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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

その他特許

平成25(ワ)13223 実用新案権 平成25年10月18日 東京地方裁判所

 原告が全面的に敗訴した前々訴の請求及び主張の蒸し返しに当たるとして、損害賠償請求が却下されました。
 一個の金銭債権の数量的一部請求は,当該債権が存在しその額は一定額を下回らないことを主張して右額の限度でこれを請求するものであり,債権の特定の一部を請求するものではないから,請求の当否を判断するためには,おのずから債権の全部について審理判断することが必要になる。数量的一部請求を全部棄却する旨の判決は,債権の全部について行われた審理の結果に基づいて,当該債権が全く現存しないとの判断を示すものであって,後に残部として請求し得る部分が存在しないとの判断を示すものにほかならないから,金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した判決が確定した後に,原告が残部請求の訴えを提起することは,実質的には前訴で認められなかった請求及び主張を蒸し返すものであり,前訴の確定判決によって当該債権の全部について紛争が解決されたとの被告の合理的期待に反し,被告に二重の応訴の負担を強いるものとして,特段の事情がない限り,信義則に反して許されないというべきである。そして,この理は,訴訟物を異にするものの,債権の発生原因として主張する事実関係がほぼ同一であって,前訴等及び本訴の訴訟経過に照らし,実質的には敗訴に終わった前訴等の請求及び主張の蒸し返しに当たる訴えにも及び,その訴えも同様に信義則に反して許されないものというべきである(上記平成10年最判参照)。これを本件についてみると,前々訴は,被告が製造・販売しているテレホンカードの構成につき,「カード式公衆電話機に差し込むことにより電話がかけられるテレホンカードで,縦の辺が横の辺に比して短い長方形であって,表\裏ともに一様に平坦で,その一短辺には,その中央から一側に偏った位置に,一つあるいは二つの半月状の切欠部が形成されており,この切欠部に手,指で触れることにより,カードの表裏及び差込方向の確認をすることができるもので,この内,使用度数が五〇度数のものは切欠部が二個あり,使用度数が一〇五度数のものは切欠部が一個ある」としていたところ,これは本件訴えにおける被告製品の構\成を含むものである。そして,前々訴は,その被告製品が本件考案の技術的範囲に属することを前提として,昭和59年9月5日以降,10年分の被告製品の販売にかかる不当利得の返還を求めたものであり,本件訴えは,被告製品が本件考案の技術的範囲に属することを前提として,平成8年2月21日から平成11年9月5日までの仮保護に基づく損害賠償請求であるとするところ,訴訟物を異にするものとしても,被告製品が本件考案の技術的範囲に属することにより,原告の有する本件実用新案権が侵害されたことについては,主張立証すべき事実関係はほぼ同一であって,被告製品は本件考案の技術的範囲に属しないことを理由として原告が敗訴した前々訴の訴訟経過に加え,前訴及び本件訴えの訴訟経緯にも照らすと,本件訴えは,被告製品が本件考案の技術的範囲に属しないとして原告が全面的に敗訴した前々訴の請求及び主張の蒸し返しに当たることが明らかである。そうすると,本件訴えは,信義則に反し許されず,これを許容する特段の事情がない限り,不適法として却下すべきこととなる。

◆判決本文

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平成24(行ケ)10295 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年09月18日 知的財産高等裁判所

 延長登録について拒絶した審決が取り消されました。
 証拠(甲11,12)によれば,本件速放性組成物には,●●●●●含まれていること(甲11の1,2.3−4頁の表2.3.P.1−2),FRGには,●●●●●が含まれているが,●●●●●は含まれていないこと(甲12,2.3−26頁の表\2.3.P.2−8)がそれぞれ認められる。以上によれば,本件速放性組成物の組成とFRGの組成とは,●●●●●●●を含有するか否かの点で異なっている。そして,薬剤の最高血中薬物濃度到達時間が,有効成分の含有量のみならず,結合剤の含有量や種類によって影響を受けることは技術常識であると解されるから,審決が,本件対象医薬が本件クレームの「最高血中薬物濃度到達時間が約60分以内である速放性組成物」との要件を充足するか否かを判断するに当たり,本件速放性組成物とは組成の異なるFRGの最高血中薬物濃度到達時間である1.04±0.498時間を判断の基礎としたことは誤りであるといわざるを得ず,この誤りは審決の結論に影響を及ぼすものである。

◆判決本文

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平成23(ワ)8085等 各損害賠償等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年09月12日 東京地方裁判所

 特許権侵害について損害賠償が認められました。幇助者に対して、先行技術を調査 するべきだったとして幇助についての過失が認定されました。
 被告三菱電機が被告製品4及び5を譲渡し,又は譲渡等の申出をしたことを認めるに足りる証拠はない。ところで,被告三菱電機を除く被告らは,被告日本建鐵が製造して,被告ライフネットワーク及び同住環境システムズに販売し,同被告両名が転売するという関係にあったから,被告ライフネットワークが販売した被告製品4及び5に係る被告日本建鐵と同ライフネットワークの各譲渡,被告住環境システムズが販売した被告製品4及び5に係る被告日本建鐵と同住環境システムズの各譲渡は,それぞれ客観的に関連したものということができる。そして,証拠(甲33ないし35,40ないし56,58ないし60,73,74,81)及び弁論の全趣旨によれば,被告ライフネットワーク,同住環境システムズ及び同日本建鐵は,被告三菱電機の完全子会社であるところ,被告三菱電機は,被告ライフネットワーク,同住環境システムズ及び同日本建鐵と共に洗濯機の製造販売に係る事業を行い,被告日本建鐵と共に被告製品4及び5を開発したり,被告製品4及び5を発売する旨のプレスリリースや新聞広告を出したり,被告製品4及び5のカタログや取扱説明書の最終頁に自らの名称を表\示したり,製造物責任を負担する趣旨で被告製品4及び5に自らの商号を表示したりしたことが認められる。これらの事実によれば,被告三菱電機は,被告製品4及び5に係る被告日本建鐵,同ライフネットワーク及び同住環境システムズのそれぞれの譲渡を幇助したものということができる。そして,被告三菱電機は,被告日本建鐵と共に,被告製品4及び5を開発したのであるから,先行技術を調査するなどして上記各譲渡を幇助すべきでなかったのに,漫然と幇助した過失も認められる。したがって,被告らは,民法719条の共同不法行為として,連帯して損害賠償責任を負う。\n

◆判決本文

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平成24(ネ)10093 特許権侵害差止請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成25年08月09日 知的財産高等裁判所

