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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

その他特許

平成28(ネ)10060  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年12月14日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 経緯は以下の通りです。韓国における独占実施契約がなされました。ところが、国際出願について韓国における国内移行がなされていませんでした。裁判所は、契約の前提となる特許出願がなされていないことが、不法行為に該当するとして、損害賠償が認められました。なお、原審(H26(ワ)10203大阪地判)はアップされていません。
   以下によれば,敬晴会は,甲1契約の締結に当たり,信義則上,被控訴人に対し, 甲2発明が韓国において特許登録され得るものであるか否かに関する情報を調査・ 提供する義務(以下「本件情報提供義務」という。)を負うものと解される。
(ア) 前記1のとおり,甲1契約は,敬晴会が,被控訴人に対し,韓国において本 件皮膚再生医療技術を独占的に展開するために必要なノウハウ及び情報等を提供す るとともに,必要な知的財産権の実施を許諾(再実施許諾)するというものである から(第1条),実施許諾されるべき必要な知的財産権は,韓国において本件皮膚再 生医療技術を独占的に実施するために必要なものを指すと解される。 そして,甲1契約において,第1条を受けた第2条に甲2発明が挙げられている のであるから,甲2発明が上記の実施許諾されるべき必要な知的財産に含まれるこ とは,明らかである。さらに,甲2発明は,甲1契約において具体的に挙げられた 唯一の発明である上,本件皮膚再生医療技術に用いられる皮膚組織改善材等に係る ものであって,その内容(甲7の8参照)に照らしても,本件皮膚再生医療技術の 実施に当たり,当然に必要となるものと認められる。 そうすると,甲1契約の趣旨及び甲2発明の内容に照らし,韓国において,本件 ノウハウのみならず,甲2発明に係る技術を独占的に実施することができることは, 甲1契約の当然の前提であると解される。
(イ) そして,韓国における甲2発明に係る技術の独占的な実施は,同国において 甲2発明に係る特許権を取得することによって,可能となるものである。また,甲\n1契約の第2条には,「本基本契約において,『本件特許権等』とは,下記の特許権 及び甲(判決注・敬晴会)が今後所有権ないし実施権を取得する皮膚再生医療に関 する特許権のすべてを指す。」と記載された上で,甲2発明の出願番号が挙げられて おり,同記載内容から,甲2発明は,韓国において特許登録がされ得るものと理解 することができる。さらに,そもそも韓国において甲2発明に係る特許権を取得し 得ないことが明らかなのであれば,甲1契約によって同国における甲2発明の実施 の許諾を得る必要はない。 以上によれば,甲1契約は,甲2発明につき,韓国において特許取得のための手 続が採られ,特許登録がされる可能性のあるものであり,特許登録がされた場合に\nは,被控訴人においてその独占的実施許諾を受けられることを前提としていたもの と認められる。 そうすると,甲2発明が,韓国において特許登録され得るものかどうかに係る情 報(例えば,韓国における審査の進捗状況など)は,甲1契約の独占的実施の対象 となる権利に関するものであり,契約の重要な部分に当たるものであって,被控訴 人が甲1契約を締結するか否かを判断するに当たって必要とする情報であったもの ということができる。 (ウ) 一方,敬晴会は,甲1契約上,本件皮膚再生医療技術に関し,甲2発明を含 む名古屋大学が有する特許権に係る発明について,被控訴人に対し,再実施許諾を する立場にある。そうすると,甲2発明が韓国において特許登録され得るものであ るか否かは,甲1契約の対象となる独占的実施権に関する重要な情報であるから, 再実施許諾をする者としては,契約の相手方である被控訴人に対し,信義則上,上 記重要な情報を調査・提供する義務を負うものというべきである。
イ 敬晴会の本件情報提供義務違反について
前記1の認定事実によれば,名古屋大学が,本件国際特許出願につき,指定国と していた韓国において特許協力条約22条及び39条所定の期間内に国内移行手続 を行わなかったことから,同24条により,本件国際特許出願の効果は,韓国にお ける国内出願の取下げの効果と同一の効果をもって消滅し,甲2発明は,甲1契約 締結当時,既に韓国において特許登録を受けることができなくなっていた。 しかし,敬晴会は,これを代表する理事長である控訴人において,甲1契約の締\n結に当たり,上記のとおり甲2発明が韓国において特許登録を受けることができな くなっていたという事実を被控訴人に伝えなかったのであり,過失により,本件情 報提供義務を怠ったものと認められる。 そして,前記1の認定事実及び被控訴人代表者の供述(乙5)によれば,被控訴\n人は,1)名古屋大学が,同大学において開発した甲2発明を含む本件皮膚再生医療 技術につき,韓国内において独占的な権利を有し,あるいは,そのような権利を取 得するための手続を採り得る立場にあること及び2)敬晴会が,本件皮膚再生医療技 術に係る再実施許諾権を有しており,被控訴人に対して再実施許諾をすることを前 提として,甲1契約を締結したのであり,上記のとおり,甲2発明は,韓国におい て特許登録を受けることができなくなっていた事実を知っていれば,甲1契約を締 結しなかったものと認められる。 以上によれば,敬晴会が過失により本件情報提供義務を怠り,上記事実を被控訴 人に伝えなかった結果,被控訴人は,甲1契約を締結するに至ったものであるから, 敬晴会は,本件情報提供義務違反により,被控訴人に生じた損害を賠償する義務を 負う。

