2014.10. 3
平成25(ワ)5600 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年9月25日 大阪地方裁判所
技術的範囲に属しないとして判断されました。
もっとも,請求項1及び2の記載のみからは,「横向き管の最下面」,「延長線」の意味が明らかではない。横向き管は,上向き,下向き等の方向のものをも含むところ,本件明細書では,横向き管が水平である場合の「延長線」が図示されているのみで,上向きや下向きの場合の「延長線」は図示されていない。そうすると,横向き管が上向きや下向きの場合に,「最下面」がどの面を指すかという点や,「延長線」の始点,方向が明らかとはいえない。
イ そこで,前記(1)で指摘した本件明細書の記載内容を検討すると,従来の混合装置では,輸送短管の出口とレベル計との間に空間ができていたために,材料の一部が未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下していたところ,この問題を解消するため,本件各特許発明では,輸送開始時に必要とされる充填レベルに達するまで混合済み材料を充填させ,既に充填された混合済み材料によって,吸引輸送される材料が未混合のまま一時貯留ホッパー
へ落下するのを阻止するようにしている。 また,充填レベルは,混合済み材料が縦向き管のどの高さまで貯留したかを示すものであるから,輸送開始時を定める充填レベルの基準は,混合済み材料の上表面によって示される必要がある(混合済み材料の上表\面は,必ずしも正確な水平面とは限らないが,レベル計によって,その上表面の位置が判断される。)。 充填レベルが,横向き管が縦向き管に接する出口の下端よりも下方にあって,充填レベルと横向き管の出口の下端との間に空間が生じていると,輸送された材料が未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下することになる。そのため,一時貯留ホッパーへの落下を防ぐには,材料の輸送が開始する時点で,横向き管が縦向き管に接する出口の下端に達するまで,混合済み材料が充填されている必要がある。 したがって,輸送開始時を定める充填レベルの基準となり,充填レベルを検出するためのレベル計の位置の基準ともなる「横向き管における最下面の延長線」とは,横向き管が縦向き管と接する出口の下端から,水平方向に向かって延長した線を意味すると解される。
◆判決本文
◆関連事件はこちらです。これは侵害(間接侵害)が成立しています。平成25(ネ)10026等
◆これの1審判断です。平成20(ワ)10819
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2014.07. 2
平成24(ワ)14227 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年05月22日 東京地方裁判所
窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法について技術的範囲に属すると認定され、102条3項により約2.5億円の損害が認定されました。
これらの記載に前記(ア)認定の事実を併せ考えると,本件発明は,アニーリングという技術手段を採用して,これにより,p型不純物をドープした窒化ガリウム系化合物半導体から水素を出すという作用が生じ,p型窒化ガリウム系化合物半導体が製造されるという効果が得られるというものである。そして,この場合のアニーリング雰囲気は,真空中,N2,He,Ne,Ar等の不活性ガス又はこれらの不活性ガスの混合ガス雰囲気中で行うのが好ましく,さらに,アニーリング温度における窒化ガリウム系化合物半導体の分解圧以上で加圧した窒素雰囲気中で行うのが最も好ましいとされる。これに対し,アニーリング雰囲気中にNH3,H2等の水素原子を含むガスを使用したりキャップ層に水素原子を含む材料を使用することは,p型不純物に結合した水素原子を熱的に解離するというp型のための反応が進行せず,上記作用効果を奏しないことがあるので好ましくないとされるが,逆に,p型不純物に結合した水素原子を熱的に解離するというp型化のための反応が進行して,上記作用効果を奏することもあると考えられることから,アニーリング雰囲気中にNH3,H2等の水素原子を含むガスを使用したり,キャップ層に水素原子を含む材料を使用することが排除まではされていないということができる。そうであれば,構成要件Bの「実質的に水素を含まない雰囲気」とは,このような作用効果を奏するような雰囲気,言い換えれば,アニーリングにより低抵抗なp型窒化ガリウム系化合物半導体を得ることの妨げにならない程度にしか水素を含まない雰囲気を意味するものと解するのが相当である。\n
