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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

阻害要因

平成24(行ケ)10129 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年10月17日 知的財産高等裁判所

   知財高裁は、無効理由無しとした審決を取り消しました。関連する侵害訴訟で104条の3で権利公使不能と判断されています。\n
 前記(イ)ないし(オ)を総合すれば,交通事故の発生前後の所定時間にわたって車両の挙動に係る情報を収集,記録すること,車両に設けられた加速度センサーが検出する加速度が所定の閾値を超えるか否かやエアバッグ作動信号の有無に代えて,車両の加速度等が所定の閾値を超えたか否かによって交通事故が発生したか否かを判定する程度の事柄は,本件優先日当時における車両の挙動に係る情報を収集,記録する装置の技術分野の当業者の周知技術にすぎないということができる。そして,訂正発明1,2にいう「特定挙動」は前記のとおり「事故につながるおそれのある危険な操作に伴う車両の挙動」であって交通事故の発生を前提とするものではない(交通事故が発生しない場合も含む)が,訂正明細書の段落【0030】,【0034】,【0050】,図2,3等の記載によれば,訂正発明1,2にあっても,例えばセンサ部から得られる角速度等のデータが所定の閾値を超えたか否かによって「特定挙動」の有無が判定されるから,装置の機能の面に着目すれば,訂正発明1,2において「特定挙動」発生前後の所定時間分の情報を収集,記録する構\成は,上記周知技術において「交通事故」発生前後の所定時間分の情報を収集,記録する構成と実質的に異なるものではないということができる。加えて,上記周知技術と甲3発明とは,属する技術分野が共通し,前者を後者に適用するに当たって特段障害はないから,本件優先日当時,かかる適用を行うことにより,当業者が訂正発明1,2にいう「特定挙動」の発生前後の所定時間分の車両の挙動に係る情報を収集,記録する構\成に想到することは容易であるということができる。さらに,甲第4号証にも,車両内部のセンサから得られた横加速度等の情報から,運転に係る要因による異常又は異常に近い状況の発生の有無を認定し,かかる状況の発生前後の所定時間分の車両の挙動に関する情報を収集,記録する技術的事項が開示されているところ(前記(ア)),上記と同様に装置の機能面の共通性に着目すれば,上記の結論に至ることが可能\である。
エ 以上によれば,甲3発明に,「特定挙動」の発生前後の車両の挙動に係る情報を収集する条件を記録媒体に記録,設定する甲1発明と,「特定挙動」に相当する一定の契機(交通事故等)の発生前後所定時間分の車両の挙動に係る情報収集をする甲第4,第5,第6号証の1ないし6記載の周知技術を適用することにより,本件優先日当時,当業者において,審決が認定した甲3発明と訂正発明1の相違点に係る構成(「特定挙動」発生前後の車両の挙動に係る情報を所定時間分収集するための収集条件に適合する挙動の情報を記録媒体に記録,設定する構\成)に容易に想到することができたというべきであり,これに反する審決の判断は誤りである。オ そして,審決がした甲3発明と訂正発明1の一致点の認定については当事者双方は特段の主張をしていないから,結局,訂正発明1は進歩性を欠くものというべきである。原告が主張する無効理由4は訂正発明1に関して理由があり,これに反する審決の判断は誤りである。
・・・
イ そうすると,甲第2号証には,自動車用イベント(事象)記録装置(ERA)において,コンピュータ装置及び着脱可能なRAMカード(20)を用いて,前方間隔,警告閾値や,自動車の電子制御システムを介してセットされるその他のパラメータを設定する発明すなわちRAMカードに記録されているパラメータを変更し,変更されたパラメータをRAMカードに再度記録し,その後変更されたパラメータをERAに適用する発明(甲2発明)が記載されているということができる。ここで,甲2発明は,車両の挙動に関する情報を収集,記録する装置に関するもので,甲3発明と技術分野が共通する。そして,コンピュータ装置に処理を実行させて,着脱可能\なRAMカード等の記録媒体に記録されているパラメータを変更し,変更されたパラメータをRAMカードに再度記録し,その後変更されたパラメータを上記収集・記録装置に適用する程度の事柄であれば,甲2発明の技術的課題である事故分析に有用な情報を記録するブラックボックス的機能を有する,車両の挙動に係る情報の記録装置(甲第2号証の段落【0001】〜【0007】)とは不可分のものではなく,甲第1ないし3号証に接した当業者であれば,「スピードの出し過ぎや急発進・急制動の有無乃至その回数を予\め設定された基準値を基に自動判定し,また走行距離を用途別(私用,公用,通勤等)に区分して把握してドライバーの運転管理データを得るシステムを提供する」こと等を技術的課題とする甲3発明に,甲2発明を適用する動機付けがあると解して差し支えない。 ウ したがって,甲3発明に甲1発明,甲2発明と甲第4,第5,第6号証の1ないし6記載の周知技術(前記(1)ウ(カ))を適用することにより,本件優先日当時,当業者において,審決が認定した甲3発明と訂正発明2の相違点に係る構成に容易に想到することができたというべきであり,これに反する審決の判断は誤りである。そして,審決がした甲3発明と訂正発明2の一致点の認定については当事者双方は特段の主張をしていないから,結局,訂正発明2は進歩性を欠くものというべきである。原告が主張する無効理由4は訂正発明2に関しても理由があり,これに反する審決の判断は誤りである。なお,無効理由4には甲第2号証が引用例として明示的に挙げられていないが,審決は,原告が審判請求で証拠として挙げたのに応じて,甲第2号証も引用例として取り上げており(20,21頁),本件訴訟で,当事者双方ともにこの審決判断を前提にして,審決の判断の誤りの有無を主張しているので,上記のように甲第2号証も引用例(副引用例)に加えて訂正発明2の上記相違点に係る判断に至ることができるというべきである。\n

