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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

動機付け

平成25(行ケ)10016 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年12月10日 知的財産高等裁判所 

 パチンコ機について進歩性なしとした審決が、動機付け無しとして取り消されました。
 (ア) 前記アの引用例2の記載(段落【0004】【0018】【0023】【0037】【0041】【0052】【0055】)によれば,引用発明2は,第一種の遊技と第二種の遊技とが行われる遊技機であり,これらの遊技が行われる順番について遊技者が把握できるようにする発明であるということができる。
(イ) 引用発明2において,遊技が行われる順番について遊技者が把握できるようにするためだけであれば,第一種の遊技と第二種の遊技の行われる順番を表示すれば足りるが,引用例2には,保留に関する残りの上限数である「予\」を併せて表示することも記載されている(段落【0041】【0049】〜【0051】)。当該記載によれば,引用発明2は,第一種の遊技の保留の上限数が4である場合,第一種の遊技,第二種の遊技,第一種の遊技,第一種の遊技の順に保留が行われているときには,「1→2→1→1→予\」と保留の状態が表示され,第二種の遊技,第一種の遊技,第一種の遊技,第一種の遊技,第一種の遊技の順に保留が行われているときには,「2→1→1→1→1」(「予\」の表示は第一種の遊技が上限に達しているのでない。)と表\示され,第一種の遊技,第一種の遊技,第一種の遊技,第一種の遊技の順に保留が行われているときには,「1→1→1→1」と表示されるものである。しかし,引用発明2は,第一種の遊技と第二種の遊技の2種類の変動表\示ゲームの確定タイミングに時間差を設け,遊技者が同時に行われる複数の変動表示ゲームの結果を気にすることなく,わかりやすいゲーム進行が可能\な遊技機を提供することを目的としており,発明の効果としては,第一の特別遊技に関連した識別情報の変動と,第二の特別遊技に関連した可変大入賞口の開閉が同時に達成することがないので,双方の遊技を存分に楽しむことが可能になること,第一の入賞口への入賞に基づく保留と第二の入賞口の入賞に基づく保留が,保留記憶手段に記憶されたことが一目瞭然なので,遊技者は保留状態を即座に把握できるとともに,これを受け,保留状況に応じた最適な遊技を行うことが可能\になることが挙げられている。また,第二種の遊技の留保について保留可能な上限に達していない場合に,第一種の遊技と異なって,「予\」といった表示を行わない理由については,何らこれを示唆する記載はないが,引用例2に記載された実施例については,第一種の遊技の留保数は4個であるのに対し,第二種の遊技の留保数は1個であることからすると,引用発明2は,これを前提として,第一種の遊技については,保留可能\な上限を「予」という形で示す必要があるが,第二種の遊技については,留保数は1 個しかないので,留保状態だけを表示することにすれば,遊技者は第二種の遊技の留保状態について確実に把握できることを前提としたものであり,第一種の遊技と異なって,あえて第二種の遊技について留保の上限を表\示しないことにしたものではないと理解することができる。そうすると,本件審決が認定した技術的事項Aについては,「第一留保手段による留保上限情報」について,「前記第1所定数に対応する数の第1空表示態様を一列に並べて表\示する第1空表示制御手段」が記載されているということはできるが,引用例2の記載から,「第1留保手段による留保上限情報と第2留保手段による留保上限情報とのうち前記第1留保手段による留保上限情報のみを表\示すべく」という技術的事項が開示されていると認めることはできない。また,技術的事項Bについては,「第2留保表示態様を,前記一列に並べて表\示された前記第1空表示態様のもっとも端の位置に表\示する」ことが記載されているということができるが,「前記第2留保手段による留保上限情報を表示することなく,」という技術的事項が開示されていると認めることはできない。
(ウ) さらに,引用発明1は,2種類の第一種の遊技について,確定タイミングに時間差を設け,遊技者が同時に行われる複数の変動表示ゲームの結果を気にすることなく,わかりやすいゲーム進行が可能\な遊技機を提供することを目的としており,変動表示装置は,2種類の変動表\示ゲームについて,いずれも,留保上限情報と現在の留保状態の有無と数を明示するものであり,本願発明のように,第2留保手段による留保上限情報をあえて表示しないことにより,遊技者から見れば留保上限が増えたように感じることができ,興趣が高められるといった目的,手段,効果を示唆する記載は見当たらない。そして,引用発明2についても,その目的,効果は,引用発明1と同様であり,変動表\示装置は,実施例についていえば,第一種の遊技と第二種の遊技の留保上限数を前提として,遊技者から見て留保状態の有無及び数と留保上限数との関係が明確に分かるように表示しており,本願発明のように,第2留保手段による留保上限情報をあえて表\示しないことにより,遊技者から見れば留保上限が増えたように感じることができ,興趣が高められるといった目的,手段,効果を示唆する記載は見当たらない。そうすると,引用発明1及び引用発明2は,実質的に「わかりやすいゲーム進行が可能な遊技機を提供する」という共通の目的を有しているものの,引用発明1に,本願発明のような第2留保手段による留保上限情報をあえて表\示しないことにより,遊技者から見れば留保上限が増えたように感じることができ,興趣が高められるといった目的を達成し,またこのような効果を得るために,相違点1ないし3について,引用発明2を適用する動機付けはないといわざるを得ない。
(エ) 以上によれば,引用例2には,相違点1ないし3に関する全ての技術的事項の開示があるとはいえず,引用発明1に引用例2に開示された技術的事項を適用する動機付けも認められないから,本願発明は,引用発明1及び引用発明2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたと認めることはできない。

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平成25(行ケ)10066 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年11月28日 知的財産高等裁判所

 進歩性無しとした審決が維持されました。
 以上の刊行物1及び2の開示事項を前提とすると,刊行物1及び2に接した当業者は,1)刊行物1記載の多層構造重合体及び刊行物2記載の多層構\造のグラフト共重合体は,いずれも添加対象樹脂の耐衝撃性改良剤として耐衝撃性及び耐熱性の両者に優れた効果を奏し,刊行物1記載の多層構造重合体を含有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物を添加して得られる熱可塑性樹脂組成物と刊行物2記載の多層構\造のグラフト共重合体を添加して得られる熱可塑性樹脂組成物は,いずれも自動車用部品,OA機器等の用途に有用であること,2)刊行物1の記載からは,多層構造重合体のコア層を構\成するゴム層が肥大化しているかどうかは不明であるのに対し,刊行物2には,肥大化したブタジエン系ゴム重合体ラテックスを含有する多層構造のグラフト共重合体は,肥大化していないブタジエン系ゴム重合体ラテックスを含有する多層構\造のグラフト共重合体よりも耐衝撃性に優れており,さらに,肥大化剤として酸基含有共重合体を用いて肥大化した場合には,耐衝撃性に優れるとともに,熱安定性を低下させることなく,耐熱性にも優れていることが示されていることを理解するものといえるから,刊行物1記載の多層構造重合体を含有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物において,組成物の耐熱性を維持したまま,より耐衝撃性の向上した組成物を得ることを目的として,刊行物1記載の多層構\造重合体に代えて刊行物2記載の肥大化したブタジエン系ゴム重合体ラテックスを含有する多層構造のグラフト共重合体を置換することを試みる動機付けがあるものと認められる。したがって,刊行物1及び2に接した当業者であれば,刊行物1及び2に基づいて,相違点に係る本願発明の構\成を容易に想到することができたものと認められる。

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平成24(行ケ)10402 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年10月07日 知的財産高等裁判所

 単なる設計事項であるとして、進歩性違反無しとした審決が取り消されました。
 上記(ア)〜(ウ)認定の各公報等の記載事項に照らすと,水などの液中で切断加工を行う装置において,水槽などの加工槽内の液面(水位)を調節する装置を切断加工領域を除く領域(外側)に備えることは,本件出願日以前において周知であったものと認められる。
ウ 相違点3に係る容易想到性について
後記3(1)認定のとおり,甲7公報記載の水中切断装置において用いられているプラズマ・アーク・トーチ・システムに代えて,ノズルから噴射されるアブレシブによりワークの切断加工を行う水中切断用アブレシブ切断装置とすることは当業者が容易に想到し得ることである。そして,上記イ認定のとおり,水などの液中で切断加工を行う装置において,水槽などの加工槽内の液面(水位)を調節する装置(本件発明における「液位調整タンク」に該当する。)を,切断加工領域を除く領域(外側)に備えることは,本件出願日以前において周知であったこと,及び,アブレシブ切断装置においては,ノズルから噴射された研磨材を含む高圧水は水中でも減衰が少なく,ワークに衝突し加工を行った後の下流領域においても,かなりの衝撃加工エネルギーを保有しているものであることは本件出願日において周知であったこと(甲28,29,33)に照らすと,甲第7号証記載の発明において,切断方法としてアブレシブ切断を採用した際に,液位調整タンクなど損傷してはいけないものを,アブレシブジェットが直撃してしまう場所を避けて切断加工領域を除く領域(外側)に配置することは,当業者が容易に考えることであり,そのように考える動機付けがあるといえる。そして,甲第7号証記載の発明に関し,上記の構造とすることが技術的に困難であるとは認められない(甲7,19,30,32)ことからすれば,液位調整タンクを切断加工領域の下側から切断領域を除く領域(外側)に配置することは設計的な変更事項であるといえる。以上によれば,甲第7号証記載の発明において,切断方法としてアブレシブ切断を採用した際に,上記周知技術を適用して,相違点3に係る発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得たものであると認められる。\n

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平成24(行ケ)10305 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年07月31日 知的財産高等裁判所 

