2024.12.11
令和6(ネ)10033 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 令和6年10月29日 知的財産高等裁判所 大阪地方裁判所
控訴審で、均等主張も追加しましたが、1審と同じく、技術的範囲に属しないと判断されました。均等侵害については第1要件、第2要件具備しないと判断されました。
これを本件についてみるに、本件発明において、従来技術の庇は、前記
2(2)のとおり、樋板9の幅wの分だけ庇板2の前方へ余分に突き出るため
庇の全長が必要以上に長くなる、樋板9が樋溝95a、95bを備えてい
るので構造が複雑化して庇がコスト高となるとの課題のほか、樋溝95a、\n95bは上面が開放されているため塵芥が堆積しやすく、頻繁な保守、点
検が必要となること、樋溝95bに塵芥が堆積して雨水の通路が塞がれる
と、突出部93と庇板2の下面との隙間98より雨水が外部へ浸出し、決
められた箇所以外の随所から雨水が漏れ出て流れ落ちるという課題があ
り(段落【0006】)、本件発明は上記課題を発明が解決しようとする課
題とした。そして、本件発明は、この課題を解決するための手段として、
本件発明の構成要件A3ないしC3で特定される「前縁板」が、「庇板の開\n放された前端面を塞ぐように全幅にわたって取り付けられ」(構成要件A\n3)、「庇板の開放された前端面に当接され前面が雨水を下方へ導くガイド
面となっている縦板部」(構成要件B2)を備えることで、庇板の前方への\n突出部分をなくすことができ、庇の全長が短くなり小型化が図られ、構造\nの複雑化を招かないものとした(段落【0014】)。さらに、前縁板の一
部である縦板部について、上記構成要件B2のほか、「縦板部の下部内面に\nは、全幅にわたる凹部が形成され」(構成要件C1)、「凹部は開口部分の上\n部が庇板の中空部と連通するように庇板の開放された前端面と対向し」
(構成要件C2)、「開口部分の下部が外部と連通するように庇板の下方へ\n突出して」(構成要件C3)いることで、縦板部の凹部が縦板部の内面の側\nに開口することとなり、塵芥が堆積するおそれがなく、仮に凹部に塵芥が
付着しても雨水により外部へ洗い流される構造が実現されるものであっ\nて(段落【0014】)、このことは当業者であれば容易に理解し得るとい
える。
以上によれば、本件発明の特許請求の範囲の記載のうち、従来技術に見
られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分は、従来技術の上記課題\nを解決するために、本件発明の構成要件A3ないしC3で特定される前縁\n板を備え、かつ、前縁板の一部である縦板部が構成要件B2及びC1ない\nしC3の構成を備えていることにあると認められるから、構\成要件B2は本件発明の本質的部分であると認められる。
そして、被控訴人製品が本件発明の構成要件B2を充足しないことは、\n補正の上で引用した原判決「事実及び理由」第4の1(2)の説示及び前記2
のとおりであるところ、この相違点は本件発明の本質的部分であることに
なる。
したがって、被控訴人製品は、本件発明の本質的部分を備えておらず、
均等の第1要件を満たさない。
控訴人は、庇板の内外の雨水をともに縦板部の下端まで導いて落下させ
る構成が本件発明の本質的部分であり、構\成要件B2の被控訴人製品と異
なる部分は本件発明に特有の作用効果を生じさせるための部分でなく、本
件発明の本質的部分ではないと主張するが、前記説示に照らし採用するこ
とができない。
◆判決本文
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2024.12.11
令和6(ネ)10033 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 令和6年10月29日 知的財産高等裁判所 大阪地方裁判所
均等主張も追加しましたが、1審と同じく、技術的範囲に属しないと判断されました。
これを本件についてみるに、本件発明において、従来技術の庇は、前記
2(2)のとおり、樋板9の幅wの分だけ庇板2の前方へ余分に突き出るため
庇の全長が必要以上に長くなる、樋板9が樋溝95a、95bを備えてい
るので構造が複雑化して庇がコスト高となるとの課題のほか、樋溝95a、
95bは上面が開放されているため塵芥が堆積しやすく、頻繁な保守、点
検が必要となること、樋溝95bに塵芥が堆積して雨水の通路が塞がれる
と、突出部93と庇板2の下面との隙間98より雨水が外部へ浸出し、決
められた箇所以外の随所から雨水が漏れ出て流れ落ちるという課題があ
り(段落【0006】)、本件発明は上記課題を発明が解決しようとする課
題とした。そして、本件発明は、この課題を解決するための手段として、
本件発明の構成要件A3ないしC3で特定される「前縁板」が、「庇板の開
放された前端面を塞ぐように全幅にわたって取り付けられ」(構成要件A
3)、「庇板の開放された前端面に当接され前面が雨水を下方へ導くガイド
面となっている縦板部」(構成要件B2)を備えることで、庇板の前方への
突出部分をなくすことができ、庇の全長が短くなり小型化が図られ、構造
の複雑化を招かないものとした(段落【0014】)。さらに、前縁板の一
部である縦板部について、上記構成要件B2のほか、「縦板部の下部内面に
は、全幅にわたる凹部が形成され」(構成要件C1)、「凹部は開口部分の上
部が庇板の中空部と連通するように庇板の開放された前端面と対向し」
(構成要件C2)、「開口部分の下部が外部と連通するように庇板の下方へ
突出して」(構成要件C3)いることで、縦板部の凹部が縦板部の内面の側
に開口することとなり、塵芥が堆積するおそれがなく、仮に凹部に塵芥が
付着しても雨水により外部へ洗い流される構造が実現されるものであっ
て(段落【0014】)、このことは当業者であれば容易に理解し得るとい
える。
以上によれば、本件発明の特許請求の範囲の記載のうち、従来技術に見
られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分は、従来技術の上記課題
を解決するために、本件発明の構成要件A3ないしC3で特定される前縁
板を備え、かつ、前縁板の一部である縦板部が構成要件B2及びC1ない
しC3の構成を備えていることにあると認められるから、構成要件B2は本件発明の本質的部分であると認められる。
そして、被控訴人製品が本件発明の構成要件B2を充足しないことは、
補正の上で引用した原判決「事実及び理由」第4の1(2)の説示及び前記2
のとおりであるところ、この相違点は本件発明の本質的部分であることに
なる。
したがって、被控訴人製品は、本件発明の本質的部分を備えておらず、
均等の第1要件を満たさない。
控訴人は、庇板の内外の雨水をともに縦板部の下端まで導いて落下させ
る構成が本件発明の本質的部分であり、構成要件B2の被控訴人製品と異
なる部分は本件発明に特有の作用効果を生じさせるための部分でなく、本
件発明の本質的部分ではないと主張するが、前記説示に照らし採用するこ
とができない。
◆判決本文
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2024.11.18
令和4(ワ)11025等 特許権侵害差止等請求本訴事件、不当利得返還請求反訴事件 特許権 民事訴訟 令和6年10月21日 大阪地方裁判所
特許権侵害について、構成要件を充足しない、均等についても第1、第2要件を満たさないとして、非侵害認定されました。
上記本件明細書の記載によると、本件発明は、大きなダニ捕獲能力を発揮\nすることを目的として、その手段は、ダニ誘引物質を含浸させた織物シート
からダニ誘引物質を拡散させることで広い範囲のダニを誘引した上で、マッ
トの内部にダニ捕獲用の粘着テープと、これに対して千鳥状に被着させたダ
ニ用食餌を入れた多孔質通気性袋を配することで、ダニ誘引物質で誘引され
たダニを、マットの表裏両面からさらに内部に侵入させ、粘着テープに触れ\nさせ、そこで捕捉するようにするというものである。
そして、ダニを誘引させる物質として、「香料」を織物シートに含侵させた
上、「食餌」入りの多孔質通気性袋を配置させる位置を両面粘着テープの表\n裏両面に配置させることにより、多孔質通気性カバーの内側に誘い込み、混
ぜ物のない粘着層に触れさせて補足させる構成をとるものであるから、本件\n発明において「多孔質通気性袋」は、食餌が同位置にとどまり、粘着層の粘着
力を低減させない機能を備えるべきことが想定されているといえる。加えて、\n多孔質通気性袋の構造上、一袋でこれらが実現でき、構\成材料の数も減らす
ことができるようになっている。
以上を踏まえると、構成要件A−3にいう「多孔質通気性袋」とは、辞書\n的にも、本件明細書の記載からも、少なくとも内包物を内部で保持し、拡散
を防止することができる構造を有することが必要であると解することが相当\nである。一方、販売被告製品では、ダニ誘引物質が2枚の不織布シートやガ
ーゼ等で重ねて挟み込まれているのみであり、その周囲からダニ誘引物質が
零れ落ちるようなものであるから、誘引物質を内部で保持することができる
構造であるとは認められない。\n
この点、原告は、本件発明における「袋」の意義について、ダニ食餌を入れ
ることができ、かつ、一つの袋のみで粘着テープの表裏両面に配置すること\nができればよく、口を閉塞している必要はないから、被告製品も、多孔質通
気性袋を有すると主張するが、上記説示に照らし、採用できない。
(5) よって、販売被告製品は、構成要件A−3を充足せず、同構\成要件を充足
することを前提とする構成要件C、D、F及びGも充足しない。\n
3 争点A3(均等侵害が成立するか)について
上記2のとおり、本件発明は、ダニ食餌を零れ落ちさせることなく保持する
ことができる「多孔質通気性袋」に収納することで、粘着テープの高い粘着力
を実現するとともに、構成材料の数を減らすことを実現しており、そのために\n袋構造を有することが本質的要素となっているものと認められる。\nそうすると、多孔質通気性袋に代わり、挟み込んだ物が零れ落ち得る2枚の
不織布やガーゼでダニ誘引物質を挟み込む構造を有している販売被告製品は、\n本件発明の非本質的部分で相違点があるに過ぎないとはいえないし、これらを
置換したときの作用効果が同一であるともいえない。
よって、第1要件(非本質的部分)及び第2要件(置換可能性)がいずれも\n認められないことから、均等侵害は成立しない。
4 小括(特許権侵害について)
(1) 以上の次第であり、被告製品は、本件特許の技術的範囲に属しないので、
原告の本件特許権侵害に関する主張(争点A1ないしA6)は、その余の争
点について判断するまでもなく理由がない。
(2) なお、被告は、原告の均等侵害の主張について、時機に後れた攻撃防御方
法として却下することを求めているが、その審理のために訴訟が遅延するも
のとは認められないから、採用しない。
◆判決本文
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2024.10.28
令和4(ワ)70058 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 令和6年10月18日 東京地方裁判所
特許権及び意匠権侵害事件です。原告は均等主張をしましたが、東京地裁は、本質的要件(第1要件)の判断において、明細書に公知文献を考慮して、特徴部分を認定するとともに、被告装置はかかる本質部分を満たさないとして、均等侵害を否定しました。意匠権についても非類似と判断しました。
(ウ) 前記(イ)によれば、本件特許の出願時において、グラップルバケット装
置において、グラップルした木材が長尺である場合、所定以上の長さを
有する木材をチェーンソー等の切断装置を用いて作業員が所定の長さに\n切断しなければならないとの課題については、甲27文献において開示
された従来技術によって解決することが可能であったから、本件明細書\nにおいて従来技術が解決できなかった課題として記載されているところ
は、出願時の従来技術に照らして客観的に不十分であると認められる。\nそうすると、本件発明の従来技術に見られない特有の技術的思想を構成\nする特徴的部分を認定するに当たり、甲27文献に記載されている技術
的事項も参酌することが許されるというべきである。
(エ) 前記(ウ)において検討したところによれば、本件特許の出願前に、甲2
7文献において、一方の側部に把持部、他方の側部に切断装置が装着さ
れているバケットを備えた枝切り走行装置が開示されていたと認められ
るから、本件発明と従来技術との相違は、当該切断装置の構成に係る部\n分にすぎず、グラップルした被グラップル材を切断できるようにしたグ
ラップルバケット装置であること自体ではないと認められる。そうする
と、従来技術と比較して本件発明の貢献の程度が大きいと評価すること
はできないから、本件発明の本質的部分については、これを上位概念化
したものとして認定することはできず、特許請求の範囲の記載とほぼ同
義のものとして認定されるというべきである。
したがって、前記(ア)及び(イ)に照らし、本件発明における従来技術に
見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分は、グラップル装置\nに設けられた切断装置について、バケットの側壁の外側あるいは内側の
一方側に位置してバケットの開口縁から離れた位置からバケットの側壁
に沿う位置にわたって側壁に沿う方向に回動し、かつバケットの開口縁
側に対向する側の側縁に切刃を有してバケットの側壁に沿う位置にわたって側壁に沿う方向に回動し、かつバケットの開口縁側に対向する側の側縁に切刃を有してバケットの開口基端部に枢支された切断刃と、上記切断刃の回動基部に連結して上記切断刃を回動させる油圧シリンダとからなり、切断刃の切刃を、切断刃の回動中心と油圧シ
リンダの連結点を結ぶ線に対して切断刃の切断方向側にずれた位置に設
けるとともに、この切刃の切断方向への回動方向に対して後方へ円弧状
に反らせたとの構成、すなわち構\成要件C及びDに係る構成を採用する\nことによって、回動中心から遠い部分でも、刃先が対象物に当たる傾き
角度θの値を大きく保つことで、引き切り作用を保ちスムーズな切断効
果を発揮できるようにしたことと認めるのが相当である。
イ 前記2のとおり、被告製品は構成要件D2を充足するとは認められない\nところ、前記アのとおり、本件発明の構成要件C及びDに係る構\成を採用
することによって、回動中心から遠い部分でも、刃先が対象物に当たる傾
き角度θの値を大きく保つことで、引き切り作用を保ちスムーズな切断効
果を発揮できるようにしたことが本件発明の本質的部分であるから、被告
製品が本件発明の本質的部分を備えているとは認められず、本件発明と被
告製品とが異なる部分が本件発明の本質的部分ではないとはいえない。
したがって、被告製品は第1要件を充足しない。
◆判決本文
以下に、イ号図面などがあります。
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2024.09.16
令和5(ネ)10101 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 令和6年6月18日 知的財産高等裁判所 (原審・東京地方裁判所令和4年(ワ)24476
本人訴訟です。1審の非侵害が維持されました。控訴審では、均等主張もしましたが、第1要件を満たさないと判断されました。
オ 上記ウ及びエによれば、本件明細書に従来技術が解決できなかった課題
として記載されている従来技術(特許文献1)は、出願時の従来技術に照
らして客観的に不十分であるから、乙3に記載されている技術的事項を参\n酌することが許されるというべきである。
そうすると、本件発明は、上記課題を解決するために「覚醒度合生体情
報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて前記三つの
発光手段の発光量の総和を略一定にしたままそれぞれの発光手段の発光
量比を変化させるための調節部」との構成を採用したものであるが、他方、\n乙3には、上記エのとおり、「覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒
度合に関する生体情報に応じて複数(二つ)の発光手段の発光量の総和を
一定としたままそれぞれの発光手段の発光量比を変化させるための調節
部」が開示されており、その相違は「三つの発光手段の発光量の総和」か
「複数(二つ)の発光手段の発光量の総和」かの差でしかない。
したがって、従来技術と比較して特許発明の貢献の程度が大きいとはい
えず、本件発明の本質的部分は、特許請求の範囲に近接したものとなると
いうべきであり、具体的には、本件特許の課題を解決するために採用され
た構成が構\成要件C/Dであることから、「覚醒度合生体情報取得部で取
得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて、赤色、青色及び緑色の三つの発光手段の発光量の総和を略一定としたままそれぞれの発光手段の
発光量比を変化させるための調節部」を有していることが本件発明の本質
的部分であると解するのが相当である。
これに対し、本件各照明装置は、「覚醒度合生体情報取得部で取得した人
の覚醒度合に関する生体情報に応じて、赤色、青色及び緑色の三つの発光
手段の発光量の総和を略一定としたままそれぞれの発光手段の発光量比
を変化させるための調節部」を有していないから、本件発明と本件各照明
装置とは本質的な部分において異なっているというべきである。
カ 上記アないしオによれば、本件各照明装置が本件発明の本質的部分を備
えているとはいえず、均等の第1要件を満たさない。
キ 控訴人は、前記第2の5(1)アのとおり、本件発明は、ヒト(人)の覚醒度
合に応じて照度を略一定にしつつ色温度を変化させる点がその本質的部
分であると主張する。
しかし、上記オに説示したとおり、特許発明の貢献の程度は従来技術と
比較して大きいとはいえないから、控訴人が主張するようにこれを上位概
念化することはできないというべきであり、控訴人の上記主張を採用することはできない。また、仮に、控訴人の主張するとおり、人の覚醒度合に応じて照度を略
一定にしつつ色温度を変化させる点が本件発明の本質的部分であると解
したとしても、本件各照明装置は、人の覚醒度合に応じて照度を略一定に
しつつ色温度を変化させる構成を有していないから、均等の第1要件を満\nたさないとの結論を左右しない。
すなわち、本件マットレス(1)は、当該マットレスを使用する人の睡眠の
状態を計測する機能を備えており、本件発明の構\成要件B(「人の覚醒度合
に関する生体情報を取得する覚醒度合生体情報取得部と、」)を充足するも
のであり、本件マットレス連携アプリは、本件マットレス(1)を使用した人
の睡眠深度、睡眠スコア、睡眠効率、寝つき時間、中途覚醒回数、目覚め
の状態及び深い睡眠を表示する機能\を備えているが(原判決第2の2(6)ア
及びウ、同(7))、本件各照明装置は、本件マットレス(1)等により取得された
人の覚醒度合に関する生体情報に応じて照度を略一定にしつつ発光手段
の発光量比又は色・温度を変化させる機能を有していない。\n
本件各照明装置の使用者が、任意に本件各照明装置の発光手段の色・温
度を変化させる操作をすることが可能であるとしても、そのことをもって、\n本件各照明装置が人の覚醒度合に応じて照度を略一定にしつつ発光手段
の発光量比又は色・温度を変化させる構成を有していることにはならない。\nしたがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
ク 以上によれば、本件各照明装置は、均等の第1要件を充足しないから、
その余の要件について判断するまでもなく、本件発明と均等なものとして、
その技術的範囲に属するということはできない。
◆判決本文
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2024.05.26
令和5(ネ)10078 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 令和6年3月28日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
1審と同じく、「包装容器」の発明について、被告製品は技術的範囲に属さないと判断されました。控訴審では、均等侵害の主張が追加されましたが、本質的要件(第1要件)を満たさないと判断されました。
これを本件において検討するに、前記(1)イのとおり、本件発明1は、「底部
に取り付けられた安定補助板により支えられてテーブルなどの上に立たせら
れる」「折畳式コップ型容器」(段落【0003】)であって「安定補助板が例
えば紙や合成樹脂などから形成され、後から容器本体に取り付けられる構成」\n(段落【0005】)を採用した従来技術を前提とし、「成形が簡便な自立型
の包装容器の提供を目的とする」(段落【0006】)ことを発明が解決しよ
うとする課題とし、当該課題を解決する手段として「前記包装容器を容器と
して形成した状態において、前記底部を形成する底面片と同一面に連なる自
立片が載置面に沿って前記奥行の方向に突出し、前記自立片によって前記載
置面に自立させられる」(本件発明1の構成要件B)という構\成を採用するこ
とにより、「包装容器を自立させる自立片が底面片に連なっているため、一体
的な成形が簡便である」(段落【0013】)という効果を奏するものである。
そうすると、本件発明1において従来技術に見られない特有の技術的思想
を構成する特徴的部分は、従来技術における安定補助板が、底部に一体的に\n成形された構成である、「前記包装容器を容器として形成した状態において、\n前記底部を形成する底面片と同一面に連なる自立片が載置面に沿って前記奥
行の方向に突出し、前記自立片によって前記載置面に自立させられる」こと
にあると考えられる。
そして、本件発明1と被控訴人製品とは、包装容器を容器として形成した
状態において、本件発明1の「底面片」が筒状の底部を形成するのに対し、
被控訴人製品は、包装容器を自立させる舌状片が、包装容器の底部を形成す
る六角片と同一面に連なっておらず別に構成されている点において相違する\nものと認められるところ、この相違に係る本件発明1の構成、すなわち「底\n部を形成する底面片」が「自立片」と同一面に連ねられていることは、これ
までの検討によれば、本件発明1の本質的部分に当たるものということがで
きる。
そうすると、上記相違点に係る本件発明1の構成については、本件発明1\nの本質的部分ではないということはできない。そして、前記(1)ウのとおり、
上記の点については、本件各発明について共通するものということができる。
したがって、被控訴人製品は均等侵害の第1要件を充足しないから、その
要件について検討するまでもなく、均等侵害は成立しない。
イ 控訴人は、前記第2の3(4)ウのとおり、本件各発明の本質的部分は、「自立
片」によって載置面に自立させられる構成を採用した点にあり、当該「自立\n片」が内容物に直接接触してこれを支える片という意味における「底面片」
と、同一面に連なることにあるのではないと主張する。
しかし、本件各発明の本質的部分については上記アのとおりと認められる
から、本件各発明と被控訴人製品とは、その本質的部分において異なるもの
というべきである。
◆判決本文
1審はこちら。
◆令和4(ワ)2049
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2024.05. 1
令和5(ネ)10078 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 令和6年3月28日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
1審で文言侵害不成立と判断されましたので、控訴審で均等侵害の主張を追加しましたが、第1要件を満たさないと判断されました。
(4) 当審における控訴人による均等侵害の主張に対する判断
ア 控訴人は、仮に被控訴人製品が、本件各発明に文言上はその技術的範囲に
属しないものとしても、これと均等なものとして、特許権侵害に当たる旨を
主張する。
特許請求の範囲に記載された構成中に相手方が製造等をする製品又は用い\nる方法(以下「対象製品等」という。)と異なる部分が存する場合であっても、
1)同部分が特許発明の本質的部分ではなく、2)同部分を対象製品等における
ものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果
を奏するものであって、3)上記のように置き換えることに、当該発明の属す
る技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が、対象製品等の製
造等の時点において容易に想到することができたものであり、4)対象製品等
が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから同
出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、5)対象製品等が特許発明の
特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たる
などの特段の事情もないときは、同対象製品等は、特許請求の範囲に記載さ
れた構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解する\nのが相当である。
そして、上記1)の要件(第1要件)における特許発明における本質的部分
とは、当該特許発明の特許請求の範囲の記載のうち、従来技術に見られない
特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきであり、特許請求\nの範囲及び明細書の記載に基づいて、特許発明の課題及び解決手段とその効
果を把握した上で、特許発明の特許請求の範囲の記載のうち、従来技術に見
られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定するこ\nとによって認定されるべきである(最高裁平成6年(オ)第1083号同1
0年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁、最高裁平成28
年(受)第1242号同29年3月24日第二小法廷判決・民集71巻3号
359頁参照)。
これを本件において検討するに、前記(1)イのとおり、本件発明1は、「底部
に取り付けられた安定補助板により支えられてテーブルなどの上に立たせら
れる」「折畳式コップ型容器」(段落【0003】)であって「安定補助板が例
えば紙や合成樹脂などから形成され、後から容器本体に取り付けられる構成」\n(段落【0005】)を採用した従来技術を前提とし、「成形が簡便な自立型
の包装容器の提供を目的とする」(段落【0006】)ことを発明が解決しよ
うとする課題とし、当該課題を解決する手段として「前記包装容器を容器と
して形成した状態において、前記底部を形成する底面片と同一面に連なる自
立片が載置面に沿って前記奥行の方向に突出し、前記自立片によって前記載
置面に自立させられる」(本件発明1の構成要件B)という構\成を採用するこ
とにより、「包装容器を自立させる自立片が底面片に連なっているため、一体
的な成形が簡便である」(段落【0013】)という効果を奏するものである。
そうすると、本件発明1において従来技術に見られない特有の技術的思想
を構成する特徴的部分は、従来技術における安定補助板が、底部に一体的に\n成形された構成である、「前記包装容器を容器として形成した状態において、\n前記底部を形成する底面片と同一面に連なる自立片が載置面に沿って前記奥
行の方向に突出し、前記自立片によって前記載置面に自立させられる」こと
にあると考えられる。
そして、本件発明1と被控訴人製品とは、包装容器を容器として形成した
状態において、本件発明1の「底面片」が筒状の底部を形成するのに対し、
被控訴人製品は、包装容器を自立させる舌状片が、包装容器の底部を形成す
る六角片と同一面に連なっておらず別に構成されている点において相違する\nものと認められるところ、この相違に係る本件発明1の構成、すなわち「底\n部を形成する底面片」が「自立片」と同一面に連ねられていることは、これ
までの検討によれば、本件発明1の本質的部分に当たるものということがで
きる。
そうすると、上記相違点に係る本件発明1の構成については、本件発明1\nの本質的部分ではないということはできない。そして、前記(1)ウのとおり、
上記の点については、本件各発明について共通するものということができる。
したがって、被控訴人製品は均等侵害の第1要件を充足しないから、その
要件について検討するまでもなく、均等侵害は成立しない。
イ 控訴人は、前記第2の3(4)ウのとおり、本件各発明の本質的部分は、「自立
片」によって載置面に自立させられる構成を採用した点にあり、当該「自立\n片」が内容物に直接接触してこれを支える片という意味における「底面片」
と、同一面に連なることにあるのではないと主張する。
しかし、本件各発明の本質的部分については上記アのとおりと認められる
から、本件各発明と被控訴人製品とは、その本質的部分において異なるもの
というべきである。
◆判決本文
1審はこちらです。
◆令和4(ワ)2049
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2024.03.23
令和4(ワ)9521 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 令和6年2月26日 大阪地方裁判所
熱可塑性樹脂組成物について、構成要件1B「・・・分子量700以上・・」について、第1要件充足せずとして、均等侵害が否定されました。ちなみに、被告製品「分子量699」であり、「700」という数値に臨界的意義はありません。
該当特許はこちらです。
◆特許4974971
ア 本件各発明は、耐熱性透明材料として好適な熱可塑性樹脂組成物と、当該
組成物からなる樹脂成形品ならびに樹脂成形品の具体的な一例である偏光
子保護フィルム、樹脂成形品の製造方法に関する発明である(【0001】)。
アクリル樹脂の透明度の低下を防止するためにUVAを添加する方法が
公知であったが、成形時の発泡やUVAのブリードアウト、UVAの蒸散に
よる紫外線吸収能の低下との問題につき、従来技術として、アクリル樹脂に組み合わせるUVAとして、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物およびベンゾフェノン系化合物が用いられていた(【0003】、【00\n05】、【0006】)。しかし、これらの従来技術として例示されたアクリル
樹脂(【0006】記載の特許文献)には、いずれも分子量が700以上のU
VAは開示されていなかった。
イ 本件各発明は、従来技術の化合物には、主鎖に環構造を有するアクリル樹脂との相溶性に課題があり、高温成形時の発泡やブリードアウトの発生の抑制が不十\分であったことから、これらの課題を克服するため(【0007】、【0008】)、樹脂組成物を構成要件1B記載の構\成とし、その製造方法を構成要件6B記載の構\成とし(【0009】、【0010】)、これにより11
0゜C)以上という高いTgに基づく優れた耐熱性や高温成形時における発泡
及びブリードアウトの抑制、UVAの蒸散による問題発生の減少との効果を
奏することとなった(【0015】)。
ウ したがって、本件各発明の本質的部分は、ヒドロキシフェニルトリアジン
骨格を有する、分子量が700以上のUVAが、主鎖に環構造を有する熱可塑性アクリル樹脂と相溶性を有することを見出したことにより、110゜C)以
上という高い優れた耐熱性や高温成形時における発泡及びブリードアウト
の抑制、UVAの蒸散による問題発生の減少という効果を有する樹脂組成物
を提供することを可能にした点にあると認められる。
エ 数値をもって技術的範囲を限定し(数値限定発明)、その数値に設定する
ことに意義がある発明は、その数値の範囲内の技術に限定することで、その