◆判決本文

◆関連事件はこちらです。平成22年(ワ)第40331号

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平成24(行ケ)10129 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年10月17日 知的財産高等裁判所

   知財高裁は、無効理由無しとした審決を取り消しました。関連する侵害訴訟で104条の3で権利公使不能と判断されています。
 前記(イ)ないし(オ)を総合すれば,交通事故の発生前後の所定時間にわたって車両の挙動に係る情報を収集,記録すること,車両に設けられた加速度センサーが検出する加速度が所定の閾値を超えるか否かやエアバッグ作動信号の有無に代えて,車両の加速度等が所定の閾値を超えたか否かによって交通事故が発生したか否かを判定する程度の事柄は,本件優先日当時における車両の挙動に係る情報を収集,記録する装置の技術分野の当業者の周知技術にすぎないということができる。そして,訂正発明1,2にいう「特定挙動」は前記のとおり「事故につながるおそれのある危険な操作に伴う車両の挙動」であって交通事故の発生を前提とするものではない(交通事故が発生しない場合も含む)が,訂正明細書の段落【0030】,【0034】,【0050】,図2,3等の記載によれば,訂正発明1,2にあっても,例えばセンサ部から得られる角速度等のデータが所定の閾値を超えたか否かによって「特定挙動」の有無が判定されるから,装置の機能の面に着目すれば,訂正発明1,2において「特定挙動」発生前後の所定時間分の情報を収集,記録する構\成は,上記周知技術において「交通事故」発生前後の所定時間分の情報を収集,記録する構成と実質的に異なるものではないということができる。加えて,上記周知技術と甲3発明とは,属する技術分野が共通し,前者を後者に適用するに当たって特段障害はないから,本件優先日当時,かかる適用を行うことにより,当業者が訂正発明1,2にいう「特定挙動」の発生前後の所定時間分の車両の挙動に係る情報を収集,記録する構\成に想到することは容易であるということができる。さらに,甲第4号証にも,車両内部のセンサから得られた横加速度等の情報から,運転に係る要因による異常又は異常に近い状況の発生の有無を認定し,かかる状況の発生前後の所定時間分の車両の挙動に関する情報を収集,記録する技術的事項が開示されているところ(前記(ア)),上記と同様に装置の機能面の共通性に着目すれば,上記の結論に至ることが可能\である。
エ 以上によれば,甲3発明に,「特定挙動」の発生前後の車両の挙動に係る情報を収集する条件を記録媒体に記録,設定する甲1発明と,「特定挙動」に相当する一定の契機(交通事故等)の発生前後所定時間分の車両の挙動に係る情報収集をする甲第4,第5,第6号証の1ないし6記載の周知技術を適用することにより,本件優先日当時,当業者において,審決が認定した甲3発明と訂正発明1の相違点に係る構成(「特定挙動」発生前後の車両の挙動に係る情報を所定時間分収集するための収集条件に適合する挙動の情報を記録媒体に記録,設定する構\成)に容易に想到することができたというべきであり,これに反する審決の判断は誤りである。オ そして,審決がした甲3発明と訂正発明1の一致点の認定については当事者双方は特段の主張をしていないから,結局,訂正発明1は進歩性を欠くものというべきである。原告が主張する無効理由4は訂正発明1に関して理由があり,これに反する審決の判断は誤りである。
・・・
イ そうすると,甲第2号証には,自動車用イベント(事象)記録装置(ERA)において,コンピュータ装置及び着脱可能なRAMカード(20)を用いて,前方間隔,警告閾値や,自動車の電子制御システムを介してセットされるその他のパラメータを設定する発明すなわちRAMカードに記録されているパラメータを変更し,変更されたパラメータをRAMカードに再度記録し,その後変更されたパラメータをERAに適用する発明(甲2発明)が記載されているということができる。ここで,甲2発明は,車両の挙動に関する情報を収集,記録する装置に関するもので,甲3発明と技術分野が共通する。そして,コンピュータ装置に処理を実行させて,着脱可能\なRAMカード等の記録媒体に記録されているパラメータを変更し,変更されたパラメータをRAMカードに再度記録し,その後変更されたパラメータを上記収集・記録装置に適用する程度の事柄であれば,甲2発明の技術的課題である事故分析に有用な情報を記録するブラックボックス的機能を有する,車両の挙動に係る情報の記録装置(甲第2号証の段落【0001】〜【0007】)とは不可分のものではなく,甲第1ないし3号証に接した当業者であれば,「スピードの出し過ぎや急発進・急制動の有無乃至その回数を予\\め設定された基準値を基に自動判定し,また走行距離を用途別(私用,公用,通勤等)に区分して把握してドライバーの運転管理データを得るシステムを提供する」こと等を技術的課題とする甲3発明に,甲2発明を適用する動機付けがあると解して差し支えない。 