2009.12. 2
平成21(行ケ)10070 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年12月02日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が、引用文献に記載された発明の認定誤りを理由として
取り消されました。
そこで,本願出願時の技術常識を踏まえて,引用例1に,マイクロカプセル中に封入された硬化剤が,さらにパトローネ中に入れられた態様のものが記載されているといえるかにつき,以下検討する。イ引用例1における本件記載Cの直前の記載である本件記載B,すなわち「しかし,大部分の場合に,反応性樹脂および硬化剤を,単一体,例えば,一個のパトローネ中に2個の室に分けて入れる。…パトローネは穿孔中に導入した後にだぼまたはアンカーボルトを挿入,回転させることによって破壊され,この際パトローネの壁材料は充塡剤として作用することができ,充塡剤の部分に加えられる。」との記載は,パトローネを破壊することで,パトローネの各室に収納されていた硬化剤と反応性樹脂が混合されることを説明するものである。そして,これに続く本件記載Cが,「しかし」に始まり,「マイクロカプセルの壁材料が破壊される。」で終わっていることからすれば,パトローネの破壊によって硬化剤と反応性樹脂との混合を行うことに代えてマイクロカプセルの破壊によっても上記両成分の混合を行うことができる旨を説明しているにすぎず,マイクロカプセル中に封入された硬化剤がさらにパトローネ中に入れられた構成までが開示されているとみることはできない。そして,本件記載Cにおいては,単にマイクロカプセルの壁材料の破壊が記載されるにとどまり,パトローネの(壁材料の)破壊についての記載がないことも上記結論を裏付けるものである。・・・・エ 以上のとおり,引用例1には,マイクロカプセル中に封入された硬化剤をさらにパトローネ中に収納する形態について記載されているとはいえず,パトローネを用いる場合には,2個の室を有するパトローネのいずれかの室に,マイクロカプセル中に封入されていない硬化剤を入れる方法が記載されている(本件記載B)にすぎない。他方,マイクロカプセル中に封入された硬化剤を使用する形態については,パトローネ中に入れられず,直接穿孔中に導入する方法が記載されている(本件記載C)にとどまる。そうであるとすれば,審決は,引用発明につき,「エポキシ基を有するビスフェノール化合物および/またはノボラック化合物を使用してアクリル酸またはアクリル酸誘導体を転化させることによって得られる反応生成物である硬化性アクリル化合物と,促進剤と,過酸化ジベンゾイルからなる重合開始剤を含有する硬化剤とを,2個の室を有するパトローネ中に入れたものであり,パトローネおよび室は穿孔中に導入した後にアンカーボルトを挿入,回転させることによって破壊されるものである,アンカーボルトを固定するために使用するパトローネ」と認定すべきであって,「硬化剤をマイクロカプセル中に封入した上で,これをさらにパトローネ中に入れた」旨認定した審決には誤りがあるといわざるを得ない。
◆判決本文
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2009.11.29
平成21(行ケ)10153 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年11月26日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとの審決が、引用文献の認定誤りを理由として取り消されました。
「以上によれば,旋盤用切削工具を形成する方法に関し,引用文献には,切削体に溝,蟻継ぎ等を成す幾何学的特徴が形成される点,及び硬質金属をダイキャスト,プレス成形,成型,又は鋳造によって保持部材に密に固定する,との点は記載されている。しかし,硬質金属を鋳造等で保持部に固定するに先立って,保持部に溝,蟻継ぎ等をなす幾何学的特徴が形成されるとまで記載されているということはできないというべきである。そうすると,引用文献には,幾何学的特徴を有する保持部材を提供し,この提供された保持部材をその幾何学的特徴を介して切削体に接合するとの一連の工程が記載されているということはできない。・・・そして,上記「それぞれの前記互いに結合可能な幾何学的特徴を介して,前記硬い金属体を前記基台に接合する工程」とあるところ,この「前記互いに結合可能\な幾何学的特徴を介して」とある部分の「前記」の語は,その前段の「それぞれが互いに結合可能な幾何学的特徴を有する…硬い金属体と基台とを提供する工程」により提供された硬い金属体と基台とが既に有する「それぞれが互いに結合可能\な幾何学的特徴」を指すことが明らかである。これは,審決が,本願発明と引用発明との一致点を上記第3,1(3)イのとおり,「切削工具インサートを形成する方法であって,それぞれが互いに結合可能な幾何学的特徴を有するチップとインサート本体とを提供する工程と,それぞれの前記互いに結合可能\な幾何学的特徴を介して,前記チップを前記インサート本体に接合する工程とを有する方法において,前記チップを前記インサート本体に前記接合する工程は,前記インサート本体を前記チップの周囲に鋳造することにより生じるものである」こととして,チップとインサート本体とが,それぞれ互いに結合可能な幾何学的特徴を有する旨認定していることからも明らかである。そうすると,審決は,引用発明を,それぞれが互いに結合可能\な幾何学的特徴を有する硬い金属体と基台とを提供し,これら提供された硬い金属体と基台とを,それらが有する互いに結合可能な幾何学的特徴を介して接合する方法と認定したということができる。しかし,上記アによれば,引用文献(甲4)には,保持部材(基台)について,切削体(硬い金属体ないし硬質金属)と接合する工程に先立ち,切削体の幾何学的特徴と結合可能\な幾何学的特徴を有する保持部材(基台)を提供する工程が記載されているということはできない。そうすると,審決の引用発明の内容の認定には誤りがあり,この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。」
