無効審判において訂正しましたが。新規事項である、実質上の拡張等に該当するとして訂正が認められませんでした。知財高裁は、新規事項については開示ありと認定したものの、実質上の拡張等については該当するとして審決が維持されました。
上記の本件明細書の記載等からすると,本件明細書には,図4で示
された24のコントロールチャネルエレメントについて,最高レベルの
集合レベル1ではそれぞれが1つのコントロールチャネル(24個)を
形成し,比較的低いレベルである集合レベル2では2つのコントロール
チャネルエレメントが1つのコントロールチャネル(12個)に,集合
レベル4では4つのコントロールチャネルエレメントが1つのコント
ロールチャネル(6個)に,集合レベル8では8つのコントロールチャ
ネルエレメントが1つのコントロールチャネル(3個)に,それぞれま
とめられた上で,スケジュールに使用可能なコントロールチャネル候補 は,集合レベル1は4つ,集合レベル2は4つ,集合レベル4は4つ,\n集合レベル8は3つに制限され,この制限によってデコーディング試行
の数は15に低減されること,このような制限をツリー構造に課すこと により,図4の例では,集合レベル1では4つのコントロールチャネル\nを,集合レベル2では2つのコントロールチャネルを,集合レベル4で
は2つのコントロールチャネルを,集合レベル8では1つのコントロー
ルチャネルをスケジュールすることができることが開示されている。
また,本件明細書の上記記載に加えて,図4を総合すると,スケジュ
ールに使用可能なコントロールチャネル候補の制限をツリー構\ 造によ
って課される割合は,図4の実施例では,最高レベルの集合レベル1で
は,24個のコントロールチャネルを4つの候補に(候補の割合6分の
1),比較的低いレベルの集合レベル2では12個のコントロールチャ
ネルを4つの候補に(候補の割合3分の1),集合レベル4では6個のコ
ントロールチャネルを4つの候補に(候補の割合3分の2)それぞれ制
限し,集合レベル8の3個のコントロールチャネルを制限しない(候補
の割合1分の1)ことが開示されているに等しい事項といえる。
そうすると,本件明細書及び図面には,ユーザイクイップメントに対
するアロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補の各レベルにおける割合に着目し,最高レベルよりも低い2,4,8の各レベル\nにおけるユーザイクイップメントに対するアロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補の割合は,最高レベルにおける,ユーザイ\nクイップメントに対するアロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補の割合よりも大きくして,ユーザイクイップメントに対する\nアロケーションを含むスケジュールをすることが開示され,又は開示さ
れているに等しい事項であるということができる。また,【0025】の
記載からすると,最高レベルよりも低い各レベルのコントロールチャネ
ルは,ツリー構造の前記最高レベルよりも低いレベルにあるノードによって表\されていることが開示されていることから,この開示事項に上記 事項と合わせると,ツリー構造における,より低いレベルほど,ユーザ イクイップメントに対するアロケーションに使用可能\なコントロール チャネル候補の割合がより大きくされることも開示され,又は開示され
ているに等しい事項であるといえる。
したがって,訂正事項2に係る技術的事項及び訂正事項3に係る技術
的事項は,いずれも本件明細書の記載及び図面の全ての記載を総合する
ことにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を
導入するものであるとはいえないから,訂正事項2及び3は,新規事項
の追加に当たるものとはいえない。
イ 特許請求の範囲の拡張又は変更について
願書に添付した特許請求の範囲の訂正をすべき旨の審決が確定したとき
は,訂正の効果は出願時まで遡及する(特許法128条)ところ,特許請
求の範囲の記載に基づいて特許発明の技術的範囲が定められる特許権の
効力は第三者に及ぶものであることに鑑みれば,同法126条6項の「実
質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するもの」であるかは,訂正の前
後の特許請求の範囲の記載を基準として判断されるべきであり,こうした
解釈によって,特許請求の範囲の記載の訂正によって第三者に不測の不利
益を与えることを防止することができる。以下,これを前提にして判断す
る。
(ア) 本件訂正前の請求項1は,「前記アロケーションは,最高レベルのコ
ントロールチャネルのアロケーションを制限することによって実行され,
前記最高レベルのコントロールチャネルは,ツリー構造の最高レベルにあるツリー構\造のノードによって表 され,それにより,比較的低いレベ\nルのコントロールチャネルのアロケーションが可能となり,比較的低いレベルのコントロールチャネルは,ツリー構\造の比較的低いレベルにあ るツリー構造のノードによって表\ される,方法」との発明特定事項を含
むものであり,この発明特定事項からは,ツリー構造のノードによって表\されるコントロールチャネルのアロケーションは,最高レベルにある コントロールチャネルのアロケーションを制限することによって実行さ
れ,それにより比較的低いレベルのコントロールチャネルのアロケーシ
ョンが可能となることと理解される。
