2024.09.16
令和4(ワ)9112等 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 令和6年8月22日 大阪地方裁判所
構成要件1Cの構\成「地糸の経糸または緯糸の径がパイル糸の径よりも細くされており」を備えていないと判断されました。
ア 上記本件明細書の記載からは、経糸、緯糸、パイル糸の「径」を認識する
方法は見当たらず、また、経糸又は緯糸の径がパイル糸の径よりも細くされ
ることについての技術的意義に関する記述はない以上、そこから上記の「径」
を認識する方法を推測することもできない(原告は【0043】の記載を指
摘するが、パイル糸に「多数の微細長繊維を含ませる」ことと、基布の経糸
又は緯糸の繊度(太さ・細さ)との関係は不明というほかない。)から、これ
らは当業者の理解する技術常識によって決すべきこととなる。
イ この点、繊維の形態的な太さは、一般的にその断面が不規則な形状を示し
ているので、正確な計測は困難であり、したがって、一定の長さ当たりの重
量で繊維の太さが示されているとされ、また断面の形状にあっては、天然繊
維の形状は、それぞれ特有の形をしており、化学繊維は、その形状も人為的
に自由につくることができ、断面は主として紡績方法によって決まり、円形・
だ円形その他複雑なものもある、とされている(乙4。三訂版「繊維」(昭和
61年刊行))。
また、繊維における細さ(繊度)にはいろいろの表し方があり、メートル\n法の番手(1グラムの糸が何メートルの長さを持つかを示すもの。番手が大
きいほど糸は細い。)や、デニール、テックス(いずれも一定長の糸の重量)
が用いられ、デニールと繊維ごとの比重を用いて断面積を算出する方法もあ
る(乙5。「繊維の科学」(昭和53年刊行))。撚りの強さによっても見た目
の太さが変わる(乙6。令和2年当時のウェブサイト。)。本件明細書におい
ても、パイル糸の繊度に関し、デニールが用いられている部分がある。
ウ ところで、「径」の字義は、「1)さしわたし。直径。2)みち。小道。近道。」
というものである(乙7(広辞林第六版))。また、広辞苑第七版においては、
「まっすぐ結ぶ道。さしわたし。」とされており、「差渡し(さしわたし)」の
字義は、「1)さしわたすこと。一方から他方へかけ渡すこと。また、その長さ。
2)直径。わたり。けい。」とされている。これらを踏まえると、「径」とは「直
径」を意味するものと解される。「直径」の字義は、「円または球の中心を通っ
て円周または球面上に両端をもつ線分。また、その長さ。さしわたし。」とい
うものであるから(広辞苑第七版)、「直径」が認識されるためには、平面に
おいては円又はそれに近い形状のものが想定されていると解される。
他方、前記のとおり、糸は繊維の集合体であって、繊維の断面は一般的に
不規則な形状を示すものであるから、少なくとも、「径」の大小の比較に、「断
面積」(空隙を除外するかどうかを問わない)を用いることはできないものと
解される。この点、原告は、糸の太さを断面積で表すことが当業者にとって\n一般的な手法となっていたとしてその旨の証拠(甲25から27まで)を提
出するが、それらは口輪筋線維、等方性黒鉛材料の気孔、血管について画像解析により断面積を測定した例にすぎず、技術分野が全く異なるもので、原告主張の事実は認めるに足りない。
(3) 構成要件1Cの充足の検討\n
ア 原告は、各糸の径は糸の断面積を測定することにより比較判断することが
可能であり、かつこれを製品状態で測定すべきものとした上で、かかる測定\n方法を採用した測定結果を証拠(甲19の1・2)として提出する。
この測定は、被告製品のシール材に対し、接着剤を滴下して浸み込ませ、
乾燥後、養生テープで固定し、パイル糸の配列方向に対し垂直となるように、
シール材に金尺を当てて、カット治具である剃刀刃を沿わせて一回のスライ
スにより切断し、断面画像を撮像した上、該画像を解析して、緯糸とパイル
糸の断面積を求めるというものである。
イ しかし、本件訂正発明1の構成要件1Cは、糸の「径」の大小をその要素\nとしており、糸の太さの比較に断面積を用いることは文言の一義的な意味に
反し、また前述の当業者の技術常識にも合致しないものである。
また、具体的な測定手段をみても、上記測定は、被告製品を加工、破壊し
た上で測定するものであって、原告が自らいう「製品状態での測定」とも前
提を異にするものである(そもそも、製品状態では糸に様々な方向から様々
な力が作用し、一定の「断面積」を得ることは困難であると考えられ、「製品
状態での測定」という前提自体、本件明細書や当業者の技術常識から導き得
るのかについて疑問なしとしない。)。加えて、上記切断方法は、繊維の方向
に垂直に正確に切断されることが保証されるものともいえず、切断角度、切
断箇所の違いによる断面積の変化が何ら考慮されていないと見受けられ、測
定の条件統制にも疑義がある。画像解析についても、糸(及びこれを構成す\nる繊維)の外郭のとらえ方や、空隙の有無等によって「断面積」が異なり得
ることが見て取れる。
これらのことからすると、甲19号証の1・2に示された測定手段は、画
像の作成過程、画像解析の双方において、測定の正確性、合理性が担保され
たものとはいえないというべきである。
また、画像解析の結果報告される糸の断面(空隙を含む外郭)は、不定形
で円又はそれに近い形状を備えておらず、かかる画像から、「径」(といえる
もの)を認識することも困難である。
ウ そうすると、甲19号証の1・2によって、被告製品について構成要件1\nCの充足が立証されたということはできず、他にこれを認めるに足りる証拠
はない。
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2024.06. 9
令和3(ワ)15964 特許権 民事訴訟 知的財産裁判例 令和6年3月22日 東京地方裁判所
本件発明の作用から、被告製品は本件特許の技術的範囲に属しないと判断されました。
3 被告ダンパは、「入力」を受けるものであるか(構成要件G)(争点1−1)\nについて
ア 本件発明1の構成要件G、Hは、「前記剪断部は、入力により荷重を受けた\nときに、変形してエネルギー吸収を行うことを特徴とする弾塑性履歴型ダン
パ」というものであり、本件発明1の対象となる「弾塑性履歴ダンパ」につ
いて「剪断部は、入力により荷重を受けたときに、変形してエネルギー吸収
を行うことを特徴とする」ものであるとされている。したがって、本件発明
