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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

新規性・進歩性

◆平成18(行ケ)10102 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年12月20日 知的財産高等裁判所

  進歩性なしとした審決が取り消されました。争点の1つが審決にて追加された周知技術でした。裁判所は、本件においては、結論に影響を与えるものであり、手続き的に許されないとして審決を取り消しました。
  「被告も指摘しているとおり,周知技術は,その技術分野において一般的に知られ,当業者であれば当然知っているべき技術をいうにすぎないのであるから,審判手続において拒絶理由通知に示されていない周知事項を加えて進歩性がないとする審決をした場合であっても,原則的には,新たな拒絶理由には当たらないと解すべきである(例えば,東京高判平成4年5月26日・平成2年(行ケ)228号参照)。
 しかしながら,本件では,本願補正発明と引用発明1との相違点に係る構成が本願補正発明の重要な部分であり,審査官が,当該相違点に係る構\成が刊行物2に記載されていると誤って認定して,特許出願を拒絶する旨の通知及び査定を行い,しかも原告が審査手続及び審判手続において刊行物2に基づく認定を争っていたにもかかわらず,審決は,相違点に係る構成を刊行物2に代えて,審査手続では実質的にも示されていない周知技術に基づいて認定し,さらに,その周知技術が普遍的な原理や当業者にとって極めて常識的・基礎的な事項のように周知性の高いものであるとも認められない。このような場合には,拒絶査定不服審判において拒絶査定の理由と異なる理由を発見した場合に当たるということができ,拒絶理由通知制度が要請する手続的適正の保障の観点からも,新たな拒絶理由通知を発し,出願人たる原告に意見を述べる機会を与えることが必要であったというべきである。そして,審決は,相違点の判断の基礎として上記周知技術を用いているのであるから,この手続の瑕疵が審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。」

◆平成18(行ケ)10102 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年12月20日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10395 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年12月20日 知的財産高等裁判所

  進歩性判断において、拒絶理由通知にて具体的に開示されていない周知技術について、審判で新たに追加することは許されないと判断されました。
 「しかるに,審決は,相違点c について,上記周知慣用技術を適用して本願発明の構成とすることの容易想到性を肯定する判断をしたものであるが,拒絶理由通知においては,上記周知慣用技術の内容自体はおろか,その根拠となる特許公報にも,言及すらしていないのであるから,特許法159条2項で準用する同法50条に違背する違法があり,かつ,その違法は明らかに結論に影響がある場合に当たるものというべきである。したがって,その余の取消事由について判断するまでもなく,審決判断1は取消しを免れない。
 確かに,審決は,その判断に当たり,拒絶査定(その引用する第2回拒絶理由通知)で示されなかった新たな公知文献を引用したわけではなく,また,用いたのは周知慣用技術であるというのではあるが,本件のような事案においては,出願に係る発明と引用された発明との構成上の相違点について,特定の技術を用いる場合には,その技術が周知技術であっても,いかなる周知技術であるかについては,特段の事情がない限り,拒絶理由として通知されていなければならないものと解すべきである。なお,当該周知技術が拒絶理由で通知されていれば,その裏付けとなる刊行物等の証拠については,これを追加的に変更をしたり,別なものに交換的に変更したりするのは許容されるが,本件は,周知技術自体が拒絶理由通知に開示されていないのであるから,そのような許容される場合に該当するものではない。なお,周知例2(刊行物3)については,第1回拒絶理由通知書に引用文献1の発明として引用されているが,周知例2には,セルロース系破砕物の個々の単体表\面全体に熱可塑性樹脂成形材を付着させるという周知技術が開示されていると認定することができない(この点は,審決判断2で検討する。)から,周知例2が第1回拒絶理由通知書に引用されていることを理由に,審決の上記判断上の措置を正当化することはできない。」

◆平成17(行ケ)10395 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年12月20日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10227 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年11月29日 知的財産高等裁判所

