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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

動機付け

平成26(行ケ)10245  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年12月17日  知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした拒絶審決が、動機付けなしとして取消されました。
 引用発明は,前記イのとおり,大きい,平坦な面を提供することができる インストルメントパネルを提案することを目的とし,引き出し板40を拡張位置ま で引き出すと,カバー20のテーブル面22と引き出し板40のテーブル面42と が同時に使用可能になって2倍の作業面が得られるという効果を奏するものである\nところ,かかる課題や効果の観点からは,引用発明において,周知技術1を適用し て,引き出し板40を,カバー20と空間30の間で,フレーム要素12に対して 摺動可能かつ枢動可能\に設ける動機付けがあるとはいえない。
・・・・
 被告は,相違点2に関し,引用発明における引き出し板40に代えて,周知技術 2のテーブルを適用することにより,引用発明の課題を十分に解決できるから,相\n違点1及び2を併せて検討すれば,引用発明において,周知技術1を適用すること によって空間30へのアクセスを良くし,周知技術2を適用することによって引用 発明の課題を解決できるのであって,引用発明において,周知技術1を適用するこ とに阻害要因は存在しない旨主張する。 しかし,引用例には,引用発明が,大きい,平坦な面を提供することができるイ ンストルメントパネルを提案することを目的とし,引き出し板40を拡張位置まで 引き出すと,カバー20のテーブル面22と引き出し板40のテーブル面42とが 同時に使用可能になって2倍の作業面が得られるという効果を奏するものであるこ\nとが記載されるとともに,さらに,空間30へのアクセスの改善という課題を解決 する手段として,引き出しレール70のセットを構成する内側引き出しレール72\nを,フレーム要素12ではなくカバー20に固着することにより,引き出し板40 がカバー20と連係して動くようにする形態が開示されており,かかる形態によれ ば,引き出し板40を拡張位置まで引き出すと,カバー20のテーブル面22と引 き出し板40のテーブル面42とが同時に使用可能になって2倍の作業面が得られ\nるという上記効果を維持しつつ,空間30へのアクセスを良くすることができると いう効果をも奏し得ることが開示されているといえる。 そうすると,カバー20のテーブル面22と引き出し板40のテーブル面42と が同時に使用可能になって2倍の作業面が得られるという効果とともに,空間30\nへのアクセスを良くするという効果を奏するにもかかわらず,引用例や周知例に何 らの記載も示唆もないのに,当業者において,周知技術1を適用した上で,更に周 知技術2を適用することにより,周知技術1を適用することでカバー20のテーブ ル面22と引き出し板40のテーブル面22とを同時に使用することができなくな るのを回避することを想起し,あえて引用発明において周知技術1を適用すること を,容易に想到することができたということはできない。

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平成26(行ケ)10182  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年8月20日  知的財産高等裁判所