◆判決本文
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2009.10. 3
平成20(行ケ)10468 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月30日 知的財産高等裁判所
引用例の認定誤りを理由として、進歩性なしとした審決を取り消しました。
「前記のとおり,引用文献2記載の発明における課題解決のための技術思想の特徴は,最初のN個目までの修正から得られた修正係数及び修正角度の平均を用いて,適切な補正係数及び補正角度を獲得し,N+1個目からはその補正係数及び補正角度による修正のみによって不釣合い量を所定値内に抑えるものであって,2回目までの修正を行う場合にも,1回目と同様の手順で2回目までの補正係数及び補正角度を算出するものである。段落【0022】における「2次修正まで行なうものにも本発明を適用できる。」との記載部分は,これに続く「その場合,修正係数は1次測定結果と2次測定結果のベクトル差に加えて2次測定結果と3次測定結果のベクトル差を用いることができる。」と記載部分を併せて読むならば,N個目までの回転供試体の2次測定結果と3次測定結果のベクトル差の平均から獲得した2次修正用の補正係数及び補正角度をもって,N+1個目以降の回転供試体の2次修正を行い,2回の修正をもって不釣合い量を所定値内に抑えて試験効率(修正効率)を改善させることを意味するものであると理解するのが自然な解釈である。被告は,引用文献2には,「同一回転供試体の不釣合いを2回の修正で仕上げる際に1回目は補正数値を用いずに修正を行い,この1回目の修正から算出された補正数値をもって2回目の修正を行い,残留不釣合いを極めて小さい数値にする」という発明の技術思想も開示されていると解すべきであると主張する。しかし,「2次修正まで行なうものにも本発明を適用できる。」との記載部分のみを根拠として,引用文献2記載の発明の技術思想を,上記のようにn=1の場合も含めて広く理解することは,引用文献2の発明の前記技術思想の特徴と整合を欠く理解であって賛同できるものではない。」
◆平成20(行ケ)10468 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月30日 知的財産高等裁判所
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2009.08. 2
◆平成20(行ケ)10426 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年07月02日 知的財産高等裁判所
UI(ユーザインターフェイス)の発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
「上記(ア)によれば,「形態」の語は,原告主張のとおり,通常,物のかたち等の意味で用いられることが認められるものの,上記(1)アによれば,本願補正発明における「表示形態」の意味については,色,形,サイズ等による表\示上の視覚的属性をいうものであることは,既に検討したとおりである。また,上記(1)ア(イ)摘記によれば,図2Dに示された画面は,図2Cの画面からのユーザーインタフェースにおける形態の変更を示すものであるところ,(1)ア(ウ)の図2C,図2Dの記載から明らかなとおり,両者でウインドウの境界線の太さは異なっているものの,タイトルバー及び境界線により画定されたウインドウの形状及びタイトルバー内のクローズボックスの形状には差異がなく,ウインドウの外形形状に変化がないことが理解できる。従来のユーザーインタフェース画面とは外形形状において差異がない図2Dについても表示形態が異なるテーマに設定されたユーザーインタフェース画面として示されていることからしても,本願補正発明における「表\示形態」の意味は,主として表示する上での形状であるとする原告の主張が採り得ないことは明らかである。・・・・以上によれば,審決が相違点(3)に関し,「…ユーザの一般的な要望に従ってイメージを一変させ見栄えのするデスクトップとするため,引用例1記載発明において,第1のセット及び第2のセットにインタフェースオブジェクト及びオブジェクトパーツの配色パターンのみならず,インタフェースオブジェクトの形状をも含ませるようにし,インタフェースオブジェクトが第1セットを使用して表\示される場合には第1形状の第1アウトラインを有し,前記インタフェースオブジェクトが第2セットを使用して表示される場合には第2形状の第2アウトラインを有するものとすることは当業者が格別困難なくなしうることと認められる。」(10頁28行〜35行)とした判断に誤りはない。
◆平成20(行ケ)10426 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年07月02日 知的財産高等裁判所
