2010.12.24
平成19(行ケ)10059 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年12月22日 知的財産高等裁判所
周知技術との組み合わせについて動機づけ無しとした審決が維持されました。
引用発明3の前記内容によれば,同発明は,常時は親機からの制御信号を各端末に順次ポーリング動作により送出するが,必要な場合に割込許可信号としての伝送信号を送出することで,特定の端末から割込監視信号を返信させるようにしたものである。そして,引用例3にも,親機と端末との間の通信制御をCPU又はステートマシーンのいずれで行っているかについての明確な記載はないものの,単なるポーリング動作に終始せず,上記のように親機からの割込許可信号の伝送を可能にするという特徴を有している以上,サイクリック交信と個別交信を適宜組み合わせている引用発明1と同様に,CPUによる通信制御を念頭に置いているものと見る余地が十\分にある。したがって,引用例3には,制御手段の制御について,「プログラムによる通信制御に基づかないで,回路の駆動で制御する」(本件構成1)というステートマシーンにより通信制御を行うことについて示唆ないし動機付けがあるとまでは認め難い。・・以上のとおり,ステートマシーンによる通信制御それ自体が,本件特許出願当時,当業者に周知の技術であったとしても,引用例1ないし3には,引用発明1の通信制御手段として本件構\成1を採用することについて,いずれも示唆ないし動機付けがあるとはいえない。
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2010.12. 8
平成21(行ケ)10366 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年12月06日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が、容易に予測し難いとして、取り消されました。
そうすると,鋼中のSiの含有率が6.5%である高けい素鋼板においては,鋼板の平均結晶粒径が約0.7ないし1.1mmと粗大になるときに,打ち抜き加工時の製品の良・不良を示す打ち抜き加工性が悪くなる傾向があるとともに,打ち抜き加工後は,靱性の不良,切欠き感受性の増大によって亀裂が発生,拡大しやすくなり,繰り返し外力による荷重がかかることによる鋼板の破壊に係る特性である疲労強度特性(疲労特性,耐疲労特性)が不良になる一方,表面の鉄メッキ等によって亀裂の発生,拡大を防止する措置を講じれば,鋼材の疲労強度特性が改善するということができる。しかしながら,上記記載は鋼中のSiの含有率が6.5%である高けい素鋼板に関するものであり,乙第1号証の段落【0003】では,鋼中のSiの含有量(含有率)が3.5%以上になると鋼板の脆性のために従来冷間圧延ができなかった旨の記載があることにも照らすと,鋼中のSiの含有率が3.1%にすぎない引用発明の電磁鋼板や鋼中のSiの含有率が0.3%以上3.0%以下である本願発明の電磁鋼板において,鋼材組織,打ち抜き加工特性,打ち抜き加工後の疲労強度特性の関係を上記高けい素鋼板におけるのと同列に論じてよいかは疑問である。したがって,仮に鋼材中のある成分が他の成分との関係で当該鋼板の打ち抜き加工特性に対する作用が概ね等しいからといって,(平均)結晶粒径に対する作用や打ち抜き加工後の鋼板の疲労強度特性に対する作用が定量的にも概ね等しくなるかは不明であるといわざるを得ない。
・・・
したがって,本願発明の出願日当時,引用発明の構成から,相違点1に係る構\\成,すなわち「Siを0.3%以上2.9%以下の範囲内に減量すると共に,Mnを2.0%以下,sol.Alを0.7%以上3.0%以下の範囲内で増量すること」とした場合に,当該電磁鋼板が好ましい磁気特性(鉄損,磁束密度等)及び疲労強度特性(疲労限等)の双方を獲得し得るか否かは,当業者においても容易に予測し難い事柄であったものといわざるを得ない。\n
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2010.12. 6
平成22(行ケ)10096等 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年11月30日 知的財産高等裁判所
審判手続における手続違背が争点の一つです。裁判所は、好ましくはないが取り消すまでもないと認定しました。
ところで,審決は,前記第2の4のとおり,本件発明と先行技術とを対比し,相違点を認定することなく,i)本件明細書に基づいて,本件発明の技術的意義について検討し,同意義を,構成要件C(後身頃の上下方向中間部から下端部までの間を下方拡がりの形にする点)と,構\成要件E及びF(後身頃と前身頃との縫合線が,後部ウエスト部からヒップの頂部より外側に迂回してヒップ裾ラインに至る点)とを兼ね備える点にあるとした上で,ii)構成要件C,E及びFを兼ね備えた技術は,甲1ないし甲5のいずれにも記載されておらず,示唆もされていないと判断して,本件発明は,原告の主張に係る各引用発明から容易に想到することができないとの結論を導いている。この点,特許法29条2項所定の容易想到性の有無を判断するに当たり,特定の引用発明と対比して,相違点を認定することをせずに,先に,当該発明の技術的意義なるものを設定した上で,各引用発明に当該発明の技術的意義が記載されているか否かを判断する手法は,判断の客観性を担保する観点に照らし疑問が残るといえる。しかし,本件においては,原告(無効審判請求人)は,無効審判手続において,甲1の図1,2には構\成要件AないしEが記載又は示唆され,甲1の図4(A)には構成要件Fが示唆され,甲2には構\成要件Fが示唆され,甲4の図2には構成要件D及び構\成要件Bが示唆され,甲5には構成要件Fが示唆されているなどとの主張はするものの,特定の先行技術を主たる引用発明として挙げた上で,本件発明との相違点に係る構\成を明らかにし,従たる引用発明等を組み合わせることによって,本件発明に至ることが容易であるとする論理的な主張を明確にしているわけではない。このような無効審判手続における原告の無効主張の内容に照らすならば,本件における審決の判断手法が,直ちに違法であるとまではいえない(なお,このような場合であっても,審判体としては,i)原告に対して釈明を求めて,本件発明が容易想到であるとの原告の主張(論理)を明確にさせた上で判断するか,あるいは,ii)原告に対する釈明を求めることなく,原告の挙げた引用発明を前提として,それらの引用発明との相違点を認定した上で,本件発明の相違点に係る構成が容易想到であるか否かを,個別具体的に判断するか,いずれかの審理を採用するのが望ましいといえる。)。\n
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2010.12. 1
平成22(行ケ)10060 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年11月29日 知的財産高等裁判所
記載不備違反については無しとしたものの、当該構成については容易として、進歩性違反なしとの審決が、取り消されました。
遺体の肛門筋が弛緩することは,例えば特開2003−111830号公報(甲48)に記載されるように,当業者にとって自明の事柄又は技術常識であるといえる。そうすると,遺体の肛門内に吸液剤を挿入することで体液の漏出を防止しようとする場合,筋が弛緩する肛門部分にのみ吸液剤を挿入したのでは,吸液剤が漏出してしまうことになるから,吸液剤を肛門の奥の直腸まで挿入するようにすることは,当業者であれば容易に想到し得るものというべきである。そして,実用新案登録第3056825号公報(甲5)には,吸液剤供給管を肛門内に挿入しやすいように形成するとの記載があるから(段落【0006】),上記の自明の事項や技術常識を勘案し,甲5発明の吸液剤収納容器の一端開口部側に当たる吸液剤供給管を「肛門から直腸に挿入されるように形成される」ようにすることは,当業者にとって適宜なし得る事項というべきである。・・・本件発明の構成e2については,上記1(2)で説示したとおり,肛門への挿入前,すなわち遺体処置装置の使用前に吸水剤が案内部材の外部に出ることが抑制されていれば,どのような形状・構造であってもよいと解され,これには別部材を用いて抑制する場合も含まれると解される。そして,吸水剤を収容する容器に漏出防止用のキャップを用いることは特開2001−288001号公報(甲6)の請求項17に記載されるように周知であるか,当業者にとって適宜なし得る事項であるといえる。また,特開2001−288001号公報(甲6)記載の体液漏出防止装置も甲5発明も,遺体の肛門等から体液が漏出するのを防止するため,肛門等から吸水剤を充填するという同一の技術分野に関するものである。したがって,甲5発明に上記の技術事項を付加して,「肛門への挿入前に吸水剤が案内部材の外部に出るのを抑制するように構\成する」ことは,当業者にとって容易に想到し得るというべきである。審決は,(無効理由5の判断部分ではあるが,)本件発明の構成e2については,別部材により吸水剤が外部に出るのを抑制する構\成が含まれることを認めていながら,原告主張の文献である特開2001−288001号公報(甲6),特開平10−298001号公報(甲7)及び特開平7−265367号公報(甲8)に関しては,別部材による抑制が容易かどうかの検討を行っておらず,誤りがある。
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2010.11.21
平成21(行ケ)10253 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年11月17日 知的財産高等裁判所
進歩性違反無しとした審決が取り消されました。
以上の引用例9の記載によると,引用例9には,ゼラチンカプセルの機械的性質は,可塑剤の種類とその添加量・含有水分などの影響により変化するが,基本的には,基剤のゼラチンフィルムのレオロジー的性質によること,フィルムの粘性要素が小さいとカプセルは脆くなるところ,低湿度下では,粘性要素が小さくなって,外力によって破壊されやすくなること,カプセルの粘弾性のような基本的強度は,カプセルと同一組成のシートによって測定されるという知見が開示されている。そして,当業者であれば,かかる知見に接した場合,低湿度の環境下ではゼラチンカプセルは外力によって破壊されやすくなること,粘性に優れたシートを与えるゼラチン基剤から製造されたゼラチンカプセルは,外力によって破壊されにくいことに加え,機械的強度を測定する粘弾性測定装置により硬カプセルの底部の衝撃に対する抵抗力を測定する記載等から,カプセルの外力による変形や破壊は,ゼラチン基剤の粘弾性と関連するものであると理解するものということができる。したがって,当業者は,引用例9から,カプセルが外力により破壊されるか否かという耐衝撃性等の機械的強度も,カプセルと同一組成のフィルムで試験することができることを理解することができるというべきである。この点について,医薬用硬質カプセルに関する特開昭61−100519号公報(甲22)においても,衝撃強度や引張り強度等の機械的強度について,ゼラチン基剤フィルムの状態で測定されているものであり,本件審決が「カプセルの機械的強度はフィルムの粘性要素と関連性を有しており,カプセルの機械的強度はカプセルと同一組成のフィルムで試験するものである」とするとおり,当業者における技術常識であったものということができる。・・・・以上からすると,低湿度下におけるハードゼラチンカプセルの機械的強度を向上するために,可塑剤として,#4000のポリエチレングリコールを3〜15重量%の割合で添加することは,当業者であれば容易に想到し得るものということができる。同様に,ゼラチンを水に溶解した溶液に,かかる割合で#4000のポリエチレングリコールを添加してジェリーを得た後,浸漬法により非フォーム状ハードゼラチンカプセルを製造する方法の発明である本件発明2も,当業者が,引用例9と引用例2により開示された技術的知見を組み合わせることにより,容易に想到し得るものということができる。
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2010.11.19
平成21(行ケ)10253 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年11月17日 知的財産高等裁判所
無効でないとした審決が取り消されました。
以上からすると,本件審決が,引用例2には,ゼラチン単独フィルムの耐衝撃強度の向上には,グリセリンよりも特定のポリエチレングリコールの方がよいことについて開示されているとは認められないとした判断は誤りといわざるを得ない。この点について,被告は,引用例2に応用分野として例示されている「マイクロカプセル」は,カプセル剤とは全く異なるものであり,「医薬」という広範な指摘についても,直ちにハードゼラチンカプセルへの適用が記載されているということもできないなどと主張する。しかしながら,引用例2は,「固体ゼラチンの構造と特性及びそれらの改質の原理」と題する論文で,ゼラチン自体の物理,機械的特性に関する一般的な知見を開示するものであって,特定の用途におけるゼラチンの性質に限定して記述されているものではない。実際,引用例2は,ハードゼラチンカプセルに関する専門書である引用例6(甲6)にも引用されており,ゼラチンカプセルの技術分野に属する文献であるということができる。被告の主張は採用できない。\n
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2010.11.11
平成22(行ケ)10104 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年11月10日 知的財産高等裁判所
阻害要因ありとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
引用発明1と引用発明2とその技術分野をみてみると,引用例1には,金属イオン封鎖剤組成物をその金属イオン封鎖組成物が硬表面に付着した汚れ自体に作用して洗浄する旨の記載はないのに対し,引用発明2は,アルカリと錯体形成剤とを硬表\面の洗浄のための有効成分として用いるものであるとの違いがあるが,上記(3)のとおり,金属イオン封鎖剤を含む洗浄剤組成物を硬表面の洗浄のための有効成分として用いることは周知技術であるということができるものであるから,引用発明1も,洗浄作用という技術分野に係る発明であって,引用発明2と技術分野を同じくするものということができる。
ウ しかしながら,引用発明2は,グリコール酸ナトリウムを組成物とする金属イオン封鎖剤組成物の発明ではなく,また,引用発明1も,その発明に係る金属イオン封鎖剤組成物には,グリコール酸ナトリウムが含まれているとはいえ,前記(1)ウのとおり,当該金属イオン封鎖剤組成物にとって,グリコール酸ナトリウムは必須の組成物ではなく,かえって,その必要がない組成物にすぎないのである。そうすると,一般的に,金属イオン封鎖剤を含む洗浄剤組成物を硬表面の洗浄のための有効成分として用いることとし,その際に引用発明1に引用発明2を組み合わせて引用発明1の金属イオン封鎖剤に水酸化ナトリウムを加えることまでは当業者にとって容易に想到し得るとしても,引用発明1の金属イオン封鎖剤組成物にとって必須の組成物でないとされるグリコール酸ナトリウムを含んだまま,これに水酸化ナトリウムを加えるのは,引用例1にグリコール酸ナトリウムを生成する反応式(2)の反応が起こらないようにする必要があると記載されているのであるから,阻害要因があるといわざるを得ず,その阻害要因が解消されない限り,そもそも引用発明1に引用発明2を組み合わせる動機付けもないというべきであって,その組合せが当業者にとって容易想到であったということはできない。
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2010.11.10
平成22(行ケ)10068 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年11月08日 知的財産高等裁判所
進歩性認定誤り無し、手続き違背もなしと判断されました。
原告は,審決において新たに8つの文献が周知例として追加された,あるいは,審決と拒絶査定とで主たる公知文献が異なっていたにもかかわらず,原告に意見書を提出する機会が与えられなかったことは,手続違背に当たると主張する。(2) 平成5年法律第26号による改正前の特許法159条2項,50条は,拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合には,拒絶の理由を通知し,相当の期間を指定して,意見書を提出する機会を与えなければならない旨を規定する。その趣旨は,審判官が新たな事由により出願を拒絶すべき旨の判断をしようとするときは,出願人に対してその理由を通知をすることによって,意見書の提出及び補正の機会を与えることにあるから,拒絶査定不服審判手続において拒絶理由を通知しないことが手続上違法となるか否かは,手続の過程,拒絶の理由の内容等に照らして,拒絶理由の通知をしなかったことが出願人(審判請求人)の上記の機会を奪う結果となるか否かの観点から判断すべきである。(3) これを本件についてみるに,なるほど,拒絶査定には,拒絶理由通知書にて引用されていなかった引用例(以下「本件引用例」という。)が挙げられている。すなわち,拒絶理由通知書では,当時の請求項1及び2の発明と特開平3−235116号公報記載の発明とを対比して容易想到性判断をし,拒絶査定でもこの判断枠組みは維持されつつ,本件引用例が引用文献の一つとして付加された。原告はこの拒絶査定に対し,請求項を一つに絞り,前記第2,2の下線部分を付加する補正をするとともに拒絶査定不服の審判請求をした。その請求書で原告は「本願発明が特許されるべき理由」として,「(1)本願発明の説明」,「(2)補正の根拠の明示」,「(3)引用発明の説明」,「(4)本願発明と引用発明の対比」の主張をし,本願発明の特徴である第1〜第3の表示手段と関係する本件引用例の構\成を上記「(3)引用発明の説明」の項で掲げた上,「(4)本願発明と引用発明の対比」の項において,本件引用例の構成を中心にして,上記補正により付加された「第3の表\示手段」と対比主張し,この主張をもって審判請求が成り立つべき理由の中心に据え,さらに,「本願発明の特有の構成である,現況調査手段,電話発信手段及び通話中手段を同時に備える」構\成との関係についても付加しているが,その根拠については抽象的な理由を述べるにとどまっている。審決は,この審判請求書に基づいてなされたものであり,上記付加された補正部分の構成の容易想到性の判断が審判で審理されるべき中心点であることを念頭に置いて本願発明の容易想到性を判断していたであろうことは,上記の経緯から推認されるところである。なるほど,拒絶査定が引用している拒絶理由通知での引用公知文献と,審決で引用した主たる公知文献(本件引用例)とは異なっているが,本件引用例(甲10)は拒絶査定でも挙げられており,審判請求書で原告が主張として中心に据えたのは,本件引用例と対比しての本願発明(特に上記補正で付加された構\成について)の進歩性であった経緯にかんがみると,原告は審判請求時において,本願発明の容易想到性判断で対比されているのは本件引用例であったことを十分に認識していたものといえるのであるから,本件引用例を対比すべき主たる公知文献として本願発明の容易想到性判断をするに際して,改めて拒絶理由を通知しなかったとしても,原告にとって意見書の提出や補正の機会が奪われたということはできず,審判手続には,平成5年法律第26号による改正前の特許法159条2項が準用する同法50条に違反する手続違背があったとすることはできない。さらにいえば,審決は,本件引用例との対比において本願発明との間に相違点を8点認定している。このことは,審決が本件引用例を形式上主たる公知文献としたとはいえ,本願発明が多くの公知技術の組合せによって容易に推考し得たものであることを念頭に置いて判断したものということができるのであり,実質的な判断枠組みは拒絶査定から変化がなく,審判請求とともに補正がされたのに伴い,視点を変えて判断し直したと評価するのが相当である。また,原告は,審決において8つの周知例が付加された点についても主張しているが,これは本願発明が多くの技術を組み合わせた発明であることによるものであるし,上記説示のとおり,審決における実質的な判断枠組みは拒絶査定から変化がないものと評価すべきであるから,原告の上記主張も手続違背を裏付けるものとしては採用することができない。\n
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◆関連事件です。平成22(行ケ)10049
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2010.10.29
平成22(行ケ)10024 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年10月28日 知的財産高等裁判所
新規事項でないとした審決の判断は維持されましたが、進歩性ありとした判断は取り消されました。
前記(4),(5)によれば,本件基準明細書又は図面に記載された発明は,回路基板改造による不正行為の防止を課題とし,上記不正行為を効果的に防止して不正行為を受けにくくする遊技機を提供することを目的としており(前記段落【0006】【0007】),遊技制御基板からの信号の入力のみを可能とする信号伝達方向規制手段を表\示制御基板に設けるとともに,表示制御基板への信号の出力のみを可能\とする信号伝達方向規制手段を遊技制御基板に搭載する構成とし(図16),更に信号伝達方向規制手段をバッファIC回路で構\成していることが認められる(前記段落【0060】)。これにより,本件基準明細書又は図面に記載された発明は,表示制御基板側から遊技制御基板側に信号が伝わることなく,確実に信号の不可逆性を達成することができるようにしており,表\示制御基板改造による不正行為を効果的に防止するものである(前記段落【0094】【0095】【0096】)。そうすると,本件基準明細書又は図面のすべての記載を総合すると,本件基準明細書又は図面に記載された遊技機は,当業者において,不正行為を防止するため,遊技制御基板から表示制御基板への信号の伝達のみを可能\とし,表示制御基板側から遊技制御基板側に信号が伝わる余地がないよう,確実に信号の不可逆性を達成することができるように構\成していること,すなわち,信号の不可逆性に例外を設けないとの技術的事項が記載されていると認定するのが合理的である。そうすると同技術的事項との関係において,「遊技制御基板と表示制御基板との間のすべての信号について,信号の伝達方向を前記遊技制御基板から前記表\示制御基板への一方向に規制する」ことは,新たな技術的事項を導入するものであるとはいえない。これに対し,原告は,甲3記載の発明について,メイン制御部からサブ制御部へのすべての信号を規制の対象としていないと解釈するならば,本件基準明細書についても同様に解釈するべきであり,本件訂正は,新たな技術的事項を導入するものに当たると主張する。しかし,前記のとおり,訂正の適否の判断において,「願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面・・・に記載した事項の範囲内」であるか否かは,当業者において,明細書,特許請求の範囲又は図面のすべてを総合することによって,認識できる技術的事項との関係で,新たな技術的事項を導入するものであるか否かを基準に判断すべきものであり,他の公知文献等の解釈により判断が左右されるものではないから,上記原告の主張は採用することができない。したがって,遊技制御基板と表示制御基板との間の「信号」を「全ての信号」と限定する本件訂正は,「願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面・・・に記載した事項の範囲内」においてするものということができるので,審決が本件訂正を認めた点に違法はない。
