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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

用語解釈

平成27(行ケ)10119  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年12月8日  知的財産高等裁判所

 訂正後のクレームの「Aであって且つB」という文言の意義が争われました。裁判所は「記載順序の違いは,2つの条件を共に満たす範囲に影響を与えるものではない」と判断しました。
 1) 原告は,第1訂正後の本件発明では,スクラロースを,該飲料の0.00 12〜0.003重量%の範囲内に用いることを前提に,その範囲の中から,甘 味を呈さない量という限定を加えているため,0.0012〜0.003重量%の 範囲内に甘味の閾値が存在する場合が含まれることを前提とするものであり,甘味 閾値の具体的な数値を正確に測定する必要があるのに対し,本件訂正後の本件発明 では,甘味を呈さない範囲の量の範囲内で,客観的数値である該飲料の0.00 12〜0.003重量%のスクラロースを用いるという数値限定を加えているた め,0.0012〜0.003重量%は甘味を呈さないこと前提とするものであ り,スクラロースを用いる最大量である0.003重量%において,飲料が甘味 を呈する場合は,明確に排除されているから,具体的な甘味閾値を求める必要は ないとして,第1訂正後の本件発明と本件訂正後の本件発明は,実質的に同一でな いと主張する。
(2) しかしながら,第1訂正後の本件発明と本件訂正後の本件発明では,いず れも「であって」という用語によって,前後の発明特定事項が接続されているが, 「であって」における「て」は,対句的に語句を並べ,対等,並列の関係で前後を 結びつける作用を有する接続助詞であるから,両発明は,いずれも「該飲料の0. 0012〜0.003重量%の範囲」であること(条件A),及び「甘味を呈さな い量」であること(条件B)という2つの条件を共に満たしていることを要求して いると解される。したがって,両発明では,ただ条件の記載順序が異なるにすぎな い。そして,記載順序の違いは,2つの条件を共に満たす範囲に影響を与えるもの ではない。 原告の主張は,発明特定事項が「AかつB」と記載された場合には,条件Aを満 たす集合の中に条件Bを満たす集合が包含されていることが前提となるが,逆に「B かつA」と記載された場合には,条件Bを満たす集合の中に条件Aを満たす集合が 包含されていることが前提となるというものである。しかしながら,各集合に属す るための条件が相互に独立した項目であれば,ある特定の条件を満たす集合は,他 の条件を満たす集合から何ら影響を受けずに,当該特定条件を満たす集合の大きさ や帰属する要素を規律するはずである。そして,複数の条件を満たす集合体の大き さや帰属する要素は,いずれの条件を先に検討しても,それぞれの重なり合う範囲 となるのであり,同じ結果になるはずである。したがって,「AかつB」と「Bかつ A」は同じものを指すのであって,仮に条件Aを満たす集合の中に条件Bを満たす 集合全体が包含される関係にあるのであれば,「AかつB」も「BかつA」も条件B を満たす集合を指すことになり,条件Bを満たす集合の中に条件Aを満たす集合が 包含される関係にはならない。前記1のとおり,本件発明において,「該飲料の0. 0012〜0.003重量%の範囲」であることは,当該飲料の重量によって計算 上算定される値であり,かつ,「甘味を呈さない量」であることは,ヒトの味覚に よって検査される値であり,それぞれ独立した条件であり,一方の条件が論理的に 当然に他方の条件に影響するものではない。
・・・
(3) また,本件訂正後の請求項1は,「・・・スクラロースを,該飲料の0.0 012〜0.003重量%の範囲であって,且つ0,003重量%の場合において スクラロースの甘味を呈さない量を用いることを特徴とする渋みのマスキング方 法」ではなく,「・・・スクラロースを,甘味を呈さない範囲の量であって,且つ該 飲料の0.0012〜0.003重量%用いることを特徴とする渋味のマスキング 方法。」である。すなわち,本件訂正後の請求項1は,スクラロース0.003重量% の場合に甘味があるときがあることを前提としつつ,より少ない重量%として甘味 を呈さない場合をも,その発明特定事項の対象とするものである。したがって,0, 003重量%の場合に常にスクラロースの甘味を呈さないことを前提とした原告の 主張は,特許請求の範囲の記載に基づかないものといわざるを得ない。本件訂正後 の明細書(甲48)の記載を参酌しても,同明細書中には,ウーロン茶飲料におい てスクラロースを0.0012%用いた場合(【0018】)及び緑茶飲料において スクラロースを0.0014%用いた場合(【0019】)に渋みがマスキングされ ることは確認されているが,それぞれの飲料においてスクラロースを0.003重 量%使用した場合に,甘味を呈するか否かは確認されていない。 しかも,かかる主張は,甘味を呈する閾値と0.003重量%との大小関係が一 義的に定まることを前提とするものであるところ(原告は,0.003重量%にお ける甘味の有無だけを判断すれば足り,甘味の閾値を定める必要がないとも主張す るが,本件訂正前の請求項との違いを説明するに当たって,甘味を呈する閾値の上 下で甘味の有無を区別した上で,0.003重量%との大小関係を問題にしている から,このような前提に立つと解するのが相当である。),かかる前提自体は,前件 判決で採用できないことが明らかにされている。すなわち,前件判決は,明確性要 件違反である理由として,極限法が甘味の閾値の測定方法として一般的であるとは いえないこと,官能検査の方法等により甘味の閾値が異なる蓋然性が高いことを前\n提としつつ,「0.0012〜0.003重量%の範囲」は非常に狭く,「甘味を呈 さない量」が「0.0012〜0.003重量%」との関係でどの範囲の量を意味 するのか不明であると判示したのであって,最後の判示部分は,異なる官能検査方\n法を用いた場合の甘味の閾値が,「0.0012〜0.003重量%の範囲」におけ る上下限値と,一義的な大小関係が決まらないことを,明確性の観点から問題とし たものと解される。したがって,原告が主張するように,甘味の閾値が0.001 2〜0.003重量%の範囲内にあるような飲料を当然に除外することはできない し,甘味閾値を求める必要がないともいえない。