1のダンパは、上記に記載された特徴を有するダンパであるところ、その「入
力」がどのようなものであるかについて、本件発明1の特許請求の範囲では
何ら定められていない。
イ ここで、前記1 で説示したとおり、本件各発明は、上部構造物、下部構\
造物に分離できる橋梁等の建築物において、地震のときに、その接続部にお
いて橋軸方向に限らず、複数方向の水平力がかかってしまうところ、同接続
部においては、I字形ダンパでは単一方向の入力にしか対応できないという
課題について、同課題を解決するために、複数の剪断面を持ち、かつ、その
向きが異なるダンパを適用するというものであり、本件各発明は、そのよう
なダンパが本件各発明の構成をとることによって、剪断部が、入力により荷\n重を受けたときに変形してエネルギー吸収を行うというものである。
本件明細書に記載された本件各発明の課題は、上記のとおりであり、従来
から知られていた剪断パネル型ダンパである単純なI字形ダンパに対して
単一方向からの入力しか想定されない場面においては、本件各発明における
解決すべき課題は存在しない。単一方向からの入力でなく複数方向からの入
力が想定される場合に、本件各発明が解決すべき課題が存在することとなる。
そして、本件明細書には、前記1 に記載のとおりの本件各発明の意義が記
載されているほか、本件明細書に記載された実施例は、全て、複数方向から
の入力が問題となり、そのような複数方向からの入力に対し、本件発明1の
構成をとることによって対応することができるものであると認められる。本\n件明細書のその他の部分にも、単一方向からの入力に対応することに関する
記載はない。これらの本件明細書の記載及び構成要件G、Hの記載から、本\n件発明1に係るダンパは、ダンパに対して複数方向からの入力が想定される
構造物等の部位に用いられ、ダンパの剪断部に対して複数方向からの入力が\nあり、これに対して対応することができるダンパであると解するのが相当で
ある。
ウ 以上によれば、本件各発明におけるダンパは、その剪断部に複数方向から
の入力があり、その剪断部がそれに対する入力により荷重を受けたときに、
変形してエネルギー吸収を行うことを特徴とするもの(構成要件G、H)で\nあると解するのが相当であり、構成要件Gに係る「入力」は、「複数方向か\nらの入力」を意味し、本件各発明のダンパは、ダンパに対して複数方向から
の入力があることを前提として、その剪断部が複数方向からの入力により荷
重を受けたときに変形してエネルギー吸収を行うことを特徴とするダンパ
であると認められる。
被告ダンパについて検討すると、本件において、原告は、被告ダンパ単体の
譲渡等を問題にするのではなく、被告ダンパが住宅である被告製品に用いられ
て、そのような被告製品が販売されていることを特許発明の実施として、被告
製品の販売額を基礎として実施料率相当額の損害を請求する。
被告は、6種の被告ダンパを4種の耐力パネルのいずれかに組み込み、これ
を住宅である被告製品の部材として用いている(前提事実 )。被告ダンパは各
平行板部及び各ウェブ部の一端又は両端が耐力パネルに溶接されているので
あって、耐力パネルから取り外して使用されることはおよそ想定されておらず、
各耐力パネルも、建物の水平方向に延びる梁や土台等にはさまれるように固定
されて設置されており、住宅販売後に耐力パネルのみを取り外して別の用途に
使用するということはおよそ想定されていない(前提事実 )。すなわち、被告
ダンパは、耐力パネルに物理的にも溶接され、取り外されることはおよそ想定
されず、耐力パネルと不可分一体となっているものといえる。
そうすると、本件において問題となる被告の行為は、被告ダンパが不可分一
体の一部となった被告製品の製造、販売等であって、被告ダンパが組み込まれ
た被告製品が本件発明1の技術的範囲に属するか否かが問題になるというべ
きである。
なお、被告は、Σ型の形状の鋼材である被告ダンパを作成し、これを他の部
材に組み込むことで耐力パネルを製造していることがうかがえる。もっとも被
告ダンパ単体には「一対のプレート」は接続されておらず、耐力パネルに組み
込まれることによって初めて、「一対のプレート」の具備が問題になるのである
から、耐力パネルに組み込まれる前の被告ダンパ自体が本件発明1の技術的範
囲に入ることはないと解される。
被告製品に組み込まれ、被告製品と不可分一体となった被告ダンパに対して
加わる力について検討する。
ア 被告ダンパはいずれも4種類の耐力パネルのいずれかに組み込まれてい
るところ、耐力パネルは、その構造上、耐力パネルが接続している梁の方向\nの力(耐力パネルが平行四辺形に変更する方向の力)が加わると、いずれの
耐力パネルについても、被告ダンパに鉛直方向の力が加わり、所定レベル以
上の力が加わると剪断変形によって地震力を吸収する。このとき、被告ダン
パに対しては、鉛直方向の力以外の力は加わらない。他方で、耐力パネルに
梁と垂直方向の力が加わっても、被告ダンパには力が加わらず、地震力を吸
収することができない。地震力のうち、これらの力の合力については、いず
れも上記二つの力に分解できるから、結局、被告ダンパには鉛直方向の力の
みが加わるということになる(乙33)。被告製品においては、建物の特定
の方向に複数の耐力パネルを設置するとともに、これと直交する方向にも複
数の耐力パネルを設置しており、このように複数の耐力パネルを直交方向に
設置することによって、個々のパネルの被告ダンパには鉛直方向の力のみが
加わり、その方向の力のみしか吸収できないとしても、各方向に沿って設置
された耐力パネルが、両方向に対応する地震力の分力を吸収することで建物
全体では任意の方向の地震力を吸収できるように設計されているといえる
(乙3)。
イ 被告ダンパに対しては、一応、前記アのとおりの力のみが加わるといえる
が、耐力パネルが設置されている上下の梁がねじれる(回転する)力が加わ
った場合には、耐力パネルの構造上、被告ダンパに対し鉛直方向とは異なる\n方向の力が加わる可能性がないわけではない。そこで、被告製品において鉛\n直方向からどの程度ずれる力が加わり得るのかについて検討する。
被告は、被告ダンパを搭載した実物大の住宅サンプルに対して、過去最大
級の地震の一つである兵庫県南部地震の際にJR鷹取駅で観測された地震
波(以下「鷹取地震波」という。)を適用して地震時挙動を測定する実験を行
ったところ、その結果によれば、1階に対する2階床の最大回転角は、0.
