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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

消尽

平成25(ネ)10043 債務不存在確認請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成26年05月16日 知的財産高等裁判所

 知財高裁がFRAND宣言した特許権の行使についてアミカスブリーフを求めた事件です。争点は多数ですが、2次使用について消尽が適用されるのかについて展開した後、FRAND宣言における必須特許1/529の約1000万円の損害賠償を認めました。最後に意見募集についても言及されました。
 インテル社は,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約によって,本件ベースバンドチップの製造,販売等を許諾されていると仮定されるから,前記(イ)にいう特許権者からその許諾を受けた通常実施権者に該当する。また,「データを送信する装置」(構成要件A)及び「データ送信装置」(構\成要件H)に該当するのは本件ベースバンドチップを組み込んだ本件製品2及び4であると解される一方,本件ベースバンドチップには,本件発明1の技術的範囲に属する物を生産する以外には,社会通念上,経済的,商業的又は実用的な他の用途はないと認められるから,本件ベースバンドチップは,特許法101条1号に該当する製品(1号製品)である。アップル社は,インテル社が製造した本件ベースバンドチップにその他の必要とされる各種の部品を組み合わせることで,新たに本件発明1の技術的範囲に属する本件製品2及び4を生産し,被控訴人がこれを輸入・販売しているのであるから,前記(ア),(イ)のとおり,控訴人による本件特許権の行使は当然には制限されるものではない。b そこで,まず,控訴人においてこのような特許製品の生産を黙示的に承諾していると認められるかを検討する。この点,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約が存続しており,かつ,本件ベースバンドチップがその対象となると仮定した場合における,仮定される控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約は,控訴人が有する現在及び将来の多数の特許権を含む包括的なクロスライセンス契約であり,本件特許を含めて,個別の特許権の属性や価値に逐一注目して締結された契約であるとは考えられない。また,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約の対象は,「インテル・ライセンス対象商品」すなわち「(a)半導体材料,(b)半導体素子,又は(c)集積回路を構成する全ての製品」であって,「インテル・ライセンス対象商品」に該当する物には,控訴人の有する特許権との対比における技術的価値や経済的価値の異なる様々なものが含まれ得る。そうすると,かかる包括的なクロスライセンスの対象となった「インテル・ライセンス対象商品」を用いて生産される可能\性のある多種多様な製品の全てについて,控訴人において黙示的に承諾していたと解することは困難である。そして,インテル社が譲渡した本件ベースバンドチップを用いて「データを送信する装置」や「データ送信装置」を製造するには,さらに,RFチップ,パワーマネジメントチップ,アンテナ,バッテリー等の部品が必要で,これらは技術的にも経済的にも重要な価値を有すると認められること,本件ベースバンドチップの価格と本件製品2及び4との間には数十倍の価格差が存在すること(乙31,32),いわゆるスマートフォンやタブレットデバイスである本件製品2及び4は「インテル・ライセンス対象商品」には含まれていないことを総合考慮するならば,控訴人が,本件製品2及び4の生産を黙示的に承諾していたと認めることはできない。なお,このように解したとしても,本件ベースバンドチップをそのままの状態で流通させる限りにおいては,本件特許権の行使は許されないのであるから,本件ベースバンドチップを用いて本件製品2及び4を生産するに当たり,関連する特許権者からの許諾を受けることが必要であると解したとしても,本件ベースバンドチップ自体の流通が阻害されるとは直ちには考えられないし,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約が,契約の対象となった個別の特許権の価値に注目して対価を定めたものでないことからすると,控訴人に二重の利得を得ることを許すものともいえない。\n