 侵害訴訟の控訴審です。地裁では特許権侵害が認定されました。被告が控訴しましたが、控訴棄却されました。被控訴人の追加主張について、時期に後れた抗弁について、却下はされませんでした。
 被控訴人は,控訴人の本件防御方法の提出が時機に後れたものである旨主張する。しかし,本件防御方法のうち,当判決における第2の2(4),(6)及び(9)記載の主張は,既に提出済みの証拠に基づき判断可能なものであるし,同3(1)ア記載の主張についても,直ちに取調べの可能な書証及び既に提出済みの証拠に基づき判断可能\なものである。さらに,当裁判所は,平成25年6月10日の当審第2回口頭弁論期日において,弁論を終結したものである以上,本件防御方法の提出が「訴訟の完結を遅延させる」(民訴法157条1項)ものとはまでは認め難い。よって,本件防御方法を時機に後れたものとして却下する必要はない。

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成23年(ワ)第24355号

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平成25(ネ)10014 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成25年07月11日 知的財産高等裁判所

 ウェブサイトにおける商品紹介は、販売の申し出には該当しないとした1審判決が維持されました。
 被控訴人は,技術商社であって,仕入先メーカーから仕入れた各種半導体製品を顧客に販売しているところ,被控訴人の半導体製品の仕入先メーカーの一つにエバーライト社があるが,被控訴人はエバーライト社の取扱代理店ではないこと,被控訴人ウェブサイトには,半導体デバイスのページに15社を数える半導体の取扱メーカーの一つとしてエバーライト社についての記載があり,エバーライト社のウェブサイトのトップページへのリンクやエバーライト社がLED製品を取り扱っている旨の記載があるが,具体的にどのLED製品を取り扱っているかについては記載がないこと,エバーライト社のウェブサイトのトップページへのリンクをクリックすると,同社のトップページに移動するが,このページには具体的なLED製品の記載はないこと,このページからさらに具体的な製品が掲載されたページにたどり着くためには,複数回リンクをたどる必要があり,例えば,本件製品1に関する情報が掲載されたページにたどり着くためには,トップページの「Products」のボタン,「Visible LED Components」の項目,「Low−Mid Power LED」の項目,「5050(0.2w)」の項目,「Datasheet」の欄の下にあるPDFファイルのアイコンを順次たどる必要があることが認められ,これらの事情に鑑みると,被控訴人ウェブサイトの記載をもって,被控訴人が本件各製品について譲渡の申出をしていると認めることはできない。なお,過去には,被控訴人ウェブサイト内にエバーライト社についてのページが存在し,このページにおいて,製品案内として,「アプリケーション」に「屋内外サインボード」,「各種信号灯」,「車載関連(インテリア・エクステリア)」,「携帯端末バックライト」,「DVD/STB/TV」との記載,「製品」に「砲弾型LED全般」,「面実装タイプ LED全般」,「IrDA」,「フォトカプラ」,「フォトリンク」との記載があったが,さらに具体的にどのLED製品を取り扱っているかについては記載がなく,結局,具体的な個別のLED製品を知るには,エバーライト社のウェブサイトによらなければならなかったのであって,過去の被控訴人ウェブサイト内に,現在のページとほぼ同じ内容のページのほか,上記のエバーライト社についてのページが存在していたとしても,これをもって,被控訴人が本件各製品について譲渡の申出をしていたと認めることはできない。(イ) この点,控訴人は,顧客は,必ず,購入したい特定の製品を念頭において,被控訴人ウェブサイトにアクセスし,目的とする品目の製品情報にたどり着くまでリンクをたどるのであるから,被控訴人ウェブサイトに具体的製品の記載がないことや,個別のLED製品の型番や製品情報に行き着くために複数回のクリックを要するかダイレクトに行き着くかは,「譲渡の申出」性を否定する理由にはならず,殊に被控訴人ウェブサイトの「半導体製品」のカテゴリーにある15社のうち,LED関連の製品を挙げるのは,エバーライト社及び株式会社光波のみであり,被控訴人の顧客がLEDを購入しようとすれば,実際上,エバーライト社か他の1社しか選択肢はないのであって,被控訴人ウェブサイトの記載からは,本件各製品について譲渡の申\出が認められる旨主張する。しかしながら,顧客が,必ず,購入したい特定の製品を念頭において被控訴人ウェブサイトにアクセスするものとは断定できない上に,被控訴人はエバーライト社の取扱代理店ではなく,被控訴人ウェブサイトにおいても,半導体デバイスの仕入先メーカーの一つとしてエバーライト社を紹介し,具体的製品を何ら特定することなく同社製品を一般的に取り扱っている旨を記載しているにすぎず,被控訴人ウェブサイトに貼られたエバーライト社のウェブサイトへのリンクも,単に同社のトップページに移動するもので,同社製品に直接リンクするものではない。そして,顧客が被控訴人ウェブサイトに貼\られたエバーライト社のウェブサイトへのリンクから,同社ウェブサイトのトップページに移動した後,具体的な製品が記載されたページにたどり着くためには,同社のウェブサイトにおいて複数回リンクをたどる必要があるところ,かかるエバーライト社のウェブサイトにおけるリンクの方式や具体的な取扱製品の記載が同社による同社製品の譲渡の申出に当たるか否かは格別,エバーライト社が管理する上記ウェブサイトの記載をもって,被控訴人による譲渡の申\出と認めることはできない。そして,前記(ア)で認定した事実に加え,前掲乙1,2及び12において,被控訴人が,本件各製品については,いずれもE&E社との間で商談を行ったこともサンプルの提供を受けたこともなく,その予定もない旨陳述していることや,被控訴人において今後も本件各製品を販売する意思のない旨を表\明していることをも併せ考慮すれば,被控訴人ウェブサイトの記載やエバーライト社のウェブサイトのトップページへのリンクの貼り付けをもって,譲渡の申\出の事実があるものと認めることはできない。

◆判決本文

◆1審はこちら。平成23(ワ)32488等

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平成24(行ケ)10059 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年03月13日 知的財産高等裁判所