発明に対して特許が付与されたと考えられるから、特段の事情のない限り、
その数値による技術的範囲の限定は特許発明の本質的部分に当たると解す
べきである。
上記検討によれば、分子量を「700以上」とすることには技術的意義が
あるといえるうえ、本件において、上記特段の事情は何らうかがえない。
オ そうすると、被告UVAの分子量が「700以上」ではないとの相違点は、
本件各発明の本質的部分に係る差異であるというべきであるから、被告製品
及び被告方法について、均等の第1要件が成立すると認めることはできず、
均等侵害は成立しない。
カ 原告は、本件各発明におけるUVAの分子量である「700」に厳格な技
術的意義はなく、本件各発明の本質的部分は、分子量が十分に大きいという上位概念であると主張する。 しかし、このような上位概念化は、前述の数値限定発明の技術的意義に関
する考え方と相容れず権利範囲を不当に拡大するものである。また、本件証
拠上、本件各発明におけるUVAの分子量が十分に大きいということが当業者にとって自明であるとも認められないし、分子量が十\分に大きいことと、被告UVAの分子量との比較における本件各発明の数値の臨界的意義との
関係は何ら明らかにされていない。
◆判決本文
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2023.11. 2
令和4(ネ)10113 損害賠償等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 令和5年10月26日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
1審の東京地裁は、構成要件Biiを充足しない、無効理由あり(サポート要件)と判断しました。控訴人は、控訴審で均等主張を追加しましたが、知財高裁は、均等侵害にも該当しないと判断しました。
イ 本件明細書に記載された従来技術、発明の課題及び課題を解決するため
の手段は、以下のとおりである(前記引用に係る補正後の原判決「事実
及び理由」第4の1(2)のとおりであるが、再掲する。)。
(ア) 従来技術では、サポーター本体に織り込まれているゴムの収縮力や
織り方を変えることで患部に対する圧迫、押圧の強度を変化させてい
たが、膝関節の任意の箇所に必要な押圧を加えることができないとい
う問題があった(【0002】)。先行特許文献に記載された逆U字
型のパッドを備える構成では、膝蓋骨を吊り上げて大腿四頭筋の機能\
を補助することができず、縦方向と横方向の伸長率を変化させてずれ
にくくする構成はサポーター本来の機能\とは関係がないという問題が
あった(【0003】)。
(イ) 本件発明は、膝蓋靭帯を圧迫し、かつ、膝蓋骨を保持して、膝関節
を良好に固定するコンプレッションサポーターを提供することを発明
の課題とし(【0005】)、この課題を解決するための手段として、
本件発明の構成要件A〜Cの構\成を採用した(【0006】)。
(ウ) これにより、本件発明は、適切に膝蓋靱帯を圧迫し、膝蓋骨を保持
して、膝関節を良好に固定し得るコンプレッションサポーターを提供
するという効果を奏する(【0020】)。
ウ 控訴人は、本件明細書の記載に基づき、本件発明の課題は「膝蓋靭帯を
圧迫し、かつ、膝蓋骨を保持して、膝関節を良好に固定するコンプレッ
ションサポーターを提供すること」であり、当該課題は、低伸縮領域で
あるほぼU字型の「正面吊り領域」が「膝蓋靭帯を圧迫」すると共に
「膝蓋骨を吊り上げ」て「大腿四頭筋の機能を補助」することで解決さ\nれるものであり(【0010】、【0011】)、このことから、本件
発明の本質的部分は、「低伸縮領域として、膝蓋靭帯を圧迫し、かつ、
膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の機能を補助するために、膝蓋骨の下部\nを取り囲むほぼU字型に、本体正面に設けた正面吊り領域」を備えると
いう構成(構\成要件Bi)であると主張する。
エ しかし、本件特許の出願前に頒布された乙4文献には、別紙4「乙4文
献の記載」の事項が記載されている(乙4及びその訳文)。
これらの記載から、乙4文献には、伸縮性材料からなり着脱容易な膝サ
ポータ(第1の1)であって、シリコーン材料、ゴムなどの弾性材料か
ら形成され、膝蓋骨用開口部の横及び下から膝蓋骨の下部を取り囲み、
下部膝蓋靭帯の上に位置するU字形状パッドを備え付けることにより
(第1の1、2、第2の1、3)、下部膝蓋靭帯の領域に押圧力を生じ
させ、膝蓋骨の負荷を軽減するもの(第2の2、4)が開示されている
と認められる。
なお、上記「パッド」は、伸縮性材料からなり着脱容易な膝サポータに
おいて、シリコーン材料、ゴムが例示される弾性材料から形成され、こ
れが位置する領域に押圧力を生じさせるものであるから、上記伸縮性材
料より伸縮性が低いと認められる。
また、乙4文献には、膝蓋骨を保持又は「吊り上げ」ることは明記され
ていないが、本件発明においても「膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋を補
助する」のは「膝蓋骨の下部を取り囲むほぼU字型に、本体正面に設け
た正面吊り領域」であり(構成要件Bi、本件明細書【0006】)、
この「正面吊り領域」は、「本発明においては、低伸縮領域として、膝
蓋靭帯を圧迫するために、膝蓋骨17の下部を取り囲むほぼU字型…に、
本体正面に設けた正面吊り領域を具備している。低伸縮領域である正面
吊り領域を、ほぼU字型に形成することにより、膝蓋骨を吊り上げ、大
腿四頭筋を補助するものである。」(【0010】)、「膝蓋靭帯15
を圧迫するために本体正面に設けた正面吊り領域22を具備する。正面
吊り領域22は、膝蓋骨17の下部を取り囲む湾曲部を有するほぼU字
型…に設けられており、膝蓋骨17の下部を取り囲む湾曲部を有するこ
とにより、前述のように膝蓋骨17を吊り上げ、大腿四頭筋に好適な作
用を及ぼすものである。」(【0023】)というものである。
オ 以上の乙4文献の開示事項を考慮すると、本件明細書に従来技術が解決
できなかった課題として記載されているところは、出願時の従来技術に
照らし客観的にみて不十分というべきである。\nそして、乙4文献記載の従来技術をも参酌すると、従来技術に「膝関
節の任意の箇所に必要な押圧を加える」ことができないという問題があ
り、「膝蓋靭帯を圧迫し、かつ、膝蓋骨を保持して、膝関節を良好に固
定するコンプレッションサポーターを提供する」という課題が未解決で
あったということはできず、少なくとも、従来技術と比較した本件発明
の貢献の程度は大きいものではないと評価せざるを得ない。以上によれば、本件発明の本質的部分は、本件発明に係る特許請求の範囲の記載とほぼ同義のものと認めるのが相当であり、少なくとも、樹脂より成る低伸縮性材料を本体に固着した低伸縮領域の構成を定める構\成要件Cは本件発明の作用効果に直結する部分であって、その本質的部分に含まれるというべきである。
◆判決本文
原審はこちら。
◆令和3(ワ)11507
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2023.10.25
平成25(ワ)7478 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟__全文__ 平成28年10月14日 東京地方裁判所
随分前の事件ですが、漏れていたのでアップします。東京地裁(40部)は、半導体基板の製造方法について、「第二の割り溝」を有しないとして、文言侵害は否定しましたが、均等と認めました。
また,本件明細書等には,「第二の割り溝」を形成する方法について,
手法は特に問わないとしており,エッチング,ダイシング,スクライブ
等の手法を用いることが可能であるとされ,このうち,線幅を狭くする\nことが可能であるなどの理由から,スクライブが特に好ましいとするに\nとどまっており(段落【0009】),「第二の割り溝」に関して,そ
の形成の方法は特に限定されていない。
そして,本件においては,本件明細書等に従来技術が解決できなかっ
た課題として記載されているところが,出願時の従来技術に照らして客
観的に見て不十分であるという事情は認められない。\n
以上のような,本件特許の特許請求の範囲及び明細書の記載,特に明
細書記載の従来技術との比較から導かれる本件発明の課題,解決方法,
その効果に照らすと,本件発明の従来技術に見られない特有の技術的思
想を構成する特徴的部分は,サファイア基板上に窒化ガリウム系化合物\n半導体が積層されたウエハーをチップ状に切断するに当たり,半導体層
側にエッチングにより第一の割り溝,すなわち,切断に資する線状の部
分を形成し,サファイア基板側にも何らかの方法により第二の割り溝,
すなわち,切断に資する線状の部分を形成するとともに,それらの位置
関係を一致させ,サファイア基板側の線幅を狭くした点にあると認める
のが相当であり,サファイア基板側に形成される第二の割り溝,すなわ
ち,切断に資する線状の部分が,空洞として溝になっているかどうか,
また,線状の部分の形成方法としていかなる方法を採用するかは上記特
徴的部分に当たらないというべきである。
ウ 被告方法は,前記2で認定したように,サファイア基板上に窒化ガリ
ウム系化合物半導体が積層されたウエハーをチップ状に切断するに当た
り,半導体層側にエッチングにより切断に資する線状の部分を形成し,
サファイア基板側にもLMA法のレーザースクライブによって切断に資
する線状の変質部を形成するとともに,それらの位置関係を一致させ,
サファイア基板側の線幅を狭くしているのである。
そして,前記2(1)イで説示したとおり,LMA法でサファイア基板
を加工した場合,溶融領域が発生し急激な冷却で多結晶化し,この多結
晶領域は多数のブロックに分かれるが,加工領域中央に実質の幅が極端
に狭い境界が発生し,この表面に垂直な境界線の先端に応力集中するの\nで割れやすくなることが認められる。
そうすると,被告方法は本件発明の従来技術に見られない特有の技術
的思想を構成する特徴的部分を共通に備えているものと認められる。\nしたがって,本件発明と被告方法との相違部分は本質的部分ではない
というべきである。
エ 被告らの主張に対する判断
この点に関して被告らは,LMA法のレーザースクライブについて,
対象と「非接触」であるため,クラック等が発生せず,かつ,ほぼ垂直
に分割されることから,本件発明の課題自体が存在しないことになり,
そのような方法を用いたとしても,本件発明の本質的部分に当たらない
旨主張する。
そして,乙14(再公表特許第2006/062017号。以下「乙\n14文献」という。)の段落【0039】には,【図9】,【図10】
に関して,LMA法により形成された変質領域に隣接する正常領域のブ
レイク面が略垂直である旨の記載がある。
しかしながら,他方で,乙14文献の段落【0043】等には,同じ
【図9】,【図10】に関して,デフォーカス値によっては,正常領域
のブレイク面の垂直方向につき多少の傾斜や段差が存在する旨の記載も
あるのであって,LMA法のレーザースクライブであるからといって,
切断面が斜めになることで不良品が生じるという本件発明の課題が発生
しないと認めることはできない。
したがって,被告らの上記主張は採用することができない。
オ 以上のとおりで,被告方法は,均等の第1要件を充足すると認められ
る。
◆判決本文
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2023.10.25
平成28(ワ)21762等 特許権侵害差止等請求事件,特許権侵害差止請求事件,特許権侵害に基づく損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成31年3月28日 東京地方裁判所
随分前の事件ですが、漏れていたのでアップします。東京地裁(47部)は、文言侵害については「サーボバンドを特定するためのデータをエンコードする」との構成を欠くとしたものの、均等と認めて合計約2億円の損害賠償を認めました。
ウ 以上からすれば,前記アのとおり,構成要件Bの「サーボバンドを特定\nするためのデータをエンコードする」とは,「サーボバンドを特定するた
めのデータ」を「0」又は「1」の形式に変換することと解すべきところ,
被告製造方法において,上記の形式の変更を行っていることを示す証拠は
何ら存在しない
・・・
第1要件について
本件明細書に記載された従来技術は,隣接するサーボバンドのサーボパ
ターンをテープ長手方向にオフセットさせ,それらのサーボバンドの信号
を同時に読み取って比較することで,サーボバンドの特定を行うものであ
り(段落【0002】),片側のサーボ信号の読み取りが一時的又は恒久
的にできなくなった場合,サーボバンドの特定を行うことができなかった
という課題があった(段落【0004】)。
そこで,請求項1発明は,隣接するサーボバンドに書かれたサーボ信号
を比較せずに,サーボバンドを特定するために,各サーボバンド内に書き
込まれた各サーボ信号に,そのサーボ信号が位置するサーボバンドを特定
するためのデータがそれぞれ埋め込まれ,前記各サーボ信号は,一つのパ
ターンが非平行な縞からなり,各データは,前記縞を構成する線の位置を,\nサーボバンド毎にテープ長手方向にずらすことにより前記各サーボ信号中
に埋め込まれているようにした磁気テープであり(段落【0007】),
本件発明は,その製造方法である(段落【0017】)。
そうすると,本件発明の本質的部分は,構成要件A−3「前記各サーボ信号は,一つのパターンが非平行な縞からなり,各データは,前記縞を構\成する線の位置を,サーボバンド毎にテープ長手方向にずらすことにより前記各サーボ信号中に埋め込まれていることを特徴とする磁気テープ」にあるといえ,構成要件B「サーボバンドを特定するためのデータをエンコードする第一工程と,」は本質的部分には当たらないというべきである(被\n告らも特に争っていない。)。よって,被告製造方法は,均等の第1要件を充足する。
◆判決本文
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>> 第1要件(本質的要件)
>> 賠償額認定
>> 104条の3
>> ピックアップ対象
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2023.10.25
平成28(ワ)25436 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 令和2年9月24日 東京地方裁判所
随分前の事件ですが、漏れていたのでアップします。争点はたくさんあります。裁判所は、均等の主張を認め、差止と約10億円の損害賠償を認めました。判決文は別紙を入れると400頁ありますので、目次付きです。
前記(2)ウのとおり,本件明細書2記載の従来技術と比較して,本件発明2
における従来技術に見られない特有の技術的思想(課題解決原理)とは,従来,グ
ルタミン酸生産に及ぼす影響について知られていなかったコリネ型細菌のyggB
遺伝子に着目し,C末端側変異や膜貫通領域の変異といった変異型yggB遺伝子
を用いてメカノセンシティブチャネルの一種であるYggBタンパク質を改変する
ことによって,グルタミン酸の生産能力を上げるための,新規な技術を提供するこ\nとにあったというべきである。また,前記(2)エで検討したとおり,本件明細書2に
おける従来技術の記載が客観的に見て不十分であるとは認められない。\n
(ウ) 前記(3)アのとおり,19型変異使用構成は,本件発明2−5に含まれる,\n本件特許2の請求項1又は4を引用する請求項6のうち(e)の変異型yggB遺
伝子が導入されたコリネ型細菌を使用する構成であり,前記(イ)の本件発明2にお
ける特有の技術的思想ないし課題解決原理に照らせば,19型変異使用構成の本質\n的部分は,「コリネ型細菌由来のyggB遺伝子に,コリネバクテリウム・グルタ
ミカム由来のyggB遺伝子におけるA100T変異に相当する変異を導入し,当
該変異型yggB遺伝子を用いてコリネ型細菌を改変し,ビオチンが過剰量存在す
る条件下においてもグルタミン酸の生産能力を上げる点」にあると認められる。\n
(エ) 被告は,出願経過,本件優先日2当時の技術水準,19型変異使用構成の効\n果から,19型変異使用構成の本質的部分の認定に当たっては,特許請求の範囲の\n記載の上位概念化をすべきでなく,特許請求の範囲に記載された「変異後のygg
B遺伝子の配列である配列番号22という特定のアミノ酸配列におけるA100T
変異」に限定して認定されるべきであると主張する。
しかしながら,前記(2)ア及びイの本件明細書2の記載内容によれば,本件発明2
は,特定の配列のyggB遺伝子を有するコリネ型細菌にのみ存在する課題を対象
とするものではなく,また,その解決原理としても,グルタミン酸生産能力を上げ\nるために,C末端側変異や膜貫通領域の変異といった変異型yggB遺伝子を用い
てメカノセンシティブチャネルの一種であるYggBタンパク質を改変するという
新規な技術を導入するというものであったから,本件発明2の請求項1や請求項4
において変異を導入する前のyggB遺伝子のアミノ酸配列が列挙され,請求項6
において変異後のyggB遺伝子のアミノ酸配列が列挙されていることを考慮して
も,本件発明2及びそれに含まれる19型変異使用構成の本質的部分を認定するに\n当たっては,yggB遺伝子が由来するコリネ型細菌の菌種,yggB遺伝子全体
の変異前の具体的配列,あるいは,A100T変異に相当する変異を導入した後の
yggB遺伝子の具体的配列は,その本質的部分ではないものと認めるのが相当で
ある。これは,被告が指摘するように,本件特許2の出願当初の請求項1にはyg
gB遺伝子が由来するコリネ型細菌の菌種や変異前後のyggB遺伝子のアミノ酸
配列が特定されていなかったところ,補正によって,現在の請求項1のようにyg
gB遺伝子のアミノ酸配列の配列番号が,コリネバクテリウム・グルタミカム(ブ
レビバクテリウム・フラバムを含む。)又はコリネバクテリウム・メラセコーラに
由来する配列番号6,62,68,84及び85に特定されるようになったこと(【0
033】,乙80〜84),請求項1に記載された配列番号6,62,68,84
及び85のアミノ酸配列が相互に相同性が高いこと(乙85)を考慮しても同様で
ある。また,被告は,出願経過に関連して,本件特許2の再訂正後の請求項の記載
も考慮すべきとも主張するが,当該訂正の内容は,少なくとも訂正前の本件発明2
の本質的部分の認定には影響しないというべきである。
そのほか,本件優先日2当時の技術水準や19型変異使用構成の効果についての\n被告の主張が採用できないことは,前記(2)エ及び(3)イのとおりであり,これらを
理由として,19型変異使用構成の本質的部分を特許請求の範囲に記載された変異\n前後のyggB遺伝子の具体的配列に限定すべきともいえないから,この点の被告
の主張も,前記(ウ)の判断を左右するものではない。
イ 相違点1について
前記ア(エ)のとおり,19型変異使用構成の本質的部分については,yggB遺伝\n子が由来するコリネ型細菌の菌種,yggB遺伝子全体の変異前の具体的配列,あ
るいは,A100T変異に相当する変異を導入した後のyggB遺伝子の具体的配
列は,その本質的部分ではないものと認めるのが相当であることに加え,以下の(ア)
及び(イ)の点を考慮すれば,相違点1に係る違い,すなわち,導入されている変異型
yggB遺伝子が由来する細菌の種類の違い及びそれによるyggB遺伝子の具体
的な配列の違いは,19型変異使用構成の本質的部分とはいえない。\n
・・・
(エ) これらの点からすれば,相違点3に係る違い,すなわち相違点2に係るA9
8T変異に加えて,被告製法4の菌株ではV241I変異が導入されているという
点は,本件明細書2で開示された本件発明2の課題解決原理である膜貫通領域の変
異ないしC末端側変異と関連しない部位の1つのアミノ酸に保存的置換を加えるも
のであり,A98T変異に加えることで課題解決に影響するものではないから,1
9型変異使用構成の本質的な部分における相違点ではない。\nオ したがって,19型変異使用構成と被告製法4との相違点1ないし3は,い\nずれも,特許発明の本質的部分ではないから,(12)及び(13)の菌株を使用する被告製法
4は均等の第1要件を充足すると認められる。
◆判決本文
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2023.09.25
令和3(ワ)33996 特許権侵害差止請求事件 特許権 民事訴訟 令和5年7月7日 東京地方裁判所
特許権侵害訴訟です。第1要件を満たさないとして、均等侵害も否定されました。
(1) 均等の第1要件にいう特許発明における本質的部分とは、当該特許発明の
特許請求の範囲の記載のうち、従来技術に見られない特有の技術的思想を
構成する特徴的部分であると解すべきである。\nそして,上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて、
特許発明の課題及び解決手段とその効果を把握した上で、特許発明の特許
請求の範囲の記載のうち、従来技術に見られない特有の技術的思想を構成\nする特徴的部分が何であるかを確定することによって認定されるべきであ
る。
また、第1要件の判断、すなわち対象製品等との相違部分が非本質的部分
であるかどうかを判断する際には、上記のとおり確定される特許発明の本
質的部分を対象製品等が共通に備えているかどうかを判断し、これを備え
ていると認められる場合には,相違部分は本質的部分ではないと判断すべ
きである。
・・・
これらの記載に照らすと、本件発明は、把持部を水平方向に軸回転させ
て負荷付与部の負荷を引き上げ、把持部にかかる上方向に付勢する負荷を
軽くすることを可能にする構\成を採用することにより、使用者が、「弛緩」
と「伸張」の動作を加えながら適切な「短縮」のタイミングを出現させる
ことができ、各筋肉群が「弛緩−伸張−短縮」のタイミングを得て、連動
性よく動作を行うことができることを可能にするとともに、両腕を屈曲さ\nせて把持部を引き下げることに伴い、両腕を外側に広げることに対する抗
力が減少する構成を採用することにより、筋の「共縮」を防ぐことを可能\
にし、もって、筋肉の硬化を伴うことなく、筋肉痛や疲労など身体への負
担が少なく、柔軟で弾力性の富んだ肩部や背部の筋肉等を得ることができ
るトレーニング器具を提供し、従来技術の課題を解決するものといえる。
そうすると、これらの各構成については、従来技術に見られない特有の技\n術的思想を構成する特徴的部分であると認めることができる。\n
そして、本件明細書においては、上記の各構成のうち、上記把持部を軸\n回転させて負荷付与部の負荷を引き上げ、把持部にかかる上方向に付勢す
る負荷を軽くすることを可能にする構\成について、「把持部60を昇降揺動
部材50に対して軸回転することにより、回転伝達部91及びクランク機
構部92を介して摺動軸57が上下動することに伴い、クランプにより連\n結されたウェイト31が上下動する。」(【0026】)、「把持部60を昇降
揺動部材50に対して初期状態である略正面方向から外側水平方向へ回転
付勢力に抗して軸回転することにより、摺動軸57が昇降揺動部材50に
対して下方向に摺動し、前記クランプにより連結されたウェイト31が引
き上げられる。」(【0027】)との記載がある。
これらの記載に照らすと、本件発明の特許請求の範囲において、上記把
持部を軸回転させて負荷付与部の負荷を引き上げ、把持部にかかる上方向
に付勢する負荷を軽くすることを可能にする構\成に対応する構成は、把持\n部の回転運動を伝達し、同伝達された回転運動を摺動軸の上下動に変換す
るクランク機構部を具備する負荷伝達部であり、構\成要件Gの構成である\nと認められる。
本件においては、被告製品が構成要件Gに相当する構\成を備えていない
こと(相違点B)に争いがなく、本件発明の本質的部分を被告製品が共通
に備えているとは認められないから、本件発明と被告製品の相違点Bが本
質的部分ではないということはできず、被告製品は、均等の第1要件を満
たさない。
その他にも原告はるる主張するが、いずれも上記結論を左右しない。
以上によれば、被告製品は、その余の要件を検討するまでもなく、本件
発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとはいえないから、\n本件発明の技術的範囲に属するものとは認められない。
◆判決本文
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2023.06. 7
令和4(ネ)10107 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 令和5年6月1日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
特許権侵害訴訟の控訴審です。1審は文言侵害に当たらないと判断していました。特許権者は、均等侵害も主張しましたが、第1要件を満たしていないと判断されました。
ア 前記(2)のとおり、被控訴人製品は「摺動導通部」を有しない点において、
本件発明と異なる。
ところで、訂正の上引用した原判決の第3の1(2)のとおり、本件発明は、一対
のプランジャをコイルばねの密巻き部分に接触させて導通を確保するという本件先
行発明における、2つの摺動導通部が形成されることによる抵抗の分散が検査の精
度を狭めるという課題を解決するために、摺動導通部の数を減らし、検査精度を向
上可能とするというものであり、プランジャと接触して導通を確保する摺動導通部\nを有することは、本件発明の本質的部分である。
そうすると、被控訴人製品と本件発明の構成中の異なる部分(摺動導通部の存否)\nは、本件発明の本質的部分に当たる。
イ 控訴人は、「密巻き部」に関する本件発明と被控訴人製品の相違点は、「本件
発明では「フリー状態で密巻きであった部分」が導通経路となっているところ、被
控訴人製品では「フリー状態で密巻きであった部分」が導通経路となっているかが
定かではなく、「ストローク開始後検査前に密巻きになった部分」が導通経路とな
っている可能性がある点」であり、被控訴人製品について均等侵害が成立すると主\n張する。しかしながら、訂正の上引用した原判決の第3の2(4)のとおり、被控訴
人製品において、ストローク開始後検査前に密巻きになった部分が導通経路となっ
ていることを認めるに足りる証拠がなく、このことは、当審において提出された動
画(甲86)を踏まえても変わらない。そうすると、控訴人の「密巻き部」に関す
る均等の主張はその前提を欠く。
ウ したがって、その余の点につき検討するまでもなく、被控訴人製品について、
本件発明の均等侵害は成立しない。
◆判決本文
1審はこちら。
◆令和2(ワ)12013
添付文書はこちら。
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2023.02.17
令和4(ネ)10071 損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟 令和5年1月30日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
特許侵害事件です。1審(東京地裁29部)は、圧力風以外も用いて移送をするイ号は、「圧力風の作用のみによって、・・茶枝葉(A)を・・所定の位置まで移送する」という発明特定事項について、「圧力風の作用のみによって」を満たさないとして、技術的範囲に属しないと判断しました。控訴審では均等侵害も主張しましたが、否定されました。
控訴人は、仮に本件発明7の構成要件Aの「圧力風の作用のみによって」\nの構成は、刈り取られた「茶枝葉」の「刈刃」から「所定の位置」までの移\n送が「圧力風」の「作用」だけで実現されることをいい、「圧力風」の「作
用」以外の作用が加わって上記移送が実現されるものは、「圧力風の作用の
みによって」を備えるとは認められないと解した場合には、被告各製品にお
いては、「圧力風」の「作用」にブラシの回転作用が加わることによって茶
枝葉が移送ダクト内に送り込まれている点で、「圧力風の作用のみによって」
の構成を備えるとはいえず、本件発明7と相違することとなるとしても、被\n告各製品は、均等の第1要件ないし第5要件を充足するから、本件発明7の
特許請求の範囲(請求項7)に記載された構成と均等なものとして、本件発\n明7の技術的範囲に属する旨主張する。
そこで、まず、均等論の第1要件について検討するに、本件発明7の特
許請求の範囲(請求項7)の記載及び前記1(2)認定の本件明細書の開示事
項を総合すれば、従来の茶葉の摘採を行う摘採機は、「刈刃前方側に茶葉移
送のための分岐ノズル付き送風管を配し、分岐ノズルからの送風によって、
刈刃から収容部まで茶葉を移送するのが一般的であり、その移送路は、刈刃
のほぼ後方に延びる水平移送部と、その後に収容部の上部に臨むように接続
された上昇移送部を具えていたが、このような移送形態(送風形態)では、
水平移送部を要する分、移送装置、ひいては摘採機の前後長が長くなり、摘
採機の取り回し性を低下させてしまうという問題があったことから、本件発
明7は、上記問題を解決し、水平移送部を設けることなく、刈取直後、即、
茶葉を上昇移送できるようにし、摘採機の前後寸法の短縮化を図り、摘採機
をコンパクトに構成できるようにした茶枝葉の移送装置を開発することを課\n題とし、この課題を解決するための手段として、水平移送部を設けることな
く、刈刃の後方から移送ダクト内に背面風を送り込む吹出口が設けられ、こ
の吹出口から移送ダクト内に背面風を送り込むことによって、刈取後の茶枝
葉を刈刃から所定の位置まで移送する構成を採用し、具体的には、刈刃後方\nからの背面風によって、その吹出口付近に負圧を生じさせ、この移送ダクト
内に流す圧力風の作用のみにより、負圧吸引作用によって刈り取り直後の茶
枝葉を刈刃後方側に引き寄せ、その後は茶枝葉を背面風に乗せて、収容部な
ど適宜の部位に移送する構成とし、これにより刈り取り直後、水平移送部を\n設けることなく、そのまま茶枝葉を上昇移送することができ、前後長の短縮
化が図れ、コンパクトな茶刈機が実現できるという効果を奏することに技術
的意義があり、水平移送部を設けることなく、刈刃の後方側から送風される
「圧力風の作用のみ」によって、その吹出口付近に負圧を生じさせ、この負
圧吸引作用によって刈り取り直後の茶枝葉を刈刃後方側に引き寄せ、その後
は茶枝葉を背面風に乗せて、収容部4など適宜の部位に移送するようにした
ことが、本件発明7の本質的部分であるものと認められる。
しかるところ、前記2(2)で説示したとおり、被告各製品においては、
「茶枝葉」の「刈刃」から「所定の位置」までの移送が「圧力風」の作用に
「圧力風」以外の作用である回転ブラシの回転作用が加わることによって実
現されているといえるから、被告各製品は、「圧力風の作用のみによって」
の構成を備えるものとは認められない。\nしたがって、被告各製品は、本件発明7の本質的部分を備えているもの
と認めることはできず、本件相違部分は、本件発明7の本質的部分でないと
いうことはできないから、均等論の第1要件を充足しない。
◆判決本文
1審は、こちら
◆令和2(ワ)17423
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2023.01.28
令和3(ネ)10099 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 令和4年12月26日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
知財高裁は、均等侵害の第1、第2要件は充足するものの第3要件(置換容易性)は充足していないと判断し均等侵害を否定しました。1審では均等主張はしていませんでした。
被告製品1は第3要件を充足するか(争点1−2−3)
ア 被告製品1の製造開始時において、本件訂正発明6における「前記電解
室の内部と外部とを区画する一つ以上の隔膜」という構成を、被告製品1\nにおける「1)内タンク6の側壁の一部、2)流出孔3を有する内タンク6の
