2024.08.26
令和5(行ケ)10146 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 令和6年7月25日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決(拒絶査定不服審判)が維持されました。
原告は、甲1には卵パックの搬送方向を変更することにつき、記載も示唆もない
と主張する。しかし、上記(2)イのとおり、引用発明に係る装置において、コンベア
や関連する装置の配置を最適化することは、当業者において自明の課題といえると
ころ、同一の技術分野及び作用機能に係る甲2には、パックの搬送方向を変更でき\nる旨が明記されているから、引用発明及び甲2に接した当業者が、引用発明におけ
る卵パックの搬送方向につき、甲2に記載された構成を適用する動機付けが認めら\nれる。原告の主張は採用することができない。
原告は、引用発明ではラベルが空気抵抗の影響を受けて挙動が不安定になり落下
位置がずれやすいのに対し、甲2発明ではラベルが空気抵抗の影響をほとんど受け
ないとして、前提の異なる甲2記載の構成を引用発明に採用することはできないと\n主張する。しかし、甲1には、従来の装置の課題として「ラベルを水平方向にしたま
ま落下させるとラベルは空気抵抗でどこに落下するか予測できない」(明細書2頁1\n3〜15行目)ことを挙げ、引用発明は「ラベルを水平方向にしたまま落下させな
いで、ラベルを斜めにした状態で落下させると、ラベルはその傾斜の下方延長方向
に確実に落下すると云う原理に基(づ)いている」(同3頁1〜4行目)として課題
を解決する旨が記載されている。甲1の記載を総合しても、このようにして課題を
解決することとした引用発明において、それにもかかわらず、ラベルが空気抵抗の
影響を受けて挙動が不安定になり、ラベルの落下位置がずれやすいと認められるも
のではなく、少なくとも、引用発明における卵パックの搬送方向を変更することに
阻害要因があるとは認められない。原告の主張は採用することができない。
原告は、引用発明では、ラベルが落下していく傾斜の下方延長方向と、コンベア
による卵パックの搬送方向とが交わるようにすることで、発明の目的を達成してい
るところ、卵パックの搬送方向を変更することはその目的に反することになり、阻
害要因があると主張する。しかし、甲1には、ラベルが落下していく方向と卵パッ
クの搬送方向とが交わるようにすることにより発明の目的を達成している旨の記載
はないし、甲1の記載を総合しても、卵パックの搬送方向が変更された場合に、引
用発明の目的が達成されないと認めることはできない。また、パックが輸送される
タイミングに合わせてラベルを投入することは、当該技術分野における技術常識と
いえ、パックの搬送方向を変更させた上で、タイミングに合わせてラベルを投入で
きるようにすることは、当業者が通常採用し得る事項といえる。引用発明における
卵パックの搬送方向を変更することに阻害要因があるとはいえない。
原告の主張は採用することができない。
・・・
原告は、本件審決が引用発明につき、「ラベルLは、保持を解除された後も、上ベ
ルト3と接してベルトの駆動方向に押し出されるようになる」とした点につき、ラ
ベルLは、上下ベルト3、4の挟持が解除された後、再び上ベルト3に接すること
はないから、本件審決の認定は誤りであると主張する。しかし、本件審決の上記認
定部分は、ラベルLが上ベルト3との接触を離れた後に再び上ベルト3に接触する
旨をいうものとは解されない。引用発明において、ラベルLは、上下ベルト3、4の
運動によって輸送されていくから、その前端部分から後端部分にかけて、徐々に上
下ベルト3、4の挟持から離脱していくこととなるが、その間も、少なくとも後端
部分は上ベルト3に接してその運動により駆動方向に押し出されていく。本件審決
の上記認定部分は、これと同旨をいうものと理解できる。原告の主張は採用するこ
とができない。
原告は、卵パックにラベルを投入する直前にラベルを一旦保持する構成は技術常\n識であるから、引用発明においても、ラベルLの後端部がプーリ7、10の位置に
到達した際、上下ベルト3、4は駆動を止めてラベルLを一旦保持し、その後、上下
ベルト3、4が駆動を再開することで保持が解除され、ラベルLは、傾斜の下方延
長方向(ラベルの短辺に沿った方向)に落下すると主張する。しかし、仮に引用発明
において上下ベルト3、4が駆動を止めてラベルLを保持し、その後駆動を再開し