 薬の特許について動機付けがないとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 前記(ア)ないし(エ)の記載によれば,うつ病患者は,抑うつ気分な どの基本症状のほかに,記憶や集中力や判断力の低下などの認知の障害 を訴えることがあり,認知機能に重要と考えられる脳器官(例えば海馬\nや前頭葉)がうつ病にも本質的に関与する可能性が指摘されていたが,\nうつ病と,記憶障害が中核症状である認知症(痴呆)とは,その病態が 異なり,認知症に有効な薬が当然にうつ病にも有効であるとの技術常識 があることを認めるに足りる証拠もないから,記憶・学習能力の低下を\n改善する薬が,うつ病をも改善するとの効果を有するとの技術常識が, 本願出願日当時に存在していたと認めることはできない。 また,抑うつ様症状の評価法としては,強制水泳試験(動物に強制的 に水泳を負荷することで生じる行動抑制を抑うつ様症状の指標として評 価する試験(甲22・97頁右欄10〜12行))等が汎用的であって, 記憶・学習能力に関する評価法であるモリス型水迷路試験から,抑うつ\n様症状が評価できるとの技術常識があったと認めることもできない。さ らに,うつ病と海馬組織中のアラキドン酸含有量との関連についての技 術常識があったことを認めるに足りる証拠もない。
ウ 引用例2に記載された発明の認定
前記イ(オ)のとおり,本願出願日当時,記憶・学習能力の低下の改善と\nうつ病の改善との関連,又は,うつ病と海馬組織中のアラキドン酸含有量 との関連についての技術常識があったと認めることができないことを前提 とすれば,引用例2に接した当業者は,引用例2の実施例3の老齢ラット のモリス型水迷路試験の結果に基づいて,「構成脂肪酸の一部又は全部が\n アラキドン酸であるトリグリセリド」を用いることにより,「記憶・学習 能力の低下」が改善されることは認識できるものの,さらに「うつ病」が\n改善されることまでは認識することができないというべきであって,まし て,「うつ病」を含む様々な症状や疾患が含まれる「脳機能の低下に起因\nする症状あるいは疾患」全体が改善されることまでは認識できないという べきである。 そうすると,引用例2に記載された発明の医薬組成物が予防又は改善作\n用を有する症状又は疾患を,本件審決のように,「脳機能の低下に起因す\nる症状あるいは疾患」と広く認定することは相当ではなく,その適用は脳 機能の低下に起因する記憶・学習能\力の低下に限られるというべきである。 したがって,引用例2に記載された発明は,「構成脂肪酸の一部又は全\n部がアラキドン酸であるトリグリセリドを含有するトリグリセリドを含ん で成る,脳機能の低下に起因する記憶・学習能\力の低下の予防又は改善作\n用を有する医薬組成物。」(以下「引用発明2’」という。)と認定すべきで ある。
(3) 本願補正発明と引用発明2’との対比
そうすると,本願補正発明と引用発明2’との一致点及び相違点は,次の とおりである。 ア 一致点
構成脂肪酸の一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリドを含ん\nで成る医薬組成物。 イ 相違点
本願補正発明は,「うつ症状の改善のため」のものであるのに対し,引 用発明2’は,「記憶・学習能力の予\防又は改善作用を有する」ものであ る点(以下「相違点α’」という。)。 (4) 相違点α’に係る容易想到性について
確かに,引用例2の【請求項1】〜【請求項16】,【0012】,【001 7】には,「構成脂肪酸の一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリ\nド」を用いて,「脳機能の低下に起因する症状あるいは疾患」の予\防又は改 善を行うことが記載され,当該症状あるいは疾患として,「記憶・学習能力\nの低下,認知能力の低下,感情障害(たとえば,うつ病),知的障害(たと\nえば,痴呆,具体的にアルツハイマー型痴呆,脳血管性痴呆)」等が記載さ れている。 しかし,前記(2)ウのとおり,引用例2に接した当業者は,引用例2の実 施例3の老齢ラットのモリス型水迷路試験の結果に基づいて,「構成脂肪酸\nの一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリド」を用いることにより, 「記憶・学習能力の低下」が改善されることは認識できるものの,さらに\n「うつ病」が改善されることまでは認識できないというべきである。 そして,前記(2)イ(オ)のとおり,うつ病と,記憶障害が中核症状である 認知症とは,その病態が異なり,本願出願日当時,記憶・学習能力の低下を\n改善する薬が,うつ病をも改善するとの効果を有するとの技術常識が存在し ていたとは認められないことからすれば,引用例2に接した当業者が,引用 例2に記載された「脳機能の低下に起因する症状あるいは疾患」に含まれる\n多数の症状・疾患の中から,特に「うつ病」を選択して,「構成脂肪酸の一\n部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリド」を用いて,うつ病の症状 である「うつ症状」が改善されるかを確認しようとする動機付けがあるとい うことはできない。 そうすると,引用例2に基づいて,相違点α’に係る本願補正発明の構成\nに至ることが容易であるということはできず,本件審決のこの点に関する判 断には誤りがあるというべきである。 283/085283

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平成27(行ケ)10009  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年8月4日  知的財産高等裁判所