ウ したがって,甲3発明に甲1発明,甲2発明と甲第4,第5,第6号証の1ないし6記載の周知技術(前記(1)ウ(カ))を適用することにより,本件優先日当時,当業者において,審決が認定した甲3発明と訂正発明2の相違点に係る構成に容易に想到することができたというべきであり,これに反する審決の判断は誤りである。そして,審決がした甲3発明と訂正発明2の一致点の認定については当事者双方は特段の主張をしていないから,結局,訂正発明2は進歩性を欠くものというべきである。原告が主張する無効理由4は訂正発明2に関しても理由があり,これに反する審決の判断は誤りである。なお,無効理由4には甲第2号証が引用例として明示的に挙げられていないが,審決は,原告が審判請求で証拠として挙げたのに応じて,甲第2号証も引用例として取り上げており(20,21頁),本件訴訟で,当事者双方ともにこの審決判断を前提にして,審決の判断の誤りの有無を主張しているので,上記のように甲第2号証も引用例(副引用例)に加えて訂正発明2の上記相違点に係る判断に至ることができるというべきである。\n

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平成23(行ケ)10320 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年09月27日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、動機づけ無し、阻害要因有りとして、取り消されました。
 審決は,相違点1に関して,引用発明において,本願発明のように,メモリにアクセスするアドレスを含む命令ポインタを,全て命令トレースコントローラに送っておき,不連続なアドレスを示す制御信号により命令トレースコントローラによって選択するようにすることは当業者が容易になし得たことであると認定,判断する。しかし,審決の上記認定,判断には,誤りがある。・・・そもそも,引用発明は,上記のとおり,分岐先アドレスを出力することで,出力される実行情報の量を抑制することを目的とするものであるから,引用発明において,この目的を達成することが可能なアドレス計算部の出力する分岐先アドレスを用いるのに代えて,実行する命令のアドレス全てを出力するとの構\成に至る動機付けがない。むしろ,引用文献1の上記記載によれば,引用発明は,内蔵キャッシュがヒットしている場合,命令の実行状況がマイクロプロセッサのアドレスバスやデータバスに出力されない構成である上,常にマイクロプロセッサの実行情報をプロセッサの外部に出力することは,バスの競合が発生し,マイクロプロセッサの性能\の低下を招くとの認識を前提としており,引用発明において,実行する命令のアドレス全てを出力するように構成することには,阻害事由があるといえる(なお,本願発明は,命令ポインタレジスタから出力され,CPUによって実行されるアドレス(命令ポインタ)のうち,命令トレースに必要な不連続アドレス(分岐先アドレス)のみを,アドレスの不連続を示す制御信号を用いて抽出するものである。これに対し,引用発明においては,命令実行部がアドレス計算部を備え,分岐先アドレスを計算して出力するが,分岐が発生しない場合には,命令プリフェッチ部10において,次サイクルにおいて実行する命令のアドレスが計算され,命令キャッシュ内にある命令が読み出されるものであって,アドレス計算部から出力されるのは,不連続な分岐先アドレスのみであり,CPUによって実行される命令のアドレス全てを出力するものではないから,引用発明におけるアドレス計算部は,本願発明における命令ポインタレジスタに対応するものともいえない。)。これに対し,審決は,本願発明において,制御信号によって不連続であることが通知されたアドレス以外は,命令トレースコントローラで何ら使用されることなく,捨てられるだけであり,全ての命令ポインタを命令トレースコントローラに送ることによって格別の効果を生ずるものではないとして,相違点1は格別のものではないと認定,判断するが,不連続でないアドレスが利用されないからといって,引用発明から本願発明を容易に想到できたとはいえない。以上によれば,引用発明において,本願発明のように,メモリにアクセスするアドレスを含む命令ポインタを,全て命令トレースコントローラに送っておき,不連続なアドレスを示す制御信号により命令トレースコントローラによって選択するようにすることは当業者が容易になし得たことであるとの審決の認定,判断には,誤りがある。\n