14°(乙40)、これにより耐力壁に設置されたダンパに対して加わる力
の鉛直方向からのずれは、0.022°であったこと(乙41)が認められ
る。
ウ 以上を前提に、被告ダンパの剪断部に本件発明1における複数方向から
の入力があり、その剪断部が複数方向からの入力により荷重を受けたとき
に変形してエネルギー吸収を行うものといえるか否かについて検討する。
特許請求の範囲にも本件明細書にも、前記の複数方向のうち1つの方
向といえる角度範囲をどの程度のものと想定しているかについての直
接的な記載はない。しかし、そもそも、本件発明1のダンパは、建築物
や橋梁等の建物、建造物で用いられるものであるところ、従来のI字型
ダンパは、想定する角度からわずかでもずれれば機能しなくなるという\nものではない。I字形ダンパは、入力方向のずれが生じている場合でも、
パネルと平行し、面内を通る方向の分力については、入力がパネルと面
内を通る方向と平行だった場合と同様に作用することになるから、実際
の入力と面内を通る方向とのずれがごくわずかであれば、実際の入力と
ほとんど変わらない力が面内を通る分力として剪断パネルに作用する。
例えば、入力方向が0.1°ずれた場合には、
Cos0.1°=約0.9999985
により、約99.99985%の力が面内を通る分力として剪断パネル
に作用することになり、この程度の入力方向のずれでは、I字型ダンパ
に生じる効果に観測できるほどの差は生じないことは明らかである。ま
た、建築の分野において橋梁や住居などの一定の大きさの建造物を建築
するに当たって、施工誤差が生じることは当然であり(原告は、後記の
とおり耐力パネル設置に当たって少なくとも±0.82°の据え付け誤
差が生じると主張している。)、I字型ダンパもそのことを前提に用いら
れるものとして想定されており、施工の限界を超えた小さい角度差は、
単一方向の入力として想定されているというべきである。さらに、I字
型ダンパはパネルと平行し、面内を通る方向から力が加わることによっ
て、平行四辺形に剪断変形することによってその力を吸収するというも
のである(前記2 )が、I字型ダンパの剪断パネルにも一定の厚さが
あり、少なくとも厚さの中に納まるような入力方向の小さなズレであれ
ば、パネルの面内を通る方向からの力と評価し得、少なくともこの程度
の入力方向のずれは、同一方向からの入力として想定されているともい
える。
本件明細細書においても、本件各発明のダンパは、図面上、いずれも一
見して複数の剪断部の方向が異なることが明らかなもののみであり、そ
の入力方向のズレが相当に小さいことを想定した場合の記載、図面はな
い。そのずれが相当に小さく、例えば、0.1°程度の差を複数方向か
らの入力と想定した場合、複数のパネルを連結しながらどのように配置
すれば効率的に入力を吸収できるかは、本件明細書によっても明らかで
はない。上記のような差の入力の場合、厚みのある鋼板を用いて、2枚
の剪断パネルを0.1°程度の角度をつけて接合し、ダンパを作成する
ことを実現することが現実的であるとはいえない。
以上に述べたところに、前記 で記載した本件発明1の意義を考慮す
ると、本件発明1で対象としている複数方向からの入力は異なる方向か
らの入力であるというべきところ、その異なる方向からの入力には、少
なくとも、従来のI字型ダンパにおいて同一方向からの入力として想定
されていたといえる入力を含まないものと認められる。
前記イで認定したとおり、被告製品は、少なくとも鷹取地震波を前提
にすると、これによって剪断パネルに一定のねじれが生じ、被告ダンパ
に鉛直方向からずれた方向からの力も加わることが認められる。しかし、
そのずれは0.022°(なお、cos0.02°=約0.9999999
26)と極めて小さいものである。この程度のずれは、その小ささから
もこれによって被告ダンパに生じる効果に観測できるほどの差が生じ
るとは認めるに足りないし、このずれは、被告製品が用いられる分野の
施工の限界を超える程度であるといえる。また、そのずれは、被告ダン
パのウェブ部を形成する鋼板の厚みの中に収まるような小さなもので
あることがうかがえる。
これらによれば、上記実験結果によれば、本件においてねじれによっ
て加わり得る入力方向の違いは、従来のI字型ダンパにおいて同一方向
からの入力として想定されていたといえる範囲のものであり、前記 で
説示した本件発明1が異なる入力方向として想定しているものではな
いというべきである。
また、被告製品が鷹取地震波を超える地震波に遭遇することは想定さ
れ得る。しかし、上記実験で用いられたのが過去最大級の地震の一つで
ある鷹取地震波であり、その場合であっても上記のとおり入力方向の違
いが極めて小さいことからすると、現実に想定し得る鷹取地震波を超え
る地震においても、被告ダンパに対して本件発明1が想定する程度の鉛
直方向からのずれが生じる剪断パネルのねじれが生じるとも認められ
ない。
以上によれば、被告製品で用いられている被告ダンパの剪断パネルに
対してねじれの影響によって生じる入力方向の違いは、その小ささから、
本件発明1が想定する程度に達するような、異なる方向からの入力であ
ると評価できるものではないというべきである。
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2024.05. 1
令和5(ネ)10078 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 令和6年3月28日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
1審で文言侵害不成立と判断されましたので、控訴審で均等侵害の主張を追加しましたが、第1要件を満たさないと判断されました。
(4) 当審における控訴人による均等侵害の主張に対する判断
ア 控訴人は、仮に被控訴人製品が、本件各発明に文言上はその技術的範囲に
属しないものとしても、これと均等なものとして、特許権侵害に当たる旨を
主張する。
特許請求の範囲に記載された構成中に相手方が製造等をする製品又は用い\nる方法(以下「対象製品等」という。)と異なる部分が存する場合であっても、
1)同部分が特許発明の本質的部分ではなく、2)同部分を対象製品等における
ものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果
を奏するものであって、3)上記のように置き換えることに、当該発明の属す
る技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が、対象製品等の製
造等の時点において容易に想到することができたものであり、4)対象製品等
が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから同
出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、5)対象製品等が特許発明の
特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たる
などの特段の事情もないときは、同対象製品等は、特許請求の範囲に記載さ
れた構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解する\nのが相当である。
そして、上記1)の要件(第1要件)における特許発明における本質的部分
とは、当該特許発明の特許請求の範囲の記載のうち、従来技術に見られない
特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきであり、特許請求\nの範囲及び明細書の記載に基づいて、特許発明の課題及び解決手段とその効
果を把握した上で、特許発明の特許請求の範囲の記載のうち、従来技術に見
られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定するこ\nとによって認定されるべきである(最高裁平成6年(オ)第1083号同1
0年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁、最高裁平成28
年(受)第1242号同29年3月24日第二小法廷判決・民集71巻3号
359頁参照)。
これを本件において検討するに、前記(1)イのとおり、本件発明1は、「底部
に取り付けられた安定補助板により支えられてテーブルなどの上に立たせら
れる」「折畳式コップ型容器」(段落【0003】)であって「安定補助板が例
えば紙や合成樹脂などから形成され、後から容器本体に取り付けられる構成」\n(段落【0005】)を採用した従来技術を前提とし、「成形が簡便な自立型
の包装容器の提供を目的とする」(段落【0006】)ことを発明が解決しよ
うとする課題とし、当該課題を解決する手段として「前記包装容器を容器と
して形成した状態において、前記底部を形成する底面片と同一面に連なる自
立片が載置面に沿って前記奥行の方向に突出し、前記自立片によって前記載
置面に自立させられる」(本件発明1の構成要件B)という構\成を採用するこ
とにより、「包装容器を自立させる自立片が底面片に連なっているため、一体
的な成形が簡便である」(段落【0013】)という効果を奏するものである。
そうすると、本件発明1において従来技術に見られない特有の技術的思想
を構成する特徴的部分は、従来技術における安定補助板が、底部に一体的に\n成形された構成である、「前記包装容器を容器として形成した状態において、\n前記底部を形成する底面片と同一面に連なる自立片が載置面に沿って前記奥
行の方向に突出し、前記自立片によって前記載置面に自立させられる」こと
にあると考えられる。
そして、本件発明1と被控訴人製品とは、包装容器を容器として形成した
状態において、本件発明1の「底面片」が筒状の底部を形成するのに対し、
被控訴人製品は、包装容器を自立させる舌状片が、包装容器の底部を形成す
る六角片と同一面に連なっておらず別に構成されている点において相違する\nものと認められるところ、この相違に係る本件発明1の構成、すなわち「底\n部を形成する底面片」が「自立片」と同一面に連ねられていることは、これ
までの検討によれば、本件発明1の本質的部分に当たるものということがで
きる。
そうすると、上記相違点に係る本件発明1の構成については、本件発明1\nの本質的部分ではないということはできない。そして、前記(1)ウのとおり、
上記の点については、本件各発明について共通するものということができる。
したがって、被控訴人製品は均等侵害の第1要件を充足しないから、その
要件について検討するまでもなく、均等侵害は成立しない。
イ 控訴人は、前記第2の3(4)ウのとおり、本件各発明の本質的部分は、「自立
片」によって載置面に自立させられる構成を採用した点にあり、当該「自立\n片」が内容物に直接接触してこれを支える片という意味における「底面片」
と、同一面に連なることにあるのではないと主張する。
しかし、本件各発明の本質的部分については上記アのとおりと認められる
から、本件各発明と被控訴人製品とは、その本質的部分において異なるもの
というべきである。
◆判決本文
1審はこちらです。
◆令和4(ワ)2049
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2024.04.30
令和5(ワ)70001 特許専用実施権侵害差止請求事件 特許権 民事訴訟 令和6年4月17日 東京地方裁判所
構成要件Dを充足せず、記述的範囲に属さないと判断されました。\n
以上のような本件明細書等から認められる本件各発明の目的、課題の解決手
段からすれば、本件各発明は、オゾンによる殺菌等を行った処理後の被処理水
に含まれる残オゾンの低減と、被処理水の生物処理の促進とを両立させること
ができる廃水処理装置及び廃水処理方法を提供することを目的としており、そ
の解決手段としては、第1の収容槽内にオゾンを含むマイクロナノバブルを供
給するオゾン供給手段を有するとともに、第1の収容槽とは別に、被処理水の
生物処理を行う第2の収容槽を設けることとした上で、そこに第1の収容槽に
おいてオゾンによって処理された被処理水を残オゾンとともに収容し、生物処
理能力を低減させる原因となる残オゾンを積極的に酸素分子に化学変化させる\nために、第2の収容槽内に酸素を含むマイクロナノバブルを供給する酸素供給
手段と、所定の担体を有するというものである。
したがって、本件各発明においては、オゾンによる殺菌等を行った後の被処
理水に含まれる残オゾンの低減をも目的として第2の収容槽とそれに関する構\n成を設けているのであり、残オゾンを低減させるための構成ともいえる第2の\n収容槽内に、少なくとも積極的にオゾンを供給することは、課題の解決に至ら
ず、本件各発明において第2の収容槽とそれに関する構成を有することとした\nことと相容れないものといえる。
そして、オゾン発生装置で製造されるオゾンは、純度100%のオゾンガス
が製造されるものでないことは技術常識である上、本件明細書【0031】に
おいて、オゾン発生装置29によって発生し、このオゾン発生装置29に接続
され吸気管を介し吸気されたオゾンは、複数分岐した枝管24を通って圧縮部
22内に噴出されるようになっていて、この圧縮部22内に噴出された気泡が
オゾンを含むマイクロナノバブルとされていることからしても、第1収容槽内
に供給される「オゾンを含むマイクロナノバブル」については、当然に酸素(空
気)を含むものも想定されていたといえる。
以上に照らせば、本件各発明の特許請求の範囲の「第1の収容槽内にオゾン
を含むマイクロナノバブルを供給するオゾン供給手段」と、「第2の収容槽内に
酸素を含むマイクロナノバブルを供給する酸素供給手段」の記載は、特にオゾ
ン供給の有無という点において上記課題の解決のための対照的なマイクロナノ
バブルの供給手段として記載されているものと解するのが相当であり、「第2の
収容槽内に酸素を含むマイクロナノバブルを供給する酸素供給手段」は、第1
の収容槽への供給手段と異なり、そのマイクロナノバブルにはオゾンが積極的
に加えられているものではなく、その供給手段には、オゾンが積極的に加えら
れたマイクロナノバブルを供給する供給手段を含まないというべきである。し
たがって、第2の収容槽内にオゾンが積極的に加えられたマイクロナノバブル
を供給する酸素供給手段を有する装置は、構成要件Dを充足しないと解される。\n
(3) 被告システムは、前記第2の1(6)のとおり、構成要件Dの第2の収容槽に当\nたる曝気槽内に、酸素及びオゾンを含むマイクロナノバブルを供給する被告装
置を有しており、そのマイクロナノバブルには、オゾン発生装置から得られた
オゾンガス、すなわちオゾンと酸素の混合ガスが用いられていて、オゾンが意
図的、積極的に加えられていると認められるから(甲16、18、21、弁論の
全趣旨)、構成要件Dを充足しない。\n
(4) 原告は、被告装置は、オゾンよりも多くの酸素が残存して含まれている上、
当該オゾン自体も活性炭により化学変化させて酸素となることにより、好気性
微生物及び通性嫌気性微生物を活性化させており、十分効果的である旨主張す\nる。
しかし、本件明細書に記載された本件各発明の目的、課題の解決手段等から
すれば、本件各発明における「酸素を含むマイクロナノバブルを供給する酸素
供給手段」は、前記(2)のとおり解するのが相当である。
また、原告は、オゾンは微量であるが、大気中に存在するし、「オゾン発生装
置」で生成されたオゾンは自然に消滅して酸素に置き換わるものなので、「第2
