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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

要旨認定

令和5(行ケ)10023  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和5年10月3日  知的財産高等裁判所

特許異議申立で取消審決がなされましたが、特許権者は知財高裁に取消訴訟を提起しました。知財高裁は、請求項の「内接」の意義を定義した上、審決を維持しました。出願人は「ドクター中松」で、本人訴訟です。
本件特許はこれです。多数の分割出願があります。

◆本件特許

(1) 本件発明は、上昇下降用プロペラの回転軌跡を複数の翼に内接させるこ とでプロペラガードとして兼用するとの構成を備えるものであるところ、個別の取消事由の検討に入る前に、ここでいう「内接」及び「プロペラガード\nとして兼用」の意義を明らかにしておく。
(2) 「内接」とは、国語辞典に「多角形の各辺がその内部にある一つの円に 接する時、その円は多角形に内接する…」との用例が挙げられているとおり (甲11)、図形の各辺とその内部の円などが接していることを表す用語である。\n
本件明細書の【0013】には、「図8は本発明第5の実施例で、上下用 プロペラ4つの回転軌跡39を全部内接させ、プロペラガードを設けずに4 枚の主翼24と先尾翼28と尾翼29をプロペラガードに兼用させたもので ある」との説明が記載され、図8には、上昇下降用の4つのプロペラが示さ れ、うち翼の間に配置された左右2つのプロペラの回転軌跡がそれぞれ前後 の主翼24と接するように示されている。 同様に、図7、9においても、翼の間に配置された上昇下降用の複数のプ ロペラの回転軌跡が前後の翼に接するように示されており、これに本件明細 書の【0012】〜【0014】(前記第2の2(2)イ)の記載を総合すれ ば、図7〜9に係る第4〜6実施例は、上昇下降用プロペラの回転軌跡を複 数の翼に内接させることでプロペラガードとして兼用するとの構成を示すものと解される。\nもっとも、プロペラの回転軌跡と翼が文字通り接する(接触する)場合、 プロペラの回転が妨げられることが明らかであるから、本件発明の「内接」 とは、プロペラの回転軌跡が翼と接触するには至らない限度で十分に近接していることを意味するものと解される。\n
(3) そして、本件発明の「プロペラガードとして兼用」とは、特許請求の範 囲の記載に示されているとおり、複数の翼の間に配置された上昇下降用プロ ペラの回転をガードする機能をいうものであり、この機能\は、複数の翼の間 に配置された上昇下降用プロペラの回転軌跡を前方又は後方の複数の翼に内 接させることによって生じるものであると認められる。また、本件発明の上記第4〜6実施例(図7〜9)では、複数の翼の間に配置された上昇下降用プロペラの回転軌跡の一部のみが翼に内接する構成が示されていることから、上昇下降用プロペラの回転軌跡の少なくとも一部が翼に内接していれば、翼がプロペラガードとして機能\するものと解される。
(4) 原告は、「内接」とは「プロペラ軌跡が両翼に挟まれ、かつ両翼端部を結んだ線を出ないことを意味する」とも主張するが(上記第3の1(2)ア)、図7〜9の実施例がそのような構成を有するものだとしても、特許請求の範囲に当該構\成を加える訂正(減縮)をしたわけでもないのに、「内接」という文言自体をそのような限定的な意味で解釈することは許されないというべきである。

◆判決本文

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令和4(行ケ)10098  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和5年4月20日  知的財産高等裁判所