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平成23(行ケ)10358 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年08月08日 知的財産高等裁判所

 本件発明の事実認定が誤りであるとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 ア 本件審決は,本願発明の保護回路が半導体スイッチを2つ以上有している構成(解釈1)と2つのみ有している構\成(解釈2)の2つの解釈があり得るとした上,解釈1の場合の相違点3は,容易に想到することができると判断した。イ しかしながら,そもそも,特許請求の範囲には,「2つの半導体スイッチ」と記載され,本願明細書の発明の詳細な説明にも,2つの半導体スイッチ(トランジスタ)がある場合の実施例が記載されており,それを超える数の半導体スイッチがある場合についての記載はない。したがって,本願発明は,保護回路が2つの半導体スイッチを有しているのであって,保護回路が2つ以上の半導体スイッチを有していることを前提とする解釈1は,保護回路が2つのみの半導体スイッチを有していることを前提とする解釈2と別個に判断する必要がなく,あえて解釈1に基づく判断をした本件審決の認定判断は,その点において,誤りである。
 ウ 仮に,本願発明について,保護回路が半導体スイッチを2つ以上有していると解釈したとしても,その場合の相違点3の判断については,以下のとおり,誤りがある。(ア) 本願発明は,前記1のとおり,励磁電流の遮断によって生じる励磁巻線に誘導される逆電圧を「過電圧」として保護しようとするものではなく,発電機の負荷が極めて迅速に低減される動作状態において,発電機の出力電圧に発生するロード・ダンプ電圧を「過電圧」として迅速に低下(保護)させるものである。すなわち,本願発明の「過電圧保護」は,発電機として動作するのに必要な励磁回路の電流を遮断することによって,発電機の出力電圧を下げる作用を奏するものと解すべきである。これに対し,引用発明は,前記2のとおり,高速回転時や低負荷時にもバッテリの充電電圧以上に直流発電電圧がならないように逆方向に界磁巻線電流を流すように制御し保護するものである。(イ) 本件審決は,本願発明の保護回路が半導体スイッチを2つ以上有している構成(解釈1)があり得るとした上,解釈1の場合の相違点3は,容易に想到することができたと判断した。そして,被告は,引用発明は,通常動作時の発電機の界磁側の磁場の制御が目的であって,発電機の負荷開放時における発電機出力の過電圧に対処することを目的としておらず,過電圧保護は,コイルに並列にダイオードを接続することで対処することが技術常識であると主張する。しかしながら,引用発明のように永久磁石を配置すると,界磁巻線電流を零にしても発電電圧が発生するため,一方向にのみ電流を流す構\成では高速回転時や低負荷時に発電電圧が上昇する危険がある。そこで,高速回転時や低負荷時にもバッテリの充電電圧以上に直流発電電圧がならないように逆方向に界磁巻線電流を流すように制御し保護するものであるから,被告の上記主張は理由がない。そして,仮に引用発明に被告のいう技術常識を適用し,界磁巻線(又は半導体スイッチ)に並列にダイオードを接続して,界磁巻線に発生する過電圧を急速に低減させて,界磁巻線に流れる電流を遮断するように構成しても,永久磁石によって生じる磁界により発電機出力が発生するから,発電機の出力電圧の過電圧を低減させることはできず,本願発明にいう「過電圧保護」にはならない。エ よって,解釈1に基づく本件審決の判断は,誤りである。
(2) 解釈2に基づく判断について
ア 本件審決は,本願発明の保護回路が半導体スイッチを2つ以上有している構成(解釈1)と2つのみ有している構\成(解釈2)の2つの解釈があり得るとし,解釈2の場合の相違点3(本願発明は,励磁巻線に,2つの半導体スイッチを有し,第1の半導体スイッチ及び前記励磁巻線の直列回路に対して並列に第1のダイオードが配置され,さらに第2の半導体スイッチ及び前記励磁巻線の直列回路に対して並列に第2のダイオードが配置された保護回路が配属され,電気的負荷が迅速に低減する際に前記励磁巻線に蓄積された磁気エネルギが電気エネルギに変換されてバッテリへフィードバックされ,前記励磁巻線が遮断されるのに対し,引用発明は,そのような構成とされていない点)は,容易に想到することができると判断した。そして,被告は,引用発明においても,過電圧保護はコイルにダイオードを接続することで対処する技術常識の下,解釈2に基づいてスイッチング素子の個数を2個として周知技術(乙1〜3)のように第1,2のダイオードから構\成されるフィードバック回路とすることは当業者が容易に考えられたことである旨主張する。イ しかしながら,引用発明の「4つの半導体スイッチを有するH型ブリッジ回路」を「2つの半導体スイッチを有する回路」に変更すると,増磁電流と減磁電流を流すために用いられるH型ブリッジ回路とした引用発明の基本構成が変更され,減磁電流を流すことができなくなり,引用発明の課題を解決することができなくなるから,仮に被告主張の周知技術があったとしても,このような変更には阻害要因がある。そして,4つのスイッチング素子を用いる引用発明に対して,スイッチング素子の数を変更することなく周知例2に記載された周知技術を適用すると,4つのスイッチング素子に4つのダイオードが逆方向に並列接続される構\成になり,解釈2に係る本願発明(保護回路が半導体スイッチを2つのみ有しているもの)の構成とならないことは明らかである。\n