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2009.07.23
◆平成21(行ケ)10036 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成21年07月21日 知的財産高等裁判所
実案公報に記載の意匠と類似するとした審決が取り消されました。
「本願意匠も引用意匠も,周側面において,開口部が四つ設けられている点やゴム素材が占める割合が開口部が占める割合よりも大きい点は共通しているものの,その開口部の「位置,範囲,大きさ」は,上記認定のとおりかなり異なっており,本願意匠では,開口部が周側面において大きな部分を占めているとの印象を与えるが,引用意匠では,開口部は周側面の一部であるとの印象しか与えない。そして,この開口部の「位置,範囲,大きさ」は,本願意匠及び引用意匠に係る物品では,非常に目立つ部分であり,需要者の注目を惹くということができる。乙3(三洋電機株式会社がインターネットに掲載した「MoMAstore」のページ)によれば,寸法及び色彩の違う輪ゴムがワンセットで販売されていることが認められるが,そうであるからといって,需要者が輪ゴムの開口部の「位置,範囲,大きさ」の違いに着目しないということはできない。・・・以上によると,本願意匠では,開口部が周側面において大きな部分を占めているとの印象を与えるが,引用意匠では,開口部は周側面の一部であるとの印象しか与えないという,需要者に注目される大きな違いがあるということができるのであって,「本願意匠と引用意匠の開口部における差異は,意匠全体から観れば一部位における僅かな程度の差異である」とか「本願意匠と引用意匠の開口部における差異は,輪ゴムの分野において従前からみられる態様であるため,格別看者の注意を惹くものではない」ということはできない。したがって,その旨の審決の判断には誤りがあり,取消事由1,2は理由がある。」
◆平成21(行ケ)10036 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成21年07月21日 知的財産高等裁判所
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2009.07.22
◆平成19(ワ)27187 特許権侵害差止等 特許権 民事訴訟 平成21年07月15日 東京地方裁判所
ユーザインターフェイス関係の特許(CS関連発明)について最終的には、進歩性違反を理由に権利行使不能と判断されましたが、用語の解釈について興味深い判断がなされました。
「被告は,原出願の拒絶査定に対する審判手続及び原出願審決に対する審決取消訴訟手続では,原告が,「テレビジョン番組リスト」の用語を「個々の番組単位における番組情報」の意味では使用しておらず,各手続における特許庁の主張及び裁判所の判決においても,「テレビジョン番組リスト」とは,テレビジョン番組のタイトルのリスト,すなわち,テレビジョン番組のタイトルが並んだものと解されているから,本件発明における「テレビジョン番組リスト」の文言についても,「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」を意味すると解すべきであり,分割出願に係る本件特許権による権利行使の際に,同用語の意義を違えて主張することは,信義則に基づく禁反言法理から許されないと主張する。しかしながら,分割出願制度は,一つの出願において二つ以上の異なる発明の特許出願をした出願人に対し,出願を分割する方法により,各発明につき,それぞれ元の出願の時に遡って出願がされたものとみなして特許を受けさせるものであるから,原出願で特許出願された発明と,分割出願で特許出願された発明は,本来,内容を異にするものであり,分割出願された発明の「特許請求の範囲」に記載された文言の解釈が,原出願の手続における文言の解釈と必ずしも一致する必要はないというべきである。したがって,本件特許の「テレビジョン番組リスト」の文言の解釈において,仮に,原出願の拒絶査定に対する審判手続及び原出願審決に対する審決取消訴訟手続において使用された「テレビジョン番組リスト」の文言の意味とは異なる解釈をしたとしても,禁反言法理から許されないとはいえず,被告の上記主張は採用できない。」
◆平成19(ワ)27187 特許権侵害差止等 特許権 民事訴訟 平成21年07月15日 東京地方裁判所
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2009.07.19
◆平成21(行ケ)10002 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年06月24日 知的財産高等裁判所
29条1項3号の「刊行物に記載された」には該当しないと判断されました。