収容槽内においてはオゾンの量を早期に低減」させることは、2次的な効果に
すぎない旨主張するが、前記(1)及び(2)で述べたところによれば、残オゾンを早
期に低減させることが本件各発明の2次的な効果にすぎないといえない。
(5) 以上によれば、被告システムは構成要件Dを充足せず、本件発明1の技術的\n範囲に属しない。
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2024.04.14
令和5(ワ)3375 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 令和6年3月21日 大阪地方裁判所
特許侵害訴訟です。大阪地裁(21部)は、発明の一部の構成について一義的に明らかではないが、当業者の技術常識、明細書の記載に基づいて、被告製品は技術的範囲に属しないと判断しました。均等侵害は主張されていません。
前記(ア)のとおり、構成要件B2は、「縦板部」について、「庇板の開放された\n前端面に当接され」ていることと「前面が雨水を下方へ導くガイド面となっている」
こととをいずれも備える旨規定している。当該当接部分と、「前面が雨水を下方へ
導くガイド面となっている」部分との位置関係については、構成要件B2の文言か\nらは一義的には明らかでないものの、本件明細書において、前記(イ)のように、本
件発明が、庇の全長が必要以上に長くなるなどの従来の庇の問題に着目して小型化
と構造の簡易化を実現し、保守、点検に手数を要さない庇を提供することを目的と\nしていること、その問題を解決するための手段として、前縁板は、「庇板の開放さ
れた前端面に当接され前面が雨水を下方へ導くガイド面となっている縦板部」と、
「庇板の上面に当接され上面が雨水を縦板部のガイド面へ導くガイド面となってい
る横板部」とが一体に形成されて成り、前記縦板部の下部内面には凹部が形成され
るとの構成が示されていること、当該構\成において、庇板の上面に溜まった雨水は、
庇板の上面を伝って前縁板まで導かれ、横板部のガイド面を経て縦板部のガイド面
を伝って縦板部の下端より落下し、庇板と横板部との隙間より浸入した雨水は、縦
板部の内面を伝って下方へ流下して凹部内に流れ込み、凹部から溢れ出て縦板部の
下端より落下する旨が記載されていることからすれば、構成要件B2の「縦板部」\nは、「庇板の開放された前端面に当接され」た板部の「前面が雨水を下方へ導くガ
イド面となっている」ことを要するものと解するのが、当業者にとって合理的であ
る。
そして、「前面が雨水を下方へ導くガイド面となっている」部分と、「庇板の開
放された前端面に当接され」た部分とがいずれも備わっているが、両部分が離間し
て存在し、「庇板の開放された前端面に当接され」た板部の「前面が雨水を下方へ
導くガイド面」となっていない構成が「縦板部」に含まれるとの解釈は、本件明細\n書に示される本件発明の目的(庇の小型化や構造の簡易化)や作用に整合しないし、\n本件明細書上、これを許容するような記載や示唆も見当たらない。したがって、少
なくとも、かかる構成は構\成要件B2の「縦板部」を充足しないものというべきで
ある。
イ 被告製品についてみると、被告製品の構造(形状)の概要は、別紙「イ号製\n品」及び「ロ号製品」の各図面記載のとおりであるところ(前提事実(4)ア)、両
別紙の各【図7】のとおり、庇板102の開放された前端面129に、先端見切1
04(「前縁板」に相当する。)の当接部145の板部が当たって接している、す
なわち当接しているものと認められる。
しかしながら、雨水を下方へ導くガイド面140aは、中間に横方向へ延びる張
出部142を介して当接部145の板部とは離間して存在しており、当接部145
の板部の「前面」が雨水を下方へ導くガイド面となっているとは到底いえない。そ
うすると、被告製品には、「庇板の開放された前端面に当接され」た板部の「前面
が雨水を下方へ導くガイド面となっている」構成が備わっておらず、被告製品は、\n構成要件B2の「縦板部」を充足しない。\n
ウ これに対し、原告は、被告製品の折れ板部140(別紙「図面」の【原告主
張図1】及び【原告主張図2】の橙色部分)は、前端面129に当接する当接部1
45及び前面が雨水を下方へ導くガイド面140aを備えるから、構成要件B2の\n「縦板部」に該当する、構成要件B2の「縦板部」は、雨水を縦方向に導くガイド\n面を備えているから「縦板部」との語が用いられたにすぎず、被告製品が前方へ張
り出す張出部142を有するからといって、非充足になるとはいえない旨主張する。
しかし、前記アに述べたとおり、本件特許の特許請求の範囲の請求項及び本件明
細書の各記載からすると、「庇板の開放された前端面に当接され」た板部の「前面
が雨水を下方へ導くガイド面」となっていない構成を、構\成要件B2の「縦板部」
に含めることはできないというべきであるから、被告製品の折れ板部140が当接
部145及びガイド面140aを備えるとしても、当接部145の板部の前面が、
ガイド面140aとは離間し、雨水を下方へ導くガイド面となっていない以上、折
れ板部140が構成要件B2の「縦板部」に該当するとは認められない。\nしたがって、被告製品が構成要件B2を充足する旨の原告の主張は採用できない。\n
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2024.03.23
令和4(ワ)9100 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 令和6年2月21日 東京地方裁判所
技術的範囲に属しない(構成要件F非充足)として、特許権侵害が否定されました。\n
被告方法では、磁性体モールド樹脂で成形されているEコア及びIコア並び
にコイルを合体させたコアを、●(省略)●に形成されたキャビティに配置し、
加圧しつつ加熱して樹脂を硬化させてモールドコイルを作成する(以下「加圧・
加熱過程」という。)ところ、加圧・加熱過程で●(省略)●から磁性体モール
ド樹脂が漏れ出し、これが硬化してバリが形成される(第2の2前提事実 )。
原告は、上記の被告方法において、キャビティに配置されるEコア、Iコア
を形成する磁性体モールド樹脂(以下「磁性体モールド樹脂(コア)」という。)
が構成要件Fの「該キャビティ内に充填した磁性体モールド樹脂」に該当し、\n加圧によって漏れ出してバリを形成する磁性体モールド樹脂(以下「磁性体モ
ールド樹脂(バリ)」という。)が「該排出した磁性体モールド樹脂」に該当
し、磁性体モールド樹脂(バリ)を構成する磁性体粉末の容積比(以下「磁性\n体粉末容積比(バリ)」という。)が磁性体モールド樹脂(コア)を構成する\n磁性体粉末の容積比(以下「磁性体粉末容積比(コア)」という。)よりも小
さいと主張するものと解される。
もっとも、被告方法を用いて被告製品を製造する過程において、磁性体粉末
容積比(コア)と磁性体粉末容積比(バリ)について、これらを直接測定して
比較し、後者の容積比の方が小さいものであったことを示す証拠はない。他方、
被告からは、被告方法で作成されたモールドコイルにおいて、磁性体粉末容積
比(バリ)と磁性体粉末容積比(コア)がほぼ同じである旨の電子顕微鏡で撮
影された画像の分析結果(乙4)が提出されている。
ア 原告は、磁性体粉末容積比(コア)と磁性体粉末容積比(バリ)について、
磁性体粉末の粒子径が、磁性体モールド樹脂が漏れ出す隙間よりも大きけれ
ば、樹脂が隙間から優先的に排出されるために磁性体粉末容積比(バリ)の
方が磁性体粉末容積比(コア)よりも小さくなるところ、被告方法の加圧・
加熱過程で加圧を続けても樹脂の流出が止まるのは、磁性体粉末が隙間を埋
めることが理由であるから、被告方法においては、樹脂が隙間から優先的に