  新たな用途を発見したか否かが争われました。知財高裁は、新規性なしとした審決を取り消しました。
 本件発明の請求項は「アスナロ又はその抽出物を有効成分とするシワ形成抑制剤」です。これに対して、引用発明は、「アスナロ又はその抽出物を有効成分とする美白化粧料組成物」で、用途のみ異なる発明です。
 「「シワ形成抑制」という用途が,その技術分野の出願時の技術常識を考慮し,新たな用途を提供したといえるのでなければ,発明の新規性は否定されるので,以下,本願発明の「シワ形成抑制」という用途が,新たな用途を提供したといえるかどうかという観点から判断する。・・・これまで述べたところを総合すると,当業者が,本願出願当時,引用発明の「美白化粧料組成物」につき,「シワ」についても効果があると認識することができたとは認められず,本願発明の「シワ形成抑制」という用途は,引用発明の「美白化粧料組成物」とは異なる新たな用途を提供したということができる。」

◆平成18(行ケ)10227 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年11月29日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10531 特許取消決定取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年11月22日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとして特許を取り消した審決について、裁判所は、動機付けがないとして、これを取り消しました。
 「・・・との各記載があり,これらの記載によれば,刊行物4発明において,一次バインダーには,低酸素雰囲気中できれいに燃焼することが要求されているものと認められるが,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体が,低酸素雰囲気中できれいに燃焼するものであることを認めるに足りる証拠はない。(7) そうすると,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体は,上記のとおり,水性処理が可能な感光性樹脂として周知であり,水性処理が可能\である点は,刊行物4発明の一次バインダーとしての目的に沿うものであるが,同様に刊行物4発明の一次バインダーに求められる,高解像度の付与,低酸素雰囲気中できれいに燃焼するものである点については,少なくとも,刊行物4発明のアクリル系共重合体との比較において,適用の動機付けとなるかどうかは明らかではなく,さらに,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を刊行物4発明に適用するためには,既存の感光性成分である光硬化性モノマーとの併用に伴って生ずる影響を検討することが不可欠であるから,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を刊行物4発明に適用することが,当業者において容易になし得たものと直ちに認めることはできず,決定の相違点(イ)についての判断は,誤りといわざるを得ない。」

◆平成17(行ケ)10531 特許取消決定取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年11月22日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10780 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年11月13日 知的財産高等裁判所

  後で提出した実験証明書についての効果に基づく進歩性の主張は認められませんでした。
  「甲1,甲13,甲16実験及びその結果は,本願明細書に記載されているものではないから,これによって,本願明細書の記載を敷衍補強する趣旨であれば格別,その実験結果のみを根拠として,本願発明が,顕著な作用効果を奏する旨主張するのであれば,明細書に基づかない主張として許容されるものではない。・・・すなわち,二酸化チタンのみに限定されている(お)成分は別として,(あ)〜(え)成分について,本願発明の限定の範囲内である他の物質の組合せから成るものが奏する効果や,(あ)〜(え)成分のうちの一又はそれ以上が,本願発明の限定の範囲外である物質に置き換わったものが奏する効果が,明細書試験からは明らかとならず,そうであれば,明細書試験によっては,本願発明の(あ)〜(お)成分に係る構成成分(物質)と配合量の限定に含まれるあらゆる実施態様が,顕著な効果を奏するということはできないし,また,少なくとも構\成成分(物質)の限定に含まれるものが,この限定から外れるものに対して,効果の優位性を示しているということもできないから,結局,明細書試験が,本願発明が顕著な作用効果を奏することを示すものと認めることはできない。」

◆平成17(行ケ)10780 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年11月13日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10844 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年11月08日 知的財産高等裁判所

  CS関連発明の進歩性について争われました。無効理由なしとして審決が維持されました。
 「換言すれば,相違点cに係る本件特許発明1の構成を得るためには,甲第1号証及び上記周知事項のほか,認証の結果を利用したい主体が「端末機」であるような構\成からなる発明が,公知事実(特許法29条1項各号所定の発明)として必要であり,このような公知事実なくして,甲第1号証発明と上記周知事項のみに基づいて,認証の結果を何ら必要としていない「発信者ID取得蓄積装置」に,認証の結果を送信する構成を採用し,相違点cに係る本件特許発明1の構\成とすることは,当業者であっても容易になし得るところではないというべきである。」
 原告は、審決では採用されていない新たな証拠を提出しましたが、これについても、「甲第5,第7号証記載の発明をもって,このような公知事実と主張し得ない」と判断されています。