◆判決本文

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平成28(行ケ)10117  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年11月30日  知的財産高等裁判所

 加圧トレーニングに関する特許について、新規性なし・公序良俗違反・記載要件違反なしとの審決が維持されました(知財高裁2部)。
 原告は,1)本件発明が本来的に治療行為,美容行為等を含んだ筋力トレーニング であること,2)本件発明が自然法則それ自体に特許を認めていること,から,本件 発明は,社会的妥当性を欠くので特許法32条に反すると主張する。 しかしながら,前記1(1)に認定のとおり,本件発明は,特定的に増強しようとす る目的の筋肉部位への血行を緊締具を用いて適度に阻害してやることにより,疲労 を効率的に発生させて,目的筋肉をより特定的に増強できるとともに,関節や筋肉 の損傷がより少なくて済み,更にトレーニング期間を短縮できるようにしたもので ある。 そうすると,本件発明は一義的に人体に重大な危険を及ぼすものではない上,本 件発明を治療方法等にも用いる場合においては,所要の行政取締法規等で対応すべ きであり,そのことを理由に,本件発明が特許を受けることが許されなくなるわけ ではない。また,特許を取得しても,当該特許を治療行為等の所要の公的資格を有 する行為において利用する場合には,当該資格を有しなければ当該行為を行うこと ができないことは,当然である。したがって,本件発明に特許を認めること自体が 社会的妥当性を欠くものとして,特許法32条に反するものとはいえない(なお, 産業上の利用可能性の有無については,前件審判・前件判決で既に取消事由とされ\nたものであり,本件は,専ら,特許法32条該当性のみを審理するものである。)。 また,本件発明は,「筋肉に締めつけ力を付与するための緊締具を筋肉の所定部位 に巻付け,その緊締具の周の長さを減少させ」ることにより,「筋肉に与える負荷が, 筋肉に流れる血流を止めることなく阻害する」ものであるから,自然法則を利用し たものであるが,人体の生理現象そのもののような自然法則それ自体を発明の対象 とするものではない。そもそも,特許権は,業として発明を実施する権利を専有す るものであり(特許法68条),業として行わなければ,本件発明の筋力トレーニン グ方法は誰でも自由になし得るのであり,本件特許はそれを制限するものではない。 そうすると,原告の上記主張は,いずれも採用することができず,本件発明は, 公の秩序,善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある発明とすることはでき ない。 したがって,取消事由4は,理由がない。
6 取消事由5(無効理由5−2に関する判断の誤り)について
(1) 検討
旧特許法36条5項2号は,特許請求の範囲の記載について,「特許を受けようと する発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した項(以下「請求項」とい\nう。)に区分してあること」との要件に適合するものでなければならないと規定して いた。これは,発明の構成に欠くことができない事項(必須要件)を全て記載する\nことを求めるとともに,必須要件でないものを記載しないことを求めることにより, 請求項の構成要件的機能\を担保したものであり,特許請求の範囲には,必要かつ十\n分な構成要件を記載することを求めたものといえる。\n前記1(1)のとおり,本件発明1の技術的意義は,筋力トレーニング方法において, 筋肉に与える負荷が,筋肉に流れる血流を止めることなく阻害するものとすること, すなわち,目的の筋肉部位への血行を緊締具により継続的に適度に阻害することに より,疲労を効率的に発生させることにある。このような技術的意義にかんがみれ ば,特許請求の範囲に,「筋肉に締めつけ力を付与するための緊締具を筋肉の所定部 位に巻付け,その緊締具の周の長さを減少させ」ることにより,「筋肉に疲労を生じ させるために筋肉に与える負荷が,筋肉に流れる血流を止めることなく阻害するも のである」ことが記載されていれば,本件発明の技術的課題を解決するために必要 かつ十分な解決手段が記載されているというべきである。
(2) 原告の主張について
1) 原告は,本件発明1の課題・効果を得るためには,所要の加圧条件を特許請 求の範囲に記載する必要があると主張する。 しかしながら,上記(1)のとおり,本件発明の課題解決手段は,本件発明1の記載 で明らかとされている一方,筋肉増大の程度は,トレーニングの態様,対象者,対 象部位等に応じて異なり,一義的に決まるものではないから,所要の加圧条件を特 許請求の範囲に記載しないことが,必須要件を記載していないことになるとまでは いえない。
2) 原告は,本件発明1が,筋肉への血流を止めることなく阻害し,これによっ て筋肉に疲労を生じさせること自体を筋力トレーニング方法と称しているのか,そ れ以外の何らかのトレーニングをすることを必須としているかも不明確であると主 張する。 本件発明の筋力トレーニング方法が,緊締具を用いて更にトレーニングを行うこ とを前提にしていることは,発明の詳細な説明から明らかであり(本件訂正明細書 の【0004】【0017】【図1】参照),そのような方法であるか否かが不明確で あるということはない。本件発明1は,そのうち,締結具によって筋肉への血流を 止めることなく阻害し,これによって筋肉に疲労を生じさせるとの部分を特許請求 の範囲に掲げたものと理解される。どのようなトレーニングがされるかは,トレー ニングの態様,対象者,対象部位等に応じて異なる上に,単なる技術常識の適用に すぎないことは自明であり,本件発明の筋力トレーニング方法を技術的に特徴付け るものではない。したがって,そのような事項は,本件発明の必須の要件ではない。 3) 以上のとおり,原告の主張は,いずれも採用することができない。
(3) 小括
以上から,本件発明1の特許請求の範囲の記載は,旧特許法36条5項2号の要 件を満たすと認められる。