底部、3)4つの高分子膜10」との構成に置換することは、当業者が容易\nに想到し得たかについて検討する。
イ 前記2のとおり、本件訂正発明6においては、構成要件11Aの隔膜に\nよる区画は、隔膜によって電解室の内部と外部とが完全に区画されるもの
であり、電解室の内部と外部とは、水が連通することがない独立した構造\nとなっている。また、本件明細書1においては、電解室の内部と外部を分
ける隔膜は、縦に設置されたもののみが開示され、陽極で発生する水素と
陰極で発生する水素は、別空間に排出されると理解される。
これに対し、被告製品1は、内タンク空間と外タンク空間の間を水が連
通する構成の下で高分子膜10を水平に配置し、高分子膜10の上側に保\n持された陰極電極板11で発生する水素ガスと、高分子膜10の下側に保
持された陽極電極板12で発生する酸素ガスの混合が起こり得る状態を
許容した上で、陽極電極板12で発生した酸素ガスは、枠体5内に集めて
大きな気泡を形成し、流出孔3から内タンク6内に進入するのを防止した
上、内タンク6と外タンク2の隙間内の水内を通って外部に排出するとい
うものである(乙29の1・2)。そうすると、本件訂正発明6と被告製品
1は、その基本的発想を異にするものというべきであって、被告製品1に
おける「1)内タンク6の側壁の一部、2)流出孔3を有する内タンク6の底
部、3)4つの高分子膜10」との構成への置換が本件訂正発明6の単なる\n設計変更とはいえない。
また、本件明細書1においては、「前記電解室の内部と外部とを区画する
一つ以上の隔膜」との構成を、被告製品1のような「1)内タンク6の側壁
の一部、2)流出孔3を有する内タンク6の底部、3)4つの高分子膜10」
との構成に置換した場合に生じ得る事項についての示唆もないから、本件\n明細書1において、上記のような置換をする動機付けとなるものも認めら
れない。
ウ 控訴人は、前記第2の3(7)アのとおり、陽イオン交換膜を用いた固体高
分子水電解において、陰極室と陽極室を貫通孔により水を連通する構成は、\n被控訴人が製造販売を開始した平成29年11月以前から周知の技術で
あるとして、甲36文献、甲37文献、甲40文献を提示するので、以下、
検討する。
甲37文献は、オゾン水製造装置、オゾン水製造方法、殺菌方法及び
廃水・廃液処理方法に関するものであり(【0001】)、電解反応を利用
した化学物質の製造において、多くの電解セルでは、陽極側と陰極側に
存在する溶液あるいはガスが物理的に互いに分離された構造を採るが、\n一部の電解プロセスにおいては、陽極液と陰極液が互いに混じり合うこ
とを必要とするか、あるいは、混じり合うことが許容されることを前提
として(【0002】)、陽極側と陰極側が固体高分子電解質隔膜により物
理的に隔離され、陽極液と陰極液は互いに隔てられ、混合することなく
電解が行われる従来のオゾン水電解(【0005】)では、電解反応の進
行に伴い液組成が変化し、入側と出側で反応条件が異なるなどの問題点
があったことを踏まえ(【0006】)、電解セルの流入口より流入した原
料水がその流れの方向を変えることなく、直ちに電解反応サイトである
両電極面に到達し、オゾン水を高効率で製造できる等の作用を有するオ
ゾン水製造装置等を提供することを目的としたものである(【001
6】)。
その技術分野(オゾン水製造装置)及び目的(オゾン水を高効率で製
造すること等)のいずれも本件訂正発明6と異なるし、その具体的構成\nも、貫通孔11が設けられた電解セル8(陽極1、陰極2及び固体高分
子電解質隔膜3)に直交して原料水(オゾン水)の流路が設けられると
いうものであって(【0034】及び【0035】)、電極室の内部に被電
解原水が貯留され、電気分解が行われる本件訂正発明6とは異なる。し
たがって、甲37文献に開示された事項を本件訂正発明6に適用する動
機付けは見い出せない。
甲40文献は、電源のない場所に持ち運び、水素の吸入や水素水の飲
用に使用することのできるポータブル型電解装置に係る技術分野に属す
るものであり(【0001】)、電解ユニット3は、ケーシング31、高分
子膜32、電極板33、34、スプリング35からなること(【0028】)、
ケーシング31は、内部に反応室311となる容積が確保されており、
側部に外部と反応室311とを連通するように穿孔された連通孔314
が設けられていること(【0029】)、電解ユニット3の高分子膜32は、
イオンの通過を規制するイオン交換機能を有する薄膜からなるもの(例\nえば、ナフィオン)で、ケーシング31の窓孔311を閉塞する大きさ
の方形に形成されていること(【0030】)が記載され、使用形態とし
て、内部に原水Wが収容されたタンク1にキャップ2、ガイド筒4、水
素吐出管5を一体的に取付けられること(【0034】)、スイッチ9が入
れられると、原水Wが電気分解され、ケーシング31の反応室311の
内部にあるプラス極の電極板34で水素イオンと電子とが生成されて高
分子膜32を通過し、ケーシング31の窓孔312に露出しているマイ
ナス極の電極板33で水素(ガス)が生成され、水素は、微細な気泡H
を形成してタンク1の内部で水素水からなる電解水を生成すること、プ
ラス極の電極板34で生成されたオゾン(ガス)は、高分子膜32を通
過することなくケーシング31の反応室311の内部に滞留され、ケー
シング31の反応室311の内部の滞留圧力が大きくなると連通孔31
4から吐出されること(【0041】)が記載されている。
しかし、甲40文献には、陰極室及び陽極室についての記載はないか
ら、これを見ても、陰極室と陽極室とを貫通孔により水を連通する構成\nが記載されているとはいえない。別紙2の図2において、マイナス極の
電極板33より上側部分を陰極室と、プラス極の電極板34より下側の
反応室を陽極室であると解釈すると、連通孔314は、陽極室とその外
部を貫通するものであって、陽極室と陰極室を貫通するものではない。
マイナス極の電極板33より上側部分と、ケーシング31側面の外側部
分はつながった空間であることから、ケーシング31側面の外側部分も
陰極室であるとみた場合には、連通孔314は、陽極室(反応室)と陰
極室(ケーシング31側面の外側部分)を貫通するものであるといえる
が、酸素と水素が同じ陰極室内に排出されることになり、被告製品1の
構成に至らない。\n甲36文献に係る発明の公開日は平成30年11月22日であり、甲
36文献自体の発行日は令和2年3月11日であるから、その内容や位
置付けについて検討するまでもなく、甲36文献は、被控訴人が被告製
品1の製造販売を開始した平成29年11月時点における周知文献とは
いえない。
エ 以上によれば、控訴人主張の周知技術は、いずれも、本件訂正発明6に
おける「前記電解室の内部と外部とを区画する一つ以上の隔膜」という構\n成を、被告製品1における「1)内タンク6の側壁の一部、2)流出孔3を有
する内タンク6の底部、3)4つの高分子膜10」との構成に置換する動機\n付けになるものとはいえない。
これらの事実関係によれば、このような置換が容易であったとはいえな
いから、被告製品1は、均等の第3要件を充足しない。
前記(1)ないし(3)によれば、被告製品1は、均等の第1要件及び第2要件を
充足するものの、第3要件を充足しないから、第5要件について判断するま
でもなく、本件訂正発明6の技術的範囲に属しない。
◆判決本文
1審はこちら。
1審では、構成要件を具備せず、また実施可能\要件違反の無効理由有りと判断されていました。
◆令和2(ワ)22768
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2023.01.13
令和1(ワ)14320 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 令和4年10月7日 東京地方裁判所
特許侵害訴訟です。文言侵害が否定され、また、均等侵害も第1要件(本質的特徴)を具備しないとして否定されました。
前記(1)で検討したところによると、本件発明1の技術的意義は、固定プレ
ートの孔自体が、橈骨遠位端骨折に対して、軟骨下骨を背側面側及び手掌側
面側という2箇所で支持する方向に突起を向かせて固定することができる構\n成となっているため、高度な医学的判断を要せずに、確実に軟骨下骨を背側
面側及び手掌側面側という2箇所で支持することを可能にすることにあると\n認められる。
そうすると、本件発明1の構成のうち、本質的部分であるといえるのは、\n橈骨遠位端骨折に対して、軟骨下骨を背側面側及び手掌側面側という2箇所
で支持する方向に突起を向かせて固定することができる孔が設置されている
ことを定めた構成要件1E、1J及び1Kであると解するのが相当である。\nそして、これまで検討したところによると、被告製品4は構成要件1J及\nび1Kを充足せず、これらの本件発明1の構成と異なる部分は、本件発明1\nの本質的部分ではないとはいえないから、第1要件を充足せず、均等侵害は
成立しない。
(3)原告の主張の検討
原告は、本件報告書(甲26)によれば、被告製品4は、ガイドブロック
を用いて被告製品4の孔にロッキングスクリューを固定すれば、一組の平行
ピンを用いた従来の平板固定によっては達成できなかった遠位橈骨の軟骨下
骨及びその遠位側の関節表面の位置の安定化という課題を解決することがで\nきるから、本件発明1と技術的思想を共通にしているといえ、孔の軸線が遠
位橈骨内で交差するか遠位橈骨外で交差するかは本件発明の本質的部分では
ないと主張する。
しかし、本件報告書の検証結果の信用性を肯定することができないことは
前記4(2)のとおりであるし、その信用性を肯定できたとしても、前記(1)の
とおり、遠位橈骨の骨折を固定するための骨プレートであり、ネジを固定す
るための固定プレートを貫通する複数のネジ孔が、固定プレート頭部の遠位
側と近位側の2列に概ね平行に並んで設置されている固定プレートは、先行
技術として存在していたのであるから、従来プレートが一組の貫通孔のみを
設けていたことを前提に、二組の貫通孔を設けていることが本質的特徴であ
ると評価することはできない。
また、本件発明1は固定プレートの発明であるから、固定プレート自体の
構成、すなわち、固定プレートに設置された孔の構\成を比較すべきであり、
被告製品4にガイドブロックを用いることを前提に、被告製品4が軟骨下骨
を背側面側及び手掌側面側という2箇所で支持する方向にロッキングスクリ
ューを向かせることができるかどうかという観点から比較することは相当で
はない。
さらに、孔の軸線が遠位橈骨内で交差しないのであれば、孔に突起を挿入
しても、突起が当然に軟骨下骨を背側面側及び手掌側面側という2箇所で支
持することはなく、遠位橈骨の軟骨下骨及びその遠位側の関節表面の位置の\n安定化という課題を解決することはできないから、孔の軸線が遠位橈骨内で
交差する方向に突起を向かせる構成となっていることは、本件発明1の本質\n的特徴であるといえ、そのような孔の構成を有していない被告製品4に均等\n侵害が成立することはない。
◆判決本文
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2022.07.19
令和4(ネ)10021 特許権侵害差止請求控訴事件 特許権 民事訴訟 令和4年7月7日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
令和4(ネ)10021
医薬品の特許権侵害について、原審は、請求項1,2についてはサポート要件違反の無効理由あり、また請求項3,4については技術的範囲に属しないと判断していました。
原告(特許権者)が控訴し、知財高裁は原審の判断を維持しました。
本件発明2の特許請求の範囲の請求項2(「化合物が、式IにおいてR3およびR2はいずれも水素であり、R1は−(CH2)0−2−iC4H9である化合物の(R),(S),または(R,S)異性体である請求項1記載の鎮痛剤」)の記載に照らすと、本件発明2の化合物は、本件発明1の化合物の範囲に含まれるものである。
本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明2の化合物を線維筋痛症や神経障害等の痛みの処置における鎮痛剤として使用することについての一般的な記載があるが(前記1(2)及び(4))、一方で、本件発明2の化合物を神経障害又は線維筋痛症による痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における鎮痛剤として使用することについて明示の記載はない。
また、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明2の化合物に該当するCI−1008及び3−アミノメチル−5−メチル−ヘキサン酸を用いたラットホルマリン足蹠試験結果、CI−1008を用いたラットカラゲニン誘発機械的痛覚過敏及び熱痛覚過敏に対する試験結果、本件発明2の化合物に該当するS−(+)−3−イソブチルギャバを用いたラット術後疼痛モデルにおける熱痛覚過敏及び接触異痛に対する試験結果の記載がある(前記1(3)、(6)、(7)及び(9))。
しかし、前記(1)オ(ア)dの認定事実に照らすと、上記試験結果は、いずれも神経障害又は線維筋痛症による痛みの処置に本件発明2の化合物を使用した試験に関するものといえないから、上記試験結果から、本件発明2の化合物が、「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に対して鎮痛効果を有することを認識することはできない。
そうすると、当業者は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件出願当時の技術常識から、本件発明1の化合物の範囲に含まれる本件発明2の化合物が、本件発明1及び2の「痛み」の範囲に含まれるすべての「痛み」に対して鎮痛効果を有する鎮痛剤を提供するという本件発明1及び2の課題を解決できるものと認識することはできないから、本件発明1及び2は、いずれも本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものと認めることはできない。
・・・・
控訴人は、本件発明3は、慢性疼痛に対する画期的処方薬として、抗てんかん作用を有するGABA類縁体を痛みの処置に用いることを見いだしたものであり、その本質的部分は本件化合物を慢性疼痛の処置に用いる点にあるから、対象となる痛みが侵害受容性疼痛か、神経障害性疼痛や線維筋痛症かは本質的部分ではなく、効能・効果を神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛とし、慢性疼痛の処置に用いる鎮痛剤である被告ら医薬品は、均等論の第1要件を満たすと主張する。しかし、本件明細書の記載(前記1(4))によれば、本件発明3は、本件発明3の「炎症を原因とする痛み、又は手術を原因とする痛み」の範囲に含まれるすべての「痛み」に対して鎮痛効果を有する鎮痛剤を提供することを課題とするものと認められること、痛みは、その基礎となる病態生理に著しい差異があり、「侵害受容性疼痛」、「神経障害性疼痛」、「心因性疼痛」の3つに大別されることは、本件出願当時の技術常識であったこと(前記2(1)オ(ア)a)に照らすと、いかなる痛みに対して鎮痛効果を有するかは、本件発明3において本質的部分であるというべきであり、その鎮痛効果の対象を異にする被告ら医薬品は、本件発明3の本質的部分を備えているものと認めることはできない。したがって、本件発明3に係る特許請求の範囲(本件訂正後の請求項3)に記載された構成中の被告ら医薬品と異なる部分が本件発明3の本質的部分でないということはできないから、被告ら医薬品は均等論の第1要件を満たさない。\n
◆判決本文
原審
◆令和2(ワ)19925等
特許権は同じで、被告(被控訴人)が異なる事件(1)です。
令和4(ネ)10009
◆判決本文
原審
◆令和2(ワ)19927
被告(被控訴人)が異なる事件(2)です。
令和4(ネ)10002
◆判決本文
原審
◆令和2(ワ)22283
被告(被控訴人)が異なる事件(3)です。
令和4(ネ)10012
◆判決本文
原審
◆令和2(ワ)19924
被告(被控訴人)が異なる事件(4)です。
令和4(ネ)10020
◆判決本文
原審
◆令和2(ワ)19929
被告(被控訴人)が異なる事件(5)です。
令和4(ネ)10013
◆判決本文
原審。
◆令和2(ワ)19917
被告(被控訴人)が異なる事件(6)です。
令和4(ネ)10016
◆判決本文
原審。
◆令和2(ワ)19918等
被告(被控訴人)が異なる事件(7)です。
令和4(ネ)10039
◆判決本文
原審
◆令和2(ワ)19919
被告(被控訴人)が異なる事件(8)です。
令和4(ネ)10028
◆判決本文
原審
◆令和2(ワ)19920等
被告(被控訴人)が異なる事件(9)です。
令和4(ネ)10015
◆判決本文
原審。
◆令和2(ワ)19922等
被告(被控訴人)が異なる事件(10)です。
令和4(ネ)10036
◆判決本文
原審
◆令和2(ワ)19923等
被告(被控訴人)が異なる事件(11)です。
令和4(ネ)10017
◆判決本文
原審。
◆令和2(ワ)19926
被告(被控訴人)が異なる事件(12)です。
令和4(ネ)10003
◆判決本文
原審
◆令和2(ワ)19928
被告(被控訴人)が異なる事件(13)です。
令和4(ネ)10037
◆判決本文
原審
◆令和2(ワ)19931等
被告(被控訴人)が異なる事件(14)です。
令和4(ネ)10025
◆判決本文
原審
◆令和2(ワ)19932
被告(被控訴人)が異なる事件(15)です。
令和4(ネ)10026
◆判決本文
原審
◆令和2(ワ)22290等
本件特許の無効審判事件の審取です。
令和2(行ケ)10135
審決は、「訂正後の請求項1ないし2に係る発明についての特許を無効、請求項3,4に係る発明についての本件審判の請求は,成り立たない。」と判断していました。
知財高裁は、審決維持です。
◆判決本文
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2022.04.23
令和2(ワ)19920等 特許権侵害差止請求事件 特許権 民事訴訟 令和4年1月19日 東京地方裁判所
医薬品の用途発明について、請求項1,2については、実施可能要件・サポート要件違反として訂正が認められず、請求項3,4については均等侵害も否定されました。
医薬の用途発明においては,一般に,物質名,化学構造等が示されるこ\nとのみによっては,当該用途の有用性を予測することは困難であり,当該\n医薬を当該用途に使用することができないから,医薬の用途発明において
実施可能要件を満たすためには,明細書の発明の詳細な説明にその医薬の\n有用性を当業者が理解できるような薬理試験結果を記載する必要がある
が,前記判示のとおり,本件明細書等には,本件化合物が神経障害性疼痛
又は心因性疼痛による痛覚過敏又は接触異痛の痛みの治療に有効である
と当業者が理解し得るような薬理試験結果の記載は存在しない。
(3) 本件特許出願当時の技術常識
ア 本件明細書等には,本件化合物が侵害受容性疼痛による痛覚過敏又は接
触異痛に対して有効であれば,神経障害又は心因性による痛覚過敏又は接
触異痛についての薬理試験を要することなく治療効果が予測されること\nを明示又は示唆する技術常識の記載は存在しない。また,侵害受容性疼痛,
神経障害性疼痛,心因性疼痛などの種類を問わず,痛覚過敏又は接触異痛
などの痛みの発症原因や機序が同一であり,いずれかの種類の痛みに対し
て有効な医薬品であれば,他の種類の痛みに対しても有効であることが本
件特許出願当時の当業者に知られていたなどの記載もない。
・・・・
上記各文献は,本件の技術分野に属する専門家により執筆されたもので
あり,その当時の技術常識を反映した書籍であるというべきところ,上記
に摘示した各記載によれば,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛及び心因性
疼痛は,その発症原因,痛みの態様・程度及び治療方法がそれぞれ異なる
というのが本件特許出願当時の技術常識であり,痛みの種類を問わず,痛
覚過敏又は接触異痛などの痛みの発症原因や機序は同一であり,いずれか
の種類の痛みに対して有効な医薬品であれば,他の種類の痛みに対しても
有効であるとの技術常識が存在したということはできない。
ウ 以上によれば,本件化合物が神経障害又は心因性による痛覚過敏又は接
触異痛の痛みの治療に有効であることを示す薬理試験結果の記載もなく,
本件明細書等の記載に接した当業者が,本件化合物がこれらの痛みの治療
に有効であると認識し得たとは考えられない。
(4) したがって,本件明細書等の記載は訂正前発明1及び2を当業者が実施で
きる程度に明確かつ十分に記載したものであるということはできず,実施可\n能要件を充足しない。\n
(5) 原告の主張について
これに対し,原告は,本件特許出願当時,慢性疼痛は,それが侵害受容性
疼痛,神経障害性疼痛又は心因性疼痛のいずれによるものであっても,末梢
や中枢の神経細胞の感作という神経の機能異常で生ずる痛覚過敏や接触異痛\nの痛みであるとの技術常識が存在したので,当業者は,本件明細書等の記載及
び同明細書等に記載された薬理試験から,本件化合物が同明細書等に記載さ
れた各種の痛みに有用であると認識することができたと主張する。
・・・・
(オ) 以上によれば,上記(ア)ないし(ウ)の各記載から,侵害受容性疼痛,神
経障害性疼痛等で出現する痛覚過敏と,脊髄のNMDA受容体の活性化
による中枢性感作との間に関連性があるといい得るとしても,本件特許
出願当時,本件明細書等に記載された侵害受容性疼痛(炎症性疼痛,術
後疼痛,転移癌に伴う骨関節炎の痛み,痛風,火傷痛等)や神経障害性
疼痛(三叉神経痛,急性疱疹性神経痛,糖尿病性神経障害,カウザルギ
ー等)により出現する痛覚過敏がすべて末梢や中枢の神経細胞の感作と
いう神経の機能異常により生じるとの技術常識が存在したとは認め難\nく,まして,これらの記載から,当業者が,薬理試験結果の記載もなく,
本件化合物が神経障害性疼痛の治療に有効であると認識し得たという
ことはできない。
・・・・
原告は,被告医薬品が構成要件3B及び4Bの文言を充足しない場合であっ\nても,均等侵害が成立すると主張する。
しかし,相手方が製造等をする製品(対象製品)が,特許請求の範囲に記載
された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属すると認められる\nためには,当該対象製品が特許請求の範囲に記載された構成と異なる部分が特\n許発明の本質的部分ではないことを要する(第1要件)。
本件発明3及び4と被告医薬品との相違部分は,その用途にあるところ,同
各発明は,既知の薬物である本件化合物が,侵害受容性疼痛の治療に有効であ
ることを新たに見出したことにあるので,その用途が同各発明の本質的部分を
構成することは明らかである。\nしたがって,被告医薬品は,第1要件を充足しないので,均等侵害は成立し
ない。
7 まとめ
以上によれば,訂正前発明1及び2に係る特許は,実施可能要件及びサポー\nト要件の各違反を理由に特許無効審判により無効にされるべきものであり,本
件訂正は訂正要件を具備せず,同訂正によっても上記各無効理由が解消されな
い。また,被告医薬品は,本件発明3及び4の技術的範囲に属しない。
◆判決本文
特許権は同じく、被告が異なる事件です。
◆令和2(ワ)19932
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2022.03.30
令和2(ワ)19931等 特許権侵害差止請求事件 特許権 民事訴訟 令和4年2月16日 東京地方裁判所
医薬用途発明の特許権侵害訴訟です。東京地裁(29部)は、本件発明1,2については実施可能要件・サポート要件違反の無効理由ありと判断しました。また、本件発明3,4について、均等侵害も否定しました。本件発明1,2は特許庁で訂正要件を満たさないと判断されており、審決取消訴訟に係属しています。本件発明3,4は特許庁で訂正が認められています。
いわゆる医薬用途発明においては,一般に,当業者にとって,物質名,
化学構造等が示されることのみによっては,当該用途の有用性及びそのた\nめの当該医薬の有効量を予測することは困難であり,当該発明に係る医薬\nを当該用途に使用することができないから,そのような発明において実施
可能要件を満たすためには,明細書の発明の詳細な説明に,薬理データの\n記載又はこれと同視し得る程度の記載をすることなどにより,当該用途の
有用性及びそのための当該医薬の有効量を裏付ける記載を要するものと解
するのが相当である。
本件発明1及び2の特許請求の範囲においては,本件化合物が「痛みの
処置における」(構成要件1B)「鎮痛剤」(構\成要件1C)及び「鎮痛
剤」(構成要件2C)として作用することが記載されているところ,いず\nれも本件化合物の鎮痛効果が認められる痛みは特定されていない。しかし,
本件明細書には,本件化合物について,「痛みの処置とくに慢性の疼痛性
障害の処置における使用方法である。このような障害にはそれらに限定さ
れるものではないが炎症性疼痛,術後疼痛,転移癌に伴う骨関節炎の痛み,
三叉神経痛,急性疱疹性および治療後神経痛,糖尿病性神経障害,カウザ
ルギー,上腕神経叢捻除,後頭部神経痛,反射交感神経ジストロフィー,
線維筋痛症,痛風,幻想肢痛,火傷痛ならびに他の形態の神経痛,神経障
害および特発性疼痛症候群が包含される。」(前記1(1)イ)と記載されて
いることに照らすと,本件発明1及び2は,本件化合物が少なくとも上記
各痛みに対して鎮痛効果を有することを内容とするものと解される。
したがって,本件発明1及び2について実施可能要件を満たすというた\nめには,本件明細書の発明の詳細な説明に,薬理データの記載又はこれと
同視し得る程度の記載をすることなどにより,上記各痛みに対して鎮痛効
果があること及びそのための当該医薬の有効量を裏付ける記載が必要であ
るというべきである。
・・・
前記(ア)の各文献の記載によれば,本件出願当時,術後疼痛試験は,ラ
ットの皮膚,筋膜及び足蹠の足底側面の筋肉を切開することにより,痛
覚過敏を引き起こし,これに対する薬剤の効果を確かめる試験であるこ
とが,技術常識であったと認められる。
そして,本件明細書には,「S−(+)−3−イソブチルギャバ」\n(弁論の全趣旨によれば,構成要件3Aを充足する本件化合物の一種で\nあると認められる。)が術後疼痛試験において有効であったことが記載
されており,さらに,「ラット足蹠筋肉の切開は熱痛覚過敏および接触
異痛を生じた。いずれの侵害受容反応も手術後1時間以内にピークに達
し,3日間維持された。実験期間中,動物はすべて良好な健康状態を維
持した。」(前記1(1)キ(キ)),「ここに掲げた結果はラット足蹠筋肉
の切開は少なくとも3時間続く熱痛覚過敏および接触異痛を誘発するこ
とを示している。本試験の主要な所見は,ギャバペンチンおよびS−
(+)−3−イソブチルギャバがいずれの侵害受容反応の遮断に対して\nも等しく有効なことである。」(同(コ))との記載がある。
以上によれば,本件出願当時,本件明細書の術後疼痛試験の結果に接
した当業者は,本件化合物について,侵害受容性疼痛としての熱痛覚過
敏及び接触異痛に対して有効であると理解し,その他の痛みに対して有
効であると理解することはなかったというべきである。
・・・
ア 被告医薬品が本件発明3の構成と均等なものであるかについて\n
(ア) 原告は,本件発明3は,慢性疼痛に対する画期的処方薬として,抗て
んかん作用を有するGABA類縁体を痛みの処置に用いることを見いだ
したものであり,その本質的部分は本件化合物を慢性疼痛の処置に用い
る点にあるから,対象となる痛みが侵害受容性疼痛か,神経障害性疼痛
や線維筋痛症かは本質的部分ではなく,効能・効果を神経障害性疼痛や\n線維筋痛症に伴う疼痛とし,慢性疼痛の処置に用いる鎮痛剤である被告
医薬品は,均等侵害の第1要件を満たすと主張する。
しかし,前記1(1)アのとおり,本件特許に係る発明は,てんかん,ハ
ンチントン舞踏病等の中枢性神経系疾患に対する抗発作療法等に有用な
薬物である本件化合物が,痛みの治療における鎮痛作用及び抗痛覚過敏
作用を有し,反復使用により耐性を生じず,モルヒネと交叉耐性がない
ことに着目した医薬用途発明であるところ,前記2(1)イのとおり,本件
出願当時,痛みには種々のものがあり,その原因や機序も様々であるこ
とが技術常識であった。
そうすると,いかなる痛みに対して鎮痛効果を有するかは,本件発明
3において本質的部分というべきであり,その鎮痛効果の対象を異にす
る被告医薬品は,本件発明3の本質的部分を備えているものと認めるこ
とはできない。したがって,本件発明3に係る特許請求の範囲に記載さ
れた構成中の被告医薬品と異なる部分が本件発明3の本質的部分でない\nということはできないから,被告医薬品は均等の第1要件を満たさない。
(イ) また,前記(1)アによれば,原告は,本件訂正前発明3においては鎮痛
の対象となる痛みを限定していなかったところ,本件訂正により「炎症
を原因とする痛み」及び「手術を原因とする痛み」に限定していること
からすると,本件発明3との関係においては,被告医薬品の効能・効果\nである神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛を意図的に除外したと
認めるのが相当である。
したがって,被告医薬品は均等の第5要件も満たさない。
(ウ) 以上によれば,被告医薬品は,本件発明3の特許請求の範囲に記載さ
れた構成と均等なものとは認められない。\n
イ 被告医薬品が本件発明4の構成と均等なものであるかについて\n
前記アと同様に,いかなる痛みに対して鎮痛効果を有するかは,本件発
明4の本質的部分というべきであり,被告医薬品は均等の第1要件を満た
さず,また,本件発明4との関係においては,被告医薬品の効能・効果で\nある神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛が意図的に除外されている
から,均等の第5要件も満たさない。
したがって,被告医薬品は,本件発明4の特許請求の範囲に記載された
構成と均等なものとは認められない。\n
◆判決本文
関連事件です。本件特許は同じですが、被告が異なります。なお、原告代理人はなぜか異なります。
◆令和2(ワ)19923等
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2022.02.14
令和2(ワ)19927 特許権侵害差止請求事件 特許権 民事訴訟 令和3年12月24日 東京地方裁判所
薬について技術的範囲に属しないと判断されました。均等侵害についても本質的要件を満たさないと判断されました。
原告は,本件発明3は,慢性疼痛に対する画期的処方薬として,抗て
んかん作用を有するGABA類縁体を痛みの処置に用いることを見いだ
したものであり,その本質的部分は本件化合物を慢性疼痛の処置に用い
る点にあるから,対象となる痛みが侵害受容性疼痛か,神経障害性疼痛
や線維筋痛症かは本質的部分ではなく,効能・効果を神経障害性疼痛や\n線維筋痛症に伴う疼痛とし,慢性疼痛の処置に用いる鎮痛剤である被告
医薬品は,均等侵害の第1要件を満たすと主張する。
しかし,前記1(1)アのとおり,本件特許に係る発明は,てんかん,ハ
ンチントン舞踏病等の中枢性神経系疾患に対する抗発作療法等に有用な
薬物である本件化合物が,痛みの治療における鎮痛作用及び抗痛覚過敏
作用を有し,反復使用により耐性を生じず,モルヒネと交叉耐性がない
ことに着目した医薬用途発明であるところ,前記2(1)イのとおり,本件
出願当時,痛みには種々のものがあり,その原因や機序も様々であるこ
とが技術常識であった。
そうすると,いかなる痛みに対して鎮痛効果を有するかは,本件発明
3において本質的部分というべきであり,その鎮痛効果の対象を異にす
る被告医薬品は,本件発明3の本質的部分を備えているものと認めるこ
とはできない。したがって,本件発明3に係る特許請求の範囲に記載さ
れた構成中の被告医薬品と異なる部分が本件発明3の本質的部分でない\nということはできないから,被告医薬品は均等の第1要件を満たさない。
