2023.09.28
令和2(ワ)12107 職務発明対価相当請求事件 特許権 民事訴訟 令和5年8月29日 大阪地方裁判所
大阪地裁(21部)は、薬の職務発明の報奨金として、超過売上高、仮想実施料率、寄与度、使用者貢献度、発明者間における原告の貢献割合から、約400万円を認めました。
イ 超過売上高(超過売上率)
前記前提事実のとおり、被告は、自ら又は本件受託3社に販売委託をして本件製
品2を販売し、本件特許2を実施している。
本件製品2は、先発医薬品Lカプセルの後発医薬品であるが、1回の投与で長時
間シグモイド型の薬物放出を続けるアンブロキソール塩酸塩の徐放OD錠化の技術\nを用いた製品は、本件製品2以外には上市されていない。被告もアンブロキソール\n塩酸塩の徐放カプセル剤及び錠剤(普通錠)を販売し、本件製品2の販売開始後の
平成27年7月に先発医薬品メーカーからアンブロキソール塩酸塩の錠剤(徐放小\n型錠)が販売されたが(乙115)、本件製品2以外にアンブロキソール塩酸塩の\n徐放OD錠の製品が製造販売されている事情は見当たらない。
また、本件製品2は、市場占有率が平成30年に1位となった。
これらの事情を勘案すると、超過売上高(超過売上率)は40%と認めるのが相
当である。
ウ 仮想実施料率
実施料率の判断にあたっては、被告(特許権者)の実施許諾例があればまず検討
し、それがなければ業界相場等や発明の内容等を検討することになるが、被告にお
ける実施許諾例がある事情は見当たらない。
医薬品の自己実施に係る実施料率に関する資料によれば、「医薬品では6%前後
の率に…上下1〜2%程度増減した率が大方の相場」とされるもの(乙116)、
「医薬品・その他の化学製品(イニシャル有)」では3〜5%が最も多いとするも
の(乙117【図2−5−1】)、3〜5%未満が最も多いとするもの(乙118)
が見られる。そして、本件発明2は、1回の投与で長時間シグモイド型の薬物放出
を続けるアンブロキソール塩酸塩の徐放OD錠に関する発明であるが、剤形が異な\nるものの治療学的に同等の有効性、安全性を有する医薬品は他にも存在する。
このような事情を総合考慮すると、本件における仮想実施料率は5%と認めるの
が相当である。
エ 本件発明2の貢献度(寄与度)
本件発明2は剤形に関するものであり、服用の利便性から本件製品2の売上げに
貢献しているものと認められる。
他方で、本件製品2は後発医薬品であり、有効成分は先発医薬品(Lカプセル)
と同じである。また、本件製品2には、本件発明2に開示されていない製剤化技術
も用いられているものと考えられる。加えて、本件製品2の売上げが好調である要
因は、国のジェネリック医薬品販売促進施策がとられており(乙119、120)、
薬価も先発医薬品に比して格段に安くなっている(乙121、122)ところが大
きい。
これらの諸事情を勘案すると、本件発明2の貢献度は、多くとも60%と認める
のが相当である。
オ 共同発明者間における原告の貢献割合
原告は、口腔内崩壊錠の着想をしたのみならず、その具体化の過程である製
造開発の場面においても、自身の知見に基づき、結合剤や徐放被膜のコーティング
に用いる添加剤、可塑剤等のあらゆる場面における技術の選定について、本件チー
ムのP2らに指示ないし助言し、これを基に本件発明2が完成したことからすれば、
原告の貢献割合は100%に近いなどと主張する。
発明の着想は、課題とその解決手段ないし方法が具体的に認識され、技術に関す
る思想として概念化されたものである必要があると解される。また、医薬品の開発
においては、発明を完成させるまでに、試行錯誤を経ながら、添加成分の種類や配
合比率、配合条件等について多数の試作、試験・実験を行い、これから見出される
問題点を改善し、その効能や安全性、利便性等を確立していくことが必要不可欠で\nあると認められる(証人P2、証人P5)。
これらの点を踏まえ、原告の上記主張について、以下検討する。
上記(1)の認定事実によれば、原告が、平成18年頃、アンブロキソール塩酸\n塩の徐放カプセルをOD錠とすれば医療現場から歓迎されると考え、平成19年か
らは新製品創出の専属メンバーの一人として、他社製品の調査や技術的検討を行っ
た上、OD錠化の発想を一定程度具体化して提案し、瀬踏み実験に関与して、本件
製品2の開発承認決定(平成20年2月)に貢献したことは認められる。
しかしながら、本件発明2は平成23年11月頃に完成したものと認められ
るところ(上記(1)ウ m)、添加成分の選定や処方等に関する検討を実際に行った
のは、上記(1)のとおり、P2をリーダーとする本件チームであった。すなわち、本
件チームは、本件発明2の特徴的部分の構成を実施可能\な程度に具体化するために
多数の試作、試験・実験を行うなど試行錯誤を繰り返し、その過程において、複数
回にわたって報告(中間報告及び技術説明会)を行い、報告時点における試作実験
の結果及び今後の課題を検討し、課題の解決を目指して3年余りにわたり検討を行
っている。
他方、原告は、本件チームに所属しておらず、開発月例会議等の会議には出席し
ていたことが認められるものの、本件チームの行う試験・実験に関与していたとは
認められない。また、原告は、本件チームの発足後、製剤技術部の顧問の地位にあ
り、本件チームの職員と接する機会はあったことから、本件チームのメンバーに対