・・・
以上によれば,審決が認定する技術事項Cが前記段落【0071】の記載に基づくものであるとしても,同段落の記載は,甲9の他の部分の記載や甲9記載の発明が解決しようとする課題及びその解決手段と整合しないか,又は,技術的に解決不可能な内容を含むものであって,誤った記載と解される。したがって,前記段落【0071】の記載のみから,甲9には技術事項Cが実質的に開示されていると認めることはできない。審決が,技術事項Cを根拠に,甲9において,「遊技制御基板199」から「払出制御回路基板152」へ伝達される信号は賞球個数信号D0〜D3がすべてであるとは認定できないと判断したことは誤りである。
・・・
前記(2)のとおり,甲3には,サブ制御部6からメイン制御部1へのデータ信号入力を禁止し,サブ制御部6からメイン制御部1への不正信号の入力を防止するため,メイン制御部1とサブ制御部6との間のすべての信号について,信号の伝達方向を前記遊技制御基板から前記表示制御基板への一方向に規制するための信号伝達方向規制手段を設けることが実質的に記載されているものと認められる。そうすると,本件訂正発明1と甲3記載の発明との相違点は,本件訂正発明1は表\示制御基板内及び遊技制御基板内の各々に信号伝達方向規制手段が実装されているのに対し,甲3記載の発明は,メイン制御部1(「遊技制御基板」に相当)及びサブ制御部6(「表示制御基板」に相当)の各々に信号伝達方向規制手段が実装されていないこととなる。また,前記(3)のとおり,甲9には,遊技機に関し,メイン制御部からサブ制御部への一方向通信とした構\成を採用することにより,サブ制御部からメイン制御部へ入力される情報の入力部を利用した不正なデータの入力による不正改造等を防止することが記載されており,その具体的手段として,信号の伝達方向を遊技制御基板(メイン基板)からサブ基板への一方向に規制するために,前記遊技制御基板からの信号の入力のみを可能とし,前記遊技制御基板への信号の出力を不能\とする信号伝達方向規制手段である信号回路209を遊技制御基板199(メイン基板)に設けるとともに,信号の伝達方向を前記遊技制御基板(メイン基板)からサブ基板への一方向に規制するために,前記サブ基板への信号の出力のみを可能とし,前記サブ基板からの信号の入力を不能\とする信号伝達方向規制手段である信号回路217を払出制御回路基板152(サブ基板)に設けることが開示されていると認められる。さらに,甲9に記載された技術事項は,甲3記載の発明と同様に遊技機に関する技術分野において,不正信号の入力を防止するという目的を達成するためのものであり,甲3記載の発明においては1つであった一方向データ転送手段を,甲9のように入力側基板と出力側基板のそれぞれに設けることにより,より高い効果が期待できることは当然のことであるから,甲9記載の技術事項を甲3記載の発明に適用することは,当業者において容易であるといえる。なお,前記(3)のとおり,審決が技術事項Cとして認定した事項は,甲9記載の技術的思想に基づく適切な開示事項とは認められず,甲9記載の技術事項を甲3記載の発明に適用する際の阻害要因とはならない。したがって,甲9記載の技術事項を甲3記載の発明に適用することにより,本件訂正発明1の構成(ε)及び構\成(ζ)を得ることは当業者が容易に想到し得ることといえる。以上によれば,本件訂正発明1は,甲3に記載された発明に甲9記載の技術事項及び周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到することができるものであるから,本件訂正発明1の進歩性を肯定した審決の判断は誤りであり,取消事由2は理由がある
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2010.10.29
平成22(行ケ)10064 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年10月28日 知的財産高等裁判所
補正について新規事項であるした点は誤りであるが、進歩性なしとの判断については誤りでないと判断しました。ただ、進歩性の判断手法については一言述べられています。
当裁判所は本件補正2について,新たな技術的事項を導入したとした審決の判断に誤りがあるとする取消事由1に係る主張は,理由があるが,本件補正2について,本願補正発明につき独立特許要件を欠くとした審決の判断に誤りがあるとする取消事由2に係る主張は,原告の主張を前提とする限りにおいては理由がないと解する。したがって,本件補正2を却下した上,本願を拒絶すべきものとした審決には,結果として,誤りはないものと判断する。
・・・
審決は,本件補正2に関し,「『第一高分子樹脂材料及び第二高分子樹脂材料は,互いに異なるポリウレタン樹脂である』との明示的な記載を当初明細書等に見つけることはできない。」として,「第一高分子樹脂材料及び第二高分子樹脂材料の選択として,両者が『同一』であるか『互いに異なる』かに大別されるものであったとしても,そのうちの一方である『互いに異なるポリウレタン樹脂』を選択することは,新たな技術的事項を導入したものと認めざるを得ない。」と判断する。しかし,審決の判断は誤りである。当初明細書(甲1)の段落【0033】には,「基布50を被覆する第二高分子樹脂材料58は(中略)ステープルファイバーバット56を被覆する第一高分子樹脂材料に対して親和性を示す。実際,そのような親和性により,第一高分子樹脂材料および第二高分子樹脂材料をして使用される材料の選択が決定される。(中略)前記二つの材料はポリウレタン樹脂材料であってもよい。いずれにしても,その親和性により,第二高分子樹脂材料と(中略)第一高分子樹脂材料とが化学的に結合するようになり,硬化した第二高分子樹脂材料と基布の糸の間における機械的な結合が補強される。」旨の記載があり,第一高分子樹脂材料と第二高分子樹脂材料は,ともにポリウレタン樹脂材料である場合があって,両者は親和性を示し,化学的に結合するものであるから(この点は,当事者間に争いがない。),当初明細書には,両ポリウレタン樹脂が化学的に結合するものであること(両者が化学的に結合する反応性基をそれぞれの分子内に有すること)を前提として,両者が同一である場合と,互いに異なる場合の双方の技術が開示されている。そうすると,本件補正2は,「互いに異なる」ポリウレタン樹脂材料に限定したものであり,そのことにより,新たな技術を導入したものと解することは到底できない。以上のとおり,本件補正2について,新たな技術的事項を導入したとした審決の判断は誤りである。
・・・
なお,本願補正発明の進歩性の有無を判断するに当たり,審決は,本願補正発明と引用発明との相違点を認定したが,その認定の方法は,著しく適切を欠く。すなわち,審決は,発明の解決課題に係る技術的観点を考慮することなく,相違点を,ことさらに細かく分けて(本件では6個),認定した上で,それぞれの相違点が,他の先行技術を組み合わせることによって,容易であると判断した。このような判断手法を用いると,本来であれば,進歩性が肯定されるべき発明に対しても,正当に判断されることなく,進歩性が否定される結果を生じることがあり得る。相違点の認定は,発明の技術的課題の解決の観点から,まとまりのある構成を単位として認定されるべきであり,この点を逸脱した審決における相違点の認定手法は,適切を欠く。しかし,本件では,原告において,このような問題点を指摘することなく,また,平成22年4月15付けの第1準備書面において,審決のした本願補正発明の相違点1ないし5に係る認定及び容易想到性の判断に誤りがないことを自認している以上,審決の上記の不適切な点を,当裁判所の審理の対象とすることはしない。\n
◆判決本文
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2010.10.28
平成22(行ケ)10071 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年10月27日 知的財産高等裁判所
CS関連発明について、進歩性なしとの審決が維持されました。
原告は,本件補正発明には,i)自然な態様の表記による数式を,難解な記述言語を理解する必要なく容易に表\記できるという効果,ii)数学的に自然な表記による数式を,既存の文書編集アプリケーションで作成した書類に取り入れることで,同アプリケーションを資源として確保できるという効果,iii)数式の編集に要する時間が格段に短縮されるという効果がある旨を主張する。(2) しかしながら,引用発明は,アイコンテーブルからの選択により,通常用いられる表記形式による数学記号を指定して数式を入力するものであって,自然な態様の表\記による数式を,難解な記述言語を理解する必要なく容易に表記できるものであるから,前記i)の作用効果を備えているといえる。また,前記iii)の作用効果は,このような引用発明に周知技術を適用することで予想できる範囲内のものである。したがって,上記i)及びiii)に関して,本件補正発明の有する作用効果が格別なものであるとはいえない。また,前記ii)の作用効果については,そもそも本件補正明細書には何ら記載がないばかりか,例えば「ワード」に関する甲8技術からも予想できる範囲内のものである。\n
◆判決本文
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2010.10.19
平成22(行ケ)10029 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年10月12日 知的財産高等裁判所
進歩性の基礎となる公知技術か否かが争われました。裁判所は、公知であるとした審決を取り消ししました。
「刊行物に記載された発明」とは,刊行物に記載されている事項又は記載されているに等しい事項から当業者(その発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者)が把握できる発明をいう,と解するのを相当とするところ,本件においては,本願発明が「L612として同定され,アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(AmericanType Culture Collection)にATCC受入番号CRL10724として寄託されているヒトのBリンパ芽腫細胞系」であるのに,本願優先日前に刊行された引用例1及び2には「L612を分泌する細胞系」と記載されているだけで,ATCC受入番号の記載がないことから,引用例1及び2における上記記載だけで「刊行物に記載されているに等しい事項」といえるかということを検討する必要がある。
・・・
以上のとおり,本願優先日前,A 博士(及び共同研究者)は,L612細胞系につき,第三者から分譲を要求されても,同要求に応じる意思はなかったものと認められ,その結果,L612細胞系は,第三者にとって入手可能ではなかったことになり,「引用例1,2に記載されるL612細胞系は,第三者から分譲を請求された場合には,分譲され得る状態にあったものと推定することができる」とした審決の認定判断は誤りであって,同誤りが審決の結論に影響を及ぼすおそれがあることは明らかである。\n
◆判決本文
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2010.10.19
平成21(行ケ)10330 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年10月12日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が、周知技術を組み合わせる動機づけがないとして取り消されました。
以上のとおり,周知技術として提示された乙3,4においては,いずれも医療用具が何らかの化学物質でコーティングされており,コーティングの際,所望の厚みないし付着量の均一なコーティングを行うために粘度や溶解性(濃度)が考慮されるとしても,同化学物質が医療用具に付着し続けることが念頭に置かれているものである。以上を前提とした場合,上記周知技術の認識を有する当業者が,コーティングした物質を剥離させるという,周知技術とは異なる技術的思想を開示する引用例2(甲2)において,そこに記載も示唆もない,部材上の複数の角質層−穿刺微細突出物に,物質の水溶液が乾燥後治療に有効な量となり,有効な塗布厚みとなって付着するようにするとの観点に着目することが容易であったとはいえない。・・・
このほか,被告は,本願補正発明は(水溶液の)粘度の上限のみ限定され,下限は限定されておらず,粘度が例えば水そのものの粘度とほぼ同じように低い水溶液も含まれるものであり,粘性は大きくなければならない旨の原告の主張と矛盾する旨主張する。しかし,特許請求の範囲において発明を特定する際,必ずしも,所望の効果を発揮するために必要な条件をすべて特定しなければならないわけではなく,発明を構成する特徴的な条件のみ特定すれば足りることが通常であって,発明の内容と技術常識に基づき当業者が適宜設定できる条件まで,逐一,発明特定事項とすることが求められるわけではない。そして,本願補正発明においては,薬理学的活性物質の水溶液の粘度が約500センチポアズ(cp)未満であれば所望の効果を発揮できるとされている。他方で,岩波理化学辞典第5版(株式会社岩波書店発行,甲13)によれば,1p(ポアズ)は10 Pa・s(パスカル・秒)であるとこ−1ろ,20℃での水の粘性率は約1.00×10 Pa・sとされており, これはすなわち約0.01p=1cpである。そうすると,本願補正発明においては,約1〜500cpの範囲内で,所望する効果に応じて粘度を適宜設定すれば足りるものであって,「薬理学的活性物質の水溶液の粘度が低い値の場合には,薬理学的活性物質の水溶液はおよそ所望のようには微細突出物上に付着できないものであり,そのような値を含む本願補正発明の数値範囲の限定には格別の意義を見出せない」旨の被告の主張は理由がない。
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2010.10. 1
平成21(行ケ)10418 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年09月30日 知的財産高等裁判所
CS関連発明について進歩性なしとした審決が維持されました。
原告は,周知技術1は,キャラクタを動き回らせることが可能なゲーム空間のような仮想空間でなく,2次元画像である掲示板やチャットの画面に貼\り付けるものであり,引用発明のようにキャラクタがゲーム空間を動き回ることを想定したものではなく,周知技術1を引用発明に適用する動機付けや根拠が存在しないと主張する。しかし,原告のこの点の主張も,採用できない。確かに,原告主張のとおり,周知技術1は,アバターを2次元画像である掲示板やチャットの画面に貼り付けるものであり(甲3),引用発明のようにキャラクタがゲーム空間を動き回ることを想定したものではない。しかし,甲3には「自分の分身であるアバターを設定し,ネット上に持てるのが特徴だ。」,「アバターは(中略)自分と似せてもいいし,奇抜にして目立つのもいい。」との記載があることから,周知技術1における「アバター」は,ユーザ本人を象徴し,その分身としてユーザの代わりを務めるキャラクタ画像をいうものであることと理解できる。そして,引用発明のキャラクタはゲーム上でユーザの代わりを務めるものであり(引用例の段落【0025】),仮想空間上でユーザ本人の代わりを務める点で,周知技術1のアバターと共通するから(甲3),引用発明に周知技術1を適用する動機付けや根拠が存在するというべきである。原告の主張は,採用の限りでない。\n
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2010.10. 1
平成21(行ケ)10353 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年09月30日 知的財産高等裁判所
引用文献の認定誤りを理由に進歩性なしとした審決が取消されました。
以上によれば,甲1発明において,トリュフ入りブリーチーズが,熟成後,「上側のチーズと下側のチーズが分離せずに一体となった状態にある」との構成が開示されているものと認定することはできない。したがって,審決が,甲1発明について,「チーズどうしが結びつくことにより,上側のチーズと下側のチーズとが分離せずに一体となった状態にある。」と認定したことは誤りであり,同認定を基礎として,相違点Bについて,「本件発明1と甲1発明との間で,チーズカードどうしの「結着」の程度,「一体化」させられている点に差異は見出せないため,この点は実質的な相違点とはいえない」とした容易想到性の判断も誤りというべきである。\n
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2010.09.30
平成22(行ケ)10045 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年09月21日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとの審決が、一致点の認定誤りがあるとして取り消されました。
実際,引用例(甲1)においても,「本発明に係るブレーカボルト表面の溝の役割は,押出乾燥装置内部のゴム状重合体を外部に溢出させることなく蒸気だけを外部に逃がすことにある。」(段落【0018】),ないし「・・・この溝を通じてシリンダー内圧の異常上昇の原因となっている閉じ込められた蒸気を直接外部へ逃がし」(段落【0027】)と記載され,ブレーカボルトの溝は,シリンダー内圧の異常上昇の原因となっている蒸気だけを排出することを前提とした記載となっている。これに対し,本願発明における脱水スリットは,まさにポリマーから液体としての水を除去するためのものであるから,仮に,引用発明において,蒸気の排出とともに水が除去されるということができるとしても,本願発明における水分除去とは異質なものといわざるを得ず,本願発明の脱水スリットと,引用例(甲1)の「ブレーカボルト」に設けた溝とが,「水分を除去する開口」として一致するとはいえない。(ウ) 小括審決は,引用発明の「溝付ブレーカボルト」と本願発明の「脱水スリット」とが,「水分を除去する開口」である点で共通することを前提とした上で,両発明の相違点は「水分を除去する開口が,本願発明では,脱水スリットであるのに対して,引用例に記載された発明では,蒸気を直接外部へ逃すブレーカボルトに設けた溝である点。」であるとした。しかし,前記(イ)のとおり,本願発明の「脱水スリット」と,引用発明の「ブレーカボルト」に設けた溝とが,「水分を除去する開口」として一致するとはいえないから,前述した審決の一致点及び相違点の認定は誤りといわざるを得ない。さらに,審決は,引用発明のベント(「ブレーカボルト」の溝)と本願発明の脱水スリットとが,いずれも「水分を除去する開口」であることを前提として,「ブレーカーボルトに設けた溝に水分を除去する機能を付与することに換えて,ブレーカーボルトとは別途に設けたスリットに水分を除去する機能\を付与することは当業者が容易になし得たものである。」と判断していることからすれば,前記の認定の誤りが,引用発明との間で本願発明は容易想到性を欠くとした審決の結論に影響を及ぼすおそれがあることは明らかである。
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2010.09.16
平成22(行ケ)10038 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年09月15日 知的財産高等裁判所
進歩性欠如なしとした審決が、阻害要因無しとして取り消されました。
上記(3)のとおり,引用発明2には,本件特許の出願時点において,食品である納豆に通常含まれるビタミンK2の含有量を少なくすることで,血栓症の発生を予防する抗凝固療法を行っている患者や血栓症の危険性のある人にも安心して食することができる食品を提供するとの本件発明1と同様の課題及びその解決を図ることが示されているということができる。そうすると,ナットウキナーゼとビタミンK2とが含まれた納豆菌培養液を含むことを特徴とする液体納豆を含むことを特徴とする食品である引用発明1において,引用発明2を適用して,ビタミンK2の含有量を少なくしようと試みることは,当業者であれば容易に想到することができるということができる。引用発明1において,引用発明2に開示されている納豆に通常含まれるビタミンK2の含有量を少なくするとの課題の適用を阻害する事由を見いだすことはできない。なお,本件発明1における「納豆菌培養液またはその濃縮物」の技術的意義として,本件審決が認定するように,少なくとも納豆菌からの分泌物及び培地成分の残渣など通常の納豆菌培養液由来の種々の栄養分が有意な量含まれているものと解釈されるとしても,引用発明1も,納豆菌とその代謝産物である人体に有益な機能\\性物質とを含有する納豆菌培養液とからなることを特徴とする液体納豆を提供するものであるから,これに引用発明2を適用し,ビタミンK2の含有量を少なくしようと試みたものについても,納豆菌からの分泌物及び培地成分の残渣など通常の納豆菌培養液由来の種々の栄養分が有意な量含まれているものと認められ,上記のとおりの本件発明1における「納豆菌培養液またはその濃縮物」の技術的意義があるとしても,そのことをもって,上記の容易想到性の判断に影響を与えるものではない。
◆判決本文
◆こちらは、同特許に対する審取事件(平成22(行ケ)10240)ですが、こちらは無効でないとした審決維持です
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2010.09.10
平成21(行ケ)10289 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年08月31日 知的財産高等裁判所
相違点の認定誤りがあるとして、進歩性なしとの審決が取り消されました。
