CS関連発明についての記載不備が争われました。争点は、「一括変換して再登録する再登録手段」について技術的な矛盾があるかでした。裁判所は、36条4項及び6項違反とした審決を取り消しました。
◆H16.12.27 東京高裁 平成16(行ケ)209 特許権 行政訴訟事件
2004.10. 5
「暗号モード」という文言が不明瞭として36条4項、6項違反として拒絶した審決が維持されました。その他、新規事項に該当するかも争点となっていましたが、こちらについては判断することなく、請求が棄却されました。
裁判所は「本願明細書の特許請求の範囲に記載される「暗号モード」は、その意味・内容をそれ独自で規定することができないばかりでなく、「暗号」や「暗号等」を手がかりとしても規定することができないことから、不明瞭な記載であると解さざるを得ないところ、本願発明は、この「暗号モード」が適正と判断されると、「監視手段で捕捉したデータを中継側である前記管理コンピュータへセンシング情報として送信するステップ」へと進むものであるから、この「暗号モード」が不明瞭なままでは、該ステップも不明確であって、結局、本願発明の要旨を特定することはできないというべきである」と述べました。
◆H16. 9.30 東京高裁 平成16(行ケ)37 特許権 行政訴訟事件
2004.09. 8
プログラムによるデータ演算処理が具体的でないという理由で拒絶した審決が裁判所でも維持されました。
裁判所は、「”商品に基づく商品コード,商品サイズデータ,デザインデータの一以上と自己の身体のサイズデータをコンピュータにて演算,比較”という記載では,商品コードを用いてどのように演算し,あるいは比較するのか,その処理が不明であるというほかはない」と述べました。
◆H16. 9. 6 東京高裁 平成15(行ケ)325 特許権 行政訴訟事件
2004.02. 5
「・・・水性塗料用低汚染化剤」を「・・・水性塗料用低汚染化剤(水溶化されたものを除く)」とする訂正が、訂正要件を満たしているのかが争われました。
裁判所は、「本件訂正事項に係る「水溶化されたもの」の意義については,訂正明細書の特許請求の範囲の記載だけからは,文言上一義的に明確に理解することができるとはいえない。イ そこで,本件訂正事項の意義を解釈するため,訂正明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌する。・・・被告主張のように,「水溶化されたもの」が「水溶化という反応処理を施したものであれば,その反応処理の程度を問わず,すべて含む」ものであると解釈したとすると,本件訂正発明1の水性塗料用低汚染化剤は,「(水溶化されたものを除く)」という本件訂正事項を付加することによって,エマルションを形成する化合物になる場合を含め,規定した物質がすべて除かれてしまうか,又は,登録明細書に記載されていない全く別の方法によって当該低汚染化剤を生成するという新規事項を付加したことによって,本件訂正発明1それ自体が無に帰してしまうという極めて不合理な結果を生ずることになる。これに対し,原告主張のように,「水溶化されたもの」が「水溶性化合物」と同義であると解すれば,上記のアルコキシシランの縮合物とポリオキシアルキレン基を含有する化合物とを反応させる方法によって得られた生成物のうち,水溶性化合物となった場合を除外し,特許請求の範囲を,当該生成物がエマルションを形成する化合物となる場合のみに限定するとの趣旨であると合理的に理解することができ,以上の点は,訂正明細書に接した当業者が容易に理解するところであると認められる。以上によれば,本件訂正事項に係る「(水溶化されたものを除く)」とは,「(水溶性化合物を除く)」の意味であると解するのが相当である。」と訂正を認めなかった審決を取り消しました。
◆H16. 2. 4 東京高裁 平成15(行ケ)330 特許権 行政訴訟事件