し、その知識及び経験を生かして助言できることがあれば概括的に助言していたも
のと認められるが(原告本人、証人P5)、以下のとおり、本件製品2の開発過程
において、具体的な指示に関する客観的な証拠はない。
a 原告は、徐放性微粒子の核粒子として、ハルナールD錠に使用されているセ
ルフィアCP−102を用いるよう指示した、他に検討の余地はなかった旨を主張
する。
上記(1)ウ によれば、開発当初は核粒子として用いる添加剤はセルフィア(結晶
セルロース粒)で進めていたが、溶出性に影響する可能性があり、他の添加剤も試\nしてみたが期待した効果は得られなかったことが平成20年11月に報告され、そ
の後、結晶セルロース粒の2種のグレードで試作検討した結果、平成21年3月に
セルフィアCP−102が選定されたことが認められる。原告が、上記の検討過程
でセルフィアCP−102の使用を指示したことを明らかにする客観的証拠はない。
仮に原告がセルフィアCP−102の検討につき何らかの助言をしたことがあった
としても、その選定には上記のような試行錯誤を経て数か月を要していることから
すると、原告が他に検討の余地はないものとして選定を具体的に指示したとは認め
られない。
b 原告は、薬物レイヤリング工程に関し、溶解法から懸濁法に変更になった際、
文献(甲19、20、22、66〜68等)からの知見に基づき、溶出改善のため
薬物レイヤリング層に崩壊剤を添加すべきこと、また、崩壊剤としてはクロスポビ
ドンを検討することを指示した旨主張する。
上記(1)ウ によれば、懸濁法への変更後、平成22年11月から薬物レイヤリン
グ層に崩壊剤を添加して、徐放性微粒子の溶出改善を検討し、同年12月には崩壊
剤としてクロスポビドンを添加することが有用と判明したことが認められる。上記
の検討過程において、原告が崩壊剤の添加やクロスポビドンの検討を指示したこと
を明らかにする客観的証拠はない。同月の技術検討会の資料(乙55)では、レイ
ヤリング層の改良検討の中で、シグモイド曲線を改善する工夫として、クロスポビ
ドン等の崩壊剤添加を含むいくつかの工夫案が実験され、その結果としてクロスポ
ビドン添加の有用性が報告されている。このような経過の中で、原告が行ったと主
張する指示は内容や経緯が不明確であって、具体的指示の存在を認めることができ
ない。
c 原告は、薬物レイヤリングに用いる結合剤として、文献(甲18)を参考に
してPVPを用いるよう指示した、他に選択の余地はなかった旨主張する。
上記(1)ウ 及び によれば、平成20年9月の段階では、結合剤としてPVPを
含む4種類が検討されたが、●(省略)●再検討の結果、PVPが選定されたこと
が認められる。原告が上記の検討過程でPVPの使用を指示したことを明らかにす
る客観的証拠はない。原告は、pH依存性のある化合物が先発製剤(Lカプセル)
の中に含まれる場合、これと同じものを使用しなければ同等の溶出率を確保できな
いというが、本件チームにおいて、平成20年11月には「結合剤についても先発
の溶出挙動にあわせる組み合わせに目処を得た」、同年12月には「pH依存性の
異なる結合剤を組み合わせることにより、溶出挙動をコントロールすることができ、
標準製剤と合致した溶出性を示す徐放性顆粒を得ることが確認できた」との報告が
あり(甲61の1)、原告もそれを知っていたと認められる(甲90)。そうする
と、仮に原告がPVPの使用に関する何らかの助言を行ったことがあったとしても、
他の選択の余地がないとして選定を具体的に指示したとは認められない。
d 原告は、平成22年12月頃、徐放性被膜の被覆(放出制御層)に関し、E
CとTC−5に類似のグレードの混合被膜を用い、エタノールと水の8:2程度の
混合溶液に溶解して被覆する方法とすることを指示した旨主張する。
上記(1)ウ によれば、懸濁法に変更された後、徐放性被膜のコーティングに関し、
徐放カプセルに用いられている配合を参考にEC及びTC−5のグレードで試作し
て溶出性を検討していたところ、平成23年2月の中間報告において、EC(ST
D10)とTC−5Rを8:2.5の比率でコーティングすればシグモイド型の溶
出となる旨報告されたことが認められる。上記の検討過程において、原告が被覆の
方法を指示したことを明らかにする客観的証拠はない。また、コーティング剤の処
方につき、AQCを主成分とするものに問題があるとすれば、被告が既に製造販売
していた徐放カプセルの処方を参考としてECを主成分とする試行を行うこと自体
に困難性は認められないし、実際の混合比率は多くの試作,実験を経なければ選択
できないことは明らかである(本件では約50ロットの試作が行われた。)。この
ような状況で、原告の主張する指示の内容や経緯は不明確であり、原告が具体的な
指示を行った事実を認めることができない。
e 原告は、文献(甲20)により導かれた知見に基づき、本件製品2の開発当
初から、加圧圧縮により徐放性被膜にひび割れなどの損傷が生じることを防止する
ため、ある種の可塑剤が有用であることを認識し、文献(甲23)から得た知見に
基づき、PEG6000(マクロゴール)と薬物を混合して用いることで徐放性被
膜の耐圧性向上が図れると判断して、マクロゴールの添加を指示したと主張する。
しかし、上記(1)ウ によれば、平成21年9月には、プロテクト層(オーバーコ