相違点2中の「前記サンプル上の前記焦点から前記光学部品へ向う前記蛍光X線が前記光学部品にほとんど全て当たる」との構成が,引用発明から容易に想到することができるとした審決の判断の当否を検討する。特許請求の範囲(請求項1)の記載によれば,本願発明の「単色集光光学部品(140/240)」は,少なくとも1つの「二重湾曲回折光学部品」を有し,その「二重湾曲回折光学部品」は,「点SをX線源の位置,点Iを焦点,Rを点Iと点Sを含む集束円の半径として,集束円の面において2Rの曲率半径を有し,セグメントSIに垂直な中間面において2Rと異なる曲率半径を有する」ものであるとともに,「二重湾曲単色光学部品」を有し,その「二重湾曲単色光学部品」は「一重湾曲の光学部品よりも大きな集光立体角で前記サンプル上の前記焦点から前記光学部品へ向う前記蛍光X線が前記光学部品にほとんど全て当たり,ブラッグ角度条件を用いて前記蛍光X線を単色化する」ことを構\\成要件としている。そして,上記「二重湾曲単色光学部品」の構成部分に着目するならば,「前記光学部品」は「二重湾曲回折光学部品」を指すものであり,かつ「前記蛍光X線」はX線放射源からのX線放射を集光して当該X線放射をサンプル上の焦点に集束させることで,サンプルの分析物を刺激して発生したものであるということができるから,「前記サンプル上の前記焦点から前記光学部品へ向う前記蛍光X線が前記光学部品にほとんど全て当たり」という構\\成は,単に,二重湾曲単色光学部品が発揮する機能を一般的に記載したにすぎないと解するのは妥当といえない。同構\\成は,サンプル上の焦点から発生し,単色集光光学部品を有する二重湾曲回折光学部品へと向かう「蛍光X線」のほとんど全てが二重湾曲回折光学部品に当たること,すなわち,本願発明の波長分散蛍光X線分光(WDS)システム全体からみた,サンプルから発生し二重湾曲回折光学部品へと向かう「蛍光X線」の態様ないし挙動を限定した記載と解するのが合理的である。これに対して,審決は,相違点2についての容易想到性の判断として,「集光効率の良い光学部品を用いようとすることは,周知の事項であるので,当業者が必要に応じて適宜成し得る設計事項にすぎない」とのみ理由を示している。同記載部分は,「一重湾曲の光学部品よりも大きな集光立体角」であるとの構成部分が容易想到であることの理由付けということはできたとしても,「前記サンプル上の前記焦点から前記光学部品へ向う前記蛍光X線が前記光学部品にほとんど全て当たり」との構\\成部分が容易想到であることの理由付けということはできない。
◆判決本文
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2010.08.29
平成21(行ケ)10422 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年08月19日 知的財産高等裁判所
引用文献の認定誤りを理由として、進歩性なしとした拒絶審決が取り消されました。
そこで,上記理解に基づいて,引用例に記載された「シランコーチング剤」と「シランカップリング剤」とをその成分の化学構造の観点から比較すると,両者の成分は,いずれも「有機シラン化合物」である点では共通するものの,「シランコーチング剤」の成分は,「水素化ケイ素の水素原子が炭化水素基などで置換した有機化合物」に止まるものであって,その具体的な化学構\造は,引用例の記載からは明らかではなく,甲27,乙5,甲31の記載を総合しても,一般的に「シラン」には,ガラスなどの無機物質と結合するためのアルコキシル基などの無機官能基を有していることは認められない。したがって,上記(2) カ(甲28)に記載されるような特定の化学構造を有する化学物質である「シランカップリング剤」は,化学構\造が特定のものである点において,「シランコーチング剤」と相違していると認められる。次に,その使用形態について比較すると,「コーチング剤」とは,一般的に,その言葉どおり,被膜を形成する材料を含有する塗料や被覆材などを基材上にコート(塗布,被覆)するための剤を意味する用語であると認められるから,「シランコーチング剤」とは,「シラン」を成分として含み,何らかの基材上にコートされる剤と解される。一方,「シランカップリング剤」については,例えば,上記(2) エ(乙3)に,「使用方法」として,カップリング剤を水溶液中に分散してガラス繊維や目の粗い充填剤に適用することが記載され,また,「接着の性質」の記載から,この使用方法によって,ガラス繊維や充填剤の表面とカップリング剤の無機官能\基とが反応して,結合することは理解されるものの,「カップリング剤」を「コート(塗布,被覆)」して使用することについては,何ら示されていないし,前述のとおり,引用例の「シランコーチング剤」に関する記載を総合しても,引用例においては「シラン」若しくは「シランコーチング剤」を「カップリング剤」として使用していることを示す記載はないから,引用例の記載からは「シランコーチング剤」が「シランカップリング剤」であると認めることはできない。以上によれば,引用例に記載された「シランコーチング剤」の「シラン」を,特定の化学構造を有する「シランカップリング剤」と限定して解釈することはできないし,「コート」という使用形態を特定する「シランコーチング剤」と,その使用方法が専ら「コート」であるとはいえない「シランカップリング剤」とを同一視することもできないというべきである。この点について,被告は,引用例の「シランコーチング剤」は,モノマー注入前に,セラミック焼成体に注入されて,焼成体表\面に被覆処理が施され,その結果,表面が改質されることから,「カップリング剤」と同等の目的で使用されているといえるなどと主張するが,引用例には,「シランコーチング剤」を使用する目的については何ら記載されていないから,引用例記載の発明の目的は明らかでなく,また他に被告が同等であるという根拠も見出せない。よって,審決が前記第2の3(1)クにおいて認定したように,引用例に「シランカップリング剤」を用いることが示されているということはできないから,審決の引用例の記載事項の認定には誤りがある。
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2010.08.29
平成21(行ケ)10180 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年08月19日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が取り消されました。裁判所は、新規物質については単に構成が記載されているだけでは足りず、製造方法を理解し得る程度の記載があることを要するとしました。
本件発明6及び7における本件3水和物が新規の化学物質であること,甲7文献には,本件3水和物と同等の有機化合物の化学式が記載されているものの,その製造方法について記載も示唆もされていないこと,以上の点については当事者間に争いがなく,かつ審決も認めるところである。そこで,このような場合,甲7文献が,特許法29条2項適用の前提となる29条1項3号記載の「刊行物」に該当するかどうかがまず問題となる。ところで,特許法29条1項は,同項3号の「特許出願前に‥‥頒布された刊行物に記載された発明」については特許を受けることができないと規定するものであるところ,上記「刊行物」に「物の発明」が記載されているというためには,同刊行物に当該物の発明の構成が開示されていることを要することはいうまでもないが,発明が技術的思想の創作であること(同法2条1項参照)にかんがみれば,当該刊行物に接した当業者が,思考や試行錯誤等の創作能\力を発揮するまでもなく,特許出願時の技術常識に基づいてその技術的思想を実施し得る程度に,当該発明の技術的思想が開示されていることを要するものというべきである。特に,当該物が,新規の化学物質である場合には,新規の化学物質は製造方法その他の入手方法を見出すことが困難であることが少なくないから,刊行物にその技術的思想が開示されているというためには,一般に,当該物質の構成が開示されていることに止まらず,その製造方法を理解し得る程度の記載があることを要するというべきである。そして,刊行物に製造方法を理解し得る程度の記載がない場合には,当該刊行物に接した当業者が,思考や試行錯誤等の創作能\力を発揮するまでもなく,特許出願時の技術常識に基づいてその製造方法その他の入手方法を見いだすことができることが必要であるというべきである。
(2) 本件については,上記のとおり,本件発明6及び7における本件3水和物が新規の化学物質であること,甲7文献には,本件3水和物と同等の有機化合物の化学式が記載されているものの,その製造方法について記載も示唆もされていないところ,前記1(2) の記載内容を検討しても,甲7文献には製造方法を理解し得る程度の記載があるとはいえないから,上記(1) の判断基準に従い,甲7文献が特許法29条1項3号の「刊行物」に該当するというためには,甲7文献に接した当業者が,思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく,特許出願時の技術常識に基づいて本件3水和物の製造方法その他の入手方法を見いだすことができることが必要であるということになる。この点,審決は,前記第2の4(1) 記載のとおり,まず,甲5文献の開示内容から,4−アミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−バイホスホン酸モノナトリウム塩が生成していることが窺える等の事情があること,甲12ないし甲14の各文献の開示内容から,水和物の製法としては,水溶液から晶出することが一般的であり,結晶水は,加熱あるいは乾燥により離脱し,加熱あるいは乾燥の条件を強くすることにより,順次離脱することは周知であるといえること,及び4−アミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジホスホン酸モノナトリウム塩の3水和物が存在することは甲7文献に記載されていることを根拠に,当業者は,4−アミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジホスホン酸モノナトリウム塩を水溶液から晶出させることにより,3水和物が得られること,そして,もし水溶液からの晶出により得られた4−アミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジホスホン酸モノナトリウム塩の水和数が3を超えていれば,適宜条件を選択し,加熱,乾燥することにより水和数を減ずることにより,容易に,本件3水和物を得ることができると考えるのが自然であると判断しているところ,その論理は必ずしも明確ではないが,前記第2の4(4)記載のとおり,さらに,審決は,原告の主張に対する判断において,「有機化合物によって水和物が存在し得る場合があることは明らかであり,‥‥,甲7文献において既に3水和物が目的物として明示され,その存在を疑うべき特段の事情が無いことを考慮すれば,技術常識を勘案し3水和物の製造条件を検討することに格別の困難性は無いというべきであ」ると判断していることから,これを善解すれば,甲7文献の記載を前提として,これに接した当業者が,思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく,甲5及び甲12ないし甲14の各文献に記載されている特許出願時の技術常識に基づいてその製造方法その他の入手方法を見いだすことができるものと判断したと解される。
(3) そうすると,本件においては,本件出願当時,甲7文献の記載を前提として,これに接した当業者が,思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく,本件3水和物の製造方法その他の入手方法を見いだすことができるような技術常識が存在したか否かが問題となるが,次のとおり,本件においては,本件出願当時,そのような技術常識が存在したと認めることはできないというべきである。\n
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2010.08.29
平成21(行ケ)10408 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年08月19日 知的財産高等裁判所
CS関連発明について、公知文献から進歩性が無いとして訂正を認めなかった審決が維持されました。
そうすると,引用発明では,送出部に要求番組がない場合には,番組ライブラリから送出部に要求番組を転送してコピーしながら,それを第1の受信者に送出するのであるから,要求番組をコピーし始めた当初においては,要求番組の先頭部分しかコピーされていないことになり,この状態において,第2の受信者から同じ番組に対して,途中から番組情報を見たいという要求,特に番組の後半の部分を見たいというような要求があった場合には,その要求には応えられず,結局,第2の受信者から同じ番組に対して途中から番組情報を見たいという要求があったとしても,要求番組のコピー済みの部分からしか提供できないことは明らかであり,このコピー済みの部分が,コピー開始からの経過時間に応じて徐々に増加していくことも明らかである。したがって,引用発明において,読出開始位置が,「一連のデータの書込領域への書込開始からの経過時間に応じて設定される読出可能な範囲内」となることは,刊行物1の記載から自明な事項であって,訂正発明5は,引用発明及び刊行物1に記載の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとした審決の判断に誤りはない。\n
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2010.08.29
平成21(行ケ)10394 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年08月19日 知的財産高等裁判所
CS関連発明について、進歩性なしとの審決が維持されました。
◆判決本文
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2010.08. 6
平成21(行ケ)10376 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年08月04日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとの審決が、動機づけがないとして取り消されました。
先に指摘したとおり,本願発明の出願前において,照射野ランプが点滅することなどにより,X線撮影装置の作動状態を視覚上明らかにする技術は周知であった。しかしながら,本願発明及び引用発明は,X線撮影装置の作動状態ではなく,「撮影準備完了状態」を視覚的に認識することをその課題とするものであるところ,周知例1及び乙1文献により開示された周知技術は,いずれも照射野ランプの点灯状態の変化により,X線撮影装置の作動状態を視覚上明らかにするにとどまるものであって,照射野ランプによって「撮影準備完了状態」を視覚的に認識させることに関する技術は何ら開示されていない。周知例2についても,同様である。
イ 組合せの動機付けの有無について
引用発明は,操作者は,X線撮影時において,X線被曝を防ぐため,できるだけX線装置から離れた位置で撮影しようとすることを前提として,被検者に不安を与えることなく,操作者に撮影準備完了状態を視覚的に容易に認識させるために,操作者が頭を少し上向きにするだけで容易に視野に入る,操作者からよく見える場所である,天井などの装置の「上方」にレーザー光を当てるものである。そのような引用発明において,X線装置の上方で,かつ,装置から離れている操作者からもよく見える場所として例示されている天井(平面)のほかに,撮影準備完了状態を視認させるレーザー光を当てる場所として,天井とは異なって,装置の上方ではなく,また,平面でもない「被検者の撮影部位」を選択することは,人体にレーザー光線を当てることによって,少なくとも「被検者に不安を与えること」が当然予想されることも併せ考慮すると,当業者にとって想到すること自体が困難であるということができる。しかも,当業者にとって「被検者の撮影部位」を選択することが容易想到であり,さらに,レーザー光照射部をX線装置の適宜の位置に設けることについても当業者にとって容易想到であるとしても,照射野ランプとレーザー光照射部とがX線撮影装置に併設されるというにとどまり,それ以上に,X線照射野を照準し確認するための照射野ランプに撮影準備完了状態を知らせる機能\を併せ持たせることによって,撮影準備完了状態を知らせるレーザー光を照射するためのレーザー光照射部を不要とすることについては,引用例は,そもそも照射野ランプの構成自体を有さない以上,何らの示唆を有するものではない。さらに,既に指摘したとおり,照射野ランプについても,これに撮影準備完了状態を知らせる機能\を併せ持たせる構成は,本願発明の出願前においては,周知ではなかったのであるから,引用発明において,撮影準備完了状態を知らせるレーザー光に代えて,照射野ランプに撮影準備完了状態を知らせる光の光源としての機能\を付加する動機付けを見いだすこともできない。
◆判決本文
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2010.08. 3
平成21(行ケ)10329 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年07月28日 知的財産高等裁判所
進歩性違反なしとした審決が取り消されました。
審決が,引用発明1では,「運転の条件は,被混煉材の種類や温度上昇の制限に合わせて予め設定」されているため,「溶剤等の温度上昇」は運転の条件の設定により制限されて問題とされるものではなく,引用発明1において,他の手法により,「溶剤等の温度上昇」をさらに制御しようとする動機付けは見い出せないと認定した(23頁19行〜36行)ことについて,このような動機付けが存在しないという審決の認定は,当業者による通常の創作能\力を誤解したものであって誤りであると主張する。そこで,検討するに,引用発明1は,前記3(2)認定のとおり,真空状態にある混煉容器を自転・公転させて被混煉材を混煉脱泡する際に,当該容器の温度上昇を制限する必要があるという技術課題を明示しており,これを解決するために,容器の自転数,公転数を含む運転条件を予め設定したものと認められる。また,引用発明2も,前記4(2)認定のとおり,同様に,攪拌混合する対象物の温度上昇を押さえるという技術課題を有しており,これを解決するために,ホッパーの上面に設けた温度センサーにより対象物の温度を検知し,温度が一定の温度まで上昇すると,攪拌する部材の回転数を減少させて温度を低下させ,以後,検知した温度に応じて回転数を制御し,攪拌する部材の回転数の減少,増加を順次繰返すものであると認められる。さらに,本件周知例にも,攪拌により一定以上に温度が上昇するのを防ぐという技術課題と,これを解決するために,検出された温度に応じて攪拌翼の回転数を制御するという技術事項が開示されている。そうすると,引用発明1及び2と本件周知例は,いずれも攪拌により生じる温度上昇を一定温度に止めるという共通の技術課題を有し,それぞれその課題を解決する手段を提供するものであると認められる。したがって,引用発明1において,上記技術課題を解決するために採用した,混煉のための自転数,公転数を含む運転条件を温度上昇の制限などの条件に合わせて予め設定しておくという構\成に代えて,共通する技術課題を有する引用発明2に開示された,温度センサーにより対象物の温度を検知して温度が一定の温度まで上昇すると,攪拌する部材の回転数を制御するという技術思想を採用し,対象物の温度を検知して検知した温度に応じて容器の自転数,公転数を含む運転条件を制御するという構成(審決認定の[特定事項B]の構成)に至ることは,攪拌により一定以上に温度が上昇するのを防ぐという技術課題自体が本件周知例にも示される周知の技術課題であることも考慮すると,当業者にとって,容易に想到することができたものといわなければならない。審決認定のとおり引用例1に「温度の検知」の記載がないとしても,攪拌により生じる温度上昇を一定温度に止めるという技術課題が引用例1自体に開示されており,これが周知の技術課題でもある以上,当該課題解決の観点から,温度を検知してそれに応じて運転条件を制御するという構成を採用することに,格別の困難性はないものということができる。
・・・確かに,引用発明1において,混煉容器を自転・公転させて被混煉材を混煉脱泡する際に,当該容器の温度上昇を制限する必要があるという技術課題が開示されていることは,前記3(2)認定のとおりである。また,引用例1に「温度の検知」の記載がないとしても,攪拌により生じる温度上昇を一定温度に止めるという技術課題が引用例1自体に開示されており,周知の技術課題でもある以上,当該課題解決の観点から,他の解決手段を採用することに格別の困難性がないことも,前記(2)認定のとおりである。そうすると,引用発明1において,同発明と同様の技術課題を有する引用発明2に開示された,ホッパーの上面に設けた温度センサーにより対象物の温度を検知し,温度が一定の温度まで上昇すると攪拌する部材の回転数を制御するという技術思想を採用することは,当業者にとって,容易に想到することができたものといわなければならない。したがって,引用発明1において,引用例2に記載される技術思想を適用する動機付けは,周知技術を加味しても見い出せないとした審決の判断(32頁24行〜25行)は誤りであり,この点に関する原告主張の取消事由3には理由がある。
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2010.07.29
平成21(行ケ)10293 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年07月28日 知的財産高等裁判所
CS関連発明(?)について進歩性なしとした審決が維持されました。
先に指摘したとおり,引用例1には,番組表に表\\示される情報の種類及び量を増加させるという技術課題が示されているものということができる。そして,かかる課題を解決するために,限られた表示領域に,より多くの情報を見やすく一覧表\示するために,情報の項目に対応する一部の情報を項目自体の表示位置に表\示せず,当該項目が選択された際など,必要に応じて参照できるように当該項目自体とは異なる位置に表示する周知技術を適用し,選択されたセルに関連付けられている項目に対応する番組説明情報を,選択されたセルが配置されているモニタースクリーン上の領域とは異なるモニタースクリーン上の領域に表\示するように構成することは,当業者が容易に行い得たことと認められる。\n
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◆関連事件です。平成21(行ケ)10294
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2010.07.20