◆平成17(行ケ)10844 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年11月08日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10773 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年10月25日 知的財産高等裁判所

  化学分野の発明について、「テルビナフィンとアゾール系阻害剤という具体的組合せについて,アゾール耐性真菌株に対しても,その組合せによる相乗効果が奏されることを困難なく予測ないしは期待して,用いることができる」として、進歩性無しとした審決が維持されました。
  「本願明細書の1頁23行〜2頁2行の記載及び同所に引用された前記文献(乙3)によれば,本願当時,既に,耐性真菌の出現は当該技術分野における重要な課題であったものであり,引用例に具体的に記載されたテルビナフィンとアゾール系阻害剤を含む抗真菌組成物がより広い抗菌スペクトルを示すものであること(適用可能な菌株の種類が多いこと),及び,強力な抗菌活性を有すること(相乗作用が得られるものであること)に基づいて,テルビナフィンとアゾール系阻害剤を含む抗真菌組成物が,ある種のアゾール耐性真菌株誘起の真菌感染症に対しても,それぞれ単独で用いる場合とは異なる作用機序による相乗的な治療効果が得られることを期待することは,当然のことであるというべきである。したがって,引用例に接した当業者においては,その引用例に記載されたテルビナフィンとアゾール系阻害剤を含む抗真菌組成物が,アゾール耐性真菌株誘起の真菌感染症に対しても治療効果を有することを予\測ないしは期待し,これを確認しようと動機付けられるものというべきである。」

◆平成17(行ケ)10773 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年10月25日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10717 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年10月11日 知的財産高等裁判所

  進歩性無しとした審決が取り消されました。
  「刊行物1の上記記載によれば,引用発明1bのオーバーコート層は,光散乱部の凹凸面を実質的に平坦化し得るものでなければならないが,引用発明3のシロキサンが,その形成方法や膜厚を含めて平坦化に適した特質を有することを認めるに足りる証拠はなく,却って,上記刊行物3の記載や特開平1−307247号公報の記載に照らすと,平坦化には適さないことが窺われる。そうすると,たとえ,引用発明1bも引用発明3も発光部分(引用発明1bの有機EL素子,引用発明3の積層構造体)が被覆層(引用発明1bのオーバーコート層,引用発明3のシロキサン)に覆われているものであり,また,引用発明1bと引用発明3とは,有機発光素子という同一技術分野に属しているとしても,それだけでは,引用発明1bのオーバーコート層に換えて引用発明3のシロキサンを用いることが,当業者にとって容易になし得たと論理付けることはできない。」

◆平成17(行ケ)10717 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年10月11日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10053 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年09月28日 知的財産高等裁判所