 共同発明か否かが争われました。裁判所は共同発明でないとした審決を維持しました。
 ある特許発明の共同発明者であるといえるためには,特許請求の範囲に記載された発明の構成のうち,従前の技術的課題の解決手段に係る部分,すなわち発明の特徴的部分の完成に現実に関与したことが必要であると解される。ところで,特許法123条1項2号は,特許無効審判を請求することができる場合として,「その特許が・・・第38条・・・の規定に違反してされたとき(省略)。」と規定しているところ,同法38条は,「特許を受ける権利が共有に係るときは,各共有者は,他の共有者と共同でなければ,特許出願をすることができない。」と規定している。このように,特許法38条違反は,特許を受ける権利が共有に係ることが前提となっているから,特許が同条の規定に違反してされたことを理由として特許無効審判を請求する場合は,審判請求人が「特許を受ける権利が共有に係ること」について主張立証責任を負担すると解するのが相当である。これに対し,特許権者が「特許を受ける権利が共有に係るものでないこと」について主張立証責任を負担するとすれば,特許権者に対して,他に共有者が存在しないという消極的事実の立証を強いることになり,不合理である。特許法38条違反を理由として請求された無効審判の審決取消訴訟における主張立証責任の分配についても,上記と同様に解するのが相当であり,審判請求人(審判請求不成立審決の場合は原告,無効審決の場合は被告)が「特許を受ける権利が共有に係ること」,すなわち,自らが共同発明者であることについて主張立証責任を負担すると解すべきである。したがって,本件においては,審判請求人である原告が,自らが共同発明者であること,すなわち,本件発明1〜6の特徴的部分の完成に原告が現実に関与したことについて,主張立証責任を負担するものというべきである。\n
・・・・
イ 本件発明1〜3は,「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材」により「二重瞼形成用テープ」を構\成することにより,二重瞼を形成するために従来技術において必要とされた細かい作業や慣れを不要とし,皮膚につれを生じさせたり皮膜の跡が残したりすることなく,簡単にきれいで自然な二重瞼を安全に形成できるというものであるから,本件発明1〜3の上記特徴的部分が完成したといえるためには,「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材」によって構\成した二重瞼形成用テープのテープ状部材の粘着剤を塗着した部分を瞼におけるひだを形成したい部分に押し当ててテープ状部材をそこに貼り付け,両端の把持部を離すことによって,弾性的に縮んだテープ状部材がこれを貼\り付けた瞼にくい込む状態になって二重瞼のひだが形成され,二重瞼形成用テープとして使用できることを確認したことを要するものと解するのが相当である。
(3)本件発明4〜6の特徴的部分の完成を基礎付ける事情
ア前記(1)によれば,本件発明4の特徴的部分は,本件発明1又は2の「テープ状部材の両面または片面に引張りによって破断する破断部を有する剥離シートを貼付した」点であると認められる。本件発明5は,本件発明4の破断部を,剥離シートの長手方向略中央に設けられた切欠溝によって形成したものにすぎず,本件発明6は,本件発明4又は5の剥離シートがシリコンペーパー又はシリコンを施したフィルムであるものにすぎず,いずれも,本件発明4の上記特徴的部分を除いて特段の技術的意義を有するものではない。したがって,本件発明5及び6には,本件発明4の上記特徴的部分を除いて特徴的な部分はない。イ本件発明4〜6は,本件発明1又は2を「テープ状部材の両面または片面に引張りによって破断する破断部を有する剥離シートを貼\付した」構成とすることにより,テープ状部材に把持部や離型紙を設けなくてもテープ状部材の粘着材が指や他の物品に付着することがなく,また,当該二重瞼形成用テープを使用する際には,当該二重瞼形成用テープを左右両側に引っ張るだけでテープ状部材が延びた状態で露出することから,本件発明1〜3に係る二重瞼形成用テープよりもさらに使いやすいという点に技術的意義があるものであるから,本件発明4〜6の上記特徴的部分が完成したといえるためには,この技術的意義を確認したこと,すなわち,本件発明1又は2を「テープ状部材の両面または片面に引張りによって破断する破断部を有する剥離シートを貼\付した」構成とした二重瞼形成用テープを引っ張った時には,その長さ方向への引っ張り力に対して,テープ状部材が二重瞼形成のために必要かつ十\分な程度の長さに至るまで延びたままの状態(切れない程度の強度を有している状態)において,剥離シートが破断部において容易に破断しテープ状部材から剥離して,二重瞼形成用テープとして使用する際の使いやすさが向上することを確認したことを要するものと解するのが相当である。
3 本件発明1〜3に係る原告の共同発明者性について
(1)原告の供述の信用性について
原告は,本件発明1〜3の特徴的部分の完成に原告が現実に関与したことを基礎付ける事実として,本件発明1の着想は,平成12年頃,被告が両面テープ(3M社製#1522)をはさみで細く短冊状に切り引っ張った際に両面テープの伸縮性を発見し,化粧品雑貨等への利用方法を原告と協議する中で得られたものであると主張し,原告の供述はこれに沿う。すなわち,原告は,原告本人尋問において,要旨次のとおり供述している。「原告と被告は,平成12年の春頃,プレオ社の玄関の応接室のところで,両面テープ(3M社製#1522)をアイメイク関係で二重瞼に使えるのではないかという話をした。その時点では既に,原告,被告及びAの3人でプレオ社を辞めて新しい会社を作ることが決まっており,もし商品ができた場合は,新会社で商品にしようということを約束していたので,それ以上の話はしていないし,実際に両面テープを瞼に当てるなどの実験はしていない。その後,原告と被告は,この両面テープをどういう商品にするかについて,喫茶店で何回か打合せをしたことがあり,被告の車の中で1回話をしたことがある。被告の車の中で話をした際には,両面テープをどういう商品にするかという話はしておらず,また,両面テープのサンプルも見ていない。被告の車の中で話したことは,新しい会社をどういう会社にするかということである。」しかし,原告の上記供述は,容易く信用することができない。その理由は次のとおりである。
ア本件発明1に係る商品の開発意図について
上記のとおり,原告は,原告本人尋問では,平成12年春頃に原告と被告が本件発明1の着想を得た時点では既に,新たに開発する商品を新会社の商品とすることが決まっていた旨を述べている。しかし,原告は,甲1(審判において提出された原告の陳述書)では,両面テープを利用した二重瞼形成用テープはプレオ社の新商品として開発する予定であった旨を述べている。すなわち,甲1には,要旨以下の記載がある。「詳しい時期は忘れたが,平成12年頃,被告が何かの拍子に両面テープ(3M社製#1522)をはさみで細く短冊状に切って引っ張ったところ,両面テープが長く伸びた。長く伸びた両面テープを見て,被告から「何か新しい化粧品雑貨等に使えないか」という話が出たので,原告と被告とで話を続けているうちに,「二重瞼形成用素材として使えないか」ということになった。当時,プレオ社では,二重瞼を形成するための「液状のり」を取り扱っていたが,二重瞼を作るのに面倒で手間がかかり,売れ行きも良くなく,新商品を開発できないかと二人で話をしていたこともあり,その両面テープで瞼を貼\り付け,二重瞼形成用素材にできないかという話になった。その後も二人でいろいろ話をして,3M社製の両面テープ素材を前提とした二重瞼形成用テープをシリコンシートで挟み込み,伸ばしやすいようにシリコンゴムに切れ目を入れるなどの発明の基本的な骨格ができあがった。もっとも,その後プレオ社の業績が悪くなり,両面テープの開発が具体的に進展することはなかった。