審決は,仮に,引用例の図3,4の図示内容ではスリーブの末端部分とステントの大小関係が明らかとはいえないとしても,スリーブの末端部分の外径をどの程度の寸法にするかは,当業者が必要に応じて決定し得る単なる設計事項にすぎず,引用例には,本願発明と実質的に同一の発明が記載されているとした上で,本願発明は特許法29条1項3号に該当する旨判断している。しかし,同号所定の「刊行物に記載された」というためには,当業者がその刊行物を見れば,特別の思考を要することなく実施し得る程度にその内容が開示されている必要がある。本件において,引用例のスリーブの末端部分の内径寸法は,前述のとおり,通常1.524mmであるところ,被告は,肉厚が0.1mm以下の管状部材の作成が可能であることは当業者にとって周知である旨主張し,その根拠として乙1,2を挙げるので,以下,検討する。・・・・このように,乙1,2に記載された,血管内に挿入するカテーテル管に関する技術と,白内障の手術等に用いるスリーブに関する引用発明や本願発明とは,医療器具に関する点で共通性を有するものの,器具の属性,使用状況,求められる強度等において異なる(これらの点は,肉厚にも影響を与えるものと解される。)ことを否定できず,引用例におけるスリーブの末端部分(その内径寸法は,前述のとおり,通常1.524mmである。)につき,約0.1mm以下の肉厚の素材を用いることにより,その外径寸法を1.72mm以下にするためには,なお相当程度の思考を要するというべきであって,当業者が引用例を見れば,特別の思考を要することなく実施し得る程度に本願発明の内容が開示されていたとまでは認められない。以上のとおり,乙1,2上の記載を前提としても,引用例に本願発明が記載されているとはいえない。(3) 本件での結論は以上のとおりであるが,被告は,「2.5mmの切開創口(引用例において使用可能とされているサイズ)から挿入できる最大限の外径は,計算上1.592mmとなる」旨の原告の主張を前提とすれば,切開創口から挿入される部分である引用発明のスリーブの末端部分の外径は1.592mm以下となり,引用例上に本願発明が記載されていることになる旨主張しているところ,念のため,この点についても検討する。確かに,引用例では,2.5mmの切開創口でスリーブを用いることが可能\とされているから,原告の主張どおり,2.5mmの切開創口に挿入可能なスリーブの外径の上限値が1.592mmであるならば,引用例上に,本願発明の範囲に含まれるもの(内径寸法1.524mm,外径寸法1.592mmのスリーブの末端部分)が記載されているものと解し得る。しかし,被告が指摘する原告の主張は,前記第3.2(2)のとおり,「引用例における装置を2.5mmの切開創口に用いるのは不可能である」旨の主張を構\成する一部分にすぎず,当該部分だけを抽出するのは妥当でない。また,1.592mmという数値も,単に2.5mmに2を乗じて円周率で除して得られたにすぎないものと解され,これが実施可能性等を考慮した上での主張であるとは認められない。このように,いずれにしても,原告の主張の一部分に基づいて「引用発明のスリーブの末端部分の外径寸法が1.592mm以下である」などと認定できないことは明らかであり,この点に関する被告の主張は採用できない。(4) 以上のとおり,引用例上,外径寸法が1.40mm以上,1.72mm以下の範囲のスリーブの末端部分(本願発明における灌流スリーブと同じ範囲の寸法のもの)が記載されていると認めることはできず,本願発明が引用例上に記載されているとはいえない。2 このように,本願発明につき特許法29条1項3号を適用することはできず,審決に,この点に関する誤りがあることは明らかである(なお,本判決は,本願発明が進歩性など他の特許要件を満たすか否かについては,何ら判断を示すものではない。)から,その余の点について判断するまでもなく,審決を取り消すこととする。
◆平成20(ワ)12952 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年07月10日 東京地方裁判所
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2009.07. 9
◆平成20(行ケ)10259 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年07月07日 知的財産高等裁判所
引用文献における認定誤りを理由として、進歩性なしとした無効審決を取り消しました。
「以上によると,引用発明において,2つ以上のコイルを用いる意義は,液体の流れ方向の上流側と下流側に配置した複数のコイルに異なる方向の磁場を形成させ,コイルとコイルの間の仮想平面(分割線Sで示される)付近に,より大きなローレンツ力を発生させることにあるものと認められ,摘記事項(お)の記載は,そのような構成を前提として,コイルの電気的な接続の仕方を記載するものであると認められる。そして,大きなローレンツ力を発生させるためには,複数のコイルを液体の流れ方向の上流側と下流側に並べて配置する必要があるはずであって,被告の主張するように,複数のコイルを同じ箇所に重ねて配置するとすれば,引用発明の特徴とする仮想平面が形成できない結果とならざるを得ないのであるから,このようなコイルの配置が引用刊行物に示唆されているなどということはできない。そうすると,本件審決が,摘記事項(お)の記載から,「巻き方向が同じ複数のコイル」を「2重に巻き付ける態様」を適宜に設計できることが示唆されているとし,これを前提として,相違点1について,「2つの通電により磁束を形成するコイルを装置に取り付ける使用の態様として,『巻き方向が同じ複数のコイル』を,2つの通電により磁束を形成するコイルを被処理物が流れる管路の外周に2重に巻き付ける態様を採用することは,当業者が容易に想到しえることであると認められる。」と判断したのは誤りであるといわざるを得ないし,引用発明において,複数のコイルを重ねて配置し,分割線Sで示される仮想平面を形成することができない構\成を採用することは,そもそも,その技術思想に反するものであるから,引用発明から本件発明の構成を想到することが容易であるということは到底できない。」
