2011.12.28
平成22(行ケ)10407 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年12月26日 知的財産高等裁判所
引用発明の認定に誤りありとして、拒絶審決が取り消されました。
上記によれば,引用例1には,以下の技術が記載されていると解される。風力発電設備(本願発明の「風力発電装置」に該当する。)は,風力によって発電する設備であることから,気象条件や立地条件によって発電量が異なり,全ての風力発電設備から常に最大電力出力が得られるとは限らない。したがって,従来の複数の風力発電設備を備えた風力発電施設(本願発明の「ウインドパーク」に該当する。)では,施設全体の最大電力出力を連続して出すことができなかった。そこで,風力発電施設が,送電網の最大許容送電量(可及的最大送電網出力電力)よりも高い全出力電力が出せるようにした上で,全出力電力が送電網の最大許容送電量を超過する場合には,風力発電施設調整が働き,常に送電網の最大許容送電量となるように個々の風力発電設備を調整するとの構成を採用することにより,上記課題の解決を図った。具体的には,風力発電施設の全出力電力が送電網の最大許容送電量となるように,少なくとも1基,又は全ての風力発電設備の出力電力が,定格出力電力の0から100%の範囲内で調整され,全ての風力発電設備を同様に調整することも,風力発電設備によって調整の程度が異なることも可能\である。そして,送電網の電圧に応じて,風力発電設備の発電機の出力を制御することも可能である。また,個々の風力発電設備を調整するには,発電設備のデータ入力と接続してデータ処理装置を接続することも可能\である。これにより,送電網の送電網構成部品が最適化された態様で利用されることができる。以上によると,引用例1には,「複数の風力発電設備を備えた風力発電施設であって,上記風力発電施設に接続されている送電網に,発生した電力を供給する風力発電施設の運転方法は,上記風力発電施設により供給される電力をそれぞれの風力発電設備のデータ入力に接続されたデータ処理装置で制御可能\として,全ての風力発電設備の出力電力を上記データ処理装置で定格出力電力の0から100%の範囲内で調節することができると共に,風力発電施設が送電網の最大許容送電量よりも高い全出力電力を出せるようにしたうえで,送電網の電圧に応じて風力発電施設全体の出力電力が送電網の最大許容送電量となるように調整するステップからなる運転方法。」との技術が開示されているといえるが(下線部分は,審決における引用発明の内容の認定と異なる部分である。),「送電網の電圧に応じて風力発電施設全体の出力電力を(その定格出力電力の)0から100%の範囲内の所望値に設定する」との技術は,開示されていない。
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2011.12.22
平成23(行ケ)10063 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年12月08日 知的財産高等裁判所
「天然鉱物であって,海道の浅茅野層,ポンニタチナイ層, 17線川層のいずれかから産する天然鉱物」を追加する訂正について、明確性違反無し、独立特許要件(進歩性)を有するとした審決が維持されました。
原告は,堆積した時代も層相も異なる浅茅野層等について,それぞれの地層が地質図幅に基づき認識可能であるから,天然鉱物の範囲は明確であるとの判断に基づき,本件訂正発明を明確であるとする本件審決には根拠がないと主張する。しかしながら,浅茅野層等の堆積した時代も層相も異なることが,直ちに浅茅野層等から産出される天然鉱物に共通性がないことを示すものということはできない。本件訂正発明は,オパーリンシリカとスメクタイトを主成分とし,調湿性や自硬性における特性を共通とする天然鉱物が浅茅野層,ポンニタチナイ層及び17線川層等に広く分布していることを前提とした上で(【0013】【0015】),その産地を浅茅野層等に特定したものであり,かつ,浅茅野層等は,それぞれの地層が地質図幅(甲25の1等)に基づき認識することができるのであるから,特許請求の範囲の記載は,明確性に欠けるものとは認められない(特許法36条6項2号)。\n
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2011.12.16
平成23(行ケ)10169 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年12月14日 知的財産高等裁判所
拒絶審決が維持されました。請求項1は「茄子漬の青色部を芯に含む巻寿司。」というものです。代理人無しの案件ですが、主張を見る限り実務ができる方が書いたとしか思えない内容です。
原告は,仮に巻寿司の彩りに変化をつけようとするという課題が周知であったとしても,甲1には巻寿司の見栄えや色彩の考慮についての記載がないので,審決が甲1発明に巻寿司の彩りに変化をつけようとする課題が存在すると認定したことは誤りであると主張する。しかし,審決は,巻寿司の彩りに変化をつけようとすることが本願出願前に周知の課題であることを根拠に,漬物を芯に含む巻寿司である甲1発明にも上記課題が存在したと判断するものであって,甲1自体に巻寿司の見栄えや色彩についての記載がありその記載から甲1発明に巻寿司の彩りに変化をつけようとする課題が存在すると認定するものではない。そして,巻寿司の彩りに変化をつけようとすることが周知の課題であれば,巻寿司についての発明である甲1発明においても,その彩りに変化をつけようとする課題はあるといえるので,たとえ,甲1に巻寿司の見栄えや色彩についての記載が存在しなくとも,周知の課題を根拠に甲1発明に巻寿司の彩りに変化をつけようとする課題が存在するとした審決の判断に誤りはない。
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2011.12. 1
平成23(行ケ)10018 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年11月30日 知的財産高等裁判所
進歩性要件を満たさないとして訂正要件違反とした審決が、取り消されました。
当該発明が引用発明から容易想到であったか否かを判断するに当たっては,当該発明と引用発明とを対比して,当該発明の引用発明との相違点に係る構成を確定した上で,当業者において,引用発明及び他の公知発明とを組み合わせることによって,当該発明の引用発明との相違点に係る構\成に到達することが容易であったか否かによって判断する。相違点に係る構成に到達することが容易であったと判断するに当たっては,当該発明と引用発明それぞれにおいて,解決しようとした課題内容,課題解決方法など技術的特徴における共通性等の観点から検討されることが一般であり,共通性等が認められるような場合には,当該発明の容易想到性が肯定される場合が多いといえる。他方,引用発明と対比して,当該発明の作用・効果が,顕著である(同性質の効果が著しい)場合とか,特異である(異なる性質の効果が認められる)場合には,そのような作用・効果が顕著又は特異である点は,当該発明が容易想到ではなかったとの結論を導く重要な判断要素となり得ると解するのが相当である。
・・・・
エ 以上のとおり,訂正発明1の構成を採用したことによる効果(死亡率を減少させるとの効果)は,訂正発明1の顕著な効果であると解することができる。訂正発明1は,カルベジロールを虚血性心不全患者に投与することにより,死亡率の危険性を67%減少させる効果を得ることができる発明であり,訂正発明1における死亡率の危険性を67%減少させるとの上記効果は,「カルベジロールを『非虚血性心不全患者』に少なくとも3か月間投与し,左心室収縮機能\等を改善するという効果を奏する」との刊行物A発明からは,容易に想到することはできないと解すべきである。
・・・
この点,被告は,訂正発明1に係る特許請求の範囲において,「死亡率の減少」という効果に係る臨界的意義と関連する構成が記載されておらず,訂正発明1は,薬剤の使用態様としては,この分野で従来行われてきた治療のための使用態様と差異がなく,カルベジロールをうっ血性心不全患者に対して「治療」のために投与することと明確には区別できないことから,死亡率の減少は単なる発見にすぎないことを理由に,訂正発明1が容易想到であるとした審決の判断に,違法はない旨主張する。しかし,被告の主張は,以下のとおり採用の限りでない。すなわち,特許法29条2項の容易想到性の有無の判断に当たって,特許請求の範囲に記載されていない限り,発明の作用,効果の顕著性等を考慮要素とすることが許されないものではない(この点は,例えば,遺伝子配列に係る発明の容易想到性の有無を判断するに当たって,特許請求の範囲には記載されず,発明の詳細な説明欄にのみ記載されている効果等を総合考慮することは,一般的に合理的な判断手法として許容されているところである。)。また,カルベジロールをうっ血性心不全患者に対して「治療」のために投与する例が従来から存在すること,及び「治療」目的と「死亡率減少」目的との間には,相互に共通する要素があり得ることは,原告主張に係る取消理由2の4に対する反論としては,成り立ち得ないではない。すなわち,「『死亡率の減少』との効果が存在することのみによって,直ちに当該発明が容易想到でないとはいえない」という限りにおいては,合理的な反論になり得るといえよう。しかし,被告の論旨は,原告主張に係る取消事由4(「死亡率の減少が予\測を超えた顕著性を有する」)に対しては,有効な反論と評価することはできず,その点は,既に述べたとおりである。
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2011.12. 1
平成23(行ケ)10080 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年11月30日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が維持されました。
原告は,引用例1は,縦方向に構えて使用するカメラの使い勝手が良くなるように,シャッターを本願発明の蓋体部に相当する部分に設けているのに対して,引用例2に開示された複合機器では,ファインダーを備えたカメラを前提にしてカメラの使い勝手が良くなるようにシャッターの位置を決めているもので,両者は設計思想を異にするから,引用例1に対して引用例2を適用することは困難であると主張する。しかし,原告の主張は,以下のとおり,採用できない。すなわち,引用例1の携帯電話機は,閉じた状態で撮影する場合に,縦方向に構\える必然性はなく,どのような方向に構えても撮影可能\である。他方,引用例2の段落【0026】には,「当該複合機器をファインダー方式の電子スチルカメラとして使用する場合には,図3に示すように,LCD13aが設けられている蓋部33を閉じて右手で本体右側を把持する。言い換えると,通常のカメラを把持する状態と同じである。」と記載されており,右手で本体右側を把持して撮影することが念頭に置かれているが,横方向のみならず,縦方向に把持して,撮影することもできるといえる。以上のとおりであり,引用例1に引用例2を適用することにより,シャッターボタンを「本体部の右側面であって連結部の反対端に近い位置に配置」することが,困難であるとはいえない。
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2011.11. 4
平成23(行ケ)10100 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月31日 知的財産高等裁判所
引用文献の認定誤りを理由に、進歩性なしとした審決が取り消されました。
ところで,合金においては,それぞれの合金ごとに,その組成成分の一つでも含有量等が異なれば,全体の特性が異なることが通常であって,所定の含有量を有する合金元素の組合せの全体が一体のものとして技術的に評価されると解すべきである。本件全証拠によっても,「個々の合金を構成する元素が他の元素の影響を受けることなく,常に固有の作用を有する」,すなわち,「個々の元素における含有量等が,独立して,特定の技術的意義を有する」と認めることはできない。したがって,引用例に,複数の鋼(鋼1ないし鋼5)が実施例として示されている場合に,それぞれの成分ごとに,複数の鋼のうち,別個の鋼における元素の含有量を適宜選択して,その最大含有量と最小含有量の範囲の元素を含有する鋼も,同様の作用効果を有するものとして開示がされているかのような前提に立って,引用発明の内容を認定した審決の手法は,技術的観点に照らして適切とはいえない。上記1(2) カないしサによれば,引用例には,成分間の相互作用を前提とした各種機構により鋼の強化を図るため,一般に,鋼成分として,Si,Mn,P,Ti,Nb等の元素が添加され,これらの添加元素のうち,Siは特にめっき性を阻害する元素であるので,鋼板には積極的には含有させないか,含有させる場合でも少量のみとすれば,めっき性への阻害要因を排除できること,Pは,強化作用は大きいが合金化を遅滞させるという不利な影響も有しているので,鋼板中の含有量を低下させることで対処できること,Mnは,強化元素として一般的に多用されるが,高Mn量を含有する高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板では,合金化めっき層中のMn濃度の上昇を生じて,溶融めっき性や耐パウダリング性への悪影響が顕在化すること,鋼板のMn含有量が1.0 質量%以上の高い量であっても,合金化しためっき層中のMn量を100mg/m2以下,好ましくは60mg/m2以下に抑制することができれば,溶融めっき性や耐パウダリング性における問題点を解消することができること等が開示されていると認められる。そして,上記1(2) ウ,エによれば,引用例記載の発明は,高Mn系の高張力溶融亜鉛めっき鋼板における不めっき等の溶融めっき性不良や耐パウダリング性不良の問題を解決するものであり,優れた溶融めっき性や耐パウダリング性を安定して得られる高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板の提案を目的とすることも認められる。以上によれば,引用発明は,優れた溶融めっき性や耐パウダリング性を安定して得られる高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板の提案を目的とするところ,鋼においては,一般に,成分として添加される元素間の相互作用が高く,1つの鋼を組成する元素の組合せ及び含有量(含有する質量割合)が,一体として,鋼の特性を決定する上で重要な技術的意義を有することが認められる。引用例の上記説明は,各元素ごとに,5つの独立した任意の鋼の中から含有量の最大値と最小値の範囲の含有量により組成される,あたかも1種の鋼において,特定の性質(優れた溶融めっき性や耐パウダリング性を安定して得られる高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板)を有することを開示したことを意味するものでもなく,具体的な鋼の組成及び性質を特定したものと理解することもできない。したがって,審決のした引用発明の認定は,誤りというべきである。
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2011.10.27
平成23(行ケ)10022 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月24日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決につき、組み合わせる動機づけが存在しないとして取り消しました。第1部です。
引用発明1には,ウェブのアルミ箔に渦電流を流すことで,誘導加熱による熱を発生させ,この熱でポリエチレンフィルム層を溶融させてウェブを横シールすることは記載されているものの,ウェブのアルミ箔層に代えて,他の材料を使用することに関する記載や示唆を見出すことはできない。一方,審決が指摘する引用例2には,前記(3) のとおり,ポリプロピレン(A)からなるフィルム表面に,金属(B1)または金属酸化物(B2)の蒸着薄膜が形成されている金属蒸着ポリプロピレンフィルムが記載されており,この「金属蒸着ポリプロピレンフィルム」は,基材フィルムに金属の蒸着薄膜が形成された金属蒸着層であって,低温シール性及び耐ブロッキング性に優れている技術的事項が記載されてはいるものの,金属蒸着ポリプロピレンフィルムを高周波誘電加熱に用いることについては何ら記載されていない。この点に関し,審決は,「この『金属蒸着フィルム』は,基材フィルムに金属の蒸着薄膜が形成された金属蒸着層といえ,これは,従来知られていた『導電性等を付与するため』『金属・・を蒸着したプラスチックフィルム』(摘示2b)を,『低温シール性・・に優れ』(摘示2d)るようにしたもの,すなわち低温でのヒートシール性に優れるようにしたものであり,導電材料であるこの『金属蒸着フィルム』(にうず電流を流すこと)によって発生する熱である誘導加熱による熱でシールするもので,低温でのヒートシール性に優れたものといえる。」(審決10頁12行〜19行)と判断している。しかし,引用例2には,「金属蒸着フィルム」に渦電流を流すことや,誘導加熱による熱でシールすることは記載されていない。そして,引用例2に記載されている「低温シール性」とは,段落【0031】及び【0032】の記載からみて,基材フィルムのポリプロピレンをメタロセン系オレフィン重合用触媒を用いて調製したことによって,低分子領域の成分含有率が少なくなり,低分子領域成分のブリードアウトが低減されたことに基づく性質である。また,引用例2の【実施例】の記載によれば,メタロセン系オレフィン重合触媒を用いて調製した基材フィルムからの金属蒸着ポリプロピレンフィルム(実施例1,2)が,従来技術であるチーグラー系オレフィン重合用触媒を用いて調製したもの(比較例2)よりも,ヒートシール温度が低い場合の引張り試験結果が優れていることが示されていることから,引用例2に記載される「低温シール性」に優れるとは,ヒートシールする温度が従来よりも「低温」であっても「シール性」に優れることであるというべきであるから,審決の上記判断は誤りである。以上のとおり,高周波誘電加熱に用いるために,引用発明1の「アルミ箔層」に代えて,引用例2に記載された「金属蒸着層」を適用することについては,何ら動機付けが存在しないというべきである。\n
◆判決本文
◆関連出願についても同様の判断がされています。平成23(行ケ)10021
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2011.10.26
平成22(行ケ)10245 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月24日 知的財産高等裁判所
「CMITを含まない」との限定がなされた請求項にかかる発明について、無効審判では進歩性なしとの判断がなされました。これに対して、裁判所は、「引用文献1には、CMITが含有されたことによる問題点(解決課題)及び解決手段等の言及は一切なく,したがって「CMITを含まない」との技術的構成によって限定するという技術思想に関する記載又は示唆は何らされていない」として、進歩性なしとした審決を取り消しました。