平成21(行ケ)10412 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年07月14日 知的財産高等裁判所
周知例として示された証拠には、本件発明とは目的が異なるとして、無効とした審決が取り消されました。
上記イ,ウのとおり,従来,陶磁器製の加熱調理器において,鍋の上部開口部外縁の,蓋が載置される平坦部と同じ高さ位置で,鍋の内面方向に鍋の厚みを厚くすることにより凸部を形成すること自体は,周知であったとしても,内鍋内面方向の凸部によって露を溜め,露の垂れを防止するという機能があることを記載した証拠はなく,これを示唆するものもない。加熱調理器において,内鍋内面方向に凸部を形成することは,蓋等の部材の載置を目的とするのが通常であり,蓋等の部材の載置を目的とする凸部の形成自体が周知であったとしても,フランジ部との関係や課題との関係では,何ら示唆がない。そして,引用例1の【0007】の「鍋パッキン74に付着したつゆは,ある一定量を超えると鍋62のフランジ部62fを伝って鍋62の側面へと滴下し」の記載をもって,直ちに,蓋の載置を目的とする凸部が露等を溜める効果をも奏することが当業者にとって自明であるとすることはできない。本件発明において,露の垂れを防止することを目的として内鍋内面方向に凸部を形成することは,従来のものと目的を異にするものである。前記(1)のとおり,本件発明は,引用発明1に係る金属材質の炊飯器内鍋構造をセラミックに変更し,蓋パッキンに付いた露の垂れを遮断する凸部を形成するものであるところ,別の目的で設けられている凸部を開示しているにすぎない周知例1ないし3等をもって,露の垂れを防止する構\成とする動機付けがあるとはいえない。そして,本件発明は,特定の内外面構造を有するセラミックス内鍋を用いて,ご飯の付着防止,保温時の省エネルギー化という課題を解決させながら,露の垂れを防止する構\成を検討した結果「フランジ部と対向する位置で内鍋内面方向に前記内鍋の厚みを厚くすること」による凸部を形成したものである。蓋の載置を目的とする凸部の形成自体が周知であったとしても,フランジ部との関係や課題との関係で何ら示唆がない以上,金属の内鍋を用いた,異なる露垂れを防止する構造の引用発明1から出発して,内鍋材質と凸部の具体的位置及び構\造を変更して,内鍋内面方向に内鍋の厚みを厚くすることにより凸部を形成することは,技術常識を参酌してもなお通常の創作能力の発揮を越えるものといわざるを得ない。よって,引用発明1のフランジ部の水平部から内鍋の内方に延設して露溜まりの溝部を形成している構\成を,フランジ部と対向する位置で内鍋内面方向に前記内鍋の厚みを厚くすることにより凸部を形成して露の垂れを防止する構成とすることは,当業者といえども容易に想到することはできないというべきである。\n
◆判決本文
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2010.07.20
平成21(行ケ)10238 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年07月15日 知的財産高等裁判所
出願の後に補充した実験結果等を考慮して、進歩性なしとした審決が取り消されました。
特許法29条2項の要件充足性を判断するに当たり,当初明細書に,「発明の効果」について,何らの記載がないにもかかわらず,出願人において,出願後に実験結果等を提出して,主張又は立証することは,先願主義を採用し,発明の開示の代償として特許権(独占権)を付与するという特許制度の趣旨に反することになるので,特段の事情のない限りは,許されないというべきである。また,出願に係る発明の効果は,現行特許法上,明細書の記載要件とはされていないものの,出願に係る発明が従来技術と比較して,進歩性を有するか否かを判断する上で,重要な考慮要素とされるのが通例である。出願に係る発明が進歩性を有するか否かは,解決課題及び解決手段が提示されているかという観点から,出願に係る発明が,公知技術を基礎として,容易に到達することができない技術内容を含んだ発明であるか否かによって判断されるところ,上記の解決課題及び解決手段が提示されているか否かは,「発明の効果」がどのようなものであるかと不即不離の関係があるといえる。そのような点を考慮すると,本願当初明細書において明らかにしていなかった「発明の効果」について,進歩性の判断において,出願の後に補充した実験結果等を参酌することは,出願人と第三者との公平を害する結果を招来するので,特段の事情のない限り許されないというべきである。他方,進歩性の判断において,「発明の効果」を出願の後に補充した実験結果等を考慮することが許されないのは,上記の特許制度の趣旨,出願人と第三者との公平等の要請に基づくものであるから,当初明細書に,「発明の効果」に関し,何らの記載がない場合はさておき,当業者において「発明の効果」を認識できる程度の記載がある場合やこれを推論できる記載がある場合には,記載の範囲を超えない限り,出願の後に補充した実験結果等を参酌することは許されるというべきであり,許されるか否かは,前記公平の観点に立って判断すべきである。・・・以上の記載に照らせば,本願当初明細書に接した当業者は,「UV−Bフィルター」として「2−フェニル−ベンズイミダゾール−5−スルホン酸」を選択した本願発明の効果について,広域スペクトルの紫外線防止効果と光安定性を,より一層向上させる効果を有する発明であると認識するのが自然であるといえる。他方,本件【参考資料1】実験の結果によれば,本願発明の作用効果は,i)本願発明(実施例1)のSPF値は「50+」に,PPD値は「8+」に各相当し,従来品(比較例1〜4)と比較すると,SPF値については約3ないし10倍と格段に高く,PPD値についても約1.1ないし2倍と高いこと(広域スペクトルの紫外線防止効果に優れていること),ii)本願発明は従来品に対して,紫外線照射後においても格段に高いSPF値及びPPD値を維持していること(光安定性に優れていること)を示しており,上記各点において,顕著な効果を有している。確かに,本願当初明細書には,本件【参考資料1】実験の結果で示されたSPF値及びPPD値において,従来品と比較して,SPF値については約3ないし10倍と格段に高く,PPD値についても約1.1ないし2倍と高いこと等の格別の効果が明記されているわけではない。しかし,本件においては,本願当初明細書に接した当業者において,本願発明について,広域スペクトルの紫外線防止効果と光安定性をより一層向上させる効果を有する発明であると認識することができる場合であるといえるから,進歩性の判断の前提として,出願の後に補充した実験結果等を参酌することは許され,また,参酌したとしても,出願人と第三者との公平を害する場合であるということはできない。
◆判決本文
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2010.07. 7
平成21(行ケ)10295 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年05月26日 知的財産高等裁判所
進歩性無効理由無しとした審決が取り消されました。
しかるところ,引用例2において,金と銅との接合層の特性を全率固溶体と金属間化合物との対比において記載していること,そして,その記載は金と銅との接合層に関する一般的な記載であると解されることからすると,引用発明1における「金と銅との塑性流動を生じさせうる温度範囲で加熱させつつ,」「加圧すること」によって形成された接続構造であるAu/Cu合金についても,全率固溶体か金属間化合物か,そのいずれかの相であるとみることができる。そして,引用発明1において,ICの接続表\面とコイルリードとの接点は,前記 イのとおりAu/Cu合金をもって形成されるものであるところ,上記のとおりの引用例2の全率固溶体は金属間化合物に比べて,電気抵抗が小さく,化学的に安定し,機械的強度の劣化のない高信頼性の半導体装置を得ることができるとの開示に基づくと,引用発明1における接合のAu/Cu合金についても,金属間化合物を避けて,Au/Cu全率固溶体が形成されるように想到することは,当業者において容易であるということができる。
◆判決本文
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2010.07. 7
平成21(行ケ)10361 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年05月27日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が取り消されました。
前記のとおり,引用刊行物A記載の発明は,擬似油汚れについて特定量を滴下し,乾燥工程を設けないとする相違点(い)に係る構成を欠くものである。同発明は,本願発明における時間,労力,価格を抑えることを目的として,手順を簡略化しようとする解決課題を有していない点で,異なる技術思想の下で実施された評価試験に係る技術であるということができる。このように,本願発明における解決課題とは異なる技術思想に基づく引用刊行物A記載の発明を起点として,同様に,本願発明における解決課題とは異なる技術思想に基づき実施された評価試験に係る技術である引用刊行物C記載の発明の構\成を適用することによって,本願発明に到達することはないというべきである。(ウ) 本願発明は,決して複雑なものではなく,むしろ平易な構成からなる。したがって,耐油汚れに対する安価な評価方法を得ようという目的(解決課題)を設定した場合,その解決手段として本願発明の構\成を採用することは,一見すると容易であると考える余地が生じる。本願発明のような平易な構成からなる発明では,判断をする者によって,評価が分かれる可能\性が高いといえる。このような論点について結論を導く場合には,主観や直感に基づいた判断を回避し,予測可能\性を高めることが,特に,要請される。その手法としては,従来実施されているような手法,すなわち,当該発明と出願前公知の文献に記載された発明等とを対比し,公知発明と相違する本願発明の構成が,当該発明の課題解決及び解決方法の技術的観点から,どのような意義を有するかを分析検討し,他の出願前公知文献に記載された技術を補うことによって,相違する本願発明の構\成を得て,本願発明に到達することができるための論理プロセスを的確に行うことが要請されるのであって,そのような判断過程に基づいた説明が尽くせない限り,特許法29条2項の要件を充足したとの結論を導くことは許されない。本件において,審決は,上記のとおり,本願発明と引用刊行物A記載の発明と対比し,擬似油汚れについて特定量を滴下し,乾燥工程を経由しないで水洗するとの構成を相違点と認定している。しかし,審決は,本願発明と,解決課題及び解決手段の技術的な意味を異にする引用刊行物A記載の発明に,同様の前提に立った引用刊行物C記載の事項を組み合わせると本願発明の相違点に係る構\成に到達することが,何故可能であるかについての説明をすることなく,この点を肯定したが,同判断は,結局のところ,主観的な観点から結論を導いたものと評価せざるを得ない。\n
◆判決本文
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2010.07. 3
平成21(行ケ)10257 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年06月29日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が取り消されました。理由は、引例に記載に技術の認定誤りです。カラー刷りの別紙が判決文に添付されてます。本件発明についてで技術説明書です。審判で提出したものかもしれませんが、事案によっては、裁判所に対してはこのような資料提出が好ましいですね。
すなわち,引用例1の記載事項から得られる知見は,単に,フラットタイプリニアモータにおいては,磁気シールド板は,推力向上に寄与しないことを示しているにすぎない。引用例1には,推進力向上に寄与しないフラットタイプリニアモータに,ロッドタイプリニアモータを適用することの動機付けが示されているわけではなく,また,磁気シールド板が推力向上の効果が生じることを予測できることが示されているわけではない。のみならず,引用例1のフラットタイプリニアモータに周知技術であるロッドタイプリニアモータを適用すると,フラットタイプリニアモータにおいては磁束の分路として機能\することから推力を減少させる方向で作用していた磁気シールド板が,逆に推力を向上させる方向で作用することを当業者において予測できたことを認めるに足りる記載又は示唆はない。そうすると,ロッドタイプリニアモータが周知の技術であったか否かにかかわらず,引用例1に,ロッドタイプリニアモータを適用する示唆等が何ら記載されていない以上,当業者が,周知技術を適用することにより,相違点1,2及び6に係る本願発明の構\成とすることを容易に想到し得たものであるということはできない。
◆判決本文
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2010.06.30
平成21(行ケ)10323 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年06月29日 知的財産高等裁判所
テクニカルガイドが刊行物に該当しないとした審決が取り消されました。
特許法29条1項3号所定の「刊行物」を「頒布」するとは,不特定の者
に向けて,秘密を守る義務のない態様で,文書,図面その他これに類する情
報伝達媒体を頒布することを指す。
そこで,甲1につき,頒布の対象者及び秘密保持契約の有無の観点から検
討する。
ア 頒布の対象者について
甲1は,その内容,体裁,作成者に照らすと,主として,製品(洗濯機)の販売・配送・施工・修理等を行うサービス業者等の便宜のために,製造業者である松下電器により作成されたガイドブックである。弁論の全趣旨によれば,松下電器は,日本全国にわたって膨大な数量の洗濯機を販売していたことがうかがわれ,松下電器の洗濯機について販売・配送・施工・修理等を行うサービス業者等は,日本全国に多数存在し,松下電器の直営店だけでなく,中小電器店や家電量販店など,規模や業態も様々であったものと認められる。本件全証拠によるも,甲1のテクニカルガイドについて,通し番号を付すなどして管理されていたことや,配布先を特定して管理されていたこと,又は第三者への再頒布や開示が禁止されていたこと等の事実を認めることはできない。そうすると,甲1の配布の対象者ないし所持者は,不特定の者であったと解するのが相当である。
イ 秘密保持契約の有無について
甲1の作成者である松下電器とサービス業者との間で,甲1の記載のすべて又は一部について,明示の秘密保持契約を締結した事実を認めることはできない。甲1のようなテクニカルガイドは,サービス業者の便宜のために頒布されるものであって,顧客(消費者)に交付されることは想定されていない(乙1)。しかし,そのような趣旨で作成されたものであったとしても,そのことから直ちに,甲1について秘密保持契約が締結されていたと認定することはできない。のみならず,甲1について,黙示にも秘密保持契約が締結されていたと認定することはできない。すなわち,甲1には,以下のとおり,公知の事項が多数含まれており,仮に,秘密保持契約を締結するのであれば,守秘義務の対象を特定するのが自然であるが,秘密として取り扱うべき事項の特定がされた形跡はない。この点を詳細にみると,甲1が対象とする洗濯機NA-F55A2 の取扱説明書(甲5)及び同洗濯機(甲6)に表示された事項は,公知となっているところ,甲1には,これらの事項が記載されている。例えば,甲1の「定格」(1,4頁)に記載された事項は,取扱説明書(甲5)の「仕様」及び洗濯機NA-F55A2(甲6)の「家庭用品品質表示法による表\示」に記載されており,甲1の「ソフト仕上げ剤仕様目安」(11頁)に記載された事項は,同洗濯機(甲6)の「洗濯容量水量ソ\フト仕上剤量の目安」に記載されており,甲1の「異常報知(自己診断機能)」(25頁)に記載された事項は,同洗濯機(甲6)の「タイマー表\示部に『E』が表示され,ブザーが鳴る場合」に記載されており,甲1の「メッセージと操作の内容」の「●予\約運転はタイマーでセットできます」(18頁)に記載された事項は,同洗濯機(甲6)の「予約タイマーの使用方法」に記載されている。仮に,甲1の作成者が配布先に対して守秘義務を課すのであれば,公知の事項も含まれる甲1の記載事項のうちで秘密とすべき対象を特定するのが自然であるが,そのような特定は何らされていない。したがって,甲1に記載された事項の全部又は一部について,守秘義務を負う旨の明示又は黙示の秘密保持契約がされていたものと認めることはできない。\n
◆判決本文
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2010.06.30
平成21(行ケ)10324 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年06月29日 知的財産高等裁判所
進歩性について争われましたが、示唆もないし阻害要因ありとして、無効理由無しとした審決が維持されました。
甲2,甲11ないし甲14は,ポッティング後に放熱板を取り外すことや故障した部品を交換することについては,何ら記載されておらず,後記のとおり,甲18,19を考慮したとしても,ポッティング材に埋設されたプリント基板の部品を交換する技術が周知であるとはいえない。したがって,甲1,甲2,甲11ないし甲14には,部品交換を目的とした放熱器の着脱を行う甲1発明に甲2発明を適用することについての示唆はない。
イ 阻害要因
(ア) また,前記(2)イのとおり,甲1発明における作用効果の一つである,部品交換を目的として半導体素子の放熱器の着脱容易な取付けを満足できるようにすることは,プリント基板1の下側より穴6にネジ回しを差し込んで,半導体素子2と放熱器3を固定するネジ4を回して半導体素子2から放熱器3を外すことが可能な状態にあることを前提とするものであるところ,ポッティングが周知の技術であるとしても,プリント基板をポッティング材により覆う場合は,ネジ回しをプリント基板1の下側より穴6に差し込んでネジ4を外すことも,プリント基板に取付けられた部品を交換することも,ポッティングを施さない場合に比べて困難である。したがって,ポッティングを施すことは,甲1発明の作用効果の前提とは相容れない。仮に,甲1発明に甲2発明を適用するならば,甲1発明のプリント基板をケース内に収納し,プリント基板及び電子部品のリードを覆いかつ放熱器の一部を埋設状態とするようにケース内にポッティング材を充填することとなる。そうすると,放熱器の直下にある部品が故障して交換しなければならないような場合,放熱器を固定しているネジを回そうとしても,ケース及びその中に充填されたポッティング材があるため,そのままでは,プリント基板の下側より穴にネジ回しを差し込んでネジを回すことにより放熱器の着脱をすることはできない。プリント基板の下側より穴にネジ回しを差し込んでネジを回すことにより放熱器の着脱をするのであれば,ケースを破壊するなどし,ポッティング材を除去することが必要不可欠となる。しかし,そのような方法では,プリント基板の下側より穴にネジ回しを差し込んでネジを回すことにより放熱器の着脱をすることができるように放熱器を取り付けたことにならず,放熱器の着脱容易な取付けという甲1発明の課題,作用効果は達成されないこととなる。放熱器の着脱容易な取付けという甲1発明の課題,作用効果を達成するのであれば,単にプリント基板の下側より穴にネジ回しを差し込んでネジを回すことにより放熱器の着脱をすることができるように放熱器を取り付けなければならないから,そのような甲1発明の課題,作用効果は,甲1発明に甲2発明を適用し,甲1発明のプリント基板をケース内に収納してケース内にポッティング材を充填することの阻害要因になるものと認められる。\n
◆判決本文
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>> 阻害要因
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2010.06.17
平成21(行ケ)10310 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年06月16日 知的財産高等裁判所
CS関連発明について、進歩性違反理由無しとした審決が維持されました。
原告は,本件発明1は複数ユーザの個人認証に限定されるものではないから,引用発明1における「URL」は,本件発明1の「管理マスタID」に相当すると主張する。しかし,上記(1)イ,ウのとおり,本件発明1の「管理マスタID」は,複数のユーザが存在することを前提に,第1のシステムのユーザと第2のシステムのユーザとを関連付けるために,ユーザごとに設定されたユーザ固有の識別コードであるのに対し,引用発明1の「URL」は,複数のユーザが存在することを前提としているともいえないし,ユーザごとに設定されたユーザ固有のものともいえないから,引用発明1における「URL」が,本件発明1の「管理マスタID」に相当するということはできない。
◆判決本文
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2010.05.28
平成21(行ケ)10287 審決取消請求事件 平成22年05月27日 知的財産高等裁判所
進歩性違反について無効理由無しとした審決が維持されました。
したがって,甲1記載の第1実施例において,本件発明の最終到達水位,及び水の撹拌を行う際の水位に該当するのは,いずれも高水位であり,給水を停止し撹拌を始める時の水位は,最終到達水位に等しく,そうすると,甲1の第1実施例には,給水を中断し撹拌を始める時の水位が最終到達水位である発明が記載されており,最終到達水位より低い水位において給水を停止して撹拌を始める発明は記載されていない。(ウ) もっとも,甲1の第1実施例の槽洗浄コースにおいては,高水位まで給水(ステップa1)して1巡目の洗浄を行った後,再び高水位までの給水(ステップa1)をするから,1巡目の洗浄において水が撹拌される間に外槽2から水が溢れ出て,1巡目の洗浄の後には,外槽2及び内槽3内の水位が高水位よりも低下していることが推認される。しかし,前記アのとおり,本件発明において,水を撹拌する際の水位は,給水を停止し撹拌を始める時の水位を指すものと認められるから,水の撹拌中及び撹拌後に水位が低下したとしても,そのことから直ちに,本件発明にいう,水を撹拌する際の水位(すなわち,水の撹拌を始める時の水位)も低下するとの帰結が導かれるわけではない。そして,甲1の第1実施例の1巡目及び2巡目の洗浄は,いずれも給水(ステップa1)によって高水位まで給水されて撹拌が開始されるから,本件発明にいう,水を撹拌する際の水位(すなわち,水の撹拌を始める時の水位)はいずれも高水位であり,1巡目の洗浄による撹拌中又は撹拌後の水位が低下していたとしても,そのことによって,本件発明にいう,水を撹拌する際の水位(すなわち,水の撹拌を始める時の水位)が低下するとはいえない。(エ) さらに,本件発明に示された,最終到達水位よりも低い水位で給水を停止して水を撹拌するという技術思想は,撹拌された水の波の機械力による洗浄作用を利用するとの技術的知見に基づくものであるが,甲1には,このような技術的知見について,何らの記載も示唆もない。
