数値の補正の適否が争われました。
「明細書中に記載されている数値につき,正常な数値との間に,当業者の常識からみて誤記であると判断し得るほどの乖離があるとして,これを誤記と認めることが許されるのは,当業者が,その数値をみて,正常とされる数値に照らし技術常識上絶対にあり得ない,と判断できる乖離がある場合,具体的には,明らかに実施不可能であるか,実用上想定し得ない程度の数値である場合である,と解するのが妥当である。・・・明細書における明白な「誤記」とは,もともと,その字句又は語句が,本来記載されるべき字句又は語句を誤って記載したものであることが一見して明らかであり,誤記であることについて議論の余地がない場合をいうのである。前後関係などから誤記であることが一見して明らかであるとはいうことのできない本件においては,当初明細書中の文言が「誤記」と判断されるためには,少なくとも,補正される前の当初明細書における当該文言と当該文言以外の表\現との間に明らかな矛盾があることが,当然の前提として必要とされることになる。しかし,当初明細書においては,上記認定のとおり,・・・S及びStの定義と当初明細書のその余の記載との間には特段の矛盾はない,と解することが可能であり,同明細書に記載された発明を明確に把握することができる。そうである以上,本件補正前の当初明細書におけるS及びStの定義が上記の意味での明白な誤記であると認めることは到底できないのである。」\n
◆H14.11.14 東京高裁 平成13(行ケ)436 特許権 行政訴訟事件
2002.11. 1
図面に基づく訂正事項も記載ありと判断されました。訂正自体は特許庁の判断を認めました。
「要素a〜dに関する記述は十分に明瞭に図面及び訂正前明細書の実施例の記載から読み取ることができる。・・・端部のみに熱融着されていること」について、本件明細書にこれを支持する具体的な文言はない。しかし、第2図において、・・・よって、訂正は明細書の要旨を変更するものでも、新たな事項を明細書中に導入するものでもなく、訂正をもって適法なものであるとした審決の判断に、原告主張の誤りはない。取消事由1は理由がない。」と述べました
◆H14.10.29 東京高裁 平成13(行ケ)501 特許権 行政訴訟事件