当該発明と出願前に公知の発明等(以下「公知発明」という場合がある。)を対比して,公知発明が,当該発明の特許請求の範囲に記載された構成要件のすべてを充足する発明である場合には,当該発明は特許を受けることができないのはいうまでもない(当該発明は新規性を有しない。)。これに対して,公知発明が,当該発明の特許請求の範囲に記載された構\成要件の一部しか充足しない発明である場合には,当該発明は特許を受けることができる(当該発明は新規性を有する。)。ただし,後者の場合には,公知発明が,「一部の構成要件」のみを充足し,「その他の構\成要件」について何らの言及もされていないときは,広範な技術的範囲を包含することになるため,論理的には,当該発明を排除していないことになる。したがって,例えば,公知発明の内容を説明する刊行物の記載について,推測ないし類推することによって,「その他の構成要件についても限定された範囲の発明が記載されているとした上で,当該発明の構\成要件のすべてを充足する」との結論を導く余地がないわけではない。しかし,刊行物の記載ないし説明部分に,当該発明の構成要件のすべてが示されていない場合に,そのような推測,類推をすることによってはじめて,構\成要件が充足されると認識又は理解できるような発明は,特許法29条1項所定の文献に記載された発明ということはできない。仮に,そのような場合について,同法29条1項に該当するとするならば,発明を適切に保護することが著しく困難となり,特許法が設けられた趣旨に反する結果を招くことになるからである。上記の場合は,進歩性その他の特許要件の充足性の有無により特許されるべきか否かが検討されるべきである。上記の観点から,新規性を否定した審決の当否を検討する。
・・・・
甲1に上記の記載があったとしても,上記アで認定したとおり,甲1に接した当業者は,「CMITを含まない」との構成によって限定された範囲の発明が記載されていると認識することはないというべきである。すなわち,i)甲1発明には,上記のとおり,CMITが含まれたことによって生じる問題点に関する指摘は,全くされていないこと,ii)のみならず,甲1発明では,CMITが一般式(2)で示される化合物の具体例(2−2)として記載されていること,iii)本件優先日において,当業者が利用可能なMITとしては,CMITとの混合物しか市販されていなかったこと(甲7,甲34ないし39,乙6),iv)甲1の表2に示される実施例として用いられたMITにCMITが含まれるか否かを,原告において追試により確認した結果によれば,実施例は,純粋なMITからなるものではなく,むしろMITにCMITが含まれたものであると推測されること(甲25,28,42,43),v)甲1の出願人と同一の出願人の特許出願に係る明細書において,「MITの合成法では,CMITの生成が避けられず,仕方なくこれまで両者の混合物を使用してきた」,「MITを単一に得ることは難しく,製造コストの点からわざわざ分離してまで使用することはしなかったからである。」(甲46,平成16年3月出願)などの記述があり,本件発明の出願日(優先日)当時においても,一般に,上記明細書に記述されていたとおりの認識がされていたと推認されること等の諸事実を総合すれば,当業者であれば,甲1発明において使用されるMITは,当然にCMITを含有するものであり,製造コストをかけて,CMITを除去するような化合物を使用することはないと認識していたものと解するのが合理的である。そうすると,甲1には,MIT及びBITからなる実施例が示されていたとしてもなお,同実施例の記載から直ちに,「CMITを含まない」との構成要件を充足する発明が記載,開示されていると認定することはできない。\n
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2011.10.25
平成23(行ケ)10059 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月20日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が維持されました。
以上の記載によれば,本件補正発明の相違点2及び3の構成に係る各技術的事項については,以下のとおりいうことができる。
ア 本件補正発明の相違点2に係る構成の技術的意義は,上記(1)イのとおり,過熱された絶縁体から主体金具への熱放散量を確保するとともに,係合位置隙間への未燃ガスの侵入を防止し,絶縁体の先端側にカーボンが付着することによる奥飛火の発生を防止するという作用効果を奏するため,距離(Y−X)の上限値及び下限値をそれぞれ特定したものである。
イ 他方,本件補正発明の相違点3に係る構成の技術的意義は,上記(1)ウのとおり,主体金具先端側と絶縁体先端側との隙間の空間を広く確保して,絶縁体の先端側にカーボンが付着することによる奥飛火の発生を防止するという作用効果を奏するため,第1挟角の下限値を特定したものである。
2 相違点2と3との関係について
(1) 上記1(2)のとおり,本件補正発明の相違点2に係る構成は,絶縁体基部から主体金具基部への熱放散量の確保,係合位置隙間への未燃ガスの侵入の防止及び絶縁体の先端側にカーボンが付着することによる奥飛火の発生防止に着目して,主体金具基部の内周面と第2主体金具段部の内周面との交点(交点E)と絶縁体基部の外周面と第2絶縁体段部の外周面との交点(交点F)の距離を特定するものであるのに対し,本件補正発明の相違点3に係る構\成は,主体金具先端側と絶縁体先端側の間の奥飛火の発生防止に着目して,絶縁体基部の外周面を軸線方向の先端側に延設されて形成される仮想平面と,第2絶縁体段部の外周面とのなす角度を特定したものであるから,これらが一体不可分の関係にあるとは認められず,本件補正発明と引用発明との相違点について,相違点2と3とに分けて認定した本件審決の判断に誤りはない。
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2011.10.25
平成23(行ケ)10048 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月20日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が、一致点の認定誤りがあるとして取り消されました。
前記(1)エのとおり,引用発明における撮影処理は,撮影開始ボタンが操作されてから(ステップS5),撮影終了ボタンが操作されるまで(ステップS13)に行われるものであるところ,「編集対象の画像として選択したキープ画像」は,ステップS5からステップS13の間に行われるステップS11よって表示されるものであるから,撮影処理中に表\示される画像であると認められる。イ 他方,本件補正発明の「撮影処理によって撮影された画像の中から選択された編集対象の画像」は,編集用モニタに表示される「編集対象画像」に対応するものであるが(本件明細書【0083】),編集用モニタに編集対象画像を表\示するステップS32は,編集処理中に行われるものである。したがって,本件補正発明の「撮影処理によって撮影された画像の中から選択された編集対象の画像」は,編集処理中に表示される画像であると認められる。 以上によれば,引用発明の「編集対象の画像として選択したキープ画像」は,撮影処理中に表\示される画像であり,他方,本件補正発明の「撮影処理によって撮影された画像の中から選択された編集対象の画像」は,編集処理中に表示される画像であって,両者は異なる処理中に表\示される画像であるから,引用発明の「編集対象の画像として選択したキープ画像」は,本件補正発明の「撮影処理によって撮影された画像の中から選択された編集対象の画像」に相当するということはできない。
・・・
以上からすると,本件補正発明と引用発明は,「表示領域が複数設けられる表\示手段」を有している点では一致しているものの,引用発明の操作パネル(13−1)は,「撮影処理によって撮影された画像の中から選択された編集対象の画像と,前記編集対象の画像に施す編集を支持するとき操作される操作画像のうちの少なくともいずれかを表示」するものではないし,また,引用発明は,「前記撮影処理が終了した後の編集処理中,前記表\示手段に設けられる複数の表示領域のうち,前記編集対象の画像と前記操作画像のいずれの画像も表\示していない表示領域に,前記編集処理が終了した後に行われる,前記編集処理とは別の処理としての前記編集対象の画像の処理に関する選択操作を行う画面を,他の前記表\示領域に前記編集対象の画像もしくは前記操作画像を表示させることと並行して表\示させる」機能を有しないから,本件審決の一致点の認定は誤りであるといわなければならない。\n
◆判決本文
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2011.10.25
平成22(行ケ)10405 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月24日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が、引用例の認定誤りがあるとして取り消されました。
審決は,引用刊行物2の段落【0010】,【0017】の記載及び図1(別
紙図面8)に基づき,組立体の各端部を受容シリンダ8に取り付けて,組立体の各
端部を取り付けることが補償シリンダ6及び結合リング7の各端部の近くにおいて
組立体の各端部に接続フランジ10を取り付けることからなるようにした構成が示\nされていると認定する。しかし,審決の上記認定も,以下のとおり誤りがある。すなわち,引用刊行物2には,コリオリ導管1,補償シリンダ6及び結合リング7に,接続導管11を含めた組立体は記載されていない。また,引用刊行物2の【請求項14】,【請求項15】,段落【0017】の記載及び図1,2(別紙図面8,9)によれば,接続導管11は,結合リング9を貫通して接続フランジ10内に突き出るものであって,それ以上に,接続フランジ10或いは受容シリンダ8に何らかの手段により結合することなどの取り付けを想定しているとは解されない。仮に,引用刊行物2において,第1の補完手段を採用した場合,組立体の端部に位置する接続導管11は,補強シリンダ12に対し,有利には真空ろう付けによって,かつ有利には約1000℃のろう付け温度で結合されるが(段落【0019】),その場合であっても,結合された補強シリンダ12が,接続フランジ10或いは受容シリンダ8とどのように接続されるかは明らかでなく,また,コリオリ導管は,チタン又はチタン合金ではなく,ニッケル合金を使用するとされている(甲9の段落【0013】)。したがって,引用刊行物2には,組立体の各端部を受容シリンダ8に取り付けることは記載されておらず,審決の上記認定には誤りがある。
◆判決本文
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2011.10.21
平成23(行ケ)10056 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年09月28日 知的財産高等裁判所
阻害要因ありとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
反転構造を持つ基板を製造するに際し,MgOを添加して光透過率を向上させることや,Mgを添加して,非線形光学定数及び電気光学特性を低下させずに小さな分極反転電圧を得ることは,甲3及び甲4にみられるように周知技術といえる。そして,審決は,引用発明において,本願補正発明の相違点1に係る構\成を備えることは,上記の周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと判断した。しかし,前記(ア)のとおり,引用発明は,Ta過剰で定比組成に近いLT単結晶へのMg又はMgOの添加により生じる前記問題点i)及びii)を解決すべき課題とし,Li過剰で定比組成に近いLT単結晶を用いることで,Mg又はMgOを添加せずに済むようにし,上記問題点を解決したものである。このように,引用発明が,Mg又はMgOの添加によって発生する問題点の解決を課題としていることからすれば,LT単結晶がTa過剰の組成かLi過剰の組成かにかかわらず,定比組成に近いLT単結晶にMg又はMgOを添加することは,上記課題解決の阻害要因になると解するのが自然であって,被告が主張するように,Ta過剰の組成かLi過剰の組成かによって区別して阻害要因を検討するのは不自然である。また,甲3及び甲4には,定比組成に近いLT単結晶からなる周期的分極反転構造を持つ基板を製造するに際し,Mg又はMgOを添加することが記載されているにとどまり,それにより前記問題点i),ii)が生じ得ること及びその解決方法については,記載も示唆もされていない。そうすると,引用発明において,上記の周知技術を適用し,Ta過剰で定比組成に近いLT単結晶又はLi過剰で定比組成に近いLT単結晶にMg又はMgOを添加することには,阻害要因があるといわざるを得ず,引用発明において,相違点1に係る構成とすることが,上記の周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものであると認めることはできない。(ウ) なお,被告は,審決の「引用例全体の記載をみても,引用例にはMgを添加してはならない旨の記載はない。」との記載について,「引用例にはMgを添加してはならない旨の記載の事実がないことを指摘するとともに,引用発明として認定したタンタル酸リチウム単結晶全体についてMg添加が除外されているわけではないことを示した」旨主張する。しかし,前記(2)アの記載からすれば,引用例の記載に接した当業者は,Ta過剰で定比組成に近いLT単結晶へのMg又はMgOの添加により生じる問題点i)及びii)を解決するために,Li過剰で定比組成に近いLT単結晶を用いることで,Mg又はMgOを添加せずに済むことに想到するものと解するのが自然かつ合理的であるから,引用例の記載から「引用発明として認定したタンタル酸リチウム単結晶全体についてMg添加が除外されているわけではない」とする被告の主張は合理的でなく,採用することができない。
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2011.10.21
平成23(行ケ)10014 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月05日 知的財産高等裁判所
補正要件違反は違法と認定されました。ただし、独立特許要件を満足していないので、審決の結果に影響がないとして拒絶審決が維持されました。
ところで,本件補正は,特許請求の範囲の記載を前記第3,1(2)アから同第3,1(2)イに変更するものであって,補正前の「第1のデフォルトモード」,「第2のデフォルトモード」及び「無線電話」を,それぞれ「通常モード」,「簡易操作モード」及び「携帯型無線電話」に変更する補正事項,及び請求項1に「通常モードにおいて前記ソフトキーに割り当てられる機能\は,使用可能な他の機能\を選択することに関し,前記簡易操作モードおいて前記ソフトキーに割り当てられる機能\は,特定の機能を実行することに関し,」との記載を追加する補正事項を含むものである。ア これにつき審決は,本件補正により,「無線電話」の一部が「携帯型無線電話」に変更された結果,請求項1に記載された発明には「無線電話」と「携帯型無線電話」の2種類が存在することになるところ,明細書の記載を参酌しても「無線電話」と「携帯型無線電話」の使い分け及び技術的意味の違いが不明であるから,本件補正により,発明の内容はかえって不明りょうとなったと判断している。しかし,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1には,「無線電話が所定の条件の下で復帰するところのユーザ選択可能な少なくとも通常モード及び簡易操作モードを有する携帯型無線電話であって」と記載されていることから,「無線電話」は,「所定の条件の下で復帰するところのユーザ選択可能\な少なくとも通常モード及び簡易操作モードを有する携帯型無線電話」であることが特定されており,「無線電話」が,上記「携帯型無線電話」を意味することは,本願明細書の記載を参酌するまでもなく,文理解釈上自明というべきである。そして,特許請求の範囲の記載から,「無線電話」と「携帯型無線電話」とが別異のものを意味すると解釈する余地はない。イ また,審決は,本件補正により,補正前の請求項1の「第1(のデフォルトモード)」は「通常モード」と変更されたにもかかわらず,請求項1を引用する請求項4には「前記第1」との記載がそのまま残っており,この結果,補正後の請求項4は意味不明となった旨判断している。しかし,本件補正前の特許請求の範囲の記載において,請求項4の「前記第1及び第2のデフォルトモード」が請求項1の「第1のデフォルトモード」及び「第2のデフォルトモード」を指すことは明らかであり,本件補正が,請求項1の「第1のデフォルトモード」及び「第2のデフォルトモード」を,それぞれ「通常モード」及び「簡易操作モード」に補正する補正事項を含むことに鑑みれば,本件補正後の請求項4における「前記第1及び簡易操作モード」が「前記通常モード及び簡易操作モード」を意味し,「前記第1」との記載が誤記であることは,本件補正の全趣旨から明らかというべきである。また,上記のとおり,補正後の請求項4における「第1」との記載が「通常モード」を意味するものと正しく解釈することができるのであるから,本件補正によって,請求項4が意味不明になったということもできない。
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2011.10.21
平成22(行ケ)10282 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月12日 知的財産高等裁判所
進歩性欠如により無効である、とした審決が取り消されました。