 引例の認定が誤っていることを前提として、進歩性無しとした審決を取り消しました。
 「乙1技術は,両屈折片を起立させ係止が完了したときに,各係止部がそれぞれ相手側の係止部に食い込むようにするというものであるが,そもそも,乙1技術は,二つの舌片を互いに共辺部の一点で押し合うことによってはじめて掛止させるものであり,このことは,共辺部の全域が直接である場合に限らず,両端に湾曲部分あるいは折れ曲がり部分を形成する場合も同様であって,乙1技術において,二つの舌片を互いに共辺部の一点で押し合うようにすることは,二つの舌片を掛止させるための必須の構成であり,不安定な掛止をより確実なものとするようなものではない。これに対し,本願補正発明は,上側係止片及び下側係止片で構\成される係止部を有する構成において,その係止部の「最奥部」を係止点として係止し,係止時において,「各屈折片側に食い込む係止部」の「最奥部」が,それぞれ,対向する係止部の最奥部において,単に,相互に接触して係止するのみならず,屈折片の若干のたわみにより,相互に押し合う状態を生じさせる構\成であり,その結果,屈折片の最終的な係止状態において,より強固な係止力を発揮させるというものであって,係止のための技術的思想が異なるものであり,係止方法につき,乙1技術においては,本願補正発明のような技術的思想はない。加えて,引用例1発明の認定には争いがないところ,引用例1(甲7)の・・・との記載によれば,引用例1発明は,揚支片の基点が対面する位置において張出部の谷間で揚支片が交叉することにより二つの揚支片を掛止させるものと認められる。そうすると,引用例1発明と,乙1技術とは,揚支片ないし舌片を掛止させるための作用においてそもそも異なるのであり,仮に,乙1技術のような,二つの舌片を互いに共辺部の一点で押し合うことによって掛止させる技術が本件出願時に周知のものであったとしても,この技術をいかにして引用例1発明に適用するのかということ自体,想定することが困難であり,動機付けを欠くというべきである。」

◆平成18(行ケ)10053 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年09月28日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10789 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年09月26日 知的財産高等裁判所

 同一発明(29条の2)であるとした審決を知財高裁は維持しました。取消理由として、「少なくとも特許,実用新案,意匠,商標のいずれかを含む知的所有権に係る情報の管理を希望する互いに独立した複数の」という修飾語はその後の,「クライアント」だけでなく、「代理人」にも係る、と主張しましたが、裁判所は、これを否定し、文言通りに解釈しました。
 「少なくとも特許,実用新案,意匠,商標のいずれかを含む知的所有権に係る情報の管理を希望する互いに独立した複数の」は,「クライアント」のみに係り,「代理人」に係るのは,「前記各クライアントの」という言葉のみであると解するのが文言の解釈として自然である。」と認定されました。

◆平成17(行ケ)10789 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年09月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10425 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年09月26日 知的財産高等裁判所

 パチンコホールで得た景品の換金システム(CS関連発明)について、記載不備(36条4項、6項)および進歩性(29条2項)無しとした審決について、記載不備については取消理由ありとの判断がなされましたが、進歩性については取消理由無しとの判断がなされました。

◆平成17(行ケ)10425 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年09月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10846 審決取消請求事件 平成18年09月20日 知的財産高等裁判所

 特許庁が無効理由無しとした審決が取り消されました。
 「そして,引用考案2は,引用考案1と同様に,同じ生理用ナプキンの考案であるから,引用考案1の「隆起14」に替えて,引用考案2の「上部吸収材」を設け,その上部吸収材を吸収要素3に固定すること,すなわち,吸収要素とは別部材とし,かつ,あらかじめ吸収要素3に圧着固定して設けることは,当業者にきわめて容易に想到できるものと認められる。」

◆平成17(行ケ)10846 審決取消請求事件 平成18年09月20日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10184 審決取消請求事件 平成18年09月20日 知的財産高等裁判所

   無効理由無しとした審決が取り消されました。
  「甲第1号証は,キャビネット自体を傾けること,テレビとビデオデッキを一緒に傾けること,以上は想定されていないと言うべきである。・・・そうすると,甲第2号証に「傾動可能に連結する」構\成の開示があるとしてもこれを甲第1号証に適用することはできず,したがって,上記相違点に係る構成は,きわめて容易になし得るとは言えない」(審決13頁第3段落〜下第3段落),すなわち,引用例1はキャビネットを傾けないことを前提とした構\成であるから,引用例2に開示された「傾動可能に連結する」構\成(相違点?@)を適用することには阻害事由があるとするものである。  しかし,引用例1(甲1)には,「詰め部材54」につき,「テレビジョンセットの画面の下方に向かう角度位置を調整するために,セットの後部に,滑ることができる詰め部材54が配置される。詰め部材は,画面角度を視聴に最適な位置に調節することができるように動かすことができる」(審決11頁第2段落の引用による)との記載があり,同記載によれば,「詰め部材54」は,テレビを下方に傾けるものであると認められるが,キャビネットを傾けないことを前提にした構成であるとまでは認められない。そして,テレビを下方に傾ける手法としては,本件遡及出願当時(平成4年10月28日),引用例2の上記「テレビを載置するハンガー本体を前後に傾動可能\に連結したテレビハンガー」が既に公知であったのであるから,引用例1のように「詰め部材54」を使用するか,引用例2のようにハンガー本体を「傾動可能に連結する」構\成を採用するは,当業者が必要に応じ適宜選択し得る程度の事項というべきであり,引用例1の「テレビハンガー」に,引用例2に開示された「傾動可能に連結する」構\成(相違点?@)を適用することに阻害事由があるということはできない。」