 知財高裁は、どのような分野でも用い得る慣用技術ではないので、構造が共通していても適用容易とはいえないとして、進歩性なしとした審決を取り消しました。
 相違点2は,前記第2,3(4)イのとおり,本件訂正発明1では「出力部材が所定 の位置に達し,前記所定の位置にあることを検知可能」にしたのに対し,甲2発明\nでは「ピストン21の反転動作可能」にしたもので,「検知」については不明である\n点である。 そして,甲1事項2は,前記第2,3(2)ウのとおり,「ピストン行程の行程端で, クッションプラグ32によりプランジャ126を上昇させてプランジャ型スイッチ 100の開閉状態を切り換え,複数の空気ポート130の間が連通されることでピ ストン30が所望の位置に移動したことを確認可能に構\成した流体駆動シリンダ1 0。」である。 審決は,1)甲2発明の二方パイロット弁100,101も,甲1事項2のプラン ジャ型スイッチ100も,ピストンが端部の所定位置に達すると作動する開閉弁式 スイッチという点で,用途もスイッチの構造も共通しているとして,甲2発明の二\n方パイロット弁100,101について甲1事項2のプランジャ型スイッチ100 を適用することは,当業者であれば容易に想到し得る,2)適用されたプランジャ型 スイッチ100に,甲2発明のピストン21が移動して端部に達し,その位置にあ ることを検知させることは,当業者が容易に想到し得ると判断する。 これに対し,原告は,甲2発明の二方パイロット弁100,101と,甲1事項 2のプランジャ型スイッチ100とは,用途,構造及び機能\を異にし,動機付けが なく,阻害要因が存する旨を主張するので,以下,検討する。 甲2発明は,前記1(2)のとおりであり,ピストン21が左端の所定の位置に達し たときに,差圧ピストンがピストン21に押されて移動することにより,二方パイ ロット弁100,101の開閉状態が切り換えられ,制御管路93から供給される 圧力媒体が無圧領域41に連通することにより,三方弁37が切り替わって圧力配 管39からシリンダ23に圧力媒体が流入するなどして,ピストン21が右側に反 転動作をするものである。そうすると,甲2発明の二方パイロット弁100,10 1は,ピストンが端部の所定位置に達すると作動する開閉式スイッチであるともい える。 しかしながら,甲1事項2のプランジャ型スイッチ100は,どのような分野で も用い得る慣用技術等であるとまではいえないから,甲2発明の二方パイロット弁 100,101を,用途やスイッチの構造が共通しているとの点をもって,直ちに\n甲1事項2のプランジャ型スイッチ100に置換可能であるとはいえない。\nそして,相違点2は,本件訂正発明1においては,「出力部材の位置検知」である のに対し,甲2発明においては,「ピストンの反転動作」というものであるから,甲 2発明の二方パイロット弁100,101を検知機能を有する甲1事項2のプラン\nジャ型スイッチ100に置換するには,まず,甲2発明の二方パイロット弁100, 101に検知機能を持たせることが動機付けられなければならない(なお,甲2発\n明の二方パイロット弁100,101の開閉機構がピストン21の往復動作と連動\nしているからといって,二方パイロット弁100,101がピストン21の行程端 を検知しているとはいえない。)。 そこで,検討してみると,甲2発明の二方パイロット弁100,101は,圧力 媒体の流路回路を切り換え,ピストン21が自動的に反転動作をするための動作切 替手段の一部である。そうすると,当業者が,自動往復運動をしているピストン2 1の行程端を検知しようと試みて,動作切替手段の一部にすぎない二方パイロット 弁100,101にピストン21の行程端の検知機能を持たせようとする合理的理\n由がないから,甲2発明の二方パイロット弁100,101を,甲1事項2のプラ ンジャ型スイッチ100に敢えて置換しようと動機付けられるとはいい難い。 被告は,1)甲2発明の二方パイロット弁100,101にはスイッチの機能があ\nる旨を主張するが,そのように解したとしても上記結論が左右されないことは,上 記説示のとおりである。また,被告は,2)甲1事項2のプランジャ型スイッチ10 0にはピストンを反転動作させるためのスイッチの機能がある旨を主張するが,甲\n1事項2のプランジャ型スイッチ100は,ピストン30の位置を確認可能にした\nものであり,ピストン30の反転動作は,プランジャ型スイッチ100の機能によ\nるものではない。さらに,被告は,3)「リミットスイッチのようなセンサによって 操作される制御弁は,機械の順次動作におけるタイミングに合わせてピストンを所 望の方向へ移動させることによって上記シリンダを制御するために用いられる。」と の甲1の記載を指摘するが,リミットスイッチは,一般に,位置を検知する手段に すぎず,当然に,ピストンを反転動作させる手段でもあることにはならない。そし て,上記記載に続く,「機械の順次動作における次のステップが起こる前に上記ピス トンが最伸長または最後退の行程位置へ移動したのを知ることが頻繁に必要になる ので,ピストンの行程の行程端において上記ピストンロッドの外端または当該ピス トンロッドに連結した作業部分にリミットスイッチが接触するように,当該リミッ トスイッチが使用されてきた。」との記載を併せかんがみれば,甲1は,リミットス イッチを,ピストンの位置を検知するための手段としているにすぎないと認められ る。 したがって,上記被告の主張は,いずれも,採用することができない。 以上のとおりであり,甲2発明の二方パイロット弁100,101を甲1事項2 のプランジャ型スイッチ100に置換させることはできないから,相違点2に係る 本件訂正発明1の構成は,当業者が容易に想到することができない。\n