・・・
すなわち,ある者が,標準規格に準拠した製品の製造,販売等を試みる場合,当該規格を定めた標準化団体の知的財産権の取扱基準を参酌して,必須特許についてFRAND宣言する義務を構成員に課している等,将来,必須特許についてFRAND条件によるライセンスが受けられる条件が整っていることを確認した上で,投資をし,標準規格に準拠した製品等の製造・販売を行う。仮に,後に必須宣言特許に基づいてFRAND条件によるライセンス料相当額を超える損害賠償請求を許容することがあれば,FRAND条件によるライセンスが受けられると信頼して当該標準規格に準拠した製品の製造・販売を企図し,投資等をした者の合理的な信頼を損なうことになる。必須宣言特許の保有者は,当該標準規格の利用者に当該必須宣言特許が利用されることを前提として,自らの意思で,FRAND条件でのライセンスを行う旨宣言していること,標準規格の一部となることで幅広い潜在的なライセンシーを獲得できることからすると,必須宣言特許の保有者にFRAND条件でのライセンス料相当額を超えた損害賠償請求を許容することは,必須宣言特許の保有者に過度の保護を与えることになり,特許発明に係る技術の幅広い利用を抑制させ,特許法の目的である「産業の発達」(同法1条)を阻害することになる。(イ) 一方,必須宣言特許に基づく損害賠償請求であっても,FRAND条件によるライセンス料相当額の範囲内にある限りにおいては,その行使を制限することは,発明への意欲を削ぎ,技術の標準化の促進を阻害する弊害を招き,同様に特許法の目的である「産業の発達」(同法1条)を阻害するおそれがあるから,合理性を欠くというべきである。標準規格に準拠した製品を製造,販売しようとする者は,FRAND条件でのライセンス料相当額の支払は当然に予定していたと考えられるから,特許権者が,FRAND条件でのライセンス料相当額の範囲内で損害賠償金の支払を請求する限りにおいては,当該損害賠償金の支払は,標準規格に準拠した製品を製造,販売する者の予\測に反するものではない。また,FRAND宣言の目的,趣旨に照らし,同宣言をした特許権者は,FRAND条件によるライセンス契約を締結する意思のある者に対しては,差止請求権を行使することができないという制約を受けると解すべきである(当裁判所においても,控訴人が被控訴人に対して本件特許権に基づく差止請求権を被保全債権として,本件製品2及び4に加えて「iPhone 4S」の販売等の差止等を請求した仮処分事件(本件仮処分の申立て及び別件仮処分の申\立ての抗告審。当庁平成25年(ラ)第10007号,同10008号事件)において,控訴人の申立てを却下した原審決定を維持する旨の決定をした。)。FRAND宣言をした特許権者における差止請求権を行使することができないという上記制約を考慮するならば,FRAND条件でのライセンス料相当額の損害賠償請求を認めることこそが,発明の公開に対する対価として極めて重要な意味を有するものであるから,これを制限することは慎重であるべきといえる。(ウ) 以上を「FRAND条件でのライセンス料相当額を超える損害賠償請求」と「FRAND条件でのライセンス料相当額による損害賠償請求」に分けて,より本件の事実に即して敷衍する。
・・・
意見の中には,諸外国での状況を整理したもの,詳細な経済学的分析により望ましい解決を論証するもの,結論を導くに当たり重視すべき法的論点を整理するもの,従前ほとんど議論されていなかった新たな視点を提供するものがあった。これらの意見は,裁判所が広い視野に立って適正な判断を示すための貴重かつ有益な資料であり,意見を提出するために多大な労を執った各位に対し,深甚なる敬意を表する次第である。\n