◆平成18(行ケ)10184 審決取消請求事件 平成18年09月20日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10677 審決取消請求事件 平成18年08月31日 知的財産高等裁判所

  相違点1,2とも判断を誤っているとして、進歩性無しとした審決を取り消ししました。
 

◆平成17(行ケ)10677 審決取消請求事件 平成18年08月31日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10490 審決取消請求事件 平成18年06月29日 知的財産高等裁判所

  進歩性無しとされた審決が取り消されました。
  「そもそも,本願発明の相違点1ないし3は,正確にいうと,相違点1及び2であることを特徴とする相違点3に係る光学検出部と言い換えることもでき,相違点1及び2は,相違点3に係る光学検出部であることを前提としている。しかも,審決が相違点3として摘示するとおり,本願発明は「紙葉類識別装置」に係る発明であるのに対し,引用発明は,紙葉類の積層状態検知用装置に係る技術であって,発明の課題及び目的が相違しており,このことは被告も認めるところである。したがって,本願発明の構成を把握する上で,相違点1及び2と相違点3とを分説するのはよいとしても,相違点1ないし3の相互の関係を考慮しながら,本願発明の進歩性について検討しなければならない。」 「確かに,本件周知装置においては,上記(2)ウのとおり,紙葉類の識別を行う際に,紙葉類の特徴箇所を選んで識別することは,当業者が容易に想到し得たことということができる。しかし,このことから,上記(3)のような,複数本の検出ラインの技術的思想のない引用発明について,複数本の検出ラインの技術的思想を前提とし,一対の発光・受光素子によって一括して検出を行うという相違点1及び3に係る本願発明の構成を付加することが容易であるとか,あるいは,単なる設計変更であるということは困難である。」

◆平成17(行ケ)10490 審決取消請求事件 平成18年06月29日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10514 審決取消請求事件 平成18年06月21日 知的財産高等裁判所

ゲーム機(CS関連発明?)について、進歩性および記載不備が争われました。裁判所は、進歩性無しおよび記載要件違反とした拒絶審決を取り消しました。
 1)進歩性については以下のように認定しました。
 「リーチ目による演出においては,「演出が実行されている場合に・・・演出を強制的に終了させる」ことは想定できず,審決が「リーチ目による演出の場合,メダルが投入された時に,前記演出が実行されている場合には,リールが回転することにより前記演出が強制的に終了させられることは自明である。」と認定したことは誤りである」
 2)記載不備については以下のように認定しました。
 「本願発明においては,演出の実行途中であってもこれを強制的に終了させることができるため,同じ演出が繰り返されるたびに一定時間待つ必要がなくなり,ゲームの次の操作へスムーズに移行できること,が記載されているものと認められる。 以上のとおり,本願発明において演出を強制的に終了させることが所定の効果を奏することについては,本願明細書に十分に記載されているということができ,審決が「実行されている演出を強制的に終了させることが,なぜ,ゲームの流れが阻害されることはなく,遊戯者の趣向を損なわない,遊戯意欲の高い遊戯台を提供することができるという効果を奏するのか不明である。」と判断したことは,誤りである。」

◆平成17(行ケ)10514 審決取消請求事件 平成18年06月21日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10718 審決取消請求事件 平成18年06月22日 知的財産高等裁判所

