知財みちしるべロゴマーク
知財みちしるべトップページへ

更新メール
購読申し込み
購読中止

知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

実質上拡張変更

◆平成18(行ケ)10268 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年11月28日 知的財産高等裁判所

   誤記訂正が、実質上の拡張または変更に当たるとして、訂正を認めなかった審決が取り消されました。
  「0.5重量%以下」との記載は,確かに,被告が主張するように,その記載自体を独立したものとして見る限り,数値及びその範囲として明確であり,疑問が生じることはない。しかしながら,特許請求の範囲の意味内容を確定する場合には,当該記載の前後の単語・文章,文脈,当該請求項の全体の意味内容との関係で検討すべきであり,被告が主張するように,問題となった記載を前後から切り離して取り上げて意味内容を把握し,その単純な総和として,確定すべきものではない。確かに,発明の詳細な説明に記載した発明のすべてを特許請求の範囲に記載して権利化しなければならないわけではないものの,発明の詳細な説明に登場するいくつかの実施例のうち,請求項1の「0.5重量%以下の水酸化カリウム」に対応するのは,実施例8のみであり,出願人は,本件補正によって大部分の権利範囲を失うことになる。しかも,特許出願に係る発明が境界域である「0.5重量%の水酸化カリウム」の場合に限定されることになるというだけではなく,特許請求の範囲に提示された「0.5重量%未満」の範囲は特許法36条4項の定める要件を欠如することになりかねない。仮に,出願人が真意に基づきそのような補正をしたというのであれば,権利化の際に通常選択する合理的な経済行為からは,大きく乖離するものであったといわざるを得ない。・・・これらの記載によれば,本件発明は,水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの双方又はいずれか一方を含むものとして記載されており,その双方とも含まないことを前提とした記載は一切なく,請求項1の「0.5重量%以下の水酸化カリウム」との記載は,「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウム」の誤記であると容易に理解するに至ることは明らかである。」

 また、実質上拡張変更については、下記のように述べました。
 「請求項1の「0.5重量%以下の水酸化カリウム」の記載は,「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウム」の誤記であるとする場合,この2つの文言のみに即して形式的に考察すると,「0.5重量%以下の水酸化カリウム」の範囲は,「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウム」の範囲と明らかに異なるから,その限りでは特許請求の範囲が変更となるのではないかという問題があるかのようであるが,請求項1の「0.5重量%以下の水酸化カリウム」とある記載は,上述のとおり,特許請求の範囲の記載からだけでは不明確であり,そこで,発明の詳細な説明を参酌すると,「0.5重量%以下の水酸化カリウム」は,「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウム」の誤記であることが明らかであるというのであるから,その実質を捉えて考察すると,特許請求の範囲の拡張や変更はされていないということができ,同法126条4項違反の問題は生じないものというべきである。」

◆平成18(行ケ)10268 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年11月28日 知的財産高等裁判所

関連カテゴリー
 >> 補正・訂正
 >> 実質上拡張変更

▲ go to TOP

◆平成18(行ケ)10070 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年01月25日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について実質上変更の判断です。裁判所は、実質上の変更に当たるとした審決を取り消しました。
  「被告は,当初明細書には,特許査定時の請求項3に係る発明の目的について,「所望の番組の放送チャンネルおよび放映開始時刻を確実に知ることができ,且つサーチした番組を自動的に受信すること」,「当該番組サーチ装置の操作者などが所望の番組を見逃す危険性を低くする」と示されているだけであり,このような極めて一般的な目的から,請求項1における,番組を表形式でその一部を出力するという具体的な目的,該番組表\を更新させるという具体的な目的及び「毎週キーという一種の専用キーで,一旦,ある番組をサーチすると,翌週以降に放映される同じ番組を簡単にサーチすることができる」という具体的な目的が直ちに導出されるということはできないから,訂正事項bは,特許査定時の請求項3に記載された発明の具体的な目的の範囲を逸脱すると主張する。しかしながら,発明の目的は特許請求の範囲の請求項において規定された構成によって達せられるものであり,新たに構\成が付加されたり構成が限定されれば,目的も,それに応じて,より具体的なものになることは当然であって,訂正後の発明の構\成により達せられる目的が訂正前の発明の構成により達せされる上位の目的から直ちに導かれるものでなければ,発明の目的の範囲を逸脱するというのであれば,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正は事実上不可能\になってしまうから,相当でない。そうであれば,訂正事項により付加,限定された構成により達成される内容が,訂正前の発明の目的に含まれるものであれば足りると解するのが相当であり,本件においては,上記(2)のとおり,訂正事項bの具体的内容は,いずれも,特許査定時の請求項3に係る発明の目的に含まれる。・・・ さらに,被告は,請求項1において新たに付加された「番組表出力手段」,「更新手段」という構\成要件については,その用語自体,当初明細書には何ら記載されていなかったものであって,訂正明細書の段落【0014】,【0015】において,上記ステップ110から120に至る処理を「番組表出力手段」,上記ステップ120から150に至る処理を「更新手段」として,それぞれ新たに定義し直し,明細書に初めて出現させたものであるところ,明細書に記載されているからといって,必ずしもその全てが訂正可能\であるとは限らないと主張する。しかしながら,特許請求の範囲を減縮する場合には,新たな構成要件を付加したり,構\成を新たに具体的に限定するのが通常であるから,新たな構成要素を付加したり,構\成要素を新たに具体的に限定することが,直ちに,実質上特許請求の範囲を変更することに当たるものでないことは明らかである。訂正事項bに係る「番組表出力手段」,「更新手段」の内容は,いずれも,当初明細書に記載されているものであって,訂正事項bの「番組表\出力手段」と「指定手段」は,特許査定時の請求項3における「記憶手段」と「指定手段」により実現される内容をより具体的に規定したものであり,「更新手段」と「サーチ手段」は,特許査定時の請求項3の「記憶手段に記憶されているテレビ放送の中から,上記指定手段により指定された内容と同一の番組を,異なる時間帯の番組よりサーチするサーチ手段」により実現される内容をより具体的に規定したものであるから,明細書に接した第三者であれば,訂正が可能であることを予\測することができるのであって,訂正事項bによる訂正が一般第三者の利益を損なうものとはいえない。」

  こちらは本件の分割出願、その分割出願に関する判断です。
◆平成18(行ケ)10071 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年01月25日 知的財産高等裁判所
◆平成18(行ケ)10072 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年01月25日 知的財産高等裁判所  

◆平成18(行ケ)10070 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年01月25日 知的財産高等裁判所

関連カテゴリー
 >> 補正・訂正
 >> 実質上拡張変更

▲ go to TOP