(イ) また,前記(1)アによれば,原告は,本件訂正前発明3においては鎮痛
の対象となる痛みを限定していなかったところ,本件訂正により「炎症
を原因とする痛み」及び「手術を原因とする痛み」に限定していること
からすると,本件発明3との関係においては,被告医薬品の効能・効果\nである神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛を意図的に除外したと
認めるのが相当である。
したがって,被告医薬品は均等の第5要件も満たさない。
◆判決本文
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2021.11.30
令和3(ネ)10058 損害賠償等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 令和3年11月25日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
遠隔監視システムについて、均等侵害が第1要件を満たさないと判断した1審の判断が維持されました。
なお,事案に鑑み,念のため,被告製品の均等論の第1要件の充足につい
て判断する。
本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件明細書の開示事
項を総合すれば,本件発明1は,従来の遠隔監視システムでは,施設の侵入
者があったり,施設において異常が発生した場合に,当該施設の所有者や管
理責任者が一次的に当該侵入や異常発生を知ることができず,また,警備会
社からの二次的な通報により上記所有者や責任者が侵入や異常発生を知るこ
とは可能であるが,これらの者が外出している場合等には警備会社が通報を\nすることができないといった課題があり,こうした課題を解決するために,
構成要件1Bないし1Gの構\成を採用し,施設の監視対象領域を監視する監
視装置からのメッセージと監視装置によって得られた画像の情報が当該施設
の所有者や管理責任者に対応する顧客の携帯端末に通知又は伝達されること
により,顧客が何れの場所においても施設の異常等を適切に把握することが
できるとともに,監視装置から受理された画像の略中央部分の画像からなる
コンテンツを携帯端末に伝達することにより,表示装置が小さい携帯端末で\nも顧客により十分に認識可能\な画像を表示することができ,さらに,カメラ\nの「パンニング」を含む携帯端末からの遠隔操作命令により「パンニング」
に従った領域を特定し,その領域の画像を携帯端末に伝達するステップを備
え,顧客が参照したい領域を特定して携帯端末に提示することができるよう
にしたことにより,施設の所有者や管理責任者が外部からの侵入や異常の発
生を知り,その内容を確認することができるという効果を奏するようにした
ことに技術的意義があるものと認められる(【0004】ないし【0007】)。
このような技術的意義に鑑みると,本件発明1の本質的部分は,1)何れの
場所においても顧客が携帯し得るものとして,監視装置からの異常検出によ
って監視装置により撮影された画像データの伝達を受ける端末を「携帯端末」
とし,2)「携帯端末」に伝達する画像は,略中央部分の画像領域から構成さ\nれ,3)携帯端末からの「パンニング」を含む遠隔操作命令を受理し,その領
域の画像を携帯端末に伝達するステップを含むことにより,4)表示装置が小\nさい携帯端末でも,顧客により十分に認識可能\な画像を表示することができ,\nさらに,携帯端末からの遠隔操作命令により,顧客が参照したい領域を特定
して携帯端末に提示することができるようにした点にあるものと認められる。
すなわち,単にセンサの情報伝達の宛先を警備会社の中央コンピュータから
施設の所有者等の携帯端末に切り替えたことのみに重きがあるわけではなく,
何れの場所においても顧客にとって携帯が容易で,操作等が迅速かつ簡便で
あるためには表示装置が小さい端末とならざるを得ない面があるところ,そ\nうであっても,外部からの侵入や異常の発生を知り,その内容を確認するこ
とが十分に可能\な構成を有することが本件発明1の本質的部分であるという\nべきである。なお,本件発明2及び3は本件発明1(請求項1)の従属項で
あり,また,本件発明5は,本件発明1の遠隔監視方法の発明を監視制御サ
ーバに関する発明としたものであるから,これらの発明の本質的部分もこれ
に同様である。
これに対し,被告製品は,監視装置からの異常検出によって監視装置によ
り撮影された画像データを伝達する端末は,携帯電話のような表示装置が小\nさい端末ではなく,また,端末からの遠隔操作命令により受理された画像の
うち他の領域の画像を参照すること示す命令である「パンニング」を含む遠
隔操作命令を受理し,その領域の画像を携帯端末に伝達するステップを含ま
ないため,顧客が何れの場所においても施設の異常等を適切に把握すること
ができ,表示装置が小さい「携帯端末」でも顧客は十\分に認識可能な画像を\n表示することができ,顧客が参照したい領域を特定して「携帯端末」に提示\nすることができるようにしたことにより,施設の所有者や管理責任者が外部
からの侵入や異常の発生を知り,その内容を確認することができるという本
件各発明の効果を奏するものと認めることはできない。
したがって,被告製品は, 本件各発明の本質的部分を備えているものと認
めることはできず,被告製品の相違部分は,本件各発明の本質的部分でない
ということはできないから,均等論の第1要件を充足しない。
よって,その余の点について判断するまでもなく,被告製品は,本件各発
明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとは認められない。\n
◆判決本文
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◆令和1(ワ)21597
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2021.10.18
令和3(ネ)10040 差止請求権不存在確認請求控訴事件 特許権 民事訴訟 令和3年10月14日 知的財産高等裁判所 大阪地方裁判所
CS関連発明について、均等侵害を認めた大阪地裁の判断を知財高裁も支持しました。
控訴人は,前記第2の3(2)エ(ア)のとおり,本件特許の出願過程の経
緯から客観的,外形的に見るならば,物又は方法の発明として特許出願
している被控訴人が,その補正として「逐次又は一斉に表示」という構\
成を削除したのであるから,画像選択手段を含むコンピューターにより
出力されるという構成においても「逐次又は一斉に表\示」という構成を\n意識的に除外したと主張する。
しかし,当該出願経過によれば,被控訴人は,明確性要件違反の拒絶
理由(甲8)に対し,本件補正により,コンピューターを構成に含む学\n習用具と記載し,また,被控訴人が甲第10号証と併せて提出した意見
書(甲9)3頁の「(4)記載不備の拒絶への対処」では「作業の主体を
「手段」とし,人が行う作業を示す部分を削除致しました。」としている
のであり,他の部分も削除したことを外形的に示す説明はない。
また,「一の組画の画像データを選択する画像選択手段」との構成を付\n加した点について,客観的には,組画を構成する複数の画のうち任意の\n1つの画像データ(ユニット画)を選択すること(例えば第一の関連画
のみを選択すること)が意識的に除外されているとはいい得るとしても,
二以上の組画の画像データを選択することが意識的に除外されたとは
いえない。また,「逐次」の文言が用いられている本件明細書【0037】,
【0038】及び【0052】 において,「逐次」及び「一斉」の両方
が用いられているのは特定の組画を構成するユニット画について記載\nしている【0038】に「特定の組画を構成するユニット画は,全て一\n斉に表示してもよいが,前述のように逐次表\示するほうが,学習効果が
増して好ましい。」とあるのみであるから,本件補正前の「それぞれの前
記記憶対象に対応する前記組画を逐次又は一斉に表示して前記記憶対\n象を記憶する」との記載は,特定の組画を構成するユニット画を逐次又\nは一斉に表示することを指していると解するべきであり,「逐次又は一\n斉に表示」という構\成を削除したからといって,複数の組画を選択する
構成を除外する意図であったと認めることはできない。\n
さらに,被控訴人が,上記意見書で進歩性に関して主張したところは,
本件発明が,1)対応する語句が存在する原画の形態を,その形態に対応
する語句と結びつけて記憶することを目的すること,2)関連画の輪郭が,
原画に類似等しており,一定の意味内容を有することから,学習対象者
が,意味内容と原画との関連付けにより,記憶することに苦痛を感じる
ことなく楽しみを感じながら,原画を記憶することができること,3)関
連画及び原画に対応する語句の音声データを再生し,関連画及び原画の
表示は対応する語句の再生と同期して行うこと,4)原画又は原画に対応
する語句を思い出すことを目的とするため,関連画の表示及び関連画に\n対応する語句の再生を行った後に,原画の表示及び原画に対応する語句\nの再生を行うこと,5)第一の関連画,第二の関連画,及び原画の順に表\n示し,しかも,前記第一の関連画,前記第二の関連画,及び前記原画を,
対応する語句の再生と同期して表示することにより,4通りのルートに\nよって原画及び対応する語句を思い出すことができることを挙げるもの
であるが(甲9),これらの特徴は,複数の組画を選択する構成と矛盾す\nるものではなく,これを意識的に除外する旨を表示したものとはいえな\nい。
(イ) 控訴人は,前記第2の3(2)エ(イ)のとおり,被控訴人が補正において,
構成要件B2の画像選択手段の構\成を加えた点について,複数の組画を
選択する構成を除外しない意図であるならば「一又は複数の組画」や単\nに「組画」等といった記載にすることは極めて容易であり,本件特許の
出願経過を客観的,外形的に見るならば,「一の組画の画像データを選択
する画像選択手段」を付加したことは,複数の組画を選択する構成を意\n識的に除外したことになると主張する。
しかし,仮に,他により容易な記載方法があったとしても,出願人が,
補正時に,これを特許請求の範囲に記載しなかったからといって,それ
だけでは,第三者に,対象製品等が特許請求の範囲から除外されるとの
信頼を生じさせるとはいえない。客観的にみて,「一の組画の画像データ
を選択する」との記載が,組画を構成する画が維持された状態で選択す\nる限りにおいては,二以上の組画の画像データを選択することを意識的
に除外するものとまでは認められないことは,前記(ア)のとおりである。
◆判決本文
1審はこちらです。
◆大阪地判 平成31年(ワ)第3273号)
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2021.06. 6
令和2(ワ)2956 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 令和3年5月20日 大阪地方裁判所
均等侵害も第1要件を満たさないとして特許権侵害とはならないと判断されました。
本件各発明に係る特許請求の範囲及び本件訂正明細書の各記載によれば,本件各
発明の本質的部分については,以下のとおりと認められる。
すなわち,従来,硬貨の表面に描かれた模様は,硬貨を製造するプレス機に設置\nされるプレス金型に予め彫り込まれ,硬貨をプレス及び打ち抜きする際,硬貨の表\
面に金型の凹凸が反転して表現されていたところ,プレス金型に対して硬貨の表\面
に浮き出る部分は,平面彫刻機で彫り込んで行われていた。しかし,平面彫刻機の
ように厚み方向のみ切削する切削工具では,切削した部分及び切削を行わなかった
部分は平面仕上げであり,金属の地肌のままの色合いであるため,放電加工機で不
規則かつ微細に地金を削り取りいわゆるナシ地仕上げを行ったり,切削した部分を
細かく研磨して鏡面仕上げを行ったりし,また,立体彫刻機で人物や動物等立体的
な図形を彫り込み,得られた硬貨の表面の凸部に人物等を立体的に表\現して,硬貨
の装飾効果を高めていた。しかし,これらの方法によっても,図形等の部分を除い
た硬貨の地模様に対応する部分は,平面仕上げ,鏡面仕上げ,ナシ地仕上げのいず
れかであり変化に乏しく,また,メダル遊戯機で使用される硬貨は,コスト等の兼
ね合いがあり,高価な金属の使用が難しく,表面の輝きが鈍いものが多いという課\n題があった。本件各発明は,こうした課題に対し,硬貨の表面の地模様に立体彫り\nによる変化を起こし,硬貨の輝きを増し,硬貨の装飾価値等を高めることを目的と
するものである。具体的には,本件発明1は,切削深さを任意に変えられる同時三
軸制御 NC フライス機を,硬貨表面に描かれる人物や動植物等の図形に用いるので\nはなく,金型の表面に対して一定パターンで切削を繰り返すことにより硬貨の地金\n部分に立体的な幾何学的模様からなる新たな地模様を描き出し,硬貨の装飾価値を
高めるものである。本件発明2は,本件発明1と同様の方法で硬貨の地模様を描き
出すことに加え,同じく同時三軸制御 NC フライス機により地模様以外の模様に対
応する部分をV溝状に切削することで,当該模様部分の表面積の増加等により硬貨\nの表面の輝きを増加させ,硬貨の装飾価値等を高めるものである。\n以上を踏まえると,本件各発明に係る特許請求の範囲の記載のうち,少なくとも
「金型の厚み方向へ切削可能な」切削工具「を用い,金型に対して一定のパターン\nで切削深さと,水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら金型表面上を移動\nさせ,傾斜面を含む特定のパターンを金型上に描き,これを金型表面全体に繰り返\nすことにより繰り返し模様からなる地模様を形成すること」は,従来技術には見ら
れない特有の技術的思想を有する本件各発明の特徴的部分すなわち本質的部分であ
るといえる。さらに,本件発明2においては,これに加え,上記工具「により硬貨
の表面に浮き出る文字,図形等の模様に対応する部分をV溝状に切削すること」も,\n特徴的部分すなわち本質的部分ということができる。
(3) 前記のとおり,本件各発明における「金型」(構成要件B,C,E及びF)は\nプレス金型を意味し,また,被告製造方法の構成については当事者間に争いがある\nものの,被告製造方法が原金型に関する工程とプレス金型に関する工程という2つ
の工程を含むこと,被告機械を用いて原金型の表面に地模様及び地模様以外の模様\nに対応する部分を切削加工により作製することは,当事者間に争いがない。これを
踏まえると,本件各発明においては,プレス金型の厚み方向へ切削可能な切削工具\nを用い,プレス金型に対して一定のパターンで切削深さと,水平面に対するプレス
金型の切削角度と,を変えながらプレス金型表面全体に繰り返すことにより繰り返\nし模様からなる地模様を形成し,本件発明2においては,これに加えて,上記工具
により硬貨の表面に浮き出る地模様以外の模様に対応する部分をV溝上に切削して\nプレス金型を得るのに対し,被告製造方法においては,被告機械を用いて原金型の
表面に地模様及び地模様以外の模様に対応する部分を切削加工により作製し,こう\nして得られた原金型から(特定されない加工方法(被告方法1)又は放電加工(被
告方法2)により)プレス金型を得る点で相違する。そうすると,被告製造方法は,
本件各発明の本質的部分を共通に備えているとはいえない。
したがって,本件各発明と被告製造方法の相違部分は,本件各発明の本質的部分
に当たる。
(4) 原告らの主張について
これに対し,原告らは,本件各発明の本質的部分は,金型に対して一定のパター
ンで切削の深さと,水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら金型表面上を\n移動させ,傾斜面を含む特定のパターンを金型上に描くことと,地模様以外の模様
に対応する部分をV溝状に切削することであり,原金型とプレス金型の2つの金型
を用いるか否かは本件各発明の本質的部分ではないなどと主張する。
しかし,前記のとおり,原金型からプレス金型に対する転写等の工程につき,そ
の構成を特定しなくても,本件各発明の作用効果を奏し得るものが行われることが\n当業者にとって技術常識であるとは認められないことをも踏まえると,金型につき
原金型とプレス金型の2つを用いるか否かは,本件各発明の本質的部分に係る相違
部分というべきである。
したがって,この点に関する原告らの主張は採用できない。
◆判決本文
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2021.02.19
令和2(ネ)10036 特許権侵害損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟 令和3年1月18日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
JR東海に対するCS関連発明の侵害事件です。1審では第1要件、第2要件を満たさないとして、均等侵害は否定されました。知財高裁(2部)も同じ判断です。
(1) 控訴人は,原判決は,特許法70条1項,2項等に反し,本件特許請求の
範囲に記載のある「問題のある実施例」を本件各発明の実施例とせず,「最善の実施
例」のみを本件各発明であるとした点に誤りがある旨主張する。
ア 本件特許請求の範囲の【請求項1】には,「ホストコンピュータが,前記
券情報と前記発券情報とを入力する入力手段と,該入力手段によって入力された前
記券情報と前記発券情報とに基づき,かつ,前記座席管理地に設置される指定座席
のレイアウトに基づいて表示する座席表\示情報を作成する作成手段と,該作成手段
によって作成された前記座席表示情報を記憶する記憶手段と,該記憶手段によって\n記憶された前記座席表示情報を伝送する伝送手段と,」と記載されており,「券情報」\nと「発券情報」とを統合して「座席表示情報」を作成し,これを記憶手段に記憶さ\nせることが記載されていると認められるから,控訴人の主張する「最善の実施例」
が本件特許請求の範囲に記載されていると認められ,控訴人の主張する「問題のあ
る実施例」が本件特許請求の範囲に記載されていると認めることはできない。
また,本件特許請求の範囲の【請求項2】には,「ホストコンピュータが,前記券
情報と前記発券情報とを入力する手段と,該入力手段によって入力された前記券情
報と前記発券情報とを,複数の前記座席管理地又は前記端末機を識別する座席管理
地識別情報又は端末機識別情報別に集計する集計手段と,該集計手段によって集計
された前記券情報と前記発券情報とに基づき,かつ,前記座席管理地に設置される
指定座席のレイアウトに基づいて表示する座席表\示情報を作成する作成手段と,該
作成手段によって作成された前記座席表示情報を記憶する記憶手段と,該記憶手段\nによって記憶された前記座席表示情報を伝送する伝送手段と,」と記載されており,\n「券情報」と「発券情報」とを統合して「座席表示情報」を作成し,これを記憶手\n段に記憶させることが記載されていると認められるから,控訴人の主張する「最善
の実施例」が本件特許請求の範囲に記載されていると認められ,控訴人の主張する
「問題のある実施例」が本件特許請求の範囲に記載されていると認めることはでき
ない。
イ 上記のことは,本件明細書(甲2)の記載からも明らかである。
本件明細書の「発明の詳細な説明」は,補正して引用した原判決「事実及び理由」
の第3,1(1)のとおりであり,段落【0002】には,【従来の技術】として,「従
来,指定座席を管理する座席管理システムとしては,カードリーダで読取られた座
席指定券の券情報及び券売機等で発券された座席指定券の発券(座席予約)情報等\nを,例えば列車車内において,端末機(コンピュータ)で受けて記憶し表示して,\n指定座席の利用状況を車掌が目視できるようにして車内検札を自動化する座席指定
席利用状況監視装置(特公H5−47880号公報)が発明されている。」との記載
があり,段落【0004】において,「券情報」及び「発券情報」を地上の管理セン
ターから受ける場合について,「伝送される情報は2種になるために通信回線の負
担を1種の場合と比べて2倍にするなどの問題がある。」ことが記載されている。
そして,本件明細書の段落【0005】には,【発明が解決しようとする課題】と
して,「上記発明の座席指定席利用状況監視装置は上記券情報と上記発券情報とに
基づいて各座席指定席の利用状況を表示するにはこれ等の両情報を地上の管理セン\nターから受ける場合,伝送される情報量が2倍になるために,該情報を伝送する通
信回線の負担を2倍にするとともに端末機の記憶容量と処理速度をともに2倍にす
るなどの点にある。」として,控訴人の主張する「問題のある実施例」の問題点が指
摘されており,段落【0006】には,【課題を解決するための手段】として「本発
明は,上記管理センターに備えられるホストコンピュータが,カードリーダで読取
られた座席指定券の券情報と券売機等で発券された座席指定券の発券情報とを入力
して,これ等の両情報に基づいて表示する座席表\示情報を作成して,作成された前
記座席表示情報を,前記ホストコンピュータと通信回線で結ばれて,指定座席を設\n置管理する座席管理地に備えられる端末機へ伝送して,該端末機が,前記座席表示\n情報を入力して表示してするように構\成したことを主要な特徴とする。」と記載さ
れており,段落【0007】に,【作用】として,「上記ホストコンピュータから上
記端末機へ伝送される情報量が上記券情報と上記発券情報との両表示情報から1つ\nの表示情報となる上記座席表\示情報にすることで半減され,これによって通信回線
の負担と端末機の記憶容量と処理速度とを半減する。」と記載され,段落【0008】
〜【0019】に,【実施例】として,控訴人が主張する「最善の実施例」(「座席表\n示情報」は,券情報と発券情報という二つの情報を一つに統合した実施例)が記載
されていることが認められる。さらに,段落【0020】に,【発明の効果】として,
「該端末機がする各指定座席の利用状況の表示を前記券情報と前記発券情報との両\n表示情報から1つの表\示情報となる前記座席表示情報で実現できるようになり,こ\nれによって前記ホストコンピュータから前記端末機へ伝送する情報量が半減され,
通信回線の負担と端末機の記憶容量と処理速度等を軽減するとともに,端末機のコ
ストダウンが計られて,本発明のシステムの構築を容易にする。」と記載されている\nことが認められる。
これらの本件明細書の記載によると,本件各発明は,指定座席を管理する座席管
理システムに関して,地上の管理センターから券情報と発券情報の両情報を端末機
で受ける場合,伝送される情報が2種になることから,伝送される情報が1種の場
合と比べて,通信回線の負担が2倍となり,端末機の記憶容量と処理速度を2倍に
するなどの技術的課題があることに鑑み,地上の管理センターに備えられるコンピ
ュータが,カードリーダで読み取られた券情報と,券売機等で読み取られた発券情
報等を入力して,これらの情報から一つの座席表示情報を作成し,作成された座席\n表示情報を,コンピュータと通信回線で結ばれて,指定座席を設置管理する座席管\n理地に備えられた端末機に伝送して,端末機が座席レイアウトに基づき各指定座席
の利用状況を表示するという構\成を採用したものであって,この点に,本件各発明
の技術的意義があると認められる。
このような本件明細書の記載によると,控訴人の主張する「問題のある実施例」
は,本件各発明が解決すべき課題を示したものであり,その課題を解決したのが本
件各発明であるから,これが本件各発明の実施例であると認めることはできない。
・・・
また,控訴人は,被控訴人は,被告システム1の「OD情報」,「改札通過情報」
が,それぞれ,本件明細書の図2の「発券情報」,「券情報」に,被告システム1の
「マルスサーバ」及び「セキュリティサーバ」が,「地上の管理センター」に該当す
ることを認めているから,被告システム1は,本件明細書の図2の構成を備えるも\nのであり,本件特許権を侵害するものであると主張するが,本件明細書の図2は,
控訴人の主張する「問題のある実施例」に関するものであり,被告システム1が,
上記図2の構成を備えるからといって,本件各発明の構\成を備えるということには
ならない。
原判決(15頁〜24頁)が判示するとおり,被告システム 1 は,本件発明 1 の構\n成要件1−B及び1−C並びに本件発明2の構成要件2−B及び2−Cの文言を充\n足せず,被告システム2は,本件発明1の構成要件1−A,1−B及び1−C並び\nに本件発明2の構成要件2―\A,2−B及び2−Cの文言を充足しないから,被告
各システムが本件各発明の技術的範囲に属するものとは認められない。
(4) 控訴人は,被告システム1と本件各発明との間の本件相違点(被告システ
ム1は,本件各発明における,ホストコンピュータにおいて券情報と発券情報から
一つの「座席表示情報」を作成し,これを,指定座席を設置管理する座席管理地に\n備えられる端末機に伝送し,端末機において「座席表示情報」を表\示するという構\n成を有していないこと)は,本件各発明の本質的部分ではないと主張するが,控訴
人のこの主張を採用することができないことは,原判決(25頁〜26頁)が判示
するとおりである。
本件相違点は,本件各発明の本質的部分に係るものであるから,被告システム1
は,均等の第1要件を充足しない。
◆判決本文
1審はこちら。
◆平成30(ワ)31428
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2020.08.17
平成30(ワ)31428 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 令和2年6月30日 東京地方裁判所
JR東海に対する侵害事件です。原告は「座席管理システム」(3995133号)の均等侵害を主張しましたが、第1要件、第2要件を満たさないとして、否定されました。
(3)ア
第1要件にいう特許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請
求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する\n特徴的部分であり,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて,特許発明
の課題及び解決手段とその効果を把握した上で,特許発明の特許請求の範囲
の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部\n分が何であるかを確定することによって認定される(知的財産高等裁判所平
成27年(ネ)第10014号同28年3月25日判決)。
ここで,本件明細書をみると,従来の技術においては,券情報と発券情報
の2つの情報をそれぞれ端末機に対して伝送していたため情報量が2倍に
なり通信回線の負担が2倍になっていた。本件発明は,このような従来の技
術と異なり,「ホストコンピュータ」において,券情報と発券情報という2つ
の情報に基づいて1つの座席表示情報を作成するものであり,それによって,\n端末機へ伝送される情報量が半減されて通信回線の負担が軽減されるとい
う効果を奏するものである(【0002】〜【0007】,【0020】)。
このような本件明細書の発明の詳細な説明の記載に照らせば,本件発明に
おいて,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であ\nる本質的部分は,「ホストコンピュータ」が券情報と発券情報との2つの情
報に基づいて1つの「座席表示情報」を作成する作成手段を有し,そのよう\nにして作成された「座席表示情報」が「ホストコンピュータ」から端末機に\n伝送される点にあるといえる。
被告システムにおいては,券情報と発券情報との2つの情報に基づいて1
つの情報が作成されるサーバーはなく,したがって,それらの2つの情報に
基づいて作成された1つの情報を端末機に伝送するサーバーもない。そうす
ると,本件発明の本質的部分において,本件発明の構成と被告システムの構\
成は異なる。したがって,被告システムが均等侵害の第1要件を充足するこ
とはない。
また,被告システムは,端末機に対して券情報と発券情報という2つの情
報に基づいて作成された1つの情報が伝送されるものではないから,券情報
と発券情報がそれぞれ端末機に伝送されるシステムに比べて通信回線の負
担と端末機の記憶容量及び処理速度を半減するものではない。したがって,
本件発明と同一の作用効果を奏するものではなく,第2要件を満たさない。
イ 原告は,第1要件について,本件発明の特許請求の範囲に記載された構成\nと被告システムの構成の異なる部分は,サーバーと通信回線の個数に関する\n相違であって,本件発明の本質的部分に関係するものとはいえない旨主張す
る。
しかし,上記アのとおり,券情報と発券情報とに基づく情報が作成され,
そのようにして作成された情報が伝送されるサーバーがあることは,均等侵
害の第1要件にいう本件発明の本質的部分であるといえ,被告システムは,
その本質的部分において,本件発明と異なる。
また,原告は,本件発明の作用効果は,車掌が携帯する端末機に表示され\nる各指定座席の利用状況(自動改札通過情報及び発売実績情報の有無)を車
掌が目視で確認できるようにして,車内改札を本来空席であるはずの座席に
座っている乗客に対して従来のように切符の提示を求めるだけで足りるよ
うにしたものであり,これにより車内改札の省略化を図るというものであり,
被告システムの作用効果と同じである旨主張する。
しかし,前記3(1)のとおり,本件明細書の記載に照らせば,従来技術と比較した本件発明の効果は,券情報と発券情報がそれぞれ端末機に伝送されるシステムに比べて通信回
線の負担と端末機の記憶容量及び処理速度を半減するところにある。したが
って,被告システムが本件発明と同じ作用効果を有するとはいえない。
(4)上記(3)のとおり,被告システムは,少なくとも均等侵害の第1要件,第2要
件を充足せず,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして本件発明\nの技術的範囲に属するものであるということはできない。
◆判決本文
本件特許の訂正審判についての審決取消訴訟事件です。
◆平成28(行ケ)10069
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2020.08.14
令和1(ネ)10059 特許権 民事訴訟 令和2年3月18日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
原審は、文言侵害不成立および、第1要件満たさないとして均等侵害を否定しました。知財高裁(3部)も同様の判断です。ただ、本質的部分について、引用発明と対比して判断しています。
「ア 均等侵害が成立するための第1要件にいう本質的部分とは,当該特許発
明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成\nする特徴的部分であり,このような特許発明の本質的部分を対象製品等が共通に備
えていると認められる場合には,相違部分は本質的部分ではないと解される。
そして,上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて,特
許発明の課題及び解決手段とその効果を把握した上で,特許発明の特許請求の範囲
の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何\nであるかを確定することによって認定されるべきである。
ただし,明細書に従来技術が解決できなかった課題として記載されているとこ
ろが,出願時の従来技術に照らして客観的に不十分な場合には,明細書に記載され\nていない従来技術も参酌して,当該特許発明の従来技術に見られない特有の技術的
思想を構成する特徴的部分が認定されるべきである。\n
イ 本件特許出願の審査において,特許庁は,本件各発明は,平成15年 8 月
22日に公開された特開2003−234608号公報(甲30。以下「引用文献
1」という。)等の文献に基づき,当業者が容易に発明し得た旨の拒絶理由通知書
