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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

動機付け

◆平成19(行ケ)10148 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年12月25日 知的財産高等裁判所

  進歩性無しとした無効審決が、動機付けがないとの理由で取り消されました。
   「ア 引用例は,前記(1)のとおり,熱プレス成形によるフィルム同士の熱接着の 問題を課題として開示するものといえるが,これを解決するための手段としてのマ ット加工技術を開示し,又は示唆するものではない。 イ 周知例2及び3には,マット加工が施された樹脂膜又はプラスチックシート が,熱と圧力をかけて容器等に成形されるとの記載も示唆もないところ,上記(2) イのとおり,本件特許出願当時の当業者において,マット加工面に熱と圧力を同時 に加えると上記のようにマット加工の技術的意味が没却されると考えられていたこ とに照らすと,熱プレス成形によるフィルム同士の熱接着の問題を解決するため, 引用発明に,周知例2又は3に記載されたマット加工技術を適用することについて は,その動機付けがないばかりか,その適用を阻害する要因が存在したものという べきである。・・・エ 他方,周知例1は,本件発明や引用発明と同種の技術分野におけるマット加 工技術を開示するものであるほか,同周知例には,「本発明の加熱調理用食品容器 は,上記した食品容器材料を公知の成形法,例えば加熱圧縮法により所望形状に成 形してなるものである」,「この食品容器材料を用いて加熱圧縮法により成形し, ・・・カップ状の加熱調理用食品容器・・・を得た」との各記載があるところであ る。 しかしながら,周知例1に記載された食品容器材料は,紙である基材の上に,ポ リプロピレンよりも融点が高い・・・ポリメチルペンテン等の耐熱性樹脂層を有するものであって,ポリプロ ピレン樹脂製フィルムのみから成る本件発明及び引用発明のラミネートフィルムと はその材質を異にするものであるほか,同周知例には,加熱圧縮法において用いら れる加熱温度についての具体的な記載はみられないところ,紙である基材は,復元 性の高い樹脂製フィルムとは異なり,折り込みのような機械的な作用のみでも成形 が可能であることからすると,その加熱温度が,上記ポリブチレンテレフタレート等の耐熱性樹脂の成形温度(軟化温度)よりも相当低いことも想定され,また,食\n品容器材料から容器を形成する際の方法についても,複数枚の材料を積層して加熱 圧縮するとの方法が示されているものではないから,結局,周知例1が,複数枚の 樹脂製ラミネートフィルムを重ねて金型に配置し,熱プレス成形によりフィルム製 容器を製造する場合に生ずる熱プレス成形によるフィルム同士の熱接着の問題の解 決方法を開示し,又は示唆するものということはできず,したがって,当該問題を 解決するため,引用発明に,周知例1に記載されたマット加工技術を適用すること についても,その動機付けがないといわざるを得ない。」

◆平成19(行ケ)10148 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年12月25日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10421 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年09月12日 知的財産高等裁判所

   進歩性無しとした審決が取り消されました。
   「確かに,「また,他の実施例として,上記ウエハ保持部(28),(33)はどちらか一方だけを動かすことも可能である。」(上記(ア)f)との記載によれば,「左右のアーム部材とそれらの回転軸とを共通の第1のアーム部材を設け」た第4図及び第5図に記載の搬送装置において,左右のウエハ保持部は「どちらか一方だけを動かすことも可能である」ことを一応示唆するものといえる。しかし,甲3には,単に上記の記載がされているだけであって,「左右のアーム部材とそれらの回転軸とを共通の第1のアーム部材を設け」た搬送装置において,「どちらか一方だけを動かす」ための構\成及び手段について何ら具体的な記載や示唆はない。また,甲3の他の記載事項部分を参酌しても,上記搬送装置において「どちらか一方だけを動かす」ことを実現することが自明であるともいえない。」