排出されるといった事象が生じたことが示されていると主張する。これに対
して、被告は、被告方法において加圧・加熱過程で加圧を続けているにもか
かわらず樹脂の流出が止まる理由について、磁性体によって隙間が埋められ
たためではなく、触媒等を利用した上で加熱により樹脂が硬化したためであ
ると主張している。
原告は、被告が主張するような短時間で硬化は生じない旨主張するが、被
告方法における樹脂の硬化につき、この原告主張を裏付けるに足りる証拠は
ない。また、樹脂の流出が止まったのが磁性体粉末が隙間を埋めたものであ
ることを裏付ける証拠はない。被告が実際に使用している被告方法において、
原告が主張するのとは異なる理由により樹脂の流出が止まったことを否定
できず、被告方法において、原告が主張する事象が生じたことによって樹脂
の流出が止まると認めるには足りない。そうすると、原告の主張はその前提
を欠く。
イ(ア)原告は、加圧・加熱過程において磁性体モールド樹脂が漏れ出す隙間が
磁性体粉末の粒子径よりも小さければ、樹脂が優先的に流出するために
磁性体粉末容積比(バリ)の方が磁性体粉末容積比(コア)よりも小さく
なるという原理を前提に、被告方法で生じている隙間は十分に小さいも\nのであると主張する。
(イ)しかし、被告方法において隙間に相当するものの幅、形状・構造等は不\n明である。原告は、バレル研磨跡に生じている被告製品の角に生じた研磨
跡に着目し、バリの幅は研磨跡を超えることはないなどとして、研磨跡か
らバリの幅を推計し、バリの厚さは●(省略)●を超えるものではないな
どとも主張する(甲8)。しかし、研磨跡によりバリの幅を正しく把握で
きるかは明らかでなく、原告指摘の事実によっても、隙間に相当するもの
の幅、形状・構造等は不明である。\n
(ウ)被告方法で用いられる磁性体粉末の大きさについても、被告が用いた磁
性体のD99は、●(省略)●D90は、●(省略)●であることは認め
られる(乙3)が、被告方法においては、様々な粒子径、形状の磁性体が
使用され、具体的な粒子径の分布は不明である。そして、被告方法で作成
されたモールドコイル及びバリの電子顕微鏡で撮影された画像(乙4)に
よれば、被告方法で隙間に相当するものの幅に比べて格段に小さな磁性体
粒子が多数含まれていることが認められる。
(エ)原告が前記(ア)で主張する原理について、全磁性体粒子のうちの最小粒子
径が隙間よりも大きい場合には、磁性体は隙間を通過することができない
ため、樹脂のみが隙間から流出することは推測できる。逆に、全磁性体の
粒子径が隙間よりも十分に小さければ、樹脂と共に磁性体も隙間を通過す\nることから磁性体粉末容積比(コア)及び磁性体粉末容積比(バリ)に変
化がないものと推測でき、隙間より大きな磁性体粒子の割合が極めて小さ
い場合にも同様である。他方で、これら以外の場合には、磁性体粉末の具
体的な粒子径の形状・分布、樹脂の性質、隙間の形状・構造、加えられる\n圧力等により、隙間を通過する磁性体の量は変化するものと推測される。
そして、それらについて、どのようなものであった場合に隙間を通過する
磁性体がどの程度あるかについて、これを認めるに足りる証拠はない。
(オ)以上によれば、被告方法においては、様々な粒子径、形状の磁性体が使
用されているところ、その全磁性体粒子のうちの最小粒子径が被告方法
で使用されている●(省略)●よりも大きいことを認めるに足りない。ま
た、そのように全磁性体粒子のうちの最小粒子径が被告方法で使用され
ている●(省略)●よりも大きいことが認められない場合、被告方法にお
いて、どのような割合で磁性体と樹脂が被告方法における隙間に相当す
る部分を通過するかは明らかではなく、特に本件のように隙間よりも小
さな粒子径を有する磁性体粒子が多数含まれる場合には、原告が主張す
る原理によって、被告方法において磁性体粉末容積比(バリ)の方が磁性
体粉末容積比(コア)よりも小さくなっているという事実を認めるに足り
ない。
ウ 以上によれば、被告方法において磁性体粉末容積比(バリ)の方が磁性体
粉末容積比(コア)よりも小さくなっていることを認めるに足りる証拠はな
い。かえって、前記 のとおり、被告からは、被告方法で作成されたモール
ドコイルにおいて、粉末容積比(バリ)と粉末容積比(コア)が変わらない
旨の電子顕微鏡で撮影された画像の分析結果(乙4)が提出されている。
(3)よって、被告方法において粉末容積比(バリ)の方が粉末容積比(コア)よ
りも小さくなっていることを認めることはできず、被告方法が構成要件Fを充\n足するとはいえない。
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2024.02.24
令和5(ワ)70454 特許権侵害等請求事件 特許権 民事訴訟 令和6年2月9日 東京地方裁判所
個人発明家によるAbemaTVを特許権侵害訴訟です。本人訴訟です。裁判所は、構成要件を充足しないと判断しました。\n
(1) 「検査分析装置」及び「検査分析」の意義について
本件発明に係る特許請求の範囲においては、構成要件A、D、F及びGに\n「検査分析装置」との記載があり、構成要件A、B、C、E及びHに「検査\n分析」との記載があるものの、それらの意義は、当該特許請求の範囲の記載
からは明らかではない。
そして、本件明細書には、技術分野に関し、「半導体集積回路装置…の開
発、製造などの検査分析工程で用いられる走査型電子顕微鏡(SEM)、共
焦点レーザ顕微鏡などの検査分析装置の利用方法に関」する(【0001】)
との記載が、背景技術に関し、「半導体ウェハ、半導体チップなどの検査分
析においては、検査分析対象となる試料と検査分析装置の性能が合致しない\nと全く有効な検査分析とならない。」(【0004】)及び「半導体ウェハ、半
導体チップの検査分析においては、そのコスト増が著しく、半導体集積回路
装置の開発、製造コストの増大の要因になっている。」(【0005】)との記
載が、課題に関し、「本発明の目的は、半導体集積回路装置などの開発、製
造を効率的に行うために用いられる検査分析工程において、低コストで効率
的に検査分析が行える技術を提供することである。」(【0015】)との記載
が、課題を解決するための手段に関し、本件発明は、検査分析装置の管理者
側と検査分析を希望するユーザ側のそれぞれにセキュリティ確保手段を講じ
た上、ユーザが、離れた場所にある検査分析装置を、リアルタイムでリモー
ト操作する、又は、ユーザが事前に作成した操作レシピーデータに基づいて
検査分析を行う旨(【0016】ないし【0019】)の記載に加え、「本件
発明の検査分析は、細く絞ったレーザビームを試料面へ照射してその反射光、
散乱光、透過光の少なくとも一つを検出すること、または電子ビームを照射
して二次電子、散乱電子、透過電子の内の少なくとも一つを検出することに
より、試料上の所望の箇所を分析するものである。」(【0024】)との記載
が、発明の効果に関し、「本件発明により、検査分析を所望する複数ユーザ
に対し、ユーザは個別に検査分析装置の導入のための投資することなく、ユ
ーザ試料の検査分析が効率よく行うことが可能となった。」(【0026】)と\nの記載が、それぞれある。これらの記載に照らすと、「検査分析装置」とは、
試料を装填等して、ユーザのリモート操作によりその試料を分析し、検査す
る検査分析ユニットを有する装置を意味し、「検査分析」とは、試料を装填
等して、ユーザのリモート操作によりその試料を分析し、検査する工程を意
味すると理解することができる。
これに対し、原告は、「検査分析装置」について、「インターネットを介し
たリモート操作が検査分析の対象となるコンピュータ装置であり、当該検査
分析に異常がないことを条件とし、リモート操作した情報を提供するコンピ
ュータ装置」と、「検査分析」について、「インターネットを介した検査分析