・・・
被告製品の売上額が51億7487万2414円を下らないこと,本件発明の実施に対し原告が受けるべき金銭の額が被告製品の売上額の5%に相当する額であることは,当事者間に争いがなく,これらの事実によれば,本件発明の実施に対し原告が受けるべき金銭の額は,2億5874万3620円を下らない・・・
◆判決本文
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2014.07. 2
平成25(ワ)18288 特許権侵害行為差止等請求事件 特許権 平成26年05月22日 東京地方裁判所
文言解釈において本件発明の目的からの判断がなされ、技術的範囲には属しないと判断されました。
上記認定に基づき検討するに,本件明細書の発明の詳細な説明及び本件図面においては,回動基部7自体が垂直面に投影したときに「コ」の字状の形状を備えるとされている一方(段落【0014】,【図2】),回動基部におけるアーム支持部を除く部分の構成や,回動基部自体が「コ」の字状又は「コ」の字型ではない構\成については何らの記載がない。また,本件発明は,従来技術の問題点(段落【0006】)を克服すべく,1) 第1と第2の多関節アーム手段を折り畳むことでハンドを待機位置に移動したときに決定されるガイドレール上で移動する際の干渉範囲を小さくする,2) 剛性を低下させずに第1と第2のハンドの機械的な干渉を防止する,3) 第1と第2のハンドの平行移動軌跡を設置面から低く設定するという目的を達成するものである(段落【0007】)。ところで,上記2)の目的は,回動基部を「コ」の字型にし,その上端天井部に第1アームの端部を回動自在に支持し,その下端側に第2の多関節アームの第1アームを支持することで達成される(段落【0019】)。そして,上記1)及び3)の目的は,第1及び第2の多関節アーム手段を同一垂直線上に並置したことにより達成されるものであって(段落【0019】,【0022】),回動基部を「コ」の字型にすることによりその目的の達成が阻害されることもないし,かえって,回動基部にアーム支持部以外の部分を設ける場合,とりわけアーム支持部よりも下に何らかの構成を設けるような場合には,上記3)の目的を阻害することにもなりかねない。そうすると,本件発明において,「前記回動基部が,上基部と,前記上基部と対向して配置された下基部と,前記上基部と前記下基部とに連結され,前記回動基部の前記主基部に対する回動中心線からずれて立設された支柱部と,からコ型に形成されたアーム支持部を有し」(構成要件B−1ないしB−5)とは,「前記回動基部が,上基部と,前記上基部と対向して配置された下基部と,前記上基部と前記下基部とに連結され,前記回動基部の前記主基部に対する回動中心線からずれて立設された支柱部と,からコ型に形成されたアーム支持部を構\成し」の意味に解するのが相当である。
◆判決本文
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2014.06.30
平成24(ワ)15614 特許権侵害行為差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年06月24日 東京地方裁判所
特許権侵害について、審査経緯から介在物が0個の場合を含まない、また、無効理由もありとして請求棄却されました。
上記事実関係に基づいて判断するに,本件訂正発明2の特許請求の範囲にいう「以下」とは基準となる数量(45個)と同じ又はこれより少ない数量を意味するものであるから,その文言上は,0個の場合を含むと解することが可能である。しかし,本件明細書の記載によれば,本件訂正発明2は,「介在物の分布の制御を行うことにより」従来技術の問題点を解決するものであり(前記(3)ア(イ)),5〜10μmの粗大な介在物の分布が圧延方向に平行な断面において45個/mm2未満であれば曲げ加工性等の特性を損なうことがないとの知見(同(ウ)参照)に基づくものである。そして,5〜10μmの粗大な介在物が0個であれば「粗大な介在物の分布」は問題とならないから,本件明細書の記載を考慮すると,上記大きさの介在物が0個の場合はその技術的範囲に属しないと解することができる。これに加え,原告は,析出物及び晶出物粒子の粒径をすべて5μm以下とすることは容易である旨をいう本件拒絶理由通知に対し,本件意見書において,介在物を小さくすれば銅合金の特性改善が図れることは知られていたが,粗大な介在物が存在してもその個数が一定限度であれば良好な特性が得られるという,粗大な介在物の分布の概念を新たに導入した点に本件発明の意義がある旨を述べたものである。