平成12年夏頃,プレオ社から原告に対し,会社の業績も悪いことから退職して27もらえないかという話があった。これを聞いた被告とAが原告に同調し,3人でプレオ社を辞めて新たに事業を立ち上げようということになった。平成12年9月の新会社設立当初は,お金を稼ぐことで手いっぱいであったため,「伸びる両面テープによる二重瞼形成用テープ」の開発にすぐに着手することはできなかったが,原告は,近い将来新会社で製造販売することを考えていた。「伸びる両面テープによる二重瞼形成用テープ」の開発について具体的な協議を始めたのは,平成13年1月に至ってからである。」甲1の上記記載によれば,原告が本件発明1の着想を得たとする時点(原告本人尋問によれば,平成12年の春頃)では,原告と被告は,両面テープを利用した二重瞼形成用テープを,売上げ不調のプレオ社の従来商品に代わる新商品としようという話をしたということになる。これに対して,原告本人尋問では,上記のとおり,平成12年の春頃には既に新会社設立の話が決まっており,両面テープを利用した二重瞼形成用テープを新会社の商品とすることは既定の事実であったというのである。原告と被告が平成12年の春頃に両面テープを利用して二重瞼形成用テープとすることを話したという事実は,本件発明1の着想を得たことを基礎付ける事実として原告が主張している事実であるから,着想を得た当の本人であるにもかかわらず,その着想に係る商品をプレオ社のために開発するか新会社のために開発するかという開発意図について,供述が変遷し,相互に矛盾するということは,極めて不自然である。イ新会社の商品とすることが話し合われたか否かについて上記のとおり,原告は,原告本人尋問では,平成12年春頃に原告と被告が本件発明1の着想を得た時点では,両面テープを利用した二重瞼形成用テープを新会社の商品とすることは既に決まっていた旨を述べている。しかし,原告は,甲39(本訴において提出された原告の陳述書)では,平成12年の春頃に原告と被告が上記の話をした正にその際に,両面テープを利用した二重瞼形成用テープを新会社28の商品として開発することを決めた旨を述べている。すなわち,甲39には,要旨以下の記載がある。「具体的な時期は覚えていないが,平成11年の末頃,原告は,プレオ社の社長から退職勧奨を受け,被告とAに相談した結果,3人でプレオ社を辞めようという話になったが,すぐに辞める必要はない,退職金のこともあるから3人で組合を作って交渉しようという話になった。その後,具体的な時期は覚えていないが,平成12年になってから,3人でプレオ社を退職して新会社を作ろうという話になった。最終的には,平成12年夏頃,プレオ社からの退職が具体化した。具体的な時期は覚えていないが,平成12年の春頃,被告が原告の机のところに(当時,原告の席と被告の席は,プレオ社の同じフロアにあった。),はさみで短冊状に切った両面テープ(3M社の#1522)を持ってやってきた。被告は,短冊状に切った両面テープを原告に見せながら,「このテープは引っ張ると伸びるけど,何か新しい商品に使えないだろうか。」という話をしてきた。被告は,「アイメイク品として何かに使えないか」といった話もしていた。その際に,いろいろな話をしている中で,原告と被告のどちらからともなく「両面テープを瞼に貼り付ければ,二重瞼を作るものに使えるのでは?」「二重瞼テープにしよう」ということになった。退職問題が進展している最中のことだったので,「このアイデアはプレオ社には内緒にしておこう」「新会社の商品としよう。」ということになった。」原告と被告が平成12年の春頃に両面テープを利用して二重瞼形成用テープとすることを話したという事実は,本件発明1の着想を得たことを基礎付ける事実として原告が主張している事実であるから,着想を得た当の本人であるにもかかわらず,その着想を得たとする話の際に,その着想に係る商品を新会社の商品として開発することを決めたのか,それとも既に決めていたのかという点について供述が変遷し,一貫しないということは,不自然である。
ウ 平成12年春頃の話をしたとする場所について
上記のとおり,原告は,原告本人尋問では,平成12年の春頃に原告と被告が両面テープを利用して二重瞼形成用テープとすることを話した場所は,プレオ社の玄関の方と述べているのに対し,甲39では,原告の机のところ(当時,原告の席と被告の席は,プレオ社の同じフロアにあった。)と述べている。原告と被告が平成12年の春頃に両面テープを利用して二重瞼形成用テープとすることを話したという事実は,本件発明1〜3の着想を得たことを基礎付ける事実として原告が主張している事実であるから,着想を得た当の本人であるにもかかわらず,その着想を得たとする話をした場所について,供述が一貫しないというのは不自然である。以上のとおり,原告が平成12年の春頃本件発明1の着想を得たとする原告本人尋問における原告の供述は,重要な点において,それ以前に作成された原告の陳述書(甲1,39)の記載内容から変遷しており,一貫しないものであるから,その供述を容易く信用することはできない。したがって,原告の上記主張(本件発明1の着想は,平成12年頃,被告が両面テープ(3M社製#1522)をはさみで細かく短冊状に切り引っ張った際に両面テープの伸縮性を発見し,化粧品雑貨等への利用方法を原告と協議する中で得られたものであるとの主張)は理由がなく,他に,原告が本件発明1〜3の特徴的部分の完成に現実に関与したことを認めるに足りる証拠はない。
(2)原告の供述を前提としても原告が本件発明1〜の特徴的部分の完成に現実に関与したとはいえないこと
仮に,原告と被告が平成12年の春頃両面テープを利用して二重瞼形成用テープとすることを話したという事実があったとしても,原告の供述によれば,その際には,二重瞼形成用テープにしようという話をしただけで,それ以上の話はしておらず,また,実際に両面テープを二重瞼に当てるなどの実験はしていないというのである。また,その後原告は被告と喫茶店で何回か打合せをした旨供べているものの,打合せの具体的な内容については何ら言及されていない上,被告の車の中で1回話をしたことがあるが,そこでも両面テープをどのような商品にするかについての話はしていないというのである。そうすると,原告の供述を前提としても,本件発明1の着想に係る原告の関与としては,平成12年の春頃,原告と被告との間において,伸縮性のあるテープが二重瞼形成用に使えるのではないかといった極めて漠然とした話がされたという程度のものすぎず,この程度の関与は,仮にあったとしても,単なる思いつきのレベルを超えるものではなく,これをもって,本件発明1の特徴的部分が完成したものと認めることはできない。すなわち,前記2(2)のとおり,本件発明1〜3の特徴的部分が完成したといえるためには,「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材」によって構\成した二重瞼形成用テープのテープ状部材の粘着剤を塗着した部分を瞼におけるひだを形成したい部分に押し当ててテープ状部材をそこに貼り付け,両端の把持部を離すことによって,弾性的に縮んだテープ状部材がこれを貼\り付けた瞼にくい込む状態になって二重瞼のひだが形成され,二重瞼形成用テープとして使用できることを確認したことを要し,このような確認をすることなく,単に,「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材」を二重瞼形成用テープとして使用することを着想しただけでは足りないというべきである。これを原告の供述に係る原告の関与についてみると,原告は両面テープを二重瞼に当てるなどの実験もしていないというのであるから,原告が,実際に,両面テープによって二重瞼のひだが形成され,二重瞼形成用テープとして使用できることを確認していないことは明らかである。したがって,原告の供述を前提としても,原告が本件発明1〜3の特徴的部分の完成に現実に関与したとはいえない。