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平成26(行ケ)10186  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年6月25日  知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした拒絶審決が維持されました。デシテックスと延伸率を,同時に,本願発明の数値範囲まで大きくすることは示唆されていないとしたものの、一般的な糸のサイズを利用しているにすぎないと判断されました。
 他方,両発明は,使用する裸スパンデックス糸のデシテックスの値及びエストラマー材料の供給時における延伸率の制御値が異なっている。そこで,これらを前提に,相違点として,何を認定すべきかを検討する。 確かに,本願発明の延伸率は2.5倍以下であり,引用発明の延伸率は2倍以下 であり,ともに上限を定めていないから,延伸率の値自体を比較すると,引用発明 の範囲である2倍以下は,必ず2.5倍以下という意味において,本願発明の数値 範囲に含まれている。 しかしながら,本願発明と引用発明は,ともに,ヒートセットを不要にするとい う目的を達成するために,一定の回復張力を目指して,糸のスパンデックスと延伸 率という2つのパラメータの組合せを提示するものであるが,甲1【0096】〜 【0099】の実施例8,12,13,35〜37,41〜43,48〜51,5 6,57を見ると,同じスパンデックス数であっても,収縮率が異なっている結果 が出ていることからも明らかなとおり,回復張力は,糸のスパンデックスだけでな く,延伸率や,共に使用される硬質糸の種類やサイズといった諸要素によって決せ られるから,スパンデックスと延伸率は相互に関係するパラメータといえ,単純に, 同一の延伸率値が常に同一の技術的意義を有するとはいえないし,数値として重な り合っている範囲が,常に同一の技術内容を示しているともいえない。他方,スパ ンデックスと延伸率の値は,同一回復張力を前提とする限りにおいて,相互に独立 したパラメータとして,設定できるわけではない。また,延伸率とデシテックスの 関係は,相互に関連するとはいえるが,それ以上の技術的関係が明らかでない以上, 重なり合いの範囲も定かではないから,本願発明と引用発明において,エラストマ ー材料を延伸させる製法である点において一致すると認定できるとしても,延伸率 の数値の点を相違点の認定からおよそ外し,容易想到性の判断から除外することは できないというべきである。 したがって,被告の主張するように,単純に延伸率の値の重なりをもって,本願 発明と引用発明の一致点というべきではないが,他方,原告の主張するように,延 伸率の違いをデシテックスの値と関連しない独立した相違点として挙げることも相 当ではなく,本願発明と引用発明の相違点は,「本願発明の裸スパンデックス糸が4 4〜156デシテックスで,その延伸率が元の長さの2.5倍以下であるのに対し, 引用発明の裸スパンデックス糸が17〜33デシテックスであり,その延伸率が元 の長さの2倍以下である点」と認定した上で,相互に関連したパラメータの変更の 容易想到性を判断すべきである。
・・・
(2) 確かに,デシテックスを大きくすることと,延伸率を大きくすることは, ともに回復張力を大きくする作用を有するものであるから,同程度の回復張力にす るためには,デシテックスを大きくした場合には,延伸率を小さくし,逆に,延伸 率を大きくした場合は,デシテックスを小さくする必要がある。したがって,引用 発明のデシテックスと延伸率を,同時に,本願発明の数値範囲まで大きくするとい う動機付けや示唆は,引用発明が前提としている回復張力を前提にする限りは,当 然には生じてこないというべきである。 しかしながら,本願発明における「44〜156デシテックス」という糸のサイ ズと,引用発明における「17〜33デシテックス」という糸のサイズとは,共に, 市場で普及している20〜400デシテックスという範囲内にあり(乙2〜5,弁 論の全趣旨),両発明は,一般的な糸のサイズを利用しているにすぎないから,この 範囲内にある糸のサイズの変更には,格別,技術的な意義はなく,当業者にとって, 予定した収縮率等に応じて適宜設定できるものといえる。したがって,デシテック\nスの範囲を本願発明の範囲の数値まですることは,当業者が容易に想到できる事項 である。

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平成26(行ケ)10253    特許権  行政訴訟 平成27年7月9日  知的財産高等裁判所