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平成27(ワ)7147  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年9月15日  大阪地方裁判所

 文言は被侵害、均等侵害も第1要件を充足していないとして否定されました。メーカではなく販売店が被告というのも興味深いです。
 すなわち均等侵害が認められるためには,本件発明と被告方法の構成に異な\nる部分が存在する場合であっても,その部分が本件発明の本質的部分ではないこと が要件となるところ,ここでいう特許発明における本質的部分とは,当該特許発明 の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成す\nる特徴的部分であると解すべきであり,上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明 細書の記載に基づいて,特許発明の課題及び解決手段(特許法36条4項,特許法 施行規則24条の2参照)とその効果(目的及び構成とその効果。平成6年法律第\n116号による改正前の特許法36条4項参照)を把握した上で,特許発明の特許 請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴\n的部分が何であるかを確定することによって認定されるべきである(知財高裁平成 28年3月25日特別部判決)。
・・・
 本件発明の上記課題及び解決手段とその効果に照らすと,本件発明は,本件 特許の特許請求の範囲請求項1の発明に係るおかゆ調理器を用いたおかゆの調理方 法として,「粉砕段階」,「加熱段階」を含む複数の動作段階を設定し,それら動 作段階の一部についてはその順序,時間,回数等を具体的に指定し,穀物の粉砕手 段及び加熱手段を一体化した組合せとすることにより,通常のおかゆの調理方法に おいて時間を要していたふやかしの時間及び全体の調理時間の短縮を図り,また, 通常の調理方法においてはかきまぜの継続によって解消していたおかゆの焦げ付き も防止するなど,より簡便,迅速に本来の風味を有するおかゆの調理ができるよう にしたものであると認められる。 ところでおかゆの調理方法として,加熱や粉砕の動作を適宜組合せることは,周 知であるから(本件明細書の【0005】),本件特許の特許請求の範囲請求項1 の発明に係るおかゆ調理器を用いたおかゆの調理方法である本件発明における本質 的部分とは,調理方法を決定するところの「粉砕段階」,「加熱段階」,「待機段 階」という一連の動作段階の設定,及び各動作段階において具体的に規定された粉 砕及び加熱の動作並びに待機の順序,各動作及び待機の時間,各動作及び待機の回 数等を一体化した組合せそのものにあると認められる。 (6) これに対し,被告方法は,既述のとおり,少なくとも,その第1及び第2の 粉砕段階において,本件発明の構成要件として規定された粉砕と待機とは異なる時\n間,回数の粉砕と待機がなされるものであるから,動作等の組合せにおいて,本件 発明の一体化した組合せとは異なっており,この相違部分は本件発明の本質的部分 に存するものといわなければならない, したがって,被告方法は,均等の第1要件を充足するとは認められない。