てラベルLの保持を解除するとしても、上下ベルト3、4の駆動の再開により、ラ
ベルLには上下ベルト3、4の駆動による同駆動方向への駆動力が働くのであるか
ら、ラベルLがその長辺に沿った方向に押し出されることは否定できない。原告の
主張は採用することができない。
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2024.08. 9
令和5(行ケ)10084等 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 令和6年7月17日 知的財産高等裁判所
審判では訂正要件充足、訂正後の発明について進歩性違反無しと判断されました。知財高裁は、訂正自体は有効だが、進歩性無しと判断しました。
被告(特許権者)は、「甲2発明に甲1発明を適用して、甲2発明のインナロータ型モータをアウタロータ型モータに置き換え、さらに周知技術を適用して磁石を筒缶部の内周面に貼設されるようにするという複数のステップを求めるものであり、容易の容易として認められない。」と主張していました。
甲8文献は、平成15年9月19日公開された発明の名称を「ロータおよびその製造方法」とする特許出願の公開公報(特開2003−264963)である。甲8文献に記載された技術は、ロータ軸に接着剤を用いて焼結磁石を固定したロータおよびその製造方法に関するものであり(甲8文献の段落【0001】)、甲8文献の図1(a)及び(b)には、ロータ10は、ロータ軸12の外周面上に周方向に沿って配列された複数の磁石片20と、複数の磁石片20を外周面に固定する接着剤層14とを備えていること(甲8文献の段落【0021】)が記載され、甲8文献の図1において、複数の磁石片20がロータ10に互いに隙間を空けて貼設されていることが記載されている。\n
(エ) 甲9文献(日本接着学会誌 Vol.39、No.9〔2003/9/1〕「構造接着技\n術の応用展開と最適化技術の構築」原賀康介)には、モーターの磁石接\n着について、甲9文献の図7は、モーターのロータ―の構\造を示してお
り、スパイダーにセグメント状の永久磁石が接着されており、磁石の接
着には、従来から加熱硬化型エポキシ系接着剤が使用されてきたが、ネ
オジウム系磁石は線膨張係数が0からマイナスであるため、加熱硬化では熱応力が大きく耐ヒートサイクル性に劣ることや加熱硬化で作業性に劣るため、最近は生産性に優れた2液室温硬化型の耐熱性アクリル系接着剤に変わりつつあることが記載されている。
(オ) 甲5文献は、平成17年6月2日公開された発明の名称を「回転電機
のロータ」とする特許出願の公開公報(特開2005−143248)
である。甲5文献に記載された技術は、発電機やモータ等の回転電機に
使用されるロータに関するものであり(甲5文献の段落【0001】)、
その実施形態である甲5文献の図1及び図3のアウターロータ5は、ロ
ータ本体50と、ロータ本体50に固定された複数個の磁石部7とを有
し、磁石部7は、ロータ本体50のリング部55の内周領域57におい
て周方向に間隔を隔てて保持された永久磁石で形成されていること(甲
5文献の段落【0030】〜【0034】、図3)、磁石部7は接着剤
等により 方向に間隔を隔てて形成された着座溝61に接合されている
(甲5文献の段落【0034】)、上記実施形態は、回転電機として働
くモータのアウターロータ、インナーロータに適用しても良いこと(甲
5文献の段落【0072】)が記載されている。そして、甲5文献の図
1には実施形態の発電機の断面図が、甲5文献の図3には発電機のアウ
ターロータのうち磁石部をリング部が保持している状態の異なる方向の
部分断面図が、それぞれ記載されている(甲5文献の段落【007
8】)。
(カ) すなわち、甲5文献においては、磁石を保持する態様として、アウタ
ロータ型電動モータでは、ステータの外周側(ロータの内周側)に複数
の磁石が相互に隙間を空けて配置されることが記載されている。また、
甲8、9文献においては(甲70、71文献にも同様の記載があること
から、当時の技術常識と認められる。)、接着剤固定法では、通常、エ
ポキシ系やアクリル系などの接着剤で固定する方法により貼設されるこ\nとが、それぞれ記載されている。
イ 以上を踏まえ、相違点II)について検討すると、アウタロータ型電動モー
タにおいて、磁石を保持するために、複数の磁石をステータの外周側(ロ
ータの内周側)に沿って配置し、接着剤固定法等により「貼設」すること\nは、周知技術であると認められる(甲5、8、9)。したがって、上記周知技術を適用して、相違点II)の構成とすることは当業者にとって容易想到であったというべきである。\n