ート第1層)にECとTC−5RにTween80を添加した処方により顆粒の割
れ防止が可能と報告されており、また、上記(1)ウ によれば、平成22年12月か
ら徐放層(放出制御層)の主成分をAQCからECに変更することが検討されたの
に伴い、プロテクト層の処方も再検討されたことが認められるところ、原告が処方
について提案したことを示す客観的証拠はない。仮に原告もその検討に参加してP
EG6000の使用について何らかの言及をしたことがあったとしても、結局は実
験による試行錯誤を経てプロテクト層に配合する薬剤の有効性や処方が明らかにな
ったのであるから、原告が具体的な指示をしたとか、それによってマクロゴールの
添加が選定されたとの事実を認めることはできない(原告は「可塑剤」としてPE
G6000を用いるというのは誤りであると指摘するが、「可塑剤」の意味合いは
ともかく、ここではプロテクト層に配合される薬剤を検討していることに変わりは
なく、原告の指摘の点は結論を左右するものではない。)。
f 原告は、崩壊促進層の被覆(粘着防止層)に関し、徐放性被膜に類似のEC
を主体とする疎水性被膜を、溶出特性に影響しない程度に薄く被覆して、速崩壊性
を担保するよう指示した旨主張する。
上記(1)ウ によれば、徐放層の主成分がAQCからからECに変更され、オーバ
ーコート層にPEG6000(マクロゴール)を用いることとされたところ、PE
G6000が露出したままの微粒子を配合して錠剤化すると、水による粘性が生じ、
また崩壊にも悪影響を与えることから、検討の結果、平成23年4月の技術検討会
で、苦味マスキング層と同一処方で薄いコーティング(オーバーコート層第2層)
を施すことになったことが認められる。上記の検討過程において、原告が被覆の必
要性や処方について具体的に指示したことを明らかにする客観的証拠はない。また、
原告の主張する指示は、内容が概括的である上、指示が行われた経緯も不明確であ
るから、具体的な指示が行われた事実や当該指示の方法で実験が進められた事実を
認めることができない。
g 原告は,他にも本件製品2の開発過程で種々の指示をしたことにより本件発
明2の完成に多大な貢献をした旨主張する。しかし、いずれも原告が具体的に指示
したことを認めるに足りる証拠がなく、原告の上記主張は採用できない。
上記(1)の認定事実、並びに、上記 及び の事情に照らせば、原告のほか、
P2、P3ら本件チームにおいて本件発明2の完成に向けて実験、分析等に主体的
に関与した者も本件発明2の共同発明者というべきである。そして、原告は、アン
ブロキソール塩酸塩のOD錠を製することを発想し、それを一定程度具体化して瀬\n踏み実験にも関与し、開発承認を得た点で、本件発明2の特徴的部分の一部につい
て着想・具体化し、本件発明2の完成に貢献したといえる。しかし、原告は、その
後は概括的な助言を与えることがあるのみで、発明の具体化に直接的に関与したと
は認められないから、本件発明2の特徴的部分の多くについては、着想もその具体
化もしていないといわざるを得ない。
これらの事情を総合すると、原告の共同発明者間における貢献割合は、20%と
認めるのが相当である。
カ 使用者貢献度
被告は、本件製品2の開発設備や費用、製造承認申請に要する費用をすべて負担\nし、本件特許2の出願及びその維持に係る費用もすべて負担している。また、本件
製品2の売上げの拡大に関する営業努力もすべて被告が行っている。さらに、本件
製品2は後発医薬品であり、先発医薬品とは異なって、獲得すべき有効成分や効能\n効果がすでに明らかとなっているところ、後発医薬品は、一般に、先発医薬品に比
べて開発期間は短く、開発費も相対的に少ない反面、薬価も先発医薬品に比べて安
価であって、先発医薬品ほどの利益は必ずしも期待できない。そして、先発医薬品
と治療学的に同等の有効性、安全性を有し、法定の厚生労働大臣の製造販売の承認
を得なければならず、かつ、先発医薬品に求められている改善点にも配慮した競争
力のある医薬品を開発することになる点においては、後発医薬品であっても大きな
開発リスクが生じるというべきであるところ、被告は、このような開発リスクをす
べて負担している。
これらの事情に照らせば、使用者貢献度は90%を下ることはないと認めるべき
である。
キ 小括
以上の検討によれば、本件発明2に係る相当の対価の額は、次の計算式により算
出された388万8000円となる。
【計算式】 162億円×40%×5%×60%×10%×20%
◆判決本文
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2023.06.30
令和5(ネ)10030 特許権移転登録手続請求控訴事件 特許権 民事訴訟 令和5年6月22日 知的財産高等裁判所 大阪地方裁判所
在職中の職務発明であって原告が特許を受ける権利を有しているとして、移転登録を求めましたが、大阪地裁・知財高裁とも、これを認めませんでした。
ところで、控訴人の主張を前提とすると、本件各発明が完成したのは平成3
0年5月頃ということになるが、証拠(乙1)によると、同年5月時点において、
控訴人には就業規則(平成25年4月1日施行)が存在しており、職務発明につい
て次のとおり規定されていた。
「(特許、発明、考案等の取扱い)