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平成27(行コ)10004  異議申立却下決定取消請求控訴事件  特許権  行政訴訟 平成28年6月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 国内移行の翻訳文を期限経過後に提出し、必要な代表者資格証明を提出しなかったために補正命令に応ぜず却下処分となりました。この異議申\し立ての行政訴訟です。知財高裁は却下処分妥当と判断しました。
 控訴人らが本件異議申立てに際して代表\者の資格証明に関する書面及び代理人であることを証明する書面(以下,両者を併せて,「資格証明所等」という。)を添付しなかったことから,特許庁長官は,補正期間を30日と定める本件補正命令を発したが,控訴人らが上記期間内に資格証明書等を提出しなかったため,本件決定をした。本件補正命令の内容は,資格証明書等の提出を求めるという明確なものであり,また,控訴人らのような種類の法人についても,補正を命じられた不備を補正することは困難なことではないから(現に,控訴人らは,本訴提起に当たっては,控訴人らの資格証明書等を提出している。),控訴人らは,相当の期間を定めて命じた補正に従って資格証明書等を提出することをしなかったのであって,本件異議申立ては,行政不服審査法13条1項に違反し,不適法である。したがって,これらをいずれも却下した本件決定に違法は認められない。\n

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平成28(ワ)12480  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年6月30日  東京地方裁判所

