阻害要因ありとして進歩性なしとした審決が取り消されました。審決は文言通り本件発明の要旨を認定し、裁判所はリパーゼ判決を用いて詳細な説明を参酌したことが原因です。
本件補正発明の「ポケット」の技術的意義について,原告は,2つの基材の表面を向かい合わせて結合して形成された統一構\造の内表面側から外表\面側に向かって熱成形等の成形手段によって形成された粒状発熱組成物の粒子を充填することのできるくぼみをいうと主張するのに対し,被告は,広辞苑(乙1)に記載された日常用語としての意味を主張するのみであり,本件補正発明が属する技術分野における技術常識に即して「ポケット」の技術的意義が一義的に明確であると主張するものではなく,その他,請求項1の記載から,本件補正発明の「ポケット」の技術的意義を一義的に明確に理解することはできないから,これを明確にするため,以下,本件補正明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して,その技術的意義を検討することとする。・・・イ 上記発明の詳細な説明の記載によると,本件補正発明の「ポケット」とは,「少なくとも2つの向かい合った表面を有する統一構\造」を構成する2つの基材の一方に熱成形等の何らかの方法により形成され,粒状発熱組成物を充填することができるような底といえる部分を有する賦形された内部空間を意味し,単に,平坦な2つの基材によって形成される袋状の内部空間を指すものではないと解釈するのが相当である。ウ この点に関し,被告は,請求項1の「少なくとも2つの向かい合った表\面を有する統一構造に形成された」との記載からは,2つの対称的な平面で構\成される袋状の形状が想起されるのが普通であると主張する。しかしながら,被告の主張は,「統一構造に形成された」との文言が「一体的に形成された」と同じような意味を有することを前提とするものと解されるところ,上記発明の詳細な説明の記載によると,「統一構\造」とは,2つの基材によって構成される構\造体を指し,そのような構造体に「形成された」ものが「ポケット」であると解釈されるから,被告の主張は,その前提を誤るものであって,採用することができない。\n
◆判決本文
2010.02. 3
本件発明の要旨について実施形態に即して限定した解釈が誤りであるとして、無効理由なしとの審決が取り消されました。
甲1,2及び16によると,本件特許出願当時において,X線による検査装置の機構を支持するフレームとしては,後記ウ(ア)のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明において従来技術として挙げられているように,キャスター付の4本脚によって支持されて引き出し可能となっているもののほか,一体であっても後壁面の縦方向のレールに上下動可能\に片持ち支持されたフレームを採用したものが存在していたことを考慮すると,X線異物検査装置の機構を支持するフレーム自体の支持構\造に関して,本件特許出願時において確立した技術常識が存在していたとは認められない。そうすると,特許請求の範囲の記載に基づいて,本件フレームの支持構造について何らかの限定を加えて解釈することはできない。・・・そうすると,本件明細書の発明の詳細な説明における記載を検討しても,本件発明に係る特許請求の範囲の記載における「片持ちフレーム」の文言について,それ自体の支持構\造に関する何らかの限定を加えて解釈する契機はないといわざるを得ない。・・・以上によると,本件フレームが「X線異物検査装置本体の支持構造体に支持され\nているもの」に限定されることを前提とする本件審決による発明の要旨認定は誤り
であるというべきである。
◆判決本文