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平成23(行ケ)10389 審決取消請求事件 実用新案権 行政訴訟 平成24年07月25日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が取り消されました。実用新案権ですが、花芯のみから芳香を発散させるという考案が対象です。
 以上の記載事項によれば,従来,芳香剤発散容器の気散管は,芳香剤を上昇浸透し発散させる機能を有する繊維素材が棒状のまま使用されていたため,その外観から外的美観を損なうという問題があったところ,引用考案は,気散管の上端部をすそ広がり状に形成し,その上端部を着色することによって人造花芯,すなわち,花の一部として装飾するとともに,キャップに花弁等を取り付けることによって,外的美観をもたらすものである。そして,引用考案は,気散管の上端部をほぐすことによって形成された花芯のみから芳香を発散させることを技術的思想の中核とするものということができる。 
ア 前記2によれば,引用考案の気散管は,芳香剤を上昇浸透させて上端部に導き,すそ広がり状に形成された上端部から芳香を発散させ,当該上端部を着色し人造花芯(人工花芯)とし,花の一部として装飾する,という機能を有する。気散管は,中空のノズル内に収容され,キャップに取り付けられた花弁等と接することはない。芳香の発散は,専ら気散管の上端部のみによって行われ,花弁の材質にかかわりなく,花弁からは芳香が発散されない。このように,引用考案は,芳香剤は気散管から気散するものであって,花形の形態から気散するものではない。これに対し,ソ\ラの木の皮で形成されたソラフラワーは,花全体に芳香剤が浸透して,花全体から芳香が発散されるものと解され,ソ\ラの木の皮から成る花弁部の細かい組織により,液体芳香剤が緩やかな速度で根本から先端の方へ浸透していくのであるから,芳香を発散しない引用考案の花弁とは機能的に相違する。
 イ また,引用考案において,花の一部となる人造花芯は,気散管を形成する繊維をほぐして線状化することによって形成されるものであるところ,このような手法では,繊維をほぐしても線状にしかならず面状にはできないから,花弁のような面状のものを形成することはできない。このように,引用考案は,気散管の上端部の繊維をほぐして花の一部とすることを前提とし,気散管の上端部をほぐすことによって形成された花芯のみから芳香を発散させることを技術的思想の中核とするものである。したがって,引用考案においては,芳香の発散も,花の一部から行われるにとどまり,花弁や花全体から芳香を発散させるという技術的思想は存在しない。
 ウ しかも,引用考案における気散管が,花弁等と接しないように構成されているのは,気散管を挿抜する際,気散管中の芳香剤が花弁等に付着しないようにするという積極的な理由に基づくものであり,そのために,気散管を敢えて中空のノズル内に収容しているものと認められる。花弁への芳香剤の付着を防止することは,花弁を含む花全体からの芳香の発散を否定することを意味するのであるから,この点において,花弁を含む花全体から芳香を発散させるソ\ラフラワーを適用することの阻害要因が存在する。
 エ 以上のように,機能及び技術的思想が異なることに照らせば,仮にソ\ラフラワーが周知であったとしても,これを引用考案に適用することの動機付けがないばかりか,むしろ阻害要因があるというべきである。したがって,本件考案1は,引用考案に基づいてきわめて容易に想到できたものということができず,これをきわめて容易に想到できるとした本件審決は誤りである。