◆判決本文
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2010.05.28
平成21(行ケ)10361 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年05月27日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとの審決について、技術思想が異なるとして取り消されました。
以上を総合すると,引用刊行物Cからは,耐油汚れの評価に当たって,時間,労力,価格を抑え,手順を簡略化しようとする本願発明の解決課題についての示唆はない。引用刊行物C記載の発明における,「乾燥工程を経由しない滴下」という操作は,本願発明における同様の操作と,その目的や意義を異にするものであっって,引用刊行物C記載の発明は,本願発明と解決課題及び技術思想を異にする発明である。前記のとおり,引用刊行物A記載の発明は,擬似油汚れについて特定量を滴下し,乾燥工程を設けないとする相違点(い)に係る構成を欠くものである。同発明は,本願発明における時間,労力,価格を抑えることを目的として,手順を簡略化しようとする解決課題を有していない点で,異なる技術思想の下で実施された評価試験に係る技術であるということができる。このように,本願発明における解決課題とは異なる技術思想に基づく引用刊行物A記載の発明を起点として,同様に,本願発明における解決課題とは異なる技術思想に基づき実施された評価試験に係る技術である引用刊行物C記載の発明の構\成を適用することによって,本願発明に到達することはないというべきである。本願発明は,決して複雑なものではなく,むしろ平易な構成からなる。したがって,耐油汚れに対する安価な評価方法を得ようという目的(解決課題)を設定した場合,その解決手段として本願発明の構\成を採用することは,一見すると容易であると考える余地が生じる。本願発明のような平易な構成からなる発明では,判断をする者によって,評価が分かれる可能\性が高いといえる。このような論点について結論を導く場合には,主観や直感に基づいた判断を回避し,予測可能\性を高めることが,特に,要請される。その手法としては,従来実施されているような手法,すなわち,当該発明と出願前公知の文献に記載された発明等とを対比し,公知発明と相違する本願発明の構成が,当該発明の課題解決及び解決方法の技術的観点から,どのような意義を有するかを分析検討し,他の出願前公知文献に記載された技術を補うことによって,相違する本願発明の構\成を得て,本願発明に到達することができるための論理プロセスを的確に行うことが要請されるのであって,そのような判断過程に基づいた説明が尽くせない限り,特許法29条2項の要件を充足したとの結論を導くことは許されない。
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2010.05.24
平成21(行ケ)10215 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月30日 知的財産高等裁判所
進歩性違反無しとした審決が維持されました。
このように,引用発明や甲6発明が有する課題や技術思想が周知であるとしても,前記(1)のとおり,引用発明の圧電駆動体20と甲6発明の熱応動素子33とは,伸縮する原理も果たす役割も異なる部材である上,前者は流体と隔離された状態に,後者は流体と接触する状態に置く必要があるなど,その環境も相反する。以上からすれば,引用発明の圧電駆動体20に関する構成に,甲6発明の熱応動素子33に関する構\成を適用することは阻害事由があるというべきであって,課題,技術思想がありふれていることが上記阻害事由を解消するものではない。(エ) 仮に,引用発明と甲6発明とが,弁の調整によって流体流量を制御するという点において同一の技術分野に属し,構成,機構\,技術思想等において共通又は類似しているとしても,引用発明は,電圧の供給により伸縮する圧電駆動体20により,これを熱的,電気的に絶縁しつつ,150パルス/秒で閉止弁を上下動させることを実現した技術思想を開示するものであり,甲6発明は,熱によって伸縮する熱応動素子33を,流体に接触させることにより水温を感知させ,流量調整器25の通水路断面積を変える技術思想を開示するものである。以上からすれば,引用発明と甲6発明は,技術思想において共通するとはいえず,圧電駆動体20と熱応動素子33は,全く異なる部材であるから,相互に転用することはできないというべきである。
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2010.05. 7
平成21(行ケ)10163 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年04月28日 知的財産高等裁判所
CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
上記記載によれば,引用例1に記載された発明(引用発明1)の半導体製造装置は,半導体製造ラインの進捗管理及び工程管理において,工程管理用電子ファイルの作成及び管理を容易にすることを基本的な課題とし,そのために次の構成を備えたものであることが認められる。・・・そして,引用発明1は,上記構\成を備えることにより,管理部署と半導体製造ライン間における工程管理情報の作成が容易になる,複数の設備群管理計算機と複数の部署別管理計算機との間の電子ファイルの流れを効率良く管理できる,半導体製造ライン及び管理部署のハード構成並びにプログラムの簡素化を図ることができる等の効果が得られるものである。・・・・そこで検討するに,引用例1には,前記のとおりの技術的事項が記載されているところ,半導体製造ラインシステムの複数の設備群管理計算機及び製品管理計算機は通信回線により情報転送可能\に接続されており,管理部署システムの複数の部署別管理計算機も通信回線により情報転送可能に接続されている。また,電子ファイル管理計算機は,半導体製造ラインシステムと管理部署システムとを接続し,複数の設備群管理計算機と複数の部署別管理計算機との間の送受信先を指定してそれぞれの電子ファイルの情報転送を管理する機能\を備えることから,電子ファイル管理計算機と半導体製造ラインシステムとの間,及び電子ファイル管理計算機と管理部署システムとの間にも,情報の転送を行う通信回線が存在するということができる。そして,計算機を通信回線により情報転送可能に接続する場合,送受信機能\を有する装置を介在させることは,コンピュータネットワークの技術分野における技術常識といえる事項であり,電子ファイル管理計算機,管理部署システムの部署別管理計算機,半導体製造ラインシステムの設備群管理計算機及び製品管理計算機は,いずれも通信回線により情報転送可能に接続されているのであるから,それぞれ送受信機能\を有する装置,すなわち「送信・受信装置」を介して情報転送可能に接続されていると認めることができる。」\n
◆判決本文
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2010.05. 1
平成21(ネ)10028 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成22年04月28日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとして104条の3により請求棄却とした原審が取り消されました。
以上によると,甲11技術は,・・・という点で共通するものということができるが,柱の垂直度の調整方法については,・・・,本件発明と異なり,柱の垂直度の調整は,柱を垂直状態に吊り下げた状態において行われるものと判断される。また,甲11技術においては,建柱作業の終了後も,ボルト体はベースの下面四方部に残されるものであるのに対して,本件発明の建て直し装置は,建入れ直し装置のナットの上方にベースプレートの縁部を配置するものであって,作業終了後には装置を撤去するものである。また,甲12技術には,鉄骨柱の建入れ直しにおいて,鉄骨柱を鉛直に姿勢制御すること,鉄骨柱を鉛直に姿勢制御するに当たって,歪直し用のワイヤを不要とすることという技術課題が開示されており,この課題の解決手段として,鉄骨柱の建入れ直しにおいて,鉄骨柱の歪みを直すためにジャッキ装置が鉄骨柱の重量を積極的に引き受けようとするものであって,本件発明のように,鉄骨柱の重量の大半をテツダンゴが引き受け,ボルトの軸線方向に移動可能であるナットについては,てこの原理によって,鉄骨柱の重量に対して比較的小さな力を加えることによって,ベースプレートの縁部を持ち上げてベースプレートが水平になるように微調整をすることができるものであって,鉄骨柱の重量を積極的に引き受けるものではないものとは,その機能\\において異なるところがあり,甲12技術と本件発明とでは,それぞれのジャッキ又は建て直し装置に求められる対象物を支えるために適した大きさや強度についての構造等に違いが生ずるものである。そうであるから,上(ア)記 のとおり,本件発明とは技術分野や課題が異なり,本件発明とは異なって対象物の重量を積極的に引き受けるホイスト(ジャッキ装置)についての乙1発明に,鉄骨柱の建入れ直し方法として鉄骨柱の垂直度の調整方法や作業終了後の建入れ直し装置の取扱が本件発明とは異なっている甲11技術や,鉄骨柱の鉛直への姿勢制御において,ボルトの軸線方向に移動可能なナットの機能\\について鉄骨柱の重量を積極的に引き受けるものではない本件発明とは異なって,鉄骨柱の重量を積極的に引き受けるジャッキによる甲12技術を適用して,相違点1を克服することが容易想到であるということはできないというべきである。
◆判決本文
◆原審・平成21年03月05日東京地裁判H20年(ワ)第19469号事件
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2010.04.30
平成21(行ケ)10273 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年04月27日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が維持されました。
原告は,引用発明は,鑞材塗布と鑞付けによる接合が必須の要件であるから,このことは,鑞材塗布と鑞付けによる接合を省略することに対し,阻害事由となると主張する。しかし,前記1 イ のとおり,甲1の特許請求の範囲の請求項2と実施例には,嵌合されて接合されたヒートシンクが記載されているものの,甲1の記載により,嵌合された後で接合される前の状態は明確に認めることができる。そして,甲2の【0009】の記載によれば,鑞付け等による接合の有無は,コストと熱抵抗との関係で決められる設計的事項にすぎないものと認められるから,引用発明は,鑞材塗布と鑞付けによる接合を省略することに対し,阻害事由とはならないものと認められ,原告の上記主張は,採用することができない。・・・以上によれば,審決が,甲2に,「ヒートパイプを使ったヒートシンクについて,フィンにバーリング加工等によって孔を設け,その孔にヒートパイプを差し込む形態が実用的であることに加え,コスト面で許されれば,熱抵抗を小さくするため,鑞接合する」旨が記載されていることから,「引用発明において,コスト面を考慮して,鑞材塗布と鑞付けによる接合を省略すること,すなわち相違点1を解消することは,甲1,2の記載から当業者が容易に想到することができた」と判断した点に誤りはないものと認められる。
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2010.04.27
平成21(行ケ)10301 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年04月26日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が維持しされました。
「上記のとおり,引用発明1は,切断部20に断続部22を設けることにより,切断部20を形成した後,粘着テープ2の巻心1への巻き付け完了までの間,テープ2が取り扱い易くなることを企図したことが認められるから,同様に巻き取り時の破断防止を効果とする引用発明2を適用することの動機付けが認められる。そうすると,引用発明1に引用発明2を適用し,当該断続部22を高速巻き取り時に破断しない程度の大きさに設定することは,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)にとって格別困難ではなく,容易に想到し得たことというべきである。ところで,次層表面の接着剤による最表\層裏面に作用する付着力や,切り目を入れない部分で上流側の粘着テープと連続していることによる巻き込む力といった,粘着テープの最表層を粘着テープ側が保持しようとする力に対し,最表\層表面の接着剤による清掃面に付着しようとする力が大きい場合には,粘着テープの最表\層が清掃面に付着することは引用発明1の切断部20の構造に照らすと技術的に明らかであり,こうした清掃面への付着に係る機序は当業者であれば容易に理解できるものである。こうした機序を理解した当業者にとって,引用発明1に引用発明2を適用し,当該断続部22を高速巻き取り時に破断しない程度の大きさに設定する場合に,その限度において断続部22が破断しにくくなるため,使用時の巻き込む力がより期待できることも容易に理解できる。そして,引用発明1は,「シート面等の粉塵等を粘着除去する」(甲20,段落【0001】)とあるようにフローリング等への使用を想定しているといえるところ,粘着式ローラーを床面等の清掃に利用する場合に床等に粘着テープが付着してしまうこと,その原因は床等が平滑・平坦であることにより粘着力が大きくなることであることは当該技術分野において周知の技術的事項であることを踏まえれば,さらに進めて,粘着テープの粘着力とフローリング等の平滑度に基づく付着力を勘案して,断続部22を粘着テープの一部がフローリング等へ剥離付着しないように設定した大きさとすることも,上記の機序を理解した当業者にとっては容易に想到できた事項と考えられる。さらに,前記のとおり,引用発明1は,ローラーの軸方向に対し傾斜した切り目を設けた上,切り目を入れない部分をその上流側の端部に有するものであるので,こうした引用発明1に粘着テープの粘着力とフローリング等の平滑度に基づく付着力を勘案して,断続部22を粘着テープの一部がフローリング等へ剥離付着しないように設定した大きさとすることにより,本願発明と同様,フローリング等への付着を防止する効果が期待できることは,当業者が十\分に予測できるものと認められる。よって,本願発明の相違点bに係る構\成は,引用発明1,引用発明2及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものと解するのが相当である。」
◆判決本文
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2010.04.22
平成21(行ケ)10111 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年04月20日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした無効審決が維持されました。争点は、動機づけがあるか否かです。
原告は,甲2発明は内槽と外槽の二重槽のタンクを効率よく解体する場合の課題,及び解体工事中のタンクの横振れや移動に伴う事故の解消を課題としているのに対し,甲1発明はそのような課題を考慮しておらず,両発明の課題は異なっており,甲2発明に甲1発明を適用する動機付けはないと主張する。しかし,前記1(2)の〔従来の技術〕欄記載のとおり,甲2には「原油タンクなどの鋼板製のタンクの解体工法としては,従来タンクの上部から順に解体する工法と,下部より解体する工法とがある。上部から解体する工法では,高所作業となるため足場の架設や安全確保に対する配慮が必要で,それに伴って解体費用が増加するという難点がある。……これを避けるため下部解体工法が開発され,その代表的工法としてジヤツキダウン工法がある」との記載がある。また,前記1(3)の<従来の技術>及び<発明が解決しようとする課題>欄記載のとおり,甲1には「従来,建造物の解体作業は,低層建造物から高層建造物に至るまで悉く,屋上等の最上部から聞始され,地下基礎部等の最下部にて終了されていた。……本発明は,以上の諸点に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,作業が容易で,工数,工期も短く,しかも周辺への飛散物や,高層階からの落下物のない建造物の新規な解体工法を提案するにある。」との記載がある。そして,前記1(1)イ,ウのとおり,本件特許発明は,ビルを上部からではなく下部から解体する工法に関する発明で,「周囲に与える危害を最小にして,能率よく安全に,さらに経済的に解体できるビルの解体工法を提供する」ことを目的とするものである。上記各記載によれば,甲1発明と甲2発明とは,いずれも,構\造物を,上部ではなく下部から解体するもので,工期や工数(費用)の増加,作業の危険性等といった問題点の解決を課題とするものであり,本件特許発明と共通の解決課題を有しているものである。
◆判決本文
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2010.03.31
平成21(行ケ)10142 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月29日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が取り消されました。
エ 原告は,上記<相違点2−1>についての容易想到性を否定した審決の判断に誤りがあると主張するので,この点について判断する。上記アの甲2公報の記載に基づき甲2装置発明が上記相違点2−1の構成(材料混合タンクの底面に、材料供給兼排出管53と材料排出専用管57とを分離させて設ける構\成)を採用した技術的意義についてみると,このような材料排出専用管を有しない従来技術の気流混合装置(具体的には,本件訂正発明2のように,流動ホッパーの出入口が縦方向に連通した縦向き管とのみ連通するような気流混合装置)においては,エアー吸引手段が作動している間は材料供給兼排出管から混合済み粉粒体混合材料を排出することができないという課題があったことから,作動中に混合済み材料の排出を可能とする管,すなわち材料排出専用管を,材料供給管とは分離して設けたものと認められる。このような技術的意義に照らせば,上記認定に係る甲2装置発明における材料排出専用管は同発明の本質的要素を構\成するものというべきであって,甲2装置発明に基づきつつ,これから同管を除外した構成を想到することは容易でないといわなければならない。オ(ア) これに対し原告は,甲2装置発明における材料排出専用管は,装置の停止時には単なる蛇足であり,作動時にも特に必要なものではないから,これを取り去ることに障害はないと主張する。しかし,上記アの段落【0023】〜【0027】の記載によれば,甲2装置発明においては,材料排出専用管を設けることにより,エアー吸引手段の作動中にもかかわらず混合済み材料を次工程に排出することが可能となり,またエアー吸引手段の停止時には,混合済み材料が材料供給兼排出管と材料排出専用管の2本から排出されることで残材として残りにくくなり,色替えや品種替えの際に起こり得る品質の低下を解決できるという作用効果を有するものと認められるから,このような材料排出専用管が単なる蛇足ということはできない。・・・・甲2公報におけるレベル計の技術的意義は,これにより材料混合タンク内の混合済みの粉粒体混合材料の貯留量を検出し,材料供給源から材料混合タンクへの粉粒体材料の供給量を制御してその貯留量を一定とすることを可能\とし,もって材料収容手段側に安定して混合済みの粉粒体混合材料を排出するというものであって(段落【0029】),そこには未混合材料が材料収容手段へ落下することを回避する目的で混合済み材料のレベルを制御するという本件訂正発明2の上記課題ないし技術思想について開示・示唆するところがない。そうすると,甲3公報及び甲2公報のいずれにおいても,本件訂正発明2における上記課題について開示・示唆するところがないから,そのレベル計の部分のみを取り出して両者を組み合わせる必然性はないといわざるを得ず,甲3発明のレベル計を,受部から更に上部に位置する混合ホッパーへと変更することについて動機付けがあるということはできない。オ(ア) これに対し原告は,甲3発明と甲2装置発明の技術分野の同一性,技術内容の密接性,甲3発明と甲2装置発明が後者は前者を従来技術とするものであり,両者の目的も機能も同じであるから,甲3発明のレベル計の位置を甲2装置発明のレベル計の位置に置換することに困難性がないと主張する。しかし,たとえ技術分野や技術内容に同一性や密接な関連性や目的・機能\の類似性があったとしても,そこで組み合せることが可能な技術は無数にあり得るのであって,それらの組合せのすべてが容易想到といえるものでないことはいうまでもない。その意味で,上記のような一定の関連性等がある技術の組合せが当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)において容易想到というためには,これらを結び付ける事情,例えば共通の課題の存在やこれに基づく動機付けが必要なのであって,本件においてこれが存しないことは前記エのとおりである。\n
◆判決本文
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2010.03.31
平成21(行ケ)10144 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月30日 知的財産高等裁判所
引用発明の認定誤りを理由として、拒絶審決が取り消されました。
