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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

限定的減縮

平成20(行ケ)10432 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年08月20日 知的財産高等裁判所

 補正要件(限定的減縮)違反として補正前のクレームについて拒絶審決がなされました。裁判所は、かかる補正要件違反の判断は誤りであるとして、拒絶審決を取り消しました。
「本件審決は,本件補正のうち特許請求の範囲の補正部分について,「補正後の特許請求の範囲には,各新請求項の記載からして,自動装着機の作動方法,自動装着機,及びシステムに係る発明が記載され,新請求項5及び新請求項6に係る発明は,前記自動装着機に係るものと認められる。一方,補正前の特許請求の範囲にも,各旧請求項の記載からして,自動装着機の作動方法,自動装着機,自動装着機用の交換可能なコンポーネント,及びシステムに係る発明が記載され,旧請求項5に係る発明のみが,前記自動装着機に係るものと認められる。そこで,検討すると,補正事項a(判決注:特許請求の範囲の補正部分)は,自動装着機に係る発明が記載されていた請求項の数を,旧請求項5の1つから,新請求項5及び新請求項6の2つとするもので,請求項の数を増やすものといえ,このような補正は,請求項の削除,限定的減縮,誤記の訂正又は明りようでない記載の釈明のいずれかを目的にしているということはできない。」として,本件補正を却下する決定をした。これに対して,原告は,本件補正の請求項の対応関係をみると,旧請求項5が新請求項5,旧請求項7が新請求項6と対応することが明らかであって,本件審決のいうように請求項の数を増やすものではなく,当該補正に係る部分は,法17条の2第4項2号にいう「特許請求の範囲の減縮」を目的とする場合に該当するから,当該部分がその場合に該当しないとて本件補正を却下した本件審決は誤りであると主張する。以上,要するに,本件審決は,本件補正が自動装着機の発明についての旧請求項5を同じく自動装着機についての新請求項5及び6とするものであることを前提としているのに対して,原告は,新請求項6は,旧請求項5を補正したものではなく,旧請求項7を補正したものであると主張していて,ここに本件補正についてのとらえ方の相違がある。そうすると,仮に,本件補正に係る新請求項6が,原告の主張するとおり,旧請求項7を補正したものであれば,旧請求項7と新請求項6との対応関係を前提に,その補正が法17条の2第4項各号(本件では,原告が主張している同項2号)を充足するか否かを判断することが求められることになるから,本件補正を却下するに当たっても,これを前提として判断される必要があるところ,本件審決は,原告の主張するような請求項の対応関係を前提とする補正について判断を示していないことは明らかであるから,本件補正を却下した本件審決は,その前提を誤った違法なものということになる。・・・上記記載から本件補正の内容についてみると,補正前には,「交換可能\\なコンポーネント(3,5,17)」とされていたものが,本件補正に係る手続補正書においては,「装着ヘッド(5)」に改められていることが明らかである。その結果として,旧請求項の「交換可能なコンポーネント」の記載が新請求項の「装着ヘッド」の記載に補正されているものと容易に理解することができる。また,それは「交換可能\\なコンポーネントは,装着ヘッドとして構成されていることを特徴とする交換可能\\なコンポーネント」として記載されていた旧請求項8が,本件補正に係る新請求項中において当該事項を発明特定事項として加える必要がなく,本件補正に際して削除された理由であると認められるのである。また,旧請求項6は,「幾何学的特性データに対する所属の記憶装置」であることを特定事項としていたが,当該事項は,新請求項の記載中にこれを見出すことができない。ここに,前記認定のとおり,旧請求項6が本件補正に際して削除された理由もある。さらに,新請求項5についてみると,上記のほか,旧請求項5の「定置の基準点」を「定置の基準点としての一つの保持装置(4)」とし,同「求められた」を「,自動装着機(7)内へのマウント前に求められた」とし,同「幾何学的特性データ」を「他の保持装置(4)の幾何学的特性データ」とするとともに,「結合された記憶装置(15,16,18)」を「割り当てられた記憶装置(15)」としたものであると理解することができる。また,旧請求項7の発明特定事項である「記憶装置(15,16,18)は,無接触式に書き込み可能及び,読出し可能\\なメモリとして構成され」ることは,新請求項6に含まれている。ウそうすると,本件補正は,その内容からみても,旧請求項6及び8を削除し,旧請求項7を新請求項6に補正したものと解するほかない。」