第84条 社員が自己の現在又は過去における職務に関連して発明、考案をした
場合、会社の要求があれば、特許法、実用新案法、意匠法等により特許、登録を受
ける権利又はその他の権利は、発明者及び会社が協議のうえ定めた額を会社が発明
者である社員に支払うことにより、会社に譲渡又は継承されるものとする。」
上記規定からすると、平成30年5月頃、控訴人とその従業員との間には、職務
発明について、控訴人の要求があるときに、控訴人が発明者である従業員に対し、
協議して定めた額の金員を支払うことにより、特許を受ける権利が発明者から控訴
人に移転する旨の合意があったものと認めるのが相当であり、控訴人とその従業員
の間に、職務発明についての特許を受ける権利を、控訴人が原始取得する旨の合意
があったと認めることはできない。
(3) 控訴人は、前記(2)の就業規則の規定は空文化されており、控訴人と従業員
との間で、職務発明について控訴人に原始取得する旨の黙示の合意があり、そのこ
とは、1)控訴人において、就業規則の規定にのっとった手続が行われたことがなか
ったこと、2)被控訴人代表者が、平成29年7〜8月に控訴人を出願人として職務\n発明について特許出願をしたが、控訴人は特許を受ける権利の移転を要求しておら
ず、また、承継対価の額についての協議や対価の支払を行わなかったこと、3)従前
からの取扱いを確認する形で平成30年9月3日に甲12規程が制定されたこと、
4)本件各発明の共同発明者が、本件各発明についての特許を受ける権利が控訴人に
原始的に帰属する旨認めていること、5)被控訴人代表者が大王製紙と控訴人との間\nの取引を奪うことを目的として、控訴人において本件各発明についての特許出願を
したことから、明らかであると主張する。
ア しかしながら、控訴人の就業規則の附則(4)により、同就業規則の改廃は
社員(従業員)の代表者の意見を聴いて行うものとされているところ(乙1)、控\n訴人において、就業規則の規定を変更するための手続が執られたことはなく、控訴
人とその従業員との間で、職務発明について就業規則の規定にかかわらず、特許を
受ける権利を控訴人に原始取得させることについての協議がされた等の事情もうか
がえないのであるから、控訴人と従業員との間で上記黙示の合意が成立していたも
のと認めることはできず、控訴人と被控訴人代表者との間でも、控訴人の主張する\n黙示の合意がされたことを認めるに足りる証拠はないというほかない。職務発明に
係る特許を受ける権利を使用者である控訴人に原始取得させることは、従業員にと
って、就業規則を不利益に変更するものであるところ、控訴人において、職務発明
の出願に関して、就業規則の規定にのっとった手続が行われたことがなかったこと
をもって、何らの協議を経ることもなく、直ちに、就業規則が変更されたとか、控
訴人と従業員らとの間で、就業規則とは異なる内容の合意が成立したなどと認める
ことはできない(上記1))。
イ また、被控訴人代表者が、職務発明について、特許事務所に対して、控訴人\nを出願人とする特許出願手続を依頼したことがあったという事実については、控訴
人を出願人とする特許出願手続を依頼することにより、被控訴人代表者が、控訴人\nに対して、特許を受ける権利を移転する旨の意思表示をしたとみることもできるの\nであって、上記事実をもって、控訴人と被控訴人代表者との間に、職務発明につい\nての特許を受ける権利を控訴人が原始取得する旨の黙示の合意があったと認めるこ
とはできない(上記2))。
ウ そして、甲12規程には、「職務発明については、その発明が完成した時に、
会社が特許を受ける権利を取得する。」との規定があり(第4条)、職務発明につい
ての特許を受ける権利が控訴人に原始的に帰属する旨定められているものの、甲1
2規程が適法に制定されたものであったとしても、控訴人の主張する本件各発明の
完成日(平成30年5月頃)よりも後の同年9月3日に制定されたものであるとい
うのであるから(甲12)、同日までに既に発生している特許を受ける権利の帰属
を原始的に変更することができるものではなく、このことは、甲12規程において、
平成26年1月1日以降に完成した発明に適用する旨規定されていることを考慮し
ても変わりはない(上記3))。
エ さらに、共同発明者であるとされる控訴人従業員の現時点における認識や、
被控訴人代表者の本件各発明の特許出願時の意図について、仮に控訴人の主張する\nとおりであったとしても、これらの事項は、本件各発明の特許を受ける権利の帰属
に影響しない(上記4)及び5))。
そうすると、控訴人の主張はいずれも採用できない。
◆判決本文
1審はこちら。
◆令和4(ワ)1848
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2023.05. 2
令和4(ネ)10062 職務発明の対価請求控訴事件、仮執行の原状回復及び損害賠償申立事件 特許権 民事訴訟 令和5年1月23日 知的財産高等裁判所 大阪地方裁判所
職務発明の対価として、知財高裁にて、約200万円の請求が認められました。額は一審と同じです。
ところで、旧特許法35条4項の「発明により使用者等が受けるべ
き利益」は、使用者等が「受けた利益」そのものではなく、「受ける
べき利益」であるから、使用者等が職務発明についての特許を受ける