   進歩性が争われました。裁判所は、進歩性無しとした拒絶審決を取り消しました。最近では、動機付けが見いだせないとして審決を取り消した例は少ないと思います。
「仮に本件審決にいう周知技術を前提としても,そのことが,引用発明において「独立した入力端を有する共振周波数の異なる複数個の超音波振動子」を「電気的共振点を複数有し且つ入力端を1個だけ有する1の負荷」に変更する動機付けとなるものと解することはできず(このことは,被告が提出する乙1ないし3によっても何ら変わるものではない。),かかる動機付けが見出せない以上,引用発明に上記周知技術を用いて,「共通の入力端に,各共振周波数に周波数を切り替えた電源を供給するようにする程度のことは,当業者にとって適宜採用しうる構成にすぎない」とすることはできない。」

◆平成17(行ケ)10718 審決取消請求事件 平成18年06月22日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10729 審決取消請求事件 平成18年06月06日 知的財産高等裁判所

  進歩性無しとした審決を取り消しました。事例を検討してみると、最近の進歩性判断の判断基準が1つできるかもしれませんね。
 「被告は,乙1〜8を挙げて,二以上の部品を一体に成形することにより,作業の効率化を図り,部品点数の低減を図ることは,極めて広範囲の技術分野において広く採用されている周知の技術であり,本件発明の効果は,二以上の部品を一体に成形することにより考えられる効果, すなわち「作業の効率化」及び「部品点数の低減」という効果以上の格別の効果を意味するものではないから,本件発明は,周知のキー変換式ピンタンブラー錠に,極めて周知な部品の一体化という技術を寄せ集めただけにすぎず,当業者であれば,相違点に係る本件発明の構成を容易に想到し得る旨主張する。しかしながら,前記(1)ウ(イ)で説示したとおり,二以上の部品を一体に成形することにより,作業の効率化を図り,部品点数の低減を図るという技術思想から,直ちに相違点に係る本件発明の構成に想到するものと認めることはできない。

◆平成17(行ケ)10729 審決取消請求事件 平成18年06月06日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(ワ)785 特許権侵害差止等請求事件 平成18年05月25日 東京地方裁判所

  数値限定発明に関する特許権侵害について、裁判所は進歩性無しとして請求を棄却しました。
 「物質のある性状を発見したことを契機としてある発明がなされた場合,その発明の進歩性の判断については,物質のある性状を発見することの困難性も含めて,課題の解決手段の容易性の判断をすべきである。しかし,活性炭が昇温により空気を放出し,冷却すると再び空気を吸着することは,次の文献の記載から明らかなように,・・・・記載されているところからすれば,活性炭の一種である引用発明の炭素質吸着剤(本件内服用吸着剤)が昇温により空気を放出することは,当業者であれば通常予想し得る範囲内の事項であり,また,これを実験等により確認することは何ら困難なことではない。」

◆平成17(ワ)785 特許権侵害差止等請求事件 平成18年05月25日 東京地方裁判所

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◆平成17(行ケ)10223 特許取消決定取消請求事件 平成18年04月27日 知的財産高等裁判所

 構成が容易であるとして、進歩性を認めなかった審決に対して、効果の予\測性が無いとして進歩性を肯定し、審決を取り消しました。
  「ホスホリパーゼA処理卵黄とオクテニルコハク酸化澱粉を併用することにより,ホスホリパーゼA処理卵黄又はオクテニルコハク酸化澱粉の一方を用いる場合と比較して,焼成あるいはフライという加熱処理を施した場合に,油相分離を生じ難いという本件発明1の効果は,当業者が予測することができないものであったというべきである。」

◆平成17(行ケ)10223 特許取消決定取消請求事件 平成18年04月27日 知的財産高等裁判所

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◆H18. 2. 6 知財高裁 平成17(行ケ)10390 特許権 行政訴訟事件