 動機付けなしとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 相違点2についての審決の判断は,要するに,甲2発明の移動体3に「水 平移動可能な移動ステージ」を適用することは,当業者が容易に想到することであ\nり,その場合,当業者は,水平方向に揺動自在な物品載置台11を「固定棚」とす ることを当然想到するというものであるから,「水平移動可能な移動ステージ」の適\n用が容易かどうかの判断は,水平方向に揺動自在な物品載置台11が存在すること を前提にして行われている。 しかし,甲2発明において,既に水平方向に揺動自在な物品載置台11が存在す るのであれば,移動体3の真下にあるステーションSTとの間で物品Bを移載する 場合はもちろん,物品保持部BSとの間で物品Bを移載する場合も,把持具3dを 水平方向に移動させる必要がない。すなわち,物品載置台11を水平方向に揺動さ せれば足りるから,別途「水平移動可能な移動ステージ」を設けて把持具3dを水\n平方向に移動させる理由がないことは明らかである。 イ したがって,当業者が,甲2発明の「水平方向に揺動自在な物品載置台 11」に代えて,相違点2に係る本件訂正発明1の構成を備えるようにすることを\n容易に想到できたか否かを検討すべきところ,甲2発明に「水平移動可能な移動ス\nテージ」を設け,その下方に把持具3dを保持したとすると,そのようにして得ら れるものは,ステーションSTとの間での移載及び物品保持部BSとの間での移載 のうち,一方については,単に把持具3dを昇降させることで行い,他方について は,把持具3dを「水平移動可能な移動ステージ」で水平方向に移動させてから昇\n降させることで行うことになる。 そうすると,甲2発明に「水平移動可能な移動ステージ」を設け,その下方に把\n持具3dを保持して得られるものは,ステーションSTとの間での移載と物品保持 部BSとの間での移載とを,互いに異なる動作で行うことになる。また,ステーシ ョンSTとの間での移載及び物品保持部BSとの間での移載のうち,一方は把持具 3dで,他方は「水平移動可能な移動ステージ」及び把持具3dで,それぞれ行う\nことになるから,ステーション用移載手段SCと保持部用移載手段BCとを移動体 3に設けた単一の物品移載手段BMで兼用しているとはいえなくなる。 すなわち,甲2発明の構成を上記のように変更すると,甲2発明の技術的意義(前\n記(1))が失われることになるから,「物品載置台11」と「水平方向に揺動自在」 とするための部材が省略できることを考慮してもなお,そのような変更をする動機 付けが当業者にあるとは認められない。
ウ 以上に述べたとおり,当業者が,甲2発明に「水平移動可能な移動ステ\nージ」を設け,その「水平移動可能な移動ステージ」の下方に把持具3dを保持す\nる変更を行う動機付けはなく,また,そのようにすると甲2発明の技術的意義を失 わせる結果になるから,阻害要因があるといえ,当業者が容易に想到し得ることで あるということはできない。
(3) 審決の判断について
ア 審決は,甲2の請求項4,【0007】の記載は,物品の移載手段を物品 保持部BSよりも移動体3に備えさせる方が構成の簡素化のために好ましいことを\n示唆し,当業者であれば,物品Bを移動体3の横幅方向に移動させるもの(【003 5】)にもこの示唆が適用可能であることを容易に理解するから,甲2発明に甲1事\n項2の構造又は甲4事項の構\造を適用し,物品Bを移動体3の横幅方向に移動させ る物品載置台11の機能を移動体3が備えるようにすることは,当業者が容易に想\n到し得る事項であると判断した。 しかし,甲2の請求項4,【0007】の記載は,そもそも,甲2に記載された実 施形態に表れていない何らかの新たな構\成を開示したり,それをこれらの実施形態 に付加したりすることを示唆するものではないから,これらの記載に接した当業者 は,甲2に「第1実施形態」として記載された甲2発明の構成の一部に代えて,甲\n1事項2の構造又は甲4事項の構\造を適用することを想到しない。
イ 審決は,移動体3から把持具3dを下降させて移動体3の走行経路の両 脇に位置する物品載置台11上の物品Bへ到達させるために,物品載置台11を移 動体3の把持具3dの真下に移動させるか,反対に,移動体3の把持具3dを物品 載置台11の真上に移動させるかは,単なる二者択一的な選択であるから,甲2発 明において,物品載置台11を移動体3の把持具3dの真下に移動させる代わりに, 移動体3の把持具3dを物品載置台11の真上に移動させるようにすることを阻害 する要因は見当たらないと判断した。 しかし,甲2発明において,移動体3の把持具3dを物品載置台11の真上に移 動させるために,「水平移動可能な移動ステージ」を設け,その下方に把持具3dを\n保持すると,前記のとおり,甲2発明の技術的意義を失わせる結果になるから,物 品載置台11を移動体3の把持具3dの真下に移動させるか,移動体3の把持具3 dを物品載置台11の真上に移動させるかは,単なる二者択一的な選択ではない。
ウ 審決は,甲2の図12に示された実施形態も,【0032】ないし【00 34】に記載されているように,屈曲アーム20bの伸縮動作によって移動体の移 動方向の左右両側に物品Bを出退自在に搬送するとともに,屈曲アーム20b自体 の昇降動作によって物品Bを昇降させて物品載置枠21bに載置するものであって, 甲2発明と同様に,物品Bの水平方向(横方向)移動及び上下動が必要なものであ ると判断した。 しかし,図12に示された実施形態の移動体3は,【0035】に明記されている とおり,物品Bを移動体横幅方向に移動させて物品Bの移載を行うようにしたもの である。そして,一般に物を横方向(水平方向)に移動させるときに,移動を円滑 にするために,また,その物自体やその物が置かれる場所(例えば床)が傷つかな いようにするために,その物を持ち上げて引きずらないようにすることは,日常生 活でも一般常識として普通に行うことである。しかも,甲2に記載された移動体3 のように工場内で物品Bの搬送に使用されるもの(【0002】)においては,物品 Bが精密機器であることも当然想定されるから,物品Bを移動体横幅方向に移動さ せるときにこれを持ち上げて引きずらないようにすることは,技術常識である。そ うすると,屈曲アーム20bが物品Bを僅かに昇降させるのは,「僅かに」とされて いることからも理解されるように,物品Bを移動体横幅方向に移動させるために必 要な限りで昇降するのであって,物品Bを垂直方向に移動させて物品Bの移載を行 うことを意図してのことではない。したがって,上記実施形態から,物品Bの水平 方向移動及び一定幅の上下動を同一の部材により行うことが認識されるものではな い。

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平成26(行ケ)10225  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年6月9日  知的財産高等裁判所