本件意見書の上記記載は,5〜10μmの大きさの介在物が存在する場合にのみ本件発明の技術的意義が認められ,5〜10μmの介在物が0個の場合はその技術的範囲に含まれないことを前提としているものと解される。そうすると,原告は,構成要件Fにいう「5〜10μmの大きさの介在物個数が…50個/mm2未満」であることの意義につき,これが0個/mm2の場合を含まない旨を本件意見書において言明し,これにより本件拒絶理由通知に基づく拒絶を回避して特許登録を受けることができたものであるから,本件訴訟において上記介在物の個数が構成要件F’’の「45個/mm2以下」に0個/mm2の場合が含まれると主張することは,上記出願手続における主張と矛盾するものであり,禁反言の原則に照らし許されないというべきである。したがって,構成要件F’’にいう「45個/mm2以下」には0個/mm2の場合が含まれないと判断することが相当である。
2 争点3(無効理由の有無)について
前記1で判断したとおり,構成要件F’’にいう「45個/mm2以下」には介在物個数が0個/mm2の場合を含まないと解すべきものであるが,その文言上はこれを含むと解することもできるので,そのように解した場合に本件特許に無効理由があるかについて念のため検討する。
(1) 乙3文献に基づく新規性欠如について
ア 乙3文献には次の趣旨の記載がある(乙3)。
・・・・
(ア) まず,乙3発明の「晶出物又は析出物」を本件訂正発明2の「介在物」と同視できるかを検討すると,証拠(乙32)及び弁論の全趣旨によれば,1)銅合金を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると,二次電子像(いわゆるSEM画像)により,晶出物,析出物,酸化物,硫化物等の粗大な粒子の大きさ及び個数を測定することができるが,晶出物,析出物,酸化物,硫化物等のいずれであるかの区別はできないこと,2)EPMA装置により特性X線を検出してS及びOを同定する分析を行い,これにより得られるSを同定したEPMA画像及びOを同定したEPMA画像とSEM画像とを対照すれば,SEM画像で観察した粒子から酸化物及び硫化物を除外することが可能であること,3) EPMA画像を撮影して分析するためには,単にSEM画像を撮影して分析するのに比し,数十倍の時間を要することが認められる。他方,乙3文献には,「晶出物又は析出物の大きさ」の測定のために,上記1)のSEM画像の観察のほかに,上記2)のEPMA装置による分析を行ったことの記載はない。また,乙3文献には,有害な不純物であるS及びO2の量を厳密に規定した(段落【0013】)ことの記載はあるが,酸化物及び硫化物の粒子の大きさに関する記載はなく,SEM画像で観察される粗大な粒子に酸化物及び硫化物が含まれていることを示唆する記載もない。そうすると,乙3発明について上記2)のEPMA装置による分析を行ったとは認められず,乙3発明の「晶出物又は析出物の大きさ」(前記イ(オ))は,上記1)のSEM画像により観察された粗大な粒子の大きさを意味するものと解される。さらに,本件明細書(甲40の3)には,介在物個数はSEMで観察したものであること(段落【0019】)が記載されているから,本件訂正発明2の「介在物」も,SEM画像により観察される粗大な粒子であると解される。以上によれば,乙3発明の「晶出物又は析出物」も本件訂正発明2の「介在物」もSEM画像により観察される粗大な粒子であり,測定の対象は同じであるから,乙3発明の「晶出物又は析出物」(前記イ(オ))は,本件訂正発明2の「介在物」(構成要件E及びF\\)と同視できるというべきである。
(イ) 次に,乙3発明の「大きさが1.3〜1.8μm」という構成(前記イ(オ))について検討する。乙3発明は「晶出物又は析出物の大きさが3μm未満」とする発明に係る実施例ないし比較例であること,乙3文献には,晶出物又は析出物の大きさが3μm以上だとめっき性等が悪化するとの記載がある(段落【0014】)ことからすれば,乙3発明における「晶出物又は析出物の大きさ」とは,これらの粒子の大きさの最大値をいうものと解される。したがって,乙3発明における「大きさが1.3〜1.8μm」には,粒子の大きさが5μm未満である構成が開示されているものと解される。そして,前記(ア)のとおり,乙3発明における「晶出物又は析出物」は,本件訂正発明2における「介在物」と同視できるから,乙3発明は,「介在物の大きさが10μm以下であり,かつ,5〜10μmの大きさの介在物個数が圧延方向に平行な断面で45個/mm2以下(0個/mm2の場合を含む。)」(構成要件E及びF\\)の構\成を実質的に開示するものである。