 進歩性違反無しとした審決が維持されました。
(1)ア 本件発明1と甲1発明とは,いずれも,被覆材を表面に設けた被加工物を,アシストガスを用いたレーザ光により加工するレーザ加工方法に関するものであり,両発明の技術分野は共通する(本件明細書の【0001】,甲1公報の【0001】)。また,本件発明1と甲1発明とは,レーザ加工中に,被加工物と被覆材との間にアシストガスが侵入して被覆材が剥離するのを防止するために,第1加工工程として,最終加工とは異なる加工条件により被覆材を処理する点でも共通する(本件明細書の【0002】〜【0008】,【0014】,【0050】,甲1公報の【0002】〜【0006】,【0008】,【0018】)。しかし,本件発明1は,被覆材をあらかじめ除去するものであるのに対し,甲1発明は,保護シート(被覆材)が剥離するのを防止するために,ワーク(被加工物)にあらかじめ保護シートを焼付けるものであり,この点において,両発明は相違する。甲1公報には,保護シートをあらかじめ除去することについては記載も示唆もなく,甲1発明の保護シートが剥離するのを防止するために,保護シートをあらかじめ除去することを動機付けるものはない。かえって,甲1公報には,保護シートがワーク上に貼\付されたままであることが望ましい(【0003】)が,保護シート付きワークにレーザビーム及びアシストガスを照射して切断加工を行うと,保護シートが剥離してしまうため,保護シートをワーク上に残すことを目的とするレーザによる切断加工は実際には行われていなかった(【0005】)ことが記載されている。このような記載に照らすと,甲1発明は,保護シートをあらかじめ除去してワークを露出させることは,望ましくないとの認識を前提とするものと解される。そうすると,甲1発明においては,保護シートをあらかじめ除去してワークを一定範囲にわたり露出させることは,保護シートが剥離するのを防止するためであるとはいえ,そもそも意図するところではないともいえる。
イ 一方,甲2公報には,表面を合成樹脂等の保護材で覆った状態の金属材に対して,レーザによる溶断加工を実施すると,保護材が金属材に溶着して表\面を汚すこと(甲2・1頁右下欄16行〜2頁左上欄8行),また,このような溶着を防止するために,低い出力のレーザ光エネルギで保護材を溶断した後,高い出力のレーザ光エネルギで金属部材を加工すること(同・特許請求の範囲)が記載されている。また,甲3公報には,ステンレスなどの金属からなる母材の表面に合成樹脂の被膜を付着させた材料を,レーザ光で切断する際に,これらを同時に切断すると,被膜が炭化した状態で母材の表\面に焼付いてしまうこと(甲3・1頁左下欄18行〜2頁左上欄2行),また,このような被膜の炭化を防止するために,弱いエネルギのレーザ光で被膜だけ切断してから,強いエネルギのレーザ光で母材を切断すること(同・特許請求の範囲)が記載されている。甲2公報及び甲3公報の上記記載によれば,被覆材を表面に設けた被加工物をレーザ光により加工する際に,被覆材が被加工物に溶着したり,被覆材が炭化して被加工物に焼付いたりするのを防止するために,低いエネルギのレーザ光で被覆材をあらかじめ除去した後,高いエネルギのレーザ光で被加工物を加工することは,周知技術であると認められる。しかし, 甲1発明は,ワークと保護シートとの間にアシストガスが流入して保護シートが剥離するのを防止するために,ワークにあらかじめ保護シートを焼付けるものであるのに対し,上記周知技術において,被覆材の除去は,被覆材が被加工物に溶着すること等を防止するために行われるものであり,被加工物と被覆材との間にアシストガスが侵入して被覆材が剥離するのを防止するために行われるものではない。そもそも,甲2公報及び甲3公報には,アシストガスについての記載はなく,アシストガスが被加工物と被覆材との間に侵入して,被覆材が剥離することについても何ら記載はない。そうすると,上記周知技術における「被覆材を除去する」ことと,甲1発明における「ワークに保護シートを焼付ける」ことは,相互に置換可能な手段であるとはいえないから,甲1発明において,ワークにあらかじめ保護シートを焼付けることに代えて,保護シートをあらかじめ除去する動機付けがあるということはできない。\n

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平成24(行ケ)10349 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年07月18日 知的財産高等裁判所

 進歩性無しとした審決が維持されました。
 刊行物1発明において,連通気孔の体積率を「少なくとも50体積%」に高める動機付けがないとはいえない。刊行物1には,砥石に形成される気孔の体積率に関し,「気孔形成用物質の粒径・・・があまり小さ過ぎると砥石の自生効果が少なくなり,一方,あまり大き過ぎると砥石が脆くなってしまうので好ましくない。又,砥石中に形成される気孔の体積率(気孔率)は約5〜50%であるのが好ましく,約10〜40%であるのがより好ましい。この体積率が上記範囲外であると,上述したと同様の理由により好ましくない。」との記載があり,気孔の体積率が50%を超えると,砥石が脆くなってしまうので好ましくないことが記載されていると認められる。しかし,補正発明の数値は50体積%を含むし,刊行物1の特許請求の範囲は,気孔の体積率が50%を下回る数値に限定していないから,刊行物1に記載された発明を全体としてみれば,気孔の体積率は50%を上回らないのが好ましいというにとどまるものであり,そこに上限値を規定する趣旨はなく,50%を超える体積率が除外されているとまではいえない。そして,上記のとおり,そもそも,気孔の体積率をどの程度とするかは,砥石の用途や使用態様のほか,砥粒及び結合材の材質や割合,砥石の各種特性と耐久性のバランス等も考慮して,当業者が適宜決定し得る事項であるといってよい。そうすると,砥石の特定の用途や使用態様の下で,砥粒及び結合材として特定の材質のものを特定の割合で用いる場合等においては,気孔の体積率が50%を超えると,砥石が脆くなることがあるとしても,砥石の用途や使用態様のほか,砥粒及び結合材の材質や割合等によっては,また,砥石の各種特性と耐久性をどのようにバランスさせるかによっては,50%以上の体積率を設定し得ることは,当業者にとって明らかである。以上によれば,刊行物1発明において,連通気孔の体積率を「少なくとも50体積%」に高める動機付けを肯定することができる。

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平成24(行ケ)10271 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年06月11日 知的財産高等裁判所 

 進歩性違反無しとした審決が維持されました。
 審決は,相違点1,3に係る本件発明1,6の構成は容易想到と判断したが,相違点2,4に係る本件発明1,6の構\成は容易不想到とした。原告は,この後者の審決判断を争っているので,相違点2,4に係る容易想到性についてみると,超音波モータと振動ジャイロとをカメラに同時に搭載する際に,振動検出素子の共振周波数と超音波モータが与える不要な振動の周波数とがともに超音波周波数域であるとしても,それらが重なる蓋然性が高く,重なる場合には振動ジャイロは誤出力してしまうという,それらの振動の周波数に関わる特有の課題が存在することについては,これを開示する証拠はない。そして,上記特有の課題を開示する証拠がない以上,それを解決するための手段を採用する動機付けがあるとは認められない。また,所定の帯域あるいは範囲を含め,超音波モータの共振周波数あるいは駆動周波数を,励振センサの共振周波数に関係した帯域に関連して設定することが,公知であったことを示す証拠もない。一般的に,関連する技術分野の発明や技術事項を組み合わせることは,当業者が容易に着想し得ることであるから,ともにカメラに用いられる甲10記載のような振動ジャイロや甲11記載のような超音波モータを,引用発明(甲4)のカメラに適用することを,当業者は着想し得るといえる。しかし,モータや振動を検出するセンサには様々な態様のものが存在しているのであって,超音波モータも多種多様に存在しており,甲11はその一例に過ぎず,また,圧電振動ジャイロも多種多様のものが存在しており,甲10はその一例に過ぎない。上記(3)に判示したとおり,甲10には,振動ジャイロを,超音波モータを備えたカメラに用いることの記載はなく,振動ジャイロ(振動検出素子)の共振の半値幅帯域と超音波モータの周波数制御範囲とを別の帯域に設定したことは何ら記載されておらず,また,上記(3)に判示したとおり,甲11には,励振された振動検出素子からなるセンサについては記載がなく,振動検出素子の共振の半値幅帯域と超音波モータの周波数制御範囲とを別の帯域に設定したことは記載されておらず,さらに,超音波モータがすでに備えられている引用発明に,甲11記載発明の超音波モータを適用しようとする動機があるとはいえず,超音波モータと振動ジャイロとをカメラに同時に搭載する際の特有の課題,解決手段,及びそれを採用する動機のいずれも公知とは認められないことを踏まえると,個別特定の公知技術である甲10記載発明と甲11記載発明とをともに適用することが,当業者にとって容易に想到し得ることであるとはいえない。原告が主張するように,甲10記載発明の振動ジャイロと甲11記載発明の超音波モータとをともに適用すれば,超音波モータの周波数制御範囲が振動ジャイロの1次と2次の共振の半値幅帯域に重ならないものとなり,上記相違点2に係る本件発明2の構成を満足することとなるが,甲10記載発明と甲11記載発明とを単に事後分析的に選択したに過ぎないといえる。したがって,引用発明において,上記相違点2に係る本件発明2の構\成とすることは,引用発明(甲4)並びに甲10記載発明及び甲11記載発明に基づいて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。相違点4に係る本件発明6の構成は,本件発明2において単に「振動検出素子の共振の半値幅帯域と別の帯域」と特定していたものを,本件発明6においては「振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間」と更に限定して特定したものに相当すると解される。よって,本件発明6のこの構\成も,当業者が容易になし得たものとすることはできない。

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平成24(行ケ)10335 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年06月06日 知的財産高等裁判所

 動機づけが無いとして、裁判所は、進歩性なしとした審決を取り消しました。
 甲2,3(周知例1,2)によれば,1)填料としての炭酸カルシウム及び/又は古紙由来の炭酸カルシウムが存在する製紙工程は周知のものと認められ,また,2)炭酸カルシウムが存在する製紙工程では,微生物が繁殖しやすいこと,3)微生物の繁殖により,微生物を主体とし填料等を含むスライムデポジットが生成され,紙に斑点が発生する等の問題を生じること,4)このような問題を防止するために,製紙工程水にスライムコントロール剤を添加し,微生物の繁殖を抑制し又は殺菌することは,いずれも周知の事項と認められる。しかし,上記の斑点は,微生物を主体とするスライムデポジットによるものであり,ニンヒドリン反応では陽性を示すもの(本願明細書【0008】,甲19)と考えられる。また,補正発明における炭酸カルシウムを主体とする斑点が,従来のスライムコントロール剤では,その濃度を高くしたとしても十分に防止できず,上記反応物によれば防止できるものであることも考慮すれば,上記の斑点は,填料を含むものではあるものの,補正発明における炭酸カルシウムを主体とする斑点とは異なるものと認めるのが相当である。周知例1,2にも,炭酸カルシウムが存在する製紙工程において,微量スライムが炭酸カルシウムを凝集させることにより,紙に炭酸カルシウムを主体とする斑点が発生すること,また,製紙工程水に上記反応物を添加することにより,このような斑点を防止できることについては記載も示唆もない。周知例1,2も,引用発明に係る方法を,炭酸カルシウムが存在する製紙工程において実施することにより,紙に発生する炭酸カルシウムを主体とする斑点を防止することを動機づけるものではない。以上のとおり,周知例1,2には,炭酸カルシウムが存在する製紙工程において,製紙工程水に上記反応物を添加することにより,紙に発生する炭酸カルシウムを主体とする斑点を防止できることについて記載も示唆もない以上,引用発明に係る方法を,炭酸カルシウムが存在する製紙工程において実施することにより,紙に発生する炭酸カルシウムを主体とする斑点を防止する動機づけは認められない。\n

