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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

実施可能要件

平成22(行ケ)10348 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年09月15日 知的財産高等裁判所 

 記載不備および進歩性違反ともに、理由無しとした審決が維持されました。
 前記2(2)エに認定のとおり,引用例4に記載の上記各化合物は,いずれも鎖状のアミンにジチオカルバミン酸が結合した化合物であり,環状アミンにジチオカルバミン酸基が結合した本件化合物1及び2とは化学構造が異なる。したがって,引用例4に上記各化合物の記載があるからといって,これと化学構\造を異にする本件化合物1及び2が飛灰中の重金属を固定化できることを示唆することにはならない。また,前記2(2)アに認定のとおり,引用例1には,ジチオカルバミン酸基を有する低分子量の化合物の中から,飛灰中の重金属固定化剤として本件各化合物を想起させるに足りる記載又は示唆があるとはいえず,前記2(2)イに認定のとおり,引用例2には,そこに記載の化合物又は本件各化合物が廃棄物等の焼却により生じる飛灰を水やpH調整剤と混練するという環境下で,そこに含まれる多様な物質の中で鉛等の重金属と錯体を形成し,これを固定化するものであることについては何らの記載も示唆もない。さらに,前記2(2)ウに認定のとおり,引用例3に記載のピペラジンジチオカルバメート(I)及びピペラジンビスジチオカルバメート(II)は,それぞれ本件発明における本件化合物1及び2に相当し,引用例3は,本件化合物1及び2のようなジチオカルバミン酸基を有するキレート剤が白金属元素と錯体を形成することを明らかにしているものの,それが廃棄物等の焼却により生じる飛灰を水やpH調整剤と混練するという環境下で,そこに含まれる多様な物質の中で鉛等の重金属と錯体を形成し,これを固定化するものであることについては何らの記載も示唆もない。したがって,引用例3には,本件化合物1及び2のキレート剤が飛灰中の重金属固定化剤として利用できることについてまで記載や示唆がなく,引用発明4と引用例3の記載を組み合わせて本件発明1の相違点3に係る構成を想起させるに足りる動機付けがないというほかない。\n

◆判決本文

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平成22(行ケ)10252 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年04月26日 知的財産高等裁判所

 記載不備ありとした審決が維持されました。
 上記5つの具体例を照らし合わせると,ZrO2及びSrOの含有量が増えるほど減衰係数が小さくなる傾向が認められるものの,比較例1,比較例2及び参考例1は,いずれもZrO2及びSrOの含有量が共に0重量%であるが,減衰係数は様々な異なる値となっている上,参考例1はZrO2及びSrOの含有量が共に0重量%であるにもかかわらず,「低音響波損ガラス」である「0.25dB/cm以下」の条件を充たしている。また,それぞれの具体例では,その他の成分についても変更されていることから,ZrO2及びSrO以外の成分による影響が生じている可能性があり,ZrO2及びSrOの含有量と減衰係数の関係が正確に導出されているのか不明といわざるを得ない。むしろ,上記具体例からは,ZrO2及びSrOの含有量のみから音響波減衰への作用・効果を予\測することは困難であって,ZrO2及びSrOの含有量が請求項1で特定される所定の範囲であっても,他の成分等により所定の効果(音響波減衰の低減)を得られない場合があることを示唆する結果であるといえる。よって,ガラスの成分と音響波減衰係数との関係について,原告が主張する出願時の技術常識を参酌したとしても,上記の5つの具体例から,音響波減衰を低減できるという本願発明の効果が得られる範囲として,ZrO2及びSrOのうち少なくとも一方の成分を1重量%以上含むことが裏付けられているとはいえない。(6) そうすると,本願明細書の発明の詳細な説明は,出願時の技術常識を参酌したとしても,ZrO2及びSrOのうち少なくとも一方の成分を1重量%以上含むのであれば音響波減衰を低減できるという効果が得られると,当業者において認識できる程度に具体例を開示して記載されたものではない。

