控訴審も、1審と同様に技術的範囲に属しないと判断しました。
(2) 当審における控訴人の補充主張について
ア 控訴人は、被告方法において、一つの辺でも最大粒径より小さなバリがあれ
ば、磁性体粉末容積比(バリ)の方が磁性体粉末容積比(コア)よりも小さくなっ
ていることは原理・論理的に明らかであると主張する。
しかしながら、モールド樹脂内の磁性体粉末の具体的な粒子径の形状・分布、樹
脂の性質、隙間の形状・構造、加えられる圧力等により、隙間を通過する磁性体の\n量は変化するものと推測されるところ、被告方法においては、様々な粒子径、形状
の磁性体が使用されている(乙3,4)から、モールド樹脂内の磁性体粉末の具体
的な粒子径の形状・分布、樹脂の性質、隙間の形状・構造等がどのようなものであ\nる場合に隙間を通過する磁性体がどの程度あるのかについて、必ずしも一義的に明
らかではないといわざるを得ない。したがって、控訴人が主張する、磁性体粉末の
最大粒子径よりも小さなバリがあることをもって、当然に磁性体粉末容積比(バリ)
の方が磁性体粉末容積比(コア)よりも小さくなっているものとはいえない。
また、仮に被告方法における磁性体粉末の粒子径分布とバリの大きさとの関係性
から一定の事実を推認することができる余地があり、例えば、磁性体モールド樹脂
内の全磁性体粒子のうちの最小粒子径が隙間よりも大きい場合には、磁性体は隙間
を通過することができないため、樹脂のみが隙間から流出することが推測される一
方、逆に、全磁性体の粒子径が隙間よりも十分に小さい場合には、樹脂と共に磁性\n体も隙間を通過することから磁性体粉末容積比(コア)及び磁性体粉末容積比(バ
リ)に変化がないものと推測される余地があるといえるとしても、被告方法におい
て磁性体粒子のうちの最小粒子径が被告方法で使用されている●●及びパンチで形
成される隙間よりも大きいことを示すなど、被告方法における粒子径分布とバリの
大きさとの関係性を示す証拠はないから、控訴人の上記主張は裏付けを欠き、採用
することができない。
イ 控訴人は、原判決は、控訴人の主張を誤解し、かつ、控訴人提出の証拠評価
を誤ったものと考えられると主張し、樹脂の流出が止まる原因については、パンチ
による加圧と樹脂からの抗力(硬化や樹脂と隙間との摩擦等による抗力)が均衡す
ることと主張しており、原判決のように「被告方法の加圧・加熱過程で加圧を続け
ても樹脂の流出が止まるのは、磁性体粉末が隙間を埋めることが理由であるから、
被告方法においては、樹脂が隙間から優先的に排出されるといった事象が生じたこ
とが示されている」という主張はしていない旨を主張する。
しかしながら、樹脂の流出が控訴人の主張する機序によるものであるとしても、
前記アのとおり、被告方法において磁性体粉末容積比(バリ)の方が磁性体粉末容
積比(コア)よりも小さくなっていることを認めることはできず、上記(1)の判断を
左右するものとはいえない。
したがって、控訴人の上記主張は採用できない。
ウ 控訴人は、甲27の実験結果によると、被控訴人主張の製造方法は、バリに
おける磁性体粉末の容積比がキャビティ内の磁性体粉末の容積比より低くなること
が明らかとなっているから、原判決の判断は妥当ではない旨主張する。
この点、甲27の第4(10頁〜)に記載されている実験方法で利用・設定され
ている磁性体粉末の組成、樹脂の組成、磁性体粉末と樹脂の配合割合、予備成形し\nたコアの製造方法、加圧温度及び溶融粘度という条件が、実際の被告方法で用いら
れているものと同一であると認めるに足りる証拠はなく、それらが実際の被告方法
と同じ条件であると客観的に裏付ける証拠もない。
◆判決本文