装置に対するリモート操作に異常がないかの検査分析」と、それぞれ解すべ
きである旨主張し、検査の対象が「リモート操作」であることを前提として
いるものと解されるが、本件明細書には、原告が主張する解釈の根拠となる
記載はないから、同主張は理由がない。
(2) 被告方法の構成要件充足性について\n
原告の主張は明確ではないものの、被告の動画配信サービスを提供するサ
ーバが、「検査分析装置」に該当し、同サービスにおいて、視聴者が動画配
信の内容についてコメントを付したり、高評価ボタンを押下したりすること
が、「検査分析」であると主張するものと理解することができる。
しかし、被告の動画配信サービスを提供するサーバは、検査分析の対象と
なる試料の装填等を想定したものではなく、ユーザからリモート操作される
ことによりその情報等を分析し、検査する検査分析ユニットを備えているも
のと認めることはできないから(弁論の全趣旨)、同サーバは、構成要件A、\nD、F及びGの「検査分析装置」に該当しない。
同様に、被告の動画配信サービスにおいて、視聴者が、動画配信の内容に
ついてコメントを付したり、高評価ボタンを押下したりすることは、試料を
装填等することを前提とするものではなく、ユーザが同試料について情報等
を分析し、検査するものでもないから、構成要件A、B、C、E及びHの\n「検査分析」に該当しない。
その他、原告の主張する被告方法の内容に照らし、被告方法が「検査分析
装置」又は「検査分析」に該当する装置又は工程を備えるものとは認められ
ない。以上のとおり、被告方法が構成要件AないしHを充足すると認めることは\nできない。
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2024.02.23
令和5(ネ)10026 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 令和6年1月31日 知的財産高等裁判所 大阪地方裁判所
特許権侵害訴訟の控訴審判決です。原審は、被告製品は本件発明2の技術的範囲に属さない、本件発明1は公然実施発明Bであって新規性を欠くとして請求棄却しました。控訴審も同様です。
ア 控訴人は、構成要件2Bを「排水溝の『全長にわたって』、その壁面の表\面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で2.0μm以下であることを要する」と解する根拠は、特許請求の範囲の文言にも本件発明2の課題にも
なく、当業者の技術常識等からみても非現実的である旨主張する。
イ しかし、構成要件2Bは「前記排水溝の壁面の表\面粗さが、算術平均粗
さ(Ra)で、2.0μm以下であることを特徴とする」と規定してお
り、本件発明2の特許請求の範囲の文言全体をみても、排水溝壁面の表面粗さについて、一部は2.0μmを超えるが製品の一定範囲や所定の\n測定箇所が2.0μm以下であるものを含む、あるいは全体の算術平均
粗さ(Ra)の平均値が2.0μm以下であるものを含むと解すべき文
言はない。
この点は、本件明細書2の記載をみても同様である。控訴人が指摘す
る本件明細書2の記載や図面は、従来技術や実施例に係る排水溝の性状
等を特に留保なく説明するものであり、控訴人が主張するように、作業
過程で異常(イレギュラー)が発生した箇所があることを前提とし、こ
れを除いた「任意の箇所」を示すものであることを窺わせる記載はない。
控訴人は、1)製紙用弾性ベルトの排水溝は、作業前に設定した加工条
件に基づいて均一的に連続加工されるものであること、2)作業時の諸要
因によって加工結果にばらつきが生じることが避けられないこと、3)排
水溝の壁面を全長にわたって測定する作業は現実的に不可能であり、任意に選定された排水溝の壁面を測定する作業によって製品の性状を把握\nするという、当業者の技術常識を考慮すべき旨主張する。
しかし、上記のとおり明確な構成要件2Bの文言について、明細書にも記載がなく、その範囲も不明確な例外を含むと解することは、不当な\n拡張解釈というべきであって、特許請求の範囲の解釈に当たって当業者
の技術常識を考慮するという枠組みを超えるものといわざるを得ない。
控訴人の主張は、当業者が定める自社製品の品質基準としてはともかく、
独占権が付与される特許請求の範囲の解釈としては採り得ない。
なお、控訴人が指摘する大阪地方裁判所平成15年(ワ)第10959号
同17年2月28日判決は、控訴人の主張を裏付けるものではない。
ウ したがって、原判決判示のとおり、構成要件2Bは「排水溝の『全長にわたって』、その壁面の表\面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で2.0μm以下であること」を要すると解するのが相当である。
そうすると、控訴人が主張する<ステップ1>から<ステップ2の2
B>まで、すなわち「各測定結果に係る9溝ないし18溝のデータ数値
を参照し、特定の溝壁面の表面粗さ数値が他の溝の同一壁面に比して突出して高くなっている」ものを「当業者からみて明らかに溝加工作業時\nに生じた異常(イレギュラー)」として除外すること、及び「測定結果
に係る各壁面の表面粗さの平均値が算術平均粗さ(Ra)で2.0μm以下である結果が得られているか否か」(控訴人の他の主張と併せると、\n任意の測定箇所の算術平均粗さの「平均値」が2.0μm以下であるこ
とを意味すると解される。)により充足性を判断する判断手法は、構成要件2Bを逸脱する独自の解釈に基づくものといわざるを得ず、採用で\nきない。
・・・
(2) 公然実施発明Bに基づく本件発明1の新規性欠如の有無について
イ 公然実施をされた発明に当たるかについて
(ア) 控訴人は、本件特許1の出願当時、当業者は、ベルトBの外周面にD
MTDA(エタキュアー300)が使用されていることを通常利用可能な分析方法によって知ることができなかった旨主張する。\n
(イ) しかし、まず、証拠(乙37、124、128、129)によれば、
エタキュアー300は、本件特許1の出願前から実用化され、ウレタン
用の硬化剤として注目されていたことが認められる(原判決44頁〜)。
控訴人は、上記文献等はシュープレス用ベルトに使用される硬化剤に
ついて言及するものでないと主張するが、上記文献等はポリウレタン全
般向けの硬化剤としてエタキュアー300を説明するものであるところ、
シュープレス用ベルトに利用される硬化剤が他の一般的なポリウレタン
の硬化剤と異なるとみるべき根拠はない(上記文献等には、代表的な従来品が本件明細書1【0003】に従来のシュープレス用ベルトの硬化\n剤として記載されているMOCAである旨の記載も複数ある。)。
また、被控訴人は、遅くとも平成9年7月時点ではエタキュアー30
0を使用していたところ(原判決45頁)、上記ア(イ)の認定事実によ
れば、被控訴人は硬化剤としてDMTDAを使用することを独自に見出
したのではなく、エタキュアー300を製造販売するアルベマール社の
国内関連会社との取引を契機として知ったと認められる。この事情は、
他の当業者が硬化剤の候補としてエタキュアー300に着目する蓋然性
を裏付ける事情となることは明らかである。
控訴人は、さらに、ポリウレタンの硬化剤はDMTDAの他にも約8
0種類存在し(甲43)、その全てについて標準品を準備して分析依頼
を行うことは非現実的であると主張する。
しかし、「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(乙128)に「実用化
されている熱硬化PUエラストマー用芳香族ジアミン架橋剤」として記
載された5種類、あるいは特開2000−248040号公報(乙12
7)にポリウレタンプレポリマーと反応させるアミン硬化剤組成物とし
て記載された芳香族ポリアミンの15種類、その中でも好ましいと記載
