訂正が認められ無効理由無しの審決に対して審判請求人が出訴し、その後、特許権者は再訂正をする訂正審判(2次訂正)を請求しました。裁判所は、特181条2項の差し戻しをすることなく、審理を進めていましたが、二次訂正が確定したことから、対象が異なるとして本件無効審決を取り消して、差し戻しました。
,本件審決は,無効審判請求を成り立たないものとした審決である。その後,被告から特許請求の範囲を減縮する訂正審判請求がなされたが,当裁判所は,平成23年改正前の特許法181条2項の差戻決定をすることなく審理を継続していたところ,本件訂正審決が確定したことにより,訂正前の特許請求の範囲に基づいてなされた審決は,結果的に発明の要旨認定を誤ったこととなった。もっとも,特許庁は,本件訂正審決において,本件審決において第1訂正発明と対比された引用例と同一の引用例との対比において独立特許要件が認められると判断している。そうすると,第2訂正発明と上記引用例記載の発明との同一性ないし容易想到性判断についての特許庁の判断は,本件訂正審決により示されており,この点につき特許庁の判断が先行しているものと解する余地がある。しかし,本件審決と本件訂正審決においては,本件特許に係る発明と引用例との一致点及び相違点の認定,新規性ないし進歩性に係る判断の対象が実質的にも変更されている(別紙1ないし4参照)。すなわち,本件審決においては,第1訂正発明における「前記目標値が変化したときに」の意義について,原被告いずれの主張も排斥した上で,「前記目標値」が「ある状態から他の状態に変わったときに」を意味するもの,すなわち「前回の目標値」と「今回の目標値」を比較し,変化したときと理解できるとして,引用例1,2との対比を行った上,これを相違点として挙げて,第1訂正発明は,引用発明1と同一の発明ではなく,引用発明2,及び引用例1,甲3ないし5に記載された周知技術に基づき容易に想到できたものとはいえないとして,無効請求は成り立たないとしたものである。他方,本件訂正審決では,第2訂正発明において,「今回の目標値」と比較される「比較対象」は,引用発明1における「現在表示中の表\示データ」や引用発明2における「旧データ」に相当するもの,すなわち「前回の出力値」であるとして,この点を引用例1,2との相違点とはせず,新たに付加された構成要件について相違点を挙げて,第2訂正発明は,引用発明1と同一の発明ではなく,引用発明1ないし2に基づき容易に想到できたものでもなく,独立特許要件を充足するとして,第2訂正を認めたものである。そうすると,本件訂正審決において,本件審決における引用例と同一の引用例との対比において独立特許要件が認められるとの判断がされているとしても,本件無効審判請求について,新たに付加された構\成要件も含めて,再度,特許庁の審理を先行させるのが相当であるから,本件審決は取り消されるべきである。
◆判決本文