これに対し,本件訂正後の請求項1は,訂正事項1ないし3によって,
「ユーザイクイップメントに対するアロケーションは,前記最高レベル
における,ユーザイクイップメントに対するアロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補を部分的に制限して実行され,前記最高レ\nベルのコントロールチャネルは,ツリー構造の前記最高レベルにあるツ リー構\造のノードによって表 され,それにより,前記最高レベルよりも\n低い各レベルにおける,ユーザイクイップメントに対するアロケーショ
ンに使用可能なコントロールチャネル候補の割合を,前記最高レベルに おける,ユーザイクイップメントに対するアロケーションに使用可能\な コントロールチャネル候補の割合よりも大きくして,ユーザイクイップ
メントに対するアロケーションを実行することが可能となり,前記最高レベルよりも低い各レベルのコントロールチャネルは,ツリー構\造の前 記最高レベルよりも低いレベルにあるツリー構造のノードによって表\ さ
れ,ツリー構造における,より低いレベルほど,ユーザイクイップメン トに対するアロケーションに使用可能\なコントロールチャネル候補の割 合がより大きくされる,方法」との発明特定事項を含むものであり,こ
の発明特定事項からは,ユーザイクイップメントに対するアロケーショ
ンは,最高レベルにおけるユーザイクイップメントに対するアロケーシ
ョンに使用可能なコントロールチャネル候補を部分的に制限して実行され,それにより,最高レベルよりも低い各レベルのユーザイクイップメ\nントに対するアロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補の割合を最高レベルにおけるユーザイクイップメントに対するアロケーシ\nョンに使用可能なコントロールチャネル候補の割合より大きくして,ユーザイクイップメントに対するアロケーションを実行することを可能\と し,かつ,ツリー構造におけるより低いレベルほどユーザイクイップメ ントに対するアロケーションに使用可能\なコントロールチャネル候補の 割合がより大きくされる方法が含まれるものと理解することができる。
このように,訂正後の請求項1は,訂正前の請求項にはない,「ユーザ
イクイップメントに対するアロケーションに使用可能なコントロールチ ャネル候補」という概念を追加した上で,「前記最高レベルよりも低い各\nレベルにおける,ユーザイクイップメントに対するアロケーションに使
用可能なコントロールチャネル候補の割合を,前記最高レベルにおける, ユーザイクイップメントに対するアロケーションに使用可能\なコントロールチャネル候補の割合よりも大きくして,ユーザイクイップメントに
対するアロケーションを実行する」,「ツリー構造における,より低いレ ベルほど,ユーザイクイップメントに対するアロケーションに使用可能\ なコントロールチャネル候補の割合がより大きくされる」との事項を追
加し,これによって,訂正前の方法では,ツリー構造で表\ される比較的
低い各レベルのアロケーションについては特に規定するところがなかっ
た,ツリー構造で示されるより低いレベルほどユーザイクイップメントに対するアロケーションに使用可能\なコントロールチャネル候補の割合 を大きくすることが発明特定事項に含まれることになったといえる。
そうすると,訂正事項1ないし3は,特許請求の範囲を実質上変更す
るものであるから,特許法126条5項に適合するものとはいえない。
(イ) これに対し,原告は,前記第3の1(1)ア(イ)及びイ(イ)のとおり,1)
訂正事項2及び3は,新たな技術的事項を導入するものではなく,2)訂
正事項2は,訂正前は,無条件で比較的低いレベルのコントロールチャ
ネルのアロケーションを可能としていたのを,訂正後は,使用可能\ なコ
ントロールチャネル候補の割合に関する条件付きでアロケーションを実
行することを可能とするものであるから,本件訂正は,特許請求の範囲 の減縮に該当する旨主張する。\n
しかし,特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものであるかに
ついては,特許請求の範囲の記載を基準として判断されるべきことは前
記のとおりであるところ,発明の詳細な説明に記載された事項からどの
事項を発明特定事項とし,上位概念とするかについては,出願者がその
技術的意義に鑑みて適宜選択して特許請求の範囲とするものであって,
明細書に記載された事項及び図面から導き出される技術的事項との関係
において,新たな技術的事項を導入するものではないからといって,訂
正の前後で特許請求の範囲の記載が実質的に同一の発明特定事項を有す
るものとはいえない。
そして,前記(ア)のとおり,請求項1は,訂正事項2及び3によって,
訂正前の方法では,ツリー構造で表\ される比較的低い各レベルのアロケ
ーションについては特に規定するところがなかった,ツリー構造で示されるより低いレベルほどユーザイクイップメントに対するアロケーショ\nンに使用可能なコントロールチャネル候補の割合を大きくするとの事項が発明特定事項に含まれることになったものであり,こうした発明特定\n事項は,「統合されたコントロールチャネルに対するツリー検索が系統的
に低減される」という課題((【0004】)を解決する発明の構成そのも のに関する事項であるから,単に条件付けをしたのにすぎないとはいえ\nず,特許請求の範囲の減縮に該当するものではない。
したがって,原告の上記主張は採用できない。
◆判決本文
関連事件です。
◆令和1(行ケ)10107