2022.11. 8
分割要件違反等の無効主張をしましたが、知財高裁は無効理由なしとした審決を維持しました。
(ア) 原告は、最初の親出願の明細書等について、発明が解決しようとする課題、
課題を解決するための手段、発明の効果及び実施形態に係る明細書の記載からする
と、あくまで、かしめ部・逃げ空間あり構成に係る技術的事項が導かれるのであっ\nて、特に、発明が解決しようとする課題に照らし、かしめ以外の固定手段を用いる
ことは同明細書等には記載されておらず、明細書の段落【0018】に、かしめ部
あり構成を前提とした逃げ空間あり構\成を必須とする旨の記載があることも考慮す
ると、同明細書等に記載された発明は、逃げ空間あり構成を必須とするものである\nなどと主張する。
しかし、最初の親出願の明細書中、発明が解決しようとする課題等において、か
しめ部・逃げ空間あり構成に係る事項が特に取り上げられて深く検討されていると\nしても、そのことから直ちに、最初の親出願の明細書等に記載された発明が上記構\n成を含むものに限定されるものではない。
前記(1)アのとおり、最初の親出願の出願当時、固定手段として溶接や接着も選択
肢として存在していたことが認められるのであるから、同明細書等における記載も
それを前提に理解すべきものである。そして、前記ア(ア)〜(ウ)のように最初の親出
願の明細書に記載されていたといえる本件発明1に係る構成や、当該構\成における
上板部材及び下板部材による回転子積層鉄心の上下からの押圧並びに樹脂ポット内
の樹脂の磁石挿入孔への充填といった機序自体が、かしめ部あり構成であるか、か\nしめ部なし構成であるかによって影響を受けるものともみられない。そうすると、\n最初の親出願の明細書等には、1)本件発明1を含む発明が記載された上で、2)かし
め部あり構成の場合に当該発明を用いる際の問題点等について、逃げ空間あり構\成
などが更に記載されているというべきであって、上記2)の記載の存在によって上記
1)の記載が存在しないものとはいえないところである。
(イ) 上記に関し、原告は、最初の親出願の出願当時、回転子積層鉄心の積層され
た鉄心片の固定手段として、かしめが技術常識となっていたことから、最初の親出
願の明細書等の記載について固定手段を特定の手段に限定するものではないとはい
えない旨を主張するが、原告が主張する上記技術常識が認められないことは、前記
(1)イのとおりである。
(ウ) また、原告は、「かしめ積層されていても回転子積層鉄心の鉄心片の板厚が0.
5mm以下でないもの」(鉄心片の板厚が0.5mm超のもの)について、当業者は
通常想定しないなどと主張するところ、かしめ積層された回転子積層鉄心の鉄心片
の板厚が0.5mm以下でないものは、かしめ部の一部が回転子積層鉄心の上下い
ずれかの面から少しの範囲で突出してしまうことをもって、同板厚が0.5mmを
超える全てにおいて、直ちに、かしめ部の一部が回転子積層鉄心の上下いずれかの
面から少しの範囲で突出するとはいえないと理解できるものではないとしても、本
件全証拠をもってしても、最初の親出願の出願当時、回転子積層鉄心の鉄心片につ
いて、板厚0.5mm以下のものが用られる場合が多かったという事情を超えて、
板厚0.5mm超のものが選択肢となっていなかったといった事情は認められない。
この点、板厚0.5mm超のものを用いる例があったことは、乙5の記載(前記2
(1))やその他の証拠(乙7〜10、17、18)からも認められるところである。
さらに、最初の親出願の明細書の段落【0004】には、「この特許文献1記載の
技術においては、回転子積層鉄心を形成する各鉄心片がかしめ積層された特に鉄心
片の板厚が0.5mm以下の薄いものでは、かしめ部の一部が回転子積層鉄心の上
下いずれかの面から少しの範囲で突出してしまう」と記載されており、「鉄心片の板
厚が0.5mm以下の薄いもの」が全体の中から特に取り上げられた例であること
が明記され、それ以外の場合(鉄心片の板厚が0.5mmを超えるもの)の存在が
示唆されているから、仮に、通常は板厚0.5mm以下のものを想定している当業
者においても、同段落の記載に接した場合には板厚0.5mm超のものを選択肢と
して考慮し得るといえる。
◆判決本文