 審決は、訂正請求により無効理由無しと判断しましたが、知財高裁はこれを取り消しました。
 被告は,本件訂正発明1のハイスロールは,従来のハイスロールでは対応できなかった特に高温高圧下でなされる棒鋼,線材又は形鋼の粗圧延に使用されるものであるから,その用途・課題は容易に想到できない旨を主張する。 まず,この点の検討に当たり,本件訂正発明1の特許請求の範囲の記載をみると,「棒鋼,線材,あるいは形鋼の粗圧延のための熱間圧延用複合ロール」との部分は粗圧延全体を示している。そして,特許請求の範囲には,更に「圧延速度が小さいために鋼材と長時間接触することによりロール内部まで温度上昇するとともに水冷による冷却が回転ごとに繰り返されることによる熱疲労き裂が起点となってロール表面が損傷することを防止するため」とあり,本件訂正明細書には「前記したハイス系ロールの使用は,圧延速度の大きな仕上げ及び中間圧延機群での使用に限定されていた。なぜなら,このハイス系ロールを,圧延速度が小さな粗圧延機群に使用する場合,ロールが高温となった鋼材と比較的長い時間接触することにより,熱伝導によってロールの内部まで温度が上昇し,また水冷による冷却がロールの回転ご\nとに繰り返されることにより,ロールの表面から深いき裂が生じるからである。このため,このき裂が起点となって,ロールの表\面が損傷し,ひいては表面の一部が剥離するため,全く使用に耐えるものではなかった。」(【0004】)とあり,圧延速度や温度についての定量的な記載があるものではなく,仕上げ圧延及び中間圧延との相対的な対比として記載されているにすぎず,一方で,本件訂正発明1の「粗圧延」が特定の箇所での使用に限定することを明示する記載は見当たらない(なお,特許法30条1項適用のために示された甲15には,本件訂正発明の熱間圧延複合ロールを,棒鋼,線材の粗スタンドの後段部で使用したことが明示されている〔45〜46頁〕。)。\nしたがって,本件訂正発明1のハイスロールは,棒鋼,線材又は形鋼の粗圧延全般に用いることを目的とするものと認められる。 そうすると,前記(1)にて認定判断のとおり,ハイスロールを棒鋼,線材の粗圧延に用いることは周知技術であり,その際の技術的課題は技術常識なのであるから,本件訂正発明1のハイスロールの使用用途及び解決課題が当業者において容易に想到できないとはいえない。

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平成26(行ケ)10150  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年5月27日  知的財産高等裁判所

 動機付けがないから両者を組み合わせるのは後知恵であるとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 以上によれば,刊行物2発明は,移動体と物品保持部との間及び移動体とステーション(加工装置)との間の物品の各移載手段を,単一の昇降移動手段で兼用し,構成の簡素化を図ることをその技術的意義とするものである。一方,相違点1に係る本件発明の構\\\成は,オーバーヘッド搬送車からその真下に位置する処理加工治具ロードポートへは,オーバーヘッド搬送車の移動ステージ下方に取り付けられて物品を把持するホイスト把持部が下降して,物品を移送するが,オーバーヘッド搬送車の側方に配置される固定棚へは,ホイスト把持部が移動ステージによって固定棚の上方へ水平方向に移動させられてから下降して,物品を移送するものであり,移動体側に物品の昇降移動と横幅移動の双方の手段を兼ね備え,ロードポートと固定棚への物品移載手段を互いに異なる動作で行うものであり,単一の昇降移動手段で兼用しているものではない。 そうすると,刊行物2発明において,把持具が昇降移動する構成に加えて,水平\n方向に移動する構成を適用し,物品載置台及び加工装置へ異なる移動手段で物品を移載するという相違点1に係る構\\\成とすることは,刊行物2発明の技術的意義を失わせることになる。そして,そもそも刊行物2発明においては,物品載置台11が揺動移動する構成となっており,移動体3の直下に位置することが可能\\\であるため,物品移載手段BMの把持具3dは昇降移動のみで物品載置台11との間の物品の移載が可能となるにもかかわらず,あえて把持具3dを水平方向に移動させる構\\\成を追加する必要性がなく,そのような構成に変更する動機付けがあるとは認められない。
ウ(ア) 以上に対し,被告は,刊行物2発明のような,把持具3dを下降させて物品載置台11へ物品を移載する物品移載手段BMがあり,該把持具3dに対して物品載置台11が移動体3の走行経路の両脇に位置するレイアウト構造を有するものにおいては,1)物品載置台11の物品載置部分側を把持具3dの真下に位置するよう横幅方向に移動させた上で把持具3dを下降させるか,又は,2)移動体3の把持具3d側を物品載置台11の物品載置部分の真上に位置するよう横幅方向に移動させた上で把持具3dを降下させるかは,単に二者択一的な動作を選択することで,当業者ならば当然着想する技術思想であり,上記1)の構造とした場合には,物品載置台11の横幅方向の移動機能\\\が不要になるため,これを固定式の物品載置台にできることも,当業者には自明の事項にすぎないと主張する。 しかし,前記イのとおり,刊行物2発明においては,把持具3dが,物品載置台だけではなく,加工装置との間でも単一の移載手段(昇降手段)を兼用することで構成を簡素化することを技術的意義とするものであり,上記1)の構成をあえて2)の構成に変更することの動機付けはないから,刊行物2発明において上記2)の構成が上記1)の構成と二者択一的とはいえないし,結局のところ同主張は後知恵的な発想であり,採用することができない。\n