 生海苔異物除去機の一部の部品を交換する行為が生産が該当する(特許権侵害)と判断されました。
 原告は,被告ワンマン及び被告西部機販に対し,本件メンテナンス行為1 の差止めを求めるところ,製品について加工や部材の交換をする行為であっ ても,当該製品の属性,特許発明の内容,加工及び部材の交換の態様のほか, 取引の実情等も総合考慮して,その行為によって特許製品を新たに作り出す ものと認められるときは,特許製品の「生産」(法2条3項1号)として, 侵害行為に当たると解するのが相当である。 本件各発明は,前記1(2)のとおり,生海苔混合液槽の選別ケーシングの 円周面と回転板の円周面との間に設けられた僅かなクリアランスを利用して, 生海苔・海水混合液から異物を分離除去する回転板方式の生海苔異物分離除 去装置において,クリアランスの目詰まりが発生する状況が生じ,回転板の 停止又は作業の停止を招いて,結果的に異物分離作業の能率低下等を招いて\nしまうとの課題を解決するために,突起・板体の突起物を選別ケーシングの 円周端面に設け(本件発明1),回転板及び/又は選別ケーシングの円周面 に設け(本件発明3),あるいは,クリアランスに設けること(本件発明4) によって,共回りの発生をなくし,クリアランスの目詰まりの発生を防ぐと いうものである。そして,本件板状部材は,本件固定リングに形成された凹 部に嵌め込むように取り付けられて固定されることにより,本件各発明の 「共回りを防止する防止手段」(構成要件A3)に該当する「表\面側の突出 部」,「側面側の突出部」を形成するものであること(当事者間に争いがな い)からすると,本件固定リング及び本件板状部材は,被告装置の使用(回 転円板の回転)に伴って摩耗するものと認められるのであって,このような 摩耗によって上記突出部を失い,共回り,目詰まり防止の効果を喪失した被 告装置は,本件各発明の「共回りを防止する防止手段」を欠き,もはや「共 回り防止装置」には該当しないと解される。 そうすると,「表面側の突出部」,「側面側の突出部」を失った被告装置\nについて,新しい本件固定リング及び本件板状部材の両方,あるいは,いず れか一方を交換することにより,新たに「表面側の突出部」,「側面側の突\n出部」を設ける行為は,本件各発明の「共回りを防止する防止手段」を備え た「共回り防止装置」を新たに作り出す行為というべきであり,法2条3項 1号の「生産」に該当すると評価することができるから,原告は,被告らに 対し,法100条1項に基づき,上記(1)の差止めに加えて,本件メンテナ ンス行為1の差止めを求めることができる。
・・・・
これに対し,被告ワンマン及び被告西部機販は,要旨,1本件装置1及 び2の仕入代金以外に必要経費が生じているから,これらについても被告ワ ンマン及び被告西部機販の利益から控除すべきである,2)本件特許は本件装 置1及び2の販売にほとんど寄与しておらず,本件装置1及び2の売上への 寄与率が10%を超えることはない,3)被告ワンマン及び被告西部機販が本 件装置1及び2の販売によって得た利益を原告の損害と推定することについ ての推定覆滅事由があるなどと主張する。 しかしながら,上記1)について,必要経費として控除できるのは,本件装 置1及び2の販売に直接関連して追加的に必要になった経費に限られるもの と解すべきところ,被告ワンマン及び被告西部機販の主張する経費が本件装 置1及び2の販売に直接関連して追加的に必要になったものと認められない のはもちろん,そもそも同経費が現実に生じたこと自体を認めるに足る証拠 が一切なく,その算定根拠も判然としない。また,上記2)について,本件各 発明は,生海苔異物除去装置の構造の中心的部分に関するものである一方,\n本件各発明が本件装置1及び2に寄与する割合を減ずべきであるとする被告 ワンマン及び被告西部機販の主張の根拠は判然としないことに照らせば,本 件各発明が本件装置1及び本件各部品の販売に寄与する割合を減ずることは 相当でない。さらに,上記3)について,被告が主張するのは,単に,原告が 販売店ではなく製造業者であるという事実にとどまるところ,同事実のみか ら,本件各発明の実施品が有する顧客吸引力にもかかわらず,原告がその取 引先への販売の機会を持ち得なかったということはできないし,ほかに原告 が取引の機会を奪われたとはいえない特段の事情もないから,法102条2 項による推定を覆滅するには足りないというほかない。

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平成27(ワ)10913  債務不履行損害賠償請求  特許権  民事訴訟 平成28年5月23日  大阪地方裁判所

 米国での手続きを適切に行わなかったとして、債務不履行に基づく損害賠償請求がなされました。一度神戸地裁で判決がなされていますが、控訴された、控訴審では、管轄違いとして大阪地裁に差し戻されました。判断としては請求棄却です。
2 被告らが,審査官からのクレーム補正の電話連絡に対し,補正の書面を提出すべき義務を負うか否か
(1) 前記認定事実等(1)ア(ア)のとおり,米国特許出願手続における補正は,書類 を提出することによって行われるが,審査官補正の場合には,米国特許商標庁(審 査官)が審査官補正書を発行して行われると認められる。そして,前記認定事実等 (1)ア(イ)c及びdのとおり,審査官補正は,出願人が電話又は個人面接にて権限を授 与した場合に許されることから,審査官補正の場合には,出願人が補正の書面を提 出する必要はないと認められ,前記認定事実等(4)のとおり,578出願での審査官 補正でも電話面接による権限授与が行われているにとどまる。そこで,本件で,被 告らが審査官からの連絡に対して補正の書面を提出すべき義務を負うといえるため には,審査官からの連絡が審査官補正の提案でなく,出願人による補正の促しであ ったことが必要となるので,まずこの点を検討する。
ア 前記認定事実等(2)アのとおり,被告P2は,P4に対する電子メールに おいて,審査官からの補正提案を許容する旨を審査官に伝えれば,審査官は審査官 による補正を用意すると連絡しており,これによれば,被告P2は,審査官からの 連絡を審査官補正の提案であると理解したと認められる。そして,同電子メールに 記載された審査官の提案は,クレームを提案のように補正すれば,特許可能である\nという内容を電話で伝えてきたものであるところ,これは,審査官補正が,「出願を 特許として通す場合」(又は「特許申請登録の段階に於いて」),「電話又は個人面接\nにてかかる変更について権限を授与した場合に」許されるものである(前記認定事 実等(1)ア(イ)c)との定めにも適合している。そうすると,本件での審査官の提案は, 審査官補正の提案であったと認めるのが相当である。