◆平成20(行ケ)10259 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年07月07日 知的財産高等裁判所
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2009.06.26
◆平成21(行ケ)10002 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年06月24日 知的財産高等裁判所
引用文献に記載の発明の認定誤りを理由として、29条1項3号違反とした拒絶審決が取り消されました。
「もっとも,引用例には,スリーブの末端部分の外径寸法や,スリーブの肉厚に関する具体的な数値の記載はないため,引用例上のスリーブの末端部分の外径寸法は明らかではない。エ審決は,引用例の明細書上の記載に加え,図3,4を参酌し,「図3及び4には,スリーブの末端部分26の外径寸法がステント32の外形寸法よりも小さい点が図示されている」として,スリーブとステントの大小関係から,(前記ウのとおり,通常,ステントの外径寸法が1.651mmであることを前提として)スリーブの末端部分の外径寸法が1.651mm以下であると認定している。しかし,特許出願に際して,願書に添付された図面は,設計図ではなく,特許を受けようとする発明の内容を明らかにするための説明図にとどまり,同図上に,当業者に理解され得る程度に技術内容が明示されていれば足り,これによって当該部分の寸法や角度等が特定されるものではない。本件では,前記ウのとおり,ステントの内径寸法は,通常,スリーブの末端部分の内径寸法より小さい1.397mmとなるべきところ,引用例の図3では,ステントの内径がスリーブの末端部分の内径よりも大きく図示されている。以上を前提とすると,引用例上の図面が,部材の大小関係を正確に踏まえて作成されたか否かは不明といわざるを得ず,このような図面のみに基づいて,引用例における部材の大小関係を認定することは適切ではない。・・・・(2)ア 審決は,仮に,引用例の図3,4の図示内容ではスリーブの末端部分とステントの大小関係が明らかとはいえないとしても,スリーブの末端部分の外径をどの程度の寸法にするかは,当業者が必要に応じて決定し得る単なる設計事項にすぎず,引用例には,本願発明と実質的に同一の発明が記載されているとした上で,本願発明は特許法29条1項3号に該当する旨判断している。しかし,同号所定の「刊行物に記載された」というためには,当業者がその刊行物を見れば,特別の思考を要することなく実施し得る程度にその内容が開示されている必要がある。本件において,引用例のスリーブの末端部分の内径寸法は,前述のとおり,通常1.524mmであるところ,被告は,肉厚が0.1mm以下の管状部材の作成が可能であることは当業者にとって周知である旨主張し,その根拠として乙1,2を挙げるので,以下,検討する。・・・・・このように,乙1,2に記載された,血管内に挿入するカテーテル管に関する技術と,白内障の手術等に用いるスリーブに関する引用発明や本願発明とは,医療器具に関する点で共通性を有するものの,器具の属性,使用状況,求められる強度等において異なる(これらの点は,肉厚にも影響を与えるものと解される。)ことを否定できず,引用例におけるスリーブの末端部分(その内径寸法は,前述のとおり,通常1.524mmである。)につき,約0.1mm以下の肉厚の素材を用いることにより,その外径寸法を1.72mm以下にするためには,なお相当程度の思考を要するというべきであって,当業者が引用例を見れば,特別の思考を要することなく実施し得る程度に本願発明の内容が開示されていたとまでは認められない。以上のとおり,乙1,2上の記載を前提としても,引用例に本願発明が記載されているとはいえない。」
◆平成21(行ケ)10002 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年06月24日 知的財産高等裁判所
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2009.06.19
◆平成19(ワ)8426 不当利得返還請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年05月20日 東京地方裁判所
侵害訴訟における無効判断時に、発明の要旨認定にリパーゼ判決を用いると言及がなされました。
「そもそも,本件発明も,外部取り出し端子に印加された静電気が,2端子素子の保護回路及び共通浮遊電極を通じて,他の外部取り出し端子へと分割されるという分散放電の技術思想をその必須の内容とするものではないから,乙2文献が分散放電の技術思想を開示していないことによって,相違点1についての前記(ア)の判断が左右されるものではない。すなわち,特許出願手続,無効審判手続及び審決取消訴訟における発明の要旨認定は,特許請求の範囲の記載に基づいて行われ,明細書の発明の詳細な説明の記載や図面が参酌されるのは,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,あるいは,一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限られると解すべきところ(最高裁昭和62年(行ツ)第3号平成3年3月8日第二小法廷判決・民集45巻3号123頁参照),侵害訴訟において特許法104条の3第1項に基づく権利行使の制限の主張が行われた場合の当該特許発明の要旨認定においても,同条項が「特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは」と規定されていることに照らし,特許無効審判手続及びその審決取消訴訟における発明の要旨認定の場合と同じ認定手法によるのが相当と認められる。したがって,上記権利行使の制限の主張が行われた場合の発明の要旨認定は,原則として,特許請求の範囲の記載に基づいて行われ,明細書の発明の詳細な説明の記載や図面が参酌されるのは,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,あるいは,一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限られると解すべきである。