前記1(2)の記載によれば,引用例2記載発明は,音響装置や映像装置などの特別の機器を必要とせず,また睡眠薬や鎮静剤のような副作用や習慣性のない,日常的に摂取可能で,嗜好性にも優れた,α波を効果的に増強してリラックス状態をもたらすことのできるα波増強剤及びα波増強用食品を提供することを課題とするものである。引用例2には,「ストレス」という語が数多く用いられている。すなわち,「α波を増強させてストレスを解消してリラックス状態にする」(【0001】),「α波はリラックス時(安静・閉眼時)に増加し,ストレスがかかると減少する」,「α波の出現状態はリラックス度の指標としてしばしば用いられており,近年のストレス社会において,α波を積極的に増強させてリラックスさせようとする試みが色々なされている。」(【0002】),「優れたα波増強作用を有していてマラクジャ果汁を摂取するとストレスが解消されてリラックス状態を出現させることができる」(【0006】),「マラクジャ果汁の投与によってストレスの解消に有効なα波(特にα1波とα2波)の増強がなされる」(【0027】),「摂取して約1時間後にはストレスが低減してリラックスした精神状態になった。」(【0030】),「摂取して約40分後にはストレスが低減してリラックスした精神状態になった。」(【0031】),「本発明のα波増強剤またはα波増強用食品を摂取した場合には,α波が誘導増強されて,ストレスが解消されリラックスした状態を得ることができる。」,「時間的および場所的に制約されずにいつでも必要な時に摂取して,ストレスの解消を図ることができる。」(【0032】)との記載がある。これらの記載からは,ストレスの解消・低減がリラックスと同義に用いられており,α波が増強してリラックスした状態を指すものとして用いられていると合理的に理解される。また,実施例1の実験(脳波の記録)の内容をみても,実験開始時あるいはそれより前に,被験者にストレッサーが負荷されているのと記載はない。なお,実施例2のフリッカーテスト及び実施例3の刺激反応時間測定は,「マクラジャ果汁に中枢抑制作用があるか否か,あるとして作業能\力を障害するほどのものであるか否か」を確認したものにすぎず(【0027】),ストレスの解消・増減に係る効果を確認することを目的とする実験ではない。そうすると,引用例2発明は,マラクジャ果汁を含有する増強剤等により,脳のα波を増強させ,人の精神状態をリラックスさせる発明であり,そこにストレスの解消,低減という語が用いられているとしても,それは,単に,リラックスした状態を表すために用いられているにすぎないのであって,引用例2がストレスの解消,低減に係る技術を開示していると認定することはできない。これに対し,審決は,「引用例2に,α波が,リラックス時に増加し,ストレスがかかると減少することが知られていること,そこで,α波を積極的に増強させて,リラックスさせることによって,ストレスを予\防又は軽減しようとする試みがなされていることが記載・・・されているように,ストレスの予防,軽減機作として,α波の増強があることは公知である。また,引用例2には,低周波数のα波を10%程度増強することで被験者の内省に変化を与えるとする報告例も記載・・・されている。上記のとおり,ストレスの予\防,軽減とα波の増強の程度とが密接に関係することは明らかである」(審決書4頁1行〜9行)とする。しかし,上記のとおり,引用例2の「ストレスを予防又は軽減」との記述は,その技術的な裏付けがなく,単に,リラックス状態への移行を述べたにすぎないと理解するのが合理的であり,また,実施例を含めた引用例2全体の記載からみても,引用例2に,ストレスを予\防,軽減する技術が開示されていると判断することはできない。(2) 以上のとおり,引用例2発明に関する審決の認定は誤りである。審決は,引用例1発明及び引用例2発明の「ストレス」の意義についての誤った理解を前提として,両者の解決課題が共通であり,引用例1発明には引用例2発明を適用する示唆があると判断した点において,審決の上記認定の誤りは,結論に影響を及ぼす誤りであるというべきである。・・・・前記1(1)の,引用例1における,「本発明者らは,このような抗ストレス作用を有する物質を,ラットにアドレナリンのβ−受容体のアゴニストであるイソプロテレノールを投与した時の心拍数上昇に対する抑制効果を指標に,鋭意スクリーニングを行い,L−テアニンが,イソ\プロテレノールによって誘起される心拍数上昇を著しく抑制することを見出した」等の記載に照らすならば,引用例1発明は,L−テアニンを有効成分とする抗ストレス剤によりストレスの予防,軽減を図るというものであり,イソ\プロテレノールによって誘起される心拍数上昇を抑制したり,計算作業のストレス負荷時における心拍数の増加及び血圧の上昇を抑える効果があることからみて,心血管系に作用して,ストレスを予防,軽減する発明であり,自律神経系に作用して血圧又は心拍数の上昇を抑制することによりストレスの予\防・軽減を図るものである。これに対し,前記1(2)によれば,引用例2発明は,脳のα波を増強してリラックス状態を発生させる発明であり,同発明は,中枢神経系である脳に作用して脳のα波を増強させ,リラックス状態を発生させるものであると解される点で,両者に相違がある。ところで,前記(1)の記載によれば,自律神経系の作用と中枢神経系の作用は区別して認識されるのが技術常識であり,証拠を総合するも,自律神経系に作用する食品等が,当然に中枢神経系にも作用するという技術的知見があることを認めることはできない。そうすると,自律神経系に作用する引用例1発明は中枢神経系に作用する引用例2発明とは技術分野を異にする発明であることから,当業者は,引用例1発明に引用例2発明を適用することは考えないというべきであって,両発明を組み合わせることには阻害要因があるというべきである。イこの点,被告は,抗ストレス作用を「自律神経系の活動を反映する血管,心拍数などの心臓血管系の反応の点からみた作用」としてとらえるか,あるいは「中枢神経系の活動を反映する脳波からみた作用」としてとらえるかは,ストレスの程度やリラックスの程度を確認するための指標として何に着目するかという差異にすぎず,引用例1と引用例2の技術が質的に異なることを意味しないから,阻害要因とならないと主張する。しかし,前記のとおり,自律神経系に作用するか,中枢神経系に作用するかは,基本的な作用機序に係るものであり,単なる測定のための指標にすぎないとの証拠はなく,したがって,被告の主張は採用することができない。以上のとおり,阻害事由を看過して,当業者が引用例1発明に引用例2発明を適用することにより,容易に補正発明1に想到することができるとした審決の判断には誤りがある。
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2010.03.29
平成21(行ケ)10212 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月24日 知的財産高等裁判所
CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
上記記載によれば,引用文献1に基づく引用発明は,インターネットを利用した保険契約システムに関するものであり,上記システムは,利用者が提示された入力フォームに必要事項を入力し,次に入力した事項を含む契約確認データが利用者に提示され,利用者は内容を確認した上,同意の意味で電子署名を付し,更に利用者は保険料の支払方法を指定し,電子署名が付された契約内容確認データ及び保険料の支払方法の指定に基づいて保険契約がなされ,その旨が契約内容を含む契約完了通知データに電子署名を付して,利用者に通知されるとともに,この一連の処理の内容及び処理時刻がログデータとして記録されることにより,ウェブ上で容易かつ迅速,安全かつ確実に保険契約を行うとともに,後に契約の有無や契約内容について疑義が生じた場合にログデータによる証明を行うものであることを認めることができる。(3) 原告の主張に対する判断本願発明における証券は,投資者が債権者となって債務者である事業者の事業活動の結果得た利益の分配を受けられるようにすることなどを内容とする証券であるのに対し,引用発明の証券は旅行会社が代理して販売する保険商品(海外旅行保険)に係る証券であり,証券に表わされる権利義務の内容は異なる。また,本願発明の証券が市場で取引(売買)されることを前提としているのに対し,引用発明における保険証券は海外旅行の傷害保険であり,市場で取引(売買)がされることを前提としたものではなく,両者は流通性の点で異なる性格を有する。しかし,本願発明における証券が本願における優先権主張日当時の証券取引法2条1項各号に該当しないとしても,審決が認定した相違点1は,電子化証券の電子データに含まれる「契約内容を示すデータ」が本願発明と引用発明とでは異なるというものであるところ,上記のとおり,本願発明と引用発明では証券に表\わされる権利義務の内容が異なること,及び本願発明における証券は証券取引法2条1項各号に該当せず新規な権利関係を表わす証券であることは,電子化証券の電子データに含まれる契約内容を示すデータの変更をもたらすものではあるが,契約内容を示すデータの変更は「電子化証券発行システム」のみならず証券分野一般において取り扱う証券の契約内容の問題にすぎないのであって,特許法2条が想定する「自然法則を利用した技術思想の創作」の問題ではない。そうすると,相違点1に係る本願発明の構\成は,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が引用発明に基づいて,契約の内容を適宜取捨選択して容易に想到し得たものというべきであり,これと結論を同じくする審決の判断に誤りはない。なお,原告は,本願発明の証券は流通性を有するからこそ,証券の正当性を保証するための証券発行者の電子署名が含まれ,さらに電子証券の電子データに対してコピー・プロテクトを電子的に施すとともに,1回のみの印刷を可能とするプロテクトを電子的に施しており,本願発明の証券の流通性と電子署名やコピープロテクトや印刷回数制限の考え方は,ひとまとまりの構\成ないし技術的思想として把握すべきものであって,証券の内容や流通性との関係で技術的変更を要するものである旨主張する。しかし,証券の内容(契約内容を示すデータ)の変更が自然法則を利用した技術思想の問題ではなく,引用発明における「電子化証券発行システム」に技術的な変更を必要とさせるものでないことは前記のとおりである。また,証券の流通性故に,電子署名,電子データに対するコピー・プロテクト及び印刷回数制限が必要であるとして本願発明がこれを備えるに至ったものであり,その点において引用発明との関係で技術的変更が必要であるとしても,審決は,本願発明及び引用発明における電子化証券がいずれも「契約内容を示すデータと証券の正当性を保証するための証券発行者の電子署名が含まれた電子データ」からなる点で一致することを認定した上,コピー・プロテクト及び1回のみの印刷を可能とするプロテクトが施された電子化証券の電子データを処理するための機能\手段の有無の点を相違点2として認定した上,その容易想到性について判断している。したがって,原告の上記主張は,相違点1に関する判断の誤りをいう点においては理由がなく,採用することができない。
◆判決本文
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2010.03.29
平成21(行ケ)10291 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月24日 知的財産高等裁判所
CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
引用発明は,「アクチュエータ22a及びアクチュエータ22b」と,制御装置を備えている自動車であるのに対し,本願補正発明は,「a)流体治療装置及び流体源の一方または両方と,b)患者と上記流体治療装置及び流体源の一方または両方との間で流体を輸送するための流体路」と,制御装置を備えている薬液管理装置であるが,上記(1)のとおり,流体治療装置及び流体源の一方または両方と,患者と上記流体治療装置及び流体源の一方または両方との間で流体を輸送するための流体路と,少なくとも二つのプロセッサシステムを有する薬液管理装置は,本件特許出願の優先日(平成11年11月9日)当時,よく知られていたものと認められる上,ソフトウェアプログラムの更新という点では,自動車であるか,薬液管理装置であるかで格別異なる点があるとも認められないから,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)は,相違点1に係る構\成を容易に想到することができたというべきである。この点について,原告は,薬液管理装置においては患者を危険にさらすことなく治療が行われるように構成することが要求されている旨の主張をするが,ソ\フトウェアプログラムの更新を始めとする装置のメンテナンスが確実に行われなければならないことは,薬液管理装置に限らないソフトウェアプログラムを用いる装置に共通する一般的な課題であって,上記のとおり自動車であるか薬液管理装置であるかで格別異なる点があるとは認められない。\n
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2010.03.29
平成21(行ケ)10179 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月24日 知的財産高等裁判所
阻害要因ありとして進歩性なしとした審決が取り消されました。審決は文言通り本件発明の要旨を認定し、裁判所はリパーゼ判決を用いて詳細な説明を参酌したことが原因です。
本件補正発明の「ポケット」の技術的意義について,原告は,2つの基材の表面を向かい合わせて結合して形成された統一構\造の内表面側から外表\面側に向かって熱成形等の成形手段によって形成された粒状発熱組成物の粒子を充填することのできるくぼみをいうと主張するのに対し,被告は,広辞苑(乙1)に記載された日常用語としての意味を主張するのみであり,本件補正発明が属する技術分野における技術常識に即して「ポケット」の技術的意義が一義的に明確であると主張するものではなく,その他,請求項1の記載から,本件補正発明の「ポケット」の技術的意義を一義的に明確に理解することはできないから,これを明確にするため,以下,本件補正明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して,その技術的意義を検討することとする。・・・イ 上記発明の詳細な説明の記載によると,本件補正発明の「ポケット」とは,「少なくとも2つの向かい合った表面を有する統一構\造」を構成する2つの基材の一方に熱成形等の何らかの方法により形成され,粒状発熱組成物を充填することができるような底といえる部分を有する賦形された内部空間を意味し,単に,平坦な2つの基材によって形成される袋状の内部空間を指すものではないと解釈するのが相当である。ウ この点に関し,被告は,請求項1の「少なくとも2つの向かい合った表\面を有する統一構造に形成された」との記載からは,2つの対称的な平面で構\成される袋状の形状が想起されるのが普通であると主張する。しかしながら,被告の主張は,「統一構造に形成された」との文言が「一体的に形成された」と同じような意味を有することを前提とするものと解されるところ,上記発明の詳細な説明の記載によると,「統一構\造」とは,2つの基材によって構成される構\造体を指し,そのような構造体に「形成された」ものが「ポケット」であると解釈されるから,被告の主張は,その前提を誤るものであって,採用することができない。\n
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2010.03.25
平成21(行ケ)10288 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月24日 知的財産高等裁判所
CS関連発明(?)について、進歩性なしとした審決が維持されました。
原告は,甲2文献及び甲3文献に記載された発明は,本願発明とは異なる技術思想に基づくものであり,構成も異なると主張する。しかし,前記2及び上記(1)(2)によれば,本願発明,引用発明並びに甲2文献及び甲3文献に記載された技術は,いずれも複数の情報端末表示装置を複数の者の間のコミュニケーションツールとして使用することに関する発明であって,その手段として複数の表\示装置に同じ映像が表示されることがあり,その点においては共通していることが認められる。そうすると,本願発明とは異なる技術思想や構\成に基づくものとはいえず,原告の上記主張は採用することができない。
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2010.03.25
平成21(行ケ)10185 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月24日 知的財産高等裁判所
CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
上記(1)によれば,刊行物2に記載されている「警報パターン」は,無線受信機における着信時の報知音であって,楽曲を含むと認められるところ,刊行物2に記載されている発明は,メッセージデータを受信する無線受信機において,楽曲を含む「警報パターン」を再プログラミングするための新しいかつ改良された方法であって,それは,送信機から無線受信機に,利用者が予め選択した,楽曲を含む「警報パターン」を送信し,無線受信機において当該「警報パターン」がメモリに再プログラムされて置き換えられるというものであると認められる。そうすると,引用発明2は,利用者が予\め選択した,着信時の報知音として使用されるメロディのデータを着信するものであると認められる。また,そのデータがメモリに再プログラムされて置き換えられるということは,そのデータが記憶部に格納されるということができる。なお,原告は,引用発明2は,警報パターンを再プログラムして置き換えるものであるから,メッセージのデータを着信するアドレスとは異なるアドレスでメロディのデータを着信して記憶部に追加して格納するという本件発明の技術思想とは異質であると主張するが,上記のとおり,引用発明2は,メッセージデータを受信する無線受信機において,利用者が予め選択した,着信時の報知音として使用されるメロディのデータを着信して,記憶部に格納するというものであるから,本件発明と技術思想において共通するということができ,後記5のとおり,引用発明1と組み合わせて本件発明を容易に想到することができたということができるものである。・・・・引用発明1と引用発明2は,ともに,i)無線受信機という同一の技術分野に属し,ii)新たな着信時の報知音として使用されるメロディのデータを取得することを目的としている点で,発明の課題が共通し,iii)着信時の報知音として使用するメロディのデータを取得して記憶部に格納する点で,機能・作用も共通しているから,引用発明1と引用発明2を組み合わせることができるというべきである。原告は,引用発明2の目的は,無線受信機の外部からメロディのデータを供給して再プログラムして置き換える点にあり,ユーザーが選択呼出受信機で自ら好みのメロディを作曲するという引用発明1の目的とは反すると主張するが,引用発明1と引用発明2には,原告が主張するような違いがあるとしても,そのことをもって,引用発明1に引用発明2を結びつけることに阻害要因があるということはできず,引用発明1と引用発明2には,上記のとおり共通点があるから,それらを組み合わせることができるというべきである。\n
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2010.03.20
平成21(行ケ)10117 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月18日 知的財産高等裁判所
CS関連発明について、進歩性なしとの審決が維持されました。
原告は,本願発明の請求項1の「前記副次データは,前記副次データの作成・修正を行う者の端末により,直接,前記副次データファイルより取出されて,作成・修正が行われて,再度前記副次データファイルに保存され,」という記載の意味について,「端末より副次データを修正」するとは,サーバに格納されているファイルから直接データを取り出し,修正・保存することを意味するのであって,ファイルの転送という概念は含んでいない旨主張する。しかしながら,本願発明の請求項1の記載からすれば,「‥‥端末により,直接,‥‥修正が行われて」の意味につき,サーバに格納されているファイルから直接データを取り出し,それを修正・保存する者の端末により,直接修正・保存することのみに限定されると一義的に解釈することはできず,むしろ,「直接」の文言を素直に読めば,それは,サーバ上のデータに個人の端末がインターネットにより直接アクセスすることができるという程度の意味とも解し得る。そこで,本願明細書の発明の詳細な説明を参酌すると,そこには「直接」という用語を定義するような記載はみあたらず,むしろ,前記1(1) クのとおり,本願明細書には,「副次データ12が‥‥音声情報のときは,音声情報ファイル‥‥を別途作成し」「副次データ12が‥‥画像情報のときも同様に,画像情報ファイル‥‥を別途作成し」と記載されているから,発明の詳細な説明を参酌する限り,本願発明の「副次データ」は,データそのもののみならず,ファイルという形態をも含むものであると認められる。また,前記1(1) コのとおり,本願明細書には,「複数の副次データ12が第2のサーバ42bの副次データファイル48に格納されており」と記載されているから,発明の詳細な説明を参酌する限り,本願発明の「副次データファイル」は,複数のファイルを格納するものをも含むものであると認められる。さらに,前記1(1) ケのとおり,本願明細書には,「‥‥,翻訳者の自宅のパソコン等で容易かつ短時間に副次データ12を作成し,自宅からインターネットを通じて依頼者に即座に届けることができる」と記載されているところ,翻訳者の自宅から即座に依頼者に届け出るとの記載は,ファイルとして直接交付する意味と解され,少なくとも,副次データをサーバ上に置いたままである状態を意味するものではないと解される。そうすると,本願発明の「前記副次データは,前記副次データの作成・修正を行う者の端末により,直接,前記副次データファイルより取出されて,作成・修正が行われて,再度前記副次データファイルに保存され」るとの記載には,サーバからファイルを取り出し,端末でファイルを修正し,ファイルを保存することも含まれるものと認めるのが相当である。\n
◆判決本文
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2010.03.15
平成20(行ケ)10467 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月10日 知的財産高等裁判所
進歩性ありとして無効としなかった審決が、取り消されました。