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平成27(ワ)12414  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年3月30日  東京地方裁判所

 延長登録の対象となった対象について、イ号と均等か争われました。地裁は「本件各処分の対象となった物とは有効成分以外の成分が異なる」として、均等を否定しました。
 上記のとおり,本件発明は,「オキサリプラティヌムの医薬的に安定な製剤」 に関する発明であり,医薬品の成分全体を特徴的部分とする発明であって,原 告は,その実施として,「オキサリプラチン」と「注射用水」のみを含み,それ 以外の成分を含まないとするエルプラット点滴静注液(製剤)について本件各 処分を受けたものである。これに対し,前記前提事実,上記(1)エ及び(2)の各 認定事実,証拠(乙4)並びに弁論の全趣旨によれば,被告各製品は,「オキサ リプラチン」と「水」又は「注射用水」のほか,有効成分以外の成分として, 「オキサリプラチン」と等量の「濃グリセリン」を含有するもので,オキサリ プラチンを水に溶解したもの(以下,「オキサリプラチン」と「水」又は「注 射用水」以外の成分の有無を問わず,「オキサリプラチン水溶液」という。)に グリセリンを加えたのは,オキサリプラチン水溶液の保存中に,オキサリプラ チンの分解が徐々に進行し,類縁物質であるジアクオDACHプラチンやその 二量体であるジアクオDACHプラチン二量体を主とした種々の不純物が生成 するため,オキサリプラチンの自然分解自体を抑制するということを目的とし たものであることが認められる。これを,本件発明との関係でみると,被告各 製品について政令処分を受けるのに必要な試験が開始された時点において,オ キサリプラチン水溶液にオキサリプラチンと等量の濃グリセリンを加えること が,単なる周知技術・慣用技術の付加等に当たると認めるに足りる証拠はなく, むしろ,オキサリプラチン水溶液に添加したグリセリンによりオキサリプラチ ンの自然分解を抑制するという点で新たな効果を奏しているとみることができ る(なお,本件各処分の対象となった「当該用途に使用される物」については, 保存中にオキサリプラチンが自然分解し,シュウ酸を含有するに至ることがあ ることは,前示のとおりである。また,オキサリプラチン水溶液に添加された シュウ酸がオキサリプラチンの自然分解を抑制することは知られているが,シ ュウ酸は人体に有害な物質である。)。 そうすると,被告各製品は,「オキサリプラティヌムの医薬的に安定な製剤」 に関する発明であって,医薬品の成分全体を特徴的部分とする本件発明との関 係では,本件各処分の対象となった物とは有効成分以外の成分が異なる物であ り,当該成分の相違は,被告各製品について政令処分を受けるのに必要な試験 が開始された時点において,本件発明との関係では,単なる周知技術・慣用技 術の付加等に当たるとはいえず,新たな効果を奏するものというべきである。 したがって,「分量,用法,用量,効能,効果」について検討するまでもなく,\n被告各製品は,本件各処分の対象となった「当該用途に使用される物」の均等 物ないし実質同一物に該当するということはできない。 この点,原告は,被告各製品に含まれる「濃グリセリン」があくまで「添加 物」であるとか,被告各製品は,本件各処分の対象となった物(エルプラット 50,エルプラット100及びエルプラット200)と生物学的同等性を有す ることを前提に,本件各処分で用いられた臨床成績をそのまま利用して承認を 得たものであるなどと主張する。しかし,被告各製品が,エルプラット点滴静 注液と有効成分である「オキサリプラチン」が共通し,生物学的同等性を有す るとされており,「濃グリセリン」それ自体が「添加物」であるとしても,上記 のとおり,「オキサリプラティヌムの医薬的に安定な製剤」に関する本件発明が, 医薬品の有効成分のみを特徴的部分とする発明ではなく,医薬品の成分全体を 特徴的部分とする発明であって,そのような本件発明との関係では,上述した 有効成分以外の成分の相違は,単なる周知技術・慣用技術の付加等には当たら ず,新たな効果を奏するものというべきであることからすれば,有効成分であ る「オキサリプラチン」が共通し,生物学的同等性を有するとされていること をもって,直ちに均等物ないし実質同一物と認めることはできないのであって, 原告の上記主張は,採用することができない。
(4) 小括
以上によれば,被告各製品は,本件各処分の対象となった「(当該用途に使用 される)物」ではなく,その均等物ないし実質同一物に該当するものというこ ともできない。したがって,存続期間が延長された本件特許権の効力は,被告 による被告各製品の生産等には及ばないものというべきである。