ウ この点について、被告は、主引例の甲1発明と、副引例(甲5、8、9)
の各技術の課題は相互間でも異なるから、組み合わせることに動機付けを
肯定する余地はないなどと主張する。しかしながら、前記のとおり、これ
らの副引例(甲5、8、9)に記載された磁石の配置及び固定方法は、周
知技術であると認められるから、これを適用することの動機付けを肯定す
ることが困難ということはできない。
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2024.07.29
令和6(行ケ)10002 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 令和6年5月23日 知的財産高等裁判所
進歩性違反なしとした無効審決が取り消されました。審決では、設計書で定まっている事項を変更することには阻害要因がありと判断されていましたが、裁判所はこれを否定しました。
本件明細書等における、白色繊維と黒色繊維の混合比率を変えた実施例
1ないし7と比較例1及び2による試験によれば、この混合比率と、繊維
の縦及び横の強度及び伸度とは、相関関係はないといえる(段落【004
8】の試験結果)。また、光の反射性は、黒色繊維の混合比率を高めるほど
眩しさを感じにくくなる(段落【0050】)。そして、本件明細書等にお
いて、黒色繊維を10%未満の割合で混合した比較例との対比は行われて
おらず、比較例1及び2は、全て白色繊維のもの及び全て黒色繊維のもの
であるから、白色繊維と黒色繊維の混合比率を、10ないし90%の範囲
とした場合と、10%未満とした場合との効果の差異は、本件明細書等に
記載された実施例及び比較例による試験からは明らかでない。
以上によれば、本件発明2について、黒色繊維の混合比率を高めると、
1)斑が形成され、これを用いて不織布の伸び率を把握することが可能とな\nり、2)光の反射を抑えて眩しさを感じにくくなり、3)耐候性及び耐摩耗性
が高まり、他方、黒色繊維の混合比率を高くしすぎると、全体の色が濃く
なって斑を識別するのが困難になるという結果が生じるが、本件発明2に
おいて黒色繊維の混合比率を10ないし90%の範囲としたことに特段
の技術的意義があるとは認められない。
エ 上記ア及びイのとおり、カーボンブラックが、耐候性、耐摩耗性及び遮
光性の向上、光の反射による作業者への作業上の障害の防止、景観を損な
うことの防止等を目的として、所望の効果が発揮できる量で土木工事用不
織布を含む土木工事用シートに添加されているものであること、及び、土
木工事用の防砂シート(不織布又は織布)として用いられる製品の色の濃
さが一様でなく、白色の製品、灰色の斑模様の製品とともに濃灰色ないし
黒色の製品も使用されていることが、本件出願日の時点における技術常識
であったと認められ、白色繊維と黒色繊維を混合した土木工事用不織布に
おける黒色繊維の混合比率が多様なものであると当業者が認識していた
ということができる。
また、上記ウのとおり、本件発明2についても、黒色繊維の混合比率を
10ないし90%の範囲としたことに特段の技術的意義があるとは認め
られない。
そうすると、引用発明1の土木工事用不織布において、耐候性、耐摩耗
性及び遮光性の向上、光の反射による作業者への作業上の障害の防止、景
観を損なうことの防止、並びに不織布の伸び率測定のための斑模様の明確
さを好適なものとするために、カーボンブラックにより着色した黒色繊維
の比率を増減することは、当業者の設計事項にすぎないというべきである。
また、白色繊維と、カーボンブラックにより着色した黒色繊維を混合し
た土木工事用不織布において、黒色繊維の割合を高めれば、斑模様が濃く
なって、斑点の間の距離の測定に基づく不織布の伸び率の測定が容易にな
るほか、耐候性、耐摩耗性及び遮光性の向上、光の反射の抑制といった効
果があることが、上記のとおり本件出願日の時点における技術常識であっ
たといえるから、黒色繊維の比率を7.5%より高める動機付けがあった
ということができる。
以上によれば、引用発明1について、黒色繊維の混合比率が7.5%と
されているところ、これを10ないし90%の範囲とすることによって、
相違点2に係る構成を導くことは、当業者が容易に想到することができた\nものというべきである。
オ 本件審決は、800Z製品は一定の品質を保って製造されるものであり、