権利を承継した時に客観的に見込まれる利益をいうものと解されると
ころ、使用者等は、特許を受ける権利を承継せずに、従業者等が特許
を受けた場合であっても、その特許権について同条1項に基づく無償
の通常実施権を有することに照らすと、「発明により使用者等が受け
るべき利益」には、このような法定通常実施権を行使し得ることによ
り受けられる利益は含まれず、使用者等が従業者等から特許を受ける
権利を承継し、当該発明の実施を排他的に独占し得る地位を取得する
ことによって受けることが客観的に見込まれる利益、すなわち「独占
の利益」をいうものと解される。また、特許を受ける権利の承継の時
点では、将来特許を受けることができるかどうか自体が不確実であり、
その発明により将来いかなる利益を得ることができるのかを具体的に
予測することは困難であることなどに照らすと、発明の実施又は実施\n許諾による使用者等の利益の有無やその額など、特許を受ける権利の
承継後の事情についても、その承継の時点において客観的に見込まれ
る利益の額を認定する資料とすることができるものと解される。
そして、使用者等が職務発明についての特許を受ける権利の承継後
に第三者との間のライセンス契約に基づいて当該発明の実施を許諾し
ている場合には、その実施料収入が「独占の利益」に該当し、また、
使用者等が、第三者に当該発明を実施許諾することなく、自ら実施
(自己実施)している場合には、特許権が存在することにより、第三
者に当該発明の実施を禁止したことに基づいて使用者が得ることがで
きた利益、すなわち、特許権に基づく第三者に対する禁止権の効果と
して、使用者等の自己実施による売上高のうち、当該特許権を使用者
等に承継させずに、自ら特許を受けた従業者等が第三者に当該発明を
実施許諾していたと想定した場合に予想される使用者等の売上高を超\nえる分(超過売上高)について得ることができたものと見込まれる利
益(超過利益)が「独占の利益」に該当するものというべきである。
この「超過利益」の額は、従業者等が第三者に当該発明の実施許諾を
していたと想定した場合に得られる実施料相当額を下回るものではな
いと考えられるので、「超過利益」を「超過売上高」に上記想定に係
る実施料率(仮想実施料率)を乗じて算定する方法にも合理性がある
ものと解される。
したがって、かかる「独占の利益」をもって、「その発明により
使用者等が受けるべき利益」とし、これと1審被告の貢献の程度
(「その発明がされるについて使用者等が貢献した程度」)を考慮し
て相当の対価の額を認定することは許されるものと解される。また、
特許法35条3項及び5項に基づく相当の対価請求権、同項の「その
発明により使用者等が受けるべき利益」についても、上記説示したと
ころと同様に解すべきである。
以上を前提に、1審原告の本件発明1に係る相当の対価請求権の
存否について判断する。
・・・
「a 本件発明2−1は、空気調和機(ルームエアコン)の室内ユニットに
搭載される熱交換器の配置について、前面熱交換器の設置角度α及びク
ロスフローファンの翼の出口角β2を、それぞれ所定の範囲に特定する
ことで、室内ユニットから所定風量を得るのに必要なファンモータ入力
や回転数を低減することができ、省エネを図ることができる点にその技
術的意義がある。また、前面熱交換器の設置角度αを65°以上とする
ことで、熱交換器からの水滴がファンへ流入して室内ユニットの外部へ
吹き出されること等を防止し、室内ユニットの奥行きをコンパクトにで
きるという効果もある(【0024】)。
もっとも、省エネ、ドレン水の確実な処理及び室内ユニットのコンパ
クト化という課題自体は、本件発明2−1の特許出願以前から存在する
ものであり、上記課題に対して、熱交換器を逆V字状にすること、前面
熱交換器と背面熱交換器との連結部を送風ファンの中心軸よりも前面側
に位置させ、かつ前面熱交換器の傾斜を急な配置にすること、熱交換器
を通過した空気がファンの翼に当たる際の空気の流れ方向の変化を滑ら
かにし、空気流の剥離等を防ぐために、翼形状を変更することといった
着想や技術自体は、従来から存在していた(前記(2)ウ)。
したがって、本件発明2−1は、ルームエアコンに備えられる基本的
な構成要素である熱交換器及びクロスフローファンについて、前面熱交\n換器の配置及びクロスフローファンの翼形状(出口角)を、同時に、具
体的な数値範囲をもって特定したところに技術的な意義があるものと認
められる。
b 他方で、ルームエアコンの省エネ性能の向上を図る技術には、室内\n機及び室外機それぞれを見ても、熱交換器、圧縮機、モータ、送風機
等に係る種々の技術が存在する。しかも、1審被告のほか、国内の競
合他社であるパナソニック、ダイキン、東芝、日立等は、それぞれ、\n省エネのための独自の基本的な技術を有しており、●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●1審被告以上又は同等
の市場占有率を保持していたと認められる(上記(2)イ、キ(ウ)、ク
(イ)及び(ウ))。
また、本件発明2−1は、前面熱交換器の配置及びクロスフローフ
ァンの翼形状(出口角)を特定することによって送風の効率を高める
ものであるところ、競合他社が、それぞれ独自に、ユニットの構造、\n熱交換器の配置、ファンの形状等を工夫して製品化をしていることか