◆判決本文

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 >> その他特許
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 >> 賠償額認定

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平成24(ワ)8071 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年01月16日 大阪地方裁判所

 使用済みの原告製品の芯管に分包紙を巻き直して製品化する行為について、特許はすでに消尽しているかが争われました。裁判所は、新たな生産行為として侵害と認定しました。また、商標権についても侵害認定をしました。損害額は102条2項(侵害者の利益を損害と推定する)で認定されました。
 特許権者又は特許権者から許諾を受けた実施権者が我が国において譲渡した特許製品につき加工や部材の交換がされ,それにより当該特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認められるときは,特許権者は,その特許製品について,特許権を行使することが許される。特許権者又は特許権者から許諾を受けた実施権者が我が国において譲渡した特許製品につき加工や部材の交換がされた場合において,当該加工等が特許製品の新たな製造に当たるとして特許権者がその特許製品につき特許権を行使することが許されるといえるかどうかについては,当該特許製品の属性,特許発明の内容,加工及び部材の交換の態様のほか,取引の実情等も総合考慮して判断すべきである(最高裁判所平成19年11月8日第一小法廷判決・民集61巻8号2989頁)。
(2)検討
まず,特許製品の属性についてみると,原告製品及び被告製品の分包紙が消耗部材であるのと比較すれば,芯管の耐用期間が相当長いことは明らかである。他方で,分包紙を費消した後は,新たに分包紙を巻き直すことがない限り,製品として使用することができないものであるから,分包紙を費消した時点で製品としての効用をいったんは喪失するものであるといえる。また,証拠(甲10)によれば,原告製品は,病院や薬局等で医薬品の分包に用いられることから高度の品質が要求されるものであり,厳密に衛生管理された自社工場内で製造されていることが認められる。同様に,証拠(甲12〜14,乙5)によれば,被告製品も,被告が製造委託した工場において高い品質管理の下で製造されていることが認められる。これらのことからすれば,顧客にとって,原告製品(被告製品)は上記製品に占める分包紙の部分の価値が高いものであること,需要者である病院や薬局等が使用済みの芯管に分包紙を自ら巻き直すなどして再利用することはできないため,顧客にとって,分包紙を費消した後の芯管自体には価値がないことも認められる。そうすると,特許製品の属性としては,分包紙の部分の価値が高く,分包紙を費消した後の芯管自体は無価値なものであり,分包紙が費消された時点で製品としての本来の効用を終えるものということができる。芯管の部分が同一であったとしても,分包紙の部分が異なる製品については,社会的,経済的見地からみて,同一性を有する製品であるとはいいがたいものというべきである。被告製品の製造において行われる加工及び部材の交換の態様及び取引の実情の観点からみても,使用済みの原告製品の芯管に分包紙を巻き直して製品化する行為は,製品の主要な部材を交換し,いったん製品としての本来の効用を終えた製品について新たに製品化する行為であって,かつ,顧客(製品の使用者)には実施することのできない行為であるといえる。以上によれば,使用済みの原告製品の芯管に分包紙を巻き直して製品化する行為は,製品としての本来の効用を終えた原告製品について,製品の主要な部材を交換し,新たに製品化する行為であって,そのような行為を顧客(製品の使用者)が実施することもできない上,そのようにして製品化された被告製品は,社会的,経済的見地からみて,原告製品と同一性を有するともいいがたい。これらのことからすると,被告製品は,加工前の原告製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認めるのが相当である。被告製品を製品化する行為が本件特許発明の実施(生産)に当たる旨の原告の主張には理由がある。
4 争点3(原告が被告製品につき本件各商標権を行使することの可否)に対する判断 前記3のとおり,原告製品及び被告製品は,いずれも病院や薬局等で医薬品の分包に用いられることから高度の品質が要求されるものであり,厳重な品質管理の下で,芯管に分包紙を巻き付けて製造されるものである。顧客にとって,上記製品に占める分包紙の部分の品質は最大の関心事であることが窺える(なお,前記のとおり,需要者である病院や薬局等が使用済みの芯管に分包紙を自ら巻き直すなどして再利用することもできない。)。そうすると,分包紙及びその加工の主体が異なる場合には,品質において同一性のある商品であるとはいいがたいから,このような原告製品との同一性を欠く被告製品について本件各登録商標を付して販売する被告の行為は,原告の本件各商標権(専用使用権)を侵害するものというべきである。実質的にみても,購入者の認識にかかわらず,被告製品の出所が原告ではない以上,これに本件各登録商標を付したまま販売する行為は,その出所表示機能\を害するものである。また,被告製品については原告が責任を負うことができないにもかかわらず,これに本件登録商標が付されていると,その品質表示機能\をも害することになる。これらのことからすると,原告は被告製品につき本件各商標権を行使することができるものと解するのが相当である。

◆判決本文

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 >> 102条2項
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