共同出願違反の無効理由なしとした審決を、共同開発における契約解除は有効でないとして、取り消しました。
「審決において債務不履行解除の意思表示の認定根拠とされている甲8書簡中の「本開発委託契約を御解約される場合は」という記載には,敬語が使用されているから,その「御解約」の主体は,被告作成の甲8書簡の相手方である原告であると理解される。また,甲8書簡において,被告が原告に対して主張した開発設計費支払請求の法的根拠は,債務不履行解除に係る損害賠償請求権(民法545条3項,415条)ではなく,本件開発委託契約書(甲5)の4条である。同条項の記載,すなわち「甲(判決注原告)のやむを得ない事由により,開発を中止又は中断しなければならなくなったとき,甲はその旨を乙(判決注被告)に書面にて通知することにより,本契約を解除することができる。この場合,甲乙協議の上,乙がそれまで負担した費用を甲は乙に支払うものとする。」という約定記載によれば,その解除権行使の主体は,原告のみに限定されている。したがって,甲8書簡で言及された「御解約」の主体は,被告ではなく,原告であることは明らかである。その他,甲8書簡には,債務不履行を理由とする解除の意思表\示を認めるに足りる記載が見当たらない。そうすると,甲8書簡をもって被告が期限付きの債務不履行解除の意思表示をし,又は黙示的にその意思表\示をしたものであると認めることはできない。したがって,被告が債務不履行を理由とする解除の意思表示をしたとした審決の認定は誤りであり,この点に関する原告の主張は,理由がある。」
◆平成19(行ケ)10351 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年10月28日 知的財産高等裁判所