出願公告後にした構成要件を追加する補正が、特許請求の範囲を実質上変更するものであり本件特許には無効理由ありとして、損害賠償請求を棄却しました。
「平成6年改正前特許法64条,126条2項が公告決定後の補正につき上記のように補正の要件を規定している趣旨は,特許出願人と第三者との間の利害の調整にあるところ,特許請求の範囲に新たな構成を付加することで表\面的には特許請求の範囲の減縮に当たっても,実質的にはこれによって全く別個の発明になるような場合にまで補正を許容すると,補正後の別個の発明の技術的範囲について補正前の特許発明の出願日に遡って出願公告に伴う仮保護の権利を与えることとなり,特許公報の記載を信頼して行動する第三者に対して不測の不利益を与えることとなるからである。そして,この場合において,補正前の特許請求の範囲に係る発明に新たに付加された構成が,同発明の特許出願当時,当業者にとって周知の技術手段(周知技術)に該当しない場合には,補正前の特許発明と補正後の特許請求の範囲の記載に係る発明は,特段の事情のない限り,別個の発明というべきである。けだし,周知の技術手段を付加するものである限りは,発明はその同一性を失うことがなく,特許請求の範囲も実質上変更されることはないが,周知でない新規な技術手段を付加するときは,特段の事情のない限り,構\成を異にすることになり,別個の発明となってしまうからである。」
と述べました。
実質上の変更に該当するかについては、類型化できるほどの判断例が多くないので、具体的事案について検討してみたいですね。
◆H16. 5.14 東京地裁 平成13(ワ)12933 特許権 民事訴訟事件