 また、本件について、一部の請求項については、無効理由無しとした審決は確定しているとして、特許庁の取り扱いについて補足意見が述べられました。
 「第1次審決中「特許第2580489号の請求項5に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」との審決部分については,被告(審判請求人)において取消訴訟を提起することなく出訴期間が経過したのであるから,同審決部分は形式的に確定した。しかるに,特許庁は,本件特許の請求項5に係る無効審判請求が形式的に確定していないとの前提に立った上で,当該請求項についても審判手続で審理し,「特許第2580489号の請求項5に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」旨の判断をした。上記審判手続のあり方は,著しく妥当を欠くというべきである。けだし,本件特許の請求項5については,無効審判請求に係る無効理由が存在しないものとする審決部分が確定したことにより,原告は,形式的確定の利益を享受できる地位を得ているのであるから,それにもかかわらず,他の請求項に係る特許を無効とした審決部分について取消訴訟を提起して,当該請求項について有利な結果を得ようとしたことにより,かえって無効審判請求を不成立とする請求項5についてまで,不安定な地位にさらされることになることは著しく不合理だからである。」

◆平成18(行ケ)10421 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年09月12日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10368 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成19年08月28日 知的財産高等裁判所

  無効理由無しとした審決が、動機付けの障害がないとして、取り消されました。
   「被告の多岐にわたる主張の要点は,審決と同様,本件特許出願前,当業者がテトラアルキルアンモニウムイオンのNF膜の透過可能性を予\測することは困難であったという点にあり,このような予測可能\性がなければNF膜を採用しようと動機付けられることもないとするものである。そこで検討するに,確かに,本件特許出願前にNF膜がテトラアルキルアンモニウムイオンを透過することを指摘した技術文献がないことは被告の主張するとおりである。しかし,このことから直ちにNF膜を採用しようと動機付けられないといえないことは,前項に説示したところに照らして明らかである。NF膜が有する電荷の影響が分離対象物質の挙動に複雑な影響を及ぼすものであり,テトラアルキルアンモニウムイオンのNF膜の透過可能性について予\測することが困難であったとしても,このような事情は,NF膜のテトラアルキルアンモニウムイオンの透過可能性を否定したものではないのであるから,NF膜の持つ低分子量の化合物の分離に極めて有効であるという従来の膜にない一般的特徴を根拠に,優れた透過性能\を期待してこれを分離膜として採用してみようとする動機付けの障害となるものではないというべきである。」

◆平成18(行ケ)10368 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成19年08月28日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10339 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年07月19日 知的財産高等裁判所

 引用発明において,「スクリーン巻取り最終段階からさらに巻取速度を減速させるようにする」ことが必要となるものとは認められず,そうであれば,当業者が,あえて,そのような構成を採用して引用発明に適用することが,設計事項であるとも,容易であるともいえないとして、拒絶審決を取消ました。
 「もっとも,スプリングの蓄勢力に対し,制動力が小さすぎる粘性ダンパを選択したような場合を仮定すれば,引用発明の粘性ダンパであっても,「スクリーン巻取り初期段階から同様の減速を行っても最終段階で充分な巻取筒の減速特性が得られないような特性のブレーキ」に当たるといえないこともない。しかしながら,粘性ダンパの制動力の大きさをスプリングの蓄勢力に見合ったものとすることこそ,まさに設計事項であり,引用例1には,そのための手段も記載されている(上記(1)のア(カ))のであるから,本願補正発明に対する公知技術として引用発明を選択しながら,上記のような仮定を設定すること自体,失当といわざるを得ない(もっとも,スクリーンの巻終わりの衝突を防止しつつ,巻上げ時間の短縮を図ることを課題として,あえて,引用発明の粘性ダンパの制動力をスプリングの蓄勢力に対して小さいものとし,巻取り最終段階で巻取速度を減速することも考えられないではないが,そのような技術課題は引用例1に記載も示唆もなく,また,周知であると認めるに足りる証拠もないから,引用発明を前提として採用し得るものではない。)。