以上によれば,本件訂正発明1の「液体供給空間」は,単に「ディスク状」であるだけでなく,さらに,上記i)ないしv)の構成を一体的に備えることによって,課題を解決できるという技術的意義を有するものと認められる。この点に関して,審決は,相違点1について,「『ディスク状』の『液体供給空間』それ自体は,甲第13,14号証にみられるごとく周知である。」(審決62頁5〜6行)と判断している。しかし,本件訂正発明1は,前記(1) イで認定したとおり,収束されるレーザービームによる材料加工方法であってレーザービームを導く液体ビームがノズルにより形成されて加工すべき加工片へ向けられる加工方法における「ディスク状」の「液体供給空間」を対象とする発明であるところ,甲13文献は,前記(3) アのとおり,内燃機関に用いられる燃料用の噴出ノズルに関し,従来この技術分野で達成できないと考えられていたような噴出比を得ることを課題とするものであり,本件訂正発明1とは技術分野もその機序も相違している。しかも,甲13文献に記載されたものは,前記課題を解決するために,カバープレートが旋回室によって区画されたノズル体の芯部の端面と共に円板状の間隙15を形成し,カバープレートに存する出口開口部が円板状の間隙15を介して旋回室と通じ,出口開口部の断面が間隙の周面よりも数倍大きく構成することを中核的解決手段としているものであって,「円板状の間隙15」のみを取り出せば「ディスク状」と呼べないこともないが,出口開口部の断面が間隙の周面よりも数倍大きく構\成されていることに鑑みれば,「円板状の間隙15」のみを独立した空間と捉えるのは不自然であり,むしろ,出口開口部と一体の空間,そして,好ましくはさらに出口開口部と整列して形成される孔も含めた一体の空間として課題を解決するものである。さらに,「円板状の間隙15」を実際上「零」に等しいように対接させる態様もあり得るものとされており,もはや「ディスク状」の形状の空間を備えているものとはいえないというべきである。また,甲14文献に記載された発明も,燃焼装置やエンジンに用いられる,燃料のような液状媒体のための噴出ノズルに関し,噴射精度を改善するというものであり,本件訂正発明1とは技術分野もその機序も相違する。しかも,甲14文献に記載されたものは,前記課題を解決するために,被覆板の直径がノズル本体の直径よりも小さく,ノズル本体がその出口側の端面に,被覆板を形状補完的に収容するための中央の窪みを備え,窪みの深さが被覆板の厚さよりも浅く構成することを中核的解決手段としているものであって,その実施例に記載された「円板状の隙間15」のみを取り出せば「ディスク状」と呼べないこともないが,円板状の隙間15の外周面積は被覆板12内の中央の出口16の横断面積よりもはるかに小さく構\成されていることに鑑みれば,「円板状の隙間15」のみを独立した空間と捉えるのは不自然であり,むしろ,出口と一体の空間として所要の機序を備えるものであり,さらには,静止位置で「円板状の隙間15」の厚さが「零」であり,適当な噴射圧力のときに初めてほんの少し大きくなるように接触する態様もあり得るものとされており,もはや「ディスク状」の形状の空間を備えているものとはいえないというべきである。以上によれば,本件訂正発明1の「ディスク状」「液体供給空間」について甲13文献及び甲14文献から周知とした審決の判断は誤りである。
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2011.10.12
平成21(行ケ)10107 審決取消請求事件 特許権 平成23年10月11日 知的財産高等裁判所
訂正後の発明が進歩性がないとして訂正を認めた審決を取り消しました。
これによれば,同一のプライマー上にある特定の塩基配列を持つ領域と相補的な塩基配列を持つ領域とが,自己アニールを優先的に行うためには,両者の距離が不必要に離れないほうが望ましく,また,両者があまりにも接近している場合には望ましい状態のループの形成を行うのが不利になるという技術的知見に基づき,プライマーの領域Yの塩基を10〜70とすることによって,新たなプライマーのアニールと,それを合成起点とする鎖置換を伴う相補鎖合成反応が円滑に開始できることが開示されている。すなわち,プライマーの領域Yに着目し,この塩基を10〜70とすると,効率的に核酸を合成できることが開示されており,引用例3の実施例に具体的に記載される,Y=16やY=23のプライマーは,上記のような効率的な核酸の合成ができるプライマーとして開示されているといえる。一方,引用例1に記載された核酸の増幅方法も,鋳型の核酸にアニールし,プライマー伸長反応をすると自己アニールによってループを形成するようなプライマーを使用する方法であり,引用例1の実施例において使用されているプライマーは,特定の配列を有するものであって,配列に含まれる塩基数の観点からみると,X=20,Y=0のものである。そうすると,引用発明1及び引用発明3は,いずれもループを形成するプライマーを使用する核酸の増幅方法であって,核酸の増幅方法において効率的な反応を行うことは,当業者にとって自明の技術課題であるから,より効率的な反応を行うこと目的として,引用発明1に開示されたプライマーの構成である,X=20,Y=0のものに替えて,引用発明3に開示された効率的な反応が可能\\なプライマーの要件,すなわち,「10≦X≦50」,「10≦Y≦70」であるプライマーや,Y=16(このときX=23,Y′=2),Y=23(このときX=19,Y′=2)という要件を満足するプライマーの構成を採用することは,当業者が容易になし得ることである。なお,引用例1には,引用例3に記載されるような要件を満足するプライマーの使用を阻害するような記載は認められない。したがって,訂正発明1は,引用発明1及び引用発明3に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。\n
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2011.10.12
平成21(ワ)3527等 特許権侵害差止請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年06月24日 東京地方裁判所
少し前の事件ですが、最高裁で上告棄却され、確定しましたのでアップしておきます。
インクタンクの販売が、本件液体インク供給システムの特許権侵害か争われました。
争点は、技術的範囲、無効、間接侵害等です。
特許法101条2号所定の「日本国内において広く一般に流通しているもの」とは,より広い用途を有するねじや釘のような普及品を想定して制定されたものである。原告製プリンタにしか使用することができない被告製品2は,発光と受光という本件発明の特徴的機能を有しない機種計67機種の他の原告製プリンタにも使用することができるとしても,汎用品ということは到底できず,「日本国内において広く一般に流通しているもの」とは認められない。上記「日本国内において広く一般に流通しているもの」とは,汎用の部品や材料が,特許発明の侵害する製品の製造に用いられたとしても,間接侵害とならないように設けられた規定であり,被告製インクタンクは,原告製プリンタ専用のインクタンクであるから,到底,汎用の部品とはいえない。したがって,被告製品2は,「日本国内において広く一般に流通しているもの」とは認められない。\n
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◆控訴審はこちらです。平成22年(ネ)10064
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2011.10. 7
平成22(行ケ)10329 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月04日 知的財産高等裁判所
周知技術の認定誤りを理由として進歩性なしとした審決が取り消されました。
被告は,乙17〜乙24を提示し,バーコードを読み取る際に,「透明基材を通してバーコードを読み取る」ことは,印刷の技術分野においても広く知られている旨主張する。 しかし,乙17,乙19〜乙22,乙24は,いわゆる複写機やプリンタ,ファクシミリなどの電子写真方式による印刷技術に関するものであり,乙23は,画像プリンタ用インクリボンを用いた印刷技術に関するものであるから,印刷という点では補正発明の技術分野と関連性はないとはいえないが,いずれの証拠も刷版を用いた印刷技術に関するものではなく,機能・原理・使用される機械等が全く異なるから,補正発明の技術分野と同じ技術分野に関するものであるとは認められない。また,乙18は,バーコード付き包装体に関するものであって,補正発明の技術分野とは明らかに異なる技術分野のものである。 したがって,バーコードを読み取る際に,「透明基材を通してバーコードを読み- 19 -取る」ことが,補正発明の技術分野において周知とはいえないから,被告の主張は採用できない。
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2011.10. 7
平成22(行ケ)10235 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月04日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が取り消されました。
そうすると,本件優先日当時(平成15年8月8日),VA型(垂直配向型)液晶表示装置等に用いる重畳フィルムを作製するために,偏光フィルムの吸収軸と位相差フィルムの遅相軸とが直交(偏光フィルムの透過軸と位相差フィルムの遅相軸が平行)するように両フィルムを貼\り合わせるという条件の下で,ロールtoロールの方法で両フィルムを貼り合わせるためには,引用発明のように,横方向に延伸して遅相軸が横方向に現れる位相差フィルムを作製し,他方でフィルムを縦方向に延伸し,吸収軸が縦方向に現れる偏光フィルムを作製して,両フィルムを貼\り合わせる方法を採用するか,又は縦方向に遅相軸を有する位相差フィルムをロールから切り離して,縦方向に吸収軸を有する偏光フィルムのロールと貼り合わせる方法を採用するのが当業者の一般的な技術常識であったと認められる。だとすると,本件優先日当時,縦方向に延伸して位相差フィルムを作製する方法や横方向に延伸して偏光フィルムを作製する方法が存在したとしても,これらの方法をすべて採用し,引用発明に適用して相違点を解消するには,当業者の上記の技術常識を超越して新たな発想に至る必要があるのであって,当業者にとってかかる創意工夫が容易であったかは極めて疑問である。そうすると,前記のとおり,引用文献2ないし6にはロールtoロールの方法で偏光フィルムと位相差フィルムを貼\り合わせる発明に対して各文献に記載された事項を当業者が適用する可能性及びその効果が教示されていない点を併せ考えてみると,本件優先日当時,当業者が引用発明に引用文献2ないし6に記載された事項を適用して,補正発明と引用発明の相違点1,2に係る構\成に想到することが容易であったと認めることはできない。
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2011.09.29
平成22(行ケ)10351 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年09月28日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が、理由不備を理由に取り消されました。
審決において,特許法29条2項が定める要件の充足性の有無,すなわち,当業者が,先行技術に基づいて,出願に係る発明を容易に想到することができたか否かを判断するに当たっては,客観的であり,かつ判断が適切であったかを事後に検証することが可能な手法でされることが求められる。そのため,通常は,先行技術たる特定の発明(主たる引用発明)から出発して,先行技術たる別の発明等(従たる引用発明ないし文献に記載された周知の技術等)を適用することによって,出願に係る発明の主たる引用発明に対する特徴点(主たる引用発明と相違する構\成)に到達することが容易であったか否かを基準としてされる例が多い。
他方,審決が判断の基礎とした出願に係る発明の「特徴点」は,審決が選択,採用した特定の発明(主たる引用発明)と対比して,どのような技術的な相違があるかを検討した結果として導かれるものであって,絶対的なものではない。発明の「特徴点」は,そのような相対的な性質を有するものであるが,発明は,課題を解決するためにされるものであるから,当該発明の「特徴点」を把握するに当たっては,当該発明が目的とした解決課題及び解決方法という観点から,当該発明と主たる引用発明との相違に着目して,的確に把握することは,必要不可欠といえる。その上で,容易想到であるか否かを判断するに当たり,「『主たる引用発明』に『従たる引用発明』や『文献に記載された周知の技術』等を適用することによって,前記相違点に係る構成に到達することが容易であった」との立証命題が成立するか否かを検証することが必要となるが,その前提として,従たる引用発明等の内容についても,適切に把握することが不可欠となる。もっとも,「従たる引用発明等」は,出願前に公知でありさえすれば足りるのであって,周知であることまでが求められるものではない。しかし,実務上,特定の技術が周知であるとすることにより,「主たる引用発明に,特定の技術を適用して,前記相違点に係る構\成に到達することが容易である」との立証命題についての検証を省く事例も散見される。特定の技術が「周知である」ということは,上記の立証命題の成否に関する判断過程において,特定の文献に記載,開示された技術内容を上位概念化したり,抽象化したりすることを許容することを意味するものではなく,また,特定の文献に開示された周知技術の示す具体的な解決課題及び解決方法を捨象して結論を導くことを,当然に許容することを意味するものでもない。本件についてこれをみると,審決は,「主たる引用発明」に「従たる引用発明等」を適用することによって,容易想到性を判断したものではなく,「特定の引用発明」のみを基礎として,これに特定の技術事項が周知であることによって,本願発明と引用発明との相違点に係る構成は,容易に想到することができるとの結論を導いたものである。そこで,本件において,このような審決の理由づけをしたことの適否について,上記の観点をも踏まえた上で検討する。
イ 本願明細書に関する上記記載によれば,本願発明は,飲食物の食べ残しや廃棄物の処分に用いられる容器に関するもので,内表面および外表\面を有する液体不透過性壁から構成され,容器の中には,吸収材が入れられ,吸収材には,効果的な量の臭気中和組成物がその上に被着されているものである。そして,「液体透過性ライナー」を吸収剤に隣接して配置するとの構\成が採用されている。また,好適な液体透過性ライナーとしては,多孔質発泡体,網状化発泡体,開孔プラスチックフィルム,または天然繊維(たとえば,木材あるいは綿繊維),合成繊維(たとえば,ポリエステルあるいはポリプロピレン繊維)もしくは天然繊維と合成繊維の組み合わせの織製もしくは不織ウェブのような広範囲の材料から製造され得るとの記載がある。上記構成を採用した目的は,飲食物の廃棄物および食べ残しを中に入れる過程で容器の中に手を入れる消費者は,液状の廃棄物でほとんど,あるいは完全に飽和された吸収材との偶発的で,望ましくない接触を回避できる旨が記載されている。これに対して,審決の認定した引用発明の内容は,「生ゴミを収納するためのゴミ入れ袋であって,生ゴミを受け入れるための開口を有し,かつ内面と外面を有するプラスチック袋と,前記プラスチック袋の前記内面に被覆された吸水性ポリマー層とを備え,前記ゴミ入れ袋は前記吸水性ポリマー層に練り込まれた抗菌性ゼオライトを有する,生ゴミを収納するためのゴミ入れ袋。」である。引用発明においては,「吸水性ポリマー層」が吸水材として用いられ,プラスチック袋の内面に「被覆」されたものであること,及び刊行物1の第1図を参照すれば,「吸水性ポリマー層」は,プラスチック袋と一体化されていることから,その被覆された形状は,安定的に維持されていると理解するのが合理的である。そして,吸収性ポリマー層には,抗菌性ゼオライトを「練り込んだ」と記載されていることに照らすならば,被覆された層は,溶剤に溶かしたり熱溶融したりするなどして,流動性を持たせた吸水ポリマーにゼオライトを練り込んだものが被覆されることによって,プラスチック袋の基材と一体化されて,積層されていると理解される。被覆された層の一体化された形状は,「吸水性ポリマー層」が吸水した場合であってもなお,その形状が保持されるものと理解するのが合理的である。そうであるすると,引用発明において,「消費者が,液状の廃棄物でほとんど,あるいは完全に飽和された吸収材との偶発的で,望ましくない接触をすること」を回避する目的のために,さらに「液体透過性ライナー」を「吸収剤」に隣接して配置するとの構\成を採用する動機はない。したがって,本願発明の相違点1に係る構成は,引用発明から,容易に想到することができるとした審決の判断には,誤りがある。
ウ この点について,審決は,「液体不透過性壁の内表面に隣接して吸収材が配置されたシート状部材において,その吸収材に隣接して液透過性のライナーを配置すること(周知事項1)」は,周知例1〜5により周知事項であると認定した上で,「してみると,引用例における吸収剤である吸水性ポリマー層に隣接して,液透過性のライナーを配置することは,当業者が容易になし得たことである。」と記載するが,その理由は示されておらず,審決のこの記載には,以下のとおり理由不備ないし判断の誤りがある。確かに,周知例1ないし5には,液透過性のライナーが,吸収材に隣接して配置された技術が記載されている。しかし,そのような技術事項が記載されているからといって,本件において,「引用発明を起点として,上記の技術事項を適用することにより,本願発明の相違点1に係る構\成に到達することが容易である」との立証命題について,引用発明の内容,本願発明の特徴,相違点の技術的意義,すなわち「液透過性のライナーが,吸収材に隣接して配置された技術」の有する機能,目的ないし解決課題,解決方法等を捨象して,「その吸収材に隣接して液透過性のライナーを配置する」技術一般について,一様に周知であるとして,当然に上記命題が成り立つとの結論を導くことは,妥当を欠く。\n
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2011.09.28
平成22(ワ)5012 特許権侵害差止等請求事件 平成23年09月22日 大阪地方裁判所
特許権侵害事件ですが、争点は無効理由があるか否かで、技術的範囲の属否は争点になっていません。裁判所は、無効理由なしとして差止、損害賠償を認めました。
これらの記載によれば,本件特許発明が解決しようとする課題は,給油取扱所における固定式消火設備の設置場所について選択の自由度を高めることにあり,これを解決するための手段が相違点2に係る構成要件Fの構\成であり,これにより選択弁以降の配管取り出しを格納箱の三側方のいずれの方向からも行うことができるという作用効果を奏するという技術的意義があると認めることができる。イ これに対し,乙1発明に係る乙1文献には,相違点2に係る上記アの課題について記載や示唆はない。被告らが引用する文献(乙2,6ないし8,12及び13)についても同様である(なお,乙6,7について,本件特許出願前の刊行物であるかどうかは不明であり,乙8は,本件特許出願後である平成21年6月に頒布されたものである。)。また,乙12,13には,「限られた空間に対して部材を斜めに配置」することが開示されている。しかし,乙12は「室内に洗濯物を干すときに使用する物干し竿」の配置に係るものであって,固定式消火設備における水平送出管部の配置を対象とするものではなく,乙13は「巨大コイルを構成する10本の電線の結線部分(コネクター)」の配置に関するものであって,固定式消火設備における水平送出管部の配置を対象とするものではない。本件特許発明は,前記アのとおり,「格納箱内における多数の分岐管及び選択弁の取付法や配置法に工夫を凝らすことにより,多数の分岐管の全ての選択弁以降の配管取り出し方向の拡大化を図れ,給油取扱所内への格納箱の設置場所の選択自由度を拡げることのできる固定式消火設備を提供すること」(段落【0005】)を課題とし,当該課題を解決するために,水平送出管部を「平面視で格納箱奥行方向に対して斜交するように斜め方向にかつ側面視で水平に配設」(段落【0006】)するものであって,単に,限られた空間に部材を斜めに配置するだけのものではない。すなわち,前記アのとおり「水平送出管部の複数箇所の各箇所の上下に分岐管を設ける」ことと,水平送出管部を「平面視で格納箱奥行方向に対して斜交するように斜め方向にかつ側面視で水平に配設」する(段落【0006】)こととが技術的に関連し,有機的に機能\し合うことによって,複数の分岐管の全ての選択弁以降の配管取り出しが,格納箱の左側,右側,後ろ側のいずれの方向からも行うことができるとする作用効果を奏するものである。