  拒絶審決について、「式I化合物と,式?U〜?W化合物のいずれかを含有し,該混合物のしきい値電圧が 1.6ボルト以下であることを特徴とする液晶媒体。」という請求項の要旨認定が争われました。原告(出願人)は、この請求項の記載は「化合物Iと化合物?U〜?Wのいずれかを含有することにより,その機能によりしきい値電圧を1.6ボルト以下まで低下させることができる」と主張しましたが、裁判所は、拒絶審決を維持しました。
  「発明の要旨認定は,特段の事情のない限り,特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきであり,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限って,明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されるにすぎないものというべきである(最高裁平成3年3月8日第二小法廷判決・民集45巻3号123頁)。そこで,本願発明1の特許請求の範囲請求項1の記載をみると前判示のとおりであって,要するに,「正の誘電異方性を有する極性化合物の混合物を基礎とする液晶媒体であって,一般式I…,および一般式?U,?Vおよび?W…から成る群から選択される1種またはそれ以上の化合物をさらに含有し,該混合物のしきい値電圧が1.6ボルト以下であることを特徴とする液晶媒体。」(下線は当裁判所が付した。)というものである。この記載について,技術的意義が一義的に明確に理解することができないなどということはないことは明らかである。  そして,この記載から理解されるところによれば,本願発明1が,「…含有することにより,…1.6ボルト以下まで低下させる」,すなわち,「…含有することにより,その機能により…1.6ボルト以下まで低下させる」とか,「…含有するという構成により,その効果として,…1.6ボルト以下まで低下させる」ということまでを意味するものとは解されないし,「実質的に『シアノ化合物』の使用を,少なくとも多量の『シアノ化合物』の使用を排除している」と解することは到底できない。」

◆H18. 2. 6 知財高裁 平成17(行ケ)10390 特許権 行政訴訟事件

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◆H18. 1.25 知財高裁 平成17(行ケ)10437 特許権 行政訴訟事件

 先願の出願公開がされる前に、後願(当該特許出願)について特許査定がなされ,その後に先願が出願公開がされた場合には、特許法29条の2の適用があるかどうかが争われました。知財高裁は、適用されると判断した審決を維持しました。
 「法29条の2が設けられた主たる趣旨を考察すると,当該特許出願の日前の他の特許出願(先願)の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明は,一部の例外を除きすべて出願公開によって公開されるものである(法64条等)から,後願である当該特許出願は,先願について出願公開がされなかった例外的な場合を除き,社会に対して何ら新しい技術を提供するものではないという点にあるものと解される。この趣旨に照らすと,上記のように解するのが相当である。後願である当該特許出願についての特許査定時期と先願の出願公開時期との先後関係がいかにあろうとも,すなわち,後願の特許査定後に先願の出願公開がされたとしても,後願である当該特許出願が社会に対して何ら新しい技術を提供するものではないことに変わりはないからである。」

◆H18. 1.25 知財高裁 平成17(行ケ)10437 特許権 行政訴訟事件

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◆H17. 6.28 知財高裁 平成17(行ケ)10335 特許権 行政訴訟事件

 CS関連発明について、進歩性なしとの審決が維持されました。
 本願補正発明は,物品リストに物品の数を入力し,その入力情報に基づいて運送費の見積りの計算を行うというにとどまり,物品の数を用いた具体的な見積り計算については,何ら特定されていないし,明細書にも,具体的な見積り計算の方法は記載されていない。そして,「予め設定されたプログラムによって表\示される物品リスト中の該当するものにその物品の数を入力する」ように,通信ネットワークを利用してシステム化することで,「人手を要せず,無人での運用」が可能となることは当然である。そうすると,引用例1記載の費用の見積りという通信ネットワークを利用した機能\を,運送費の計算に適用した場合には,運送費の見積りの際に人手が介在されることがなく,このために見積りに要する時間とコストとを最小限に抑えることが可能になり,業者側の負担が著しく軽減されることになるのは当然であるから,本願補正発明の作用効果が,格別顕著なものであるということはできない。

◆H17. 6.28 知財高裁 平成17(行ケ)10335 特許権 行政訴訟事件

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