2006.09. 5
新規事項であることを前提とした拒絶査定が取り消されました。
「本願当初明細書には,ニッケルの濃度の上限値が1×10 cm を超える場合にはその上限値の範囲内とするためニッケル除去工程が必要であることや,ニッケル除去工程を経ていない薄膜トランジスタの実施例の記載があることによれば,「前記結晶性半導体膜中のニッケル濃度の上限値は,前記ニッケルを除去することにより前記濃度1×10 cm を上回らな」いことを補正事項とする本件第2補正は本願当初明細書に記載した事項の範囲内のものであり,また,本件第2補正は,審決も認定するとおり,明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるから(審決書3頁7行〜12行),本件第2補正は適法である。したがって,本件第2補正が新規事項の追加に該当し,不適法であるとした審決の判断は誤りである。」
◆平成17(行ケ)10767 審決取消請求事件 平成18年08月31日 知的財産高等裁判所
2006.07. 6
訂正を認めた上、無効とすることはできないとした審決が維持されました。裁判所は訂正に関して以下のように述べました。
「訂正前明細書には,当該「支持部」が円形孔からなるものであることを明記する記載はない。しかしながら,訂正前発明の実施例の図面である訂正前明細書添付の図1(甲2)には,固定棚3の外管2aが挿通される部分の下側にも壁面が存在することが見てとれる。上記図1は「固定棚の先端部に円形の孔が設けられ」ていることを明確に示すものではないとの原告の主張は採用できない。そして,「固定棚の先端の支持部」が「円形孔」からなるのであれば「該固定棚は棚受用横桟から分離することはできず,着脱自在ではない」ことになることは,明らかであるから,「該固定棚は棚受用横桟から分離することはできず,着脱自在ではない」ことは,すでに,訂正前明細書及び上記図1に開示されていたということができる。したがって,本件訂正のうち特許請求の範囲請求項1につき「固定棚の先端の円形孔からなる支持部」とする訂正は,「該固定棚は棚受用横桟から分離することはできず,着脱自在ではない。」という発明的特徴を有することを含めて,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるということができる」
◆平成17(行ケ)10520 審決取消請求事件 平成18年07月03日 知的財産高等裁判所
本件特許明細書に記載されていない事項に訂正するものであるので訂正要件を満たしていないとした審決が、維持されました。
「要するに,本件特許明細書において,これに接した当業者が,「アルミニウム」として,いいかえると「不可避的不純物として含まれる量のアルミニウムを含まない」ものとして,個別具体的に明示されているに等しいと認識し得るようなものではなく,存在する一群の不可避的不純物の中に含まれているかもしれないし,含まれていないかもしれないというにとどまるものである。したがって,本件特許明細書には,鉄系材料におけるアルミニウムの含有量が「不可避的不純物として含まれる量を超える量」であるかについての記載は,一切存在しないというほかない。
以上によれば,鉄系材料におけるアルミニウムの含有について,本件訂正事項のように限定することは,本件特許明細書に記載していない事項であるし,本件特許明細書の記載に接した当業者であれば,本件出願時の技術常識に照らして,そのような限定が記載されているのと同然であると理解する自明な事項であるともいえない。」
◆平成17(行ケ)10608 特許取消決定取消請求事件 平成18年06月20日 知的財産高等裁判所