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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

要旨変更

◆平成20(行ケ)10159 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月26日 知的財産高等裁判所

  要旨変更に基づく出願日繰り下げがあるのか(旧特40条)について争われました。裁判所は要旨変更ではないとした審決を維持しました。
  「上記記載によると,本件当初明細書には,本件特許出願に係る発明の実施例として,アナログ信号である音声による交通情報をデジタル信号に変換したものをアンテナから受信し,これをアナログ信号に変換して音声による交通情報としてスピーカから出力する構成が記載されていると認められる。(3) 上記(2)において,アナログ信号に変換される信号は,音声による交通情報信号がデジタル信号化されたものであるが,上記(1)及び(2)のとおり,本件当初明細書において「交通情報」とされるものには,画面上に表示される渋滞情報のようなものも含まれ,文字信号のような音声以外のデジタル信号による交通情報を変換して音声信号とする技術は本件特許出願前において周知であったと認められることも考慮すると,本件当初明細書に接した当業者は,本件当初明細書にいう「交通情報」には音声信号以外の信号によるものが含まれると理解するものというべきであり,上記の実施例の記載における「交通情報」が「音声による交通情報」であるからといって,本件当初明細書において開示された技術的事項を実施例の記載に限定して解すべきものではない。(4) なお,原告は,「音声信号以外の信号形態(例えば文字列信号)において受信した信号を音声化するためには,音声合成装置を備え,受信信号をその装置を介して音声化することが必須となることは当業者にとって技術常識であるところ,本件当初明細書においては,上記のとおり,ディジタル音声信号の復調,抽出及びD/A変換により音声報知する態様のみを記載しており,音声合成装置を配置することなどは全く記載も示唆もされていない」とも主張するが,上記のとおり,音声信号以外の交通情報信号についての記載があると考えられる以上,当業者は,これを可聴信号に変換するために必要となる技術常識を踏まえて開示内容を理解するのであるから,原告のこの主張は,上記認定に影響を与えるものではない。」

◆平成20(行ケ)10159 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(ワ)4056 損害賠償請求事件 特許権民事訴訟 平成21年03月05日 大阪地方裁判所

   審査においてした補正が要旨変更と判断され、特許法104条の3により権利行使が制限されました。
 「明細書の要旨」とは,旧特許法上その意義を定めた明文の規定がないものの,特許請求の範囲に記載された技術的事項を指すものと解すべきである。したがって,特許請求の範囲を増加し,減少し,変更することは,その本来的意味においては,いずれも明細書の要旨を変更するものということができる。しかし,「出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達前に,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を増加し減少し又は変更する補正は,明細書の要旨を変更しないものとみなす」と定めているから(旧。特許法41条),当該補正が明細書の要旨を変更することになるか否かは,結局のところ,当該補正後の特許請求の範囲に記載された技術的事項が「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内」か否かによって決せられることになる。そして,「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項」とは,当業者によって,出願時の明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,このように導かれる技術的事項との関係において,当該補正が特許請求の範囲の記載に新たな技術的事項を導入するものであるときは,当該補正は,「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということはできず,明細書の要旨を変更するものということになる。以下,このような見地から本件補正が当初明細書の特許請求の範囲に記載された技術的事項に新たな技術的事項を導入するものであるか否かを検討する。
 ・・・イ このように,当初明細書等に開示された発明は,もっぱら,複数の画像表示部で1つの画面を構\成し,かつ,折りたたみ可能とすることにより,不要時には小さく,必要時には大きくすることができ,装置の小型化と画面の大型化を同時に実現できる画像表\示装置であったといえる。そして,このときの各画像表示部の位置関係について,被告は,相互に当接していることを要する旨主張し,当初明細書等の実施例の説明においては「当接して」との文言が記載されている(上記(4)オ(ア))ところ,必ずしも各画像表示部が「当接」すなわち当たり接していなくても,1つの画像表\示がなされたと認識し得るような近接した位置関係にあれば,当初明細書等の上記発明の効果を奏しないとはいえない。したがって,当初明細書等に記載された発明は,「当接する」ことまでは要しないが,少なくとも複数の画像表示部が1つの画像を表\示していると認識し得る程度に近接していることを要するというべきであって,各画像表示部が離れた位置にあることによって1つの画面を構\成しないような画像表示装置は記載も示唆もされていないというべきである。そして,かかる構\成が当業者にとって自明であったともいえない。補正事項?@に係る補正後の特許請求の範囲の記載では「画像表示用の表\示部を複数有し」とされているのみで,「複数の画像表示部が一つの画像表\示がなされたと認識し得る程度に近接している」もの以外の構成を包含し得るものとなっているから,補正事項?@に係る補正は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で,当初明細書等に開示された発明の構成に関する技術的事項に新たな技術的事項を導入するものというべきである。したがって,同補正は,当初明細書等の範囲内においてするものではなく,当初明細書等の要旨を変更するものというべきである。」

◆平成20(ワ)4056 損害賠償請求事件 特許権民事訴訟 平成21年03月05日 大阪地方裁判所

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 >> 新たな技術的事項の導入
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 >> 104条の3

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◆平成17(ワ)21408 特許権侵害差止等請求事件 特許権民事訴訟 平成20年12月24日 東京地方裁判所

  一つの争点が、要旨変更に該当するか否かでした。裁判所は、「変換器の出力電流」を「変換器の出力量」とした補正は要旨変更に当たると判断しました。
 「以上からすると,当初明細書には,制御装置の制御対象を「変換器の出力電流」とするものだけが記載されていたものであり,「変換器の出力電圧」を制御対象とするものは記載も示唆もされておらず,当業者に自明でもなかったものと認めるべきであり,第2回補正は,制御装置の制御対象を,当初明細書に記載された「変換器の出力電流」から,「変換器の出力量」すなわち「変換器の出力電流」又は「変換器の出力電圧」に補正するものであり,演算の基礎を,「電流指令信号と出力電圧検出値」から,「電圧指令信号と出力電流検出値」も含むものに補正するものであり,明細書の要旨を変更するものであると認められる。」

◆平成17(ワ)21408 特許権侵害差止等請求事件 特許権民事訴訟 平成20年12月24日 東京地方裁判所

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