上記記載によると,引用例2には,入賞態様決定手段で決定されたビッグボーナスゲーム当選,ボーナスゲーム当選その他の入賞態様に応じ,遊技効果ランプの点灯の有無とリーチ音の発生の有無という異なる複数の報知態様の種類の組合せを選択し報知するとの構成が開示されているということができる。この点に関し,本件審決は,引用例2に記載された技術は音の発生若しくは遊技効果ランプの表\示又はその両方を用いた形態で入賞態様を報知するにとどまると判断したが,引用例2のスロットマシンにおいて,【0050】に記載されるように,ビッグボーナスゲーム当選の際にのみリーチ音を発生させるとした場合には,ビッグボーナスゲーム当選のときは,遊技効果ランプが点灯するとともに,リーチ音も発生し,ボーナスゲーム当選のときは,遊技効果ランプは点灯するものの,リーチ音は発生せず,その他のときは,遊技効果ランプは点灯せず,リーチ音も発生しないことになるのであるから,引用例2のスロットマシンに,遊技効果ランプの点灯の有無とリーチ音の発生の有無とを組み合わせて入賞態様を報知するものが含まれることは明らかであり,したがって,本件審決の判断は誤りであるといわざるを得ない。b そうすると,「入賞態様決定手段で決定された入賞態様に対応した報知情報を遊技者に報知する報知手段を備え」との構成,「報知手段は,…音発生手段によって発生される効果音の種類,および連動演出手段によって演出されるランプによる連動表\示態様の種類を,それぞれ選択する報知態様選択手段…から構成され」との構\成及び「報知態様選択手段により選択された効果音の態様の種類からなる報知情報および連動表示態様の種類からなる報知情報をそれぞれ報知する」との構\成をそれぞれ有する引用発明(3)において,引用例2に開示された上記構成(入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じ,異なる複数の報知態様の種類の組合せを選択し報知するとの構\成)を適用し,報知態様選択手段により選択される報知情報について,「音発生手段によって発生される効果音の種類,および連動演出手段によって演出される連動表示態様の種類の組合せを,入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じて選択する」との構\成を採用し,また,報知する報知情報について,「報知態様選択手段により選択された,効果音の種類及び連動表示態様の種類の組合せからなる」との構\成を採用すること,すなわち,本件訂正発明3の報知態様選択手段等に係る構成を採用することは,本件優先日当時の当業者において容易に想到し得たものと認めるのが相当である。\n
◆判決本文
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2010.03.11
平成21(行ケ)10068 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月08日 知的財産高等裁判所
CS関連発明について進歩性なしとした審決が維持されました。
「HTTPサーバであるApache」が,通常,ブラウザからの要求を受けてホームページのHTMLファイルなどを転送することは,「既存情報処理手段」が「情報処理」することに相当する。引用発明1の「誤ったURLを指定した場合」は,「エラーが発生した時」に相当する。引用発明1で「誤ったURLを指定した場合」,CGIを使ったものを表示させるためには,当然にErrorDocumentで指定されたCGIプログラムを実行しているものであって,このCGIプログラムの実行はHTTPサーバであるApache(そのhttpdプログラム)とは別の情報処理手段に処理を分岐させることに相当する。また,CGIプログラムを実行させるのは,HTTPサーバであるApacheが誤ったURLの指定を検出した場合と解されるから,引用発明1も既存情報処理手段における情報処理結果の一部または全部を利用しているといえる。以上から,両者の一致点,相違点は次のとおりである。
<一致点>
「既存情報処理手段が情報処理するに際して前記既存情報処理手段における情報処理結果の一部または全部を利用して処理を行う別の情報処理手段と,エラーが発生した時に前記既存情報処理手段から別の情報処理手段へと処理を分岐させる分岐手段とを備える装置」
<相違点1>
本願発明14においては,既存情報処理手段に対して,その外に外部情報処理手段があるのに対して,引用発明1では,既存情報処理手段に相当するWWWサーバが,別の情報処理手段に相当するCGIプログラムを備えている点。
<相違点2>
本願発明14は「機能拡張装置」の発明であるのに対して,引用発明1はWWWサーバである点。
イ<相違点1>についての判断
誤ったURLを指定した場合に実行されるCGIプログラムは,既存情報処理手段であるHTTPサーバであるApache(そのhttpdプログラム)によりその実行を制御される別のプログラムであって,エラードキュメントの表示に関して付加的な情報処理手段を構\成しているから,既存情報処理手段に対して外部情報処理手段といえるものである。また,情報処理分野において,付加的な情報処理手段を既存の情報処理手段に対して外部の情報処理手段として構成することは,何ら格別なことではなく適宜の設計事項である。よって,引用発明1のCGIプログラムを既存情報処理手段に相当するWWWサーバに対して外部情報処理手段として構\成することは,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が容易に想到し得ることである。
ウ<相違点2>についての判断
前記のとおり,引用発明1のCGIプログラムは,HTTPサーバであるApache(そのhttpdプログラム)に対して付加的な情報処理手段を構成し,CGIプログラムに記述された処理を行い,所定の表\示をする機能を付加するものであるから,HTTPサーバであるApache(そのhttpdプログラム)に対して機能を拡張しているといえる。よって,引用発明1においてCGIプログラムによる処理を行う構\成は,本願発明14の機能拡張装置に相当するといえるものである。
エ 以上によれば,本願発明14は引用発明1から当業者が容易に想到することができたものであると認めるのが相当である
◆判決本文
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2010.03. 5
平成21(行ケ)10133 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月03日 知的財産高等裁判所
訂正要件違反かが争われました。新規事項でないとした判断は維持しましたが、当該構成要件を採用することは容易と判断して、無効理由なしとした審決を取り消しました。\n
本件明細書における「台板」の構成は,埋込用アタッチメントの一部を構\成する四角形の板状部材であって,その上部にフレーム及び振動装置を固定し,その下面中央部には杭の上部に嵌め込むための円筒状の嵌合部が設けてあるものとして記載されているということができるが,本件図面における振動装置の油圧モーターの油圧式ショベル系掘削機側の端は,台板とは別の部材である三角柱の3つの側面のうちの1つの面を開放状態としたような形状の部材によってカバーされており,同図面上は同油圧モーターの端がどこに位置するのかを確認することはできないから,台板の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機側の辺が,油圧式ショベル系掘削機側にある振動装置の油圧モーターの端よりも油圧式ショベル系掘削機側にあることについて,本件明細書又は本件図面に直接的に記載されているとまで認めることはできない。もっとも,訂正が,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものということができるので,本件訂正のうち特許請求の範囲に「上記台板(14)の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機(9)側の辺は,油圧式ショベル系掘削機(9)側にある上記振動装置(2)の油圧モーター(21)の端よりも油圧式ショベル系掘削機(9)側にあり,」との記載を付加する部分が,本件明細書及び図面の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものかどうかを判断するに当たっては,この種の杭埋込装置における前記説示した意味での台板の存在及び形状についての当業者の認識を踏まえる必要がある。・・・・ 以上によると,本件特許出願時における当業者にとって,油圧式ショベル系掘削機のアーム先端部に取り付ける埋込用アタッチメントとして,四角形の台板の上部に振動装置を備えるとともに,その下部略中央部に杭との嵌合部を備えるものはよく知られており,振動装置,四角形の台板及び嵌合部相互の関係については,四角形の台板を油圧モーターを含む振動装置が納まる程度の大きさとし,振動装置が隠れるように配置する構成のものが知られ,作業現場において長年にわたって使用されてきたものとして周知であったということができる。そうすると,本件訂正のうち,特許請求の範囲の【請求項1】及び【請求項2】について「上記台板(14)の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機(9)側の辺は,油圧式ショベル系掘削機(9)側にある上記振動装置(2)の油圧モーター(21)の端よりも油圧式ショベル系掘削機(9)側にあり,」との限定を加える部分は,本件特許出願時において既に存在した「台板の上部に振動装置を設けるとともに,下面中央部に嵌合部を設ける」という基本的な構成を前提として,「振動装置の油圧モーターが油圧式ショベル系掘削機側にある」という当業者に周知の構\成のうちの1つを特定するとともに,「台板」と「振動装置」の関係について,同様に当業者に周知の構成のうちの1つである「四角形の台板の上に油圧モーターが隠れるように振動装置を配置するという構\成」に限定するものである。そして,上記イ(ア)ないし(ク)で認定した技術状況に照らすと,上記周知の各構成はいずれも設計的事項に類するものであるということができる。したがって,本件明細書及び図面に接した当業者は,当該図面の記載が必ずしも明確でないとしても,そのような周知の構\成を備えた台板が記載されていると認識することができたものというべきであるから,本件訂正は,特許請求の範囲に記載された発明の特定の部材の構成について,設計的事項に類する当業者に周知のいくつかの構\成のうちの1つに限定するにすぎないものであり,この程度の限定を加えることについて,新たな技術的事項を導入するものとまで評価することはできないから,本件訂正は本件明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてするものとした本件審決の判断に誤りはない。・・・・そして,上記1(3)ウにおいて認定した本件特許出願時における当業者の認識を踏まえると,この種の杭打込装置において,「台板の上部に振動装置を設けるとともに,下面中央部に嵌合部を設ける」という構成は基本的な構\成のうちの1つであると認められるから,引用例1に接した当業者は,同記載の図面から台板の存在を認識することができるというべきである。したがって,台板の有無及びその構成について,本件発明1と引用発明1との相違点2を認定した本件審決には,原告主張の誤りがあるといわなければならない。(2) しかしながら,本件審決は,引用発明1には台板の上部にあるものを保護するという技術思想を認めることができないとの理由により,引用発明1と本件発明1との相違点2に係る構成を導き出すことは当業者にとって容易であるということはできないと判断しているのであって,引用例1における台板の存在を認定したとしても,その判断が異なる結果となったとは解されず,本件審決による相違点2の認定の前記誤りは,結局,本件審決の結論に影響を及ぼすものということはできないから,原告主張の取消事由2も採用することができない。\n
◆判決本文
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2010.03. 3
平成21(行ケ)10192 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月02日 知的財産高等裁判所
CS関連発明について進歩性なしとの審決が維持されました。
上記(ア)記載のとおり,引用例3には,最終来店日,来店回数及び売上金額に応じて顧客をスコア化して評価し,評価に応じた種類のクーポン券をボーナスとして送付して,顧客の固定化,来店促進,売上増又は顧客の再来店を図る営業上の手法が開示されており,以上からすれば,営業上の手法として,顧客を優遇するに当たり,来店回数及び取引額を条件として設定することが知られていたといえる。
エ 商業を営む者にとって,売上げを促進することは一般的・普遍的な課題であって,その上で,営業上の具体的な課題を設定し,同課題を解決するための手法を創意工夫することは,営業における一般常識といえることである。そして,前記アないしウによれば,期間,取引額又は複数日の取引(取引回数)を組み合わせて条件として設定し,所定の条件を満たした顧客を優遇することにより,顧客の購買行動を誘導する,様々な営業上の手法が知られていたものである。このような一般常識及び営業上の手法を前提とすれば,「一定期間の間に,一定額以上の取引を複数日において行う顧客」を得意客と取り決めて優遇することは,顧客の購買行動を誘導するための営業上の手法の一つということができ,また,条件を満たした顧客を優遇することにより,日ごとの取引量あるいは取引額が一定以上になるように購買行動が誘導され,ひいては営業の安定化が図られることは,商業を営む者にとって,当然に考慮し得ることである。したがって,審決が,「一定期間(例えばひと月)の間に,一定額以上の取引を複数日において行う顧客を優遇することにより,日ごとの取引量が一定以上になるように得意客を誘導し,営業の安定を図る」ことが,商業を営む者が考慮し得る「営業上の一手法」であると認定したことが誤りとはいえない。
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2010.02.26
平成21(行ケ)10139 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年02月24日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決について、本件発明の要旨認定が誤っていると判断し、審決を取り消しました。
被告は,上記請求項1の「パルス状の圧力を作り出す」という用語は,単に「第1の圧力を第2の圧力へ断続的に複数回減じ」てパルス状に変化する圧力を作り出すことを意味していることは明確であると主張するが,特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するに当たっては,特許出願に関する一件書類に含まれる発明の詳細な説明の記載や図面をも参酌して,その技術的意義を明らかにした上で,技術的に意味のある解釈をすべきである。そうすると,上記請求項1の「パルス状の圧力を作り出す」という用語は,上記のとおり解釈することができるのであって,「研磨パッド上に研磨スラリーを行き渡らせるようにする」ことは,「パルス状の圧力を作り出す」ことの結果として起きる現象であるとしても,それを用語の解釈に含めることができないという理由はない。
◆判決本文
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2010.02.24
平成21(行ケ)10166 審決取消請求事件 特許権 平成22年02月23日 知的財産高等裁判所
拒絶査定不服審判の審決取消訴訟にて、いわゆる特許用語の解釈について、判断されました。
本願明細書において「協動」という文言が用いられ,審決にもこれを引用する部分があるところ,広辞苑(株式会社岩波書店1991年11月15日第4版第1刷発行)には,「協働」との文言は掲載されている(「協力して働くこと」とある。)が,「協動」との文言は掲載されていない。しかし,本願発明がドイツの発明であり,明細書も事後的に日本語に翻訳されたにすぎないことを考慮すれば,明細書の「協動」との文言につき「協働」と読み替えるのが相当である。・・・以上のとおり,本願明細書においても,「協動」との文言につき,単に固定時に2つの歯機構が噛み合うことのみを意味するものではなく,「締付け」や「誘導」等の目的で2つの部材が協力して働く意味でも用いられているほか,広辞苑においても,「協働」の意味につき,上記のように「協力して働くこと」と記載されていることからすれば,本願発明における「協動」の技術的意義が,「固定時に2つの歯機構\が噛み合うこと」のみに限定されるものではないと解するのが相当である。・・・よって,審決が,引用発明につき「・・・『係止帯材21の係止歯23の複数の歯』と・・・係止爪14とを協動させた装置。」と認定した点に誤りはない。
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2010.02. 3
平成21(行ケ)10113 特許権 行政訴訟 平成22年02月03日 知的財産高等裁判所
本件発明の要旨について実施形態に即して限定した解釈が誤りであるとして、無効理由なしとの審決が取り消されました。
甲1,2及び16によると,本件特許出願当時において,X線による検査装置の機構を支持するフレームとしては,後記ウ(ア)のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明において従来技術として挙げられているように,キャスター付の4本脚によって支持されて引き出し可能となっているもののほか,一体であっても後壁面の縦方向のレールに上下動可能\に片持ち支持されたフレームを採用したものが存在していたことを考慮すると,X線異物検査装置の機構を支持するフレーム自体の支持構\造に関して,本件特許出願時において確立した技術常識が存在していたとは認められない。そうすると,特許請求の範囲の記載に基づいて,本件フレームの支持構造について何らかの限定を加えて解釈することはできない。・・・そうすると,本件明細書の発明の詳細な説明における記載を検討しても,本件発明に係る特許請求の範囲の記載における「片持ちフレーム」の文言について,それ自体の支持構\造に関する何らかの限定を加えて解釈する契機はないといわざるを得ない。・・・以上によると,本件フレームが「X線異物検査装置本体の支持構造体に支持され\nているもの」に限定されることを前提とする本件審決による発明の要旨認定は誤り
であるというべきである。
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2010.02. 1
平成21(行ケ)10095 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年01月27日 知的財産高等裁判所
周知技術を追加してした審決について手続き上違法があったのかが争われました。裁判所は、違法性なしと判断しました。
審決取消訴訟においてなされる容易想到性(特許法29条2項)の判断は,特定して引用された発明(引用発明)との対比を基準としてなされるべきものであり(最高裁昭和51年3月10日大法廷判決・民集30巻2号79頁),一方,特許法150条2項が準用する同法50条は「審査官は,拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは,特許出願人に対し,拒絶の理由を通知し,相当の期間を指定して,意見書を提出する機会を与えなければならない」等と規定していることからすると,特許庁が予めなした拒絶理由通知に示された引用発明に基づかない発明に基づいて特許出願を拒絶する内容の審決をしたときは,原則としてその審決は手続上の違法があったということになるが,同通知に示された引用発明に基づいて審決がなされているときは,特段の事情なき限り,同審決に手続上の違法があったということはできないと解される。本件事案においては,本願補正発明5及び本願発明5に関する【請求項5】との関係で引用発明とされたのは,前記のとおり刊行物1(甲1)及び刊行物2(甲2)であり,それらは審査官が平成18年8月11日付けでなした拒絶理由通知(甲12)に記載されているが,周知技術の例として掲げられた前記例示文献1ないし5(甲3〜7)は,本件審決以前に出願人たる原告に示された形跡は見当たらない。もっとも,審判の手続で審理判断されていた刊行物記載の発明のもつ意義を明らかにするため,審判の手続に現れていなかった資料に基づき優先権主張当時又は特許出願当時における当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)の技術常識(周知技術)を審決において認定することは許される(最高裁昭和55年1月24日第一小法廷判決・民集34巻1号80頁参照)と解されるから,審決が,前記例示文献1〜5(甲3ないし甲7)を実質的な引用例ないし引用発明として用いたのであれば審決には手続上の違法があるが,引用発明とされた刊行物1及び2(甲1及び甲2)の意義を明らかにするための技術常識(周知技術)として用いたのであれば,特段の事情がない限り,手続上の違法はない,ということになる。(4) そこで,上記(3)の見地に立って審決に手続上の違法があったかどうかについて検討する。・・・そうすると,審決においては,現像器の電圧供給装置において,それぞれの現像器が,電圧供給源の電圧を分岐電圧に分圧して現像器に供給する電圧分配部を備えることを,刊行物1記載発明と本願補正発明5及び本願発明5との一致点として認定しているのであるから,相違点2は,実質的には,電圧供給源から供給される基準電圧,すなわち分圧される電圧を,分岐電圧と共に供給するか否かという点に尽き,前記例示文献1ないし5は,電圧を分圧して供給する構成であれば,分圧される電圧も,分圧された電圧と共に供給できることが技術常識(周知技術)であったことを明らかにするために用いられたにすぎないということになるから,審決に手続上の違法(取消事由1及び4)があったということはできない。\n
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2010.01.29
平成21(行ケ)10265 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年01月28日 知的財産高等裁判所
引用文献には、示唆がないとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
刊行物1の第4図によれば,切り欠ぎ部と対称の位置にあり電機子の軸方向における両側面に他の部材7(錘)を取り付けることが開示されているのみであり,環状のコアレス電機子コイルの内側に錘を入れることについては記載も示唆もないし,コイルの内側に錘を配置することが本件発明を含む軸方向空隙型電動機の技術分野で周知の技術的事項であると認めるに足りる証拠はない。また,径方向空隙型電動機である甲1発明から軸方向空隙型電動機である本件発明を想到するに当たって,甲1発明において径方向空隙型を軸方向空隙型に変更したことに伴い,甲1発明における錘の配置位置を軸方向から径方向に変更した場合は,電機子の軸方向の側面に代えて電機子の径方向の側面に錘を配置することとなり,これは電機子の外周に錘を設けることとなるから,当業者において電機子コイルの環の内側に錘を入れることを想到させるものではない。さらに,前記刊行物2の記載によれば,軸方向空隙型電動機である甲3発明において,その電機子に対して厚みのある部材を付加することは排除されるべき技術的事項であって,たとえ甲1発明に不平衡荷重効果を増大させるための部材を取り付けることが開示されているとしても,不平衡荷重効果を増大させるような部材は,一般に密度が高く所定の厚みを有するものであるし,また,電機子巻線の近傍にこのような部材を配置することは,従来行われてきた加圧成形等の妨げにもなり得る。したがって,甲1発明の電動機の各構成要素を,軸方向空隙型電動機である甲3発明の構\成のものに改変したものにおいて,電機子に錘となる部材を取り付けることを想到することは困難であるというべきである。