◆判決本文
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2011.09.16
平成22(行ケ)10348 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年09月15日 知的財産高等裁判所
記載不備および進歩性違反ともに、理由無しとした審決が維持されました。
前記2(2)エに認定のとおり,引用例4に記載の上記各化合物は,いずれも鎖状のアミンにジチオカルバミン酸が結合した化合物であり,環状アミンにジチオカルバミン酸基が結合した本件化合物1及び2とは化学構造が異なる。したがって,引用例4に上記各化合物の記載があるからといって,これと化学構\造を異にする本件化合物1及び2が飛灰中の重金属を固定化できることを示唆することにはならない。また,前記2(2)アに認定のとおり,引用例1には,ジチオカルバミン酸基を有する低分子量の化合物の中から,飛灰中の重金属固定化剤として本件各化合物を想起させるに足りる記載又は示唆があるとはいえず,前記2(2)イに認定のとおり,引用例2には,そこに記載の化合物又は本件各化合物が廃棄物等の焼却により生じる飛灰を水やpH調整剤と混練するという環境下で,そこに含まれる多様な物質の中で鉛等の重金属と錯体を形成し,これを固定化するものであることについては何らの記載も示唆もない。さらに,前記2(2)ウに認定のとおり,引用例3に記載のピペラジンジチオカルバメート(I)及びピペラジンビスジチオカルバメート(II)は,それぞれ本件発明における本件化合物1及び2に相当し,引用例3は,本件化合物1及び2のようなジチオカルバミン酸基を有するキレート剤が白金属元素と錯体を形成することを明らかにしているものの,それが廃棄物等の焼却により生じる飛灰を水やpH調整剤と混練するという環境下で,そこに含まれる多様な物質の中で鉛等の重金属と錯体を形成し,これを固定化するものであることについては何らの記載も示唆もない。したがって,引用例3には,本件化合物1及び2のキレート剤が飛灰中の重金属固定化剤として利用できることについてまで記載や示唆がなく,引用発明4と引用例3の記載を組み合わせて本件発明1の相違点3に係る構成を想起させるに足りる動機付けがないというほかない。\n
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2011.09.13
平成20(ワ)28967 特許権侵害差止等請求事件 平成23年08月19日 東京地方裁判所
侵害判断にて、訂正請求がなされているが、たとえ訂正が認められても無効理由ありとして、権利行使を認めませんでした。
上記3(1)のとおり,乙19発明は,「従来の納豆製品…の問題点を解消し,固体納豆の栄養成分および酵素類等を豊富に含み,しかも誰にでも容易に摂取可能な新しい食品を提供することを目的として」(上記3(1)サ)おり,「近年,納豆中に含まれる酵素の一種(ナットウキナーゼ)が血栓溶解作用を有するという報告…もなされ,その機能性が特に注目を集めている。」(上記3(1)キ),「この発明は…,納豆菌と,その代謝産物である人体に有益な機能性物質を含有する納豆菌培養液とからなることを特徴とする液体納豆を提供する。納豆菌は,…は,ナットウキナーゼ産生能\に優れている…」(上記3(1)シ),「培養液の組成および各成分の含有量の調整によって最終製品の旨味,香り,臭い(アンモニア臭等の好ましくない臭い),粘性等の程度,あるいはビタミン類や酵素類等の含有量を随意に調節することができる。」(上記3(1)ス),「さらにこの発明は,上記の納豆菌とその培養液とからなる液体納豆の乾燥粉末と,この乾燥粉末を含有する食品を提供する。」(上記3(1)セ)等のとおり,酵素類としてナットウキナーゼが着目されていることが認められ,また,「液体培養では,通気攪拌条件等を自在に設定することができるため,納豆菌の増殖や代謝に応じて最適な条件のもとで発酵を行わせることができる。」(上記3(1)ソ),「培養液には,納豆菌によって産生させることを目的とする物質(ビタミン類,アミノ酸類,ナットウキナーゼ等の酵素類など),および固体納豆の特徴を再現するために必要とされる特性(香りや粘性等)に応じて,それらの必要基質を選択して添加すればよい。」(上記3(1)タ)等のとおり,納豆菌によって産生されるナットウキナーゼ等の目的物質に応じて必要基質を添加し,通気攪拌条件等を自在に設定して行うことができるとされるものである。そうすると,好適な液体培養条件を設定して乙19発明のナットウキナーゼをより豊富なものとすることは当業者には容易に想到し得るものということができる。
イ なお,本件訂正発明において,ナットウキナーゼの含有量を「5000FU/g乾燥重量以上」と限定したことについて,本件明細書には,「1g当り,…乾燥粉末の場合は,…5000FU以上であり得,10000FU以上であり得る。」(段落【0018】)との記載の他,実施例3の表2中に納豆菌培養エキス粉末の活性値として「13000FU/g」との記載があるが,いずれもナットウキナーゼ活性が5000FU/g乾燥重量以上の納豆菌培養液(またはその濃縮物)を含むか否かによって,量的に顕著な差異があることを開示するものとはいえないものである。したがって,本件明細書の記載からは上記数値限定をすることの意義は認めることはできない。\n
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2011.09.12
平成22(行ケ)10404 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年09月08日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした無効審決が取り消されました。経緯は複雑で、第2次訂正審決まであります。
前記のとおり,引用発明は穴明機の制御装置に係る発明であり,周知例1ないし3並びに本件審決が指摘した甲12及び13のいずれにも,本件発明に開示された,被加工物の材質及び板厚に応じてダイの成形位置を変更,補正するパンチプレス機の制御装置に関連する周知技術が開示されていないことは,前記のとおりであるから,穴明機の制御装置に係る引用発明に,上記周知例等を適用しても,パンチとダイという複数の成形金型を制御の対象とし,パンチのみならずダイの成形位置を変更,補正し,パンチとダイとの相対的な制御タイミングを制御パラメータとして規定する本件発明に想到することは容易とはいえない。しかも,当業者が,ドリルしかなく制御パラメータが極めて少ない引用発明の穴明機を出発点として,わざわざ,パンチとダイという複数の成形金型を制御の対象とし,パンチのみならずダイの成形位置を変更,補正し,パンチとダイとの相対的な制御タイミングを制御パラメータとして規定するパンチプレス機における成形金型に置き換える動機付けはないから,引用発明をパンチプレス機に適用することが困難でないとはいえない。なお,本件審決は,相違点1の検討において,甲5及び6を挙げて「打抜加工も可能なパンチプレス機」の制御装置と,「穴明機」の制御装置は,工作機械の数値制御装置である点で共通し,同じような制御方法であれば相互に適用可能\であることは技術常識であったと判断し,被告も,穴明機の制御装置とパンチプレス機の制御装置とが本質的に異ならないものとして,乙2ないし7を提出する。しかし,甲5及び6,乙2ないし7のいずれにも,被加工物の材質及び板厚に応じてダイの成形位置を変更,補正することは記載されていないし,穴明機から出発して,パンチプレス機の制御装置に想到することには,阻害要因があるといわざるを得ない。
・・・・しかしながら,本件発明に係るパンチ及びダイを備えたパンチプレス機の成形金型の制御装置は,成形金型の金型番号に対応してプレス動作を示すプレスモーション番号を設定・記憶し,そのプレスモーション番号ごとに設定された詳細設定データを生成するものであるから,複数の成形金型を使用する際に,共通のプレスモーションがあれば,そのプレスモーション分,詳細設定データを減らすことができ,またその分データの修正の作業量も少なくなる。そして,新たな成形金型を追加する場合でも,既に利用できるプレスモーションがある場合には,そのデータ入力作業が不要になるのであって,成形金型が2つあることによる制御パラメータの増大に加え,パンチとダイのそれぞれについて,他方との相対的な制御タイミングを制御パラメータとして規定する必要があるパンチプレス機において,データ入力作業が不要になることは,格別の作用効果と評価すべきである。ウ また,本件審決は,同一の成形加工を行う金型の保有個数を減らせるということをもって格別の作用効果であるとはいえないと判断した。しかしながら,従来技術において,複数個の金型を準備しておく必要があってコスト高になるほか,収納部分が必要以上に多くなって生産量に限界があったことが本件発明の課題の1つであったのであり(【0003】),本件発明の特許請求の範囲に記載された構成をとることにより,被加工物の多種多様な成形加工や打抜加工のために予\め準備すべき成形金型の数が少なくてすむことになり,金型の調整や試し打ち確認の作業も少なくできる効果を奏するものであり,同一の成形加工を行う金型の保有個数を減らせることによりランニングコストの低減が期待できることも,複雑なパンチプレス機にあっては,格別の作用効果ということができる。エ 本件審決は,金型の調整や交換などの段取り作業を不要にし,無人化・省人化運転が可能となり,生産性の向上を図ることができるものであるとしても,それは,引用発明に本件発明に係る構\成を適用することにより予測し得る作用効果であって,格別の作用効果とはいえないと判断した。しかしながら,そもそも,引用発明に係る穴明機にあっては,ドリルという一つの工具の上下移動のみを制御するものであり,パンチ及びダイといった複数の成形金型を同期制御することを本質とし,制御パラメータが極めて多いパンチプレス機と異なり,制御すべきパラメータが極めて少ないのであるから,パンチプレス機に係る本件発明において,上記のような効果を奏することは,予\測し得る作用効果とはいえない。
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2011.09.12
平成22(行ケ)10345 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年09月08日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が本件発明の認定誤りを理由として取り消されました。
本件明細書の記載(前記(1)ウないしカ)によれば,本件補正発明における「加熱装置」は,内燃機関の排気側の管路のうち,三元触媒と圧力波機械との間に設けられたバーナ又は電気作動式ヒータであり,触媒の最適な動作温度がより急速に得られ,かつ,ガスがより高い温度で圧力波機械に達するようにすることで,特にコールド・スタート特性を改善するものであるといえる。(イ) これに対して,引用例2の記載(前記(2)エ及びオ)によれば,引用例2に記載の発明における「排気冷却・中間加熱器」は,2段式給気を行う内燃機関からの排気がガスタービンの許容入口温度を越えないようにする一方,ガスタービンからの排気の圧力波機械における仕事能力低下を防ぐために,これらの各排気の間で熱交換を行わせ,もって内燃機関からの排気の温度を降下させることに伴ってガスタービンからの排気の温度を上昇させるものである。すなわち,「排気冷却・中間加熱器」は,機関の排気系において,ガスタービンの上下流の各排気間で常に加熱と冷却を伴う一体不可分の熱交換を行う装置である。さらに,引用例2に記載の発明では,高圧圧縮段用の排気タービン式過給機と低圧圧縮段用の圧力波機械とを逆にして使用することも可能\であって(前記(2)オ),この場合,「排気冷却・中間加熱器」は,圧力波機械との関係では圧力波機械に流入する排気を冷却させることになり,圧力波機械の仕事能力を低下させる面を有することになる。(ウ) 以上によれば,本件補正発明の「加熱装置」は,機関の排気側の管路において圧力波機械に流入する排気を外部の熱源又は電気エネルギー源(以下「熱源等」という。)により加熱することで特に圧力波機械のコールド・スタート特性を改善するものである一方,引用例2に記載の「排気冷却・中間加熱器」は,2段式給気を行う機関の排気系において排気間での熱交換を行うものであって,排気を外部の熱源等により加熱するものではなく,むしろ圧力波機械を高圧圧縮段用に配置した場合には圧力波機械の仕事能力を低下させるものであるから,本件補正発明の「加熱装置」とは,その構\成,機能及び作用がいずれも異なっているというほかない。・・・以上のとおり,引用例2に記載の発明における「排気冷却・中間加熱器」は,本件補正発明の「加熱装置」に相当せず,引用例2に記載の発明は,「加熱装置」の構\成を備えているとは認められないから,本件審決による引用発明2Bの認定には誤りがある。
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2011.09. 8
平成22(行ケ)10353 特許権 行政訴訟 平成23年08月31日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が維持されました。
そこで,本願発明が特許請求の範囲に記載されたとおりのものであるとすると,本願発明には光学部材がセパレータを有することも,保護フィルムやセパレータの材質がポリエステルフィルムのようなプラスチックフィルムであることも限定されていない。仮に本願発明の光学部材をセパレータを有するものに限定して解釈したとしても,本願明細書の段落【0036】及び【0038】記載のとおり,セパレータの材質には,布,不織布,ネットなど,一般的にはプラスチックフィルムとブロッキングしないと考えられるものまで記載されている。また,同様に,保護フィルムの基材として布,不織布,ネットなどを使用した場合,セパレータの材質としてどのようなものを使用したとしても,ブロッキングは生じないと考えられる。そうすると,原告の主張する,本願明細書の実施例で示されているブロッキングしないという効果は,本願発明のうち,保護フィルムとセパレータとして限られた材質の組合せが使用される場合のみに考慮されるものであって,本願発明全体の効果として参酌されるものではない。したがって,本願発明には原告の主張するような技術的意義があるとはいえないから,原告の上記主張は採用することができない。この点に関し原告は,さらに,光学部材の裏面の材質や面状態は,客観的かつ常識的な範囲で当業者であれば予測がつく程度の範囲のものであり,現実的には実施例で評価しているようなプラスチック製のフィルムやセパレータであることは当業者であれば容易に想到し得る範囲のものであるとして,光学部材を実施例記載のものに限定解釈すべきである旨主張する。しかし,フィルム同士のブロッキングに関して,周知例3の段落【0030】及び周知例6の段落【0028】には,フィルムの表\面粗度Raの値とブロッキングとの関係についてはRaが大きい方がフィルム同士のブロッキングが抑えられることが示されている。そうすると,仮に本願発明を原告が主張するように解釈し,保護フィルムやセパレータの材質をプラスチック製のフィルムに限定して検討したとしても,本願明細書の実施例に示されているプラスチックフィルム同士のブロッキングに関する効果は,周知例3及び周知例6から見て当業者が予期し得るものである。\n
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2011.09. 1
平成21(ワ)8390 特許権侵害差止等請求事件 平成23年08月30日 東京地方裁判所
イーモバイルに対する特許権侵害事件です。裁判所は、新規性違反を理由に権利行使できないと判断しました(特104条の3)。また、時期に後れた抗弁として、追加主張を却下しました。
以上によれば,乙15には,乙15記載の伝送方法が,「第1のデータフィールドに第1のデータフォーマットのデータを含め,第2のデータフィールドに該第1のデータフォーマットとは異なる第2のデータフォーマットのデータを含める工程」(構成要件B),「前記第1のデータフィールド内に前記メッセージ信号全体の構\成を表す第1の識別子を挿入する工程」(構\成要件C),「前記第1の識別子に前記データフィールドの数,データフィールドの大きさ,又はデータフォーマットの少なくともいずれか1つに関する情報を含める工程」(構成要件D)を含むことが実質的に開示されているものと認められる。c 前記a及びbによれば,乙15記載の伝送方法は,構成要件AないしEの構\成をすべて備えているものということができるから,本件発明1と実質的に同一であるものと認められる。
・・・・
以上を前提に検討するに,原告が原告第7準備書面をもって行った訴えの追加的変更は,本件各発明(請求項1及び11)に係る本件特許権の侵害の事実の主張に加えて,本件発明3及び4(請求項2及び12)に係る本件特許権の侵害の事実の主張を新たに請求原因に追加するものであり,請求原因を変更する訴えの変更(民事訴訟法143条1項本文)に当たるものといえるところ,本件の審理の経過によれば,上記訴えの追加的変更は,本件各発明に係る本件特許権の侵害論の審理が完了し,原告の本件各発明に係る請求について裁判をするのに熟した後にされたものであることは,明らかである。そして,請求項2及び12がそれぞれ請求項1及び11を引用する形式のものであること(前記第3の3 ア及びイ)からすれば,本件発明3及び4に係る本件特許権の侵害論の審理は,本件各発明に係る本件特許権の侵害論の審理と共通する部分があり,その主張立証を利用できる面があるとはいえるものの,一方で,請求項2及び12に特有の構成要件(構\成要件K,L,N,P)が存在することに照らすならば,原告が追加した本件発明3及び4に係る本件特許権の侵害の事実に関する請求原因の審理を行うとなれば,上記構成要件の充足の有無,本件発明3及び4に係る本件特許の無効事由の有無に関する新たな双方の主張立証や,再度の専門委員関与の下における技術説明会の実施の要否の検討などが必要となり,更に審理に相当の期間を要することになるものと認められる。加えて,原告においては,平成21年5月14日の第1回口頭弁論期日から平成22年6月14日の第6回弁論準備手続期日までの間に,本件発明3及び4(請求項2及び12)に係る本件特許権の侵害の事実の主張を請求原因に追加することについて特段の支障がなかったこと,その他本件の審理の経過に顕れた諸般の事情を考慮すると,上記訴えの追加的変更は,本件の訴訟手続を著しく遅滞させることになるものであり,不当であるといわざるを得ない。 以上によれば,本件発明3及び4(請求項2及び12)に係る本件特許権の侵害の事実を請求原因に追加した訴えの追加的変更は,本件の訴訟手続を著しく遅滞させることになるものであって,民事訴訟法143条1項ただし書の場合に当たる不適法なものであるから,これを却下することとする。