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平成24(行ケ)10328 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年04月10日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、組み合わせる動機づけ無しとして取り消されました。
 本願発明は,上記特許請求の範囲及び本願明細書の記載によれば,飲食物廃棄物の処分のための容器であって,液体不透過性壁と,液体不透過性壁の内表面に隣接して配置された吸収材と,吸収材に隣接して配置された液体透過性ライナーとを備え,吸収材上に被着された効果的な量の臭気中和組成物を持つものである。本願発明は,上記構\成により,一般家庭において,ゴミ収集機関により収集されるまで,飲食物廃棄物からの液体の流出を防止し,腐敗に伴う不快な臭気を中和する,経済的なプラスチック袋を提供することができるものである。これに対し,引用発明は,上記引用例1(甲8)の記載によれば,厨芥など水分の多いごみを真空輸送する場合などに適用されるごみ袋に関するものであるところ,これらのごみをごみ袋に詰めて真空輸送すると,輸送途中で破袋により,ごみが管壁に付着したり,水分が飛散して他の乾燥したごみを濡らして重くするなどのトラブルの原因となっていたという課題を解決するために,水分を透過する内面材と,水分を透過させない表面材と,上記内面材と上記表\面材とに挟まれ水分を吸収して凝固させる水分吸収体との多重構造のシート材でごみ袋を構\成することにより,厨芥などのごみの水分を吸収して凝固させ袋内に閉じ込めるようにしたものである。
 ところで,上記引用例1(甲8)の記載等に照らすと,真空輸送とは,住宅等に設置されたごみ投入口とごみ収集所等とを輸送管で結び,ごみ投入口に投入されたごみを収集所側から吸引することにより,ごみを空気の流れに乗せて輸送,収集するシステムであって,通常,ごみ投入口は随時利用でき,ごみを家庭等に貯めておく必要がないものと解される。そうすると,引用発明に係るごみ袋は,真空輸送での使用における課題と解決手段が考慮されているものであって,住宅等で厨芥等を収容した後,ごみ収集時まで長期間にわたって放置されることにより,腐敗し,悪臭が生じるような状態で使用することは,想定されていないというべきである。これに対し,被告は,引用発明は,厨芥,すなわち,腐敗しやすく悪臭を発生することが想定されるごみを収容するごみ袋であり,腐敗臭,悪臭の発生を抑制すべき技術課題を内在すると主張する。しかし,上記のとおり,引用発明は,厨芥等を真空輸送に適した状態で収容するためのごみ袋であり,厨芥等を長期間放置しておくと腐敗して悪臭を生じるという問題点は,上記真空輸送により解決されるものと理解することができ,引用例1の「厨房内などに水切り設備を設置して事前に水切りを行えるなどの場合は,本ごみ袋の下部に水切り用孔6を穿設してもよく,この場合はより一層効果的にごみの水分を取り除くことができる」(甲8・段落【0008】)との記載からしても,引用発明が厨芥等から発生する腐敗臭,悪臭の発生を抑制すべき技術課題を内在していると解することはできない。
 以上のとおり,引用発明には,腐敗に伴う不快な臭気を中和するという課題がなく,引用発明に臭気中和組成物を組み合わせる動機付けもないので,本願発明と引用発明との相違点について,引用発明において,効果的な量の臭気中和組成物を吸収材上に被着して相違点に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは,引用例2記載の事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことであるとした本件審決の判断には誤りがある。

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平成24(行ケ)10284 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年03月27日 知的財産高等裁判所

 動機づけなしとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 上記1(1)イ 認定の事実によれば,引用例1記載の発明は,美肌作用やアトピー性皮膚炎,湿疹,皮膚真菌症,色素沈着症,尋常性乾癬,老人性乾皮症,老人性角化腫,火傷などの皮膚疾患の改善作用,発毛促進作用,発汗促進作用,消化液分泌促進作用,利尿作用,便通促進作用等の生体活動の改善や,人体機能の発現に関与する物質群の補給システムを中心とした生体活動の更なる改善手段(生体に有害な環境ホルモンなどの体外への排出を高める作用も含む。)を提供することを課題とし(【0005】,【0006】,【0010】),体内から体外に向かって形成された水の流れを媒体とした人体機能\の発現に関与する物質の能動的な移送を真の目的とする津液作用と,酸素,栄養などのエネルギーを中心とする補給の活性化作用である補血及び活血作用が,同時に促進されることが,人体にとって極めて有用であることから,津液作用を有する生薬のエッセンス及びその活性成分から選ばれる1種ないし2種以上と補血・活血作用を有する生薬のエッセンスから選ばれる1種ないし2種以上とを組み合わせて使用することにより,上記課題を解決するものであること(【0002】ないし【0004】,【0007】)が認められる。また,引用例1には,実施例においてシムノールサルフェート,ダイズイン等を含む健康食品で,環境ホルモンの排出が促進されたことが記載される(【0029】,【0033】)が,アルツハイマー病,加齢による認識記憶喪失,痴呆,喘息,心臓疾患,運動障害,運動麻痺及び筋肉の引きつり等に対する効果を示唆する記載はない。
一方,上記(1)ウ,エ 認定の事実によれば,引用例2ないし4には,大豆イソフラボン等が,アルツハイマー病,加齢による認識記憶喪失,痴呆,喘息及び心臓疾患等に効果があり,甲6には,コクダイズが運動障害,運動麻痺及び筋肉の引きつり等に効果があり得ることが開示されているといえる。しかし,引用例2は,COX-2,NFκB,ならびにCOX-2およびNFκBの両者の生合成阻害剤であるフラボン化合物を開示するもの,引用例3は,ダイズ,および,その他,クローバーなどの植物の成分であるイソフラボノイドを単離したものを,アルツハイマー型痴呆,および加齢に伴うその他の認識機能\低下を治療および予防するために使用することを特徴とする発明を開示するもの,引用例4は,イソ\フラボン,リグナン,サポニン,カテキン,および/またはフェノール酸を,栄養補給剤としてまたはより伝統的なタイプの食物中の成分として各自が摂取する便利な方法を提供する発明を開示するもの,甲6は,コクダイズの成分,薬効等を開示するものであって,いずれも引用例1記載の上記課題と共通する課題,とりわけ,生体に有害な環境ホルモンなどの体外への排出を高める作用について記載しているとは認められない。そうすると,引用例1に接した当業者は,引用発明に含まれるダイズインが,環境ホルモン排出促進ないしこれと関連性のある生理的作用を有することを予期し,そのような生理的作用を向上させるべく,津液作用を有する生薬のエッセンス及びその活性成分と補血・活血作用を有する生薬のエッセンスを組み合わせて使用することに想到するとは考えられるが,ダイズインが,環境ホルモン排出促進と関連性のない生理的作用を有することにまで,容易に想到するとは認められない。そして,当業者にとって,引用例2ないし4及び甲6に記載されるアルツハイマー病,加齢による認識記憶喪失,痴呆,喘息,心臓疾患,運動障害,運動麻痺及び筋肉の引きつり等に対する効果が,環境ホルモン排出促進ないしこれと関連性のある生理的作用であると認めるに足りる証拠はないから,当業者が,引用例1の記載から,ダイズインが,上記の各効果をも有することに容易に想到すると認めることはできない。
 イ これに対し,被告は,ダイズインのアグリコンであるダイゼイン等の大豆イソフラボンがアルツハイマー病,加齢による認識記憶喪失,痴呆,喘息及び心臓疾患の処置に有効であることが公知であり,ダイズインを有効成分とする大豆には,脳梗塞後の運動障害,運動麻痺,及び筋肉の引きつりに効果があり,また視力を良くする効果もあることが周知であることから,ダイズインを含む引用発明の組成物の具体的用途として,「強筋肉剤,抗脳梗塞後遺症剤,抗運動麻痺剤,抗喘息剤,抗視力減退剤,抗機能\性心臓障害剤,または,抗痴呆症剤」といったものをさらに特定することは,当業者が格別の創意なくなし得る旨主張する。しかし,上記のとおり,引用発明は,津液作用を有する生薬のエッセンス及びその活性成分と補血・活血作用を有する生薬のエッセンスとを組み合わせて使用することにより,課題を解決しようとするものであるから,引用例1に接した当業者が,引用発明の1成分にすぎないダイズインにことさら着目することの動機づけを得るとはいえない。そうすると,たとえ,引用例2ないし4及び甲6により,大豆イソフラボンないし大豆が被告主張の効果を有することが周知ないし公知といえるとしても,当業者において,引用発明から出発して,当該周知ないし公知の知見を考慮する動機づけがあるとはいえず,相違点2に係る本願発明の構\成(「強筋肉剤,抗脳梗塞後遺症剤,抗運動麻痺剤,抗喘息剤,抗視力減退剤,抗機能性心臓障害剤,または,抗痴呆症剤」)に想到することが容易であるとはいえない(まして,本願発明は,引用発明の組成物に加えてクルクミンを含むものであるところ,そのような3成分を含む組成物について,強筋肉剤等の用途が容易想到であることの理由も明らかでない。)。\n

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平成24(行ケ)10312 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年03月29日 知的財産高等裁判所