ところで,本件明細書(甲10添付)には,発明の詳細な説明の欄において,「共通浮遊電極を設けた場合には,静電気は2端子素子から共通浮遊電極さらに2端子素子を通して他の複数の端子に放電されるので,さらに印加電圧を低くすることができる。」,「第6図は,さらに第5図の例において遮光膜を第1主電極延在部27として第1主電極106に接続した例で,両方向に電流を流しやすい構造を有している。」との記載があるが,特許請求の範囲の記載は,前記争いのない事実等の(1)で認定したとおりであり,同記載によれば,本件発明においては,2端子薄膜半導体素子の付加ゲート電極及び第2主電極は外部取り出し端子に接続し,第1主電極は共通浮遊電極に接続するという順方向接続態様で接続する構\\成(構成要件E)であることが明らかであり,この接続態様によれば,電流は,外部取り出し端子から2端子薄膜半導体素子を介して共通浮遊電極へ流れる方向には流れやすいが,共通浮遊電極から2端子薄膜半導体素子を介して他の外部取り出し端子に流れる方向には流れにくくなっているものと認められる。そうすると,本件特許の特許請求の範囲の記載からみて,分散放電の技術思想ないしそれを実現する構\\成は,本件発明の必須の内容とはされていないというべきである。したがって,原告の上記主張は理由がない。b 仮に,原告の主張に係る分散放電を,本件発明の構成でも実現できる程度のものと解した場合でも,以下のとおり,原告の上記主張には理由がない。」
◆平成19(ワ)8426 不当利得返還請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年05月20日 東京地方裁判所
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2009.05. 8
◆平成20(行ケ)10119 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年04月28日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとされた審決が取り消されました。
「そこで,上記観点に立って刊行物1発明について検討すると,前記(3)に認定した明細書の【図10】及び【図12】の記載から明らかなとおり,刊行物1発明においてはシステムバス42に一時的記憶装置であるRAM23が接続されているから,通信制御装置39において受信されたファクシミリデータ(符号化された画像情報)はRAM23に一旦格納され,その後RAM23から読み出されてシステムバス42を介して符号化復号化装置65へ伝送され,そこで直ちに復号化された後,内部バス69を介してVRAM63へ伝送され,復号化された画像データがVRAM63に蓄積されると解するのが自然であり,符号化復号化装置65を経由しているにもかかわらず,これを復号化することなく符号化したままでVRAM63に記憶させる必然性を認めることはできないというべきである。また,このようなデータの流れは,符号化されたデータを復号化する処理であり,かつ,当該処理作業に当たって符号化されたデータをメモリ(RAM23)に記憶した上で復号化するものである点で,前記乙1〜乙3公報の開示と矛盾するものでもない。・・・以上によれば,刊行物1発明のVRAM63は符号化した画像情報を記憶するものではないから,審決が「符号化されている画像情報は,復号化する前に,ワークメモリとしてのVRAM63に一時記憶されるものと理解される」(審決6頁)と認定したことは誤りであり,したがって,VRAM63は,「上記画像を表わすディジタル・データと上記グラフィック画像を表\わすディジタル・データの両方を記憶する単一のメモリ」といえる限りにおいて本願発明と相違しないとした審決の一致点の認定も誤りであり,その誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。」
◆平成20(行ケ)10119 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年04月28日 知的財産高等裁判所
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2009.03.26
◆平成20(行ケ)10261 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月25日 知的財産高等裁判所
引用文献に記載された事項の認定誤りを理由として、拒絶審決が取り消されました。