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2011.08.30
平成22(行ケ)10408 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年08月25日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が相違点に至る容易想到性が誤っているとして、取り消されました。
本願発明は,前記認定のとおり,羽根車とケーシングライナーとの隙間を大きくすることなく,ポンプ効率を低下させないで羽根車に絡み付く異物を除去し,ポンプ内をスムーズに通過させるために,ケーシングライナーの内周に異物捕捉体としての凸部材を設け,捕捉された異物を羽根車の間を通過させることをその技術内容とするものである。また,引用発明1は,前記認定のとおり,ポンプ性能を効率的に得るためには,羽根先端とケーシングあるいはケーシングライナーとの間の間隙を十\分小さく設定する必要があることを前提として,そのような設定をした場合,間隙内に汚水中の塊状固体をかみ込み,ポンプ性能が減少することから,ケーシングライナーの内周に異物捕捉体としての溝を設け,汚水中の塊状固体を羽根先端とケーシングライナーとの間にかみ込んだ場合,この塊状固体を,羽根先端によって溝内に押し込み,溝を経て吐出口側に吐出させることをその技術内容とするものである。さらに,引用発明2は,ケーシングライナーの内周の捩り羽根の外縁に近接させて異物切断用のカッターを配置することにより,流入した異物を捩り羽根の回転によってカッターに押し付けて切断し,異物がポンプを詰まらせることを防止することをその技術内容とするものである。イ そうすると,本願発明,引用発明1,引用発明2は,いずれもポンプの羽根に絡み付く異物を除去してポンプ内を通過させることをその技術内容とするものであるが,本願発明は,その手段として,ケーシングライナーの内周に凸部材を設けることにより,異物を引っ掛けて捕捉して羽根から取り除き,さらに異物を羽根と羽根の間を通過させてポンプ外に排出させる構成を有することをその技術的特徴とするものであるということができる。これに対し,引用発明1は,溝に異物を押し込んで捕捉し,溝内を通過させる構\成を有するものであり,本願発明1とは,異物捕捉体の具体的構成及び捕捉後の異物の排出方法が異なるものである。さらに,引用発明2は,ケーシングライナーの内周にカッターを設けるものであり,当該カッターは突起形状を有するものの,あくまで異物を切断する目的で設けられた部材であって,異物を引っ掛けて捕捉することを目的として設けられた構\成ではない。
ウ したがって,本願発明は,異物捕捉体として,引用発明1のように,異物を押し込んで排出する溝や,引用発明2のように,異物を切断して排出するカッターを設けることなく,凸部材を設けるだけで,異物を引っ掛けて捕捉し,羽根と羽根の間を通過させて排出する構成を有する点に,その技術的な特徴を有する発明であるというべきであって,引用発明1及び2とは,異なる技術思想を有するものということができる。また,引用発明1の「溝」に換えて,引用発明2のカッターから刃を除いた「凸部材」の構\成を採用することは,動機付け欠くものというほかない。よって,相違点に係る構成は,当業者が容易に想到し得たものということはできない。\n
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2011.08.22
平成22(行ケ)10381 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年07月25日 知的財産高等裁判所
審決の引用文献の認定には妥当性を欠く点があるが、結論に影響がないとして、進歩性なしとした審決が維持されました。
原告は,審決が,引用例(甲1)の第2図,第4図の記載に基づいて,引用発明のコーティングが「吊ロープ3の太さの半分より実質的に小さい厚さを有する」と認定したことが誤りである旨主張する。確かに,引用例(甲1)において,「高摩擦弾性体6」又は「高摩擦弾性体8」が「吊ロープ3」の太さの半分より実質的に小さいか否かについては,特段の記載がない。そして,特許出願に係る図面は,設計図面のように具体的な寸法などが正確に描かれるものではないので,審決が,引用例(甲1)の第2図,第4図の記載のみから,引用発明におけるコーティングが「吊ロープ3の太さの半分より実質的に小さい厚さを有する」といった具体的な定量的事項を認定したことは妥当でない。もっとも,上記のような特許出願に係る図面も,技術文献の図面である以上,概略的かつ定性的な事項については大きな誤りはなく記載されているというべきであって,単なる大小関係等については十分に読み取ることができるところ,引用例(甲1)の第2図,第4図からすれば,「高摩擦弾性体」が十\分に薄いことが読み取れる。また,引用例(甲1)の「高摩擦弾性体6」は巻上シーブ5の溝にコーティングされるものであって(甲1,2頁),表面を処理するという「コーティング」の性質上,「吊ロープ3の太さの半分」との大小関係はともかく,十\分に薄いものというべきである。そして,前記(1)イのとおり,本願発明における「ロープの太さの半分より実質的に小さい厚さ」を有するとの事項は,コーティングが十分に薄いこと,すなわち薄さの程度を概略的に規定したものにすぎない。そうすると,審決の認定は,引用発明において「高摩擦弾性体6」又は「高摩擦弾性体8」が「吊ロープ3」の太さに比べ十\分に薄いものであるとする限度において,誤りはない。さらに,審決も,コーティングの綱溝の底部における具体的な厚さ(「最小で約0.5mm,最大で約2mmの厚さ」であること)につき,相違点2として認定し,別途検討している(そして,後記エのとおり,この点に関する審決の判断に誤りはない。)のであるから,審決による引用発明の認定に妥当性を欠く点があるとしても,審決の結論に影響を及ぼすものではない。なお,被告は,乙1(特開平7−259441号公報),乙2(特開平10−150887号公報)により「高摩擦弾性体6」又は「高摩擦弾性体8」が薄いことの立証を試みているが,乙1は「建築用ガスケット及びその製造方法」に関する発明で,乙2は「釣り・スポーツ用具用部材」に関する発明であって,いずれも本願発明及び引用発明とは技術分野が異なるから,「高摩擦弾性体6」又は「高摩擦弾性体8」の薄さを具体的に解釈する上で参考とできるものではない。
イ 取消事由2(一致点認定の誤り)について
原告は,取消事由1と同様の理由により,審決の一致点の認定には誤りがある旨主張するが,前記アのとおり,審決による引用発明の認定には妥当性を欠く点があるものの,審決の結論に影響を及ぼすものではないから,同様に,審決による一致点の認定にも,審決の結論に影響を及ぼすほどの誤りはないというべきである。
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2011.07.26
平成22(行ケ)10371 審決取消請求事件 特許権 平成23年07月21日 知的財産高等裁判所
進歩性違反無しとした審決が取り消されました。
以上を前提として,引用発明における構造体のフィン高さ,フィンピッチ及び切り起こし部の排気流れ方向での長さにつき,本件発明1と同様の符号を用いて表\記すると,1≦fh≦5,0.5≦fp≦30,0.25≦L≦20となり,この範囲内であれば,いずれの数値も採り得るものである。そうすると,引用発明は,本件発明1の条件1のfh,fpの数値が重複する範囲においては,同Lの数値(0.5<L≦7)は引用発明のLの数値(fp≦5の場合も,0.25≦L≦20である。)に含まれ,また,条件2のfh,fpの数値が重複する範囲においては,同Lの数値(0.5<L≦1)は引用発明のLの数値(5<fpの場合も,0.25≦L≦20である。)に含まれるといったように,本件発明の条件1又は2の数値を充足する部分があることが認められる。本件発明1は,条件1ないし4を択一的な数値限定とするものであるから,引用発明が条件1又は2を充足する以上,条件1ないし4に係る構成については,本件発明1と引用発明とに相違はないということとなる。\n
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2011.07.21
平成22(行ケ)10357 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年07月19日 知的財産高等裁判所
引用発明の上記目的は実現できなくなるとの理由で、進歩性なしとした審決が取り消されました。
しかし,前記2のとおり,引用発明は,良好な飛び性能及び耐久性と良好な打感及びコントロール性とを同時に満足し得るゴルフボールを提供することを目的とし,コア表\面硬度をコア中心硬度よりも高くしコアの硬度分布を適正化すると共に,中間層硬度をコア表面硬度より高く,カバー硬度を中間層硬度より高く構\成して,ゴルフボールにおける最適の硬度分布を得ようとするものであるから,引用発明に引用例2に記載された事項を適用した場合,すなわち,引用発明のカバーに,該カバーより低い硬度の塗膜(ショアD硬度38)を形成した場合,塗膜形成前と塗膜形成後では,ボール全体の硬度分布は明らかに異なり(引用発明では,ボールのもっとも外側に位置するカバーの硬度が最も高く,次いで中間硬度,コア表面硬度,コア中心硬度の順に硬度が高く,これを最適の硬度分布としているのに対し,引用例2では,ボールのもっとも外側に位置する塗膜よりも,その内側の外装カバーの方が硬度が高いことになる。),塗膜形成前において最適化されていたボール全体の硬度分布は,塗膜形成後においても最適化されているとはいえなくなり,その結果,引用発明の上記目的は実現できないことになる。そして,塗膜形成後において引用発明の上記目的を実現しようとすると,改めてボール全体の硬度分布の最適化(再最適化)することになり,それによって,コア,中間層及びカバーの硬度は変更されるから,再最適化後のゴルフボールの構\成は,本願発明と同様の構成になるとはいえない。そうすると,本願発明は,当業者が引用発明,引用例2に記載された事項及び周知技術に基づいて容易に発明することができたものとはいえない。なお,引用発明のカバーに該カバーより低い硬度の塗膜(ショアD硬度38)を形成しても,引用発明が元々有する特性はそのまま維持されたままで,塗膜を形成したことによる効果が追加されるだけであれば,硬度分布の再最適化を行う必要はないことになるが,前記のとおり,引用発明のカバーに該カバーより低い硬度の塗膜(ショアD硬度38)を形成することにより,引用発明が最適とした硬度分布が変化してしまう以上,引用発明が元々有する特性はそのまま維持されたままで,塗膜を形成したことによる効果が追加されるだけとは考えられないし,再最適化を行う必要がないということもできない。\n
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2011.07.11
平成22(行ケ)10324 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年07月07日 知的財産高等裁判所
無効理由無しとした審決が取り消されました。
本件明細書が開示する,重合体粒子表面のグラフト共重合体鎖の長鎖アルキル基に対して液晶分子が垂直に規則正しく配列することにより,液晶スペーサー周りの配向異常を防止するという本件発明の作用効果は,単独重合,共重合によらず,長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体の重合体鎖を重合体粒子表\面にグラフトしたことに基づくものであって,本件明細書において,本件発明が,引用発明1に開示されている構成のうちから,「特定の共重合体鎖」に限定しているとしても,それに基づいて生じる格別の作用効果に係る記載はないから,本件発明の「特定の共重合体鎖」が単独重合体鎖や他の共重合体鎖と比較して格別の作用効果を奏するものということはできない。しかも,本件明細書【0014】には,「長鎖アルキル基の層の厚みが0.01μm以上であれば,グラフト共重合体鎖の溶融効果又は配向基板上の官能基残基との反応により重合体粒子と配向基板との固着性も有する。」として,長鎖アルキル基の層が一定の厚みを有すると付着性が向上する旨を明らかにしているものである。そうすると,本件発明は,引用発明1における付着層を構\成する重合体鎖について,その一部に相当する「特定の共重合体鎖」を単に限定しているにすぎず,このような限定によって,引用発明1とは異なる作用効果あるいは格別に優れた作用効果を示すものと認めることもできないから,引用発明1の解決課題である付着性や技術常識の観点から,相違点1が実質的な相違点ということはできない。ウ 以上のとおり,本件発明は,引用発明1において例示的に列挙された「重合可能な単量体の単独重合体又は上記単量体の2種以上の共重合体であって熱可塑性を有するもの」の中から,「表\面に長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体の1種又は2種以上と重合性ビニル単量体と共重合可能な他の重合性ビニル単量体の1種又は2種以上とからなるグラフト共重合体鎖を導入した重合体粒子」について一部限定したものというほかない。また,本件発明は,引用発明1から本件発明が限定した部分について,引用発明1の他の部分とその作用効果において差異があるということはできないから,引用発明1と異なる発明として区別できるものでもない。したがって,本件発明と引用発明1との間には,相違点は存しないといわざるを得ない。\n
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2011.07.11
平成22(行ケ)10344 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年07月07日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が維持されました。
原告は,本願発明と引用発明の対象がホイールローダであって,引用例2の油圧ショベルとは作業の実態が異なるので,引用発明に引用例2記載の油圧シャベルの技術を適用することは,動機付けに欠けると主張する。しかし,引用例1には,掘削作業中か否かに応じて,作業機に伝達する力を調整するため,可変容量型油圧ポンプを制御することが記載されている。そして,引用例2には,掘削作業中か否かに応じて「エンジンの出力トルクを制御する」ことが開示されており,引用例1及び引用例2が,掘削作業中か否かに応じて作業機に伝達する出力を調整するための制御である点で共通することを勘案すれば,引用発明に,引用例2記載の技術的事項を適用する動機付けが存在する。よって,当業者にとって,引用発明に,引用例2記載の技術的事項を適用することに困難性はなく,引用発明に,引用例2記載の技術的事項を適用し,「エンジンの上限出力トルクを制御する」ようにし,かつ「掘削が行われていないと判定された場合のエンジンの上限出力トルクカーブが,掘削が行われていると判定された場合におけるエンジンの上限出力トルクカーブよりも低くなるように,エンジンの上限出力トルク制御する」ようにして,相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。
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2011.07. 1
平成22(行ケ)10318 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年06月29日 知的財産高等裁判所
決定により差し戻しになった無効審判にて、訂正を認める。無効審判請求は成り立たないと判断されました。無効審判請求人は、その取消を求めた事件です。裁判所は、進歩性違反無しとした審決を取り消しました。
以上のとおり,ヒンジ部について,側面部を延伸した平面上に形成するか否かは,ケースの強度等も含め作用効果に特段の差異をもたらさないものと解され,本件特許出願日より前に,本体側と蓋側の突片部(ヒンジ部)の一方又は双方が側面部を延伸した平面外に形成される構成が開示されて,そのような構\成が広く知られ,また,甲16には,訂正発明1と同じ「外カバー構造」の収納ケースにおいて,本体側及び蓋体側の各側面部と,本体側及び蓋体側の各ヒンジ部との内外の位置関係を互いに逆にし,本体側のヒンジ部をカバー体側のヒンジ部の外側に配置し,このヒンジ部の対向内部にヒンジ軸を突出させるという構\成が具体的に開示されていたことが認められる。そうすると,甲1 発明に接した当業者が,甲1発明において,本体側ケース部材及び蓋側ケース部材の側面部を延伸した平面上に形成された突片部(ヒンジ部)を,本件発明の相違点2に係る構成とすることに,技術上の困難性はないといえる。すなわち,甲2,13ないし16に例示された周知の技術を基礎として,甲1発明に係るディスク収納ケースにおいて,蓋側ケース部材の上下端縁部の周壁を本体側ケース部材の上下端縁部の周壁の外側に配置し,本体側ケース部材の上下ヒンジ部を蓋側ケース部材の上下ヒンジ部の外側に配置し,その結果,本体側ケース部材のヒンジ部に設けられたヒンジ軸を上下ヒンジ部の対向内面に突出形成するということは,当業者が容易に想到し得るといえる。\n
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2011.06.28
平成22(行ケ)10258 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年06月23日 知的財産高等裁判所
無効理由無しとした審決が維持されました。
この点について,原告は,本件発明1の「打点衝撃を与える」という文言自体は,一義的に明確に理解されるべきものであるから,本件明細書を参酌することは許されず,「ホイールの回転時に断続的に接触することにより衝撃を与えることができる,定められた形状の突起」と解すべきであって,「刃先に突起を形成した」ことと実質的に同一であるなどと主張する。しかしながら,「打点衝撃を与える」という用語自体が明確であったとしても,本件発明1と引用発明1及び2との対比の際,「打点衝撃を与える所定形状の突起」という一連の記載の技術的意義を明らかにするために,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された技術的事項を参照して認定することに問題はなく,本件審決は,本件明細書において,刃先ではなく,両傾斜面に条痕を形成した従来技術の刃先によっては,本件発明の作用効果を奏しないとされている(【0005】)から,上記対比の際,【0009】の記載を参酌して,「打点衝撃を与える所定形状の突起」の技術的意義を明らかにしたものにすぎない。原告は,要するに,本件明細書記載の実施形態の突起について極端な数値を抽出した上で,「外径に応じ」(本件明細書【0024】)ることなく技術常識上除外されるべき数値に基づいて条件設定し,本件発明1の頂点の角度は大きな鈍角の場合があり,刃先に突起を形成したことと実質的に同一であると主張しているものというほかなく,そのような原告の主張は,これを採用することができない。