◆平成20(行ケ)10432 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年08月20日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10394 特許権 行政訴訟 平成21年05月26日 知的財産高等裁判所

 不明瞭な記載の釈明、および限定的減縮違反については取り消したものの、独立特許要件違反は存在するとして、拒絶審決が維持されました。
 「・・・本件補正前の特許請求の範囲の請求項2の記載は,前記したとおりであって,同記載において,押しピンについては,「…構造である押しピンを内部に収容しうる…」,「…により押しピンを押圧する…」と記載されているにとどまることから,本件審決が判断し,また,被告も主張するように,押しピンは,本願発明2における発明の対象ではなく,発明の対象であるカートリッシが備える構\成の1つとして記載されているにすぎないと理解する余地もないわけではない。他方,請求項2の記載において,押しピンは「筒状部と,筒状部に収容された弾性部材及びピン部とを有し,非使用時にピン部は弾性部材によって筒状部内に収容され,使用時に筒状部の上部に設けられた押入部材が挿入される孔部を通じて押入部材により押圧され,下部に設けられた孔部からピン部先端が外部に突出する構造である」ことが特定されており,本願発明2は,このような押しピンと,「筒状部の上部に設けられた押入部材が挿入される孔部を通じて押入部材により押しピンを押圧する押圧部」を有するものであることによって特定されるカートリッジとによって構\成されるものであると理解する余地もないわけではない。そして,そのような理解を前提にすると,本件補正前の請求項2は,これとは反対に,押しピンを発明の対象とせず,その対象であることが記載上明らかなカートリッジの備える構成の1つとして記載されているにすぎないと理解されなくもない記載となっていたということができるのであって,その意味で,当該記載は法17条の2第4項にいう「明りようでない記載」に当たるといわなければならない。・・・これに対し,補正事項2は,本件補正前の請求項2における「押しピンを内部に収納しうる空洞部と」及び「押しピンのカートリッジ。」の記載を,補正後の請求項1においては,「押しピンと,該押しピンを内部に…収納しうる空洞部と」及び「押しピンおよびそのカートリッジ。」の記載に改めるものであり,その記載内容から,本願発明2が「カートリッジ」だけでなく,「押しピン」も発明の対象とするものであることを明示しようとするものであることが明らかである。そして,上記(ア)のとおり,本件補正前の請求項2の記載からは,「押しピン」と「カートリッジ」と,その両者を本願発明2の対象とするものであったと解することが可能であったところ,その反面,「押しピン」を当該発明の対象とするものではなく,「カートリッジ」のみを対象とするものであったと解する余地もないわけではなく,明りょうでない記載といわざるを得ないものであったのであるから,補正事項2は正にその明りょうでない記載を釈明するものであるということができる。実際,補正事項2による補正前後の記載を比較してみれば,本件補正前の請求項2のように,本願発明2の対象である「押しピン」がもう1つの発明の対象である「カートリッジ」が備える構\成の1つにとどまるかのように記載されていることを前提として,両者の構造を認識し,これらを対比して両者が発明の対象であると理解する場合に比較して,本件補正後の請求項2の記載のように「押しピン」と「カートリッジ」とを並列的に記載したほうが,その趣旨がより明りょうとなっているということができる。この点について,被告は,本件審決の判断と同様に,本件補正前の請求項2に係る発明が「カートリッジ」の発明であって,「押しピン」の発明ではないなどとるる主張するが,本件補正前の請求項2が「カートリッジ」のみを対象とする発明として明りょうに記載されていた場合であれば格別,既に説示したとおり,当該記載が「明りようでない記載」であった以上,被告の主張を採用することはできない。・・・法17条の2第4項4号は,「明りようでない記載の釈明」として補正が許されるのは,「拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る」と規定するところ,被告は,本件においては,「押しピンのカートリッジ」が「明りようでない」との拒絶の理由は示されていないから,補正事項2は「拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするもの」ではないと主張するので,この点についても検討する。