 無効理由なしとした審決が維持されました。なお、別訴の本特許に基づく特許権侵害については技術的範囲に属しないと判断されています。

(1) 本件審決が前記第2の3(1)アのとおり甲1発明を認定し、同(2)アのとおり 本件発明1と甲1発明における茶葉の移送方法を対比して一致点及び相違点1を認 定したのに対し、原告は、本件審決は、本件発明1と甲1発明が、「負圧吸引作用を 奏する背面風(W)を前記刈刃(22)の直後方から移送ダクト(6)に送り込む こと」で一致していることを看過したと主張する。原告の上記主張は、甲1発明の内容として、1)送風ダクト52からの吹出口が刈刃34の「直後方」から風を送り込むものであることと、2)送風ダクト52を介して吹き上げファン51から吹き出された風が「負圧吸引作用を有すること」が認められるべき旨をいうものと解されるが、次のとおり、甲1発明の内容として、上記1)及び2)のいずれも認めることができない。
ア(ア) まず、原告は、甲1の「なお刈刃34は、摘採機フレーム基板32の前方 ほぼ延長上に設けられるものである。そしてこの摘採機体3における摘採機フレー ムパイプ31と摘採機フレーム基板32とにより区画され、摘採された茶葉Aが中 継移送装置5によって上昇移送されるまでの部分を摘採作用部36とする。」との 記載(【0013】)及び「送風ダクト52は、摘採した茶葉Aを摘採作用部36た る刈刃34後方部から収容部4まで風送するものであり、具体的には吹き上げファ ン51から送り出された風が、茶葉摘採機1の側部を回り込むようにして摘採作用 部36に達し、この部分で茶葉Aと合流し、合流後この茶葉Aを茶葉移送路52a を経由させて収容部4まで風送するものである。」との記載(【0016】)を指摘し て、「刈刃34」で刈り取られた茶葉が直接「摘採作用部36」に送り込まれること から、「摘採作用部36」が「刈刃34」の直後方に位置することは明らかであると 主張する。
(イ) しかし、甲1の【0013】の上記記載は、「摘採作用部36」を区画するも のの一つである「摘採機フレーム基盤32」と「刈刃34」との位置関係について、 刈刃34が摘採機フレーム基盤32の「前方ほぼ延長上に設けられる」と示すにと どまり、摘採作用部36と刈刃34の位置関係について具体的に特定するものとは みられない。 また、同【0016】の上記記載も、「摘採作用部36たる刈刃34後方部」とい う部分において、摘採作用部36が刈刃34の後方に位置することを示しているも のの、摘採作用部36が刈刃34の後方のどの程度の距離にあるものか等について、 具体的に示すものとはみられない。 その他、甲1において、「摘採作用部36」が「刈刃34」の直後方に位置するこ とを認めるべき記載は見当たらない。
(ウ) また、仮に、甲1において、「摘採作用部36」が「刈刃34」の直後方に位 置することが認められるとした場合に、そのことから直ちに、「送風ダクト52風」 が「刈刃34」の直後方から送り込まれることが認められるものでもない。 この点、甲1に、吹き上げファン51から送り出された風が、送風ダクト52を 介して、刈刃34の後方に位置する摘採作用部36のどの部分に達するのかを具体 的に特定する記載は見当たらない。 むしろ、甲1の【図1】の左下部の丸枠内及び【図5】によると、送風ダクト5 2は、刈刃34の後方に位置するとされる摘採作用部36の後端部に位置付けられ ているところである。そして、【図4】によると、刈刃34と送風ダクト52との間 に少なからず距離が存することは、明らかである。
(エ) したがって、甲1発明について、送風ダクト52からの吹出口が刈刃34の 「直後方」から風を送り込むものであることが認められるべき旨をいう原告の主張 は、採用することができない。
イ(ア) 次に、原告は、「送風ダクト52からの吹出口は、摘採機フレーム基板32 後端部と茶葉移送路52aの下端部との間に開口」しており(甲1の【図5】等)、 この吹出口から送り込まれた「送風ダクト52風」が、「摘採作用部36」に達し、 「この部分で茶葉Aと合流し、合流後にこの茶葉Aを茶葉移送路52aを経由させ て収容部4まで風送する」(同【0016】)ところ、「摘採作用部36」において「送風ダクト52風」に負圧吸引作用がなければ、このような事象を説明することはで きない、甲1の【0016】の上記記載は、「摘採作用部36」が密閉又は半密閉状 態のダクトでなければ説明できない内容であるなどと主張する。
(イ) しかし、甲1の【0019】及び【図5】によると、摘採された茶葉は、ま ず、送風ダクト35から排出される風によって摘採作用部36の後方に送られ、次 いで、送風ダクト52を介して吹き上げファン51から吹き出された風により茶葉 移送路52a内を上昇移送されるのであって、送風ダクト52を介して吹き上げフ ァン51から吹き出された風に負圧吸引作用がなくとも、送風ダクト35から排出 される風により、上昇移送が可能となる位置まで茶葉が送られることは容易に理解される。\n
この点、同【0013】には、摘採作用部36について、摘採機フレームパイプ 31と摘採機フレーム基盤32とにより「区画」される旨が記載されているのみで、 それが密閉構造を有することはもとより、閉鎖的な構\造を有することも明記されて おらず、他に、甲1に、摘採作用部36の構造について特定する記載も見られない。そうすると、摘採作用部36は、送風ダクト35から排出される風によって茶葉\nを摘採作用部36の後方に送ることが可能な構\造となっていれば足り、原告の主張 するように、密閉又は半密閉状態にあることを要するものではないと解される。
(ウ) 上記に関し、原告は、摘採作用部36が密閉又は半密閉状態でないとすると、 送風ダクト35から排出される風によって周辺に分散して回収不能になってしまう茶葉が生じ、甲1発明における茶葉の中継移送機能\が低下することになるなどと主張するが、茶葉の分散を避けるためには、茶葉が通過しない程度の空隙を有する部 材で摘採作用部36を構成することで足りるといえるし、茶葉の損傷を避けるためという観点を更に考慮したとしても、直ちに摘採作用部36が密閉又は半密閉状態\nであることまで要するものとは解されない。
(エ) したがって、甲1発明について、送風ダクト52を介して吹き上げファン5 1から吹き出された風が「負圧吸引作用を有すること」が認められるべき旨をいう 原告の主張は、採用することができない。
(2) 前記2の甲1の記載事項によると、甲1には、前記第2の3(1)アのとおり本 件審決が認定した甲1発明が記載されていると認められる。その上で、本件発明1と甲1発明における茶葉の移送方法を対比すると、それらの間には、前記第2の3(2)アのとおり本件審決が認定した一致点及び次の相違点1が認められるというべきである
・・・・
(2) 前記3(3)で認定説示した点に照らし、新規性及び進歩性の判断の誤りをいう原告の主張は、採用することができない。

◆判決本文

同特許についての侵害訴訟です。
1審
「圧力風の作用のみによって」を備えず、構成要件Aを充足しない

◆令和2(ワ)17423
控訴審
均等主張もしましたが、第1要件を満たさないとして、控訴棄却。

◆令和4(ネ)10071

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