らすれば、競合他社の製品に本件発明2−1をそのまま実施すること
により直ちにその性能が向上するものとは認められない。\n したがって、本件特許権2の存在により第三者に本件発明2−1の
実施を禁止したことに基づいて得ることができた利益は、限られた範
囲内のものと認められる。
c 加えて、1審被告は、対象製品群2の販売に当たり、被告カタログ
2)において、ムーブアイを大々的に取り上げるとともに、そのほかに
も脱臭機能、換気機能\、サプリメントエアー機能といった付加価値的\nな機能をも顧客に対し強く訴求していること、対象製品群2が販売さ\nれた当時、既にルームエアコンは家庭に広く普及し、省エネ等に係る
技術は、競合他社の製品においても採用されていたと考えられること
を踏まえると、付加価値的なものとはいえ、このような他社製品との
差別化を図る技術は消費者に対する訴求力を高め、対象製品群2の売
上げに大きく貢献したものとみるのが相当である。
(ウ) 小括
以上の事情を総合考慮すると、本件発明2−1に係る超過売上高は、
前記ウの売上高の0.5%と認めるのが相当である。
◆判決本文
1審はこちらです。
◆平成29(ワ)7391等
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2023.03.21
令和4(ワ)1848 特許権移転登録手続 特許権 民事訴訟 令和5年2月6日 大阪地方裁判所
在職中の職務発明であって原告が特許を受ける権利を有しているとして、移転登録を求めましたが、裁判所はこれを認めませんでした。
原告は、訴状とともに提出した令和4年3月4日付証拠説明書において、甲
12規程の作成年月日を平成26年1月1日としていたこと、被告は、令和4
年8月9日付準備書面において、甲12規程の存在を否認し、その根拠として、
甲12規程に用いられる「取得」「相当の利益」との文言は、平成27年7月に
公布され、平成28年4月1日に施行された特許法等の一部を改正する法律
(平成27年法律第55号)で初めて採用されたものであって、平成26年1
月1日時点でこのような文言が使われた規程が存したのは極めて不自然であ
ると指摘したこと、原告は、平成4年9月20日付け原告第1準備書面におい
て、前記第3「2」【原告の主張】のとおり主張したこと、はいずれも当裁判所
に顕著である。
(2) 本件において、甲12規程は、原告が本件各発明に係る特許を受ける権利
を原始取得する根拠として不可欠のものであって、訴え提起の段階で、甲12
規程が適用されるかどうかについては、その制定過程及び本件各発明の完成時
期や被告代表者の退職時期との関係で慎重に検討されるはずのものである。し\nかも、この経緯は、専ら原告の領域内の事情であり、かかる検討を阻むものは
ない。
しかるところ、原告は、当初甲12規程の作成日時を平成26年1月1日と
特定したにもかかわらず、被告から文言の不自然さを指摘されるや、その制定
日は平成30年9月3日であって、平成26年1月1日にさかのぼって適用さ
れると主張したものであって、このように主張が変遷した経緯自体、被告代表\n者が原告に在職中に甲12規程が制定されたことを疑わしめるに十分である。\nまた、そのように作成されたのであれば、甲12規程は、制定日を明らかにし
た上、同規程の適用を定めた10条は「さかのぼって適用する」と表現するの\nが自然と思われるが、同条にはそのような遡及適用の趣旨は記載されていない
し、制定日も書かれていない。遡及の限度が平成26年1月1日である根拠も
何ら示されていない。
加えて、甲12規程が、被告代表者の原告退職時期に近接した平成30年9\n月3日に真実制定されたというのであれば、原告と被告代表者間で当然に退職\n時に本件各発明に係る特許を受ける権利の帰属について協議ないし確認がさ
れるものと考えられる。しかし、原告は、被告代表者が原告を退職した後本件\n各発明について特許出願がされたことを知った後も、本件各特許権に係る発明
の実施品と思料されるボックス容器に関する大王製紙、原告、被告の取引に継
続して関与していたことを自認しているのであって、かかる協議や確認がされ
たこともうかがえないどころか、被告が権利者であることを前提とした行動を
とっているものというべきである。
(3) その他原告の提出する証拠等も、前記認定の経緯に照らすと採用の限りで
なく、結局、平成30年9月3日当時を含め、被告代表者が原告に在職する期\n間中に、甲12規程が適法に制定されたと認めるに足りる証拠はないといわざ
るをえない。
2 前記1によると、争点1に関わらず、原告が甲12規程により本件各発明に係
る特許を受ける権利を取得したとは認められない。本件各発明に適用される就業
規則(乙1)によっても、原告が特許を受ける権利を承継したとは認められない
し、また当該承継の事実を被告に対抗できない(特許法34条1項)。
なお、原告は、当裁判所が口頭弁論を終結する予定の期日として指定した令和\n4年12月16日の期日の直前に、同年11月29日付け準備書面により本件各
発明を原始取得させる旨の黙示の合意が存した旨の主張をした。同主張はそもそ
も時機に遅れた攻撃防御方法というべきであるが、前判示のとおり、本件各発明
において適用されるべき就業規則(乙1)が存するところ、かかる明示の合意の
ほかに、原告主張の従業員が原告名義の特許出願に異を唱えなかった等の事情か