された4種類には、いずれもエタキュアー300又はDMTDAが含ま
れており、当業者は、従来用いられているMOCA(本件明細書1【0
003】)と同類であるこれらの硬化剤を想定するとみるのが自然であ
る。
(ウ) 控訴人は、ベルトの外周面に着目し、外周面のみを切り出して分析を
依頼することは、当業者が通常に利用可能な分析技術とはいえない旨主張する。\nしかし、本件特許1の出願日前において、外周層、内周層等の複数の
層を積層してベルトを製造することやウレタンプレポリマーと硬化剤と
を混合してベルトの弾性材料とすることは技術常識であり(原判決44
頁)、自由に解析等をなし得る状態に置かれたベルトを解析して構造等を特定することは可能\であったと認められる(このことは甲25に記載された断面写真から明らかであり、原判決の認定に問題はない。)。
したがって、ベルトBの外周層を切り出して分析を依頼することは、
本件訴訟において控訴人(甲10の1〜4)及び被控訴人(乙1〜3)
が行ったのと同様、本件特許1出願前の当業者にも可能であったと認められる。\n
なお、当業者が仮に外周層と内周層に異なる硬化剤を用いる製造方法
を認識せず、これらを区別せずに分析を依頼した場合、全体について硬
化剤としてDMTDAが使用されているという分析結果を知ることにな
り、この結果はベルトBの正しい構成なのであるから(乙32)、「外周面を構\成するポリウレタンは、」「ジメチルチオトルエンジアミンを含有する硬化剤と、を含む組成物から形成されている」との構成を含め、本件発明1の内容を知り得たといえることに変わりはない。\n
(エ) したがって、本件特許1の出願当時、当業者は、ベルトBの外周面に
DMTDA(エタキュアー300)が使用されていることを通常利用可
能な分析方法によって知ることができたと認められる。ベルトBが公然実施された発明とはいえない旨をいう控訴人の主張は採用できない。\n
◆判決本文
原審はこちら。
◆大阪地裁平成29(ワ)4178
原審では、被告は、一旦、損害論に入ってから、2.0μm以下である」との構成要件を充足しないとして、非侵害の主張を行いましたが、これは「時機に後れた」とは認定されませんでした。
原告は、第15回弁論準備手続期日から損害論の審理が開始されたにもかかわ
らず、被告は、被告製品1〜3及び5と同じシリーズの製品等における排水溝壁
面の表面粗さの測定結果(乙152〜159)を新たに証拠提出するとともに、非侵害の主張を行ったことが時機に後れた攻撃防御方法に当たる旨を主張する。\nしかし、被告が前記証拠等を提出したのは、原告が、訴状においてはイ号製品
が本件発明2の技術的範囲に属する旨を主張しつつも、被告製品1〜3及び5の
排水溝壁面の表面粗さに限定して立証活動をしていたが、裁判所が本件発明2については損害論に入る旨の心証開示を行ったことを受けて、被告製品1〜3及び\n5の各製品と同じシリーズの製品等についても本件発明2の技術的範囲に属する
旨を改めて主張したことに対応するものであって、必ずしも時機に後れたものと
は認められない。したがって、原告の前記主張は採用できない。
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2024.02.16
令和5(ワ)70102 特許権侵害差止及び特許権侵害賠償等請求事件 特許権 民事訴訟 令和5年12月4日 東京地方裁判所
半発酵茶葉の発明について、構成要件を充足しないとして、侵害が否定されました。\n裁判所は明細書の記載を参酌して、「茎が取り除かれた」とは、茎を含む半発酵茶葉のポリフェノール等の重量%を測定するための条件を示すものではなく、茎を含まないことを意味すると判断しました。
ア 本件発明の構成要件BないしDは、ポリフェノールの重量、EGCGとE\nCGの合計重量又は総カテキンの重量につき、各構成要件記載の重量%以下\nに限定するものであるが、上記構成要件にいう「茎が取り除かれた」とは、\n本件発明の半発酵茶葉が茎を含まないことを意味するのか、あるいは、茎を
含む半発酵茶葉のポリフェノール等の重量%を測定するための条件を示す
ものか、文言上必ずしも明らかではない。そのため、本件明細書の記載を考
慮して、その用語の意味を解釈すると、本件明細書の記載【0079】には、
「サンプリング方法:できた各号のお茶の茎を取り除き、篩い分けて12メ
ッシュパス20メッシュオンの砕茶を各800g採取する。」として、本件
発明の半発酵茶葉は、その茎が取り除かれることが明確に記載されている。
そして、本件明細書の他の実施例をみても、官能試験によって本件発明の効\n果が確認されている茶葉は、いずれもサンプリングの段階で茎が取り除かれ
たものであり、本件明細書全体の記載によっても、茎が含まれた茶葉につい
ては、本件発明の効果を確認するような記載が一切存在せず、本件発明の茶
葉に茎が含まれることを示唆する記載も一切認められない。
上記各構成要件及び本件明細書の記載を踏まえると、上記各構\成要件にい
う「茎が取り除かれた」とは、本件発明の半発酵茶葉が茎を含まないことを
意味するものと解するのが相当である。
これを本件についてみると、前記認定事実及び弁論の全趣旨(被告各製品
(双方当事者持参に係るもの)に係る茎の有無の確認結果〔第3回弁論準備
手続期日及び第4回弁論準備手続期日〕を含む。)によれば、被告各製品の
茶葉には、いずれも多くの茎が含まれていることが認められる。
したがって、被告各製品は、本件発明の構成要件BないしDを充足するも\nのと認めることはできない。
のみならず、原告による本件各試験は、被告各製品において茎を除いてポ
リフェノール等の重量%を測定していることまで立証するものではなく、上
記構成要件BないしDを立証する前提を欠くものといえる。しかも、原告に\nよる本件各試験は、被告らが釈明したとおり(第1回弁論準備手続調書参照)、
本件各試験に係る具体的な実施条件等が明らかにされていないため、上記構\n成要件BないしDにいう成分重量を的確に立証するものとはいえない。その
上、原告が採用した測定方法は、本件明細書【0082】に記載された測定
方法(カテキンにあってはISO14502、ポリフェノールがGB/T8
313をいう。)とは異なるものであるから、上記構成要件BないしDに各\n規定する成分重量を立証するに適切なものとはいえない。
この理は、原告が時機に後れて提出した本件試験その2(甲19、20)
についても、測定に当たり茎が除かれていない点、具体的な実施条件等を欠
く点において同様に当てはまるものであり、同試験も上記認定判断を左右す
るに至らない。
したがって、原告の立証は、上記各構成要件の充足性を裏付けるに的確な\nものとはいえず、このような観点からしても、被告各製品は、本件発明の構\n成要件BないしDを充足するものと認めることはできない。
イ これに対して、原告は、1)仮に茎を取り除かなければ、被告各製品には全
体の13重量%から18重量%の茎が含まれているはずであり、見た目も悪
くなるはずであるが、実際にはそうではないこと、2)仮に茎が完全には取り
除かれていなかったとしても、少々の茎は、この業界では茎が取り除かれた
ものとみなされていること、3)仮に茎が取り除かれていないとしても、被告
各製品の半発酵茶という性質に何ら変わりはないことを主張する。
しかしながら、本件特許に係る茶葉は、茎が取り除かれているものである
ことは、上記において説示したとおりであり、原告の主張は、本件特許の構\n成要件の用語の意義を正解しないものである。また、被告各製品には、少々
とはいえない茎が含まれていることも、上記において認定したとおりであり、
原告の主張は、その前提を欠くというほかない。
◆判決本文
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