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2011.06. 1
平成22(行ケ)10271 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年05月30日 知的財産高等裁判所
無効審決(不成立)が取り消されました。
上記のとおり,甲1には,S2ないしS4の経過時間においては,タイマ15dの起動によって,タイマ15dで設定した経過時間の間は,ボウル部用弁機構17の開状態が保たれており,その間にボウル部3とタンク10への洗浄水の供給が行なわれており,使用者が再度操作部16のスイッチを操作して洗浄を開始しようとしても,上記経過時間が経過しない時点では,洗浄開始信号は受け付けないという技術が開示されている。この点,甲1には,洗浄水の供給をタイマ15dで設定した時間が経過しない状態で終了させることは記載されていない上,仮にそのような状態で終了した場合には,溜水水位が隔壁2の下端より高くならず,上記サイホン状態を生じさせることができず,汚物・汚水の排水が行なわれなくなるから,上記経過時間が経過しない間に洗浄開始信号を受け付けるとの構\成を採ることは,技術常識に反する。また,同様に,ポンプが駆動停止した(S7)後,S8ないしS10の経過時間においても,タイマ15dで設定した経過時間の間は,ボウル部用弁機構17の開状態が保たれており,その間にボウル部3とタンク10への洗浄水の供給が行なわれており,使用者が再度操作部16のスイッチを操作して洗浄を開始しようとしても,上記経過時間が経過しない時点では,洗浄開始信号は受け付けられないものと解される。そうすると,甲1には,タイマの働きにより,タンクに洗浄水を再充てんするため,一定時間の後れを設定し,その間,ポンプの動作を停止する技術が開示されているから,本件発明1の「前記制御手段(80)は前記ポンプの最後の動作後一定の遅延時間前に前記ポンプ(18)が作動するのを防止する時間遅延手段を有している」といえる。
・・・
以上のとおり,被告の上記主張は採用することができず,甲1発明は,本件発明
1の「前記制御手段(80)は前記ポンプの最後の動作後一定の遅延時間前に前記
ポンプ(18)が作動するのを防止する時間遅延手段」を有している。したがって,
審決には,本件発明1の甲1発明との相違点1について認定の誤りがあり,同認定
の誤りは,結論に影響を及ぼす違法があることとなる。
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2011.05. 4
平成22(行ケ)10312 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年04月26日 知的財産高等裁判所
進歩性違反無しとした審決が取り消されました。
審決は,甲第1号証の図1,7,8のマッサージ具41,42の構成に図11の突起体91,マッサージ具41,42の構\成を追加して,両構成を兼ね備えた構\成にする動機付けがない旨説示するが,上記の両構成は同一の文献に記載された実施例にすぎないのであり,両構\成をともに採用したときに支障が生じることを窺わせる記載は甲第1号証中にもないし,当業者の技術常識に照らしても,そのような支障があるものとは認められないから,両構成を兼ね備えた構\成にする動機付けに欠けるところはなく,審決の上記判断には誤りがある。そして,上記の両構成を兼ね備えた構\成を採用することによって生じる作用効果は,背中の側部と上腕の側方を同時にマッサージできるといった程度のものにすぎず,当業者が予測し得ない格別のものではないということができる。したがって,「本件発明1は,『前記胴体クッション部に設けられて給気によって空気袋が膨張して前記被施療者の胴体を後方から押圧して胴体側部に圧迫刺激を与える第1空気式マッサージ器』を有しているが,甲1発明は有していない点。」との甲1発明との相違点2に係る本件発明1の構\成の容易想到性についての審決の判断には誤りがあるというべきである。
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2011.05. 2
平成22(行ケ)10277 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年04月26日 知的財産高等裁判所
進歩性違反なしとした審決が維持されました。
そうすると,本件各発明と甲第1号証発明とは解決すべき技術的課題が異なり,甲第1号証にはフットレストに足裏支持ステップを設けることにつき記載も示唆もされていないとした審決の認定判断に誤りがあるとはいえない。ここで,甲第1号証の図1のマッサージ機のU 字型の部分にくるぶしより下の部位を載せ,足裏をマッサージするようにすることが構造的に可能\であるとしても,また上記マッサージ機を足裏のマッサージに用いることが甲第1号証にいうマッサージ機の取扱いの容易化という目的を積極的に阻害するものではないとしても,これらの事由により甲第1号証においてフットレストに足裏支持ステップを設けることにつき示唆があることにはならない。ウ そうすると,甲第1号証発明の椅子型マッサージ機に足裏支持ステップが設けられたフットレストを追加する構成が記載も示唆もされていない以上,本件出願日当時,当業者において相違点1に係る本件発明1の構\成に容易に想到することができなかったというべきであって,この旨をいう審決の判断に誤りがあるとはいえない。
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2011.04.22
平成22(行ケ)10185 審決取消 特許権 行政訴訟 平成23年04月18日 知的財産高等裁判所
CS関連発明について進歩性なしとした審決が維持されました。
確かに,審決は,対比に当たり,引用発明の「ウェブサーバー」及び「ホストコンピュータ」は,「後記する相違点はあるものの」本願発明の「コンピュータ」に相当する旨判断した上で,「通信ネットワークを介して端末と接続されたコンピュータ」が行う「中古車オークションにおいて商品の入札を受け付ける方法」のうちの「前記第一のオークションにおいて前記第一の取引が成立しなかった場合」である「一般の購買者が参加可能な販売」の「データ受付ステップ」における,購買者の端末からの購入の要求に係るデータを受け付けて記憶する処理,及びそれに続く「取引決定ステップ」における取引の処理について,「前記コンピュータ」,つまり商品の入札を受け付ける方法が行われる「通信ネットワークを介して端末と接続されたコンピュータ」が行う旨を一致点としているかのようにもみえる。しかし,他方で,審決は,「一般の購買者が参加可能\な販売」が本願発明では「オークション」であり,引用発明ではそうではない点を相違点2として挙げており,その相違点2の判断の具体的な内容として,引用例3を参照して,一般ユーザーを想定した中古車オークションを行うことのみならず,「中古車オークション」を行う「サーバ」が「データを受け付け」て「取引の成否を決定する」旨を含む技術を「引用例3記載事項A」として認定した上で,引用発明における「一般の購買者が参加可能な販売」に対して上記の「引用例3記載事項A」を適用することによって,相違点2に係る構\成が容易想到である旨を説示している。つまり,審決は,オークションを行うコンピュータがデータを受け付けて取引の成否を決定する点が相違点に含まれていることを前提とした判断を示している。これらの審決の記載を総合的にみれば,審決は,「一般の購買者が参加可能な販売」の「データ受付ステップ」における,購買者の端末からの購入の要求に係るデータを受け付けて記憶する処理,及びそれに続く「取引決定ステップ」において取引の処理を行うことを一致点とし,これらの処理を,本願発明では「前記コンピュータ」が行うが引用発明では「前記コンピュータ」が行わない点,つまり原告のいう「主体の相違」を相違点として整理した上で,その容易想到性を判断しているといえる。してみると,審決が上記主体の相違点を看過した旨の原告の主張は,審決を正解しないものである。\n
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2011.04.21
平成22(行ケ)10016 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年04月14日 知的財産高等裁判所
進歩性違反,記載不備違反無しとした審決が維持されました。
以上の本件明細書の記載によると,本件発明1は,ガラスカッターホイールの刃先に形成した所定形状の突起により,ガラスカッターホイールの転動時,ガラス板に打点衝撃を与え,更に突起がガラス板に深く食い込むために,ガラス板を,不要な水平クラックが発生しないまま,板厚を貫通するほどの極めて長い垂直クラックを発生させて,ガラス面をスクライブすることをその技術内容とするものである。ウ 「打点衝撃を与える所定形状の突起」の意義について前記イの本件発明1の技術内容によると,特許請求の範囲における「打点衝撃を与える所定形状の突起」の技術的意義は,不要な水平クラックを発生させずに,ガラス板に板厚を貫通するほどの極めて長い垂直クラックを発生させることを可能とする形状の突起を意味するものと理解することができる。この点について,原告は,本件発明1の「打点衝撃を与える」という文言自体は,一義的に明確に理解されるべきものであるから,本件明細書を参酌することは許されないなどと主張する。しかしながら,「打点衝撃を与える」という用語自体が明確であったとしても,本件発明1と引用発明1ないし3との対比の際,「打点衝撃を与える所定形状の突起」という一連の記載の技術的意義を明らかにするために,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された技術的事項を参照して認定することに問題はなく,原告の主張は採用できない。本件審決は,本件明細書において,刃先ではなく,両傾斜面に条痕を形成した従来技術の刃先によっては,本件発明の作用効果を奏しないとされている(【0005】)から,上記対比の際,【0009】の記載を参酌して,「打点衝撃を与える所定形状の突起」の技術的意義を明らかにしたものにすぎない。\n
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2011.04.21
平成22(行ケ)10239 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年04月14日 知的財産高等裁判所
CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
以上によれば,情報処理システムにおいて辞書を用いたデータ変換処理を行う際に,検索時間の短縮化という効果を求める引用発明には,データの変換時ではなく,変換に先立って予めデータをメモリ上に展開しておくことで処理を更に高速化することができる周知技術を組み合わせることについて十\分な動機付けがある。なお,データをメモリ上に全て展開しておけば,高速処理が可能である反面,大きなメモリ容量が必要となり,メモリ展開にも時間がかかるようになることは,技術的に自明であって,当業者は,これらの得失を当然に勘案した上で周知技術の組合せを検討するものであるといえるから,この点において,上記の動機付けが妨げられるものではない。したがって,当業者は,前記周知技術に基づき,引用発明に対して相違点2に係る構\成を適宜に組み合わせることができるものというべきであり,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
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2011.04.12
平成22(行ケ)10217 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年04月07日 知的財産高等裁判所
CS関連発明について進歩性なしとの審決が維持されました。
甲第1号証の段落【0015】には,「処理装置1」が店舗,事業グループのセンタ又は「VANセンタ」等に設置される旨が,段落【0022】には,「処理装置1」が店舗に設置されるか,大規模なシステムの場合には計算センタ,事務処理センタに設置される旨が,段落【0085】には,「キャッシュディスペンサなどの銀行端末に同様な機能を追加することにより,設備流用によるシステムコストの低減,銀行・店舗のタイアップよるサービスの強化を図ることができる。」との記載があるから,甲1発明の「処理装置1」をネットワークに接続することにより,ネットワークを通じて販売促進のためのサービスポイントの発行・管理の機能\を果たすことが,甲1発明においても除外されていないことは明らかである。また,前記のとおり,銀行の決済システムを構成するキャッシュディスペンサ等の銀行端末に,サービスポイントの発行・管理を行うという異種のサービスを提供する構\成を追加し得ること(段落【0085】)は,甲第1号証において銀行の決済システムの個性に着目した記載がされていないことにも照らせば,サービスポイントの発行・管理以外のサービスを提供する端末にサービスポイントの発行・管理の機能を追加し得ることを示唆するものであるところ,銀行端末は通常銀行が管理・運営するネットワークに接続されているから,これはさらに,サービスポイントの発行・管理以外のサービスを提供するネットワークにサービスポイントの発行・管理の機能\を追加し得ることも示唆するものである。ところで,本件出願当時,各加盟店に設置された端末をネットワークで相互に接続して,例えば売買代金の決済処理を行ったり,販売すべき物品の管理を行う程度のことは,当業者の技術常識ないし周知技術であったことが明らかである(甲第1号証の段落【0003】,【0004】,【0023】,甲第10号証(本件明細書)の段落【0002】,【0003】参照)。そうすると,審決が説示するとおり,甲第1号証においても,「加盟店ごとに設置された複数の加盟店端末を備えたネットワーク」に「処理装置1により点数の発行・集計を行うサービスポイントの点数管理システム」の機能を追加することが示唆されていると解して差し支えない。したがって,甲第2号証(特開平7−73247号公報)や甲第3号証(特開平7−210763号公報)で各加盟店に設置された端末装置とホスト装置とをネットワークで接続して,サービスポイントの発行・管理を行う構\成が開示されていることにもかんがみれば,本件出願当時,当業者において,甲1発明に基づいて,相違点1に係る構成に容易に想到することができたというべきであって,これと同趣旨の相違点1の構\成に係る審決の容易想到性の判断に誤りがあるとはいえない。
イ この点,原告は,セキュリティ上の観点から,銀行端末に複数のネットワーク回線が接続されるとしても,接続しているネットワークを適宜切り替えるようにするのが常識的であり,顧客は銀行端末機能とサービスポイント点数管理機能\のいずれかを適宜選択して使用することになる等と主張する。しかしながら,仮に銀行の決済システムを構成する端末に高度のセキュリティ上の配慮が必要になるとしても,他のサービスを提供するネットワークを接続してはならなかったり,銀行の決済機能\とサービスポイントの発行・管理等の機能を一つの端末で同時に使用してはならないまでの理由はなく,単にセキュリティ上の格段の措置を講ずれば足りるから,原告の上記主張は失当である。\n
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2011.03.30
平成22(行ケ)10256 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年03月23日 知的財産高等裁判所
用途発明について新規制違反無しとした審決が取り消されました。
一般に,公知の物は,特許法29条1項各号に該当するから,特許の要件を欠くことになる。しかし,その例外として,その物についての非公知の性質(属性)が発見,実証又は機序の解明等がされるなどし,その性質(属性)を利用する方法(用途)が非公知又は非公然実施であり,その性質(属性)を利用する方法(用途)が,産業上利用することができ,技術思想の創作としての高度なものと評価されるような場合には,単に同法2条3項2号の「方法の発明」として特許が成立し得るのみならず,同項1号の「物の発明」としても,特許が成立する余地がある点において,異論はない(特許法29条1項,2項,2条1項)。もっとも,物に関する「方法の発明」の実施は,当該方法の使用にのみ限られるのに対して,「物の発明」の実施は,その物の生産,使用,譲渡等,輸出若しくは輸入,譲渡の申出行為に及ぶ点において,広範かつ強力といえる点で相違する。このような点にかんがみるならば,物の性質の発見,実証,機序の解明等に基づく新たな利用方法に基づいて,「物の発明」としての用途発明を肯定すべきか否かを判断するに当たっては,個々の発明ごとに,発明者が公開した方法(用途)の新規とされる内容,意義及び有用性,発明として保護した場合の第三者に与える影響,公益との調和等を個々的具体的に検討して,物に係る方法(用途)の発見等が,技術思想の創作として高度のものと評価されるか否かの観点から判断することが不可欠となる。・・・以上によれば,本件特許発明における白金微粉末を「スーパーオキサイドアニオン分解剤」としての用途に用いるという技術は,甲1において記載,開示されていた,白金微粉末を用いた方法(用途)と実質的に何ら相違はなく,新規な方法(用途)とはいえないのであって,せいぜい,白金微粉末に備わった上記の性質を,構\成Dとして付加したにすぎないといえる。すなわち,構成Dは,白金微粉末の使用方法として,従来技術において行われていた方法(用途)とは相違する新規の高度な創作的な方法(用途)の提示とはいえない。これに対し,被告は,本件発明は,白金微粉末における,新たに発見した属性に基づいて,同微粉末を「剤」として用いるものである以上,新規性を有すると主張する。しかし,確かに,一般論としては,既知の物質であったとしても,その属性を発見し,新たな方法(用途)を示すことにより物の発明が成立する余地がある点は否定されないが,本件においては,新規の方法(用途)として主張する技術構\成は,従来技術と同一又は重複する方法(用途)にすぎないから,被告の上記主張は,採用の限りでない。本願審査の段階において,還元水としての用途については,削除されたものと認められる(甲21参照)が,そのような限定が付加されたとしても,従来技術を含む以上,本件特許発明の新規性が肯定されるものとはいえない。
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2011.03.18