◆判決本文

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平成22(行ケ)10247 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年04月14日 知的財産高等裁判所

 物の製造方法が記載されていないとして実施可能要件を満たさないとした審決が取り消されました。
 本件審決は,i)本願発明1で用いられる炭素膜の製造工程は,上記イの(ア)(イ)(エ)が必須の製造工程であるが,同(ウ)(オ)(カ)は選択的なものであること,ii)本願発明の製造工程は,従来の「ダイアモンド状の炭素あるいはCVDダイアモンド膜」の製造方法として甲1刊行物及び甲2刊行物に記載されている製造工程と実質的に同じものであり,その製造条件は,従来の「ダイアモンド状の炭素あるいはCVDダイアモンド膜」の製造方法として上記刊行物に記載されている製造条件を含むから,発明の詳細な説明に記載されている炭素膜の製造工程は,当該製造工程により従来のダイアモンド状の炭素あるいはCVDダイアモンド膜が製造できても,それを超える本願発明1に係る炭素膜の製造を保証するものではないこと,iii)炭素膜の製造方法における温度,圧力等の製造パラメータが多数あり,かつ,その数値範囲もCVDダイアモンド膜が製造できる数値を含んでいることから,当業者は,種々の製造パラメータにおける適正な範囲やそれらの組合せ,その他の製造パラメータについて更に特定して,所望の特性を有する炭素膜を製造する方法を見つけ出さなくてはならず,当業者が過度の試行錯誤を強いられること,iv)したがって,本願発明1の電子放出デバイスが有する「炭素膜」を実施するための製造方法に関して,発明の詳細な説明には,従来のダイアモンド膜を含む一般の「炭素膜」を製造する方法が記載されているにすぎず,請求項1に記載したUVラマンバンドに関する特性を有する特定の炭素膜を実施するための製造方法が,明確かつ十分に記載されているものとはいえないし,本願発明1の「炭素膜」を得るための具体的な製造方法が,当業者の技術常識であったともいえないと判断した。イ しかしながら,本件審決の上記i)ないしiii)の判断は,以下のとおり,誤りである。

◆判決本文

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平成22(行ケ)10249等 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年04月07日 知的財産高等裁判所

 実施可能要件違反ありとした無効審決が取り消されました。
 審決は,「訂正明細書の実施例4はタイプIの透明ガラス製アンプルにセボフルランと水を入れてフレームシールしたものであるから,そこで問題となるルイス酸は,そのほとんどがガラス容器に由来するものであると認められ,セボフルランの製造,輸送,貯蔵工程等,セボフルランがさらされる環境下において存在し得るガラス容器に由来するルイス酸以外のルイス酸が及ぼす影響を考慮に入れたものではない。・・・訂正明細書の各実施例はガラス製の容器に関するものだけである。そうすると,本件数値範囲・・・の下限である206ppmの水が存在する場合について,・・・実施例4において,40°Cの恒温装置に200時間置くとの条件下にセボフルランの分解が抑制することができた1例があることをもって,セボフルランを含有する麻酔薬組成物中の水の量を本件数値範囲・・・とすることによって,セボフルランがルイス酸によってフッ化水素酸等の分解産物に分解されることを防止し,安定した麻酔薬組成物を実現するという所期の作用効果を奏するものと当業者が理解し得ると認めることはできない。」と説示する。確かに,訂正明細書の2頁10行ないし17行には,容器であるガラスの成分である酸化アルミニウムがルイス酸としてフルオロエーテルを分解する旨が記載されているから,訂正明細書は,ガラス由来のルイス酸を念頭に置いて記載されているとも評価し得る。しかしながら,前記のとおり,訂正明細書の実施例の記載は,各訂正発明のような麻酔薬が通常使用される方法である,ガラス製アンプルに封入して保管する方法を想定してされたものであることが明らかであって,上記の通常の方法を想定したがために実施例の態様が一定のものになっているにすぎない(なお,上記の通常の方法を当業者が選択する限り,当業者が訂正明細書の発明の詳細な説明に記載の手順を踏むことによって,各訂正発明の作用効果を奏し得ることは明らかである。)。また,訂正明細書には「本明細書で用いる『容器』という用語は,物品を保持するために使用することができる,ガラス,プラスチック,スチール,または他の材料でできた入れ物を意味している。」との記載(11頁末行ないし12頁2行)があるから,ガラス以外の材料からなる容器内にルイス酸が存在する態様が除外されていないことは明らかである(なお,訂正明細書の2頁13,14行でも,「ルイス酸のソースは・・・酸化アルミニウムであり得る。」と記載されているにすぎず,ルイス酸の源が酸化アルミニウムであるとか,容器のガラス由来の物質であると必ずしも断定されているわけではない。)。そして,訂正明細書の発明の詳細な説明の記載の内容に照らせば,ガラス以外の材料から成る容器内にルイス酸が存在する場合においても,当業者において,上記記載に従って手順を踏むことによって,各訂正発明の構\成を実施することが可能であると解して差し支えない。したがって,審決の上記説示は誤りであり,実施可能\要件の充足の有無に係る前記結論が左右されるものではない。