◆判決本文

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平成26(ワ)18842  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年7月28日  東京地方裁判所

 特許侵害訴訟です。東京地裁は、文言解釈により技術的範囲に属しないと判断しました。また進歩性なしとして特許104条の3により権利行使不能とも判断してます。\n
 まず,「接触圧」との文言について,原被告双方が異なる解釈を採って いるため,この点について検討する。 「圧」とは「おしつける力」を意味し,「接触」とは「近づきふれるこ と,さわること」を意味する(広辞苑第6版,乙1参照)。 そして,これらの文言の通常の解釈からすれば,本件特許発明1におけ る「接触圧」との文言は,複数の物体が互いに接触する際に生じる力ない し圧力を意味するものと解されるところ,次に指摘する本件特許1の明細 書の記載を参酌すれば,上記文言は,複数の物体が互いに接触する際に生 じる力を意味すると解すべきである。 すなわち,本件特許1の明細書(甲2)において,前記ア 「・・・上記複数の弾性腕の接触部はコネクタ嵌合時に相手端子と最初に 接触する接触部から順に相手端子に対する接触圧が小さくなっており,相 手コネクタを嵌合するときに,最初の接触部を圧したその勢いで,次の弾 性腕の接触部を圧することができるので,小さい挿入力で弾性変形させる ことができ・・・」「指圧(操作者がコネクタ嵌合時に相手コネクタを押 し込む力であり,接触部での接圧に比例する。)」などと記載されている ことからすれば,同明細書の記載は「接触圧」を力と同視しているものと いえ,「接触圧」が相手端子と各弾性腕の接触部との間で生じる力を意味 すること,すなわち「力」であることが明らかといえる。 これに対し,原告は,「接触圧」とは単位変位量当たりの反力(N/m m)を意味する旨主張する。しかし,これは通常の文言解釈に反する上, 原告の上記解釈を根拠付けるような明細書上の記載は存在しないため,原 告の上記主張を採用することはできない。 このほか,原告は,上記「接触圧」が,嵌合終了時点ではなく嵌合途中 の数値を指すとも主張するところ,既に検討したところによれば,この点 について判断するまでもなく,原告の同主張は採用できない。 ウ 原告は,「接触圧」に関する自らの解釈を前提として,被告製品が構成\n要件1Fを充足する旨主張するが,「接触圧」に関する原告の解釈を採用 できないことは前記イのとおりであって,被告製品が「接触圧」に関する 構成要件1Fを充足することを認めるに足りる証拠はない。\n