◆判決本文

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平成26(ワ)9945  特許権者確認等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年3月17日  大阪地方裁判所

 現行法の取戻請求が認められない案件について、不当利得返還請求権に基づく移転登録の請求が認められました。
 以上に認定した原告とP3社との合意内容(請求原因(4)の事実)及び原告と被告 との合意内容(請求原因(5)の事実)によれば,出願人名義を被告に変更した当時, 原告が本件発明に係る特許を受ける権利を有していたと認められ,その後,請求原 因(6)のとおり,本件特許権は,本件出願について特許法所定の手続を経て,設定の 登録がされたのであるから,本件特許権は,原告が有していた特許を受ける権利と 連続性を有し,それが変形したものであると評価することができる。 そうすると,被告は,法律上の原因なくして,本件特許権を取得したという利益 を得ているといえるから,原告は,被告に対し,不当利得返還請求権に基づいて, 本件特許権について移転登録手続を請求することができる(最高裁判所平成13年 6月12日判決・民集55巻4号793頁参照。なお,本件では,平成23年法律 第63号による改正後の特許法74条は適用されない。)。

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平成25(ワ)19912  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年2月19日  東京地方裁判所

 共同出願人の一方が期間内に出願審査請求をしなかったことを内容とする債務不履行に基づく損害賠償請求について理由有りとの判断がなされました。中間判決です。争点の一つが、特許がとれる発明だったのかどうかです。裁判所は一部については進歩性があったと判断しました。
 本件発明1−1は,加振用液圧シリンダ機構が,「ピストンロッドを共通にする複シリンダ構\成をなし,各シリンダのロッド側液室には前記定加圧部による加圧力並びにこれと平衡する圧力を導入しつつヘッド側液室に加振液圧を導入して前記加 圧部による負荷を無負荷状態にして加振できるようにした」ものである(構成要件1D)のに対し,乙22の3発明は,脈動発生装置がそのような構\成を有していない点において,両発明は相違している。 b 本件発明1−1と乙22の3発明との相違点2に関する検討 乙22の3発明に乙4の2文献に記載された技術(装置)を適用しても,加振用液圧シリンダ機構の「各シリンダのロッド側液室に定加圧部による加圧力及びこれと平衡する圧力を導入しつつ」「ヘッド側液室に加振液圧を導入して」「加圧部による負荷を無負荷状態にして加振できるようにした」構\成とすること(構成要件1D2,1D3a及び1D3b)には至らない。\n前記イ(イ)bで説示したところからすれば,乙22の3発明において,脈動発生装置を上記構成とすることが,本件出願1前に,当業者が容易に想到し得たものということはできない。
c 小括
したがって,前記相違点1に関して検討するまでもなく,本件発明1−1は,本件出願1前に,乙22の3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなかったというべきである。
・・・・
 以上のとおり,本件出願1及び本件出願2については,審査請求期間内に出願審査請求がされていれば特許権の設定登録を受けられた高度の蓋然性があったということができるが,本件出願3及び本件出願4については,審査請求期間内に出願審査請求がされていたとしても特許権の設定登録を受けられた高度の蓋然性があったということはできない。 したがって,本件出願1及び本件出願2については,前記2で説示した被告の債務不履行と損害の発生との間の因果関係を肯認することができるが,本件出願3及び本件出願4については,被告の債務不履行又は不法行為と損害の発生との間の因果関係を肯認することはできない。

◆判決本文

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