 無効理由(進歩性違反)無しとした審決が維持されました。
 上記ア(ア) 認定の事実によれば,本件発明1は,液体インク収納容器の状態に関する報知をLEDなどの発光手段によって行う構成で用いられる液体インク収納容器,液体インク供給システムおよび液体インク収納カートリッジに関し,配線数を削減するためにはバス接続といった共通の信号線の構\成が有効であるが,そのような共通の信号線を用いる構成では,インクタンクもしくはその搭載位置を特定することができないという問題があることから(【0001】,【0009】),複数のインクタンクの搭載位置に対して共通の信号線を用いてLEDなどの表\示器の発光制御を行い,インクタンクなど液体インク収納容器の搭載位置を特定した表示器の発光制御をすることを可能\とすることを目的(解決課題)とした発明であること(【0010】),記録装置の本体側の接点(コネクタ)と接続する液体インク収納容器であるインクタンクの接点(パッド)を介して入力される信号と,そのインクタンクの色情報とに基づいて発光部の発光を制御するので,複数のインクタンクが共通の信号線によってその同じ制御信号を受け取ったとしても,色情報に合致するインクタンクのみがその発光制御を行うことができ,インクタンクを特定した発光部の点灯など発光制御が可能となり,例えば,キャリッジに搭載された複数のインクタンクについて,その移動に伴い所定の位置で順次その発光部を発光させるとともに,上記所定の位置での発光を検出するようにすることにより,発光が検出されないインクタンクは誤った位置に搭載されていることを認識でき,ユーザに対してインクタンクを正しい位置に再装着することを促す処理をすることができ,インクタンクごとにその搭載位置を特定することができるという効果を奏するものであること(【0019】)が認められる。すなわち,本件発明1は,共通バス接続方式のような共通の信号線を用いた場合でも,インクタンクがインク色に従ってキャリッジの所定の位置に搭載されているかを識別することを目的(解決課題)とした発明であるといえる。
(イ) 一方,甲1発明の内容は,上記第2の3(2)ア のとおりであり(当事者間に争いがない。),共通バス接続方式の下で,液体インク収納容器が誤りなく装着されているかを検出するための機構を備えているものである。しかし,上記ア(イ) 認定の事実によれば,複数色のインクカートリッジを備えるカラープリンタにおいて,インクカートリッジの交換時における誤装着を防止するため,インク色毎にインクカートリッジの外形形状を変更し,誤ったインクカートリッジが物理的に装着できないようにする技術や,同一の外形形状を有するインクカートリッジを用い,1個のインクカートリッジのみが脱着可能な開口部を有するカバーをプリンタ上に設け,交換されるべきインクカートリッジを開口部まで移動させて,交換されるべきインクカートリッジのみの脱着を許容する技術が知られるところ,前者の技術には,リサイクル効率が悪い等の問題があり,後者の技術では,交換されるべきでないインクカートリッジの誤った取り外しは防止できても,装着されたインクカートリッジが正しいインクカートリッジであるか否かまでは検出できないという問題があったことから,甲1発明は,外形的な識別形状を用いることなく,交換時における誤装着や交換されるべきでないカートリッジの誤った取り外しを防止することを目的とするものであることが認められる。すなわち,甲1発明は,(1回につき)1個のインクカートリッジのみが脱着可能\であることを前提として,交換時における誤装着や交換されるべきでないカートリッジの誤った取り外しを防止することを目的したものと認められる。そして,同発明の記憶装置は,クロック信号端子CT,データ信号端子DT,リセット信号端子RTと接続されており,データ信号端子DTを介して入力されたデータ列に含まれる識別データとメモリアレイ201に格納されている識別データとが一致するか否かを判定するのであって,電気配線を通じて液体インク収納容器からインク色等に係る情報(信号)を取得するものにすぎない。そうすると,甲1発明は,「共通バス接続方式のような共通の信号線を用いた場合でも,インクタンクがインク色に従ってキャリッジの所定の位置に搭載されているかを識別する」という本件発明1と同様の解決課題を有するものではなく,また,光を利用して液体インク収納容器の識別を行う本件発明1の構成は開示も示唆もされていないというべきである。なお,甲1には,搭載されているインクカートリッジCAに対応する数だけキャリッジ101上にLED18が備えられた実施例が開示されているが,このLEDは,交換の対象となるインクカートリッジの搭載位置をユーザに視覚的に指し示すにすぎず,その機能\は受動的なものであり,本件発明1のように,液体インク収納容器の識別を行うために動作するものではない。したがって,甲1に接した当業者が,共通バス接続方式のような共通の信号線を用いた場合でもインクタンクがインク色に従ってキャリッジの所定の位置に搭載されているかを識別できるようにするために,甲1発明に,他の公知技術を組み合わせようとする動機付けを得るとは認められない。
(ウ) また,上記ア(ウ)ないし(オ)認定の事実に照らすと,以下のとおり,甲2,甲3,甲5のいずれにも本件発明1の上記解決課題と同様の解決課題は開示ないし示唆されていない。すなわち,甲2記載の発明は,インクカートリッジの誤装着を電気的に検出でき,こわれにくく,作製費用が少ない検出手段を有するインクジェット記録装置を提供することを目的とし,インクジェット記録装置にインクカートリッジが装着されると,インクジェット記録装置は,インクカートリッジに設けられている導体または抵抗体があらかじめ定められたものであるか否かを電気的に検出し,導体または抵抗体があらかじめ定められたものである場合は,印字制御を実行するが,導体の位置や抵抗体の抵抗値が異なっている場合は,警告を発するというものであり,共通バス接続方式のような共通の信号線を用いた場合を前提としたものではなく,インクタンクがインク色に従ってキャリッジの所定の位置に搭載されているかを識別することを意図したものでもない。甲3記載の発明は,インクタンクに配線などを引き回したりする必要のない,簡易な構成で,インクタンク内の情報の検出などの外部との双方向の情報のやり取りを非常に効率良く行える立体形半導体素子を配したインクタンク,および該インクタンクを備えたインクジェット記録装置を提供することを目的とし,立体形半導体素子は,外部とのやり取りを行うものである。伝達先はインクジェット記録装置のみでなく,特に光,形,色や音などの場合は人の視覚や聴覚に伝達してもよいとの記載があり(【0049】),立体形半導体素子からの情報伝達手段として,光を用いることは示されているといえるが,これは,外部に情報を伝達する手段として光を用いることが開示されているにすぎず,光の受光結果に基づいて液体収納インク容器の搭載位置を検出するという相違点1に係る本件発明1の構\成が示されているとはいえない。甲5記載の発明は,光を用いてインク残量やインク色を検出する構成を有するが,同発明は,発光体と受光体とで構\成される光学的検出手段を,インク容器の一部位を略鉛直方向から挟んで配置し,インク容器の一部位およびインク容器中のインクに光を透過させて,その強弱や透過率によって,インク容器内のインク量やインク色を検出するというのであるから,相違点1に係る本件発明1の構成を有するものではない。
(エ) 以上のとおり,相違点1に係る本件発明1の構成は,甲5記載の技術事項に,甲3記載の技術事項を組み合わせることにより,当業者であれば容易に想到できる,甲1発明に甲5,甲3記載の技術事項を組み合わせる動機付けもあるとの原告らの主張は理由がない。\n

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平成24(行ケ)10245 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年03月25日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が取り消されました。理由は、結論に至る論理付けが不十分というものです。
 審決は,相違点4について,周知例4〜6の記載からみて,フェノールと3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンやアセトン等のカルボニル化合物を反応させてビスフェノール類を製造する技術において,分離された濾液を製造目的化合物であるビスフェノール類を含んだ状態で上記「反応」を行う工程に「循環」させることが周知であることを前提として,引用発明における「再結晶ろ液を繰り返し使用する」工程において,再結晶濾液の少なくとも一部を,製造目的物である「1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン」を含む状態で,フェノールと3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンとを反応させる工程に循環させることは,当業者が容易になし得たものであると判断する。この点,確かに,上記周知例4ないし6,乙2によれば,一般に,化学物質の製造工程において,目的物質を主に含む画分以外の画分にも目的物質や製造反応に有用な物質が含まれる場合には,それをそのまま,あるいは適切な処理をした後に製造工程で再利用して無駄を減らすことは周知の技術思想であって,実際,フェノールとカルボニル化合物からビスフェノール類を製造する場合においても,さまざまな具体的製造方法において,途中工程で得られた有用物質を含む画分が再利用されているものと認められる。
しかし,ある製造方法のある工程で得られた,有用物質を含む画分を,製造方法のどの工程で再利用するかは,製造方法や画分の種類に応じて異なるものと認められる。この点,引用発明においては,再結晶濾液を再利用できる工程として,フェノールと3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンとを反応させる前反応及び後反応のみならず,中和後の結晶化工程や再結晶工程が想定されるところ,審決には,フェノールと3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンとを反応させる工程に循環させるという構成に至る理由が示されていない(なお,乙2を参照してもこの点が\n明らかになるとはいえない。)。
これに対し,被告は,周知例4〜6が引用発明と目的物質や反応に有用な物質が同様であることから,引用発明における「再結晶ろ液を繰り返し使用する」工程において,再結晶濾液の少なくとも一部を,製造目的物である「1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン」を含む状態で,フェノールと3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンとを反応させる工程に循環させることは,当業者が容易になし得たものであると主張する。しかし,目的物質や反応に有用な物質が同様であったとしても,具体的な製造方法が異なれば,再利用すべき画分も,その再利用方法も異なり,それぞれの場合に応じた検討が必要となるから,被告の上記主張は採用することができない。
(3) 以上のとおり,引用発明に周知例4〜6に示されるような周知技術を適用することにより,相違点4に係る構成に容易に想到できたとはいえず,審決の相違点4に係る容易想到性判断には誤りがある。\n

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平成24(行ケ)10262 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年03月21日 知的財産高等裁判所