◆判決本文

◆関連案件はこちらです。平成23年(行ケ)第10390号

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平成23(行ケ)10098 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年07月17日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、阻害要因ありとして破棄されました。
 上記(2)のとおり,刊行物1記載の発明は,ストロボライト20を間欠発光させると同時に,ゴルフクラブ34及びゴルフボール13を,プレイヤー1の正面前方及び上方の2台のCCDカメラ14,15によって高速多重撮影するものであるところ,ゴルフクラブ34又はゴルフボール13に,刊行物3記載の再帰反射体を取り付けた場合,ストロボライト20の間欠発光を再帰反射体によって反射させ,その反射光を2台のCCDカメラ14,15で高速多重撮影することになる。ここで,上記(4)ウのとおり,再帰反射体は,光源から入射した光を,この光源に完全に一致する方向,及び光源の近傍周囲の方向に反射させるものであるから,ストロボライト20の反射光を正面前方のCCDカメラ14に入射させようとすると,正面前方のCCDカメラ14の近傍にストロボライト20を配置することになるが,そのようにすると,上方のCCDカメラ15は,ストロボライト20の近傍周囲には配置されていないから,再帰反射体からの反射光を上方のCCDカメラ15に入射させることはできない。そこで,ストロボライト20の反射光を上方のCCDカメラ15に入射させようとして,このCCDカメラ15の近傍にストロボライト20を配置させると,今度は,正面前方のCCDカメラ14が,ストロボライト20の近傍周囲には配置されなくなるから,再帰反射体からの反射光を正面前方のCCDカメラ14に入射させることはできなくなる。そして,ストロボライト20を,正面前方のCCDカメラ14の近傍以外の位置や上方のCCDカメラ15の近傍以外の位置に配置すると,再帰反射体からの反射光は,2台のCCDカメラ14,15のいずれにも入射させることはできない。そうすると,刊行物1記載の発明のゴルフボール13又はゴルフクラブ34に再帰反射体を取り付けた場合に,ストロボライト20をどのように配置しても,再帰反射体からの反射光を2台のCCDカメラ14,15の両方に入射させることはできないし,また,再帰反射体を採用したことによって,対象物と他の画像とのコントラストが更に強調されるため,安価な構成で検出精度を高めることが可能\となるという本願発明の効果(段落【0008】)も得られない。なお,ストロボライトの配置する場所によっては,一方のCCDカメラに再帰反射体からの反射光が入射し,かつ,他方のCCDカメラに再帰反射体からの微弱な光が入射するようにできたり,また,両方のCCDカメラに再帰反射体からの微弱な光が入射するようにできるかもしれないが,再帰反射体からの微弱な光がCCDカメラに入射しても,対象物と他の画像とのコントラストは強調されないから,再帰反射体を採用したことによる上記効果は得られない。イ したがって,刊行物1記載の発明に刊行物3記載の技術を適用することには,阻害要因があるといえる。よって,相違点3について,「刊行物1記載の発明において,対象物の位置の検出を容易に行うために,刊行物3記載の技術の対象物が『再帰反射体を含む』事項を適用することは,当業者が容易に想到し得たことである」(9頁18〜21行)とした本件審決の判断は誤りである。