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◆関連事件です。平成26(行ケ)10149

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平成26(行ケ)10153  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年3月5日  知的財産高等裁判所

 スロットマシンについて、進歩性違反なしとした審決が取り消されました。理由は動機付けありおよび本件発明の認定誤りです。
 被告は,甲1発明の扉開閉監視手段(サブCPU82及びセンサ)は,設定値の変更とは無関係であるから,甲1発明の扉開閉監視手段に甲5,甲15及び甲16に記載の設定値の変更に関連する技術事項を適用する動機付けはない旨を主張する。 しかしながら,甲1発明の技術分野(遊技機)と,甲5,甲15及び甲16からうかがわれる周知技術の分野(遊技機)は,同一であり,特段の阻害事由がないのであれば,当業者は,公知の発明に周知の技術を適用しようと動機付けられるところ,上記特段の阻害事由は認められない。 のみならず,甲1発明の扉開閉監視手段は,甲1に,「図55はドアオープン監視機能画面を示している。スロットマシン1の電源が断たれている間,主に遊技店の営業時間外の間に,前面扉37が開けられたことを,例えばセンサといったハードウエアで監視している。そして,スロットマシン1に電源が投入された時に,サブCPU82は,そのハードウエアをチェックし,前面扉37が開けられた形跡を検出した場合には,図示するようなメッセージを液晶表\\示装置22に表示する。遊技店関係者は,このメッセージにより,営業時間外に遊技機に不正行為が行われた可\n 能性が高いことを把握することが出来る。」(【0265】)と記載されているように,不正行為の監視を目的とするものであるところ,その不正行為とは,とりもなおさず,設定の変更のことなのであるから(【0253】),甲1に接した当業者は,更なる不正手段の防止のために,甲1発明の扉開閉監視手段に甲5,甲15及び甲16からうかがわれる不正変更防止の周知技術を適用しようと,強く動機付けられるといえる。\n
・・・
相違点6は,本件発明1の構成【C9】を甲1発明が備えていないというものである。そして,構\\成【C9】は,本件発明1の構成【C2】によって遊技用記憶手段に含まれた,1)所定の確率に基づいて算出される払出率について設定された段階を示す情報を記憶する特定領域,2)遊技の進行状況に関する情報を記憶する領域として記憶すべき情報の重要度に応じて分けられた特別領域,及び3)一般領域の3領域のうち,一般領域に記憶されている情報を,設定変更手段による段階の変更の際に初期化すると特定するものである。 これら,「特定領域」「特別領域」「一般領域」が何を示すものかについては,本件明細書を参酌する必要があるといえるが,これら3領域のうちのいずれが段階変更の際に初期化されるかは,本件明細書の記載を参酌するまでもなく特許請求の範囲の記載から一義的に明らかであり,本件明細書の記載を参酌する必要はない。すな わち,構成【C9】により初期化されるとされたのは一般領域のみであり,特定領域や特別領域の初期化の有無については,構\\成【C9】は何ら限定を付すものではない。
ウ 小括
以上によれば,前記の審決は,相違点6が,一般領域の初期化に係るものであるのにもかかわらず,上記各刊行物記載の発明が,「特定領域」「特別領域」「一般領域」の区分という相違点1に係る事項を有しないことと,特別領域の初期化という相違点6とは関連のない技術事項を有しないことを理由とし,上記各刊行物に相違点6に係る本件発明1の構成の記載がないと判断したものであって,合理的根拠を欠くことが明らかである。\nそうであれば,この点において,審決の判断過程には,誤りがあるといわざるを得ない。

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平成26(行ケ)10045  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年12月24日  知的財産高等裁判所

 薬(処置剤)について、動機付けなしとして、進歩性違反なしとした審決が取り消されました。
 それに続く引用例1記載の第II相臨床試験でも,乳癌又は多発性骨髄腫患者合計280名に対する0.4mg,2.0mg又は4.0mgの5分間点滴のいずれにおいても,パミドロン酸90mgの2時間点滴と同程度の安全性を示し,4.0mgゾレドロン酸の5分間点滴は,90mgパミドロン酸と同程度の溶骨性骨合併症の予防効果を奏した。\n以上の引用例1及び2に開示されたゾレドロン酸の第I相及び第II相臨床試験の結果によれば,ゾレドロン酸は,4mgという低用量で従来用いられていたパミドロン酸90mgに匹敵する薬効を奏し,5分間の短時間の静脈点滴で安全性が確保できるものであると理解できる。そうすると,・・・相試験で,当該用法用量による安全性について違った結果が生じて用法用量をより安全性の高いものに変更する可能性があることを考慮しても,第I相及び第II臨床試験の段階では,安全性に疑問を呈するような結果は全く出ていないのであるから,患者の利便性や負担軽減の観点からも,引用例1及び2の記載からは,4mgのゾレドロン酸を5分間かけて点滴するとの引用発明の投与時間を更に延長する動機付けを見出すことは困難であるというべきである。