 ある処理については周知で有っても、温度条件までは知られていなかったとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 本願発明の解決しようとする課題は,ガラスを溶融し,純化しかつ均質化する方法を,白金からなる構成部分を使用する場合でも酸素リボイルが防止されるように構\成することである(本願明細書である本件出願の公開特許公報(甲7)【0004】)のに対して,引用発明の解決しようとする課題は,溶解に高温度(特に1700℃以上)を要するガラスを,不純物や泡・異物等の無い高品質なガラスとして製造する技術を提供することであり(甲1【0006】),本願発明と引用発明とでは,解決しようとする課題が相違する。また,引用発明は,上記のとおり,粗溶解したガラスを高周波誘導直接加熱により直接加熱して,溶解・均質化・清澄するものであるが,清澄は,ガラス中に発生する誘導電流に伴う強制対流混合によりなされるものであり(甲1【0013】),一種の物理的清澄と解される(乙4)。引用文献1には,溶融ガラスに清澄剤を添加して清澄ガスを発生させて清澄すること,すなわち化学的清澄(甲4,乙4)については記載も示唆もない。引用文献1は,物理的清澄を行う引用発明において化学的清澄を併用する動機付けがあることを示すものとはいえない。また,引用発明は,1850℃で清澄が行われるものであるが,以下のとおり,このような高温において化学的清澄を行うことが通常のこととはいえず,また,このような高温で使用できる清澄剤が知られているともいえない。引用文献4には,清澄剤としてFe2O3,SnO2等を用いることが記載されているが(【0012】,【0013】),清澄は1200〜1500℃で行われている(【0018】)。特開平11−21147号公報(甲5)には,清澄剤としてFe2O3等を用いることが記載され,1600℃を超える温度でも清澄剤としての効果が発揮されることが示唆されているといえるが(【0013】〜【0015】),それでも高々1600℃を超える温度であり,実施例では1600℃で溶融しているにすぎない。特開平10−45422号公報(甲6)には,清澄剤としてFe2O3,SnO2等を用いることが記載され(【0025】),処理の対象となる無アルカリガラスは,粘度が102ポイズ以下となる温度が1770℃以下であることが記載されている(【0029】)ものの,実施例では1500〜1600℃で溶解しているにすぎない。また,甲4〜6に記載の各清澄剤が,1850℃での清澄においても清澄剤として使用できることが当業者にとって自明のことともいえない。以上のとおり,1850℃という高温において化学的清澄を行うことが通常のこととはいえず,また,このような高温で使用できる清澄剤が知られているともいえない以上,1850℃という高温において物理的清澄が行われる引用発明において,化学的清澄を併用する動機付けがあるとはいえない。以上のとおりであるから,引用発明において,引用文献4に記載されるFe2O3,SnO2等を清澄剤として用いる化学的清澄を併用して,「溶融物内に少なくとも0.5重量%の割合を有する高い電子価段階を持つ多価のイオンが存在する」ものとすることは,当業者が容易に想到し得ることとはいえない。被告は,溶融ガラスを清澄する際に,清澄剤を添加することは化学的清澄として当業者にとって周知であり,物理的清澄と化学的清澄とは相乗的効果が期待できることから,1850℃で物理的清澄を行う引用発明において,清澄剤として引用文献4の「Fe2O3」を0.01〜2.0重量%添加して化学的清澄を行うことは,当業者が容易になし得ることであると主張する。しかし,化学的清澄が当業者にとって周知であるとしても,上記のとおり,1850℃という高温において化学的清澄を行うことが通常のこととはいえず,また,このような高温で使用できる清澄剤が知られているともいえない以上,1850℃という高温において物理的清澄が行われる引用発明において,化学的清澄方法を併用する動機付けがあるとはいえない。

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平成24(行ケ)10278 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年03月06日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、動機づけ無しを理由に取り消されました。
 すなわち,発明Aは,「『不織布21およびフィルタ本体22からなる交換用フィルタ23』の交換時期になったとき,『不織布21およびフィルタ本体22からなる交換用フィルタ23』のみを交換してこれを廃棄するタイプ」であるから,フィルター材交換タイプであって,このフィルター材交換タイプにおいて,交換用フィルタを換気扇又はレンジフードに取付けた状態では,汚れの付着状態を正確に判定するのが困難であるということを解決課題とし,フィルタ本体の所定位置に,使用状態に応じて目視による識別性が変わる不織布21(インジケータ)を設けることを解決手段とした発明であるということができる。ウ上記ア,イからすると,発明Aは,フィルター材のみを廃棄するフィルター材交換タイプの換気扇フィルターであって,フィルター材とフィルター枠を共に廃- 26-棄する全部廃棄タイプの本件発明1とはタイプが異なる上,両発明は,解決課題及びその解決手段も全く異なるものである。そして,発明Aは,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターについて,交換用フィルタの交換時期になったとき,フィルタ本体の汚れの程度を,フィルタを通気口から取り外すことなく簡単に判定することができることを特徴とするものであって,引用例1の記載からしても,これに接した当業者が,発明Aのフィルター材交換タイプを本件発明1の全部廃棄タイプに変更しようとする動機付けや示唆を得るとはいえない。また,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターである発明Aにおいて,全部廃棄タイプの換気扇フィルターである本件発明1が解決課題としている「通常の状態では強固に接着されているが,使用後は容易に両者を分別し得るようにして,素材毎に分離して廃棄することを可能すること」と同様の解決課題が当然に存在するともいえない。そうすると,全部廃棄タイプの換気扇フィルターを使用することが周知の事項であって(この点は原告らも争わない。),物品を分別(分離)して廃棄すること自体,日常生活において普通に行われていることであったとしても,本件発明1は,発明A及び上記周知の事項から容易に想到し得るものとはいえないし,使用した後,廃棄する際に,水に浸漬すれば,金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とを手指で容易に剥離することができ,金属と不織布とを分別廃棄することができるという本件発明1の作用効果は,発明Aの及び上記周知の事項から容易に予\測できるものともいえない。したがって,発明Aについて,全部廃棄タイプの換気扇フィルターにすることは,当業者であれば容易になし得ることであり,その際,不織布製フィルター材と金属製フィルター枠を分離することができる全部廃棄タイプの換気扇フィルターとし,不織布製フィルター材と金属製フィルター枠を分離(分別)して廃棄することは,当業者であれば適宜行う設計事項であるということができるとした審決の判断は誤りであり,これを前提とした本件発明1に関する容易想到性の判断も誤りである。
 エ これに対し,被告は,引用例1に記載されるフィルター材交換タイプの換気扇フィルターとは,フィルター材をフィルター枠ごと取り外した後,フィルター枠からフィルター材を取り外して廃棄するものであり,全部廃棄タイプの換気扇フィルターと引用例1記載のフィルター材交換タイプの換気扇フィルターは,両者ともにフィルター材をフィルター枠ごと取り外すという点で一致するところ,原告らは,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターの定義を「フィルター枠を備え付けたままとしフィルター材のみを廃棄するものである」としており,この定義は,引用例1の記載とは異なっており,誤りであると主張する。しかし,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターも全部廃棄タイプの換気扇フィルターも,フィルター材をフィルター枠ごと取り外すことができる点では一致するが,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターに関する原告らの上記定義の趣旨は,「備え付けられたフィルター枠はそのまま使用し,フィルター材のみを廃棄する」というものであり,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターと全部廃棄タイプの換気扇フィルターとでは,フィルター材のみを廃棄するかフィルター枠をフィルター材と共に廃棄するかという点で相違する。そうすると,発明Aが,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターであって,本件発明1とはタイプが異なる上,解決課題及びその解決手段も本件発明1とは異なることに変わりはなく,上記ウの判断は左右されない。よって,被告の主張は採用できない。

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平成24(行ケ)10221 審決取消請求事件  特許権 行政訴訟 平成25年02月27日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反なしとした審決が、動機づけ有りとして取り消されました。
 引用発明1の洗浄剤混合物は,グルタミン酸二酢酸塩類,グリコール酸塩,陰イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤を含んでおり,本件発明1の洗浄剤組成物と組成において一致し,かつ,各成分量は,本件発明1において規定された範囲内である。このように,引用発明1の洗浄剤混合物は,本件発明1の規定する3つの成分をいずれも含み,かつ,その成分量も本件発明1の規定する範囲内であることに照らすと,単に,グリコール酸ナトリウムが主成分の一つであると規定したことをもって,容易想到でなかったということはできない。この点,被告は,甲1文献では,グリコール酸ナトリウムは,洗浄剤の有効成分と認識されず,精製して除去されるべき不純物として記載されているのであるから,本件発明1の相違点1に係る構成は,容易想到ではないと主張する。確かに,仮に,本件発明1の洗浄剤組成物が引用発明1と対比して異なる成分から構\成されるような場合であれば,両発明に共通する成分である「グリコール酸ナトリウム」が,単なる不純物にすぎないか否かは,発明の課題解決の上で,重要な技術的な意義を有し,容易想到性の判断に影響を与える余地があるといえる。しかし,本件においては,前記のとおり,本件発明1と引用発明1とは,その要素たる3成分が全く共通するものであるから,「グリコール酸ナトリウム」が単なる不純物ではないとの知見が,直ちに進歩性を基礎づける根拠となるものではないといえる。
(イ)被告の付加的な主張について
 被告は,相違点2については容易想到ではないとも主張する。しかし,被告の上記主張は,以下のとおり,採用することはできない。甲1文献には,同文献における金属イオン封鎖剤組成物の封鎖作用は,通常の洗浄剤媒体のアルカリ性のレベルに相当するpH8〜11において最大であることが確認された旨の記載があり,実施例3では,pH10のアンモニア性緩衝液において,甲1文献における金属イオン封鎖剤組成物の効果が確認されている。そうすると,たとえ上記pH8〜11に関する記述が界面活性剤を含む洗浄剤混合物について記載したものではないとしても,甲1文献の記載から,上記金属イオン封鎖剤組成物を含有する引用発明1の洗浄剤混合物においても,pH8〜11において洗浄作用が最大になると理解することは,容易に想到できる事項である。そして,このpHの数値範囲は,本件発明1におけるpH10〜13と,pH10〜11において重なっている。したがって,甲1文献に接した当業者が,その洗浄能力が高まるように調整して,引用発明1のpHを10〜13にするのは,容易であるといえる。よって,この点に関する審決の判断に誤りはない。\nエ 以上のとおり,審決は,相違点1を本件発明1と引用発明1の相違点であると認定した上で,相違点1が容易想到でないとした判断に,誤りがある。

