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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

新規事項

平成23(行ケ)10030 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年12月26日 知的財産高等裁判所

 新規事項でないとして訂正を認めた審決が取り消されました。
 以上によれば,当業者は,本件明細書の全ての記載を総合することにより,「共通フラグ」について,設定値についての1ビット(賭け数についての1ビットのフラグを設定する場合は併せて2ビット)のデータであるとの技術的事項を導くことが認められる。イ 他方,本件訂正に基づく「区別データ」は,「複数種類の許容段階に共通して判定値データが記憶されているか該許容段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されているかを区別する」ためのデータであって,「フラグ」であるとの限定や1ビットであるとの限定もないから,1ビットを超えるデータを含むと理解される。また,1ビットを超えてビット数を増大させることができるならば,判定値データの分類を限りなく細かく設定することができるので,上記解決課題に沿わないような記憶態様を作出することが可能となる。すなわち,本件訂正に基づき請求項1に「区別データ」を加入することは,単に,1ビットを超えるデータを含むことになるのみならず,願書に添付された本件明細書に開示された発明の技術思想,解決課題とは異質の技術的事項を導入するものというべきである。ウ そうすると,本件訂正に基づき請求項1に「区別データ」を加入することは,本件明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入することになる。したがって,「前記複数種類の許容段階に共通して判定値データが記憶されているか該許容段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されているかを区別するための区別データ」が,「共通フラグ」について記載した段落【0091】から自明な事項であるとして,本件訂正が,本件訂正前の本件明細書に記載された事項の範囲内においてしたものとした審決の判断は誤りというべきである。

◆判決本文

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平成23(行ケ)10139 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年12月08日 知的財産高等裁判所

 補正が新規事項であると判断した審決が取り消されました。
 以上によれば,当初明細書の前記(2)オ及びキに認定の部分に記載された,本願発明1の最内熱可塑性材料層に狭い分子量分布を有する線形低密度ポリエチレンをメタロセン触媒を用いて重合するとの技術的事項(前記(1)ii)及び当初明細書の前記(2)オないしキに認定の部分に記載された,本願発明1及び5の最内熱可塑性材料層を前記線形低密度ポリエチレン及びマルチサイト触媒で重合して得られた低密度ポリエチレンとの特定の配合割合によるブレンドポリマーであるとする技術的事項(前記(1)iii)は,いずれも,同じく狭い分子量分布を有する線形低密度ポリエチレンからなる樹脂層を有する本願発明2ないし4についても妥当するものと解するのが相当である。このように,当初明細書の上記記載部分は,本願発明1の最内熱可塑性材料層を例示しているものの,当初明細書の全ての記載を総合するとき,本願発明2ないし4において狭い分子量分布を有する線形低密度ポリエチレンからなる各樹脂層についても,「メタロセン触媒で重合して得られた」ものであるとの技術的事項(前記(1)ii)及び上記線形低密度ポリエチレン及びマルチサイト触媒で重合して得られた低密度ポリエチレンとの特定の配合割合によるブレンドポリマーであるとする技術的事項(前記(1)iii)を,いずれも容易に導くことができるものというべきである。エ したがって,本願発明1ないし4の最内熱可塑性材料層等の樹脂層を構成する狭い分子量分布を有する線形低密度ポリエチレンをその製造方法により特定し(前記(1)ii),かつ,本願発明1ないし4の最内熱可塑性材料層等の樹脂層の構成を上記線形低密度ポリエチレン及びマルチサイト触媒で重合して得られた低密度ポリエチレンとの特定の配合割合によるブレンドポリマーであると特定した(前記(1)iii)本件補正は,いずれの点においても,当初明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
・・・
 また,被告は,当初明細書には本件補正発明1が「15〜17のメルトフローインデックス」を有する旨が記載されていない旨を主張する。しかしながら,当初明細書には,前記(2)エに認定のとおり,本願発明1ないし4及び本件補正発明1ないし4の最内熱可塑性材料層等の樹脂層が「5〜20のメルトフローインデックス」を有する旨の記載がある。そして,メルトフローインデックスとは,前記のとおり,樹脂材料の熱溶融時の流動性に関する指標であるところ,本願発明1及び本件補正発明1の特許請求の範囲の記載にある「15〜17のメルトフローインデックス」は,当初明細書の上記記載をより限定するものであり,当初明細書の記載を総合しても,この限定によって何らかの新たな技術的事項を導入するものとは認められないから,メルトフローインデックスを上記のように限定する補正は,明細書の範囲内においてされたものであって,当初明細書には,本件補正発明1ないし4の有するメルトフローインデックスについての記載があるとみて差し支えない。