を送付した(乙6)ことから,引用文献1に記載された技術について検討する。
・・・
まず,引用発明1と比較して,本件発明1の本質的部分を検討する。
(ア) 本件発明1の内容は,前記1(2)で判示したとおりであり,その技術
的思想を構成する部分は,仮固定用ホルダの構\成を,可撓性樹脂で成形し,前記給
電用筒状部の外壁面に沿って下方に延びる複数のメインアーム部と,同メインアー
ム部に対して下端部にて繋がったサブアーム部とを有し,同サブアーム部の下端部
は,同サブアーム部が外側に拡がるための支点となり,同サブアーム部の上端部は
前記メインアーム部の外側面よりも外方向に突出した係止爪をなし,かつ同係止爪
は上端に向かって肉厚が増加しているものとし,同構成を採用することにより,ア\nンテナ挿入時には,メインアーム部及びサブアーム部の両部材が内側に動くため,
より小さい挿入力で取付孔への挿入が可能となり,また,抜け方向に荷重が加わっ\nたときは,車体パネルの内側面に係止爪の上端が当接し,サブアーム部が外側に拡
がるため,抜け力を増大させることができ,仮固定用ホルダの挿入力は小さいまま
で,抜け力を大きくすることを可能としたことである。\n一方,本件特許の出願前に公開された引用文献1に記載された引用発明1の内容
は,前記イ(イ)で判示したとおり,固定板付き基板ブラケット9の構成を,円筒状\n突出部の外周面に沿って下方に伸びる複数の側板4を有し,側板4にコ字状の切溝
4eを設け,切溝4eに囲まれた矩形状のバネ片4aの上端が側板4から外側に向
かって離れるものとしたものであり,このうち,側板4は本件発明1のメインアー
ム部に,バネ片4aは本件発明1のサブアーム部にそれぞれ相当するものであり,
アンテナの挿入時には,側板4及びバネ片4aが内側に撓み,抜け方向に荷重が加
わったときは,ルーフパネル20にバネ片4aの上端部が当接し,バネ片4aが外
側に撓んで仮止めすることになると認められる。
(イ) そこで,本件発明1のうち,引用発明1に見られない特有の技術的思
想を構成する特徴的部分を検討すると,引用発明1は,抜け方向に荷重が加わった\nときに,サブアーム部に相当するバネ片4a全体が撓むため,十分な抜け力を確保\nできなかったことから,本件発明1は,仮固定用ホルダを可撓性樹脂で成形し,サ
ブアーム部の上端部は上端に向かって肉厚が増加する係止爪からなるものとするこ
とにより,抜け方向に荷重が加わったときに,サブアーム部の下端部を回転の支点
として,サブアーム部が外側に拡がるようにし,同下端部でサブアーム部の回転を
受け止めることにより,抜け力を増加させたものと認められる。そして,本件発明
1が,サブアーム部の上端部は上端に向かって肉厚が増加する係止爪からなるもの
としたのは,上記のとおりサブアーム部の強度を増すためであると認められる。
以上からすると,本件発明1のうち,引用発明1に見られない特有の技術的思想
を構成する特徴的部分とは,可撓性樹脂で成形されたサブアーム部の上端部は上端\nに向かって肉厚が増加する係止爪からなるものとし,これにより,抜け方向に荷重
が加わったときに,サブアーム部は,下端部を支点として回転するように外側に拡
がり,下端部において,サブアーム部の上記回転を受け止めて,抜けを防止すると
いう部分であると認められる。そして,この部分が本件発明1の本質的部分に当た
ることになる。
(ウ) 控訴人は,本件発明6の本質的部分は,「アンテナに抜け方向の荷重
が加わった際に,下端部を支点とした外向きの回転力がサブアーム部に発生するこ
とにより,サブアーム部が内側に向かって変位することが防止されるため,サブ
アーム部に設けられた係止爪が車体パネルから外れて抜けてしまう(すっぽ抜ける)
ことがない」という構成にあると主張する。\nしかし,控訴人が主張する上記の構成は,引用発明1にも見られるから,同構\成
が本件発明1や本件発明6の本質的部分ということはできない。
エ 次に,被控訴人製品が,前記ウで認定した本件発明1の本質的部分を共
通に備えているかについて検討する。
被控訴人製品においては,サブアーム部は,可撓性樹脂で成形されており,車体
パネルに係止するための爪部を備えるが,同爪部は,サブアーム部の中間付近に位
置している(乙1,2,13)ため,その上部のサブアーム部であるフック部が,
抜け方向に荷重が加わったときに,サブアーム部がその下端部を支点として外側に
拡がることを阻止し,そのため,サブアーム部は,その下端部を回転の支点として
外側に拡がることはなく,したがって,同下端部で,サブアーム部の回転を受け止
めることによって抜け力を増大させるものではない。
そうすると,被控訴人製品は,本件発明1の本質的部分を備えているとは認めら
れない。
オ 控訴人は,被控訴人製品において,抜け方向の荷重が加わると,サブ
アーム部の下端部を支点とした外向きの回転力が発生することにより,サブアーム
部に設けられた爪部が内向きに変位して車体パネルから外れるという事象が防止さ
れているから,被控訴人製品は,本件発明6の本質的部分を備えていると主張する。
しかし,前記エのとおり,被控訴人製品においては,抜け方向の荷重が加わり,
サブアーム部が外側に拡がろうとしても,同動きはフック部によって阻止されるた
め,サブアーム部は,その下端部を回転の支点として外側に拡がることはないから,
被控訴人製品は,本件発明1や本件発明6の本質的部分を備えておらず,控訴人の
上記主張は理由がない。
カ したがって,本件発明1と被控訴人製品との前記の相違点は,本件発明
の本質的部分ではないということはできないから,被控訴人製品は,均等の第1要
件を充足しない。」
◆判決本文
原審はこちらです。
◆平成30(ワ)13400
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2020.07.13
令和1(ネ)10063 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 令和2年6月18日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
知財高裁でも本質的要件(第1要件)が欠落しているので、均等侵害は否定されました。
当裁判所も,電子メールに設定された複数の電子メールアドレスを個々の
電子メールアドレスに分割し,記憶手段に記憶されている制御ルール等に従
って,電子メールの送出に係る制御内容を決定し,決定された制御内容に従
って電子メールの送信制御を行うとの構成は,本件発明1における本質的部分に該当し,同様に,複数の送信先が設定された電子メールから電子メール\nアドレス単位で個別メールを生成することは,本件発明2における本質的部
分に該当するところ,被告装置はドメインごとに分割するものであるため,
かかる構成を有さず,均等の第1要件を充足しないと判断する。その理由は,後記(2)のとおり控訴人の当審における補充主張に対する判
断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」第4の3及び6(原判決72
頁20行目から74頁25行目まで,77頁25行目から78頁13行目)
記載のとおりであるから,これを引用する。
(2) 当審における補充主張に対する判断
ア 控訴人は,本件発明1において,複数の送信先を分割する単位が,
個々の電子メールアドレス単位であることは,本件発明1の課題の解決
をするのにあたり不可欠ではなく,「メッセージ単位」より小さい単位
でかつ,制御ルールに従って送出を制御し得る単位で,複数の送信先を
個々に分割した上で,分割した電子メールの送出に係る制御内容を決定
及び送信制御を行い,上記単位に応じた電子メールの送出制御を行うこ
とが,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的な部分であると主張する。\nしかし,本件明細書等1には,「特許文献1に記載の技術においては,
送信メール保留装置は受信したメッセージ単位でしか保留の可否を判断
することができない。そのため,複数の送信先が記載された電子メール
に対しては,誤送信の可能性がある送信先が1つでも含まれていれば,その他の送信先に対するメール送信までもが保留,取り消しがされるこ\nととなる。」(段落【0004】),「本発明は上述の問題点に鑑みなさ
れたものであり,ユーザによる電子メールの誤送信を低減可能とすると共に,宛先に応じた電子メールの送出制御を行うことにより効率よく電\n子メールを送出させる仕組みを提供することを目的とする。」(段落
【0005】)と記載されている。
「送信先」及び「宛先」はいずれも電子メールアドレスを意味するこ
とは前記1のとおりであるから,これらの記載によれば,本件発明1は,
誤送信の可能性がある電子メールアドレスが1つでも含まれていれば,その他の電子メールアドレスに対するメール送信までもが保留,取消し\nされることとなることを課題として認識し,その課題に鑑みて,電子メ
ールアドレスに応じた電子メールの送出制御を行うことにより効率よく
電子メールを送出させる仕組みを提供することを目的とするものと解さ
れる。
このように,本件明細書等1には,誤送信の可能性がないその他の電子メールアドレスに対するメール送信までもが保留,取消しされてしま\nうという従来技術である特許文献1の課題に対し,電子メールアドレス
に応じた電子メールの送出制御を行うことによって課題を解決しようと
することが記載されているのであるから,そのために必須の構成である電子メールに設定された複数の送信先を電子メールアドレスごとに分割\nする構成が,本件発明1の本質的部分に含まれないとはいえない。
イ 控訴人は,本件発明1の課題は,従来技術では,本来保留される必要の
ない「その他の電子メールアドレス」に対するメール送信が全て保留さ
れてしまうことであって,それに比べれば,ドメインに応じた送出制御
を行った場合であっても,少なくとも一部の電子メールアドレスに対す
る電子メールの送信が保留されない場合,「電子メールアドレスに応じ
た電子メールの送出制御を行うことにより効率よく電子メールを送出さ
せる」効果を得ることができる旨主張する。
しかし,前記1(3)ウ(イ)のとおり,「誤送信の可能性がある送信先が1つでも含まれていれば,その他の送信先に対するメール送信までもが\n保留,取り消しがされることとなる。」(段落【0004】(1))とは,
本来保留される必要のないその他の送信先(すなわち電子メールアドレ
ス)に対するメール送信は全てなされるべきであるとの趣旨と解するの
が自然である。
また,前記アのとおり,「効率よく電子メールを送出させる」ことは,
電子メールアドレスに応じた電子メールの送出制御によってもたらされ
るものとされている。電子メールアドレスに応じた電子メールの送出制
御によれば,保留の必要がないその他の電子メールアドレスに対する送
信は全てなされるのであるから,本件発明の効果も同様と解すべきであ
って,保留の必要がないその他の電子メールアドレスのうちの一部の電
子メールアドレスに対する電子メールの送信が保留されなくなることで
は足りないというべきである。
ウ 控訴人は,文言侵害が否定された場合に,本件明細書等1の課題に記載
された「送信先」を「電子メールアドレス」と読み替えて,課題を認定
し,当該課題から直接的に本質的部分を認定することは,均等侵害の成
否の場面において,文言侵害が否定されることを理由に,均等侵害の成
立が直ちに否定され,均等侵害がその機能を果たさない結果となることから,かかる結果が著しく妥当性を欠く旨主張する。\nしかし,本質的部分の認定は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基
づいて,特許発明の課題及び解決手段とその効果を把握した上で,特許
発明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術
的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定することによって認定されるべきである(大合議判決)。よって,本件明細書等1の記載に基\nづいて,本件発明1が,従来技術である特許文献1のどのような点を課
題として把握し,どのような解決手段を提示し,どのような効果をもた
らすものなのかを把握することは,当然なされるべきことであるから,
控訴人の主張は理由がない。
エ 被告装置は,電子メールに設定された複数の送信先を電子メールアドレ
スごとに分割するという,本件発明1の本質的部分に含まれる構成を有していないから,均等の第1要件を充足しない。\n
◆判決本文
原審はこちらです。
◆平成29(ワ)44181
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2020.03.25
平成30(ワ)18573 不当利得返還請求事件 特許権 民事訴訟 令和元年12月4日 東京地方裁判所
第1要件、第5要件を満たさないとして均等も否定されました。
3 争点1−2(均等侵害の成否)について
原告は,本件無線ユニットの信号伝送方法が,構成要件1Cにおける「2〜\n3cmの距離」との構成を充足しないとしても,この相違点は本件各発明に係\nる方法と均等なものということができるので,均等侵害が成立すると主張する
ので,以下検討する。
(1) 第1要件(非本質的部分)について
ア 前記判示のとおり,本件各発明は,埋設した測定装置と地表の測定装置\nを接続する信号線等のケーブルが長くなると,誘導電圧の影響によって測
定結果が乱れ,また,落雷によって生じる高い誘導電圧によって埋設した
測定装置の電子回路が故障するなどの課題を解決するため,測定装置近傍
に2〜3cmの距離でカップリングさせたアンテナを設け,電波を介して
同軸ケーブルで信号を伝送する構成を採ることにより,上記課題の解決を\n図るものであると認められる。
そして,カップリングさせたアンテナの距離については,その距離が大
きくなりすぎると十分な電界強度が確保できず,信号の伝送に支障が生じ\nる可能性がある一方(本件明細書等の【発明の実施の形態】),その距離\nが小さくなりすぎると,落雷に伴う誘導電圧から測定装置内部の電子回路
を保護する能力が低下することから,上記課題の解決が困難になるものと\n考えられる。本件各発明において,カップリングさせたアンテナ間の距離
を「2〜3cm」としたのは,この距離が相反する上記の要請をいずれも
満たすからであると解するのが相当である。
このことは,前記前提事実(5)記載のとおり,カップリングの距離を
2〜3cmとすることによる臨界的意義は認められないから,当業者
が行う単なる設計事項にすぎないとした平成17年2月2日付け拒絶
理由通知書(乙15の4)に対し,原告が,同年3月16日付け意見書
(乙15の6)において,「ボアホール内で使用する歪計や傾斜計は,
直径約10cm程度で,気密性が高い空域に収納しなければなりませ
ん.…多数の回路を収容する必要があり,アンテナ部分の空域は小さく
することが望まれます.しかし,測定装置を小さくする目的で,アンテ
ナ部分をあまり密結合構造にすると,本来の目的である落雷に伴う誘\n導電圧から,測定装置内部の電子回路を保護する能力が低下します.こ\nれらの相反する条件を参酌し,2〜3cm離すことが最も適した距離
であるといたしました.」と説明していることからも明らかである。
以上の事実によれば,カップリングされたアンテナ間の距離は,上記の
相反する2つの要請を調和させ,本件各発明の効果を奏する上で本質的な
部分というべきである。
イ これに対し,原告は,本件明細書等の段落【発明の実施の形態】に「カ
ップリングの距離を短くすれば電界強度はより大きくなって,信号の伝送
距離を長くできる」との記載があり,これはカップリングの距離を2〜3
cmよりも短くすることを示唆しているから,上記相違点は,本件各発明
の本質的部分に当たらないと主張する。
しかし,原告の指摘する上記記載は,カップリングしたアンテナ間の距
離を2〜3cmまで短くすることの技術的意義を説明する記載にすぎず,
本件各発明において,上記距離を2cmより更に短くすると,平成17年
3月16日付け意見書(乙15の6)にも記載されているとおり,落雷に
伴う誘導電圧から測定装置内部の電子回路を保護する能力が低下するので\nあるから,本件明細書等の上記記載が,上記距離を2cmより更に短くす
ることを示唆しているということはできない。
ウ したがって,本件無線ユニットの信号伝送方法は,均等の第1要件を充
足しない。
・・・
(2) 第5要件について
前記前提事実(5)記載のとおり,原告は,平成16年11月11日付け手続
補正書(乙15の2)により,「2〜3cmの距離で」との構成を付加し,\nその理由について,平成17年3月16日付け意見書において,「ボアホー
ル内で使用する歪計や傾斜計は,直径約10cm程度で,気密性が高い空域
に収納しなければなりません.…多数の回路を収容する必要があり,アンテ
ナ部分の空域は小さくすることが望まれます.しかし,測定装置を小さくす
る目的で,アンテナ部分をあまり密結合構造にすると,本来の目的である落\n雷に伴う誘導電圧から,測定装置内部の電子回路を保護する能力が低下しま\nす.これらの相反する条件を参酌し,2〜3cm離すことが最も適した距離
であるといたしました.」と説明していることによれば,原告が,カップリ
ングさせたアンテナ間の距離を2〜3cmに限定し,それ以外の距離を意識
的に除外したものというべきである。
したがって,本件無線ユニットの信号伝送方法は,均等の第5要件を充足
しない。
◆判決本文
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2020.03. 9
令和1(ネ)10042 特許権侵害行為差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 令和2年2月26日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
CS関連発明の侵害事件です。会計ソフトについて非侵害と判断された1審判断が維持されました。均等侵害も第1要件を満たしていないとして否定されました。
該当特許の公報は以下です。
◆公報
該当特許は無効審判もありますが、2020年1月に、特許は有効と判断されています(無効2018-800140)。
3 争点2(均等論)について
控訴人は,仮に本件発明の構成要件Hは「社会保障給付」が「財源措置(C\n2)」に含まれる構成であると解した場合には,被告製品においては,「社会\n保障給付」が,「財源措置(C2)」に含まれておらず,「純経常費用(C1)」
に含まれている点で本件発明と相違することとなるが,被告製品は,均等の第
1要件ないし第3要件を充足するから,本件発明の特許請求の範囲に記載され
た構成と均等なものとして,本件発明の技術的範囲に属する旨主張するので,\n以下において判断する。
(1) 前記2(2)認定のとおり,被告製品は,少なくとも構成要件B3及びHを\n充足するものと認められないから,被告製品は,構成要件Hの構\成以外に,
構成要件B3の構\成を備えていない点においても本件発明と相違するものと
認められる。
しかるところ,控訴人の主張は,被告製品に構成要件B3の構\成について
も相違部分が存在し,被告製品と本件発明は構成要件B3及びHにおいて相\n違することを前提とするものではないから,その前提において理由がない。
(2)ア 次に,被告製品の第1要件の充足性について,念のため判断する。
本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び前記1(2)認定の本件
明細書の開示事項を総合すれば,本件発明は,国民が将来負担すべき負債
や将来利用可能な資源を明確にして,政策レベルの意思決定を支援するこ\nとができる「財務諸表を作成する会計処理のためのコンピュータシステム」\nを提供することを課題とし,この課題を解決するために「純資産の変動計
算書」(「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C1〜C4)」)
を新たに設定し,当該年度の政策決定による資産変動を明確にできるよう
にしたことに技術的意義があり,具体的には,構成要件B1ないしIの構\
成を採用し,純資産変動額や将来償還すべき負担の増減額を「処分・蓄積
勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C1〜C4)」に表示し,当該年\n度の政策決定による資金変動を明確にすることができるようにしたことに
より,国民の資産が当期の予算措置で増えるのか又は減るのか,また,そ\nの財源の内訳から将来の国民負担がどの程度増えるのか又は減るのかを一
目で知ることができ,政策決定者は純資産変動額を勘案して政策を遂行す
ることができるという効果を奏するようにしたこと(【0002】,【0
005】,【0007】ないし【0010】,【0021】,図1)に技
術的意義があるものと認められる。
そして,本件発明の上記技術的意義に鑑みると,本件発明の本質的部分
は,「資金収支計算書勘定記憶手段及び閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)\n及び損益勘定作成・記録手段」から,国家の政策レベルの意思決定を記録
・会計処理するために,「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)
(C1〜C4)」を作成・記録する損益外純資産変動計算書勘定作成・記
録手段を備え(構成要件B3),損益外純資産変動計算書勘定作成・記録\n手段の記録は,その期における損益外の純資産増加(C3,C4)と純資
産減少(C1,C2)の2つで構成され,損益勘定(行政コスト計算書勘\n定)の収支尻(貸借差額)である「純経常費用(B7)」が処分・蓄積勘
定(損益外純資産変動計算書勘定)の「純経常費用(C1)」に振替えら
れ(構成要件F),「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)」\nの貸方と借方の差額(収支尻)が,「当期純資産変動額(C5)」という
形で,最終的には「閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)」の「純資産(国民\n持分)(B4)」の部に振り替えられて,「閉鎖残高勘定(貸借対照表勘\n定)」の借方(左側)と貸方(右側)がバランスし(構成要件G),「処\n分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)」の借方側(勘定の左側)
の「財源措置(C2)」は,具体的には社会保障給付やインフラ資産を整
備した際の資本的支出のような損益外で財源を費消する取引を指し(構成\n要件H),処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)の貸方側(勘
定の右側)の「資産形成充当財源(C4)」は,財源措置として支出がさ
れた場合,財源は費消されるが,その一部分は,インフラ資産のように将
来にわたって利用可能な資産形成に充当されるため,その支出の時点で政\n府の純資産(国民持分)が何らかの資源が現金以外の形で会計主体として
の政府の内部に残っていると考えることができ,将来世代も利用可能な資\n産が当期どれだけ増加したかを示している(構成要件I)という構\成を採
用することにより,当該年度の政策決定による資金変動を明確にし,国民
の資産が当期の予算措置で増えるのか又は減るのか,また,その財源の内\n訳から将来の国民負担がどの程度増えるのか又は減るのかを一目で知るこ
とができ,政策レベルの意思決定を支援することができるようにしたこと
にあるものと認めるのが相当である。
しかるところ,被告製品においては,「資金収支計算書勘定記憶手段及
び閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)及び損益勘定作成・記録手段」から「処\n分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C1〜C4)」を作成・
記録する損益外純資産変動計算書勘定作成・記録手段を備えておらず,ま
た,「社会保障給付」が「財源措置(C2)」に含まれていないため,構\n成要件B3及びHを充足せず,当該年度の政策決定による資金変動を明確
にし,財源の内訳から将来の国民負担がどの程度増えるのか又は減るのか
を一目で知ることができるようにして政策レベルの意思決定を支援するこ
とができるようにするという本件発明の効果を奏するものと認めることは
できない。
したがって,被告製品は, 本件発明の本質的部分を備えているものと認
めることはできず,被告製品の相違部分は,本件発明の本質的部分でない
ということはできないから,均等論の第1要件を充足しない。
よって,その余の点について判断するまでもなく,被告製品は,本件発
明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとは認められない。\n
イ(ア) これに対し控訴人は,本件明細書の記載によれば,本件発明の本質
的部分(課題解決原理)は,(1)(C)の処分・蓄積勘定(純資産変動計
算書勘定)が損益外の純資産増加(C3,C4)(貸方)と純資産減少
(C1,C2)(借方)の2つで構成され(構\成要件F),期末にその
貸方と借方の差額(収支尻)が当期純資産変動額(C5)という形で閉
鎖残高勘定(貸借対照表勘定)の純資産(国民持分)(B4)の部に振\nり替えられる(構成要件G)ことで,国民が将来負担すべき負債を明確\nにするという点,(2)(C)の処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書
勘定)の貸方側において,将来世代も利用可能な資産が当期どれだけ増\n加したかを示している(財源が固定資産などに転化したもの,すなわち
税収等の財源が使用されて減少したが,将来世代が利用可能な資産の形\nで増加したと解釈できるものを計上する)資産形成充当財源(C4)の
金額が,将来利用可能な資源を明確にする(構\成要件I)という点,(3)
処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)と資金勘定(資金収支
計算書勘定),閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定),損益勘定(行政コス\nト計算書勘定)との「勘定連絡(勘定科目間の金額の連動)」がプログ
ラムに設定されていることが,政策レベルの意思決定と将来の国民の負
担をコンピュータ・シミュレーションする会計処理を可能にするという\n点にあり,被告製品は,本件発明の本質的部分を備えている旨主張する。
しかしながら,本件発明の本質的部分は前記アのとおり認めるのが相
当であり,また,上記(3)の点については,本件発明は,請求項2に係る
発明とは異なり,「コンピュータ・シミュレーション」を行うことを発
明特定事項とするものではないから,本件発明の本質的部分であるとい
うことはできない。
したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
(イ) また,控訴人は,「財源措置」とは,将来利用可能な資源の増加を\n伴うか否かにかかわらず,「当期に費消する資源の金額」を意味するも
のであり,「純経常費用(C1)」と「財源措置(C2)」を包括する
上位概念であるから,この意味で「純経常費用(C1)」と「財源措置
(C2)」は同質的であり,個別の政府活動が「行政レベルの業務執行
上の意思決定」と「国家の政策レベルの意思決定」のいずれに分類され
たとしても,処分・蓄積勘定(純資産変動計算書勘定)の借方の金額,
すなわち,「当期に費消する資源の金額」には変化はないから,本件発
明の課題解決原理として不可欠の重要部分である処分・蓄積勘定の収支
尻(貸借差額),すなわち「当期純資産変動額」に影響を及ぼすもので
はないことからすると,被告製品の構成要件Hに係る相違部分(被告製\n品においては,「社会保障給付」が,「財源措置(C2)」に含まれて
おらず,「純経常費用(C1)」に含まれている点)は,本件発明の本
質的部分とは無関係な些細な相違にすぎない旨主張する。
しかしながら,本件明細書には,(1)処分・蓄積勘定(損益外純資産変
動計算書勘定)の借方の「純経常費用(C1)」は,「損益勘定(行政
コスト計算書勘定)」の収支尻である「純経常費用」が振り替えられて
計上されるところ(【0026】,【0035】,図1),「損益勘定
(行政コスト計算書勘定)」は,主として行政レベルの業務執行上の意
思決定を対象とするもので,行政コスト(損益)計算区分に計上される
行政コスト(計上損益)は少なければ少ないほど効率的な行政運営であ
ることを意味するものであること(【0036】),(2)処分・蓄積勘定
(損益外純資産変動計算書勘定)の借方の「財源措置(C2)」は,社
会保障給付やインフラ資産を整備した際の資本的支出のような,「損益
外で財源を費消する取引」を指し(【0027】),「財源の使途」(損
益外財源の減少)に属する勘定科目群は,主として国家の政策レベルの
意思決定の対象として,現役世代によって構成される内閣及び国会が,\n予算編成上,どこにどれだけの資源を配分すべきかを意思決定するもの\nであり(【0037】,図2),社会保障給付は,上記勘定科目群の「移
転支出への財源措置」に計上される非交換性の支出(対価なき移転支出)
であること(【0040】)の開示があることに照らすと,本件発明に
おいては,「純経常費用(C1)」と「財源措置(C2)」は同質的な
ものであるとはいえず,「財源措置(C2)」に含まれる社会保障給付
にいくら財源を配分するのかは国家の政策レベルの意思決定の対象であ
るといえるから,控訴人の上記主張は採用することができない。
◆判決本文
原審はこちらです。
◆平成30(ワ)10130
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2020.01.24
平成30(ワ)13400 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 令和元年9月11日 東京地方裁判所
文言侵害不成立および、第1要件満たさないとして均等侵害が否定されました。
原告は,本件発明1のうち,挿入力の増加の防止のための構成がその本\n質的部分であるとした上で,被告製品は少なくともその課題の解決原理を
利用しているのであるから,被告製品のサブアーム部にフック部が付属し
ているかどうかにかかわらず,同製品は本件発明1の本質的部分を備えて
いると主張する。
しかし,本件発明1は,特に車載用等のアンテナの仮固定用ホルダにつ
いて,従来例の仮固定用ホルダでは抜け力が弱いという問題があり,他方,
抜け力を強くするために係止爪の引っ掛かり量を多くすると,挿入力が強
くなり作業性が悪化することから,挿入力は弱いままで,抜け力を強くす
るという課題を解決するためのものであると認められる(本件明細書等の
段落【0009】,【0013】〜【0015】)。そうすると,本件発
明1の本質的部分は,挿入力は弱いままで,抜け力を強くするための構成\nにあり,従来技術との対比でいうと,特に抜け力の強化のための構成が重\n要であるというべきである。
そして,本件発明1は,上記課題の解決のため,(1)メインアーム部と,
メインアーム部の下端部で繋がったサブアーム部を有し,(2)当該下端部が
サブアーム部の撓みの支点となり,(3)サブアーム部の上端部を,上端に向
かって肉厚が増加する係止爪からなるものとすることなどにより,取付孔
への挿入性の向上を図るとともに,アンテナ上方向(抜け方向)に荷重が
加わったときは,係止爪が外側に撓んで拡がることにより抜け力の増大を
可能にするものであると認められる(特許請求の範囲,本件明細書等の段\n落【0017】,【0029】,【0032】,【0033】,【003
6】,【0037】)。
ウ 他方,被告製品においては,サブアーム部の爪部の上部にフック部が設
けられ,当該フック部と車体のルーフ孔の距離が0.3mmであると認め
られるから(乙13),抜け方向に荷重が加わった際に,フック部は0.
