訂正請求により無効理由なしとした審決に対する審決取消訴訟です。
知財高裁も審決の判断を維持しました。一つの争点が「前記加工対象物はシリコンウェハである」と記載されているのを、「前記加工対象物は、シリコン単結晶構造部分に前記切断予\定ラインに沿った溝が形成されていないシリコンウェハである」に訂正するのが訂正要件を満たすかです。
ア 訂正前の請求項1の記載は、「加工対象物」である「シリコンウェハ」に
ついて、その文言上、「シリコン単結晶構造部分に前記切断予\定ラインに沿
った溝が形成されているシリコンウェハ」を概念的には含むものであった
のに対し、訂正事項1により、そのようなシリコンウェハを除く形で限定
されるものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とす
るものといえる。
別の観点からいえば、訂正前の請求項1の記載は、その文言上、「レーザ
加工装置」の構成として、切断予\定ラインに沿った溝が存在するシリコン
ウェハを切断し得る性能を有するが、そのような溝が存在しないシリコン\nウェハを切断し得る性能を有するとは限らない「レーザ加工装置」(溝必須\n装置)を概念的には含むものであったのに対し、訂正事項1により、そのよ
うな装置を除く形で請求項1に係る発明のレーザ加工装置を特定したので
あるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものともい
える。
イ 原告は、前記第3の1(1)ア のとおり、訂正事項1における「シリコン単
結晶構造部分に前記切断予\定ラインに沿った溝が形成されていないシリコ
ンウェハ」については、加工対象物がシリコン単結晶構造の場合において、\n「シリコン単結晶構造部分」や溝の位置、どのような溝が形成されていな\nいのかが特定されておらず不明確であるから、訂正後の特許請求の範囲が
不明確であると主張するが、そのような具体的な事項まで特定されなけれ
ば、訂正事項1が減縮か否かを判断できないほどに不明確であるとは考え
られない。
また、原告は、前記第3の1(1)ア のとおり、訂正事項1によって、請求
項1の装置について、溝が形成されていないシリコンウェハを切断するこ
とが用途になるとしても、レーザ加工装置の構成がそのような特定の構\成
に限られるものではないから、発明の構成を限定するものではないとか、\nいわゆるサブコンビネーション発明の理論によれば訂正の前後で発明の要
旨の認定は変わらない旨主張する。しかし、アに説示したとおり、訂正事項
1により概念上請求項1に係る発明が限定されることは明らかであり、特
許法134条の2第1項の「特許請求の範囲の減縮」への該当性を判断す
るに当たっては、これで足りると解するのが相当である。また、本件発明を
サブコンビネーション発明と解するかはさて措くとして、本件における上
記該当性を判断するに当たって、サブコンビネーション発明のクレーム解
釈や特許要件の考え方を直接参考にする必要性があるとは認め難いし、い
ずれにしても本件においては、訂正事項1に係る事項は、加工対象物のみ
を特定する事項にとどまらず、レーザ加工装置自体についてもその構造、\n機能を特定する意味を有するものと解するべきであるから(本件訂正前は、\n溝必須装置のように溝が形成されているシリコンウェハを切断する構造を\n有すれば、これをもって特許要件を満たし得たのに対し、本件訂正後はこ
のような構造を有するのでは足りず、溝が形成されていないシリコンウェ\nハを切断する構造を有することが必要とされることになる。)、原告の主張\nするところは、本件訂正が、特許請求の範囲の減縮であることを否定する
に足りるものではない。
◆判決本文