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平成23(行ケ)10237 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年03月05日 知的財産高等裁判所

 技術的思想に反するもので本件発明の構成に改める発想が生じるはずがないとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 前記のとおり,引用発明のガスケット(6)に設けられた突条部17の役割は,その弾性力(反発力)で,可動側板(可動形側板4)を歯車端面側に押し付けることにあり,突条部17と可動側板の間に作動液(高圧流体)が侵入して,液圧でガスケットをケーシング(1)に押し付ける(押し上げる)こと等は想定されていないが,本願発明のガスケット又は可動側板に設けられる「凹欠」は,可動側板の溝の底部の隅(隅部)の「Rをとっている部位」すなわち曲面状の部位(部分)にまで達するように,例えば溝状の部分を設け,この部分に作動液が侵入できるようにして,ガスケットが作動液によって低圧側の溝壁に押し付けられたときでも,作動液の液圧で,ガスケットをケーシングに向かって押し付け,また可動側板を歯車端面に向かって押し付けて,可動側板の圧力バランス及び歯車端面に対する封止機能(シール)を確保できるようにするものである。そうすると,本願発明のガスケットの「Rをとっている部位」や「凹欠」が果たす機能\と引用発明のガスケットの突状部17等が果たす機能は異なり,引用発明のガスケットでは,可動側板(可動形側板4)の溝底隅部でガスケットと可動側板との間に作動液が侵入して可動側板の圧力バランスをとることが想定されていない。したがって,引用発明ではガスケットと可動側板(可動形側板4)との間の隙間10が可動側板の溝底隅の曲面状の部位(Rをとっている部位)にまで及ぶことが予\定されていない。また,刊行物1の8頁6ないし13行には,「前記隙間10内に導入された高圧流体の圧力によって,前記ガスケット6の帯状部16がボディ7の端壁7bの内面7cに押し付けられ固定されるので,高圧領域Hと低圧領域Lとの圧力差によってガスケット6が低圧領域側へはみだすという不都合も有効に防止されるものであり,該ガスケット6の耐久性を向上させることができる。」との記載があるから,引用発明のガスケット(6)と可動側板(可動形側板4)の構成には,作動液の液圧でガスケットの低圧側の側面を可動側板の溝の側面(内側面)に押し付け密着させて固定することで,ガスケットのそれ以上の低圧側へのはみ出しを有効に防止するという機能\があるということができる。ここで,ガスケットがかかる機能を発揮するためには,可動側板の溝の側面と底面が成す隅部に向かってガスケットが密着するように押し付けられるのが好ましく,上記溝の底面から離れるように,すなわち上記隅部付近でガスケットが可動側板から離れるように押し上げられると,ガスケットが上記溝の低圧側側面を超えてはみ出すおそれが生じるし,また,上記隅部付近でガスケットが可動側板を歯車端面に向かって押し付ける力を得る必要があるとはいえない。 そうすると,引用発明のガスケットと可動側板の構\成を,可動側板の溝の低圧側側面と底面が成す曲面状の隅部にまで作動液が侵入して可動側板の圧力バランスをとることができるよう,ガスケットと可動側板との間の隙間10が上記の曲面状の部位(Rをとっている部位)にまで及ぶように改めることは,突条部17の機能を害し,またガスケットの低圧側へのはみ出しを防止するという技術的思想に反するものであるから,上記構\成に改める発想が生じるはずはなく,当然のことながら当業者には容易に想到できる事柄ということはできない。
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 また,本願発明のガスケットに相当する乙第3号証のリップシール(24)は,本願発明の可動側板に相当するサイドプレート(12)ではなく,反対側のカバー(14)に装着され,リップシールとサイドプレートの間に設けられたバックアップ(17)を介してサイドプレートを押し付けるもので,本願発明のガスケット及び可動側板と構成が相当異なるから,乙第3号証に記載された技術的事項を根拠に,本願発明のガスケット等の構\成が当業者が容易に行い得る設計変更(設計的事項)の範疇に属するということはできない。乙第4号証の図2,4からも,ガスケットに設けられた凹部の範囲及び形状は必ずしも明確でなく,その余の明細書中の記載でもガスケットに設けられた凹部の技術的意義が明らかでないから,上記図等に記載された技術的事項を根拠に,本願発明のガスケット等の構成が当業者が容易に行い得る設計変更(設計的事項)の範疇に属するということはできない。\n

◆判決本文

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