・・・・
オ 以上によれば,乙3発明は本件訂正発明2と実質的に同一の構成を開示するものである。そして,乙3文献には乙3発明の製造方法が説明され,当業者が当該構\成を実施し得る程度の記載があると認められるから,本件訂正発明2は新規性を欠くものというべきである。(2) したがって,本件訂正発明2に係る特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,特許法104条の3第1項により,原告は,本件特許権を行使することができない。
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2014.06.10
平成24(ワ)28201 特許権 民事訴訟 平成26年05月27日 東京地方裁判所
技術的範囲に属しないと判断されました。
本件発明によれば,ダクタイル鋳物を製造する際に,保持炉で貯留,滞留された元湯を取鍋に受け,次いで,黒鉛球状化処理装置に搬送してダクタイル鋳物用溶融鋳鉄に溶製し,さらに,必要に応じて取鍋内のスラグを除去するまでの工程において,取鍋をクレーン等によって吊り上げる必要性がないため,ほとんどの作業を自動化することが可能となり,極めて少ない操作員で一連の作業に対処することが可能\となる。その結果,省力化及び省力化に伴う生産性の向上が達成され,工業上有益な効果がもたらされる。(段落【0037】)
ウ 以上に基づいて構成要件Aの「保持炉」の意義を検討する。
(ア) 本件特許の特許請求の範囲には,保持炉とは「溶解炉で溶解された元湯を貯留する」(構成要件A)ものであると記載されているところ,前記イ(ア)の文献の記載によれば,本件発明の属する技術分野においては,保持炉は「溶解炉で溶解した溶湯を一定の温度に保持し,鋳造機又は鋳型に注湯するために設置される炉」を,溶解炉は「固体金属を熱源で加熱して溶融金属に変える炉」を意味するものとして,それぞれ別個の炉であると認識されていると認められる。そうすると,特許請求の範囲の文言上,構成要件Aの「保持炉」は,鉄源原料を溶解して溶融金属に変える溶解炉とは別に設けられ,溶解炉で溶解された元湯を貯留する炉を意味すると解される。さらに,本件明細書の発明の詳細な説明を検討すると,1)従来技術において,溶解炉で溶解された元湯をダクタイル鋳物用溶融鋳鉄に溶製する際には,通常,溶解炉で溶解された元湯を一旦保持炉に装入し,保持炉で貯留,滞留させて温度や成分等を均質化させた後に保持炉から所定量の元湯を取鍋に装入し,取鍋は,クレーンやホイスト等によって吊り上げられて,保持炉と黒鉛球状化処理装置の間を搬送されていたこと,2)本件発明は,従来技術における労働生産性を改善するために,溶解炉で溶解された元湯を貯留する保持炉と,保持炉に貯留されていた元湯を受ける取鍋と,ワイヤーフィーダー法による黒鉛球状化装置とを備えたダクタイル鋳物用溶融鋳鉄の溶製設備において,取鍋が,保持炉から黒鉛球状化処理装置へ吊り上げられることなく移動されることを特徴とする構成を採用したものであること,3)実施形態において,保持炉は,キュポラや電気炉等の溶解炉で溶解された元湯(溶融鋳鉄)を一旦収容する容器で,低周波誘導等によって収容された元湯を加熱することが可能な炉であり,キュポラあるいは電気炉等の溶解炉で得られた元湯を一旦保持炉に収容するが,通常,溶解炉と保持炉との間には元湯の通過する湯道が設置され,元湯は連続的にあるいは間欠的に溶解炉から保持炉に供給されることが記載されている。これらの各記載は保持炉と溶解炉が別の炉であることを示していることが明らかである。\n
◆判決本文
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2014.06. 4
平成25(ワ)18288 特許権侵害行為差止等請求事件 特許権 平成26年05月22日 東京地方裁判所
技術的範囲に属しないとして被告製品に対する特許権侵害が否定されました。
本件明細書の発明の詳細な説明及び本件図面においては,回動基部7自体が垂直面に投影したときに「コ」の字状の形状を備えるとされている一方(段落【0014】,【図2】),回動基部におけるアーム支持部を除く部分の構成や,回動基部自体が「コ」の字状又は「コ」の字型ではない構\成については何らの記載がない。また,本件発明は,従来技術の問題点(段落【0006】)を克服すべく,(1) 第1と第2の多関節アーム手段を折り畳むことでハンドを待機位置に移動したときに決定されるガイドレール上で移動する際の干渉範囲を小さくする,(2) 剛性を低下させずに第1と第2のハンドの機械的な干渉を防止する,(3)第1と第2のハンドの平行移動軌跡を設置面から低く設定するという目的を達成するものである(段落【0007】)。