請求項1で用いた文言「所定の筬打ち角」および「筬打ち角」が、発明の詳細な説明で定義されているにもかかわらず、不明瞭とした審決が維持されました。
裁判所は、「特許発明の構成に欠くことができない事項を明確に記載することが容易にできるにもかかわらず,殊更に不明確あるいは不明りょうな用語を使用して特許請求の範囲を記載し,特許発明に欠くことができない構\成を不明確なものとするようなことが許されないのは,当然のことというべきである。」と判断しました。
問題となった請求項
「織機停止信号により,緯入れを阻止しながら制動停止した織機を再起動するに際し,筬が
所定の筬打ち角以上となるようなクランク角に織機を停止し,開口装置を主軸から切り離し,主軸の1回転相当だけ開口装置を逆転し,開口装置を主軸に連結することを特徴とする織機の再起動準備方法」というものです。
審決では以下のように表示するべきであったと述べ、裁判所の上記理由からすると、これを維持したこととなります。
「織機停止信号により,緯入れを阻止しながら制動停止した織機を再起動するに際し,筬が,
スレイ上に搭載するサブノズルまたはエアガイドが経糸開口から抜け出るときの筬打ち角以上となるようなクランク角に織機を停止し,開口装置を主軸から切り離し,主軸の1回転相当だけ開口装置を逆転し,開口装置を主軸に連結することを特徴とする織機の再起動準備方法。」
◆H15. 3.13 東京高裁 平成13(行ケ)346 特許権 行政訴訟事件
ブラックスボックス化されたチップの実施例が開示不十分か否かが争われました。
裁判所は「第1実施例における各回路要素の動作及び集積回路チップの動作は,明確であり,ブラックボックスであることをもって,各回路要素の製作,実施が不可能であるとはいえない。したがって,本願明細書の第1実施例に係る記載において,同実施例が不明瞭であるとする点があるとはいえない。」として、審決を取り消しました。
◆H15. 3. 6 東京高裁 平成12(行ケ)352 特許権 行政訴訟事件
2003.02. 3
明細書の文言が特定されているかについて争われましたが、裁判所は、本件発明の技術的意義を考慮して、特定されていると判断しました。
「確かに,本件明細書の特許請求の範囲中「前方」の記載は,それ自体一義的に明確ということはできないが,本件明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することにより,上記のとおり「カートリッジタンクの前方」の意味であると解釈することができる。また,本件発明は,気化器によって加熱して発生した灯油蒸気をバーナーで燃焼させるものであるから,気化器とバーナーは隣接して配置されることが技術常識であり,この技術常識を無視し,気化器の位置をバーナーから離れたものとして解釈することは不合理である。」と述べました。
◆H15. 1.29 東京高裁 平成13(行ケ)96 特許権 行政訴訟事件