◆判決本文

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平成26(ネ)10104  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年6月16日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴審でも、明細書の記載を参酌して、技術的範囲に属しないと判断されました。
イ 以上によれば,本件発明の技術的意義について,以下のことを認めるこ とができる。
本件発明は,基板となり得るような結晶欠陥の少ない窒化物半導体(InXAlY Ga1−X−YN,0≦X,0≦Y,X+Y≦1)を用いたレーザダイオード(LD) 等の電子デバイスに使用される窒化物半導体素子に関する(【0001】)。 従来,窒化物半導体は,サファイア基板上に格子不整合の状態で成長されている が,格子不整合で半導体材料を成長させると,半導体中に結晶欠陥が発生し,その 結晶欠陥が半導体デバイスの寿命に大きく影響するため,サファイア基板上に,結 晶欠陥が非常に多いGaN層を薄く成長させ,その上にSiO2よりなる保護膜を 部分的に形成し,その保護膜の上からハライド気相成長法(HVPE),有機金属気 相成長法(MOVPE)等の気相成長法を用いて,再度GaN層を横方向に成長さ せるというラテラルオーバーグロウス(LOG)と呼ばれる成長方法により,結晶 欠陥の少ない窒化物半導体を成長させる試みが行われた(【0002】〜【0004】)。 この従来の方法によると,保護膜の上部に結晶欠陥を集中させて,窓部に結晶欠陥 の少ない領域を作製すること,すなわち,意図的に結晶欠陥を偏在させることがで きるので,異種基板上に直接成長させた窒化物半導体よりも,結晶欠陥の数は減少 するが(【0006】),窒化物半導体表面に現れている結晶欠陥の数は多く未だ十\分 満足できるものではなく,また,窒化物半導体素子についても,結晶欠陥が偏在す るため,信頼性も十分とはいえず,そのため一枚のウェーハからレーザ素子を多数\n作製しても,満足できる寿命を有しているものはわずかしか得られないので,寿命 に優れた素子を作製するためには,窒化物半導体表面に現れた結晶欠陥の数を更に\n減少させる必要があった(【0007】)。 そこで,本件発明は,基板となり得る窒化物半導体の結晶欠陥を少なくして,信 頼性に優れた窒化物半導体素子を提供することを目的とし(【0007】),厚みが5 0μm以上であり,少なくとも下面から厚さ方向に5μmよりも上の領域では結晶 欠陥の数が1×107個/cm2以下である,ハライド気相成長法(HVPE)を用 いて形成されたn型不純物を含有するGaN基板と,前記GaN基板の上に積層さ れた,活性層を含む窒化物半導体層と,前記窒化物半導体層に形成されたリッジス トライプと,該リッジストライプ上に形成されたp電極と,前記GaN基板の下面 に形成されたn電極と,を備えるたものであり(【0008】,【0009】),その結 果,結晶欠陥が少ないGaN基板の上に活性層を含む窒化物半導体層を積層してい るので,非常に信頼性の高い素子が実現できるという効果を奏するものである(【0 061】)。 ウ 上記のように解されるから,本件発明において,結晶欠陥の数が多い高 キャリア領域にn電極を設けることによって,効率のよい素子を作製することまで がその技術的意義に含まれるとはいえず,したがって,この観点から,「GaN基板」 の解釈を導くことはできない。 また,本件発明は,物の発明に関するものであり,ハライド気相成長法(HVP E)を用いることを除き,結晶成長方法を特許請求の範囲に含めておらず,本件明 細書において,n型不純物を含有するGaN基板をハライド気相成長法(HVPE) で形成するに際し,新たに3族源のガスに対する窒素源のガスのモル比(窒素源/ 3族源)を2000以下に調整することで,結晶欠陥を横方向に伸ばすことが記載 されている(【0010】,【0019】,【0022】)としても,結晶成長方 法をこれに限定するものでない(【0016】)旨も記載されている。 エ(ア) しかし,その一方,上記【0016】は,「第2の窒化物半導体層の 結晶欠陥の多い領域と,少ない領域とが窒化物半導体積層方向に対してほぼ同じ方 向にあれば,」成長方法は特に限定されない旨が記載されているのであり,第2の 窒化物半導体層は,結晶欠陥の多い領域と少ない領域が積層する厚み方向に対して 上下方向に位置するものであることを前提としている。
・・・
そうすると,本件明細書では,下地層が除去されて素子構造を形成する場合には,\nn型不純物のドープと併せて,結晶欠陥の多い領域を残存させることによって,高 キャリア濃度を確保する手段が記載されており,結晶欠陥の少ない領域にドープを することによって適切なキャリア濃度に調整することや,そのようなドープのみで 適切なキャリア濃度を確保して動作をさせることが可能か否かについても明らかで\nはないといわざるを得ない。