3mm程度以上は撓むことなくすぐに車体のルーフの内側面に当たり,爪
部がそれ以上に外側に撓ることは抑制されるものと認められる。
そして,被告製品における抜け力に関し,被告が実施した実験結果(乙
5)によれば,本件発明1の実施品の抜け力は186Nであるのに対し,
被告製品の抜け力は,215.8N,227N,271N,295Nであ
り,最小でも約30N,最大で約110Nの差が生じたことが認められる。
また,被告が実施した,被告製品のコの字型部材(サンプル(1))と,被告
製品のコの字型部材を加工してフック部を除いたもの(サンプル(2))を用
いた実験結果(乙14)によれば,前者の抜け力の平均値は227.60N,後者の抜け力の平均値は73.51N(いずれも10回実施)であり,
フック部を備えたコの字型部材の方が,抜け力において約150N大きい
ことが認められる。
前記のとおり,被告製品の爪部は外側への撓みが抑制されていると認め
られるところ,これに上記の各実験結果を併せて考慮すると,被告製品は,
本件発明1の実施品に匹敵する抜け力を備えているということができ,そ
の抜け力の大きさは,同製品がフック部を備えることに起因しているもの
と考えるのが自然であり,少なくとも爪部の外部への撓みによるものでは
ないということができる。
なお,原告は,乙14実験はサンプル(2)のフック部のカット加工の際に
メインアーム部とサブアーム部の接続部の耐久性が損なわれた可能性が\nあるとして,乙14実験の信用性を争うが,サンプル(2)はフック部を爪部
からカットするものであり,上記接続部の耐久性が損なわれたことをうか
がわせる事情は見当たらない。前記判示のとおり,乙14実験はサンプル
(1)と(2)のそれぞれについて10回ずつ実験を行っているところ,数値にば
らつきはあるものの,サンプル(1)は200N以上であり,サンプル(2)は概
ね60〜100程度であり,全体的に100N以上の差が生じていること
に照らすと,その差が誤差や実験方法の不適切さに由来するものとはいう
ことはできない。
エ 前記判示のとおり,抜け力の増大という課題を解決するための構成は本\n件発明1の本質的部分ということができるところ,本件発明1はこの課題
をアンテナ上方向(抜け方向)に荷重が加わったときに係止爪が外側に撓
んで拡がることにより解決しているのに対し,被告製品は爪部に加えてフ
ック部を備えることにより抜け力を保持しているものと認められ,そうす
ると,被告製品は本件発明1と異なる構成により上記課題を解決している\nということができる。
そうすると,本件発明1と被告製品はその課題解決のための特徴的な構\n成において相違し,本件発明1と被告製品との相違点は,この課題解決に
必要な構成に関するものであるから,同相違点は本件発明1の本質的部分\nに関するものであるということができる。
オ したがって,本件発明1と被告製品の相違点は,本件発明1の本質的部
分に関するものではないということはできないので,被告製品は第1要件
を充足しない。
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2019.12.23
平成28(ワ)2067等 特許権侵害差止請求権不存在確認等請求事件 特許権 民事訴訟 令和元年10月28日 大阪地方裁判所
均等侵害も主張しましたが、第1要件を具備しないと判断されました。
特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なかった
技術的課題の解決を実現するための,従来技術に見られない特有の技術的思想に基
づく解決手段を,具体的な構成をもって社会に開示した点にある。したがって,特\n許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従
来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解される。\nこの本質的部分については,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて,特許
発明の課題及び解決手段とその効果を把握した上で,特許発明の特許請求の範囲の
記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何で\nあるかを確定することによって認定するのが相当である。その認定に当たっては,
特許発明の実質的価値がその技術分野における従来技術と比較した貢献の程度に応
じて定められることからすれば,特許請求の範囲及び明細書の記載,特に明細書記
載の従来技術との比較から認定することが相当である。
その上で,第1要件の判断,すなわち,対象製品等との相違部分が非本質的部分
であるかどうかを判断する際には,上記のとおり確定される特許発明の本質的部分
を対象製品等が共通に備えているかどうかを判断し,これを備えていると認められ
る場合には,相違部分は本質的部分ではないと判断することが相当である。
イ 本件の場合
(ア) 本件各発明の本質的部分
a 前記1(1)のとおり,本件明細書によれば,本件各発明は,歯に付着したプラ
ークの除去及び歯茎のマッサージに好適なロール歯ブラシの製造方法及びその製造
装置に関するものである。上記製造方法等に関する従来技術は,ナイロン等の多数
の素線を束状に集合させてなる素線群の一端を加熱溶着することにより半球形状の
溶着部を形成し,溶着部を加圧して扁平状とし,扁平部の軸孔となる部分をカット
して,加圧することにより素線群の全体を略円形とし,かつ扁平部を略円形とし,
その後,扁平部の両端を溶着などにより接合させて環状部を形成し,シート状のブ
ラシ単体を製作するというものである。この従来技術には,ブラシ単体の厚みを均
一とするには熟練を要し,ブラシ単体の厚みが不均一の場合は回転ブラシの毛足密
度が不均一となり,工程数が多く複雑な工程を要するので,一貫した連続製造が困
難で回転歯ブラシの製造コストも高くなるという課題があった。そこで,これを解
決するため,本件各発明は,回転歯ブラシの製造方法として本件発明1の構成を,\n回転ブラシのブラシ単体の製造方法として本件発明2の構成を採用することで,各\n工程を画一的に処理することが可能となり,高度な熟練を要することなく均一な厚\nさのブラシ単体の製作を可能とし,また,本件発明1及び2の方法を容易に実施で\nきて,所期の目的を達成するため,回転ブラシのブラシ単体の製造装置として本件
発明3の構成を採用したものである。\n前記1(2)及び(3)のとおり,本件発明2及び3は,素線群の突出端の中央に,エア
を素線群が突出させられる方向とは反対方向から吹き込んで素線群を放射方向に開
かせることとしている(構成要件G及びN)。これは,これにより,ブラシ単体を\n構成する素線同士の重なりがほとんどなくなり,均一な厚さのブラシ単体を製作す\nることができるとともに,ブラシ単体の製作速度を早くした場合にも素線を傷付け
るおそれが少なくなるため,素線群の開きを高速度で行うことが可能となって,効\n率良くブラシ単体を製作することができるからである。この点に鑑みると,本件発
明2及び3の特許請求の範囲の記載のうち「素線群の突出端の中央にエアを吹き込
んで素線群を放射方向に開く」とある部分は,従来技術には見られない特有の技術
的思想を有する本件発明2及び3の特徴的部分であるといえる。
b これに対し,被告らは,本件発明2及び3の本質的部分が,エアを吹き込む
ことにより素線群を簡易に均等に開くことができ,その状態で溶着,切除すること
によりブラシ単体の製造を簡易かつ高速に行うことができるという点にあり,吹き
込むエアの方向が,素線群を送り出す方向とは逆方向かという相違部分は,本件発
明2及び3の本質的部分ではないと主張する。
しかし,本件発明2及び3は,上記課題の解決方法として,素線群をノズルから
のエアを用いて放射方向に開くという構成を採用し,均一な厚さのブラシ単体を効\n率良く製作するために素線群を高速度で放射方向に開かせるため,素線群の突出端
の中央にエアを意図的に吹き込ませるものである。このような工程の所期の目的を
実現するための構成及び機序は,素線群を送り出す方向を基準としてエアを吹き込\nませる方向が順逆異なるのであれば,必然的に異なるものとならざるを得ない。そ
の意味で,本件発明2及び3におけるエアを吹き込ませる方向は,本件発明2及び
3の特徴的部分というべきである。したがって,この点に関する被告らの主張は採用できない。
(イ) 前記1のとおり,原告製造方法は,素線群の突出端の中央にエアを吹き込ん
で素線群を放射方向に開かせるという工程を備えておらず,また,原告製造装置は,
素線群の突出端の中央にエアを吹き込んで素線群を放射方向に開かせる装置を備え
ていない。すなわち,原告製造方法は本件発明2の,原告製造装置は本件発明3の
本質的部分をいずれも備えていない。このように,本件発明2と原告製造方法との
相違部分,本件発明3と原告製造装置との相違部分はいずれも本質的部分であるか
ら,原告製造方法及び原告製造装置は,均等の第1要件を充足しない。
◆判決本文
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2019.10.18
平成29(ワ)44181 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 令和元年9月18日 東京地方裁判所
東京地裁(40部)は、構成要件11D等における「送信先」としては、「ドメイン」を含まないとして、技術的範囲に属しないと判断しました。均等侵害も第1要件を満たさないと判断されました。問題の構成要件における特定は、「受信した電子メールに設定された複数の送信先を個々の送信先に分割する分割手段」というものです。原告キヤノンITソ\リューションズ(株)代理人鮫島弁護士、被告デジタルアーツ(株)代理人大野聖二弁護士です。
原告は,制御ルールのリストの例示である【図5】の「条件定義部」の
「受信者」欄に,「*@zzz.co.jp」が定められており,これはドメインを表\nすものであるから,「送信先」には電子メールアドレスのみならず,ドメ
インを含むと主張する。
しかし,前記のとおり,本件明細書等1には,制御ルールに関し,「「条
件定義部」は,「発信者(送信元)」,「受信者(宛先)」,「その他条
件」から構成される。…「受信者(宛先)」には,メール送受信端末11\n0から取得する電子メールの宛先(To,Cc,Bcc)の電子メールア
ドレス(受信者情報) が設定されている」(段落【0040】),「「発
信者(送信元)」,「受信者(宛先)」には,それぞれ電子メールアドレ
スを複数設定することができ,アスタリスクなどのメタ文字(ワイルドカ
ード)を使うことによって任意の文字列を表すこともできる」(段落【0\n041】)と記載されており,これらの記載によれば,上記「*@zzz.co.jp」
は,ドメインを意味するのではなく,「*」に任意の文字列を含み,ドメイ
ン名を「zzz.co.jp」とする複数の電子メールアドレスを意味するという
べきである。
原告は,「*@zzz.co.jp」がドメインを意味することは,複数の特許文献
(甲24,30〜32,乙15)などの記載からも裏付けられると主張す
るが,特許請求の範囲や発明の詳細な説明において使用される言葉の意義
は各発明により異なることから,構成要件11D等の「送信先」の意義は\n本件特許に係る特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載に基づいて
解釈されるべきである。本件明細書等1の「*@zzz.co.jp」がドメインを意
味すると解し得ないことは上記判示のとおりであり,原告の挙げる他の文
献等の記載は上記結論を左右するものではない。
(イ) 原告は,本件明細書等の段落【0061】及び【図4】のステップS4
02には,「受信者」の「宛先」単位で電子メールの分割をすることを記
載しているが「受信者」の「宛先」にはドメインも含まれると主張する。
しかし,段落【0061】には「各宛先(受信者)のそれぞれを単一の
宛先としたエンベロープをそれぞれ生成する」と記載されているところ,
同エンベロープの生成を説明する【図12】には,送信先(受信者) の電
子メールアドレスとして設定されている「A」,「B」,「C」のそれぞ
れを単一の宛先とするエンベロープ情報をそれぞれ生成することが図示
されているのであるから,同段落の「各宛先(受信者)」とは電子メール
アドレスを意味するというべきである。
(ウ) 原告は,本件明細書等1の段落【0003】に記載の従来技術である乙
15公報における「宛先」には「電子メールアドレス」又は「ドメイン」
であることが記載されており,本件発明1において分割する単位をドメイ
ンとしてもこの従来技術の課題を解決することができると主張する。
そこで,乙15公報をみるに,その段落【0032】には,【図2】の
「項目203,205にあっては,アカウントを*として,ドメインのみ
を指定するとした設定も可能である」と記載されているが,ここにいう項\n目203は送信メールの一時保留機能を利用する場合であって,一時保留\nせずに,即配信したいメールアドレスの即配信リストを設定する項目であ
り,同図の項目205は,全ての送信保留中メールを本人(送信者)に配
送する場合であって,配送を希望しない送信保留中メールを本人(送信者)
に送信しないメールアドレスの送信不要リストを設定する項目である(段
落【0030】)。【図2】
このように,項目203及び同205は即配信又は送信不要リストを設
定するためのものであるから,段落【0032】の趣旨は,一時保留せず
に即配信したいメールアドレスの即配信リスト(項目203)や,送信保
留中メールを本人(送信者)に送信しないメールアドレスの送信不要リス
ト(項目205)に,任意のドメイン名を有する複数のメールアドレスを
一括して設定することも可能であることを述べたものにすぎず,電子メー\nルの「宛先」にドメインが含まれることを示すものということはできない。
そうすると,同段落の記載をもって従来技術である乙15公報における
「宛先」に「ドメイン」が含まれると解することはできないので,原告の
上記主張は前提において採用し得ないというべきである。
(エ) 原告は,電子メールをドメイン単位で分割する場合でも本件発明1の課
題を解決し得ると主張する。
しかし,電子メールをドメイン単位で分割するとなると,同一ドメイン
の複数の電子メールのうち,一つのみの送出を保留すべきような場合に上
記課題を解決し得ないことは,前記判示のとおりである。
原告は,本件発明1はいかなる場合でも電子メールの送出制御を効率的
に行うことを課題と設定しているのではないと主張するが,本件発明1が
その課題を解決し得ない構成を含むとは考え難く,特許請求の範囲及び本\n件明細書等1の記載に照らしても,「送信先」にドメインを含むとは解し
得ないことも,前記判示のとおりである。
エ 以上のとおり,構成要件11D等における「送信先」は「電子メールアド\nレス」のみを指し,「ドメイン」を含まないと解することが相当である。
・・・・
特許発明の本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載,特に明細書
記載の従来技術との比較から認定されるべきであるところ(知財高裁平成2
7年(ネ)第10014号同28年3月25日判決),本件明細書等1には,
従来技術の「複数の送信先が記載された電子メールに対しては,誤送信の可
能性がある送信先が1つでも含まれていれば,その他の送信先に対するメー\nル送信までもが保留,取り消しがされることとなる」(段落【0004】)
という課題を解決するため,電子メールに設定された複数の送信先を個々の
送信先に分割し,記憶手段に記憶されている制御ルール等に従って,電子メ
ールの送出に係る制御内容を決定し,決定された制御内容に従って電子メー
ルの送信制御を行うなどの構成を備えることにより,「ユーザによる電子メ\nールの誤送信を低減可能とすると共に,宛先に応じた電子メールの送出制御\nを行うことにより効率よく電子メールを送出させることができる」(段落【0
008】)などの効果を奏するものである。
イ 原告は,本件特許1の特許メモ(乙9)などを根拠に,本件発明1の本質
的部分は,「送出制御内容を,電子メールの送信元と送信先とに対応付けた
制御ルールと,分割された電子メールの送信先と送信元とに従って,分割さ
れた送信先に対する電子メールの送出に係る制御内容を決定すること」(構\n成要件11E)にあると主張する。
しかし,本件発明1の従来技術として挙げられているのは乙15公報であ
り,本件明細書等1に記載されている課題は「複数の送信先が記載された電
子メールに対しては,誤送信の可能性がある送信先が1つでも含まれていれ\nば,その他の送信先に対するメール送信までもが保留,取り消しがされるこ
ととなる」というものであるところ,同課題を解決するためには,電子メー
ルに設定された複数の送信先を電子メールアドレスごとに分割した上で,制
御ルールを適用することが不可欠である。そうすると,構成要件11D等に\n係る構成は本件発明1の本質的部分というべきである。\n 原告は,特許メモ(乙9)の記載を根拠とするが,同メモには,本件特許
の出願時の複数の公知文献に本件発明1に係る構成が記載されているかど\nうかが記載されているにすぎず,本件発明1の従来技術として挙げられた乙
15公報との対比がされているものではなく,また,本件発明1の本質的部
分の所在を検討するものでもないので,同メモに基づいて,本件発明1の本
質的部分が構成要件11Eに係る構\成にあるということはできない。
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2019.10.16
平成30(ワ)24717 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 令和元年9月17日 東京地方裁判所(46部)
ゼンリンに対する地図表示に関する特許侵害事件です。争点は、構\成要件D、Fの「各ページを適宜に分割して区画化し,…住宅建物の所在する番地を前記地図上における前記住宅建物の記載ページ及び記載区画の記号番号と一覧的に対応させて掲載」を具備していない、さらに均等侵害についても第1要件を満たさないと判断されました。
特許請求の範囲の「各ページを適宜に分割して区画化し,…住宅建物の所
在する番地を前記地図上における前記住宅建物の記載ページ及び記載区画
の記号番号と一覧的に対応させて掲載」という記載(構成要件D,E及びF)\nに照らせば,構成要件Dの「適宜に分割して区画化」とは,ページの特定の\n部分に記号番号を付し番地とこれに対応するページの特定の部分を一覧的
に示したりすることができるよう,検索すべき領域の地図のページを分割し,
認識できるようにすることといえる。
そして,本件発明は, 前記1(2)のとおり、地図上に公共施設や著名ビル等
以外の住宅及び建物は番地のみを記載するなどし,全ての建物等が所在する
番地について,記載ページと当該ページ内で分割された区画のうち当該番地
が記載された区画を一覧的に対応させて掲載した索引欄を設けることによ
って,簡潔で見やすく迅速な検索を可能にする住宅地図の提供を可能\にする
というものであり,本件発明の地図の利用者は,索引欄を用いて,検索対象
の建物等が所在する地番に対応する,ページ及び当該ページにおける複数の
区画の中の該当の区画を認識した上で,当該ページの該当区画内において,
検索対象の建物等を検索することが想定されている。そのためには,当該ペ
ージについて,それが線その他の方法によって複数の区画に分割され,利用
者が該当の区画を認識することができる必要があるといえる。そうすると,
本件明細書に記載された本件発明の目的や作用効果に照らしても,本件発明
の「区画化」は,ページを見た利用者が,線その他の方法及び記号番号によ
り,検索対象の建物等が所在する区画が,ページ内に複数ある区画の中でど
の区画であるかを認識することができる形でページを分割することをいう
といえる。
また 前記(2)のとおり、本件明細書には発明の実施の形態において,本件
発明を実施した場合における住宅地図の各ページの一例として別紙「本件明
細書図2」及び「本件明細書図5」が示されているところ,これらの図にお
いては,いずれも道路その他の情報が記載された長方形の地図のページが示
されたうえで,そのページが,ページ内にひかれた直線によって仕切られて
複数の区画に分割されており,その複数の区画にそれぞれ区画番号が付され
ている。また,本件明細書図4の索引欄には,番地に対応する形でページ番
号及び区画番号が記載されており,利用者は,検索対象の建物の番地から,
索引欄において当該建物が掲載されているページ番号及び区画番号を把握
し,それらの情報を基に,該当ページ内の該当区画を認識して,その該当区
画内を検索することにより,目的とする建物を探し出すことが記載されてい
る(【0028】)。ここでは,上記の特許請求の範囲の記載や発明の意義に
従った実施の形態が記載されているといえる。
加えて,本件明細書には,本件発明の「区画化」の用語を定義した記載は
なく,【0017】ないし【0032】及び別紙「本件明細書図1」ないし
「本件明細書図5」で記載された実施形態以外には本件発明の実施形態の具
体的記載はない。なお,後記イのとおり,本件明細書の【0033】【00
37】に記載された地図は,本件発明の実施形態を記載したものとはいえな
い。
したがって,本件明細書における発明の実施の形態に係る記載からしても,
構成要件Dの「適宜に分割して区画化」とは,ページを見た利用者が,線そ\nの他の方法及び記号番号により,検索対象の建物等が所在する区画が,ペー
ジ内に複数ある区画の中でどの区画であるかを認識することができる形で
ページを分割することをいうと解される。
イ これに対し,原告は,本件明細書(【0033】【0037】)は,本件発明
の実施形態として,コンピュータが自動的に区画を探し出し,当該区画を画
面中央に配置し,当該区画内にある所望の建物をユーザが直接認識できる電
子住宅地図(全戸氏名入り電子住宅地図)を開示しており,このような構成\nを備える電子住宅地図では,ユーザが視覚的に地図内の位置を分かりやすく
探せるように仕切り線を設ける必要はないから,「区画化」もまたユーザが
目に見える形で仕切る構成に限定されない旨主張する。\n確かに,本件明細書には,全戸氏名入り電子住宅地図として「戸番地(住
所地番及び号)をキーとして,電子電話帳11の氏名データと,住所入り電
子住宅地図12のポリゴンデータとを連結する。」(【0035】),「この全戸
氏名入り電子住宅地図14は,パソコン13のキーボードから氏名を入力す\nれば,その人物の居住する建物を中心にした地図がパソコン13の表\示装置
に表示され,その人物の居住する建物にマークが付されて,そのマークが点\n滅する。」(【0037】)との記載がある。
しかし,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)には,上記【0037】
記載の動作に対応する構成の記載はない。また,本件明細書には,「公官庁\nや住宅関係の企業では,今まで通り氏名入りの住宅地図を必要とする場合も
考えられる。そのような場合でも,…全戸氏名入りの住宅地図を作成するこ
とができる。」(【0033】)との記載があるところ,上記記載中の「今まで
通り氏名入りの住宅地図」とは,「建物表示に住所番地ばかりではなく,居\n住者の氏名も全て併記」された「従来の住宅地図」(【0002】)を指すと
解されること,【0037】の全戸氏名入り電子住宅地図14においては,
利用者がパソコン13のキーボードから氏名を入力することによりその人\n物が居住する建物を検索する場合,マークの付された建物に表示された氏名\nを視認することによって検索の目的とする建物との同一性を確認するもの
と理解できることからすると,全戸氏名入り電子住宅地図14は,「全戸」
の氏名が表示された地図であるものと認められる。そうすると,全戸氏名入\nり電子住宅地図14は,構成要件Bの「検索の目安となる公共施設や著名ビ\nル等を除く一般住宅及び建物については居住人氏名及び建物名称の記載を
省略し」の構成を備えていない。\n
したがって,本件明細書記載の全戸氏名入り電子住宅地図14は,本件発
明の実施形態に含まれるとは認めることはできない。なお,本件発明の出願
経過によれば,本件特許出願の願書に最初に添付した明細書(乙8の2,8
の3)記載の特許請求の範囲は旧請求項1ないし11からなり,旧請求項7
ないし11には,「全戸氏名入り電子住宅地図作成方法」に係る発明の記載
があり,発明の詳細な説明中の【0014】ないし【0016】に旧請求項
7ないし11を引用した記載部分があったが,同年10月21日付けの手続
補正(乙9)により,旧請求項1の文言を補正し,旧請求項2ないし11及
び【0014】ないし【0016】を削除する補正がされたこと,上記補正
後の請求項1は,拒絶査定不服審判請求と同時にされた平成13年6月7日
付けの手続補正により本件発明の特許請求の範囲記載の請求項1と同一の
記載に補正されたこと(乙10)に照らすと,本件明細書の【0033】な
いし【0038】記載の全戸氏名入り電子住宅地図14に関する記載は,平
成11年10月21日付けの手続補正により削除された旧請求項7ないし
11記載の「全戸氏名入り電子住宅地図作成方法」に係る発明の実施形態で
あると認められる。
以上によれば,本件明細書記載の全戸氏名入り電子住宅地図14が本件発
明に含まれることを前提とする原告の上記主張は採用することができない。
・・・・
原告は,仮に縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図が,各ペー
ジに線その他の方法及び記号番号を付されていない点において構成要件Dと相違\nするとしても,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は,均等の
成立要件(第1要件ないし第3要件)を満たしているから,本件発明と均等なも
のとして,本件発明の技術的範囲に属する旨主張する。
前記2(1)のとおり,本件発明の技術的意義は,検索の目安となる建物を除く建
物名称や居住者氏名の記載しないため,高い縮尺度で地図を作成することにより
小判で,薄い,取り扱いの容易な廉価な住宅地図を提供することや(構成要件B\n及びC),地図の更新のために氏名調査等の労力を要しないことによって廉価な住
宅地図を提供することを可能にするとともに,地図上に公共施設や著名ビル等以\n外の住宅及び建物は番地のみを記載し,地図のページを適宜に分割して区画化し
たうえで,全ての建物等の所在する番地を,当該番地の記載ページ及び記載区画
を特定する記号番号と一覧的に対応させた索引欄を付すことによって,簡潔で見
やすく迅速な検索を可能にする住宅地図を提供すること(構\成要件DないしF)
を可能にする点にあるものと認められる。\n
しかしながら、被告地図においては前記2(1)で認定したとおり,地図を記載した各ページを線その他の方法及び記号番号によりユーザの目に見える形で複
数の区画に仕切られていないため,ユーザが所在番地の記載ページ及び区画の記
号番号の情報から検索対象の建物等の該当区画を探し,区画内から建物を探し出
すことができないから,迅速な検索が可能であるということはできない。\nしたがって,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は,本件発
明の本質的部分を備えているものとは認めることができず,同被告地図の相違部
分は,本件発明の本質的部分でないということはできないから,均等の第1要件
を充足しない。よって,その余の点について判断するまでもなく,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は,本件発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとは認められないから,本件発明の技術的範囲に属すると認めることはで\nきない。
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2019.10.11
平成30(ワ)13400 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 令和元年9月11日 東京地方裁判所(40部)
文言侵害、均等侵害とも否定されました。論点は係止爪の位置です。本件発明をアンテナ上方向(抜け方向)に荷重が加わったときに係止爪が外側に撓んで拡がることにより解決しているが、被告製品は本件発明1と異なる構成で実現していると、判断されました。\n
均等論の本質的部分(第1要件)
本件発明1と被告製品との相違点は,本件発明1では,係止爪がサブアー
ム部の上端部に位置するものであるのに対し,被告製品では,爪部の上部に
フック部が設けられ,爪部がサブアーム部の上端部に位置するとはいえない
点にあるところ,被告は,原告の均等侵害の主張に対し,第4要件を充足す
ることは争わないものの,その余の要件の充足性を争うので,以下検討する。
(2) 第1要件(非本質的部分)について
ア 均等侵害が成立するための第1要件にいう本質的部分とは,当該特許発
明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思
想を構成する特徴的部分であり,このような特許発明の本質的部分を対象\n製品等が共通に備えていると認められる場合には,相違部分は本質的部分
ではないと解される。
イ 原告は,本件発明1のうち,挿入力の増加の防止のための構成がその本\n質的部分であるとした上で,被告製品は少なくともその課題の解決原理を
利用しているのであるから,被告製品のサブアーム部にフック部が付属し
ているかどうかにかかわらず,同製品は本件発明1の本質的部分を備えて
いると主張する。
しかし,本件発明1は,特に車載用等のアンテナの仮固定用ホルダにつ
いて,従来例の仮固定用ホルダでは抜け力が弱いという問題があり,他方,
抜け力を強くするために係止爪の引っ掛かり量を多くすると,挿入力が強
くなり作業性が悪化することから,挿入力は弱いままで,抜け力を強くす
るという課題を解決するためのものであると認められる(本件明細書等の
段落【0009】,【0013】〜【0015】)。そうすると,本件発
明1の本質的部分は,挿入力は弱いままで,抜け力を強くするための構成\nにあり,従来技術との対比でいうと,特に抜け力の強化のための構成が重\n要であるというべきである。
そして,本件発明1は,上記課題の解決のため,(1)メインアーム部と,
メインアーム部の下端部で繋がったサブアーム部を有し,(2)当該下端部が
サブアーム部の撓みの支点となり,(3)サブアーム部の上端部を,上端に向
かって肉厚が増加する係止爪からなるものとすることなどにより,取付孔
への挿入性の向上を図るとともに,アンテナ上方向(抜け方向)に荷重が
加わったときは,係止爪が外側に撓んで拡がることにより抜け力の増大を
可能にするものであると認められる(特許請求の範囲,本件明細書等の段\n落【0017】,【0029】,【0032】,【0033】,【003
6】,【0037】)。
ウ 他方,被告製品においては,サブアーム部の爪部の上部にフック部が設
けられ,当該フック部と車体のルーフ孔の距離が0.3mmであると認め
られるから(乙13),抜け方向に荷重が加わった際に,フック部は0.