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平成23(ネ)10087 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成25年03月05日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反なしとした審決が、動機づけ有りとして取り消されました。
 上記乙第1,第8,第11号証の1ないし5によれば,交通事故の発生前後の所定時間にわたって車両の挙動に係る情報を収集,記録すること,車両に設けられた加速度センサが検出する加速度が所定の閾値を超えるか否かやエアバッグ作動信号の有無に代えて,車両の加速度等が所定の閾値を超えたか否かによって交通事故が発生したか否かを判定する程度の事柄は,本件優先日当時における車両の挙動に係る情報を収集,記録する装置の技術分野の当業者の周知技術にすぎないものと認められる。本件訂正発明1にいう「特定挙動」は前記のとおり「事故につながるおそれのある危険な操作に伴う車両の挙動」であって交通事故の発生を前提とするものではない(交通事故が発生しない場合も含む)が,本件訂正発明1においても,例えばセンサ部から得られる角速度等のデータが所定の閾値を超えたか否かによって「特定挙動」の有無が判定されるから(本件訂正明細書の段落【0030】,【0034】,【0050】,図2,3等),装置の機能の面に着目すれば,本件訂正発明1において「特定挙動」発生前後の所定時間分の情報を収集,記録する構\成は,上記周知技術において「交通事故」発生前後の所定時間分の情報を収集,記録する構成と実質的に異なるものではない。加えて,上記周知技術と引用発明1とは,属する技術分野が共通し,前者を後者に適用するに当たって特段障害はないから,本件優先日当時,かかる適用を行うことにより,当業者が本件訂正発明1,2にいう「特定挙動」の発生前後の所定時間分の車両の挙動に係る情報を収集,記録する構\成に想到することは容易であるということができる。以上のとおり,乙第6号証記載の引用発明1に,「特定挙動」の発生前後の車両の挙動に係る情報を収集する条件を記録媒体に記録,設定する乙第2号証記載の発明と,「特定挙動」に相当する一定の契機(交通事故等)の発生前後所定時間分の車両の挙動に係る情報収集をする乙第1,第8,第11号証の1ないし5記載の周知技術を適用することにより,本件優先日当時,当業者において,相違点Aに係る構成に容易に想到することができたというべきであり,本件訂正発明1は進歩性を欠く。
3 本件訂正後の請求項15の本件訂正発明2と乙第6号証記載の引用発明2とは,移動体の挙動を特定挙動と判定して当該挙動に関わる情報が記録された記録媒体からその記録情報を読み出す処理,読み出した情報から当該移動体の操作傾向を解析する処理をコンピュータ装置に実行させるためのディジタル情報が記録された,コンピュータ読取可能な記録媒体である点で一致し,本件訂正発明2が,特定挙動の発生前後の挙動に関わる情報を所定時間分収集するための収集条件を記録媒体に設定する処理をコンピュータ装置に実行させるものであるのに対して,引用発明2は,そのようなものでない点(相違点B)で相違することが認められる。乙第3号証は,自動車の操作に関するイベント(事象)を記録する自動車レーダシステムに関する発明に係る文献であるところ,段落【0008】,【0018】,【0043】,【0047】によれば,上記レーダシステムに用いる自動車用イベント(事象)記録装置(ERA)において,コンピュータ装置及び着脱可能\なRAMカードを用い,前方間隔,警告閾値や,自動車の電子制御システムを介してセットされるその他のパラメータを設定する発明,すなわちRAMカードに記録されているパラメータを変更し,変更されたパラメータをRAMカードに再度記録し,その後変更されたパラメータをERAに適用する発明が記載されているということができる。そして,上記発明は,車両の挙動に関する情報を収集,記録する装置に関するもので,引用発明2と技術分野が共通するし,コンピュータ装置に処理を実行させて,着脱可能なRAMカード等の記録媒体に記録されているパラメータを変更し,変更されたパラメータをRAMカードに再度記録し,その後変更されたパラメータを上記収集・記録装置に適用する程度の事柄であれば,事故分析に有用な情報を記録するブラックボックス的機能\を有する,車両の挙動に係る情報の記録装置(乙3の段落【0001】〜【0007】)とは不可分のものではない。したがって,乙第6号証や乙第2号証に接した当業者であれば,「スピードの出し過ぎや急発進・急制動の有無乃至その回数を予め設定された基準値を基に自動判定し,また走行距離を用途別(私用,公用,通勤等)に区分して把握してドライバーの運転管理データを得るシステムを提供する」こと等を技術的課題とする引用発明2に,乙第3号証記載の発明を適用する動機付けがある。\n

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平成24(行ケ)10205 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年02月28日 知的財産高等裁判所

 動機づけなし、阻害要因有りとして進歩性なしとした審決が取り消されました。
 本願発明は,喫煙以外の手段で喫煙の満足感を与えることを目的として,ニコチンをスプレーにより専ら口腔粘膜経由で取り込ませるための液体医薬製剤であって,唾液中のニコチンが優先的に吸収される形態である遊離塩基に保つことを可能とするために薬剤自体をアルカリ性化することにより,ニコチンの急速な経口腔粘膜取り込みを実現するものである。(イ) 他方,前記2(1)によれば,引用発明1は,本願発明と同様の目的を有する液体薬剤に係る発明ではあるが,単にニコチンを摂取するだけではなく,喫煙という行為を再現する方法でニコチンを摂取させることを意図しており,喫煙時と同様に,使用者の好みに応じてニコチンの含有量を選択した上で,口腔粘膜,鼻腔粘膜,肺などから吸入されるものである。引用発明1において,薬剤は様々なニコチン含有量のアンプルとして提供され,使用者が好みの銘柄のたばこに対応するニコチン含有量のアンプルを選択し,好みの方法により吸入するものであるから,各アンプル中の薬剤は,口腔粘膜,鼻腔粘膜及び肺などの吸入経路のいずれにも対応できる液体であって,ニコチン含有量についてのみ,多様性を有するものということができる。
イ 引用発明1に引用発明2及び3を組み合わせる動機付けについて (ア) 引用例2(甲2)は,経皮ニコチンシステム及びニコチンの経粘膜投与のためのシステムに係る文献であるところ,同文献には,口腔内でのアルカリ環境がニコチンの頬側吸収を促進することが記載されている。(イ) 引用例3(甲3)は,ニコチン含有流動物質を含む口経投与用カプセルに係る文献であるところ,同文献には,カプセルの内容物以外で重要なのは,ニコチンの吸収速度を左右する溶液のpHであり,ニコチン溶液のpHが6ないし10,好ましくは7ないし9,特に6ないし8の範囲が好ましいことが記載されている。(ウ) 上記(ア)及び(イ)によれば,引用例2及び3には,口腔粘膜からのニコチン吸収がアルカリ環境で促進されることが開示されているということができる。しかしながら,引用発明1は,使用者の好みに応じて,口腔粘膜のみならず鼻腔粘膜や気道などからもニコチンが吸入されることを念頭においた薬剤であるから,口腔粘膜からの吸収を特に促進する必要性を認めることはできないし,引用例1には,口腔粘膜からの吸収を特に促進させる点に関する記載や示唆も存在しない。したがって,引用発明1に,引用発明2及び3を組み合わせることについて,動機付けを認めることはできない。
ウ 阻害事由について
・・・
(カ) 以上によると,本願優先日当時,鼻腔や肺に投与されるニコチン溶液は通常pH5ないし6程度の酸性であって,ニコチンが遊離塩基になりやすいアルカリ性では,生理的に悪影響があることが周知であったということができる。したがって,引用発明1の薬剤をアルカリ性化することには,阻害事由が認められる。

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平成24(行ケ)10199 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年02月14日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 引用文献2には,ユーザ自身が作成した音声,画像(静止画),動画,テキスト等を含むコンポーズドメディアを,インターネットを介して相手に送信するグリーティングカード(カードページ)に盛り込むことができる旨が記載され,引用文献3でも,ユーザが作成した画像や音楽のデータ(ファイル)をインターネットを介して相手に送信するデジタルポストカードに盛り込むことができる旨が記載されているから,審決が認定するとおり,本件優先日当時,サーバを用いてイメージデータを第三者と共用するサービスにおいて,ユーザのコンピュータに記憶されているデータをサーバに記憶させるようにすること,またかかるデータをサーバで運用されるデジタルのポストカード(電子情報で構成され,ネットワークを介して送受信されるポストカード)で利用できるようにする程度の事柄は,当業者の周知技術にすぎなかったと認められる。そうすると,本件優先日当時,引用文献1記載発明に上記周知技術を適用することにより,当業者において相違点2を解消することは容易であったということができ,この旨をいう審決の判断に誤りはない。
 この点,原告は,引用文献1のサービスは美しい料理の写真を送ることを目的としており,サービス提供者側の装置が送信コンピュータから料理の写真を受信する構成に改める動機付けがないなどと主張する。しかしながら,引用文献2において既存の画像(ファイル)に加えてユーザが保有する画像ファイルをサービス提供者のサーバに送信し,後者の画像(ファイル)もデジタルのポストカードで利用できるようにして,ポストカード作成の自由度,サービスの利便性を高めることが記載されているように,ユーザの画像(ファイル)も利用可能\とすることでポストカード作成の自由度,サービスの利便性を高めることは当業者の常識に属する事柄である。したがって,引用文献1に接した当業者において,サービス提供者側の装置が送信コンピュータから料理の写真を受信する構成に改める動機付けに欠けるところはない。仮に引用文献1のサービスが美しい料理の写真を盛り込んだデジタルのポストカードの提供を長所の一つにしているとしても,当業者が引用文献1の料理の写真をユーザのコンピュータから送信(アップロード)される写真一般に改める上で阻害事由とまではならず,当業者にとってかように構\成を改めることは容易である。また,引用文献1ではユーザがメールアドレスやメッセージの入力欄に文字情報(テキスト)を入力したり,画像を選択したりして情報(データ)をサービス提供者側の装置に送信するが,前記のとおりの周知技術を引用文献1記載発明に適用したときにユーザのコンピュータからサービス提供者側の装置(サーバ)に送信されることになるのは,文字情報等に止まらず,画像等のデータ(ファイル)が含まれることが明らかである。結局,相違点2に係る構成に当業者が想到することが容易でないとする原告の主張は採用できない。\n