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平成22(行ケ)10105 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年01月25日 知的財産高等裁判所

 実施可能要件を満たしていないとした審決が維持されました。
 そもそも,本願明細書の「発明の詳細な説明」における「発明を実施するための最良の形態」の項において,発明を具体的に説明している段落【0016】ないし【0052】及び全8図の図面のうち,「等容積プロセス」を経た後の「定圧力プロセス」の後に「等温(燃焼)プロセス」を行うという本願発明に関して具体的に記載している部分は明細書の段落【0050】と図8のみであって,それ以外の部分は「等容積プロセス」の後に「等温(燃焼)プロセス」を行うことを前提としたものについて記載したものであり,本願発明の実施例とはできないものである。そして,本願発明のような「等容積プロセス」を経た後の「定圧力プロセス」の後に「等温(燃焼)プロセス」を行うものと,「等容積プロセス」の後に「等温(燃焼)プロセス」を行うものとでは,燃焼プロセスが異なるものであって,燃料の導入タイミング及び導入量等の条件は当然異なるものになるから,「等容積プロセス」の後に「等温(燃焼)プロセス」を行うものについての条件を,本願発明のような「等容積プロセス」を経た後の「定圧力プロセス」の後に「等温(燃焼)プロセス」を行うものに用いることはできないと考えられる。・・・原告が主張するように本願発明の燃焼サイクルの各プロセスにおける容積V,圧力P,温度T,及びタイミング(クランク角)が計算できたとしても,依然として,各プロセスを生じさせる燃焼噴射タイミングや,各噴射タイミングにおける燃料噴射量をどのように決定するのかが不明である。なぜならば,噴射された燃料が燃焼して熱が生じるには時間的なずれが生じており,燃料噴射タイミングと各プロセスの発生タイミングとは必ずしも一致しないことから,各プロセスにおける容積V,圧力P,温度T,及びタイミング(クランク角)が決まっても,各プロセスを行うための各燃料噴射タイミングと各燃料噴射タイミングにおける噴射量を決定することはできないからである。すなわち,本願発明の各プロセスでの容積V,圧力P,温度T,及びタイミング(クランク角)については,所望する値を算出することは窺い知ることができたとしても,そのような値となる各プロセスを実現するための各燃料噴射タイミングと各燃料噴射タイミングにおける噴射量を決定することについては,当業者に過度の試行錯誤を強いる。
 (3) 以上より,発明の詳細な説明に当業者が容易に本願発明を実施をすることができる程度に発明の構成が記載されているとはいえないとした審決の判断に誤りはない。\n

◆判決本文

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