2006.07. 4
進歩性無しとされた審決が取り消されました。
「そもそも,本願発明の相違点1ないし3は,正確にいうと,相違点1及び2であることを特徴とする相違点3に係る光学検出部と言い換えることもでき,相違点1及び2は,相違点3に係る光学検出部であることを前提としている。しかも,審決が相違点3として摘示するとおり,本願発明は「紙葉類識別装置」に係る発明であるのに対し,引用発明は,紙葉類の積層状態検知用装置に係る技術であって,発明の課題及び目的が相違しており,このことは被告も認めるところである。したがって,本願発明の構成を把握する上で,相違点1及び2と相違点3とを分説するのはよいとしても,相違点1ないし3の相互の関係を考慮しながら,本願発明の進歩性について検討しなければならない。」 「確かに,本件周知装置においては,上記(2)ウのとおり,紙葉類の識別を行う際に,紙葉類の特徴箇所を選んで識別することは,当業者が容易に想到し得たことということができる。しかし,このことから,上記(3)のような,複数本の検出ラインの技術的思想のない引用発明について,複数本の検出ラインの技術的思想を前提とし,一対の発光・受光素子によって一括して検出を行うという相違点1及び3に係る本願発明の構成を付加することが容易であるとか,あるいは,単なる設計変更であるということは困難である。」
◆平成17(行ケ)10490 審決取消請求事件 平成18年06月29日 知的財産高等裁判所
2006.02. 8
拒絶審決について、「式I化合物と,式?U〜?W化合物のいずれかを含有し,該混合物のしきい値電圧が 1.6ボルト以下であることを特徴とする液晶媒体。」という請求項の要旨認定が争われました。原告(出願人)は、この請求項の記載は「化合物Iと化合物?U〜?Wのいずれかを含有することにより,その機能によりしきい値電圧を1.6ボルト以下まで低下させることができる」と主張しましたが、裁判所は、拒絶審決を維持しました。
「発明の要旨認定は,特段の事情のない限り,特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきであり,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限って,明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されるにすぎないものというべきである(最高裁平成3年3月8日第二小法廷判決・民集45巻3号123頁)。そこで,本願発明1の特許請求の範囲請求項1の記載をみると前判示のとおりであって,要するに,「正の誘電異方性を有する極性化合物の混合物を基礎とする液晶媒体であって,一般式I…,および一般式?U,?Vおよび?W…から成る群から選択される1種またはそれ以上の化合物をさらに含有し,該混合物のしきい値電圧が1.6ボルト以下であることを特徴とする液晶媒体。」(下線は当裁判所が付した。)というものである。この記載について,技術的意義が一義的に明確に理解することができないなどということはないことは明らかである。
そして,この記載から理解されるところによれば,本願発明1が,「…含有することにより,…1.6ボルト以下まで低下させる」,すなわち,「…含有することにより,その機能により…1.6ボルト以下まで低下させる」とか,「…含有するという構成により,その効果として,…1.6ボルト以下まで低下させる」ということまでを意味するものとは解されないし,「実質的に『シアノ化合物』の使用を,少なくとも多量の『シアノ化合物』の使用を排除している」と解することは到底できない。」
◆H18. 2. 6 知財高裁 平成17(行ケ)10390 特許権 行政訴訟事件