3mm程度以上は撓むことなくすぐに車体のルーフの内側面に当たり,爪
部がそれ以上に外側に撓ることは抑制されるものと認められる。
そして,被告製品における抜け力に関し,被告が実施した実験結果(乙
5)によれば,本件発明1の実施品の抜け力は186Nであるのに対し,
被告製品の抜け力は,215.8N,227N,271N,295Nであ
り,最小でも約30N,最大で約110Nの差が生じたことが認められる。
また,被告が実施した,被告製品のコの字型部材(サンプル(1))と,被告
製品のコの字型部材を加工してフック部を除いたもの(サンプル(2))を用
いた実験結果(乙14)によれば,前者の抜け力の平均値は227.60
N,後者の抜け力の平均値は73.51N(いずれも10回実施)であり,
フック部を備えたコの字型部材の方が,抜け力において約150N大きい
ことが認められる。
前記のとおり,被告製品の爪部は外側への撓みが抑制されていると認め
られるところ,これに上記の各実験結果を併せて考慮すると,被告製品は,
本件発明1の実施品に匹敵する抜け力を備えているということができ,そ
の抜け力の大きさは,同製品がフック部を備えることに起因しているもの
と考えるのが自然であり,少なくとも爪部の外部への撓みによるものでは
ないということができる。
なお,原告は,乙14実験はサンプル(2)のフック部のカット加工の際に
メインアーム部とサブアーム部の接続部の耐久性が損なわれた可能性が\nあるとして,乙14実験の信用性を争うが,サンプル(2)はフック部を爪部
からカットするものであり,上記接続部の耐久性が損なわれたことをうか
がわせる事情は見当たらない。前記判示のとおり,乙14実験はサンプル
(1)と(2)のそれぞれについて10回ずつ実験を行っているところ,数値にば
らつきはあるものの,サンプル(1)は200N以上であり,サンプル(2)は概
ね60〜100程度であり,全体的に100N以上の差が生じていること
に照らすと,その差が誤差や実験方法の不適切さに由来するものとはいう
ことはできない。
エ 前記判示のとおり,抜け力の増大という課題を解決するための構成は本\n件発明1の本質的部分ということができるところ,本件発明1はこの課題
をアンテナ上方向(抜け方向)に荷重が加わったときに係止爪が外側に撓
んで拡がることにより解決しているのに対し,被告製品は爪部に加えてフ
ック部を備えることにより抜け力を保持しているものと認められ,そうす
ると,被告製品は本件発明1と異なる構成により上記課題を解決している\nということができる。
◆判決本文
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2019.09.13
平成30(ネ)10071 損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟 令和元年9月11日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
「人脈関係登録システム」(CS関連発明)について、1審では第1要件を満たしていないと判断されましたが、知財高裁(3部)も同様に、均等の第1要件を満たさないとして判断しました。1審被告は、DMMです。
このような乙2の記載によれば,サーバーコンピューター330
とクライアントコンピューター370がワールドワイドウェブ36
0を介して接続され,サーバーコンピューター330に登録された
ユーザーによって入力される連絡相手情報を含むユーザー情報デー
タベース340が設けられた構成において,1)メンバーA(本件各
発明における第一の登録者)がメンバーB(本件各発明における第
二の登録者)に任意の許可レベルでリンクされ,メンバーBがメン
バーC(本件各発明における第三の登録者)に任意の許可レベルで
リンクされる場合に,メンバーCがメンバーBに友人の友人許可を
与え,メンバーBもメンバーAに友人の友人許可を与える場合には,
メンバーAは,メンバーCについての友人の友人通知を受信する資
格があること,2)「友人テーブル」がユーザー(本件各発明におけ
る登録者)を互いに関連付け,3)「友人の友人システム」によって,
第1のユーザー(本件各発明における第一の登録者)は,第1のユ
ーザーと同じ都市に住んでいるか,又は第1のユーザーが所属する
グループに所属する連絡相手の連絡相手の名前を探索でき,第1の
ユーザーが友人の友人探索を実行し,友人の友人である第2のユー
ザー(本件各発明における第三の登録者)の場所を特定した後に,
第1のユーザーは第1のユーザーの個人アドレス帳に第2のユーザ
ーを追加するために,第2のユーザーにリンクすることができ,4)
第1のユーザーが第2のユーザーを指定すると,第2のユーザーは,
第1のユーザーが第2のユーザーに「リンクした」という通知を受
信し,5)第2のユーザーがリンクに応じることを選択する場合には,
第2のユーザーはデータフィールド許可を設定して第1のユーザー
のために個人情報等の閲覧を許可することの通知を送信し,この通
知を受信したときに,第1のユーザーの個人アドレス帳に第2のユ
ーザーの職業や個人情報等を表示する構\成の記載がある。
c 以上のとおりの本件優先日当時の従来技術に照らせば,より広範で
深い人間関係を結ぶことを積極的にサポートする人間関係登録システ
ムを提供するとの課題について,上記のような解決手段が存在したも
のということができる。
ウ このように,本件明細書に従来技術が解決できなかった課題として記載
されているところは,優先権主張日の従来技術に照らして客観的に見て
不十分なものであるから,本件明細書に記載されていない上記イ(イ)のと
おりの従来技術も参酌して従来技術に見られない特有の技術的思想を構\n成する特徴的部分を認定すべきことになる。
そして,上記イ(イ)のとおりの従来技術に照らせば,本件各発明は,主
要な点においては,従来例に示されたものとほぼ同一の技術を開示する
にとどまり,従来例が未解決であった技術的困難性を具体的に指摘し,
その困難性を克服するための具体的手段を開示するものではないから,
本件各発明の貢献の程度は大きくないというべきであり,上記従来技術
に照らし,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する部分につ\nいては,本件各発明の特許請求の範囲とほぼ同義のものとして認定する
のが相当である。
エ そうすると,被告サーバが構成要件1D及び2Dの構\成を備えていない
のは前記1に説示のとおりであるから,被告サーバは本件各発明の本質
的部分の構成を備えるということはできず,均等の第1要件を充足しな\nい。
オ 控訴人の主張について
(ア) 控訴人は,引用発明は具体的にはネットワークを通じて連絡相手情
報を管理する発明であって,相互に情報を交換し合うことによって新
たに人間関係を締結するというソーシャルネットワーキングサービス\n(SNS)の発明ではないから,本件各発明とは技術思想が根本的に
異なるものであり,本件各発明の本質的部分を認定するに当たり参照
されるべき従来技術ではないと主張する。
しかし,本件明細書にはソーシャルネットワーキングサービス(SN\nS)であることの記載はなく,上記イに説示したところに照らせば,本
件各発明と引用発明は,いずれも共通の人間関係を結んでいる登録者の
検索を可能とし,新たに人間関係を結び,これを登録することができる\n発明である点で共通するものであるから,本件各発明の従来技術として
引用発明を参照することができるというべきである。
(イ) 控訴人は,本件各発明の構成のうち,従来技術に見られない特有の\n技術的思想を構成する特徴的部分は,「登録者が互いにメッセージを\n送信し合うことによって人間関係を結ぶ(友達になる)という意思が
合致した場合(合意が成立した場合)に,当該登録者同士を関連付け
て記憶するという技術を前提として,共通の人間関係を結んでいる登
録者(友達の友達)の検索を可能とし,新たに人間関係を結ぶことが\nできるようにすることによって,より広範で深い人間関係を結ぶこと
ができるという構成」にあると主張する。\nしかし,従来技術との比較において本件各発明の貢献の程度は大きく
なく,本件各発明の本質的部分は特許請求の範囲とほぼ同義のものと認
定すべきことは上記イ及びウに説示したとおりである。
(ウ) 控訴人は,2人の個人が互いに人間関係を結んでいるかどうかは,
多分に個人の主観的な評価を伴う問題であって,引用発明において個
人情報の閲覧を許可したからといって,人間関係を結ぶことを承諾し
たということにはならないと主張する。しかし,引用発明は,第1の
ユーザーが第2のユーザーをリンクすると,第2のユーザーはその旨
の通知を受信し,リンクに応じる場合は第2のユーザーが第 1 のユーザ
ーにデータフィールド許可を設定でき,第2のユーザーは第1のユー
ザーに個人情報許可,仕事情報許可,経路交差通知許可などを与える
ことができるのであり,これは,人間である第1のユーザーと人間で
ある第2のユーザーが関係を結ぶことに他ならないから,第1のユー
ザーと第2のユーザーが人間関係を結ぶものと理解することができる。
(エ) さらに,控訴人は,乙2の【0072】,【0073】に「友人の
友人システム」という表現は存在するものの,その実質は,自己の個\n人アドレス帳に他のメンバーが登録されている場合に,当該他のメン
バーの個人アドレス帳の中を検索するというものにすぎず,「友人」
とは,本件各発明における当事者間の合意によって結ばれるところの
「人間関係」とは別物であると主張するが,本件各発明において「人
間関係を結ぶ」ことの意義について,引用発明における構成を除外す\nることを示す記載はなく,引用発明において,第1のユーザーがリン
クし,第2のユーザーがリンクに応じることにより,人間関係が結ば
れるといえることについては,上記説示のとおりである。
◆判決本文
原審はこちらです。
◆平成29(ワ)22417
本件特許権の別被告(ミクシィ)の事件があります。
こちらも、1審、控訴審とも非侵害と判断されています。
◆平成29(ネ)10072
◆平成28(ワ)14868
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2019.08. 2
平成31(ネ)10019 損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟 令和元年7月19日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
CS関連発明について均等主張も否定されました。1審では、構成要件Dについて均等主張をしていませんでした。控訴審では構\成要件Dの均等侵害を主張しましたが、第1要件を満たしていないと判断されました。被控訴人(1審被告)はYAHOO(株)です。
本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び前記(2)の本件明細
書の開示事項を総合すると,本件発明の技術的意義は,従来の住宅地図に
おいては,建物表示に住所番地及び居住者氏名も全て併記されていたため,\n肉眼でも判別可能な実用性を確保するために縮尺度を低いものにする必要\nがあり,これに伴って全体として地図の大型化や大冊化を招き,この大型
化や大冊化が氏名の記載変更作業の実地調査に係る人件費と相俟って住宅
地図を高価格なものとし,更に氏名の公表を希望しない住人についても住\n宅地図に氏名を登載してしまうこととなるため,プライバシーの保護とい
う点からも問題を有し,また,従来の住宅地図の付属の索引は,住所の丁
目及びそれぞれの丁目に該当するページだけが掲載されていたため,「目
的とする居住地(建物)を探し出す作業」(検索)が,煩雑で面倒であり,
迅速さに欠け,非能率な作業となっていたという課題があったことから,\n本件発明の住宅地図は,この課題を解決するため,検索の目安となる公共
施設や著名ビル等を除く一般住宅及び建物については,居住人氏名や建物
名称の記載を省略し,住宅及び建物のポリゴンと番地のみを記載すること
により,縮尺度の高い,広い鳥瞰性を備えた構成の地図とし(構\成要件B
及びC),地図の各ページを適宜に分割して区画化した上で,地図に記載
の全ての住宅建物の所在番地を,住宅建物の記載ページ及び記載区画を特
定する記号番号と一覧的に対応させた付属の索引欄を設ける構成(構\成要
件DないしF)を採用することにより,小判で,薄い,取り扱いの容易な
廉価な住宅地図を提供することができ,また,上記索引欄を付すことによ
って,全ての建物についてその掲載ページと当該ページ内の該当区画が容
易に分かるため,簡潔で見やすく,迅速な検索の可能な住宅地図を提供す\nることができるという効果を奏することにあるものと認められる。
イ この点に関し控訴人は,本件発明の技術的思想(技術的意義)は,「検
索の目安となる公共施設や著名ビル等を除く一般住宅及び建物については
居住人氏名や建物名称の記載を省略し住宅及び建物のポリゴンと番地のみ
を記載すると共に,縮尺を圧縮して」(本件発明の構成要件B及び構\成要
件Cの前半)という構成により,「記載スベースを大きく必要とせず」(本\n件明細書の【0039】),これにより「広い鳥瞰性を備えた地図を構成」\n(構成要件Cの後半)する点にある旨(前記第2の4(1)エの「当審におけ
る控訴人の主張」(ア))を主張する。
しかしながら,発明の技術的意義は,明細書に開示された従来技術の課
題について,特許請求の範囲の記載及び明細書の記載に基づいて,当該発
明がその課題の解決手段として採用した構成及びその構\成による効果を踏
まえて認定すべきものと解されるところ,控訴人の上記主張は,本件明細
書において,従来の住宅地図の付属の索引には,住所の丁目及びそれぞれ
の丁目に該当するページだけが掲載されていたため,「目的とする居住地
(建物)を探し出す作業」(検索)が,煩雑で面倒であり,迅速さに欠け,
非能率であるという課題があったこと(【0003】),本件発明は,上\n記課題を解決するための手段として,地図の各ページを適宜に分割して区
画化した上で,地図に記載の全ての住宅建物の所在番地を,住宅建物の記
載ページ及び記載区画を特定する記号番号と一覧的に対応させた付属の索
引欄を設ける構成(構\成要件DないしF)を採用したことにより,全ての
建物についてその掲載ページと当該ページ内の該当区画が容易に分かるた
め,簡潔で見やすく,迅速な検索を可能としたという効果を奏すること(【0\n039】)の開示があることを考慮しないものであるから,採用すること
ができない。
・・・
控訴人は,仮に本件発明の構成要件Dの「区画化」の構\成が,地図が記載
されている各ページについて,記載されている地図を線その他の方法によっ
て仕切って複数の区画に分割し,その各区画を特定する番号又は記号番号を
付し,利用者が,線その他の方法及び記号番号により,当該ページ内にある
複数の区画の中の当該区画を認識することができる形で複数の区画に分割す
ることを意味するものと解し,また,仮に構成要件Fの「索引欄に…住宅建\n物の所在する番地を前記地図上における…記載ページ及び記載区画の記号番
号と一覧的に対応させて掲載した」との構成が,索引欄に所在番地の記載ペ\nージ及び区画の記号番号がユーザの目に見える形で掲載される構成に限られ\nると解した場合には,被告地図は,各ページに線その他の方法及び記号番号
が付されていない点及び「特定の緯度・経度を含む地点データと縮尺レベル
19ないし20を含むURL」が画面に「一覧的に」表示されていない点で\n本件発明と相違することとなるが,被告地図は,均等の成立要件(第1要件
ないし第3要件)を満たしているから,本件発明と均等なものとして,本件
発明の技術的範囲に属する旨主張する。
しかしながら,前記1(3)ア認定の本件発明の技術的意義に鑑みると,本件
発明の本質的部分は,検索の目安となる公共施設や著名ビル等を除く一般住
宅及び建物については,居住人氏名や建物名称の記載を省略し,住宅及び建
物のポリゴンと番地のみを記載することにより,縮尺度の高い,広い鳥瞰性
を備えた構成の地図とし(構\成要件B及びC),地図の各ページを適宜に分
割して区画化した上で,地図に記載の全ての住宅建物の所在番地を,住宅建
物の記載ページ及び記載区画を特定する記号番号と一覧的に対応させた付属
の索引欄を設ける構成(構\成要件DないしF)を採用することにより,小判
で,薄い,取り扱いの容易な廉価な住宅地図を提供することができ,また,
上記索引欄を付すことによって,全ての建物についてその掲載ページと当該
ページ内の該当区画が容易に分かるため,簡潔で見やすく,迅速な検索の可
能な住宅地図を提供することができる点にあるものと認められる。\n
しかるところ,被告地図においては,前記2(1)ウ及び(2)認定のとおり,
地図を記載した各ページを線その他の方法及び記号番号によりユーザの目に
見える形で複数の区画に仕切られておらず,索引欄に住宅建物の所在番地の
記載ページ及び区画の記号番号がユーザの目に見える形で掲載されていない
ため,構成要件D及びFを充足せず,ユーザが所在番地の記載ページ及び区\n画の記号番号の情報から検索対象の建物の該当区画を探し,区画内から建物
を探し当てることができないから,このような索引欄を利用した迅速な検索
が可能であるということはできない。\nしたがって,被告地図は,本件発明の本質的部分を備えているものと認め
ることはできず,被告地図の相違部分は,本件発明の本質的部分でないとい
うことはできないから,均等論の第1要件を充足しない。
◆判決本文
1審はこちらです。
◆平成29(ワ)34450
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2019.07.24
平成31(ネ)10010 不当利得返還請求控訴事件 特許権 民事訴訟 令和元年7月10日 知的財産高等裁判所 大阪地方裁判所
第1要件を満たさないとして、知財高裁(第1部)は、1審と同様に均等侵害否定しました。
特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なかった
技術的課題の解決を実現するための,従来技術に見られない特有の技術的思想に基
づく解決手段を,具体的な構成をもって社会に開示した点にあるから,特許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に\n見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解される。そして,上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて,特許\n発明の課題及び解決手段とその効果を把握した上で,特許発明の特許請求の範囲の
記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定することによって認定することが相当である。\nその認定に当たっては,特許発明の実質的価値がその技術分野における従来技術
と比較した貢献の程度に応じて定められることからすれば,特許請求の範囲及び明
細書の記載,特に明細書記載の従来技術との比較から認定することが相当である。
第1要件の判断,すなわち,対象製品等との相違部分が非本質的部分であるかど
うかを判断する際には,上記のとおり確定される特許発明の本質的部分を対象製品
等が共通に備えているかどうかを判断し,これを備えていると認められる場合には,
相違部分は本質的部分ではないと判断することが相当である。
イ 本件における第1要件の成否
本件発明に係る特許請求の範囲及び明細書の記載は,前記(1(2)のアイ)のとお
りであり,要するに,本件発明は,液晶表示装置に用いられる平面照光装置に関し,導光板の下面に多数の多面プリズムを設ける従来技術の下では,乱反射が起きて上\n面に向かう光量が減り,照光面である上面に極端な明暗のコントラストが生じるな
どの問題があったところ,液晶表示装置を均一にかつ高い輝度で照らすという課題を解決するため,導光板である板状体の両面のうち,照光面とは反対側の面に回折\n格子を設け,この回折格子の回折機能によって,導光板である板状体に入射した光が照光面の側において均一にかつ高い輝度を発揮するようにしたものである。\nそして,照光面とは反対側の面に回折格子を設けるようにしたのは,本件明細書
の記載(前記1(2)イの(エ)(オ)(カ))によれば,本件発明においては,透明な板状体か
らなる導光板の両面のうち照光の効果を生じさせるのとは反対の面(裏面)に,光
の入射角と臨界角をもとに適切に決められた間隔で,回折格子(刻線溝)が加工さ
れており,これにより,導光板の一端面から裏面に向けて入射した光は,上記回折
格子によって導光板の表面(照光の効果を生じさせる面)に向かって回折され,導光板の表\面がこれに直交する高強度の出射光と導光板内に導かれる全反射光によって極めて明るく照らされるようにしたからであり,以上が本件発明における回折機
能の機序であるものと認められる。このような機序が本件発明の技術的思想を構\成していることからすれば,照光面とは反対側の面に回折格子を設けるようにしたこと,すなわち本件発明のうち板状
体の裏面に回折格子を設けるとの部分は,本件発明における本質的部分であるとい
うべきである。
そして,被告製品が板状体の裏面に回折格子を設けるという部分を備えていない
ことは,既に文言侵害との関係において検討したとおりであるから,結局,本件発
明と被告製品との相違部分は本質的部分であって,均等の第1要件を充足しないと
いうべきである。
◆判決本文
◆原審(平成28(ワ)4759)
では以下のように判断されていました。
以上からすると,本件発明が課題とするところは,いずれも本件特
許の出願時の従来技術によって,同様の解決原理によって解決されていたといえる。
・・・
刻線溝又はエンボス型のホログラムを用いた点にあるが,回折格子としては後者の方がむしろ通常であること(前記1(4)ウ(ア),(エ),(オ))からすると,本件発明の従来技術に対する貢献の程度は大きくないというべきである。
ウ 以上よりすれば,本件発明の本質的部分については,特許請求の範囲の
記載とほぼ同義のものとして認定するのが相当である。
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2019.07. 2
平成29(ワ)30826 特許権侵害行為差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成31年3月26日 東京地方裁判所(46部)
技術的範囲外と判断されました。均等侵害の主張も第1要件違反として否定されました。
原告は,本件シールブックが「折り重ねることによって形成されるシール
領域」を有していないという相違点(本件相違点)があるとしても,本件シ
ールブックは本件発明1の構成と均等なものとして,本件発明1の技術的範\n囲に属すると主張する。本件シールブックが本件発明1の構成と均等である\nというためには,特許請求の範囲に記載された構成中被告製品と異なる部分\nが特許発明の本質的部分でないことが必要である。
そして,特許発明における本質的部分とは,当該特許発明に係る特許請求
の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特\n徴的部分であると解すべきであり,特許請求の範囲及び明細書の発明の詳細
な説明の記載に基づいて,特許発明の課題及び解決手段とその作用効果を把
握した上で,特許発明に係る特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見ら
れない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定するこ\nとによって認定されるべきである。
イ 本件明細書の発明の詳細な説明の記載に照らすと,本件発明1は,シール
付き印刷物に関する発明であり,それまで知られていた特許文献1ないし3
(特開2007−334037号公報,特開2006−82542号公報,
特開2004−314621号公報〔乙2〕)に開示されたシール付き印刷
物では,「シール及びシール台紙は平面状であるため,立体的な広がりのあ
る使い方を提供できるものではな」く,また「通常のシールを製造する方法
が適用される」ため製造が容易でないとの課題が存在した(段落【0006】,
【0007】)。ここにいう「通常のシールを製造する方法」は,本件明細書
には直接記載はされていないが,上記各特許文献において,紙本体の少なく
とも一箇所を折り重ねることによってシール領域を形成する方法が開示さ
れていたと認めるに足りる証拠はない。
本件発明1は,従来技術における上記課題を踏まえ,「容易に製造するこ
とが可能」なシール付き印刷物を提供することを目的の1つとしており(段\n落【0007】),本件特許請求の範囲記載の構成,具体的には,シール及び\n台紙となる印刷が施された紙本体と,その少なくとも一箇所を折り重ねるこ
とによって形成されるシール領域との構成を有するシール付き印刷物とし,\n紙本体を折り重ねることで形成されたシール領域を有するもの(段落【00
13】)と認められる。
また,実施例である【図1】及び【図2】については,「シール(5,6)
及び台紙(4)となる印刷がされた紙本体2を折り重ねることでシール領域
3と台紙領域4が形成される。」(段落【0046】),「紙本体2を印刷する
工程の延長線上で,紙本体2にコーティング層32と粘着層31A,31B
を形成して貼り合わせることでシール領域3となるため,起立シール5を含\nむシールブック1を容易に製造することができる」(段落【0049】)と説
明されている。
これらの本件明細書における記載からすれば,本件発明1が解決しようと
する課題である「容易に製造することが可能」となるための構\成には,少な
くとも,1枚の「紙本体2」の両面に印刷を施した上で(段落【0020】
【0021】,図3),「紙本体2」を折り重ねて貼り合わせることによって\nシール領域を形成することにより(段落【0021】【0046】),製造さ
れたシール付き印刷物であるという構成を有することが含まれていると解\nすることができる。
したがって,本件特許請求の範囲の記載のうち,「紙本体の少なくとも一
箇所を折り重ねることによって形成されるシール領域」との構成は,従来技\n術に見られない特有の技術的思想を構成する本件発明の特徴的部分である\nといえる。
ウ これに対し,原告は,本件発明の本質的部分は,同種の紙素材を重ねて貼\nり合わせてシール領域と台紙領域を形成することであり,「折り重ねること
によって形成されるシール領域」は本件発明1の本質的部分ではないと主張
する。
しかし,前記イのとおり,「紙本体の少なくとも一箇所を折り重ねること
によって形成されるシール領域」との構成は,従来技術に見られない特有の\n技術的思想を構成する本件発明の特徴的部分であり,原告の主張は採用する\nことができない。
したがって,原告の上記主張は採用できない。
エ 前記のとおり,被告製品である本件シールブックは,構成要件1Cの「折\nり重ねることによって形成」との文言を充足しないから,本件発明1とはそ
の本質的部分において相違し,少なくとも均等の第1要件を充足しない。
したがって,被告製品である本件シールブックは,本件発明1と均等なも