ら特許を受ける権利の移転等に関する黙示の合意が成立する余地はないという
べきであって、原告の主張は、それ自体失当である
◆判決本文
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2023.01. 3
令和3(ネ)10006 職務発明対価請求控訴事件 特許権 民事訴訟 令和4年5月30日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
CD・DVD装置に関する職務発明に基づく対価請求として、1審は約1227万を認めました。双方控訴し、知財高裁はこれを約2557万に増額しました。
(25) 原判決143頁15行目の「あって、ほかに本件各発明の実施品が存在する
と認めるに足る証拠はない。」を「ある。なお、本件発明7の実施品の売上げについ
ては、後記3「その余の当審における当事者の補足主張等に対する判断」(3)で検討
する。」と、144頁19行目の「別紙10(判決注:「原判決別紙10」である。)
相当対価計算表(自己実施1)」を「別紙10「相当対価計算表\(自己実施1)」」と、145頁2〜3行目の「本件各発明」を「本件発明1及び2」と、146頁7行目
の「被告保有の特許」を「一審被告を含む同プログラムに参加する特許権者の保有
する特許」とそれぞれ改め、同頁7〜8行目の「ライセンスを求める者に対して、」
の次に「その選択に応じ、フィリップス社の保有する特許又はフィリップス社及び
本件ジョイント・ライセンス・プログラムに参加する特許権者の保有する特許につ
いて、」を挿入し、同頁12行目の「本件特許1及び2は」を「本件各特許は」と、
同頁14行目の「被告は、」から同頁18行目末尾までを「一審被告は、上記各製品
カテゴリに属する製品を製造、販売しようとする者が、フィリップス社に対し、ラ
イセンスを求めた場合には、フィリップス社における上記ライセンスポリシーに従
って、フィリップス社を通じ、当該製品カテゴリに属する製品を製造、販売するた
めに必要とされた他の特許と一括して実施許諾をしていたものと認められる。」と
それぞれ改め、同頁20行目冒頭から147頁9行目までを次のとおり改める。
「以上のとおり、本件発明1、2については、CD−R/RW等の規格必須特許
として扱われており、かつ、一審被告も現に実施していたことからすると、CD−
R/RWレコーダー及び同機能を有するDVD・BD関連製品並びにCD−R/R\nWディスクを製造・販売していた者に広く実施されていたと考えられ、CD−R/
RW規格に準拠した製品に競合するものとして、CD−R/RWレコーダー機能を\n有しないDVD関連製品等が存在していたとはいえるものの、CD−R/RW規格
に準拠した製品を製造・販売する者にとっては、規格必須特許である本件特許1、
2の代替技術は存在していなかったということができること、一審被告は、本件ジ
ョイント・ライセンス・プログラムにより、フィリップス社を通じ、本件特許1及
び2を必須特許として他の特許と一括して実施許諾しており、フィリップス社は、
本件ジョイント・ライセンス・プログラムについて、ライセンスを求める全ての企
業にライセンスを認めることを原則とするライセンスポリシーをとっていたものの、
全ての規格準拠製品を製造・販売する者が、フィリップス社を通じ又は一審被告と
直接、本件特許1、2についてライセンス契約を締結していたものではないこと、
そもそも、一審被告が、CD−R等の規格の策定に関与し、また、本件ジョイント・
ライセンス・プログラムに参加することができたのは、本件各特許を含む規格必須
特許を有していたからであると推認されること、一審被告が、例えば平成12年度
にはCD−R/RWドライブの世界出荷台数について21.3%と高いシェアを有
しており(甲25)、これについては本件各特許を含む規格必須特許を有していたこ
とが一審被告の売上げに有利に働いていたものと推認されること等に照らせば、本
件特許1、2について、独占の利益がなかったということはできない。
そして、平成12年にDVD関連製品の販売が開始されるまで、CD−R/RW
ディスク以外の光ディスクが広く販売されていたことはうかがわれず、また、フィ
リップス社が採用していたライセンスポリシーにおけるライセンス料やライセンス
条件等の内容が明らかでないことなどにも照らせば、一審被告製品1及び2の売上
げの一部は本件発明1及び2を含む特許発明による独占的地位に起因する超過売上
げであったと認めるのが相当であり、本件に顕れた事情を総合的に考慮すると、そ
の割合は一審被告製品1及び2の売上げの20%であったと認めるのが相当である。
もっとも、出願公開の後、特許権の設定登録がされる前においては、一定の条件
下での補償金支払請求権が認められ、特許法上の保護が与えられていることから、
独占的地位に起因する超過売上げが存在しないとはいえないものの、設定登録の可
否やその技術的範囲も確定していない上、独占的効力が制限的であることに照らす
と、出願公開後登録までの間は、登録後の2分の1の割合で独占の利益を認めるの
が相当であるから、当該期間については超過売上割合を10%とする。そうすると、
一審被告のCD−R/RWドライブ及びCD−Rディスクの売上げのうち、本件特