「上記(A)ないし(D)には,引用例2は,専ら「感染部位」を「気道下部」とする疾患を対象とした治療方法が開示され,また,上記(E)ないし(G)には,抗炎症剤及び抗感染剤が感染部位である「気道下部」に直接的に投与されることが,好ましい治療態様であることが開示されている。そうすると,上記(G)「好ましい態様においては,上記の抗炎症剤及び上記の抗感染剤は,上記宿主の気道下部に直接的に投与される。上記の抗炎症剤及び/又は上記の抗感染剤は,鼻の中に投与されることができる。上記の抗炎症剤及び/又は上記の抗感染剤は,エアロゾル粒子の形態で鼻の中に投与されることができる。」における「鼻の中に投与されることができる。」との記載部分は,エアロゾル粒子を,抗炎症剤及び/又は抗感染剤を感染部位である「気道下部」に直接的に投与するために,通過経路の入り口に当たる鼻孔から「鼻の中」に向けて投与されることができるという意味に理解すべきであり,鼻自体が感染部位であることを前提として,鼻を治療する目的等で,鼻に抗炎症剤及び/又は抗感染剤を投与するという意味に理解することはできない。したがって,「引用例2には,・・・感染剤を・・・感染部位である鼻に投与できることが記載されている(摘記事項(G))。」とした審決の前記認定は誤りである。」
◆平成20(行ケ)10261 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月25日 知的財産高等裁判所
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2009.02.26
◆
進歩性なしとした審決が取り消されました。
「前記(1)イ及び(2)イによれば,本願補正発明の「試験の監督データ」と引用発明の「異常事態報告記録」に係るデータとは,試験中の機器のトラブル等の問題に関連する情報を対象とし,当該情報が試験の結果に影響し得るとの点では,共通する部分を有するといえなくもない・・・しかしながら,本願補正発明の「試験の監督データ」は,当該試験の有効・無効の完全な判定を実現するために必要とされる一切のデータを意味するところ,第一次的には,狭義の試験監督のためのデータであり,その中心となるものは,ビデオカメラにより試験中継続して記録されるオーディオ・ビジュアルデータである。これに対し,引用発明においては試験の有効・無効の完全な判定という目的を欠くがゆえに,引用発明の異常事態報告記録データ等の対象に,狭義の試験監督に関連する情報を含んでいないのであるから,両者は,質的に相違するものといわざるを得ず,したがって,引用発明の「テスト状況記録データ」(異常事態報告記録データ等)が本願補正発明の「試験の監督データ」の一部にたまたま含まれる関係にあるからといって,両者が一致するものと認めることはできないというべきである。
イ 被告の主張は,要するに,本願補正発明の「試験の監督データ」の内容に限定はなく,試験の有効性の判断に供されるデータがすべて含まれるとした上,引用発明の異常事態報告記録データ等にも試験の有効性の判断に供されるデータが含まれるのであるから,後者は前者に相当するというものである。しかしながら,そもそも,引用発明と対比した場合の本願補正発明の主たる新規性は,試験会場に管理者の配置を不要にしながら,試験の有効・無効の判定までを可能にするシステムを構\築するという点にあり,本願補正発明において,上記オーディオ・ビジュアルデータを中心とした「試験の監督データ」を記録するなどの構成が,上記システムを実現するに当たり必須のものであることは明らかである。このように,本願補正発明の「試験の監督データ」に係る構\成は,本願補正発明の新規性の本質部分を成すものであるところ,本願補正発明の「試験の監督データ」と引用発明の「テスト状況記録データ」(異常事態報告記録データ等)との対比判断に当たり,本願補正発明の「試験の監督データ」の技術的意義が特許請求の範囲の記載から一義的に明確に理解することができないものであるにもかかわらず,当該技術的意義を本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して具体的に明らかにすることなく,特許請求の範囲の記載から形式的に導き出される「試験の有効性の判断に供されるすべてのデータ」との包括的な概念を用いることによって,両者の具体的な内容の相違,すなわち,狭義の試験監督に係るデータを含むか否かという重要な相違を捨象するのは,本願補正発明の新規性の本質を看過するものといわざるを得ない。したがって,被告の上記主張を採用することは到底できないというべきである。」
◆
平成20(行ケ)10115 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年02月24日 知的財産高等裁判所
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2009.02.21
◆平成20(行ケ)10238 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年02月18日 知的財産高等裁判所
進歩性違反の無効理由無しとした審決を、容易に想到できるとして取り消しました。