甲11によると,平成18年3月22日付け拒絶査定には,本件特許出願は平成17年8月22日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって拒絶されるべきことが記載されていることが認められ,甲7によると,平成17年8月22日付け拒絶理由通知書には,拒絶の理由として,請求項1及び同2に係る発明(本願発明1及び同2)が特許法29条1項3号又は同条2項の規定により特許を受けることができない旨記載されるとともに,請求項2に係る発明(本願発明2)については,引用発明1の画鋲刺入装置において,引用発明2の画鋲を収容することによって,本願発明2のように構\成することは容易である旨記載されていることが認められる。これに対し,補正事項2は,前記認定の経緯からして,本願発明2が「押しピン」と「カートリッジ」と,その両者を当該発明の対象とするものであることを明示することにより,上記拒絶理由通知書において指摘された本願発明2に係る拒絶の理由を回避しようとするものであると認められるから,補正事項2が「拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするもの」であるということが妨げられるものではなく,被告の主張を採用することはできない。・・・原告は,補正事項3に係る補正が本願発明2の「押しピン」を限定する補正であるとして,この補正が法17条の2第4項2号にいう「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものではないとした本件審決の判断に誤りがあると主張するので,以下,検討する。・・・これに対し,補正事項3は,補正前の請求項2においては,「押しピン」の構造が「使用時に…下部に設けられた孔部からピン部先端が外部に突出する」と記載されていたところ,補正後の請求項1においては,その構\造に「使用しないときには手でどの部分に触れてもピン部が動くことはなく,」という限定を付加して記載されているのであって,その記載内容を比較すると,本願発明2における「押しピン」の構造に上記限定を付加するものであると認められる。そして,本願発明2の「押しピン」が特定の構\造を有するものであることは前記で説示したところであるから,このような「押しピン」に上記限定が加えられることにより,使用しないときに手でいずれかの部分を触れればピン部が動く可能性があった本件補正前の「押しピン」が,本件補正後においては「使用しないときには手でどの部分に触れてもピン部が動くことはな(い)」ものに限定されたということができ,本願発明2においては,「押しピン」も当該発明の対象となるものであることも前記ア(ア)で説示したとおりであるから,その構成が限定されることによって,特許請求の範囲は減縮されるものと認めることができる。この点について,被告は,本願明細書の発明の詳細な説明に「使用しない時には…手にとってどの部分に触れてもピン部3が動くことはない」(段落【0006】)との記載があることから,本件補正前の請求項2に記載されていた「押しピン」はそのようなもの(補正事項3による補正後のもの)と理解されるから,補正事項3は本願発明2の「押しピン」を具体的に限定するものではないと主張するが,本件補正前の請求項2には,「押しピン」が「使用しないときには手でどの部分に触れてもピン部が動くことはな(い)」ものであることを示す記載は存在しないから,被告の主張は失当である。なお,被告は,本願発明2の対象は「カートリッジ」のみであって,「押しピン」それ自体は本願発明2の対象ではないから,「押しピン」の構\造に上記制限が加えられたとしても,特許請求の範囲の減縮にはならないとも主張するが,「押しピン」も「カートリッジ」と並んで本願発明2の対象となることは前記アで説示したとおりであるから,この点に関する被告の主張は,その前提において,失当といわなければならない。」

◆平成20(行ケ)10394 特許権 行政訴訟 平成21年05月26日 知的財産高等裁判所

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