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平成26(ワ)4  特許権侵害差止等請求事件 平成27年4月28日  大阪地方裁判所

 傾斜角度が0°は本件クレームの「テーパーカム面」に該当しないとして、技術的範囲に属しないと判断されました。
「テーパーカム面」の意義について,本件特許請求の範囲や本件明細書に具体的な記載はないところ,原告は,「テーパーカム面」は,不可分一体の用語であり,シリンダ形成部材テーパー面40と対向してセットになるカム作用を生じさせる面であり,傾斜角度がつけられていることは必須ではない旨主張するのに対し,被告は,「テーパー」で限定された「面」あるいは「カム面」である旨主張する。
(イ) 原告は,本件明細書において,「テーパー面(40)」と,「カム面(28,29)」及び「テーパーカム面」は明確に書き分けられていると指摘し,「カム面」を,カム作用を生じさせる面であるとして,前記のとおり主張する。 しかし,構成要件C5は,「カム面(28,29,40)よりなる増力機構\」と記載し(「40」は,訂正により加えられている。),ボールを介した増力機構における面40,面28及び面29を「カム面」として同列に記載していることからすれば,原告が主張するような明確な書き分けがされているとまではいえない。\nまた,本件明細書において,面28,29及び40については「カム面」との用語を使用しながら,構成要件E2において「テーパーカム面(29)」との用語を使用しているということは,当該面それ自体が,「カム」としての性格または機能\と「テーパー」としての性格または機能を有する趣旨と解するのが自然である。\n
(ウ) 原告は,「テーパー」の意味として,ピストン側のボールと接する面(28)及び可動側クランプ部材の面(29)と,シリンダ形成部材との各2両面で勾配を形成していることのように主張する。 しかし,本件明細書には,回転軸芯と面28とのなす角度α1を「テーパー角」,「シリンダ形成部材31のテーパー面40及び可動クランプ部材21のテーパーカム面29は,回転軸芯と直角な面に対して30°以下の緩やかな傾斜角度α2,α3」となっている旨の記載があり(【0018】),ボール26を囲む面の有する勾配については,回転軸芯ないしは回転軸芯と直角な面に対する勾配であることを前提としていることが認められるものの,複数の面の相関関係によって円錐状の勾配が形成されるとの意味で「テーパー」が用いられていると解し得る記載は存しない。 そして,本件特許は回転軸芯を中心とした円テーブル装置であり,その構造に関する本件特許請求の範囲の記載を解釈するものであることをあわせ考慮すれば,「テーパー」とは,回転軸芯あるいは回転軸芯と直角な面を基準として,傾斜角度を有することと解するのが相当である。\nこの点,原告は,面29の回転軸芯と直角な面に対する角度(α3)が0°の場合も含む旨主張し,当業者の認識理解や,α3が0°の場合のみ除くのは不自然であることなどを指摘するが,上記「テーパー」の意義からすれば,原告の上記主張は採用できないというべきである。
(エ) 前述のとおり,構成要件E2の「テーパーカム面」は,面29それ自体が,「テーパー」としての性格または機能\と「カム」としての性格または機能を有すべきところ,前記イ(イ)によれば,「カム」の典型的機能は,回転運動を直線運動に変換することであるから,広義では,方向等を変換しつつ力を伝達する部材と解する余地がある。\nまた,上記検討したところによれば,「テーパー」は,回転軸芯あるいは回転軸芯と直角な面を基準として傾斜角度(0°を含まない。)を有するとの意味になる。
ウ 被告製品の構成要件E2充足性
以上を前提に,被告製品が,構成要件E2を充足するかにつき検討するに,前記認定によれば,クランプリング8の鋼球10と当接する面は,増力機構\の一部として,鋼球10を介し,クランプピストン9の前進による力をクランプリング8に伝達するのであるから,カム面としての性質を有しているということはできる。 しかしながら, 被告製品において,クランプリング8の鋼球10と当接する面が回転軸芯と直角であること(α3=0°)は争いがなく(原告は,この面が傾斜している旨を主張するものではなく,この面の傾斜角度が0°であっても,テーパーカム面に該当する旨を主張する。),「テーパー」について前記イのとおり解する以上,この面は「テーパーカム面」に該当せず,結局,被告製品は構成要件E2を充足しない。\n

