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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

職務発明

◆平成17(ネ)10125 補償金請求控訴事件 特許権民事訴訟 平成18年11月21日 知的財産高等裁判所

 職務発明に関する対価請求について、一審判断が一部取り消され、用途発明に係る相当対価請求について、約286万円が認められました。
 特許法35条4項所定の「発明により使用者等が受けるべき利益の額」は,使用者等が当該発明の実施を排他的に独占し得る地位を取得することによって受けることが見込まれる利益をいうものであるから,使用者等が特許を受ける権利を承継した後に当該発明を実施したことによる利益を検討するに当たっても,当該発明を実施したことにより得た利益そのものではなく,そのうち使用者等が当該発明を排他的,独占的に実施したことに基づいて,通常実施権の行使による利益をどれだけ上回る利益を得ているかを検討しなければならない。これを本件についてみると,平成12年10月以降における本件用途発明の実施による本件製剤の売上額のうち,その排他的,独占的な実施に基づく売上額はいくらか(競業他社に本件用途発明の実施を禁止していることによって,通常実施権の行使による売上額に比して,これをどれだけ上回る売上額を得ているか),その排他的,独占的な実施に基づく売上額のうち,本件用途発明による利益額はいくらか(その売上げに係る想定実施料収入はどの程度か)を検討して,本件用途発明の排他的,独占的な実施による利益を算定するのが相当である。そこで検討するに,・・上記の独占的な販売の結果,本件物質特許権の消滅後も,被控訴人がシロスタゾールについて競業他社に対して依然として市場での優位な地位を保持していることが窺われ,本件用途発明の実施による本件製剤の売上げには,被控訴人がシロスタゾールについて既に獲得した市場での優位性に基づくところが多分にあるとみることができるから,被控訴人が本件用途発明を独占していること自体に起因する市場での優位性はさほど大きなものとは考えられないことなどを考慮すると,被控訴人の本件用途発明の実施による本件製剤の売上額のうち,競業他社に本件用途発明の実施を禁止していることに起因する分(排他的,独占的な実施による分)は,上記売上額の30%とみるのが相当である。」

◆平成17(ネ)10125 補償金請求控訴事件 特許権民事訴訟 平成18年11月21日 知的財産高等裁判所

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◆平成16(受)781 補償金請求事件 平成18年10月17日 最高裁判所第三小法廷判決

 外国における特許を受ける権利の譲渡について、我が国の35条の規定に基づき補償金を請求できるかについて、できるとした高裁の判断を指示しました。
 「ここでいう外国の特許を受ける権利には,我が国の特許を受ける権利と必ずしも同一の概念とはいえないものもあり得るが,このようなものも含めて,当該発明については,使用者等にその権利があることを認めることによって当該発明をした従業者等と使用者等との間の当該発明に関する法律関係を一元的に処理しようというのが,当事者の通常の意思であると解される。そうすると,同条3項及び4項の規定については,その趣旨を外国の特許を受ける権利にも及ぼすべき状況が存在するというべきである。したがって,従業者等が特許法35条1項所定の職務発明に係る外国の特許を受ける権利を使用者等に譲渡した場合において,当該外国の特許を受ける権利の譲渡に伴う対価請求については,同条3項及び4項の規定が類推適用されると解するのが相当である。」

  控訴審 H16. 1.29 東京高裁 平成14(ネ)6451 特許権 民事訴訟事件
  第1審 H14.11.29 東京地裁 平成10(ワ)16832等 特許権 民事訴訟事件    

◆平成16(受)781 補償金請求事件 平成18年10月17日 最高裁判所第三小法廷判決

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◆平成16(ワ)26283 職務発明対価請求事件 特許権民事訴訟 平成18年09月12日 東京地方裁判所

  職務発明の対価として、240万が認められました。独占による利益を6000万、原告の貢献度を10%、共同発明3名における貢献度を40%として、報償金として240万が認められました。興味深いのは、登録前の利益も含めた点です。
 「特許権の設定登録前においては,使用者の排他的独占権はなく(特許法66条,68条),使用者が通常実施権に基づいて実施していると認められる場合には,その範囲内で実施している限り,特許を受ける権利の承継により使用者が受けるべき利益はないことになる。他方,特許権の設定登録の前であっても,特許出願人は,出願公開後は,発明を実施した第三者に対し一定の要件の下に補償金を請求することができるから(同法65条),出願公開後に事実上当該発明を独占し,第三者の実施を排除して独占的に実施したことにより通常実施権に基づくものを超える利益を上げたときは,当該発明が貢献した程度を勘案して「その発明により使用者等が受けるべき利益」を定めることができる。」