◆平成18(行ケ)10339 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年07月19日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10484 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年04月26日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が取り消されました。
 「以上検討したところによれば,本件発明1は,ガイドピンが床面に磁力にて突出引退自在に設けられた構成を有するものであって,ガイドピンの大径部が係止ガイド片に当接することにより機械的に保持され,走行溝から下降しないようにした点に主たる技術的意義があるものであるのに対し,刊行物2(甲2)においては,規制ピンは敷居に植設固定されており,突出引退自在に設けられたものではないから,「走行中や停止中において,吊戸本体3の揺れや振動などにてガイドピン4が磁着体Xから外れ,ガイドピン4がその自重で容易に床面下に下降する」(訂正明細書〔甲8の2〕段落【0003】)という本件発明1の従来技術にいう課題を解決する手段として突出引退自在に設けられたガイドピンを係止ガイド片によって機械的に保持する技術を開示するものではない。しかも,刊行物2(甲2)の遊転ローラは,フランジと当接する構\造(フランジがローラーを機械的に保持する構造)であってはならず,引用発明2は,フランジと遊転ローラーとの間の高さ方向において,一定の間隔を設けることを前提とする技術であるから,本件発明1のガイドピンの大径部が係止ガイド片に当接することにより機械的に保持する構\造とは,その技術的意義が異なるものである。したがって,引用発明1における,ガイドピンが突出引退自在である構成を前提としたまま,刊行物2の「フランジ18を有したコの字型案内溝19にビス22の遊転ローラー21を案内させる構\成」を適用することはできないというべきである。」  

◆平成18(行ケ)10484 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年04月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10422 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年03月29日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が取り消されました。
  「引用例(甲1)には,・・・と記載されているから,革製本底1の上面全体に防水布2を積層配置すれば防水性が高まるが,その場合には,通気性が損なわれ,靴内部の蒸れによる不快感の問題が生じることが記載されているということができる。しかし,この問題を解決するために防水布の通気性を保つために貫通孔を備えた不透過性の材料でできた上部部材により被覆するという技術的思想については,記載も示唆もない。被告は,引用発明において防水部材2が積層配置された部分は,防水部材2によって防水性が確保されているのであるから,防水性をより向上させるためには,防水部材2が積層配置されていない革製本底1の上面が露出する部分に対して合成樹脂を積層すればよく,革製本底1の上面が露出する部分は,革製本底1の周縁となるから,周縁に沿って革製本底1の上面が露出する部分を合成樹脂で被うことは,当業者が容易に想到し得たことであり,周縁に沿って革製本底1の上面が露出する部分を合成樹脂で被えば,必然的に合成樹脂は貫通孔を備えたものになると主張する。確かに,引用発明において,防水性を向上させるため革製本底1の上面が露出する部分に対して合成樹脂を積層すれば,革製本底1の上面が露出する部分は周縁であるから,「貫通孔を備えた不透過性の材料でできた上部部材」を採用すること,すなわち,本願発明の相違点の構成を採用することにより,引用発明の防水性をより向上させることができるが,引用発明は,防水性を「通気性を有する防水部材」を積層することにより達成しているものであり,かつ,「本実施例のように踏付け部のみに防水布2(判決注:本願発明の「通気性でかつ耐水性の材料からなる膜」に相当)を積層配置しただけで充分に効果的である」(甲1の明細書5頁第2段落)とあるように,それで足りるとしているものである。引用例には,更に防水性を高めるために「不透過性の材料でできた上部部材」で覆うというようなことについては記載も示唆もなく,また,審決が周知技術として引用する甲2刊行物ないし甲4刊行物にも記載がないのであるから,防水布の通気性を保つために貫通孔を備えた不透過性の材料でできた上部部材により被覆するという本願発明の相違点に係る構\成を採用することが,当業者に容易想到とすることはできない。被告の上記主張は,裏付けのない主張であり,本願発明の相違点に係る構成を後から論理付けしたものというほかなく,採用することができない。」

◆平成18(行ケ)10422 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年03月29日 知的財産高等裁判所

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