2008.08. 1
進歩性なしとした拒絶審決が、引例との一致点・相違点の認定が異なるものの結論に影響がないとして維持されました。
「本願発明は,「自動車運転用の模擬教習機器」に関するものであるところ,前記2で述べたところによると,ここでいう「自動車運転用の模擬教習機器」とは,実際に自動車の運転をすることができるように教習するために用いる機器という意味であると認められる。これに対し,引用発明は,上記のとおり,子供が遊ぶための玩具であるから,この点において,本願発明と引用発明は相違するということができる。審決は,本願発明と引用発明は,「自動車運転用の模擬機器」という点で一致すると判断しているが,本願発明において「自動車運転用の模擬教習機器」は,上記のような一つの技術的な意義を有するものと認められるのであり,これを「自動車運転用の模擬機器」と「学習」とに分けて引用発明と対比することは相当でないというべきである。引用発明が「自動車運転用の模擬機器」でない旨の原告の主張(取消事由1)は,上記の限度では理由があり,相違点3は,「本願発明が自動車運転用の模擬教習機器であるのに対して,引用発明はハンドル玩具である点。」と認定すべきである。しかし,後記7のとおり,この一致点認定の誤りは,結論に影響するものではない。・・・・前記4(2)のとおり,相違点3は,「本願発明が自動車運転用の模擬教習機器であるのに対して,引用発明はハンドル玩具である点。」と認定すべきであるが,この相違点は,次のとおり当業者が容易に想到することができるというべきである。ア 前記5及び6で述べたところからすると,当業者は,引用発明に相違点1,2に係る本願発明の発明特定事項を採用したもの,すなわち,助手席の前面に取り付けまたは取り外しができるように配置される支持体に対して,模造ハンドル,模造ブレーキ,模造アクセル及び模造方向指示器(MT車の場合は,以上に加えて,模造クラッチ)が取り付けられており,これらは,実際のものと同一サイズであって,支持体を助手席の前面に配置したとき,運転席における実際のものが占めるべき位置と同じところに位置するように,かつ実際のものの動きに類似した動きができるように,支持体に取り付けられており,さらに,これらの動きは,運転席に配備された実際のものの動きとは,何らの関係をも持たないように構成されたハンドル玩具を容易に想到することができるというべきである。イ 上記アのものは,玩具である点で本願発明とは異なるが,運転者の運転をまねして同様の操作をすることができる点では,本願発明の自動車運転用の模擬教習機器と共通する。そして,次のとおり,自動車運転を指導者から学ぶ目的又は運転教習の目的で用いられるものが,遊戯装置としても用いられることが知られている。・・・ウ 以上によると,当業者は,上記アのものを自動車運転用の模擬教習機器として使用することを容易に想到することができるのであって,上記相違点3に係る本願発明の構\成は,当業者が容易に想到することができるというべきである。」
◆平成20(行ケ)10062 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年07月30日 知的財産高等裁判所