白色繊維と黒色繊維の比率を変えるような設計変更は通常行わないとか、
800Z製品の製品仕様書(甲22)では黒色の綿の混率が5%と記載さ
れていることを指摘した上で、製品仕様における黒色繊維の比率5%を桁
の異なる10%以上にすることには阻害要因があると判断している。
しかし、800Z製品について、製品の同一性あるいはその品質を維持
するために、仕様書で定められた仕様の遵守が求められるとしても、同製
品を基に、仕様の一部を変更して、新たな仕様の土木工事用不織布の製品
を開発、製造しようとすることは当然に行われることであって、800Z
製品の仕様として黒色繊維の比率が特定の値に定められているからとい
って、この値を変更することに阻害要因があると認められることにはなら
ず、800Z製品の使用における黒色繊維の比率が1桁である5%とされ
ていることから、この比率を2桁の10%にすることに阻害要因があると
解することもできない。
そして、前記ウ及びエのとおり、黒色繊維の比率を特定の割合又は特定
の範囲に定めることについて特段の技術的意義があるとは認められず、か
つ、カーボンブラックにより着色した黒色繊維の比率を高める動機付けが
あったといえることからすれば、引用発明1について、その黒色繊維の比
率を、上記仕様書に記載された数値から変更することに阻害要因があると
は認められない。
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2024.06. 9
令和1(ワ)24736 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 令和6年3月15日 東京地方裁判所
空調服の特許について、進歩性無しとして、権利行使不能と判断されました。\n
前記aないしdの各記載によると、本件出願当時、被服の技術分野
においては、二つの紐状部材を結んでつないで長さを調整することや、
そもそも二つの紐状部材を結んでつなぐこと自体、手間がかかって容
易ではないとの周知かつ自明の課題が存在したものと認められる(な
お、前記1(1)のとおり、本件明細書にも、本件出願当時に存在した課
題として、一組の調整紐を結んで所望の長さになるようにすることは
非常に難しく、ほとんどの着用者は空気排出口の開口度を適正に調整
することができないとの記載がみられるところである。)。
そうすると、被服の技術分野に属する本件公然実施発明の構成\n(「前記空調服の服地の内表面であって前記襟後部又はその周辺の第\n一の位置に取り付けられた紐1と」、「前記紐1が取り付けられた前記
第一の位置とは異なる前記襟後部又はその周辺の第二の位置に取り付
けられた紐2とを備え」、「2本の紐(1、2)を結ぶことによって、
空気排出量を調節することができる」との構成)自体からみて、また、\n乙46説明書に「首と襟足の間隔を広くし」との記載及び紐が首の後
ろにある旨の図示(前記(1)イ )があることからすると、本件公然実
施発明に接した本件出願当時の当業者は、上記の課題を認識するもの
と認めるのが相当である。
乙33発明’が解決する課題
前記(3)アの記載のとおり、乙33発明’は、「帯紐6a」に「ボタン
7a」を、「帯紐6b」に複数の「ボタン7b」をそれぞれ設け、「ボタ
ン7a」を複数ある「ボタン7b」のいずれか一つにはめ込むとの構成\nを採用することにより、「帯紐6a」及び「帯紐6b」の装着長さを調
整し、もって、個人差のある腰回りの大きさに応じて介護用パンツ1を
装着することを可能にするというものであるところ、乙33公報に装着\nの容易さについての記載(【0008】、【0009】、【0011】)があ
ることや、前記 eのとおりの周知かつ自明の課題が本件出願当時に被
服の技術分野において存在したとの事実も併せ考慮すると、本件出願当
時の当業者は、乙33発明’につき、これを二つの紐状部材を結んでつ
ないで長さを調整することが手間で容易ではないとの課題を解決する手
段として認識するものと認めるのが相当である。
課題の共通性についての結論
前記 及び のとおりであるから、本件公然実施発明から認識される
課題と乙33発明’が解決する課題は、共通すると認めるのが相当であ
る。
ウ 本件公然実施発明に乙33発明’を適用することについての動機付けの
有無
前記ア及びイのとおりであるから、被服の技術分野に属する本件公然実
施発明に接した本件出願当時の当業者は、空気排出スペースの大きさを調
整するための手段である「紐1」及び「紐2」を結んでつないで長さを調