ところで,上記(2)の目的は,回動基部を「コ」の字型にし,その上端天井部に第1アームの端部を回動自在に支持し,その下端側に第2の多関節アームの第1アームを支持することで達成される(段落【0019】)。そして,上記(1)及び(3)の目的は,第1及び第2の多関節アーム手段を同一垂直線上に並置したことにより達成されるものであって(段落【0019】,【0022】),回動基部を「コ」の字型にすることによりその目的の達成が阻害されることもないし,かえって,回動基部にアーム支持部以外の部分を設ける場合,とりわけアーム支持部よりも下に何らかの構成を設けるような場合には,上記(3)の目的を阻害することにもなりかねない。そうすると,本件発明において,「前記回動基部が,上基部と,前記上基部と対向して配置された下基部と,前記上基部と前記下基部とに連結され,前記回動基部の前記主基部に対する回動中心線からずれて立設された支柱部と,からコ型に形成されたアーム支持部を有し」(構成要件B−1ないしB−5)とは,「前記回動基部が,上基部と,前記上基部と対向して配置された下基部と,前記上基部と前記下基部とに連結され,前記回動基部の前記主基部に対する回動中心線からずれて立設された支柱部と,からコ型に形成されたアーム支持部を構\成し」の意味に解するのが相当である。
ア 原告は,特許請求の範囲の請求項1の記載からすれば,本件発明のアーム支持部は回動基部の一部であると主張するが,本件発明の回動基部は,それ自体がコ型に形成されたアーム支持部を構成するもの,すなわち,それ自体がコ型に形成されたアーム支持部であると解するのが相当であり,このように解しても,「前記回動基部が,・・・アーム支持部を有し」の語義に反するものとはいえない。原告の上記主張は,採用することができない。
イ 原告は,前記第2の3(原告)ウ記載のとおり,本件図面の【図1】には,回動基部7が,第1の多関節アーム手段と第2の多関節アーム手段とを支持する青色部分を備えると共に,この青色部分の下に,主基部1に対する回転中心から水平方向に延びる赤色部分を備えていることが明示されていると主張する。しかしながら,本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0013】によれば,【図2】は【図1】のX−X線矢視断面図であるとされているが,この【図2】には原告主張の赤色部分に該当する部分の記載がない(なお,原告は,【図2】に示された回動基部全体の構造について,上辺に比べて下辺が長いからコの字型ではないとの主張もするが,【図2】に記載された程度に下辺が長くとも,回動基部7の全体がコの字型であると解し得る。)。また,原告主張の赤色部分の構\成や機能は,本件明細書や本件図面からは明らかでないというほかなく,仮に青色部分の下に赤色部分が存在するとすれば,第1と第2のハンドの平行移動軌跡を設置面から低く設定するという本件発明の目的(前記(3))を阻害することになってしまう。さらに,【図1】における多関節ロボット装置は,同図中の破線図示のウエハまたは基板22を図中の矢印Y方向に平行移動することにより一時保管のための装置100と,ウエハまたは基板22に対して所定処理を行なう装置200の間での出し入れを行うために,各装置100,200の略中心に配置され,第1の多関節アーム手段に取り付けられたハンド21と第2の多関節アーム手段に取り付けられたハンド121による処理前基板の取り出し,処理箇所への搬送及び処理済み基板の返送を同一垂直線上で互い違いの対称関係で同時進行するように構成されているものであるが(段落【0010】,【0019】),【図1】の記載を原告の上記主張のように解すると,青色部分のうち,第1及び第2の多関節アーム手段が取り付けられる上基部及び下基部の長手方向が,赤色部分の長手方向と平行でなく,一定の角度で接続されているものとして図示されていることになるから,この場合,両者を平行に設置した場合に比して,第1及び第2の多関節アーム手段における各第1アーム及び第2アームの長さを長くせざるを得なくなるおそれがあり,そうであるとすれば,ガイドレール上で移動する際の移動方向に沿う干渉範囲の短縮化を図るという本件発明の目的(前記(1))及び効果(段落【0022】,【0025】)を阻害することになりかねない。そうすると,【図1】における回動基部7に関する作図自体が,そもそも不正確,不適切なものであると解さざるを得ず,これを根拠として,回動基部7が原告の主張するような構造であると理解することはできない。\n
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