◆判決本文

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平成23(ワ)38969 債務不存在確認請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年02月28日 東京地方裁判所

 アップルとサムスンの訴訟です。東京地裁は、サムスンによる権利濫用があるとしてて、差止請求不存在を認めました。
 原告は,被告が意図的に本件特許について適時開示義務に違反したこと,被告の本件仮処分の申立てが報復的な対抗措置であること,被告が本件FRAND宣言に基づく標準規格必須宣言特許である本件特許権についてのライセンス契約締結義務及び誠実交渉義務に違反し,いわゆる「ホールドアップ状況」(標準規格に取り込まれた技術の権利行使によって標準規格の利用を望む者が利用できなくなる状況)を策出していること,かかる被告の一連の行為が独占禁止法に違反することなどの諸事情に鑑みれば,被告が原告に対し,本件特許権に基づく損害賠償請求権を行使することは,権利の濫用(民法1条3項)に当たり許されない旨主張する。
ア(ア) 我が国の民法には,契約締結準備段階における当事者の義務について明示した規定はないが,契約交渉に入った者同士の間では,一定の場合には,重要な情報を相手方に提供し,誠実に交渉を行うべき信義則上の義務を負うものと解するのが相当である。ところで,前記前提事実によれば,1)3GPPを結成した標準化団体であるETSI(欧州電気通信標準化機構)の会員である被告は,平成19年8月7日,甲13の書面で,ETSIに対し,本件出願の国際出願番号等に係るIPR(知的財産権)がUMTS規格(3GPP規格)に必須であること,この必須IPRについて,ETSIのIPRポリシー6.1項に準拠するFRAND条件(公正,合理的かつ非差別的な条件)で,取消不能\なライセンスを許諾する用意がある旨の宣言(本件FRAND宣言)をしたこと,2)IPRについてのETSIの指針1.4項は,会員の義務として,「必須IPRの所有者は,公正,合理的かつ非差別的な条件でライセンスを許諾することを保証することが求められること」(IPRポリシー6.1項),会員の権利として,「規格に関し,公正,合理的かつ非差別的な条件でライセンスが許諾されること」(IPRポリシー6.1項),第三者の権利として,「少なくとも製造及び販売,賃貸,修理,使用,動作するため,規格に関し,公正,合理的かつ非差別的な条件でライセンスが許諾されること」(IPRポリシー6.1項)を定めていることが認められる。上記1)及び2)と弁論の全趣旨を総合すると,被告は,ETSIのIPRポリシー6.1項,IPRについてのETSIの指針1.4項の規定により,本件FRAND宣言でUMTS規格に必須であると宣言した本件特許権についてFRAND条件によるライセンスを希望する申出があった場合には,その申\出をした者が会員又は第三者であるかを問わず,当該UMTS規格の利用に関し,当該者との間でFRAND条件でのライセンス契約の締結に向けた交渉を誠実に行うべき義務を負うものと解される。そうすると,被告が本件特許権についてFRAND条件によるライセンスを希望する具体的な申出を受けた場合には,被告とその申\出をした者との間で,FRAND条件でのライセンス契約に係る契約締結準備段階に入ったものというべきであるから,両者は,上記ライセンス契約の締結に向けて,重要な情報を相手方に提供し,誠実に交渉を行うべき信義則上の義務を負うものと解するのが相当である。そして,遅くとも,アップル社が,平成24年3月4日付け書簡(甲65の1)で被告に対し,被告がUMTS規格に必須であると宣言した本件特許を含む日本における三つの特許に関するFRAND条件でのライセンス契約の申出をした時点(前記(1)ウ(カ)b)で,アップル社から被告に対するFRAND条件によるライセンスを希望する具体的な申出がされたものと認められ,アップル社と被告は,契約締結準備段階に入り,上記信義則上の義務を負うに至ったものというべきである。
(イ) この点に関し,被告は,1)日本法の観点からは,FRAND宣言により誠実交渉義務が生じるのは,ライセンス対象特許の有効性を争うことなく,真にライセンスを受けることを希望する「確定的なライセンスの申出」が必要であると解すべきである,2)アップル社の被告に対する平成24年3月4日の申出は,被告の本件特許の抵触性と有効性を争うものであるから,そもそも「確定的なライセンスの申\出」に該当しないし,3)また,アップル社の上記申出の内容は,「●(省略)●%」という不合理に低額なライセンス料率を提示するものであって,交渉が成立しないことを知った上で,申\出の外形を形式的に策出しただけの真にライセンスを受ける意思のないものであり,この点においても,上記申出が「確定的なライセンスの申\出」に該当しないとして,被告には,本件FRAND宣言に基づく誠実交渉義務が発生していない旨主張する。しかしながら,被告の主張は,以下のとおり理由がない。
a 上記1)及び2)について
FRAND宣言に基づく標準規格必須宣言特許についてのFRAND条件によるライセンスを希望する申出は,許諾対象特許の有効性を留保するものであったとしても,その申\出の内容が許諾対象特許が有効であることを前提とする具体的なものであり,FRAND条件によるライセンスを受けようとする意思が明確であるときは,上記申出により,FRAND宣言をした者と上記申\出をした者との間で,前記(ア)の信義則上の義務が発生するというべきである。しかるところ,アップル社の平成24年3月4日付け申出(甲65の1)は,許諾対象特許を本件特許を含む三つの日本国特許に特定し,ライセンス料率等の詳細なライセンス条件を記載したライセンス契約書案(甲65の2)を添付した具体的なものであり,その記載内容に照らし,アップル社におけるFRAND条件によるライセンスを受けようとする意思が明確であることが認められる。もっとも,上記契約書案の「●(省略)●」には,「●(省略)●」(訳文2頁2行〜4行)との記載があり,アップル社の上記申\出は,許諾対象特許とされた本件特許の有効性を留保するものといえる。しかし,上記条項の記載内容自体は格別不合理なものではない上,被告がアップル社の子会社である原告に対し本件特許権に基づく本件各製品の輸入,譲渡等の差止めを求める本件仮処分の申立てをし,原告がその防御として本件特許の有効性等を争っていること,同仮処分命令申\立事件はアップル社の上記申出があった当時も係属中であったこと(弁論の全趣旨)を踏まえると,アップル社が上記申\出において本件特許の有効性を留保しているからといって,直ちにアップル社においてFRAND条件によるライセンスを受けようとする意思がないということはできない。したがって,被告の主張1)及び2)は,理由がない。 b 上記3)についてアップル社が平成24年3月4日付け申出において提示したライセンス料率(ロイヤルティ料率)は日本国における●(省略)●%というものであるが,そのライセンス料率の数値のみからFRAND条件に適合しない不合理に低額なものであり,アップル社においてFRAND条件によるライセンスを受けようとする意思がないものと断ずることはできないし(前記前提事実に照らすと,上記ライセンス料率は,アップル社が平成23年8月18日付け書簡(甲34の4)で示した全世界におけるUMTS規格に不可欠と宣言された特許ファミリーのうち,被告が保有しているものの割合(前記(1)ウ(エ))を踏まえたものであることがうかがわれる。),アップル社において上記ライセンス料率以外の条件でライセンス契約を締結する意思が全くなかったとまで認めることはできない。したがって,被告の主張3)は,理由がない。