整することが手間で容易でないとの課題を認識し、当該課題を解決するた
め、同じ被服の技術分野に属する乙33発明’を採用するよう動機付けら
れたものと認めるのが相当である。
エ 原告の主張について
原告は、本件公然実施発明は、排出する空気の量に応じて、中に支え
る物体がない、空気を排出するスペースを調整するのに対して、乙33
発明’は、体型等に応じて中に支える物体があるものの周りを調整する
ものであるから、その目的や機能が異なると主張する。\nしかしながら、本件公然実施発明と乙33発明’とは、紐状の部材の
締結により被服が形成する空間の大きさを調整するとの目的ないし
する。
しかしながら、本件公然実施発明と乙33発明’とは、紐状の部材の
締結により被服が形成する空間の大きさを調整するとの目的ないし機能\nにおいて異なるものではないから、本件公然実施発明が空調服の首回り
の空気排出スペースの大きさを調整するものであるのに対し、乙33発
明’が介護用パンツの腰回りの大きさを調整するものであること、すな
わち、両者が何を調整するのかにおいて異なることは、前記ウに係る結
論を左右するものではない。
また、原告は、1)空調服は、世の中に存在しなかった革新的技術であ
ることや、2)本件発明1は従来技術に比して有利な効果を有しており、
本件公然実施発明と異なる技術的意義を有することを主張している。
しかし、上記1)について、本件発明1は、本件公然実施発明等によっ
て既に実用化されている空調服における空気排出口の開口度の調節方法
に係る発明であり、従来技術の延長線上に位置付けられるものと評価で
きるところ、上記の調節方法が被服の技術分野で周知といえることは前
記(3)で説示したとおりである。そうだとすれば、空調服という製品自体
が革新的技術であることは、本件発明1の進歩性を基礎付ける事情とは
ならないというべきである。
上記2)について、本件全証拠によっても、本件発明1がその進歩性を
基礎付けるほどの有利な効果や技術的意義を有しているとは認められな
い。
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2024.02.19
令和5(行ケ)10049 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 令和6年1月31日 知的財産高等裁判所
進歩性無しとした審決が維持されました。争点は、相違点の認定誤り、動機付け、阻害要因です。
(1) 原告は、引用例2及び引用例3に開示されたイメージファイバを介して照
明光を導く周知の方法はイメージファイバを振動させないものであるのに対
して、引用発明はイメージガイド2の接眼側の端部を振動させるものである
から、イメージファイバの前提構成が異なるものであって、引用発明に上記\nの周知の手法を適用する動機付けがあるとはいえない旨主張する。
(2) しかし、引用例2及び引用例3によれば、集光レンズを介して入射した光
源からの光をイメージファイバにより伝送することは、本件審決が認定する
とおり周知の手法であると認められるところ、引用例3の【0008】、及
び特開2000−121460号公報(乙2)の【0018】、【001
9】、【0029】の記載によれば、内視鏡の技術分野において挿入部を細
径化することは周知の課題であると認められるから、その課題は引用発明に
も内在していると認められる。
そして、本件審決の認定する周知の手法は、引用発明にも内在する上記の
課題の解決手段となるものであるから、引用発明にこれを適用する動機付け
はあるというべきである。
(3) 原告は、さらに、照明光を被観察物体に導くイメージガイド2の接眼側の
端部を振動させると、被観察物体の撮像にどのような影響を与えるのかが不
明であることを考慮すれば、上記周知の方法を引用発明に採用することには
阻害要因がある旨主張する。
しかし、イメージファイバを振動させる技術と、光源からの光をイメージ
ファイバにより伝送する技術とを同時に採用できないとする技術的根拠は見
当たらず、上記(2)のとおり周知の課題を解決する手段である周知の方法を
採用することは、当業者であれば容易に着想して試みるものと認められる。
(4) したがって、引用発明に引用例2及び引用例3の周知の手法を適用するこ
とによって、相違点1及び相違点2に係る構成は容易に想到し得るとした本\n件審決に誤りは認められず、原告主張の取消事由2は理由がない。
◆判決本文
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