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平成26(ネ)10107  特許権侵害行為差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年5月14日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 CS関連発明について、技術的範囲に属しないとした1審判断が維持されました。争点が「一覧出力形式」という用語の意味です。
 控訴人は,「一覧」とは「全体に一通り目を通すこと」という意味も包含するのであって,「全体を一目で分かるように」する場合に限る必要はないし,本件発明1に対する課題解決のための手段という観点からも,出願経緯からも,出力を1回に限定する必要もなく,被控訴人方法は構成要件1Dを充足すると主張する。\n確かに,「全体を一目で分かるように」するためには,全体が画面に表示される必要があるものの,その場合,画面への表\示までに送信されるデータが一度で出力されなければならない必然性はない。また,【0055】にあるとおり,本件発明1は,画面をスクロールする場合を含むのであって,この場合,画面上表示されない画像データについては事前に送信しなくても,表\示するためのスクロールの時点までに送信されていれば,全体を確認することができる以上,画面上表示されない画像データについては事前に送信しない方法も考えられ,このような観点からしても,画\n 像出力の回数を1回に限定する必要はない。また,本件発明1の目的,作用効果を果たすためには,事業者は,顧客に対し,預かった複数の品物の全てについて一目で分かるように,すなわち,複数の品物の全ての画像を含むように生成したウェブページとして1回の呼出操作で,ウェブページに含まれる品物に対応した画像を閲覧できるように提示する必要があるが,このことを表現するものとして,控訴人の主張するとおり,「一覧」は「全体に一通り目を通す」ものと解釈することも一応は可能\である。 しかしながら,そう解釈した場合であっても,顧客が自らの預かり品の「全体」の範囲を簡単に把握,理解できない方法では,すなわち,自分が行った1回の呼出操作で全ての商品の画像が同一ウェブページに表示されず,出力されていない画像が他に存在する構\成に基づく方法では,顧客が,表示されていない品物の存在を失念している場合には,他のカテゴリーにアクセスしたり,同一カテゴリー内にある他の画像を呼び出したりすることは考えられないのであって,自分が預けた品物を全て正確に把握するという上記課題を解決できないから,「全体に一通り目を通す」ことにならない。そうすると,1回の呼出操作で全ての商品の画像が同一ウェブページに表\示されない新旧いずれの方法についても,被控訴人方法がこの要件を欠くものとなる。 したがって,被控訴人方法は,本件発明1の技術的範囲に属しない。同様の理由で,被控訴人方法は,本件発明2及び3の技術的範囲に属さず,被控訴人装置も,本件発明4から6の技術的範囲に属しない。

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