平成22(行ケ)10237 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年03月17日 知的財産高等裁判所
一致点の認定誤りを理由として、進歩性なしとの審決が取り消されました。
本件審決は,引用発明の「水熱反応装置」は,水熱反応処理を行うから,本願発明の「水処理装置」と「処理装置」の点で共通すると認定し,処理の内容に関して実質的に対比することなく,「処理装置」という部分が共通すると判断した。イ しかし,本願発明の「水処理装置」は,被処理水を処理する装置であって,水は処理の対象であるのに対し(【0001】【0006】),引用発明の「水熱反応装置」は,水熱反応を行う装置であって,水は有機物の酸化分解を促進する水の超臨界又は亜臨界状態を形成するための媒体であり,水自体は処理の対象とはいえない(【0003】【0009】【0010】)。このように,両者は,水の役割という点において,異なるものであり,技術分野においても異なるものということができる。・・・このように,両者は,容器内の温度状態も異なっている。エ よって,引用発明の「水熱反応装置」は,水熱反応処理を行うから,本願発明の「水処理装置」と「処理装置」の点で共通するということができるとした本件審決の一致点の認定には,誤りがある。
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2011.03.17
平成22(行ケ)10273 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年03月08日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が、動機づけがないとして取り消されました。
これに対し,審決は,上記のとおり,「赤外光に対し格別に優れた透過性を有するインクを用いなくても,閾値δ2を適当な値に設定すれば,カバーフィルム4上の異物を印刷部9と区別して判定することができることは明らかである。」と述べるところ,赤外光に対し透過性を有するインクを用いない場合には,印刷部の明度が一定程度低下し,印刷部上に印刷部と同程度の明度を有する異物が存するときには,当該異物が判定できないこととなる(異物の明度が既に判明している場合には,その明度より高く,かつ,印刷部の明度より低く閾値δ2を設定すれば異物が判定できるが,そのような場合が一般的であると解することはできない。)。したがって,審決の上記説示は,引用発明1の技術課題が解決できない従来技術を示したものにすぎず,引用発明1に対して引用発明2の構成を適用することについての動機付け等を明らかにするものではない。・・・そもそも,「塗料」又は「インク」に関する公知技術は,世上数限りなく存在するのであり,その中から特定の技術思想を発明として選択し,他の発明と組み合わせて進歩性を否定するには,その組合せについての示唆ないし動機付けが明らかとされなければならないところ,審決では,当業者が,引用発明1に対してどのような技術的観点から被覆顔料を使用する引用発明2の構\成が適用できるのか,その動機付けが示されていない(当該技術が,当業者にとっての慣用技術等にすぎないような場合は,必ずしも動機付け等が示されることは要しないが,引用発明2の構成を慣用技術と認めることはできないし,被告もその主張をしていない。)。(4) この点について,被告は,引用例2の段落【0006】の記載を根拠に,色相,着色力及び分散性に優れているのが好ましいことは,インキや塗料の顔料について一般的にいえることであり,引用発明1のインクについてもあてはまることであるから,引用発明1のインクとして引用発明2の油性塗料を適用してみようという程度のことは,当業者が容易に考えつくことであると主張する。確かに,インクや塗料において,色相,着色力及び分散性に優れているのが一般的に好ましいと解されるところ,それに応じて,色相,着色力,分散性などのいずれかに優れていることをその特性として開示するインクや塗料も,多数存在すると認められるのであり,その中から,上記の一般論のみを根拠として引用発明2を選択することは,当業者が容易に想到できるものではない。
◆判決本文
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2011.03. 1
平成22(行ケ)10162 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年02月24日 知的財産高等裁判所
一致点の認定に誤りがあるとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
原告らは,引用発明1の皮革片はカップ状の裾の部分しか接合しておらず,本件発明1の接合部とは異なっているので,「接合部」が設けられる点を一致点とした審決の認定に誤りがあると主張する。上記1で認定したとおり,本件発明1は,皮革片の周縁部を折り曲げ,折り曲げ部に設けられる接合部において,隣接する皮革パネルと接着するという構成をとるものである。このように,本件発明1における「接合部」は,接着するための部位であるから,一定の領域を有する「面接触」を要するものと解される。これに対し,上記2のとおり,引用発明1は,カップ状の皮革パネルの裾部分(周辺端面)のみを接触させたものであり,接触している部分は線接触であると認めるのが自然である。そうすると,引用発明1における皮革片の接触部は,接着するための接合部とはいえず,本件発明1における接合部に相当するということはできないから,この点を一致点とした審決の認定は誤りである。そして,「接合部」の有無は,皮革パネルの接着に関する相違点2の前提となるものであって,この点の相違も含めて相違点2についての本件発明1の構\成の容易想到性を判断すべきなのに,審決はこれを怠っている。したがって,取消事由1は,理由がある。
◆判決本文
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2011.02.18
平成22(行ケ)10202 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年02月17日 知的財産高等裁判所
CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
原告は,本件補正発明と引用発明1とでは,目的,課題及び作用効果が相違しており,本件補正発明のように,Webページからメール作成画面に切り換えて表示するとともに,表示されていたWebページのURLを当該メールに貼り付け,メール送信完了後に先に表示していたWebページに表示を戻すことまでを含めた一連の制御を行うことは,引用発明1では想定し得ないと主張する。しかしながら,前記ア(イ)のとおりの引用発明2のWWWブラウザと電子メール送受信機能とを備える携帯電話は,WWWブラウザ機能と電子メール送受信機能\とを実現する情報処理端末であるということができ,他方,引用発明1は,前記(1)ア(エ)のとおり,閲覧中のWebページのURL情報をメールに貼り付けて送信しようとするものであって,WWWブラウザ機能と電子メール送受信機能\とを実現する情報処理端末であるコンピュータにおいて,これらの両機能を連係しようとするものである。そうすると,引用発明1におけるWWWブラウザ機能と電子メール送受信機能\を実現し,これらを連係しようとするコンピュータに換えて,同じく,WWWブラウザ機能と電子メール送受信機能\を実現する情報処理端末である引用発明2の携帯電話のような携帯端末を採用することの動機付けが認められるものである。そして,このような引用発明において,携帯電話のような携帯端末を採用することによって,アンテナを介して信号を送受信する無線部が備わることになる。(ウ) また,前記1(2)の記載によると,本件補正発明は,簡単な操作で閲覧中のWebページのURLをメールに貼り付けて送信することができるようにして利便性を向上しようとするものである。これに対し,前記(1)ア(ア)及び(イ)のとおり,引用発明1は,閲覧中のWebページのURLを伝えるに際し間違いやすいことから,ほとんどのメールソフトに付いているアクティブURLの機能を利用して,閲覧中のWebページのURL情報をメールで送信するに当たって,Outlook ExpressやNetscape Messengerを使えば,ブラウザから直接URL情報をメールで送信でき,これによって,閲覧中のWebページのURL情報を簡単に送信することができるというものである。(エ) そうすると,本件補正発明と引用発明1とのいずれも,閲覧中のWebページのURL情報を簡単な操作でメールに貼り付けて送信しようとするものであって,その更なる動機が,本件補正発明では,ユーザは小さなキーを何度も押し下げる必要があり,煩雑な操作をしなければならず,不便であるとの問題点があったことであり,引用発明1では,WebページのURLを伝える場合の間違いを防ぐためであったこととの点において,仮にこれらが相違するということができるとしても,上記の閲覧中のWebページのURL情報を簡単な操作でメールに貼り付けて送信したいとし,それを実現しようとするものであるという点で,目的,課題及び作用効果が一致しているものということができる。
◆判決本文
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2011.02. 9
平成22(行ケ)10056 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年02月08日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が、取り消されました。
しかし,この審決の判断の流れは,・・・このような一般的抽象的な周知技術を根拠の一つとして,相違点に関する容易想到性判断に至ったのは,本件発明3の技術的課題と動機付け,そして引用発明との間の相違点1ないし3で表される本件発明3の構\成の特徴について触れることなく,甲第3号証等に記載された事項を過度に抽象化した事項を引用発明に適用して具体的な本件発明3の構成に想到しようとするものであって相当でない。その余の自明課題,設計事項及び周知技術にしても,甲第3号証等における抽象的技術事項に基づくものであり,同様の理由で引用発明との相違点における本件発明3の構\成に至ることを理由付ける根拠とするには不足というほかない。(4) 上記のとおり,周知技術等に基づいてする審決の判断は是認できないが,甲第3号証等が開示する技術的事項も踏まえて念のため判断するに,甲第3,21,22号証の液体インク収納容器において,記録装置と液体インク収納容器の間の接続方式につき共通バス接続方式が採用されているかは不明であって,少なくとも甲第3,21,22号証においては,共通バス接続方式を採用した場合における液体インク収納容器の誤装着の検出という本件発明3の技術的課題は開示も示唆もされていないというべきである。そして,上記技術的課題に着目してその解決手段を模索する必要がないのに,記録装置側がする色情報に係る要求に対して,わざわざ本件発明3のような光による応答を行う新たな装置(部位)を設けて対応する必要はなく,このような装置を設ける動機付けに欠けるものというべきである。そうすると,甲第3,21,22号証に記載された事項は,解決すべき技術的課題の点においても既に本件発明3と異なるものであって,共通バス接続方式を採用する引用発明に適用するという見地を考慮しても,本件発明3と引用発明との相違点,とりわけ相違点2,3に係る構成を想到する動機付けに欠けるものというべきである。\n
◆判決本文
◆関連する侵害訴訟控訴審はこちらです。平成22(ネ)10064
◆関連する侵害訴訟控訴審はこちらです。平成22(ネ)10063
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2011.02. 7
平成22(行ケ)10184 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年02月03日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした拒絶審決が取り消されました。
以上のとおり,引用例1及び2には,膨張弁のパワーエレメント部と樹脂製の弁本体の固定に当たり,弁本体の外周部にインサート成形した固着部材に雄ねじを,上端部が屈曲した筒状の連結部材の内側には雌ねじを,それぞれ形成して,両者をねじ結合により螺着させるという本件補正発明の相違点2に係る構成を採用するに足りる動機付け又は示唆がない。むしろ,引用発明は,それに先行する本件先行発明の弁本体が金属製であることによる問題点を解決するためにこれを樹脂製に改め,併せてパワーエレメント部と弁本体とを螺着によって固定していた本件先行発明の有する課題を解決するため,ねじ結合による螺着という方法を積極的に排斥してかしめ固定という方法を採用したものであるから,引用発明には,弁本体を樹脂製としつつも,パワーエレメント部と弁本体の固定に当たりねじ結合による螺着という方法を採用することについて阻害事由がある。しかも,本件補正発明は,上記相違点2に係る構\成を採用することによって,パワーエレメント部の固定に強度不足という問題が発生せず,膨張弁の動作に不具合が生じるおそれもなく,またその強度不足によって生ずる水分の侵入により不都合が生じるというおそれも発生しないという作用効果(作用効果1)を発揮することで,引用発明が有する技術的課題を解決するものである。したがって,当業者は,引用発明,本件オリフィス構成,甲8技術及び周知技術に基づいたとしても,引用発明について相違点2に係る構\成を採用することを容易に想到することができなかったものというべきである。
エ 被告の主張について
以上に対して,被告は,パワーエレメント部の弁本体への固定手段としてどのような手段を用いるかは当業者が適宜選択すべきことにすぎず,螺着という方法が周知技術であり,かしめ固定に様々な問題があることも技術常識であるし,引用例1の本件先行発明に関する記載が,本件先行発明における螺着の不具合を示しているにすぎないから,螺着という方法の採用自体を妨げるものではなく,当業者が,引用発明における固定手段としてかしめ固定に代えて螺着を採用することが容易にできた旨を主張する。しかしながら,ねじ結合による螺着及びかしめ固定にそれぞれ固有の問題があることが周知ないし技術常識であるとしても,引用発明は,そのような技術常識の中で,あえて本件先行発明が採用する螺着の問題点に着目し,これを解決するためにかしめ固定を採用したものである。すなわち,前記認定のとおり,引用例1は,本件先行発明が採用している螺着という方法を積極的に排斥している以上,相違点2に係る構成について引用発明のかしめ固定に代えて同発明が排斥している螺着という方法を採用することについては阻害事由があるのであって,これに反する被告の上記主張をもって,いずれも相違点2についての容易想到性に係る前記判断が妨げられるものではない。\n
◆判決本文
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2011.02. 1
平成22(行ケ)10075 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年01月31日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が取り消されました。
イ この点について,審決は,前記甲18,19及び32の例から,「換気扇フィルターの使用後に金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とを分別して廃棄すること(を容易にすること)」は,周知の技術的課題であることから,当業者は,甲2に接すれば,上記の課題を解決するため,接着剤成分が溶解または膨潤するものを選択することが容易であると判断している。しかし,審決は,上記課題が周知であるとすると,なにゆえ本件発明1の引用発明(発明A)との相違点に係る構成が容易に想到できることになるのかに関する論理について,合理的な理由を示していない点において,妥当を欠く。のみならず,甲18,19及び32の記載を子細に検討してみても,本件発明1が解決課題としている「金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とが接着剤で接着されている換気扇フィルターにおいて,通常の状態では強固に接着されているが,使用後は容易に両者を分別し得るようにして,素材毎に分別して廃棄することを可能\とすること」と同様の解決課題を示唆するものはない。すなわち,i)甲18,19及び32は,換気扇フィルターの使用後に金属製フィルター枠及びフィルター材の廃棄を容易にするものではあるものの,いずれも,金属製フィルター枠とフィルター材とが「接着剤で接着されている」ことを前提とした発明とは異なる技術を示すものである。また,ii)甲18記載のレンジフード用フィルターは,金属製フィルター枠と不織布製フィルター材が「強固に接着されている換気扇フィルター」ではなく,「金属箔を成形可能な繊維不織布に代えることにより金網フイルターへの取り付けを簡略化すると共に使用後の廃棄に際し,分別することなく全体を容易に家庭ゴミとして処分せしめることを目的とする」ものであり,本件発明1とは,解決課題及び解決手段において異なる。さらに,iii)甲19も,金属箔製の換気扇カバー枠体と金属繊維を用いたフィルターから構成され,フィルター部分と換気扇カバー枠体とを分離する必要性を解消させて,そのまま一体物として出しても問題が起き難く,ゴミとして出す場合の作業性に優れ,かつ,再資源化が容易な換気扇カバーを提供することを目的としており,本件発明1とは解決手段において異なる。すなわち,本件発明1は,フィルター枠とフィルターとの剥離を容易にしようとすることを目的とするのに対し,甲18,19は,一体物としてゴミ出しをしても問題が生じることがないようにして,作業を高めるものであって,本件発明1における,解決課題の設定及び解決手段は,全く逆であって,本件発明1の異なる構\成に想到することを容易とする技術が示唆されているものとはいえない。
◆判決本文
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2011.01.28
平成22(行ケ)10131 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年01月27日 知的財産高等裁判所
進歩性違反無しとした審決が取り消されました。
被告は,甲32には,「ユニット6」を「クッション弁」として用いるこ
とが示されているが,この「ユニット6」をシリンダ装置の全ストロークに亘って
作用させるという技術的思想や,「ユニット6」をシリンダ装置から単独で切り離
してもよいとする技術的思想は,記載も示唆もなされていないと主張する。
確かに,ユニット6は,ピストンロッド8の作動の全領域に亘って作動するもの
ではないが,そうであるからといって,ユニット6を1つの技術的思想として当業