イ そこで,被告において前記ア(ア)の信義則上の義務違反があったかどうかについて検討する。前記前提事実と弁論の全趣旨によれば,1)被告は,平成23年7月20日付けで秘密保持契約(アップル社と被告間の秘密保持契約)を締結した後,同月25日付け書簡(甲29)で,アップル社に対し,FRAND条件に従って,UMTS規格に必須の被告の保有する特許(出願中のものを含む。)の全世界的かつ非独占的なライセンスを,関連する「●(省略)●%の料率」でライセンス供与する用意ができていることを提示(被告の本件ライセンス提示)し,●(省略)●,その際,被告は,上記ライセンス条件の「●(省略)●%の料率」の算定根拠を示さなかったこと,2)アップル社は,同年8月18日付け書簡(甲34の4)で,被告に対し,被告の本件ライセンス提示について,全世界においてUMTS規格に不可欠と宣言された1889の特許ファミリーのうち,被告が保有しているものがその5.5%に当たる103にすぎないこと(「Fairfield Resources International」が実施した調査結果)からすると,被告がアップル社に対して要求できるロイヤルティ料率は,高くても0.275%(5%×5.5%)と捉えるべきであることなどを理由に,被告の本件ライセンス提示に係るライセンス料率が法外な高さであり,FRAND条件に従ったものでないとの意見を述べるとともに,被告の本件ライセンス提示がFRAND条件に従ったものとアップル社において判断することができるようにするために,アップル社と被告間の秘密保持契約に基づいて,被告がアップル社に支払うことを求めるロイヤルティ料率を他社も支払っているかの確認を含む情報,被告と他社との間の必須特許のライセンス契約に関する情報を開示するよう要請したこと,3)被告は,平成24年1月31日付け書簡(乙36)で,アップル社に対し,●(省略)●被告の本件ライセンス提示がアップル社にとって不本意な内容であるならば,アップル社において,真摯な対案を提示するよう要請をしたが,その際,被告は,被告の本件ライセンス提示に係るライセンス料率(ロイヤルティ料率)の算定根拠を示さなかったこと,4)アップル社は,平成24年3月4日付け書簡(甲65の1)で,被告に対し,被告がUMTS規格に必須であると宣言した本件特許を含む日本における三つの特許について,●(省略)●%をロイヤルティとして支払う旨のFRAND条件でのライセンス契約の申出をしたこと,5)被告は,同年4月18日付け書簡(乙42)で,アップル社に対し,アップル社の上記4)の申出は,日本における三つの特許の個々につきロイヤルティ料率●(省略)●%という金銭的条件が低額であり不合理であること,●(省略)●などを理由に,FRAND条件に基づくライセンスの申\出に当たらないなどと意見を述べたこと,6)アップル社は,同年9月1日付け書簡(甲109)で,被告に対し,2G,3G及び4G(LTE)に対応する携帯機器標準規格必須特許全体を対象として,クロスライセンスの提案を含むFRAND条件に基づくライセンス許諾の枠組みを提案する用意がある旨を表明し,さらに,同月7日付け書簡(甲110)で,被告に対し,ロイヤルティ料率を算定するに当たってのアップル社の基本的な考え,算定基準等を示した上で,全てのフィーチャーフォン,スマートフォン及び携帯型タブレットに関する両当事者間の1台当たりのロイヤルティの構\成として,携帯機器標準規格必須特許全体のロイヤルティを1台当たり●(省略)●ドルを上限とすべきであるとの前提に立ち,被告がアップル社に請求できるロイヤルティ料率をその●(省略)●%(1台当たり●(省略)●ドル),アップル社が被告に請求できるロイヤルティ料率をその●(省略)●%(1台当たり●(省略)●ドル)とするライセンス案を提示したこと,7)一方,被告は,同月7日付け書簡(甲111)で,アップル社に対し,上記6)のアップル社の同月1日付け書簡は,●(省略)●を提案したことが認められる。これらの認定事実に加えて,本件証拠上,アップル社が平成24年9月7日付け書簡で提示したライセンス案について,被告がいかなる対応をしたのか不明であることを総合すると,1)アップル社と被告間の本件特許権についてのライセンス交渉の過程において,被告は,平成23年7月25日付け書簡で,アップル社に対し,本件FRAND条件に従ったライセンス条件として,UMTS規格に必須の被告の保有する特許(出願中のものを含む。)の全世界的かつ非独占的なライセンスについて「●(省略)●%の料率」の提示(被告の本件ライセンス提示)をしたものの,その際には,上記ライセンス条件の算定根拠を示すことがなかった上,その後,アップル社から,被告の本件ライセンス提示がFRAND条件に従ったものとアップル社において判断することができるようにするために,被告がアップル社に支払うことを求めるロイヤルティ料率を他社も支払っているかの確認を含む情報,被告と他社との間の必須特許のライセンス契約に関する情報を開示するよう要請があったにもかかわらず,平成24年9月7日に至っても上記ライセンス条件の算定根拠を示すことはなかったこと,2)その間,被告は,アップル社が同年3月4日付け書簡で被告がUMTS規格に必須であると宣言した本件特許を含む日本における三つの特許について,●(省略)●%をロイヤルティとして支払う旨のFRAND条件でのライセンス契約の申出をし,さらには,同年9月7日付け書簡でロイヤルティ料率を算定するに当たってのアップル社の基本的な考え,算定基準等を示した上で,クロスライセンスを含む具体的なライセンス案を提示しているにもかかわらず,アップル社が被告の本件ライセンス提示を不本意とするならば,アップル社において具体的な提案をするよう要請するのみで,アップル社が提示したライセンス条件に対する具体的な対案を示していないことが認められる。上記1)及び2)に鑑みると,被告は,アップル社の再三の要請にもかかわらず,アップル社において被告の本件ライセンス提示又は自社のライセンス提案がFRAND条件に従ったものかどうかを判断するのに必要な情報(被告と他社との間の必須特許のライセンス契約に関する情報等)を提供することなく,アップル社が提示したライセンス条件について具体的な対案を示すことがなかったものと認められるから,被告は,UMTS規格に必須であると宣言した本件特許に関するFRAND条件でのライセンス契約の締結に向けて,重要な情報をアップル社に提供し,誠実に交渉を行うべき信義則上の義務に違反したものと認めるのが相当である。これに反する被告の主張は,採用することができない。
ウ 以上のとおり,被告が,原告の親会社であるアップル社に対し,本件FRAND宣言に基づく標準規格必須宣言特許である本件特許権についてのFRAND条件でのライセンス契約の締結準備段階における重要な情報を相手方に提供し,誠実に交渉を行うべき信義則上の義務に違反していること,かかる状況において,被告は,本件口頭弁論終結日現在,本件製品2及び4について,本件特許権に基づく輸入,譲渡等の差止めを求める本件仮処分の申立てを維持していること,被告のETSIに対する本件特許の開示(本件出願の国際出願番号の開示)が,被告の3GPP規格の変更リクエストに基づいて本件特許に係る技術(代替的Eビット解釈)が標準規格に採用されてから,約2年を経過していたこと,その他アップル社と被告間の本件特許権についてのライセンス交渉経過において現れた諸事情を総合すると,被告が,上記信義則上の義務を尽くすことなく,原告に対し,本件製品2及び4について本件特許権に基づく損害賠償請求権を行使することは,権利の濫用に当たるものとして許されないというべきである。\n