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平成24(行ケ)10198 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年02月07日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反無しとした審決が維持されました。理由は動機づけ無しです。
 本件明細書の前記2(1)エの記載によれば,本件発明1においては,袋本体の前側と後ろ側の対向する頂部シール部同士又は底部シール部同士を,頂点の接着部分と連続的又は不連続的に接着することによって,袋体の頂部側又は底部側に左右一対の吊り下げ部を形成していることから,内容物を充填した袋体の重量を支えるために,接着される頂部シール又は底部シールを構成する三角形状のフィン部に強度が求められることは当然であって,その際,三角形状のフィン部において対向する袋本体の内面同士が,閉鎖シール部の接着部分と連続的に接着され,また,全面的にではなく,部分的ないし断続的に接着されている構\成は,吊り下げ部の機能を向上させるために有用であることは,当業者にとって自明である。したがって,本件発明1においては,吊り下げ部を形成するためにフィン部の内面同士を接着する構\成が特定されているものである。
イ 引用発明の吊り下げ部について
他方,引用発明は,袋体の上縁を構成する各シール部の外側のフィルム及びガセット折込体については,開口以外の部分についてシールすることが記載されていないだけでなく,そもそも,不要の構\成と理解される。また,仮にその不要の構成が残されているとしても,フィルム及びガセット折込体のコーナの部分は内袋の直方体の上面上に沿うとされているから,吊り下げのために,不要な構\成をあえて残し,さらに直方体の上面に沿わない構成として,吊り下げ用の空間を形成することは,引用発明における阻害要因となる。また,引用発明では,内容物を注入した後に内袋のみを運搬するようなことが想定されておらず(【0014】【0026】),内袋を吊り下げて運ぶための構\成を採用する動機付けがない。
ウ 引用例2,引用例4等の吊り下げ部について
(ア) 引用例2記載の発明は,非熱接着性外面層と熱接着性内面層を有する本体フィルムと該各折込みフィルムの上,下縁部の近傍に設けた透孔は,一体不可分の構成である。また,そのような構\成である以上,袋体の上縁の全体を接着するという構成を採用する選択肢は採り得ない。他方,引用例4(図7,8),周知例1(図23),周知例2(図1〜3)の頂部シールはいずれも頂部の全体をシールするものであることが,少なくとも各図面の記載に照らして明らかである。そうすると,引用例2と,引用例4等とは,頂部シールの構\成を異にするから,接着位置をいずれとするかを設計事項であるということはできず,また,引用例2において,引用例4等の頂部シールの構成を参酌する余地はない。したがって,引用例2について,引用例4等をどのように参酌しても,吊り下げ用に用いることは導き出せない。\n

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平成24(行ケ)10168 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年01月30日 知的財産高等裁判所

 動機づけまたは示唆がないとして、進歩性なしとした審決を取り消しました。
   ア 上記(1)ア 認定の事実によれば,本願補正発明は,「皮内注射を行うのに使用する皮下ニードルアセンブリであって,薬剤容器に取り付け可能なハブ部分と,前記ハブ部分によって支持され,前記ハブ部分から突出する前端を有する中空本体を備えた皮下注射用の針,・・・前記針の前端の方に予\め選択された距離だけ突出するリミッタ部分と,を具え,・・・前記針の前端は,動物の皮膚を突き刺すことができる量を前記リミッタ部分が制限するように,予め選択された距離だけ皮膚接触面を越えて突出している」との構\成を有すること,皮下注射針は各皮膚層と皮下組織を貫通して筋肉組織内に突き刺さるが,或る状況下では,針が真皮層を越えて突き刺さることのないように皮内注射を行なうことが望ましいこと,皮内注射を行なう技術の一つとして,Mantoux 法が知られているが,比較的複雑で,注射を行なう医療専門家や患者に熟練が必要であり,特に経験のない人が注射を行なう場合には,注射を受ける患者が苦痛を感じることが判っていること,従来の針のサイズに比べて短い針を用いて皮内注射を行なうための装置が提案されているが,これらの装置は,非常に特殊化された注射器であって適用性と用途が限られていたり,特別に設計された注射器を必要とし,種々のタイプの注射器と共に使うわけにはいかず,経済的な大量生産向きではないという欠点や不都合があること,そこで,本願補正発明においては,熟練や経験のない人が皮内注射を行う場合でも患者が苦痛を感じることなく,かつ,種々の注射器本体と共に使用するのに適した皮内注射装置に対する要望,大量生産規模で経済的に製造可能な皮内注射装置に対する要望に対処することを解決課題として,上記の構\成が採用されたこと,そのため,単に皮膚に垂直に装置を押し付けることにより物質を注入できるので,薬剤やワクチン等の物質を皮内に注射する場合などに適し,かつ,リミッタ部分とハブ部分により患者の皮膚に突き刺す針の有効長さより全長の大きい針の使用が可能となるので,小径の皮下注射針を使用するなどして,薬剤注入装置を安価な構\成にて提供することができるとの効果を奏することが認められる。
イ 一方,上記(1)イ 認定の事実によれば,引用発明は,注射器用の針の透過深度をコントロールするための装置に関するものであり,発明の目的は,注射器針の透過深度をコントロールするか調節するための装置を提供することであって,注射が最適のやり方で行なわれることを可能にする皮内注射の注射器のために特に設計されていること,装置1の表\面20の端部が患者の皮膚8と接触させられるように用いられ,装置1は針3が所定長さ皮膚に入ることを可能にするために皮膚8をわずかに変形するためにわずかに押され,表\面20の端部または縁が,患者の皮膚8にわずかに押し付けられるから,それは,針3刺し傷を囲む領域を敏感にすることができ,それにより,皮内注射の間に患者に作用する軽い痛覚はより減少され,一方で,主として,繰り返される注射の場合に,患者に対する,より大きな痛み除去を確実にするように構成されていることが認められる。すなわち,引用発明においては,注射が最適のやり方で行なわれることを可能\にする皮内注射の注射器のために特に設計されているというのであるから,使用される針は,皮下注射用の針ではなく,皮内注射に適した針であると理解される。また,引用発明は,注射器針の透過深度をコントロールするか調節するための装置を提供することを目的とし,それによって,皮内注射の間に患者に作用する軽い痛覚はより減少され,主として,繰り返される注射の場合に,患者に対する,より大きな痛み除去を確実にする効果を奏するものであることが認められる。ウ 上記の認定によれば,本願補正発明は,熟練や経験のない人が皮内注射を行う場合でも患者が苦痛を感じることなく,かつ,経済的合理性に対する要望にも対処することを目的(解決課題)として.皮下注射用の針を用いて皮内注射を行うニードルアセンブリであるのに対し,引用発明は,皮内注射に適した針を用いて注射器針の透過深度をコントロールするか調整することにより,皮内注射の際の患者の苦痛を緩和ないし除去することを目的とした装置であるということができる。そして,上記の引用発明の目的からすると,引用例に接した当業者が,引用発明の「皮内注射を行うのに使用する針」,すなわち皮内注射に適した針を,敢えて,本願補正発明の「皮下注射用の針」に変更しようと試みる動機付けや示唆を得るとは認め難いから,当業者にとって,相違点に係る本願補正発明の構成を容易に想到し得るとはいえない。\n

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平成24(行ケ)10166 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年01月17日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、動機づけ無しとして、取り消されました。
 ア 引用発明1及び2は,いずれも運動靴の靴底(表底)に関するものであって,技術分野を同一にする。しかしながら,引用発明1は,前記1イに説示のとおり,スパイク付き運動靴が,接地の際に急速に停止する機能\を有していることを前提として,その機能に起因する課題を解決し,靴底の上部辺が幾分揺れるようにして徐々に停止するという作用効果を有するものであるのに対し,引用発明2は,前記イに説示のとおり,ランニングシューズの靴底が接地の際に弾性を備えていることを前提として,その機能\に起因する課題を解決し,上層に設けられた突起が直ちに下層に接することで足を内側に巻き込むローリング現象を防止するという作用効果を有するものである。このように,引用発明1は,運動靴の接地に伴う急速な安定性を解消して弾性をもたらそうとするものであるのに対し,引用発明2は,運動靴の接地に伴う弾性を解消して安定性をもたそうとするものであって,その解決課題及び作用効果が相反している。したがって,引用例1には,引用発明1に引用発明2を組み合わせることについての示唆も動機付けもない。
イ また,前記1ア及びイに説示のとおり,本願発明の「変形臨界点」とは,弾性変形体を備える表底に荷重が掛かった場合に,無視可能\な程度を除けば,荷重により圧着した(上層と下層とが相互接触した)弾性可変部材が当該荷重によりそれ以上変形できない状態となる限界を意味しており,「剛性」とは,弾性可変部材が「変形臨界点」に達したことにより,本願発明(表底)が,やはり無視可能\な程度を除き,それ以上接線方向に平行変形できない状態となることを意味しているものと解され,本願発明は,このようにして得られる「剛性」によって,靴底の弾性を解消するものである。他方,引用発明2は,前記イに説示のとおり,上層に設けられた突起が直ちに下層に接することで靴底の弾性を解消するものであって,本願発明とは弾性を解消する作用機序が異なるから,引用例2の記載(前記アウ)によれば,突起を含む各部材は,いずれも弾性可変材料で構成されているものと認められるものの,それが荷重により下層に接した場合に,当該突起及びこれを含む靴底が,当該荷重によりそれ以上変形できない状態となっているか否かは,不明であるというほかない。したがって,仮に引用発明1に引用発明2を組み合わせたとしても,それによって本願発明の本件相違点に係る構\成が実現されるものではない。