許1が登録された平成12年4月28日までの間の日本国内での売上げについては、
超過売上割合を10%とみることになる。」
(26) 原判決147頁25行目の「被告は、」の次に「本件ジョイント・ライセン
ス・プログラムに参加し、フィリップス社を通じて、」を挿入し、148頁1〜2行
目の「フィリップス社が採用していたライセンスポリシー」を「同ライセンスポリ
シー」と、同頁26行目〜149頁1行目の「国内同業他社のロイヤルティ料率に
関するアンケート結果に係る特許権のロイヤルティ率の平均値として」を「国内同
業他社に対してライセンスすることを想定するものとして行われたアンケートの結
果として、特許権のロイヤルティ料率の平均値が」とそれぞれ改め、同頁20行目
冒頭から26行目末尾までを削り、150頁8行目の「フィリップス社」を「フィ
リップス社ら」と、151頁16行目の「そして、」から同頁20行目末尾までを「そ
して、ライセンス対象特許リスト5)ないし7)の各パートに掲載された特許の数は、
58件、67件、144件、144件、119件、121件であるところ(なお、
ライセンス対象特許リスト6)については、前記(3)ウ(ア)bで述べたとおり、各19
件を控除した。)、その平均は108.83件であり、その9割に相当する97.9
4件であったと推認するのが相当である。」と、153頁2行目の「その実施特許は」
を「その実施特許の数は」とそれぞれ改め、同頁11〜12行目の「ことについて
は」から同頁12行目の「とおりである」までを削り、同頁15行目の「上記の検
索に係る」から同頁16行目末尾までを「平成8年から平成14年までの間、毎年
同等の数の特許権の存続期間が満了したと仮定した場合の平均特許件数よりも相当
程度に少ないものと考えられ、上記の検索に係る2509件の3割に相当する75
2.7件であったと推認するのが相当である。」と、同頁26行目及び156頁17
行目の「別紙10(判決注:「原判決別紙10」である。)相当対価計算表(自己実\n施1)」を「別紙10「相当対価計算表(自己実施1)」と、155頁9行目の「1\n505.4」を「752.7」と、同頁11行目の「501.8」を「250.9」
と、同頁12行目の「586.86」を「335.96」と、同頁13行目の「6
05.44」を「354.54」と、同頁15行目の「689」を「438.1」
と、同頁16行目の「532.16」を「281.26」と、同頁17行目の「5
16.65」を「265.75」と、156頁9行目の「前記(3)エ(イ)のとおりであ
る。」を「前記(3)エ(イ)(aを除く。)のとおりであり、また、音楽用CDに係る特許
については、いずれも平成14年までに存続期間が満了していたものと推認される
から、平成15年以降について、それらの特許の貢献があったと認めることはでき
ない。」とそれぞれ改め、同頁19行目冒頭から157頁22行目末尾までを次のと
おり改める。
「オ 争点2−2についての小括
ところで、後記2「争点1−4(本件発明7の実施の有無)に対する判断」(5)の
とおり、一審被告は、本件発明7についても実施している。これを考慮に入れた一
審被告が受けるべき利益の額については、別紙10「相当対価計算表(自己実施1)」\nのとおりと推定され、本件発明1、2及び7の実施により一審被告が受けるべき利
益の額は、同別紙の対象製品欄記載の製品の日本、米国及びオーストラリアでの売
上額に、日本における本件特許1の登録前の売上げについては、超過売上割合を1
0%、その他については超過売上割合を20%とし、仮想実施料率を2.5%とし
て、同別紙【B】’欄記載のとおり超過利益が算出され、これを、同別紙【D】欄記
載の補正後の実施特許件数で除して、対象特許1件当たりの利益の額を算出し(同
別紙【E】欄)、これに、同別紙【F】欄記載の本件各特許の数を乗じると、同別紙
【G】欄及び【G】’欄記載のとおり算出され、合計●●●●●●●●●●円である。
なお、同別紙【F】欄記載の本件各特許の数は、ドライブについては本件特許1、
2及び7の3件、ディスクについては本件特許1及び7の2件であるところ、CD
−R/RWドライブについては、別紙8「相当対価計算書(ライセンス1)」の【E】
欄と同様に、本件各特許の数を倍とした。また、本件発明7についてはDVDディ
スクについても実施品に当たるが、これについては、一審原告がその売上げを相当
対価の算出対象に含めない旨主張するから、上記算定に含めないものとした。
そして、前記(3)オと同様に、別紙10「相当対価計算表(自己実施1)」の対象製\n品欄記載の製品についての全世界の市場に占める日本、米国及びオーストラリアの
市場の割合は、日本が10%、米国が25%、オーストラリアが2%であったと認
めるのが相当であるから、CD−R/RWドライブ、追記書換型DVDドライブ、
CD−R/RWドライブとDVD−ROMドライブの複合ドライブ、BDドライブ
について、一審被告が受けるべき利益の合計額における本件発明1、2及び7の内
訳は、上記の市場の割合を踏まえて算定することができ、具体的には、別紙11「相
当対価計算表(自己実施2)」に記載するとおりである。\n
◆判決本文
1審はこちら。
◆平成28(ワ)29490
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