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平成22(ワ)28813 特許権移転登録請求権不存在確認請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年02月19日 東京地方裁判所

 日本国における特許を受ける権利の移転請求権不存在の確認訴訟について、裁判所は、訴えの利益無しと判断しました。
 ア そこで検討するに,前記前提事実によれば,原告らは,被告が,原告らと被告間の本件権利移転合意(本件合意書2条の合意)に基づいて,原告大林精工に対し,目録1の各特許権及び韓国,米国等の対応特許権の特許権移転登録手続等の履行を,原告Aに対し,目録2の各出願について被告を出願人とする出願人名義変更手続等の履行を求めた本件韓国訴訟において,被告の請求を全部認容するソウル高等法院判決の言渡しがあった後に,原告らの本件権利移転合意の意思表\示の錯誤無効又は詐欺による取消しを主張して,被告が本件権利移転合意に基づいて目録1及び2の各特許権の移転登録手続を求める権利並びに目録3の各出願の特許を受ける権利について移転手続を求める権利を有しないことの確認を求める本件訴訟を提起したものであり,本件訴訟の提起時までに,原告Aが目録2の各出願の分割出願として目録3の各出願を行った後,目録2の各出願の特許権の設定登録を受けていたことからすると,本件韓国訴訟と本件訴訟(本件訴え)とは,目録1及び2の各特許権並びに目録3の各出願の特許を受ける権利に関し,被告の原告らに対する本件権利移転合意に基づく特許権移転登録手続等請求権に基づく給付の訴えと原告らの被告に対する上記請求権と同一の請求権又は実質的に同一の請求権が存在しないことの確認を求める消極的確認の訴えの関係にあるものと認められる。
イ また,前記前提事実によれば,被告は,本件韓国訴訟のソウル高等法院判決が平成23年4月28日に確定したことから,同年7月29日,民事執行法24条に基づき,外国裁判所の判決であるソ\ウル高等法院判決の主文第2項(目録1の各特許権の移転登録手続の履行を命じた部分及び目録2の各出願の出願人名義変更手続の履行を命じた部分)等についての執行判決を求める別件訴訟1)及び2)を名古屋地方裁判所豊橋支部及び水戸地方裁判所下妻支部にそれぞれ提起したところ,両支部は,いずれもソウル高等法院判決の主文第2項に係る訴訟の国際裁判管轄は,日本の裁判所に専属し,韓国の裁判所に国際裁判管轄が存しないとして,ソ\ウル高等法院判決の主文第2項は,民事訴訟法118条1号所定の要件を欠くことを理由に,被告の請求を棄却する旨の別件判決1)及び2)をそれぞれ言い渡し,これらを不服とする被告が控訴をし,別件訴訟1)及び2)の控訴事件が名古屋高等裁判所及び東京高等裁判所にそれぞれ係属中であることが認められる。そして,外国裁判所の判決について執行判決を求める訴えにおいては,外国裁判所の判決が確定したこと及び民事訴訟法118条各号所定の要件を具備することについて審理をし(民事執行法24条3項),その裁判の当否を調査することなく,執行判決をしなければならないこと(同条2項),執行判決が確定した場合には,当該外国裁判所の判決は執行判決と合体して債務名義となること(同法22条6号)に照らすならば,別件訴訟1)及び2)は,ソウル高等法院判決の主文第2項に係る本件権利移転合意に基づく特許権移転登録手続等請求権についての債務名義の取得を目的とするものであり,実質上,ソ\ウル高等法院判決に係る給付の訴え(本件韓国訴訟)の日本国内における事後的継続であるということができる。このような債務名義の取得という観点からみると,別件訴訟1)及び2)と本件訴訟(本件訴え)との関係は,本件韓国訴訟と本件訴訟との関係と同様に,実質上,給付の訴えと消極的確認の訴えの関係にあるものということができる。次に,別件訴訟1)及び2)と本件訴訟の国際裁判管轄に係る当事者の主張をみると,被告は,本件管轄合意(本件合意書9条の合意)は,本件合意書に関する紛争の第一審はソウル中央地方法院の専属的管轄とすることを定めた専属的管轄の合意であること,平成23年法律第36号による改正後の民事訴訟法(「平成23年改正法」)3条の5第2項は,登記又は登録に関する訴えの管轄権は登記又は登録をすべき地が日本国内にあるときは日本の裁判所の専属管轄に服する旨規定するが,平成23年改正法が施行された平成24年4月1日の時点で,本件訴えは東京地方裁判所に現に係属していたのであるから,平成23年改正法の附則2条1項により,本件訴えに民事訴訟法3条の5第2項が適用されないことなどを根拠として,別件訴訟1)及び2)においては,ソウル高等法院判決の主文第2項に係る給付請求について,ソ\ウル高等法院に民事訴訟法118条1号所定の「裁判権」,すなわち国際裁判管轄(間接管轄)が認められ,本件訴訟においては,原告らの消極的確認請求について,日本の裁判所に国際裁判管轄(直接管轄)が認められない旨主張するのに対し,他方で,原告らは,本件管轄合意及び本件権利移転合意は,原告らの錯誤無効又は詐欺による取消し等により効力を有しないこと,平成23年改正前の民事訴訟法の下においても,登記又は登録に関する訴えの管轄権は登記又は登録をすべき地が日本国内にあるときは日本の裁判所の専属管轄に服すると解すべきであることなどを根拠として,別件訴訟1)及び2)においては,ソウル高等法院判決の主文第2項に係る給付請求について,ソ\ウル高等法院に国際裁判管轄(間接管轄)が認められないので,民事訴訟法118条1号所定の要件を欠くものであり,本件訴訟においては,原告らの消極的確認請求について,日本の裁判所に国際裁判管轄(直接管轄)が認められる旨主張している(甲32ないし35,乙21ないし25,弁論の全趣旨)。このように別件訴訟1)及び2)において,ソウル高等法院判決の主文第2項に係る給付請求についてソ\ウル高等法院に国際裁判管轄(間接管轄)が認められるかどうかと,本件訴訟において,原告らの消極的確認請求について日本の裁判所に国際裁判管轄(直接管轄)が認められるかどうかとは表裏一体の関係にある。
ウ 前記ア及びイの諸点を踏まえると,外国裁判所の確定した給付判決であるソウル高等法院判決の執行判決を求める訴えである別件訴訟1)及び2)が現に係属している場合に,給付判決の基礎とされた同一の請求権又は実質的に同一の請求権が存在しないことの確認を求める消極的確認の訴えである本件訴訟を許容するならば,執行判決の要件である民訴法118条1号の外国裁判所における国際裁判管轄の有無と表裏一体の関係にある消極的確認の訴えの国際裁判管轄の有無について,執行判決を求める訴えの係属する裁判所の判断と消極的確認の訴えの係属する裁判所の判断とが矛盾抵触するおそれが生じ得るのみならず,請求権の存否についても,外国裁判所の確定判決の判断内容の当否を再度審査して,それと矛盾抵触する判断がされるおそれが生じ得ることとなり,裁判の当否を調査することなく,執行判決をしなければならないとした民事執行法24条2項の趣旨に反するのみならず,当事者間の紛争を複雑化させることにつながりかねないものと認められる。また,仮に外国裁判所の確定判決の執行判決を求める訴えに係る請求が認容され,その判決が確定した場合には,同一の請求権について消極的確認請求を認容する判決が確定したとしても,当該判決には,前に確定した判決(外国裁判所の確定判決)と抵触する再審事由(民事訴訟法338条1項10号)が存することとなり,他方で,外国裁判所の確定判決の執行判決を求める訴えに係る請求が棄却され,当該判決が確定した場合には,日本において同一の請求権に基づく給付の訴えが提起される可能\性があり,その場合には,同一の請求権についての消極的確認の訴えは訴えの利益を欠く関係にあるから,いずれの事態も消極的確認の訴えにより紛争の解決に直結するものとは認め難い。以上を総合すると,ソウル高等法院判決の執行判決を求める訴えである別件訴訟1)及び2)が現に控訴審に係属している状況下において,本件訴訟(本件訴え)により被告が目録1及び2の各特許権の移転登録手続を求める権利並びに目録3の各出願の特許を受ける権利について移転手続を求める権利を有しないことの確認を求めることは,原告らと被告間の上記各特許権及び特許を受ける権利の帰属に関する紛争の解決のために必要かつ適切なものであるとはいえないから,本件訴えは,いずれも確認の利益を欠く不適法なものであるというべきである。これに反する原告らの主張は,採用することができない。

