使用量を限定した治療薬について、用法用量がそのような投与量のものに限られると判断して、本件特許を侵害しないと認定しました。請求項1は以下の通りです。
成人1日あたり0.15〜0.75g/kg体重のイソソ\ルビトールを経口投与されるように用いられる(ただし,イソソ\ルビトールに対し1〜30質量%の多糖類を,併せて経口投与する場合を除く)ことを特徴とする,イソソ\ルビトールを含有するメニエール病治療薬。
まず,特許請求の範囲の記載を見ると,本件発明は,所定量のイソソ\ルビトールを経口投与されるように用いられること(構成要件A)を「特徴とする,イソ\ソルビトールを含有するメニエール病治療薬」の発明であり,メニエール病治療薬を用法用量により特定したものであるが,イソ\ソルビトールの投与量が構\成要件A所定の範囲に含まれるような用法があれば足りるのか(その範囲未満又は超過の投与量での用法があってもよいのか),用法用量がそのような投与量のものに限られるのか(それ以外の用法用量をも有する治療薬は本件発明の技術的範囲から除外されるのか)については,特許請求
の範囲に明示的に記載されていない。
上記アの本件明細書の記載によれば,本件発明は,従来のイソソ\ルビトール製剤(これが被告製品1を指すことは明らかであり,その標準用量は1日当たりイソソ\ルビトール1.05〜1.4g/kg体重に相当する。甲3)の投与量が過大であり,そのために種々の問題が生じるところ,その投与量を構成要件Aに記載の0.15〜0.75g/kg体重という範囲にまで削減することによって上記の問題を解消したというものである。そうすると,本件発明の治療薬は,構\成要件A記載の範囲を超える量のイソソ\ルビトールを投与する用法を排除し,従来より少ない量を投与するように用いられる治療薬に限定されるということができる。換言すると,上記範囲を超える量のイソソ\ルビトールを投与するように用いられる治療薬は,「医師のさじ加減」個々の患者の特徴や病態の変化に応じて医師の判断により投与量が削減された場合には構成要件Aに記載された量で用いられ得るものであっても,本件発明の技術的範囲に属しないと解すべきである。このことは,上記?イのとおり,実施例又は参考例において,イソソ\ルビトールの投与量を時間的推移に着目して変動させたものが見当たらないことからも裏付けられると解される。
したがって,構成要件Aの「成人1日あたり0.15〜0.75g/kg体重のイソ\ソルビトールを経口投与されるように用いられる」とは,上記の用量を,患者の病態変化その他の個別の事情に着目した医師の判断による変動をしない段階,すなわち治療開始当初から,患者の個人差や病状の重篤度に関わりなく用いられることをいうものと解するのが相当である。\n
◆判決本文