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平成24(行ケ)10196 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年01月21日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、取り消されました。理由は動機づけ無しです。
 以上によれば,伸縮部材を含む使い捨て吸収性物品に関し,単層エラストマーフィルムを備える剥離ライナーを使用して伸縮積層体の製造を試みる場合,フィルム材をさらに加工する際に,大抵,剥離ライナーはエラストマーフィルムから分離され,除去され,巻き上げられるため,剥離ライナーと組み合わされたエラストマー単分子層又は単層フィルムの操作は,不織布とのその後の積層における層の操作を促進する他の機構を次に必要とするとの課題があり,本願発明は,上記の課題を解決するため,不織布層を含むかかるフィルムの積層プロセスを促進するのに必要とされるブロッキング防止を助ける機構\を備えるものであることが認められる。また,本願発明における伸縮部材は,「前記エラストマー層を得る工程と,当該エラストマー層の1以上の表面への粉末の塗布を含むブロッキング防止処置を当該エラストマー層に施す工程と,当該エラストマー層を1以上の不織支持ウェブ層に積層する工程」の3つの工程を,このとおりの順序で含む方法により得られるものであると解される。一方,上記(1)イ 認定の事実によれば,引用刊行物1には,引用発明が,伸張性繊維基材の特定領域に伸張性を持たせるために,伸張性繊維基材の少なくとも1つの領域に配置されたエラストマー部材を有する伸縮性複合体ないしその製造方法に関するものであること(上記(1)イ 【0001】),使い捨て吸収製品は,一般に腰部区域やカフ区域に伸縮可能な材料を含み,これらの区域に望ましい弾性特性を提供するには種々の方法があるが(同【0002】,【0003】),伸縮性積層体は別々に製造されるところ,伸縮性積層体は適当な大きさ及び形状に切断され,「カット・アンド・スリップ」プロセスと呼ばれることのあるプロセスで,製品の望ましい位置に粘着剤で貼\り付けられる必要があり,異なる伸縮性の伸縮性積層体を用いたり,これらの積層体を製品の異なる位置に貼り付けたりするには,複数のカット・アンド・スリップユニットが必要なことがあるため,プロセスが厄介で複雑なものになるとの課題があること(同【0006】),課題解決手段として,製品の使用中に望ましい利点を提供するように,特定の部分にのみ特定の伸縮性を持たせて配置したエラストマー材を有する,費用効率の高い伸縮性複合体,間隔を置いて別個に配置した構\成成分の間の特定の部分で伸縮性を発揮する伸縮性複合体,物品の構成成分内で特定の伸縮性を発揮する伸縮性複合体の実現が望ましく,また,複数の工程,装置を必要とせず,吸収製品の様々な部分で伸縮特性を実現させるための有効かつ費用効率の高いプロセスの実現が望ましいこと(同【0007】,【0008】),発明を実施する形態として,エラストマー構\成成分を形成する工程とエラストマー構成成分を基材に結合する工程とが1つの工程の連続したプロセスに組み合わされた,新しいプロセスを提供するものであり,1つの連続したプロセスで,おむつの別個の弾性構\成成分に対応する複数の部分にエラストマー部材を直接付加することができること,異なる弾性を有する複数のエラストマー部材を,吸収性の物品の1つの構成要素の隣接した部分に付加することができることも意図されること(同【0028】),エラストマー部材は繊維性ウェブに直接付加されることも,又は最初に中間体の表\面に配置されることにより,間接的に繊維性ウェブに付加されることもできるが,エラストマー組成物の粘度は慎重に選択する必要があり,組成物,温度,及び/又は濃度は,特定の処理方法及び操作条件に好適な粘度を与えるために変更できること(同【0042】,【0043】)が記載されているといえる。
 以上によれば,引用発明は,エラストマー部材を有する伸縮性複合体ないしその製造方法に関するものであって,伸縮性積層体が「カット・アンド・スリップ」プロセスで,製品の望ましい位置に粘着剤で貼り付けられる必要があり,異なる伸縮性の伸縮性積層体を用いたり,これらを製品の異なる位置に貼\り付けたりするには,複数のカット・アンド・スリップユニットが必要なことがあるため,プロセスが厄介で複雑なものになるとの課題があり,これを解決する手段として,エラストマー構成成分を形成する工程とエラストマー構\成成分を基材に結合する工程とが1つの工程の連続したプロセスに組み合わされた,新しいプロセスを提供するものであることが認められる。すなわち,引用発明の課題及びその解決手段は,異なる伸縮性の伸縮性積層体を「カット・アンド・スリップ」プロセスで製品の望ましい位置に貼り付ける工程を効率化する目的で,エラストマー構\成成分を形成する工程と基材に結合する工程を1つの工程の連続したプロセスに組み合わせるというものであって,本願発明の課題及びその解決手段である,エラストマーフィルムから剥離ライナーを分離,除去し,巻き上げるためのプロセスを促進する目的で,不織布層を含むかかるフィルムの積層プロセスを促進するのに必要とされるブロッキング防止を助ける機構を備えることとは全く異なるというべきである。また,引用刊行物1には,エラストマー材をグラビア印刷等により基材に直接付加する方法と,エラストマー材を中間体の表\面に配置した後,オフセット印刷のように間接的に基材に移す方法が挙げられるところ,前者の方法は,流体状のエラストマー材が基材に直接付加されるため,エラストマー層がブロッキングすることはなく,後者の方法は,エラストマー材はいったん中間体の表面に配置されるものの,引き続き中間層ごと基材に圧着,転写されるため,やはりエラストマー層がブロッキングすることはないから,引用発明における伸縮性複合体の製造方法で,エラストマー構\成成分を形成した後,基材に結合する前にブロッキングが生じるおそれはないといえる。そうすると,引用発明における伸縮性複合体の製造方法において,エラストマー構成成分を形成後,基材に結合する前に,ブロッキング防止処理を適用する動機付けはないというべきであり,これにブロッキング防止処理工程を含むとすることは,当業者が容易に想到することではないから,引用発明から,相違点2に係る本願発明の構\成である「当該エラストマー層の1以上の表面への粉末の塗布を含むブロッキング防止処置を当該エラストマー層に施す工程を含む方法によって得られ」との構\成に至ることは,当業者にとっても容易ではないというべきである。したがって,相違点2について,「引用発明において,伸縮部材を得る方法についての特定に,エラストマー層表面へのブロッキング防止処置工程を含むとすることは,当業者が容易に想到しうる」とした審決の判断は誤りである。イ これに対し,被告は,引用刊行物1には,伸縮性複合体を製造するのに,エラストマー構成成分の形成工程と基材への結合工程とが連続している製造に関して,より適した方法であるとの記載があるとしても,一般的な製造方法としてエラストマー形成工程後に保存して基材に結合する方法も当然認識され,記載される旨主張するとともに,吸収性物品の技術分野や多層積層樹脂フィルム製造においては,各種ブロッキング防止処理が周知慣用技術である旨主張する。しかし,上記ア認定のとおり,引用発明は,異なる伸縮性の伸縮性積層体を「カット・アンド・スリップ」プロセスで製品の望ましい位置に貼\り付ける工程を効率化することを目的(課題)とするものであって,引用刊行物1において,当該発明が,伸縮性複合体の製造方法に関する一般的課題を解決しようとするものであることが記載ないし示唆されているとは認められないから,引用刊行物1記載の発明における製造方法に,エラストマー構成成分を形成後,基材に結合する前にブロッキング防止処理を適用する動機付けがあるとはいえない。そして,引用刊行物1記載の発明における製造方法に,ブロッキング防止処理を適用する動機付けが認められない以上,ブロッキング防止処理が周知慣用技術として存在するとしても,引用発明に,当該周知慣用技術を適用して本願発明に想到することが容易であると判断することはできないというべきである。\n

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平成23(行ケ)10414 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年01月10日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反無しとした審決が取り消されました。理由は適用できないとした判断の誤りです。
 本件審決は,浚渫用のグラブバケットである引用発明1に,荷役用のグラブバケットに係る技術を適用することは,操縦者が対象物を目視できるために想定外の荷重がシェルにかかるおそれが少ない荷役用グラブバケットと,掴み物を目視できず,掴み物の種類や形状も安定しないため,荷役用と比較して,グラブバケットの強度を高く設定する必要がある浚渫用グラブバケットとでは,使用態様に基づいて要求される特性の相違から,当業者が容易に想到することができたものとはいえないとする。しかしながら,グラブバケットは,荷役用又は浚渫用のいずれの用途であっても,重量物を掬い取り,移動させる用途に用いられるものであるから,技術常識に照らし,ある程度の強度が必要となることは明らかであって,必要とされる強度は想定される対象物やその量,設計上の余裕(いわゆる安全係数)等によって定められる点において変わりはないものというべきである。確かに,浚渫用グラブバケットは,上記各観点に加えて,掴み物を目視できない点をも考慮した上で強度を高く設定する必要があることは否定できないが,ここでいう強度とは,想定される対象物(掴み物)に対してどの程度の強度上の余裕を確保すべきかという観点から決せられるべきものである。本件リーフレット(甲25)には,本件製品に関する照会の際には掴み物の種類や大きさを連絡することを求める旨の記載があり,荷役用グラブバケットにおいても,対象物に応じて強度を設定する必要があることは明らかである。したがって,荷役用のグラブバケットに係る技術を浚渫用のグラブバケットに適用する際には,浚渫用のグラブバケットにおいて特に考慮すべき強度上の余裕を確保することに支障を生ずるか否かについて,十分配慮する必要があるとしても,浚渫用グラブバケットの上記特性とは直接関連しない,対象物を掬い取って移動させるという両目的に共通する用途に係る技術について,一律に適用を否定することは相当ではない。
イ 本件構成1及び2の技術的意義等について
本件審決は,荷役用グラブバケットに係る本件構成1及び2を,浚渫用グラブバケットに係る引用発明1に適用することを否定する。しかしながら,前記1(4)アによると,本件発明は,シェルを爪無しの平底幅広構成とするとともに,本件構\成1及び2を採用することにより,従来の丸底爪付きグラブバケットと比較してバケット本体の実容量が大きく,かつ,掴み物の切取面積を大きくして掴みピッチ回数を下げることにより作業能率を高めるとともに水の含有量を減らし,しかも掘り後が溝状とならずにヘドロを完全に浚渫することが可能\となるという作用効果を実現したものであって,本件構成1及び2は,むしろバケットの本体の実容量及び掴み物の切取面積を大きくすることを実現するために採用された構\成であるということができる。また,証拠(甲25,甲32の3)によれば,本件リーフレットに記載された本件製品の図面及び主要寸法から,本件製品は本件構成1及び2を有するものと認められるところ,被告光栄は,荷役用グラブバケットである本件製品を,浚渫用グラブバケットとして実際に使用している状況を撮影した写真を本件広告に掲載した上で,本件製品の製品名(「グラブバケット(WS型)」)を明記していることが認められる。したがって,引用発明1に,引用例3が開示する本件構\成1及び2を適用することについて,動機付けが存在する一方,阻害事由を認めることはできない。

◆判決本文

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