者が把握できないわけではなく,これは,甲32発明におけるユニット6の構成及\nびその技術的役割を具体的に検討して判断されなければならないものと解される。
そして,甲32発明において,ユニット6は,前示のとおり,ピストンロッド8の
ストロークエンドにおいてのみ作動するものではあるが,その技術的内容は,一方
向においては逆止弁が閉じた状態で絞り弁により流量を調整する一方,他方向にお
いては逆止弁が開いて自由流れを許容するという,周知の流量調整弁の一形態であ
る絞り弁にすぎないものである。しかも,甲46の図1,甲47の図2〜4及び甲
64の第2図には,同様に作動する絞り弁の構成が開示され,本件特許の出願時に\nそれ単独で周知の構成であったと認められるのであるから,これを1つの技術的思\n想として当業者が把握することに困難性はないものといわなければならない。
◆判決本文
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2011.01.27
平成22(行ケ)10034 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年01月25日 知的財産高等裁判所
進歩性違反なしとした審決が取り消されました。
周知例3及4において,シングルアーム型ロボットではあるものの,コラム型の昇降機構と台座の旋回機構\を有する構成が開示されており,かかる構\成は,原出願発明に係る特許の出願当時,周知技術であったものということができる。(イ) 引用例においては,引用発明の実施例として,一対のロボットを搬送チャンバ内に配置する構成について開示しており,かかる実施例においては,チャンバ内の床と天井が,アームが取り付けられる支持部材に相当するものということができる。また,引用発明の特許請求の範囲においては,アーム部やハンド全体が上下移動する構\成を排除されているものではなく,引用例にも,ハンドがアーム部に対して昇降する機能や,アーム部及びハンド全体が昇降する機能\が明示されているものである。そうすると,当業者が,引用例の記載から,引用例の実施例において開示された搬送チャンバ内に上下一対に配設されたロボットにつき,「ハンドがアーム部に対して昇降する機能や,アーム部及びハンド全体が昇降する機能\」を有する構成として,搬送チャンバとは無関係に,アーム部とハンド部とを,支持部材を介して周知技術であるコラム型の上下昇降機構\に組み合わせることは,容易であるということができる。
◆判決本文
◆関連事件です。平成21(行ケ)10204平成23年01月25日
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2011.01.14
平成22(行ケ)10063 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年01月13日 知的財産高等裁判所
進歩性違反無しとした審決が維持されました。
そうすると,本件発明において解決すべき課題は,ボイラ等に用いられる,外表面に表\面拡大要素たるピンを設けた熱交換チューブにおいて(段落【0002】),ピンとチューブとの間の溶接接合部やピンの溶接接合部に隣接する部分等に亀裂が生じる結果(溶接割れ),ピンがチューブから破断,脱落する事態を防止するという点にあるものであり,上記課題を解決するための手段として,ピンの材料である炭素鋼の炭素含有率を,チューブ本体の材料である炭素鋼の炭素含有率よりも小さくする等の構成が採用されたものである。したがって,本件発明と審決引用発明とは,当該発明によって解決すべき技術的課題が,前者では溶接接合部等の亀裂防止にあり,後者では酸腐食に対する耐久性の向上等にあって,両者は耐久性の向上というごく抽象的な観点で共通するにすぎず,技術的には相違するものというべきである。また,審決引用発明では表\面拡大要素にほうろう被膜を施すことが大きな要点となっているが,本件発明では表面拡大要素にほうろう被膜を施すことは予\定されていない。そして,審決引用発明においてフィンの材料に炭素含有率が小さい炭素鋼が採用された趣旨も,前記のとおり熱交換性能を損なわないことを前提に,ほうろう被膜の欠陥等の発生を防止し,熱交換チューブの耐久性を発揮することができるようにする点にあるものであって,本件発明でピンの材料の炭素鋼の炭素含有率がチューブ本体の材料の炭素鋼の炭素含有率よりも小さくされた趣旨である溶接接合部等の亀裂防止の点は,審決引用文献においては開示も示唆もされていない。\n
◆判決本文
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2011.01.13
平成22(行ケ)10173 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年01月11日 知的財産高等裁判所
引用文献には記載されていないとして、無効理由無しとした審決が維持されました。
原告は,引用例1には無機着色顔料に白色を混ぜ合わせる際に,石灰に加えて白色顔料である酸化チタンを加えることが示されている旨を主張する。 しかしながら,引用例1は,前記のとおり有色顔料を白色顔料及び体質顔料と並列して記載するにとどまり(【0023】),消石灰等に加える顔料の好例とされる酸化チタンについては消石灰に対する配合割合を詳細に記載しているものの(【0027】),消石灰に無機着色顔料を配合した上で,更に無機白色顔料を配合する場合を想定した具体的な記載がなく(【0024】参照),現に,その記載に係る実施例は,いずれも顔料としては酸化チタンのみを配合したものに尽きている(【0065】〜【0094】)。しかも,消石灰は,それ自体に隠蔽力があり(乙10,17),かつ,白色を呈していることに加えて,無機着色顔料は,一般に白色顔料よりも高い隠蔽力を有する(乙19)。したがって,引用発明1における顔料の配合が,「所望の隠蔽力並びに色彩(明度,色度,彩度)に応じて適宜選択調整することができる」(【0024】)ものであるとしても,消石灰等に無機着色顔料を配合して当該調整を行った場合,隠蔽力及び色彩の調整という目的は,当該配合により達成されてしまうから,これに加えて,あえて無機白色顔料を配合する理由に乏しい。そして,引用例1には,この場合に無機白色顔料を配合することについて,これを示唆するものも含めて,何ら記載がない。したがって,引用例1には,消石灰等に無機着色顔料を配合するに当たり,更に無機白色顔料(酸化チタンを含む。)を配合することについては記載がないものというべきである。 以上によれば,引用例1には,消石灰に酸化チタン(無機白色顔料)を配合することや,消石灰に無機着色顔料を配合することについては記載があるものの,これに加えて,無機着色顔料を消石灰に配合するに当たり,無機白色顔料も配合する旨の記載があるとはいえない。よって,これと同旨の本件審決に誤りはない。
◆判決本文
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2011.01. 5
平成22(行ケ)10208 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年12月28日 知的財産高等裁判所
請求項2についての判断をすることなく出願全体を拒絶することは手続き的に問題なしと判断されました。
すなわち,拒絶査定を受けた出願人が,基本手数料額に,請求項数に一定額を乗じた額を加えた額の手数料を納付しなければ拒絶査定不服審判を受けることができないとの特許法195条2項(別表11)の規定は,特許がされる場合にはすべての請求項について審理判断がされることに対応するものであると解すべきである。同規定があるからといって,特許出願に係る発明中に特許をすることができないものがあるときに,その特許出願を全体として拒絶することについて,妨げとなるものではない(知的財産高等裁判所平成20年(行ケ)第10020号平成20年6月30日判決,最高裁判所平成19年(行ヒ)第318号平成20年7月10日第一小法廷判決・民集62巻7号1905頁参照)。本願の請求項1に係る発明が特許法29条2項の規定に該当して特許を受けることができないものであるときは,本願の請求項2に係る発明がたとえ独立の請求項であって特許性を有する場合であったとしても,その請求項2に係る発明について審理判断するまでもなく,本願は,全体として拒絶されるべきものといえる。\n
◆判決本文
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2011.01. 5
平成22(行ケ)10110 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年12月28日 知的財産高等裁判所
拒絶審決が取り消されました。
以上のとおり,本願発明は,異常事態が発生した場合に,巻上ロープをトラクションシーブに食い込ませ,シーブとロープとの間に十分な把持力が得られるようにして,エレベータの機能\及び信頼性を保証させるものであり,異常事態が発生したときにおける,一時的な把持力の確保を図ることを解決課題とするものである。また,引用文献1記載の発明2も,本願発明と同様に,何らかの原因よって高摩擦材が欠落するような異常事態が生じた場合を想定し,その際,ワイヤロープがU字形またはV字形のトラクションシーブ溝の接触部で接触し,この部分で摩擦力を得ることによって,エレベータ積載荷重を確保させることを解決課題とする発明である。これに対して,引用文献2記載の技術は,上記のような異常事態が発生した場合における把持力の確保という解決課題を全く想定していない。そうすると,本願発明における引用文献1記載の発明2との相違点に関する構成に至るために,引用文献2記載の技術を適用することは,困難であると解すべきである。\n
◆判決本文
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2011.01. 5
平成22(行ケ)10070 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年12月28日 知的財産高等裁判所
進歩性違反無しとした審決が取り消されました。
しかし,引用発明も甲2に記載された発明も,医療関係者が針を患者に穿刺する操作を行うものであり,使用後の針が後退手段により自動的に後退し,ハンドル内に収まる機構である点で共通する。そして,引用発明は,針が患者の体内にある間にラッチ操作をした場合,患者の組織が傷ついたり,不随意に注射器内に患者の血液を吸引したりするという危険性のあることを前提としていると認められる。引用発明は,甲2に記載された従来技術と同様に,後退手段を用いた患者からの急速な針の引抜きにより,患者の組織が傷ついたり,不随意に注射器内に患者の血液を吸引したりするのを防止することを解決課題としていると解するのが自然である。以上によれば,引用発明においても,患者を保護するという解決課題を実現するため,甲2に記載された弾性制動手段を用いることによって,針の後退速度を減少させるとの構\成を適用することが困難であるという理由はない。引用発明に甲2に記載された弾性制動手段を用いることにより,本件発明1の相違点に係る構成に想到することは容易といえる。
◆判決本文
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2011.01. 5
平成22(行ケ)10208 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年12月28日 知的財産高等裁判所
進歩性なしとした審決が、引用文献には、課題もその解決手段のいずれも開示がないとして、取り消されました。
本願補正発明が,特許法29条2項所定の要件を備えているか否かを判断するに当たっては,本願補正発明とこれに最も近い特定の引用発明とを対比し,本願補正発明の相違点に係る構成(技術的事項)について,当業者の出願時の技術常識等に照らして,引用発明から出発して容易に到達できたか否かを検討することによって判断される。ところで,以下のとおり,引用発明には,本願補正発明が目的としている技術的事項(「解決課題」及び「課題を達成するための手段」)についての記載は全く存在しないから,引用発明を基礎として,本件補正発明に至ることはないというべきである。
・・・
引用発明においては,補強状態から補強解除状態への切換操作が可能であるとの特徴的構\成を有し,配管施工後の補強解除状態において,異常荷重によってタイロッド自体を破壊させることによって,配管の相対移動を確保させている。これに対し,本願補正発明においては,タイロッドを補強する手段を設けることの記載はなく,運搬時及び配管施工後において,異常荷重を受けた場合には,取付片内側の低強度ナットの外力吸収機能を用いることによって,タイロッド自体の破損等は防止され,その維持されたタイロッド自体の外力吸収機能\によって,更なる異常荷重を受けた場合であっても,伸縮可撓管又は配管自体の損傷を防止させることを目的としている。このように,引用発明と本願補正発明とは,発明の技術的思想,すなわち発明における解決課題及び課題解決手段を異にする。そうすると,たとえ地中に埋設する流体輸送管や管継手等には地震や地盤沈下などによって変形や破損を引き起こすような大きな圧縮力に対する対応を図ることが課題として周知であり,かつ,低強度ナットに係る技術的事項が周知の技術であったとしても,引用例(刊行物1)に,審決が引用した先行技術である引用発明から出発して相違点2に係る本願補正発明の構成に到達するためにしたはずであるという示唆等が記載されていたと解することはできない。\n
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2011.01. 5
平成22(行ケ)10126 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年12月28日 知的財産高等裁判所
CS関連発明について、無効審決が維持されました。
ア 前記(1)アのとおり,UMLのクラス図や記号は周知の事項である。また,地物が,一般地物・基準地物・被覆地物に分けられ,一般地物が人為的地物・非人為的地物に分けられ,人為的地物が境界・人工物に分けられ,非人為的地物である自然地物のうち水部は,河川水涯線・河川水涯線一条・海岸線・湖沼に分けられること,行政境界に含まれる街区界が複数あること,道路が道路縁,道路路線,歩道自転車道,道路中心線,分離帯に分けられることなど,図5に示された事項は,地図の分野において周知のことといえる。また,図5に示されたように,オブジェクトである地物に属性があり,それが空間属性・時間属性などに分けられることも,地図の分野において当然に認識し得ることである。そうすると,本件発明1の相違点2に係る構成のうち第1の空間データベースのデータを特定する「オブジェクトをUMLクラス図とその属性データで管理する第1の空間データベースのUMLクラス図で規定されたオブジェクトのデータ構\造」との構成,及び第2の空間データベースを特定する「オブジェクトをUMLクラス図とその属性データで管理する第2の空間データベースを構\築する」との構成も,周知の事項から容易に想到し得るものであったと認められ,これらの構\成を,地物の図形データをその図形情報と属性情報で管理する引用発明のデータベースに適用することも,容易に想到し得るものであったといえる。
イ さらに,例えば,オブジェクトの一つである都道府県界が,都道府県コードとしての管理番号,都道府県名称,都道府県界の代表的な地点のXY座標を有するように,各オブジェクトがそれぞれに属性データ又は属性データに付随するデータを有するように構\成することは,地図の分野においては普通に行われることであると推認される。そうすると,本件発明1の相違点2に係る構成のうち第1の空間データベースのデータの特定に係る「オブジェクトの属性データ又は属性データに付随するデータを示すデータ定義」との構\成は,容易に想到し得るものであったといえる。ウしたがって,本件発明1の相違点2に係る構成は,容易に想到し得るものであったとした審決の判断に誤りはない。\n
◆判決本文
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2011.01. 5
平成22(行ケ)10229 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年12月28日 知的財産高等裁判所
理由不備を理由として、進歩性なしとした審決が取り消されました。
当裁判所は,審決には,理由不備の違法があるから,審決は取り消されるべきであると判断する。その理由は,以下のとおりである。審決は,刊行物1(甲1)を主引用例として刊行物1記載の発明を認定し,本願発明と当該刊行物1記載の発明とを対比して両者の一致点並びに相違点1及び2を認定しているのであるから,甲2及び甲3記載の周知技術を用いて(併せて甲4及び甲5記載の周知の課題を参酌して),本願発明の上記相違点1及び2に係る構成に想到することが容易であるとの判断をしようとするのであれば,刊行物1記載の発明に,上記周知技術を適用して(併せて周知の課題を参酌して),本願発明の前記相違点1及び2に係る構\成に想到することが容易であったか否かを検討することによって,結論を導くことが必要である。しかし,審決は,相違点1及び2についての検討において,逆に,刊行物1記載の発明を,甲2及び甲3記載の周知技術に適用し,本願発明の相違点に係る構成に想到することが容易であるとの論理づけを示している(審決書3頁28行〜5頁12行)。すなわち,審決は,「刊行物1記載の発明を上記周知のピンポイントゲート又はトンネルゲートを有する金型に適用し,本願発明の上記相違点1に係る構\成とすることは,当業者であれば容易に想到し得たものである。」(審決書4頁19行〜21行)としたほか,「上記相違点1において検討したとおり,刊行物1記載の発明をピンポイントゲート又はトンネルゲートを有する金型に適用することが容易に想到し得るものである以上,本願発明の上記相違点2に係る構成は,実質的な相違点ではない。」(審決書4頁26行〜29行),「本願発明は刊行物1記載の発明を従来周知の事項に適用しただけの構\\成であることは,上記で検討したとおりである。」(審決書5頁5行〜7行),「刊行物1記載の発明を従来周知の事項に適用することの動機づけとなる従来周知の技術的課題(ウエルドラインやジェッティング等の外観不良の解消)があり,その適用にあたり阻害要因となる格別の技術的困難性があるとも認められない。」(審決書5頁8行〜11行)などと判断しており,刊行物1記載の発明を,従来周知の事項に適用することによって,本願発明の相違点に係る構成に想到することが容易であるとの説明をしていると理解される。そうすると,審決は,刊行物1記載の発明の内容を確定し,本願発明と刊行物1記載の発明の相違点を認定したところまでは説明をしているものの,同相違点に係る本願発明の構\成が,当業者において容易に想到し得るか否かについては,何らの説明もしていないことになり,審決書において理由を記載すべきことを定めた特許法157条2項4号に反することになり,したがって,この点において,理由不備の違法がある。
◆判決本文
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