2014.11. 7
機能クレームについて特許権侵害が認められました。
本件特許の特許請求の範囲には,構成要件Dとして「前記本体と可動的に接続されたガイド板」と,構\成要件Eとして「前記本体が前記ガイド板に対して動くことにより前記ガイド板から前記第1の刃または第2の刃が出る」と記載されており,その文言上は,本体がガイド板に対して動くとガイド板から刃が出てくるものであれば足り,本体とガイド板の接続態様や本体の動き方についての限定はないということができる。しかし,構成要件Eの上記文言は,発明の構\成をそれが果たすべき機能によって特定したものであり,いわゆる機能\的クレームに当たるから,上記の機能を有するものであればすべてこれを充足するとみるのは必ずしも相当でなく,本件明細書に開示された具体的構\成を参酌しながらその意義を解釈するのが相当である。そして,構成要件Dの「可動的に接続された」との構\成についても,構成要件Eと整合するように解釈すべきものと解される。\n
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(3) 本件明細書の上記記載によれば,「前記ガイド板から前記第1の刃または第2の刃が出る」との機能を果たすための本体のガイド板に対する動き方として本件明細書に開示されているのは,本体をガイド板に対して傾けること(上記(2)オ,カ)及びスイングするガイド板を設けること(同カ)であり,要するに本体をガイド板に対して傾け,又は回転運動させるということである。そして,本体をガイド板に対して左右に傾け,又は回転運動させた場合には,本体の左下又は右下の端部がガイド板から外に出るから,本体の左下及び右下の端部に第1及び第2の刃の各先端を位置させて
おけば,本体を傾けるだけで刃が出てきて,あとはノンスリップシート等の凹凸に沿わせて滑らせるだけで簡単,きれいかつ迅速に切断できるという本件特許発明の効果(同オ)を奏すると認められる。そうすると,構成要件Eの「動く」には少なくとも回転運動が含まれるとみることができる。\n次に,本体がガイド板に対して回転運動するように「可動的に接続」すること(構成要件D)についてみるに,2枚の板状の部材を回転可能\に接続する態様としては,1)それぞれの中心部分をシャフト等により軸着する構成のほか,2) 一方の周辺部に円弧状の溝等を設け,この溝等に他方を摺動可能に取り付けるといった構\成を採用し得る。このうち本件明細書に明示されているのは1)の構成のみであるが(上記(2)エ〜カ),いずれの構成であっても特許請求の範囲にいう「可動的に接続」に該当し,かつ,本件特許発明に係る課題を解決して上記の効果を奏すると考えられる。したがって,2)の構成も構\成要件Dの「可動的に接続」に含まれると解すべきものである。
(4) 被告製品は,前記前提事実(5)イのとおり,本体3(回転板)とガイド板6(固定板)が円弧状の溝を有する接続部7を介して接続され,本体を左右に傾けてこの溝に沿って円周方向に動かすと,刃1又は刃2がガイド板から外に出るように構成されている。したがって,被告製品は,構\成要件D及びEを充足し,本件特許発明の技術的範囲に属すると認められる。
(5) これに対し,被告は,1) 本件特許発明の技術的範囲は本件明細書に開示された構成(本体とガイド板がシャフトにより接続され,本体がシャフトを軸にしてガイド板に対して回転する構\成)に限定して解釈されるべきである,2) 被告製品は本件特許発明とは異なる課題を解決するものであるから,本件特許発明の技術的範囲に属しない旨主張する。そこで判断するに,1)について,上記(3)に説示したところによれば,本体とガイド板を回転可能に接続するに当たり,シャフトにより軸着するか,円弧状の溝に摺動可能\に嵌合するかは,当業者が適宜選択し得る実施の形態にすぎないということができる。また,2)について,被告製品が本件特許発明の構成要件を充足し,その効果を奏することは上記(3)及び(4)のとおりであるから,被告製品が本件特許発明と異なる課題をも解決するとしても,この点は上記の判断に影響するものではない。
◆判決本文
請求項の技術的範囲の解釈について、1審の判断(請求項に参照符号がふられていても実施形態に限定されない)が維持されました。私の記憶では、知財高裁が明言したのは初のケースです。
また,控訴人は,補正において符号が付されたことにより,第三者が符号で特定された実施形態に限定されたものと認識する以上,本件発明の構成要件Eにおける金属収集機構\\は,符号により特定された実施形態に限定されるべきである旨主張する。しかし,上記において認定したところに照らすと,第三者において控訴人の主張するように認識するとは認められない。よって,控訴人の上記主張を採用することはできない。
◆判決本文