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平成23(ワ)32488等 特許権侵害差止等請求事件 特許権 平成25年01月31日 東京地方裁判所

 ウェブサイトにおける商品紹介は、販売の申し出には該当しないとして、特許権侵害を否定しました。
 (エ) エバーライト社のウェブサイトのトップページ(http://以下省略)には,「Products」とのボタンがあり,これをクリックすると「Products」のページに移動し,ここには,「Visible LED Components」,「Lighting Solutions」,「Infrared LED,Sensors,Couplers」,「LED Digital Displays」との項目がある。この中の「Visible LED Components」をクリックすると,「Visible LED Components」のページに移動し,ここには,「Low−Mid Power LED」,「High Power LED」,「LED Lamps」,「Super Flux LEDs」,「SMD LEDs」,「Flash LEDs」との項目がある。この中の「Low−MidPower LED」をクリックすると「Low−Mid PowerLED」のページに移動し,ここには,「5050(0.2w)」のほか,4種類のパッケージについての項目がある。この中の「5050(0.2w)」をクリックすると,「5050(0.2w)」のページに移動し,ここには,「Product」として,本件製品1に該当する製品番号を含む九つの製品が記載され,「Datasheet」の欄の下にあるPDFファイルのアイコンをクリックすると,その製品に対応するデータシートがPDF形式で表示される。イ 上記アの認定事実によれば,被告は,技術商社であって,仕入先メーカーから仕入れた各種半導体製品を顧客に販売しているところ,エバーライト社は,10社を超える被告の半導体製品の仕入先メーカーの一つであること,被告ウェブサイトには,半導体デバイスのページに半導体の取扱いメーカーの一つとして,エバーライト社についての記載があり,エバーライト社のウェブサイトのトップページへのリンクやエバーライト社がLED製品を取り扱っている旨の記載があるが,具体的にどのLED製品を取り扱っているかについては記載がないこと,エバーライト社のウェブサイトのトップページへのリンクをクリックすると,同社のトップページに移動するが,このページには具体的なLED製品の記載はないこと,このページからさらに具体的な製品が掲載されたページにたどり着くためには,複数回リンクをたどる必要があり,例えば,本件製品1に関する情報が掲載されたページにたどり着くためには,トップページの「Products」のボタン,「Visible LED Components」の項目,「Low−Mid Power LED」の項目,「5050(0.2w)」の項目を順次たどる必要があることが認められ,これらの事情に鑑みると,被告ウェブサイトの記載をもって,被告が本件各製品について譲渡の申出をしていると認めることはできない。なお,過去には,被告ウェブサイト内にエバーライト社についてのページが存在し,このページにおいて,製品案内として,「アプリケーション」に「屋内外サインボード」,「各種信号灯」,「車載関連(インテリア・エクステリア)」,「携帯端末バックライト」,「DVD/STB/TV」との記載,「製品」に「砲弾型LED全般」,「面実装タイプ LED全般」,「IrDA」,「フォトカプラ」,「フォトリンク」との記載があったが,さらに具体的にどのLED製品を取り扱っているかについては記載がなく,結局,具体的な個別のLED製品を知るには,エバーライト社のウェブサイトによらなければならないのであって,過去の被告ウェブサイト内に,現在のページとほぼ同じ内容のページのほか,上記のエバーライト社についてのページが存在していたとしても,これをもって,被告が本件各製品について譲渡の申出をしていたと認めることはできない。
(3) 以上によれば,被告が過去に本件各製品の輸入,譲渡又は譲渡の申出をしたり,現在これらの行為をしているとは認められないし,被告が本件各製品の輸入,譲渡又は譲渡の申\出をする蓋然性があることをうかがわせるような証拠もないから,被告が本件各製品の輸入,譲渡又は譲渡の申出をするおそれがあることも認められない。\n

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