◆判決本文

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平成23(ワ)22310 特許料請求事件 平成23年10月28日 東京地方裁判所

無審査の実用新案権による侵害事件です。裁判所は、本件発明にいう可変スイッチの技術的意義から、被告製品はその技術的範囲外と認定しました。
 請求の範囲ですが、出願後の補正で「可変スイッチを有する電気炊飯器」として登録されています。
 平成18年3月14日付け手続補正書により補正された【図4】には,「可変スイッチ」に関して,「スイッチ1のタイマースイッチは1分から10分までの可変スイッチとする。これでもって,おこげごはんは自由に作れる。又水分を補給することによって,おかゆごはんも作れる。タイマースイッチは,普通ごはんの出来たあとに作動させるものである。タイマースイッチは,ONを1回おすと1分である。10回おすと10分である。」と説明されており,この記載を考慮すれば,「可変スイッチ」とは,「通常炊飯が完了した後に更に作動させる加熱(追い炊き加熱)を行う時間を可変とすることができるスイッチ」を意味するものと解するのが相当である。すなわち,本件考案は,i)通常炊飯による普通ごはん,ii)通常炊飯完了後に可変スイッチによって決定された任意の時間追い炊き加熱を行うことによるおこげごはん,iii)通常炊飯完了後に水分を補給して追い炊き加熱を行うことによるおかゆごはんの3種類のごはんを作ることを特徴とするものと認められる。
(3) 被告製品の構成について
 被告製品取扱説明書(乙2)によれば,被告製品は,「芳潤炊き」,「エコ炊飯」,「炊込み」,「おかゆ」,「お急ぎ」,「やわらか」,「かため」,「ふつう」という炊飯メニューを有しており,被告製品上部の「操作・表示部」に設けられた「メニュー」ボタン(スイッチ)又は「芳潤炊き」ボタン(スイッチ)を操作することにより,上記各モードを設定するものであることが認められる。しかしながら,被告製品は,炊き上げに要する時間,消費電力等を上記各モードの設定に応じて変更することによって,上記のような様々な炊飯メニューを実現しているのであって(乙2,弁論の全趣旨),本件全証拠を検討しても,被告製品について,通常炊飯が完了した後に追い炊き加熱を行うような動作をしている事実は認められない。すなわち,被告製品における「メニュー」ボタン(スイッチ)や「芳潤炊き」ボタン(スイッチ)は,いずれも炊き始めから炊き上がりまでの条件を設定するもので,通常炊飯が完了した後の追い炊き加熱の時間を設定するものとは認められない。(4) したがって,被告製品に備えられているスイッチは,本件考案における「可変スイッチ」に該当するものではないから,被告製品は本件考案の技術的範囲に属するということはできない。

◆判決本文

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平成23(行ケ)10072 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年09月29日 知的財産高等裁判所

