国内優先権が認められる範囲について、先願に記載されていたとして、29条の2の先願の地位を有するとした審決が取り消されました。
「CaO含有量については,優先権基礎出願明細書には,「10.0%より多いと,ガラスの耐バッファードフッ酸性が著しく悪化するため好ましくない」と記載され,同記載部分によれば,優先権基礎出願明細書においては,「10.0%」なる数値に上限としての技術的意義を有するものとして開示されているといえるが,「0〜8.0%」の範囲の数値については,何ら技術的な意味を示唆する記載はない。そして,優先権基礎出願明細書の実施例及び比較例によれば,CaOの含有量は,2.1〜7.5%の範囲にあることが示されており,CaOを「8.0%」含有させたガラス組成物についての開示はない。そうすると,優先権基礎出願明細書には,「8%」を上限とする「0〜8%」のCaO含有量範囲について,何らかの技術的意義を示した記述はないと理解するのが自然である。以上によれば,先願発明は,優先権基礎出願明細書に記載されているということはできない。」
◆平成18(行ケ)10449 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年12月26日 知的財産高等裁判所
特許の存続期間の延長の対象となるのかについて、争われました。知財高裁は、延長理由無しとした審決を維持しました。
「以上の(1)認定の事実によると,特許法68条の2にいう「物」が「有効成分」を,「用途」が「効能・効果」を意味するものとして立法されたことは,明らかであるというべきである。そして,その理由としては,新薬の特許は「有効成分」又は「効能\・効果」に与えられることが多いので,薬事法上,医薬品の品目の特定のために要求されている各要素のうち,新薬を特徴付けるものは「有効成分」と「効能・効果」であることが多く,そのため,それらについて「物」と「用途」という観点から特許権の存続期間延長制度を設けることとしたものと解することができる。そして,前記2のとおり,特許法は,同法67条2項の政令で定める処分の対象となった品目ごとに特許権の存続期間の延長登録の出願をすべきであるという制度を採用しておらず,処分の対象となった「物」及び「用途」ごとに特許権の存続期間の延長登録の出願をすべきであるという制度を採用しており,存続期間が延長された特許権は,処分の対象となった品目とは関係なく,「物」と「用途」の範囲で,その効力が及ぶのであるから,「物」と「用途」の範囲は明確でなければならないところ,これらを「有効成分」と「効能\・効果」と解すると「物」と「用途」の範囲が明確になるということができる。「物」と「用途」を「有効成分」と「効能・効果」と解さないと「物」と「用途」の範囲は極めてあいまいなものになるといわざるを得ず,法的安定性を欠くことになる。したがって,特許法68条の2にいう「物」は「有効成分」を,「用途」は「効能\・効果」を意味するものと解するのが相当である。」
◆平成18(行ケ)10311 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年07月19日 知的財産高等裁判所