◆平成16(ワ)26283 職務発明対価請求事件 特許権民事訴訟 平成18年09月12日 東京地方裁判所

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◆平成17(ワ)14399 職務発明対価請求事件 平成18年09月08日 東京地方裁判所

  外国における特許を受ける権利について、特許法35条3項が適用されるかが争われました。
 裁判所は、準拠法については日本法であるとしたが、特許法35条3項は適用されないと判断しました。
  「特許法には,外国の特許を受ける権利の承継に基づく対価請求権に関する規定がないだけでなく,外国の特許発明や外国の特許権に関する規定も全く存しない。また,特許法35条と同様に,「特許を受ける権利」について,その移転や担保権の設定,承継等を定める同法33条及び34条が,日本の特許を受ける権利のみを対象とすることは明らかである。さらに,特許法35条1項は,職務発明についての特許を受ける権利の承継の有無を問わず,使用者等が,当該特許権について無償の法定通常実施権を有する旨を定めるところ,特許権についての属地主義の原則,すなわち,各国の特許権は,その成立,移転,効力等につき当該国の法律によって定められ,特許権の効力が当該国の領域内においてのみ認められるとの原則(最高裁平成7年(オ)第1988号同9年7月1日第三小法廷判決・民集51巻6号2299頁参照)によれば,特許権に対して無償の法定通常実施権のような権利を設定することは,日本の特許権についてのみなし得ることであると解さざるを得ないから,同条1項にいう「特許を受ける権利」及び「特許権」とは,外国の特許を受ける権利及び外国の特許権を含まず,日本の特許を受ける権利及び日本の特許権のみを意味するものと解される。そうすると,外国の特許を受ける権利の承継に基づく対価請求権についても同条3項が適用されるとすれば,同条3項にいう「特許を受ける権利」及び「特許権」には,外国の特許を受ける権利ないし外国の特許権も含まれることになり,同一の条文内で,「特許を受ける権利」あるいは「特許権」について,異なる解釈をするという不整合な事態を生ずることとなる。そもそも,特許法35条は,職務発明について特許を受ける権利が当該発明をした従業者等に原始的に帰属し,これについての通常実施権が使用者等に帰属することを前提に(同条1項),当該職務発明について,特許を受ける権利及び特許権の承継等とその対価の支払に関して,使用者等と従業者等のそれぞれの利益を保護するとともに,両者間の利害を調整することを図った規定である(最高裁平成13年(受)第1256号同15年4月22日第三小法廷判決・民集57巻4号477頁参照)。すなわち,同条は,その1項において,使用者等には,特許を受ける権利の承継の有無を問わず法定の通常実施権が認められることを規定するものであり,そのことを前提として,当該特許を受ける権利等の承継等の対価の算定に当たっても,同条4項において考慮される使用者等が受けるべき利益は,通常実施できる限度を超えた独占の利益であると解するのが一般である。したがって,この前提を欠く外国の特許を受ける権利について,同条3項の規律対象となるとする見解は,同条に関する上記の理解を踏まえると,法解釈上,相当でないといわざるを得ない。」

◆平成17(ワ)14399 職務発明対価請求事件 平成18年09月08日 東京地方裁判所

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◆平成16(ワ)23041 職務発明対価請求事件 平成18年05月29日 東京地方裁判所

  職務発明に基づく請求について、既に支払い済みの約250万の除く約1200万が認められました。
 「被告は、原告と同時期に入社した同年代の従業員に比して・・・特別の待遇を行ったから,この額は,「相当の対価」に含まれると主張する。しかし,給与等が,原告と同時期に入社した同年代の従業員に比して高額であったとしても,それは,原告の行う労務を評価した上でのこれに対する対価であって,本件各発明の対価とは到底認められない。」

◆平成16(ワ)23041 職務発明対価請求事件 平成18年05月29日 東京地方裁判所

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