,証拠(甲2,3の1,4,7の1,8)によれば,本件発明1の出願当
時,空気分離装置又は方法において,高純度酸素と区別して低純度酸素を回収する
ことができ,その際に,精留塔から,低純度酸素を気体として抜き出す方法も液体
として抜き出す方法もあることは,技術常識であったと認められる。上記認定の技
術常識に照らしても,引用例1には,低純度酸素を液体として抜き出すことのみな
らず,気体として抜き出すことが記載されているに等しいというべきである。
オ そうすると,本件審決が,引用発明1を,低純度酸素を専ら液体として抜き
出すものと認定し,これを一致点とせずに相違点1と認定したことは,誤りといわ
ざるを得ない。
本件審決は,その余の相違点及び本件発明2〜4と引用発明1との相違点につい
て判断せず,原告被告ともにこれを主張立証していないから,これらの点に係る新
規性及び進歩性については,再度の審判により審理判断が尽くされるべきである。
・・・
事案に鑑み,取消事由3についても判断する。
(1) 実施可能要件適合性\n
ア 本件各発明に係る「空気分離方法」のための「空気分離装置」は,2種以上の
純度の酸素を取り出すものであり,そのうち1種を低純度のガス酸素で取り出すこ
とによって,低圧精留塔内の主凝縮器に必要な酸素の純度を低減でき,その結果,
空気圧縮機の吐出圧の低減を図り,該圧縮機の消費動力を低減し,「空気分離装置」
の稼動コストを従来よりも小さくすることができるものである。
イ 本件各発明において用いられる装置は,「空気圧縮機」,「吸着器」,「主熱
交換器」,「高圧精留塔」,「低圧精留塔」,「低圧精留塔」内に設けられた「主凝
縮器」,「昇圧圧縮機」,「液酸ポンプ」,「空気凝縮器容器」及び「空気凝縮器容
器」内に設けられた「空気凝縮器」を主として備える「空気分離装置」であり,それ
ぞれの意味するところは,図面をもって具体的に示されている(【0023】,図
1)。
工程についても,1)「低圧精留塔」内で精留分離された液体酸素が,「空気凝縮器
容器」内に供給され,「空気凝縮器容器」内で気化したガス酸素(低純度酸素)が,
供給ライン(ガス酸素供給ライン)により「主熱交換器」に送られて常温に戻された
後,必要に応じて空気が混合されて酸素富化燃焼用酸素として外部(酸素富化炉)
に供給されること(【0027】〜【0029】),2)「空気凝縮器容器」内の液体
酸素は,供給ラインにより「液酸ポンプ」に送られて必要圧に昇圧された後,「主熱
交換器」で蒸発及び昇温されることによりガス酸素(高純度酸素)となり,酸化用酸
素として外部(酸化炉)に供給されること(【0030】),3)「空気凝縮器容器」
内の液体酸素(高純度酸素)の抜き出し量は,例えば10%〜80%の間とするこ
と(【0059】,【表3〜5】),以上のことが,具体的に示されている。\nそして,以上のような「空気分離装置」によれば,必要とされる高純度酸素が全体
の酸素の一部である場合に,必要とされる高純度酸素の純度を確保しつつ,「低圧
精留塔」の「主凝縮器」から取り出す液体酸素の純度を低減し,低減分の酸素の沸点
を下げることが可能となり,また,「低圧精留塔」内で液体酸素とガス窒素との間で\n行われる熱交換の温度差を大きくすることにより,「高圧精留塔」内の必要圧力を
下げることができ,これにより,「空気圧縮機」の吐圧力を低減し,ひいては該圧縮
機の消費動力の低減が可能となるので,「空気分離装置」の稼動コストを従来より\nも抑えることができるとして,効果及びその機序の説明もされている(【0018】,
【0035】,【0036】)。
ウ 本件明細書の発明の詳細な説明には,前記ア,イのことがその具体的な実施
の形態も含めて記載されており,当業者は,これをみれば,過度の試行錯誤を要す
ることなく,本件各発明を実施することができる。
よって,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,実施可能要件に適合する。\n
◆判決本文
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2020.06.19
令和1(行ケ)10116 審決(拒絶)取消 令和2年5月20日判決 審決取消(2部) 特許権 (回転ドラム型磁気分離装置) 新規性,進歩性,相違点の判断
相違点の認定誤りを理由として、拒絶審決が取り消されました。
本件補正発明では,第1の回転ドラムと底部材との間にクーラント液の流路を
形成するのに対し,引用発明は,上記のような流路を形成しているか否かが不明な
点
ウ これに対し,被告は,引用文献1においては,タンク17の底部が底部
材に相当し,マグネットドラム27とタンク17の底部との間に混濁液の流路が形
成されるとして,相違点3は存在しないと主張する。
(ア) しかし,本件補正発明に係る特許請求の範囲の記載は,「・・・前記使
用済みクーラント液は,第2の回転ドラムから第1の回転ドラムに向かって流
れ,・・・前記第2の回転ドラムに付着した磁性体を掻き取るスクレパーと,前記第
1の回転ドラム下部の流路を形成する底部材とを備え,前記スクレパーにより掻き
取られた磁性体が大きくなった状態のまま,前記使用済みクーラント液の流れに沿
って前記第1の回転ドラムへ誘導されることを特徴とする回転ドラム型磁気分離装
置。」というものであり,同記載からすると,第2の回転ドラムから第1の回転ドラ
ムに向かうクーラント液は,第 1 の回転ドラム下部に第 1 の回転ドラムと底部材と
の間に形成された流路を流れるものであって,スクレパーによって掻き取られた磁
性体を第1の回転ドラムに誘導するものであると解される。そして,このことは,
本件明細書に,「スクレパー27は,第1の回転ドラム13の下部の流路を形成する
底部材30に連結されており,掻き取られた不要物(磁性体)は第1の回転ドラム
13へと誘導される。」(段落【0041】),「スクレパー27は,第1の回転ドラム13の下部の流路を形成する底部材に連結されていれば足りるので,第2の回転ド
ラム21側から第1の回転ドラム13に向かって下降するよう傾斜していても良
い。」(段落【0053】),「図7に示すように,本実施の形態に係る回転ドラム型磁気分離装置は,第2の回転ドラム21の外筒29に当接するスクレパー27が,第
2の回転ドラム21側から第1の回転ドラム13側へ傾斜するよう設けられてい
る。」(段落【0054】),「これにより,スクレパー27で書き取られた第2の回転ドラム21に付着した不要物が,傾斜に沿って第1の回転ドラム13側へと流れに
乗って移動しやすく,第1の回転ドラム13により確実に回収することが可能とな\nる。」(段落【0055】)と記載されていることからも,裏付けられているというこ
とができる。
したがって,本件補正発明の特許請求の範囲の「流路を形成する」とは,第2の
回転ドラムから第1の回転ドラムに向かうクーラント液の流路を形成するものと解
すべきである。
(イ) 引用文献1には,マグネットドラム27(第1の回転ドラムに相当)
とタンク17の底部との間にマグネットドラム25(第2の回転ドラムに相当)か
らマグネットドラム27に向かう混濁液の流れが生じていることは記載されていな
い(甲1)から,相違点3’は存在し,被告の上記主張は理由がない。
◆判決本文
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