「上記(2)の甲1の記載内容,殊に上記(2)オ「考察」欄及び図3等を参照すると,正常者群については,距離と面積が比例的な関係にあることが記載されていると認められる。そして,これは,数学的には,「L(距離)≒k(定数)×D(面積)」と表されることになるところ,「k≒L/D」であるから,すなわち,「距離と面積の比(L/D値)がほぼ一定」ということが,実質的に記載されていると認められる。また,上記(2)の甲1の記載内容,殊に上記(2)オ「考察」欄及び図6等を参照すると,めまい患者群については,距離と面積が必ずしも比例的な関係にないことが記載されていると認められ,すなわち,「距離と面積の比(L/D値)が一定でない」ということが,実質的に記載されていると認められる。そして,甲1には,距離と面積との関係を診断の指標として用いることまでは記載されていないが,上記のとおり,正常者群とめまい患者群とでは,距離と面積についての比例的な違いがあるという情報が記載されている場合,この記載に基づいて,この「L/D値」を診断に使うことに想到することは,当業者においては容易であると認めることができる。なお,上記(2)カのとおり,甲1の「まとめ」欄には,「4.距離と面積の指標は互いに独立したものであると考えられるので,重心動揺検査の評価には両者を併記する必要があると思われた。」との記載があるが,これは,距離と面積の2つの指標を用いることにし,2つの指標が互いに独立していることから,片方だけではなく,両方の指標を併記する必要があることを記載したものであって,2つの指標から求めた「L/D値」については,直接言及するものではない。しかしながら,このような直接の言及がないとしても,上記のとおり,甲1に接した当業者であれば,甲1の記載に基づき,算出した軌跡長L,動揺面積Dから,「L/D値」を算出する構成を付加することは,容易に想到できることと認められる。」
◆平成20(行ケ)10238 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年02月18日 知的財産高等裁判所
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2009.02.21
◆平成20(行ケ)10209 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年02月18日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が取り消されました。
「そうすると,前記(2)の甲17,甲18に記載された技術は,マスク全体の外周が固定されているもののマスクの内方(中心方向)は固定されておらず,外周からマスクを引っ張ることによって,マスクを緊張させ撓み等を除去し得ることを前提とするものであるところ,これを引用発明に適用しようとしても,引用発明においては,金属薄膜がマスク基板の粗いマスクパターンに密着し固定されているため,外周から金属薄膜を引っ張ることによっては,直ちに金属薄膜を緊張させその撓み等を除去し得るとは認められず,金属薄膜に外周縁へ向かう均一な張力をかけることができるとは認められない。また,本願発明のマスク本体に相当する引用発明の金属薄膜は,マスク基板上に蒸着により成膜されるものであって,マスク基板上に蒸着(すなわち,一体化)する前においては,金属薄膜としての形態を有していないから,マスクを引っ張ることによる張力付与技術を,金属薄膜のみに適用することはできない。したがって,甲17,甲18に記載の張力付与技術を,引用発明に適用して,「マスク本体に外周縁に向う均一な張力をかけた状態で」一体化することは,容易になし得るということはできない。」
◆平成20(行ケ)10209 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年02月18日 知的財産高等裁判所
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2009.01.27
◆平成20(行ケ)10166 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年01月27日 知的財産高等裁判所
本願発明の要旨認定誤りとして、拒絶審決が取り消されました。
「以上の記載によれば,引用発明は,・・・これを攪拌・混合して粒状物を得るという方法を採用している。
そうすると,引用発明は,従来の湿式造粒法における欠点を克服し,多量の水分を含有させずに粒状物を製造するという点では本願発明と共通の目的を有するものの,その目的を達成するための手段として低融点物質を加熱して溶融させるという方法を採用している点で,本願発明とは異なる方法によるものである。したがって,引用発明における「粒状物の製造方法」が本願発明の「熱粘着式造粒方法」に相当するものとした審決の判断は誤りである。」
なお、発明の要旨認定について、下記のような判断を述べています。
「被告は,本願発明に関して特許請求の範囲の記載に何ら不明確な点はなく,発明の詳細な説明の記載を参酌すべき特段の事情も存在しないから,審決が本願発明の「熱粘着式造粒方法」は加熱して粒状物を製造する方法であるとした点に誤りはないと主張する。しかし,特段の事情が存在しない限り発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されないのは,あくまでも特許出願に係る発明の要旨の認定との関係においてであって,上記のように特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するに当たっては,特許出願に関する一件書類に含まれる発明の詳細な説明の記載や図面を参酌すべきことは当然であるから,被告の上記主張は採用することができない。」
◆平成20(行ケ)10166 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年01月27日 知的財産高等裁判所
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