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2010.01.29
平成21(行ケ)10112 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年01月28日 知的財産高等裁判所
引用文献の認定誤まりがあるとして、進歩性なしとした無効審決が取り消されました。
甲1の前記記載によれば,甲1発明Aは,本来接着力が低い含フッ素ポリマーの接着力を改善するために,含フッ素エチレン性重合体の官能基に着目し,含フッ素エチレン性重合体がポリマー鎖末端又は側鎖に特定数以上のカーボネート基及び/又はカルボン酸ハライド基を有するようにすることによって接着力の向上を図ったものであるといえる。含フッ素エチレン性重合体のカルボニル基含有官能\基については,「カーボネート基および/またはカルボン酸ハライド基を総称して,単に『カルボニル基含有官能基』という。」(明細書4頁2行〜4行)とされて,カルボニル基含有官能\基がカーボネート基及び/又はカルボン酸ハライド基を意味するものとされ,カーボネート基及びカルボン酸ハライド基以外のカルボニル基についての記載はない。他方,カーボネート基及びカルボン酸ハライド基については,具体的な化学式を示して,その例が示されている(4頁25行〜5頁5行)。そうすると,引用例(甲1)において,「カルボニル基含有官能基」との文言が用いられているとしても,これを甲1の記載に即して検討すれば,甲1には,含フッ素エチレン性重合体の官能\基として,カーボネート基及びカルボン酸ハライド基のみが開示されているにすぎず,それ以外のカルボニル基含有官能基についての開示はない。したがって,甲1発明Aのカーボネート基及びカルボン酸ハライド基について,その上位概念である「カルボニル基」と認定した審決の認定に誤りがある。3 相違点1についての容易想到性判断の誤り(取消事由1の2)について前記2のとおり,審決には,甲1発明Aを認定するに当たり,上位概念である「カルボニル基」を用いて認定した点において誤りがあり,審決は,その結果,甲1発明Aに甲6の3発明を誤って適用し,相違点1の容易想到性について判断を誤ったものであると判断する。・・・前記1で認定した引用例(甲1)の記載によれば,甲1発明Aは,含フッ素エチレン性重合体について,ポリマー鎖末端又は側鎖にカーボネート基及び/又はカルボン酸ハライド基を有するようにすることで,ポリアミド系樹脂と含フッ素エチレン性重合体との層間接着力を向上させたものであり,ポリマー鎖末端又は側鎖に有するのは,カーボネート基及び/又はカルボン酸ハライド基であり,これをカルボニル基と認定することはできないことは前記2で判断したとおりである。また,引用例(甲1)には,ポリアミドについて,発明の対象となった含フッ素エチレン性重合体と接着性のよい既存のポリアミド材料を選択するという視点からの記載がされているだけであり,ポリアミドの側の特定の官能基又は極性基に注目し,アミン価,酸価を調整して,含フッ素接着性材料との接着力を増加させることについての記載はない。したがって,当業者が甲1の記載を見たとしても,フッ素性接着材料との接着性のよい材料としてポリアミドを認識し,そのポリアミドの中からより接着力の強い材料を選択することについての示唆を与えられることはあるとしても,そこから,ポリアミドの官能\基又は極性基に着目し,アミン価,酸価を調整することにより接着性を向上させるということについてまで示唆を与えられるということはできない。
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2010.01.29
平成21(行ケ)10136 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年01月28日 知的財産高等裁判所
引用文献の認定誤りを理由として、無効理由なしとした審決が取り消されました。
上記の記載によれば,プランタ3より高い仕切部5は,バルコニーなどに立つ者から,プランタ3を隠すために設けられるものであり,甲2−1発明は,仕切部5を設けることにより,植物2を花壇に植えられたかのように見せ,美しい景観を造り出すことができるようにした発明である。このような甲2−1発明の目的に照らすならば,突出部5aは,プランタ3をバルコニーなどに立つ者から隠れるような位置に配置されることは必須であるが,それをもって足りるのであって,プランタ3の外周縁の上端部を被覆しないことまでも必須であると解することはできない。このような理解は,「建物の屋上,バルコニー等を容易に緑化する・・・ことができる」(甲2の1【0004】)と記載され,「容易」に作業ができることが強調されていることに照らすならば,突出部5aをプランタ3の外周縁の上端部を被覆しないような位置のみに配置することを必須のものと解することは,不自然であること,実願平2−63005号(実開平4−21242号)のマイクロフィルム(甲4,第2図)の「上板121」,特開平8−89088号公報(甲7,【図2】)の「鉤部12a」,実開昭59−130593号公報(甲8,第2図)の「笠木部5」及び実開昭63−167843号公報(甲9,第3図)の「張出し状被覆部3」が示されていることに照らすならば,被覆対象物の外周縁の上端部より被覆対象物側の領域を被覆することの方が自然であることと整合する。
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2010.01.22
平成20(行ケ)10276 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年01月19日 知的財産高等裁判所
無効理由として、記載不備違反、進歩性違反、分割要件違反が争われた無効審判について、審決はすべて請求理由なしとしました。裁判所は、記載不備要件違反、分割要件違反については理由ありとして審決を取り消しました。
「ところが,上記認定のとおり,「ルイス酸」とは,G.N.ルイスによって提唱された酸・塩基の概念であるが,特定の酸を指すものではなく広範な化合物を含む概念であり,自然界においてさまざまな形で存在し,化合物によってはルイス酸とルイス塩基のいずれの性質をも有する場合もあり,上記認定の文献,意見書及び法廷証言にみられるとおり,ルイス酸及びルイス塩基の種類・範囲,その作用及び反応の形態についてはさまざまな見解があり,現時点においてもその外延は確定していないといわざるを得ない。したがって,本件明細書の記載を参考にしても,そこに記載された上記のわずかな化合物や成分に関する記載から,当業者が,貯蔵方法や使用される容器など特定の条件下において,セボフルランを分解する「ルイス酸」の範囲を想定することは極めて困難であるといわざるを得ない。また,上記認定のとおり,一口に「ルイス酸」といっても,その中には,強いルイス酸・ルイス塩基,弱いルイス酸・ルイス塩基のように,ルイス酸,ルイス塩基にはその強さに差があり,また,それらの酸と塩基の反応の成否や速度は,さまざまな要素及び条件に影響されることが認められるから,酸化アルミニウム,ガラス,Si−OHが「ルイス酸」に該当するからといって,「ルイス酸」に該当する他の化合物のすべてがセボフルランに対してこれらと同様に作用すると認めることもできない。確かに,本件明細書の段落【0007】には,セボフルランのSi−OHによる分解メカニズムが記載されているが,このような分解メカニズムが理解できたとしても,そもそも,どのようなルイス酸化合物がこのような分解を生じさせるかについては,当業者は具体的に理解することはできない。以上のとおり,本件発明における「ルイス酸」の概念は極めて不明確であるといわざるを得ず,「ルイス酸」の概念が不明確である以上,その「ルイス酸」の空軌道に電子を供与する「ルイス酸抑制剤」なる概念もまた不明確であるといわざるを得ない。したがって,本件発明を実施しようとする当業者は,貯蔵中のセボフルランの貯蔵状況に応じたあらゆる事態を想定した実験をしない限り,本件発明を実施することは容易ではないと認められる。そうである以上,本件明細書には,当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に「ルイス酸」及び「ルイス酸抑制剤」が記載されていると認めることはできない。(イ) この点に関し,被告らは,前記第4の2(2) ア(オ) のとおり,本件明細書の記載に当業者の技術常識を加味すれば,本件特許が特段の過度の試験をするまでもなく容易に実施可能であると主張する。しかしながら,セボフルランのルイス酸による分解という事象については,前述のとおり,本件特許の優先日当時,当業者はセボフルランのルイス酸による分解という現象そのものを理解していなかったのであるから,そもそも加味すべき「当業者の技術常識」と呼べるものは当時存在していなかったというほかない。したがって,当業者が,どのような化合物がセボフルランを分解する「ルイス酸」に該当するかについて,実験を繰り返すことなく,その内容を具体的に理解することは非常に困難であったといわざるを得ない。」\n
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2010.01.22
平成21(行ケ)10134 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年01月20日 知的財産高等裁判所
審決は、補正が新規事項、サポート要件違反、進歩性なしとしました。これに対して裁判所は、いずれも否定して上記審決を取り消しました。
以上によると,当初明細書に記載される抗酸化作用を有する組成物は,単なる焼酎蒸留廃液からなる抗酸化物質と比べて,優れたヒドロキシラジカル消去活性を有するものであること,同組成物は,それ故,老化や動脈硬化等の種々の生活習慣病の予防に極めて良好であることが記載されているものであって,そうすると,本件補正による新請求項1に係る組成物が,補正事項(b)「活性酸素によって誘発される生活習慣病に対して有効である」ものであって,また,同(c)「ヒドロキシラジカル消去剤」との用途に用い得るものであることは,当初明細書に記載された事項の範囲内のものというべきである。エもっとも,被告は,当初明細書には,「ヒドロキシラジカル消去剤」との文言は存在せず,単に「抗酸化剤」又は「抗酸化作用」と「活性酸素によって誘発される生活習慣病」との関係に係る従来技術が示されたものにすぎないから,当初明細書の記載では,本願補正発明に係る「組成物」からなる「ヒドロキシラジカル消去剤」について実体的に記載されたものではないと主張する。しかしながら,上記イのとおり,当初明細書の【0040】には,ヒドロキシラジカル消去活性を有する抗酸化作用を有する組成物及びこれが活性酸素によって誘発される種々の生活習慣病の予防に有効であることが記載されているのであって,被告の主張は採用することができない。また,被告は,当初明細書の記載においては,本願補正発明に係る「組成物」の「活性酸素によって誘発される生活習慣病」に対する有効性についても全く確認されておらず,有効性が不明であるとして,新請求項1には新規事項の追加があると主張するが,これは,記載不備や進歩性の判断における発明の効果の問題であって,新規事項の追加の有無の問題ではないから,被告の主張は採用し得ない。オしたがって,新請求項1に係る本件補正について,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものということができないとした本件審決の判断は誤りである。\n・・・,特許請求の範囲が,特許法36条6項1号に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。・・・オ 以上によると,上記ウのとおり,当業者が,ヒドロキシラジカル消去活性の大小や本願発明の抗酸化作用を有する組成物が強力なヒドロキシラジカル消去活性からなる抗酸化作用を有して種々の生活習慣病の予防に好適であること等を記載する本願明細書に接し,上記エの公知の知見をも加味すると,本件補正発明の組成物が,活性酸素によって誘発される生活習慣病の予\防に対して効果を有することを認識することができるものであって,本件補正発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,その記載によって,生活習慣病などの疾患に対して有効である抗酸化物質を提供しようとする課題を解決できると認識できる範囲のものであるということができる。カ この点に関し,本件審決は,本願明細書の発明の詳細な説明には,(活性酸素によって誘発される)生活習慣病(の予防)に対する効果の有無及び当該効果とヒドロキシラジカル消去活性などの抗酸化作用の大小との対応関係(例えば,どの程度の抗酸化作用を有していれば,生活習慣病(の予\防)に対する効果を有するとするのかなど)に係る記載又はそれらを示唆する記載はないと説示する。しかしながら,本願明細書には,本件補正発明の組成物が活性酸素によって誘発される生活習慣病の予防に対して効果を有することを当業者が認識することができる記載があることは上記のとおりであり,また,新請求項1には,どの程度の抗酸化作用を有していれば生活習慣病(の予\防)に対する効果を有するかなどの生活習慣病の予防に対する効果とヒドロキシラジカル消去活性などの抗酸化作用の大小との対応関係についてまで記載されておらず,このような対応関係について発明の詳細な説明中に記載されている必要があると解されるものでもない。\n
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2010.01. 8
平成20(ワ)38425等 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年12月21日 東京地方裁判所
104条の3により、請求が認められませんでした。
前記(1)で認定したように,乙20公報の記載内容を知る当業者は,乙22公報の記載自体からも,フレームサイズが294 mm ×427 mm のような大型ペリクルでも,ピンと張った状態でペリクル膜をたるみなくフレームに貼り付けることが要求されるものであり,その結果,ペリクル膜の張力によりフレームに歪みが生じ,その歪みは,フレームサイズが大きくなるにつれて増大するという技術課題が開示されているものと理解できる。他方,前記(2)で認定したように,長辺及び短辺を有する方形状の枠体において,長辺の撓みを減少させるために長辺の幅のみを広くすることは,技術常識であって,当業者が当然のこととして知るところである。そうすると,公知となっている,大型ペリクルにおいてフレームサイズが大きくなるにつれてフレームの歪みが増大するという上記の技術課題を解決する観点から,長辺の撓みを減少させるために長辺の幅のみを増大させるという上記の技術常識を当てはめて,ペリクル膜の張力による歪みに応じ,長辺の幅を短辺の幅よりも広くすることは,当業者が容易に想到することができたものであるといえる。したがって,前記相違点のうち,「長辺の幅」が「短辺の幅」よりも大きいという本件発明の構成は,乙22発明に,当業者の技術常識を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものというべきである。\n
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2010.01. 8
平成20(行ケ)10425 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年12月22日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が、引用の構成,作用及び機能\の点において,本件発明の検知の構成と大きく異なるとして、取り消されました。
上記記載によると,引用例4には,吸入用穴と排気弁とを備えた覆い等から成る鼻被覆具において,排気弁の一方の端部を覆いに固定して,排気弁が片開きの状態で開くようにした上,排気弁の他方の端部に接点を取り付けるとともに,鼻被覆具の対応する位置(排気弁が閉じた際に当該接点が接触することとなる覆いの部分)にも接点を取り付け,これら2つの接点によりセンサを構成し,排気弁が閉じた時(2つの接点が接触した時)に信号を発するとの構\成(以下「引用例4の検知の構成」という。)が開示されており,これは,排気弁の開閉の有無をセンサで検知するものということができる。しかしながら,上記記載によると,引用例4の鼻被覆具は,吸気を加湿したり,清浄化したりすることのできる鼻又は鼻及び口の双方を覆うマスクに係る従来技術の問題点(飲食時,会話時等における煩わしさ,呼吸時の息苦しさ等)を克服するとともに,更に引用例4の検知の構\成を付加することにより,無呼吸症候群の病状に係るデータ(呼吸停止状態が生じた回数等)を取得することができ,その他,呼吸を感知する必要のある病気の診断等に活用することができるというものであるし,また,引用例4の鼻被覆具は,送風(吸気の補助)のためのブロワーを備えるものではなく,したがって,ブロワー送風を制御するとの構成を有するものでもない。そうすると,本件発明の検知の構\成が,消費電力の増加を抑制するために呼吸連動制御の構成を採用する前提として,呼吸の状態(排気又は吸気)を検知し,これにより,呼吸に連動したブロワー送風の切替えを行うものであるのに対し,引用例4の検知の構\成は,無呼吸症候群の病状をモニターするなどするため,呼吸の状態(呼吸停止の有無)を検知するものの,これを単にデータとして取得するのみであり,これによって呼吸に連動したブロワー送風の切替えその他の呼吸に連動した何らかの制御を行うものではないから,引用例4の検知の構成は,その作用及び機能\の点において,本件発明の検知の構成と大きく異なるものであるし,また,その解決課題の点においても,呼吸連動制御の構\成と大きく異なるものであるというべきである。さらに,上記のとおり,引用例4には,同引用例記載の鼻被覆具を防じん防毒用のマスクとしても使用することができるとの記載がみられるものの,引用例4の検知の構成を付加した目的に照らすと,同構\成を付加した引用例4の鼻被覆具は,防じん防毒用のマスクとして用いられるものではなく,加えて,上記のとおり,引用例4の鼻被覆具がブロワーを備えないものであることをも併せ考慮すると,引用例4の検知の構成を備えた同引用例の鼻被覆具は,その属する技術分野の点においても,呼吸連動制御の構\成を有する呼吸用保護具(モータで駆動されるブロワーを設置したもの)と異なる面を有するものといわざるを得ない。したがって,引用発明において,呼吸連動制御の構成を採用し得ると仮定しても,本件出願当時の当業者において,その構\成を実現する具体的な方法として,引用例4の検知の構成を適用し,本件発明の検知の構\成に容易に想到することができたとまで認めることはできない。この点に関し,被告らは,引用例4記載の発明が属する国際特許分類を根拠に,引用例4の検知の構成を備えた同引用例の鼻被覆具と本件発明とが同一の技術分野に属すると主張するが,発明の属する国際特許分類が同じであることから直ちに,発明の構\成の組合せ,置換等の容易性を判断する際の考慮要素の1つとなる技術分野の異同に関し,各発明の属する技術分野に異なる面がある場合を否定することはできないというべきである。
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2010.01. 4
平成21(ネ)10046 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成21年12月28日 知的財産高等裁判所
第1審は、進歩性なしを理由として104条の3により権利行使不能と認定しました。控訴人は、引用文献に記載の技術は、基本原理が異なると控訴しましたが、知財高裁は原審の判断を維持しました。
すなわち,確かに,同じ断面の管路に同じ速さで液体を流すことを前提とするならば,粘性の高い液体にはその分だけ高い圧力を必要とすることとなる。しかし,実際の装置における液体の流速は,ノズルの長さ,大きさや液体の粘性などの諸条件に応じて異なり,液体に加えられる圧力も異なるものと認められ,乙22に記載された「0.1から5bar」という圧力は,一概に低いとは言い切れないとしても,高いとも断言できないものである。また,前記a(b)のとおり,乙22記載の発明において分析液体7が圧力チャンバー1内で加圧下に保持されていたとしても,そのことから直ちに,乙22記載の発明が液体供給源の圧力によって液体が放出されることを基本原理とするものとは認められない。・・・前記(ア)bのとおり,乙22の記載(【0021】等)によれば,液圧加速とは,閉鎖領域19がノズル放出口3より広いことにより,閉鎖素子13の移動の速さよりもノズル放出口3から放出される液体の速さが速くなることを意味するものと認められ,原告主張のように,閉鎖素子の移動によってバルブの開きが小さくなったときに流量が減少するという問題に対して流量を補うものとは認められない。以上によれば,乙22記載の発明は,閉鎖素子の移動によって液体が放出されるものと認められ,液体供給源の圧力によって液体が放出されることを基本原理とするものとは認められない。
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2010.01. 4
平成21(行ケ)10125 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年12月28日 知的財産高等裁判所
引用発明の認定誤りを理由として、進歩性なしとした審決を取り消しました。
前記(1)で認定した刊行物1の記載によれば,引用発明は,長時間座って作業をする人の腋の下を支えて腕と腰の疲れを防ぐ軽快具であり,支棒(2)に巻かれ,パイプ(4)がはめ込まれているスプリング(5)が,腋下によって圧迫されることで生じる復元力によって腋下が押し上げられることによって上体を支持して腕と腰の負担を軽くし,楽にするという効果を有する器具であるといえる。しかし,パイプ(4)が略水平方向に移動することができる旨の記載はない。刊行物1の第3図によれば,パイプ(4)は略中央部から外側に湾曲しているものの,パイプ(4)の上端は,下端のほぼ真上に位置し,水平方向に移動していない態様で示されていることからすれば,同図は,使用者の体重(の一部)が腋下支にかかることにより撓んだ状態を示しており,パイプ(4)が弾力性を有してその上端の腋下支(6)を略水平方向に移動可能とすることを示したものと解することはできない。\n
◆判決本文
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