自動車の自動ブレーキの特許についてのホンダvsマツダの特許権侵害事件です。無効主張がなされ、1審と同じく権利行使不能と判断されました。\n
ア 乙9発明と乙10発明は、ともに制動保持装置(乙10においては坂道
発進補助装置)を備え、それらはブレーキがかかった状態を保持する機
能を有するものであることに照らすと、乙9発明及び乙10発明は、そ\nのような機能を用いる車両である点で共通する技術分野に属するといえ\nる。また、乙10発明と同様に、乙9発明においても、制動保持装置の
故障発生が想定され、それに対処する課題が存在することは当業者には
明らかである。
そうすると、乙9発明に触れた当業者は、上記の制動保持装置の故障
発生という課題を認識し、その課題を解決する点において、乙10発明
を乙9発明に適用する動機があるということができる。
イ これに対し、控訴人は、乙9発明は、制動保持装置26が故障している
か否かを検出する技術思想を有しておらず、故障を検知する乙10発明
を適用する動機付けに欠ける旨主張する。
しかし、上記2(1)エのとおり、乙9発明は、エンジンおよび車両各部
の状態を検出するセンサ群を備えるものであり、車速零信号が出力され
ているときに制動保持信号を出力し、エンジン始動後に制動解除信号を
出力する制動保持解除信号発生手段と、制動保持信号に応動して制動装
置を作動状態に保持し、制動解除信号に応動して作動状態にある制動装
置の作動を解除する制動保持手段とを具備している。そして、乙9発明
において制動保持装置の異常が検知された場合には、上記の乙9発明に
おいて求められている状態、すなわち、制動保持装置の作動によりブ
レーキ液圧が作用し、もってブレーキがかかった状態を保持できなくな
ることは明らかである。そうすると、乙9発明に触れた当業者は、上記
の制動保持装置の故障発生という課題を認識し、その課題を解決するた
め、乙10発明における制動保持装置の異常を検出する信号を付加する
動機付けがあるといえる。
ウ 以上によれば、乙9発明に乙10発明の制動保持装置の故障を検知して
運転手へ警報を発する技術を適用することは当業者が容易に想到し得る
といえる。
そして、上記2(1)イ〜エのとおり、乙9発明が、エンジン自動停止に
より発生する問題を、センサ群からの検出信号に基づいて制動保持装置
を作動させることにより解消する技術思想を有することに照らせば、制
動保持装置の故障を検知し、制動保持装置を作動させることができない
故障が生じた場合には、その検知結果をエンジン自動停止条件の一つと
して用い、相違点1に係る「前記故障検出装置によって前記ブレーキ液
圧保持装置の故障を検出した時に前記原動機停止装置の作動を禁止する」
構成とすることは、当業者が容易になし得た事項といえる。\nよって、乙9発明に乙10発明を適用した際に、本件発明の相違点1
に係る構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たものといえる。\n
◆判決本文
1審はこちらです。
◆令和3年(ワ)28206
対応する審決取消訴訟はこちらです。
◆令和6(行ケ)10018