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平成26(行ケ)10071  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年12月24日  知的財産高等裁判所

 動機付け有りとして、進歩性違反なしとした審決が取り消されました。
 審決は,搬送対象について甲2発明1の搬送対象は,キューイなどの「果菜」であるが,甲3発明1の搬送対象は,薄物や不定形品などの小物類であり,搬送対象の具体的性状を異にしており,この搬送対象の相違により,発明の対象となる技術分野も,甲2発明1において「果菜自動選別装置用果菜載せ体」であるのに対し,甲3発明1では「物品選別装置用物品載せ体」であって,相違すると判断した。 しかし,甲2発明1は,上記のとおり,キューイ等の果菜を選別する装置における果菜を載置する受け台に関するものであり,また,甲3発明1は,上記のとおり,薄物や不定形品などの小物類を自動的に仕分ける装置における小物類を載置する搬送ユニットに関するものであるから,甲2発明1と甲3発明1とは,物品を選別・搬送する装置における物品載せ体,すなわち「物品選別装置用物品載せ体」に関する技術として共通しているといえる。
また,両者が搬送する物品は,甲2発明1では,キューイ等の果菜であるのに対して,甲3発明1では,薄物や不定形品などの小物類であるから,物品の大きさや性状に大きな相違はない。このことは,甲1において,「各種の品物を,大きさ(サイズ)別,重量別などに自動的に選別してより分ける選別装置」と記載され(【0001】),「従来より小荷物,果菜その他の各種品物を大きさ,重量,形状等の条件に基づいて自動的に選別する装置には種々のものがあった」として,従来技術について,特に小荷物と果菜とを区別しておらず,「特にいたみやすい果菜の自動選別」(【0001】として,傷みやすい搬送物の典型として特に果菜を挙げながらも,請求項1において,搬送物につき「果菜や小荷物等」との記載をしており,対象とする物品が,果菜と小荷物等とで異なるとしても,これらの物品を選別,搬送する装置としては,同一の技術分野に属するものと捉えていることが明らかである。しかも,果菜が傷みやすく傷付きやすいとはいえ,甲1にも示されるように,従来から,果菜を選別して搬送方向から側方に送り出す際であっても,容器を傾倒する方式が採用されていたのであるから,破損しやすい小物類との間で,技術分野が異なるというほどに相違するものではない。 さらに,甲2発明1は,前記のとおり,キューイを転動させて受けボックス内に整列させると,受けボックスの下流側内壁面にキューイが当接したり,キューイの相互接触により,キューイの外周面に打ち傷や擦り傷が付いたりすることがあり, キューイの商品価値が損なわれるという問題点を解決するために,コンベアの搬送面上に形成した受け部に果菜物を個々に載置し,果菜物を所定間隔に離間した姿勢に保持して搬送することで,搬送中における果菜物の接触及び衝突を防止することとしたものであるところ,搬送物を選別振り分けする際に,搬送物が壁等の設備に衝突することを防止したり,搬送物同士の相互接触を防止したりするという課題は,ボックス内に整列させる際のみならず,選別・搬送の全過程を通じて内在していることは明らかである。そして,甲2発明1は,振り分けコンベアの受け台が,載置された搬送物を搬送方向側方に送り出す際に,搬送方向側方に向けて傾動可能な構\\成であるところ,傾動させて搬送物を搬送方向側方に送り出すには,ある程度の落下による衝撃,あるいは,接触時に衝撃が生じ,搬送物に損傷や破損の生じるおそれがあることは,従来技術の秤量バケットEを可倒させて,果菜Bを転がして落とす自動選別装置において,傷が付いたり潰れたりするという問題を解決するために,バケット式の果菜載せ体をベルト式の果菜載せ体に置換したと甲1に記載されるように,その構成自体から明らかな周知の課題である。\n一方,甲3発明1は,上記2(3)で認定したように,従来の傾動可能なトレイを備えた方式の場合は,搬送物同士の衝合による損傷や破損の生じるおそれがあり,破損しやすい搬送物の搬送には不向きであるという課題を解決するものである。\nそうすると,甲2発明1と甲3発明1は,課題としての共通性もある。 以上を総合すると,甲2発明1の振分けコンベアの搬送方向側方に向けて傾動可能な構\\成において生じる搬送物の損傷,破損という技術課題を解決するために,甲3発明1を適用して,相違点F’の構成に至る動機付けが存在するといえる。\n

◆判決本文

◆関連事件です。平成26(行ケ)10095  

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