 新規事項による補正による無効理由ありとした審決が、新たな技術的事項を導入するものではないとして、取り消されました。
 以上のとおり,当初明細書等の全ての記載を総合的に判断すると,当初明細書等には,そこに記載の発明の形状に関する説明に当たり,本件補正事項中のi)「当てがう」こと,ii)「挿入」すること,iii)「吊り持ちさせる」こと及びiv)「展示させる」ことの4つの動作の同時並行関係又は時間的な順序関係については,これを同時動作を意味すると解する特段の記載がない一方で,これらの動作の間に同時並行関係又は時間的な順序関係があること,すなわち同時動作を意味すると解することを否定しているものでもないから,本件補正事項は,その中に2回用いられている「ながら」との文言が,動作の同時並行関係を含意しない「…のままで。」との同時状態の意味のほかに,「同時にあれとこれとをする意。」との動作の同時並行関係,すなわち同時動作の意味を有するからといって,当初明細書等の記載から導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものとはいい難い。したがって,本件補正事項を追加する本件補正は,当初明細書等の記載から導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものとまではいえず,そこに記載した事項の範囲内においてされたものであるということができるから,特許法17条の2第3項に違反するとはいえない。そして,本件特許に係る【請求項2】ないし【請求項7】は,いずれも本件発明に関する【請求項1】を引用しているから,本件発明についての本件補正に関する上記判断は,本件特許に係る【請求項2】ないし【請求項7】にも同じく妥当することになる。そして,本件補正事項中の「ながら」が「同時にあれとこれとをする意。」という動作の同時並行関係(同時動作)のみを意味するものと限定的に解釈する本件審決の判断は,その根拠を欠くばかりか,当初明細書等にはこのような上記i)ないしiv)の4つの動作の同時並行関係又は時間的な順序関係についての記載がないから新たな技術的事項を導入しないものとはいえないとすることは,当初明細書等の記載の字句等を形式的に判断するものであって,当初明細書等の全ての記載を総合的に判断しているものとはいえないから,本件審決による本件特許に係る各発明に関する本件補正の適否の判断には誤りがある。

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平成22(行ケ)10373 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年07月21日 知的財産高等裁判所

 補正は新規事項であるとした審決の判断が維持されました。
 このことから,特許請求の範囲の文言上は,商品カタログの基準色画像部分以外の他の部分が基準色画像部分と同一条件でかつ同時に色補正されるように,商品カタログの受信者が基準色画像の色補正を「自己のシステムにおける選択機能」を機能\させずに行うことは特定されているものの,この「自己のシステムにおける選択機能」の意義は明らかでない。
イ 発明の詳細な説明の記載
 この点について,発明の詳細な説明(【0024】)には,「最近コンピューター画像処理技術が急速に発展し,自己の所有するパソコンのモニタに表\示されたデジタル画像色の単純な補正が一般家庭でも容易に出来るようになった。従って,本願発明の場合でも,自己の所有するパソコンのモニタに表\示された基準色のデジタル画像の色を自己が所有するこの基準色画像の色(印刷された基準色画像の色)と比較して目視で両者間の相違が明瞭に認識された場合に,例えば公知のコンピューター画像処理手法(例えばAdobe 社 Photoshop LE-J(登録商標))を用いた色補正処理によって,モニタ表示のデジタル基準色画像の色を自己が保有する印刷基準色画像の色と実質的に合致するように補正すれば,前記デジタル基準色画像と共に表\示されている商品のデジタル画像の色も補正されるので,色品質を重視した商品の選択が効率的に高い精度で可能となる。」と記載されている。
ウ 「自己のシステムにおける選択機能」の意義
 発明の詳細な説明に「公知のコンピューター画像処理手法」として記載された「Adobe Photoshop LE-J」のユーザガイド(以下「本件ユーザガイド」という。)の「第3章:選択範囲の操作」には,選択ツールにより,i)「画像の一部を補正する具体的方法」とii)「画像全体を補正する具体的方法」とが記載されている(甲8の2)。なお,「公知のコンピューター画像処理手法を用いた色補正処理」として,本件ユーザガイドに記載された上記以外の技術的事項があると認めるに足りない。そうすると,「自己のシステムにおける選択機能」とは,受信者所有のパソ\コンのような「自己のシステム」に含まれる,本件ユーザガイドにおけるi)「画像の一部を補正する具体的方法」とii)「画像全体を処理する具体的方法」のことであり,いわゆる「選択ツール」により編集操作の対象として画像の一部又は全部を選択する機能のことをいうものと解される。\n

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