のとして,その技術的範囲に属するものとは認められない。
◆判決本文
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2019.06.25
平成30(ワ)10130 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成31年4月24日 東京地方裁判所(29部)
CS関連発明の侵害事件です。会計ソフトについて非侵害と判断されました。均等も第1要件を満たさないと判断されました。
該当特許の公報は以下です。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-4831955/B4E648E4A31FB8F27049717998C719922F602DAF55832B56FBCB639C750A8DAC/15/ja
該当特許は無効審判もありますが、審決は見れない状態です(無効2018-800140)
ア 特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なか
った技術的課題の解決を実現するための,従来技術に見られない特有の技術的思想
に基づく解決手段を,具体的な構成をもって社会に開示した点にあることに照らすと,特許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の記載のう\nち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきである。\n
イ これを本件についてみると,前記のとおり,本件発明は,従来の現金主義に
基づく公会計では,政策レベルの意思決定に利用することは困難であったことに鑑
みて,国民が将来負担するべき負債や将来利用可能な資源を明確にして,政策レベルの意思決定を支援することができる会計処理方法及び会計処理を行うためのプロ\nグラムを記録した記憶媒体を提供することを課題とし,その課題を解決するための
手段として,純資産の変動計算書勘定を新たに設定し,当該年度の政策決定による
資産変動を明確にするとともに,将来の国民の負担をシミュレーションすることが
できる会計処理方法を提案するものである。
そして,前記のとおり,本件発明の処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘
定)は,国家の政策レベルの意思決定を記録,会計処理するために設定された勘定
であるのに対し,資金収支計算書勘定は,従来の公会計において単式簿記システム
で扱ってきた資金(現金及び現金同等物)の受入と払出を記録するものであり,閉
鎖残高勘定(貸借対照表勘定)及び損益勘定(行政コスト計算書勘定)も,企業会計における複式簿記・発生主義会計として用いられてきたものであるから,本件発\n明の課題解決手段である当該年度の政策決定による資産変動の明確化や将来の国民
の負担のシミュレーションは,国家の政策レベルの意思決定を対象とする処分・蓄
積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)によって行われるものと解するのが相当で
ある。その上で,本件発明は,資金収支計算書勘定と閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定),損益勘定(行政コスト計算書勘定)と処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計\n算書勘定),処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)と閉鎖残高勘定(貸
借対照表勘定)の各勘定連絡を前提として,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)に,当該年度における純資産増加(C3,C4)及び純資産減少(C1,\nC2)並びにこれらの差額(収支尻)である純資産変動額(C5)が表示される構\
成を採用しており,将来の国民の負担をシミュレーションするためには資産変動の
内訳も認識される必要があると認められることにも照らせば,本件発明の課題解決
手段である当該年度の政策決定による資産変動の明確化や将来の国民の負担のシミ
ュレーションは,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)に表示される純資産増加(C3,C4)及び純資産減少(C1,C2)並びにこれらの差額(収支\n尻)である純資産変動額(C5)によって行われるものと解するのが相当である。
また,上記のような解釈は,本件発明によるシミュレーションに関する本件明細
書の説明とも整合する。すなわち,本件明細書には,「次に,本発明の特徴である
シミュレーションについて説明する。損益外純資産変動計算書には,行政コストと,
当期に費消する財源措置で国民の純資産として将来に残る資産の科目からなる財源
措置とそれ以外の科目からなる財源措置と,当期に調達する財源で国民の純資産と
して将来に残る資産の科目からなる財源とそれ以外の科目からなる財源と,国民の
純資産として将来に残る資産の原因別増減額と,再評価による差額と,国民の純資
産として将来に残る資産の原因別増減額充当のために手当てされた財源と,会計処
理により,それらから導き出された現役世代の負担額と,将来世代の負担額,赤字
公債相当額,建設公債相当額などの金額が表の中に表\示される。」(【0069】),
「本発明によるシミュレーションは,現役世代の負担額と,将来世代の負担額,赤
字公債相当額,建設公債相当額などの金額に,目標とするべき金額を設定して,行
政コストや財源措置をどのように調整すれば目標とするべき金額が達成できるかを
演算するための手順を予め複数のプログラムとして設定する。」(【0070】)などとして,本件発明によるシミュレーションについて,損益外純資産変動計算書に表\示される行政コスト,財源措置,財源及び資産の原因別増減額等から導き出される
現役世代の負担額,将来世代の負担額,赤字公債相当額及び建設公債相当額等によ
って行われることが説明されており,本件発明の課題解決手段である当該年度の政
策決定による資産変動の明確化や将来の国民の負担のシミュレーションが処分・蓄
積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)に表示される純資産増加(C3,C4)及び純資産減少(C1,C2)並びに純資産変動額(C5)によって行われるという\n上記の解釈と整合する。
そうすると,本件発明に係る特許請求の範囲の記載のうち,国家の政策レベルの
意思決定に係る会計処理を対象とする処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘
定)を採用した上で,同勘定に表示される純資産減少(C1,C2)を構\成する勘
定科目の内容を具体的に規定する構成要件Hは,本件発明の課題解決手段を具体化する特有の技術的思想を構\成する特徴的部分であると認めるのが相当である。したがって,本件発明に係る特許請求の範囲の記載のうち,社会保障給付等の損
益外で財源を費消する取引を「財源措置(C2)」に含める構成(構\成要件H)は,
本件発明の本質的部分であると認められる。
ウ この点,原告は,社会保障給付を処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書
勘定)の「財源措置(C2)」に含める構成は,本件発明の非本質的部分であるとし,その理由として,1)本件発明の技術的思想の中核をなす特徴的原理は,純資産
変動計算書勘定の存在,4つの勘定の勘定連絡の設定,自動仕訳と勘定連絡を通じ
政策レベルの意思決定と将来の国民の負担をシミュレーションできる会計処理方法
のプログラミングにあり(本件明細書【0008】,【0010】,【0021】,
【0031】参照),社会保障給付を行政コスト計算書に計上する被告製品の構成は,本件発明の特徴的原理と無関係であること,2)社会保障給付を処分・蓄積勘定
(損益外純資産変動計算書勘定)の借方の財源措置に計上する構成を,損益勘定(行政コスト計算書勘定)に計上する構\成に置換したとしても,損益勘定(行政コスト計算書勘定)は処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)に振り替えら
れるから,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)の借方と貸方の差額
(収支尻)に示されている損益外の純資産変動額は同額となり,純資産変動額や将
来償還すべき負担の増減額を財務諸表の中に表\示することにより当該年度の政策決
定による資産変動を明確にするとともに,将来の国民の負担をシミュレーションで
きるという同一の作用効果を奏することなどを主張する。
しかしながら,前記のとおり,本件発明は,国家の政策レベルの意思決定を対象
とするものとして,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)という新たな
勘定を設定するものであり,当該年度の政策決定による資産変動の明確化や将来の
国民の負担のシミュレーションを通じた政策レベルの意思決定の支援は,処分・蓄
積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)によって実現されるものと解するのが相当
であり,本件明細書においても,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)
以外の勘定を用いて将来の国民の負担のシミュレーション等が行われることは説明
されていない(原告が指摘する本件明細書【0031】は,適切な勘定連絡を設定
することがシミュレーションをする前提として必要になることを説明するものであ
り,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)以外の勘定を用いてシミュレ
ーションを行うことを説明するものとは認められない。)。
そうすると,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)の借方に計上され
る金額の総額及び貸借差額が結果的に同一になるとしても,処分・蓄積勘定(損益
外純資産変動計算書勘定)以外の勘定を参照しなければ,国家の政策レベルの意思
決定に関する勘定科目(社会保障給付を含む)及びその金額が明らかにならないよ
うな構成は,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)を通じて国家の政策レベルの意思決定を支援する本件発明とは作用効果が異なるというべきである。\n
エ また,原告は,従来技術に対する本件発明の貢献の程度は大きいから,本件
発明の本質的部分は,「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)の導入に
より,将来世代に対して負担が現実的に先送りされた金額や将来利用可能な資源の増加額を可視化する」という構\成要件Hを上位概念化したものであって,被告製品は,そのような構成を備えていると主張する。原告の主張は必ずしも明確でないが,従来技術に対する本件発明の貢献の程度に\n照らし,本件発明の構成のうち,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)の設定以外のものは非本質的部分であると主張する趣旨であれば,本件出願日前に\n頒布された刊行物である乙12文献において,資金収支計算書勘定,貸借対照表勘定及び行政コスト計算書勘定に加えて,納税者,すなわち,国民の資産の変動を明\nらかにするための勘定として,財源措置・納税者持分増減計算書勘定を設ける構成が示されていることに照らし,少なくとも,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計\n算書勘定)の設定のみを従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると認めることはできないから,採用することができない。\n
オ そこで,被告製品をみると,被告製品では,前記のとおり,社会保障給付が
行政コスト計算書に計上されており,純資産変動計算書には,行政コスト計算書の
収支を基礎付ける勘定科目(社会保障給付を含む)及びその金額が示されていない
ことが認められ,「純経常費用(C1)と並んで財源措置(C2)という項目もあ
るが,これは具体的に言えば社会保障給付や…を指しており」(構成要件H)を充足するとはいえないから,本件発明と本質的部分において相違する。したがって,\n被告製品は,均等の第1要件を満たすとはいえない。
◆判決本文
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2019.02. 1
平成28(ワ)4759 不当利得返還請求事件 特許権 平成30年12月20日 大阪地方裁判所
特許の均等侵害における第1要件の判断において、先行の29条の2の先行文献を考慮して、本質的部分の判断がなされました。被告製品は、Amazonの「Kindle paperwhite」です。
(エ) 以上によれば,乙8には,「ホログラムの単位幅における格子部幅/非
格子部幅の比が,導光板の前面出射面から出射する光を効率よく,また,面内で均
一に出射されるように,管状光源から離れる側の方が増大せしめられている」構成\nが開示されているといえる。
ウ したがって,乙8発明は,本件発明の構成要件Bと同一の構\成を備える
ものであるから,相違検討点2は相違点とはいえない。
エ 原告の主張について
原告は,乙8には,導光板に設けるホログラムの面積密度を増減させる技術思
想が開示されているだけで,回折格子の単位幅における格子部幅/非格子部幅の比を変化させる技術思想は開示されていないと主張する。
しかし,前記アのとおり,本件発明も,格子部の面積の変化を通じて,導光板の
表面における輝度を増大させ,かつ均一化させるものであり,本件発明と乙8発明\nはその解決課題と解決原理を共通にしている。
そして,上記のとおり,乙8には,本件発明の構成要件Bの構\成を備えたホログ
ラムの構成が開示されていると認められるから,本件発明の構\成要件Bはこれを別
の表現で記述したものにすぎず,同一の構\成が開示されていることに変わりはない。
したがって,原告の主張は採用できない。
(6) 小括
以上によれば,本件発明と乙8発明とは,前記の相違検討点1において相違す
るから,同一の発明とはいえず,乙8による特許法29条の2違反の無効理由が存
するとは認められないが,本件発明と乙8発明とは,その解決課題及び解決原理を
共通にしており,解決手段たる回折格子の種類についてのみ相違するにすぎないと
いうことができる。
・・・
(ア) 本件明細書に記載された従来技術及びその課題
前記認定のとおり,本件明細書では,本件発明に関する従来技術として,
導光板の下面に多数の多面プリズムをもつ透明アクリル樹脂からなり,プリズムに
よる光の全反射を利用する導光板が記載されており,その具体例として,特開平5
−127157号公報記載の平面照光装置(本件明細書の図6参照)が挙げられて
いる。
そして,その従来技術によっても液晶表示パネルを下方から輝度ムラが少なく明るく照らすことができると記載されているが(【0003】),1)導光板の下面にある
多面プリズムの一辺が例えば0.16mmと,光の波長に比べて相当大きいものである
うえ,各プリズムが協同することなく個別に光を全反射するものであるため,導光
板の輝度を全体に高めようとすると,各プリズムの間の谷間にあたる箇所で乱反射
が起きて上面に向かう光量が減り,照光面である上面に極端な明暗のコントラスト
が生じるという課題,及び2)このような導光板を設けた平行照光装置を電池で駆動
される液晶表示装置に用いると,照光面に向かう上記光量の減少を補って高輝度を\n得るべく,光源を大電流で照らす必要があるため,電池の寿命が短くなって,長期
使用ができなくなるという課題があったことが記載されている(【0004】)。
(イ) 本件発明の課題解決手段
本件発明は,従来技術の上記課題を解決するため,「光の幾何光学的性質を
利用した従来のプリズムによる全反射でなく,・・・光の波動の性質に基づく回折現象
を利用して,従来より遥かに高く,かつ均一な輝度を照光面全体に亘って得ることが
でき,ひいては光源の電力消費の低減による電池の長寿命化も図ることができる導
光板を提供すること」を目的として(【0005】),本件発明の構成を採用したもの\nである。その構成は,(a)透明な板状体である導光板の裏面に回折格子を設け,導光
板の少なくとも一端面から入射する光源からの光をその表面側へ回折させるという点(構\成要件A),(b)上記回折格子の断面形状または単位幅における格子部幅/非
格子部幅の比の少なくとも1つを,上記導光板の表面における輝度が増大し,かつ\n均一化されるように変化させる点(構成要件B)である。
(ウ) 本件発明の作用効果
本件発明の導光板は,α 少なくとも一端面から光源からの光が入射する透
明な板状体の裏面に設けられた回折格子の断面形状または単位幅における格子部幅
/非格子部幅の比の少なくとも1つが,上記導光板の表面における輝度が増大し,\nかつ均一化されるように変化せしめられているので,光の波長に比べて寸法が大き
く互いに協同することなく個別に光を幾何光学的に全反射する従来の導光板裏面のプリズムと異なり,ミクロン単位の互いに隣接する微細な格子が協同,相乗して波動
としての光を格段に強く回折できるうえ,β 上記一端面から離れて光源から届く光
量が減じるほど,光をより強く回折するように上記断面形状または単位幅における
格子部幅/非格子部幅の比が調整されているので,導光板の表面は高輝度で非常に\n均一に照らされる。
したがって,γ この導光板を電池で駆動される液晶表示装置,液晶テレビ,非常口
を表示する発光誘導板などに適用すれば,従来に比して格段に少ない消費電力で明\nるく均一な照明を得ることができ,光源および電池の寿命を延ばし,長期使用を可
能にすることができる(【0009】,【0023】)
(エ) もっとも,本件の場合,本件明細書に従来技術が解決できなかった課
題として記載されているところは,以下のとおり,出願時の従来技術に照らして客
観的に見て不十分なものと認められる。
a 導光板においてプリズムによる全反射を利用するのでは光量が減るとの課題(上記(ア)1))を,導光板の裏面に回折格子を設け,回折現象を利用して解決する構成(上記(イ)の(a),上記(ウ)α)について
本件明細書では,導光板の従来技術として,プリズムによる全反射を利用したもののみが記載され,回折現象は今まで導光板に用いられることがなかった
と記載されている。
しかし,原告は平成6年3月11日に自ら,発明の名称を「回折格子を利用した
バックライト導光板」とし,特許請求の範囲(請求項1)を「成形加工及び印刷
(転写を含む)された回折格子を裏面に有する事を特徴とするプラスチック製のバ
ックライト導光板。なをここで裏面とは,液晶面と反対側の面と定義する。」とする
特許の出願をし,その明細書では,【課題を解決するための手段】の項において,
「導光板裏面に光と干渉する程度に微細なスリット形状を成形加工ないし印刷(転
写を含む)し,この反射格子により導光板の一端から入射する光を液晶面側に回折
させる。」(【0006】)と記載し,【発明の効果】の項において,この発明によれば蛍光管からの光を回折格子という極小単位の形状(格子スリットのピッチがサブミ
クロンから数十ミクロン)の大きさのものの作用により,導光板面を均一に輝らす\n事ができるので,従来からのドット印刷や全反射を利用した導光板裏面加工による
方式に比較して,格段の面輝度とその均一性が可能になる。」(【0017】)と記載\nしていた(特願平6−79172)(乙10,20)。そして,これは本件発明の構\n成要件Aと同じ構成を備えた発明と認められる。\nまた,前記1で技術的意義等を認定した乙8発明も,回折格子の種類は同じとは
認められないものの,導光板の裏面に回折格子を設け,回折現象を利用して光量の
増大を図る発明である(乙8発明のようないわゆる拡大先願発明も参酌すべきこと
は後記のとおりである。)。
以上より,導光板においてプリズムによる全反射を利用するのでは光量が減ると
の課題は,本件特許の出願日において,本件発明と同じく導光板の裏面に回折格子
を設け,回折現象を利用することによって既に解決されている課題であったと認め
られる。
b 導光板においてプリズムによる全反射を利用するのでは照光面に極
端な明暗のコントラストが生じるとの課題(上記(ア)1))を,回折格子の断面形状ま
たは単位幅における格子部幅/非格子部幅の比の少なくとも1つを,上記導光板の
表面における輝度が増大し,かつ均一化されるように変化させることにより解決す\nる構成(上記(イ)の(b),上記(ウ)β)について
先に争点2−2(前記1)について述べたとおり,乙8発明も,導光板
の裏面にホログラムの回折格子を設け,回折現象を利用するものであり,かつ,本
件発明の構成要件Bと同一の構\成を備え,それにより,導光板の表面から出射する\n光を効率よく,また,面内で均一に出射されるようにするものである。もっとも,
この乙8発明に係る特許の出願日は平成7年10月27日であり,本件特許の出願
よりも前に出願されたものであるが,乙8発明に係る特許について出願公開がされ
たのは平成9年5月16日であり(乙8),本件特許の出願後であるから,乙8発明
はいわゆる拡大先願発明に該当するにすぎない。しかし,特許法29条の2は,特
許出願に係る発明が拡大先願発明と同一の発明である場合を特許要件を欠くものとしているところ,その趣旨の中には,先願の明細書等に記載されている発明は,出
願公開等により一般にその内容が公表されるから,たとえ先願が出願公開等をされ\nる前に出願された後願であっても,その内容が先願と同一内容の発明である以上,
さらに新しい技術を公開するものではなく,そのような発明に特許権を与えること
は,新しい発明の公開の代償として発明を保護しようとする特許制度の趣旨からみ
て妥当でないとの点がある。このように特許法が,先願の明細書等に記載された発
明との関係で新しい技術を公開するものでない発明を特許権による保護の対象から
外している法意からすると,均等侵害の成否の判断のために発明の本質的部分とし
て従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分を認定するに当た\nっては,拡大先願発明も参酌すべきものと解するのが相当である。
そうすると,導光板においてプリズムによる全反射を利用するのでは照光面に極
端な明暗のコントラストが生じるとの課題は,本件特許の出願日において,回折格
子として刻線溝又はエンボス型のホログラムを用いるか体積・位相型のホログラム
を用いるかの違いがあるとはいえ,本件発明と同じく,回折格子の単位幅における
格子部幅/非格子部幅の比を,導光板の表面における輝度が増大し,かつ均一化されるように変化させることによって既に解決されている課題であったと認められる。\n
c そして,本件発明の,少ない消費電力で明るく均一な照明を得るこ
とができないとの課題(上記(ア)2))は,上記a及びbで述べた課題が解決されるこ
とに伴い解決されるものである(上記(ウ)γ)から,やはり既に解決されている課題
であったと認められる。
d 以上からすると,本件発明が課題とするところは,いずれも本件特
許の出願時の従来技術によって,同様の解決原理によって解決されていたといえる。
本件発明がそれらの従来技術と異なる点は,回折格子の単位幅における格子部幅/
非格子部幅の比を,導光板の表面における輝度が増大し,かつ均一化されるように変化させることについて,体積・位相型のホログラムではなく,刻線溝又はエンボ\nス型のホログラムを用いた点にあるが,回折格子としては後者の方がむしろ通常で
あること(前記1(4)ウ(ア),(エ),(オ))からすると,本件発明の従来技術に対する
貢献の程度は大きくないというべきである。
ウ 以上よりすれば,本件発明の本質的部分については,特許請求の範囲の
記載とほぼ同義のものとして認定するのが相当である。
この点について,原告は,本件発明の本質的部分は,光の波動の性質に基づく回
折現象を利用して,回折格子の断面形状又は単位幅における格子部幅/非格子部幅
の比に着目した点にあると主張するが,これまで述べたことに照らして採用できな
い。
エ そうすると,被告製品の導光板では,前記のとおり,微細構造体が回折\nされた光が進行する側に設けられていることから,構成要件Aでいうところの「表\
面」に微細構造体が設けられ,光源からの光が「表\面」側に回折させられている。
したがって,被告製品の導光板は構成要件Aの「板状体の裏面に設けられた回折格\n子」という部分を充足していない。よって,被告製品が本件発明の本質的部分を備えているということはできず,本件発明と被告製品とは本質的部分において相違すると認められるから,被告製品は,均等の第1要件を充足しない。
◆判決本文
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2018.11. 1
平成28(ワ)3856 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成30年9月19日 東京地方裁判所(29部)
ドワンゴVSFC2の特許権侵害について、文言侵害および均等侵害が否定されました。第1,第5要件を満たさないというものです。
以上のとおり,「第1の表示欄」は動画を表\示するために確保された領域(動画表\n示可能領域),「第2の表\示欄」はコメントを表示するために確保された領域(コメン\nト表示可能\領域)であり,「第2の表示欄」は「第1の表\示欄」よりも大きいサイズで
いずれも固定された領域であると解されるところ,被告ら各装置においては,動画表\n示可能領域(被告ら装置1における「StageオブジェクトA」,被告ら装置2及\nび3における<iflame>要素又は<video>要素)とコメント表示可能\領
域(被告ら装置1における「CommentDisplayオブジェクトD」,被告
ら装置2及び3における<canvas>要素)は同一のサイズであるから,被告ら
各装置は,「第1の表示欄」及び「第2の表\示欄」に相当する構成を有するとは認め\nられない。したがって,被告ら各装置は,本件発明1−1の「第1の表示欄」(構\成要
件1−1C,1−1E,1−1F)及び「第2の表示欄」(構\成要件1−1D,1−1
E,1−1−1F)を充足するとは認められず,本件発明1−1の技術的範囲に属するとは認められない。
そして,被告ら各装置は,同様に,本件発明1−5の「第1の表示欄」及び「第2\nの表示欄」(構\成要件1−5J)を充足せず,そうである以上,「第2の表示欄」を構\
成要素とする「コメント表示部」(構\成要件1−1D,1−2H,1−5J,1−6L)も充足しないから,本件発明1−2,1−5及び1−6の技術的範囲に属するとは認
められない。
また,本件発明1−9及び1−10は,発明の対象が「プログラム」であるが,発
明の対象を「表示装置」とする本件発明1−1及び1−2と対応するものである。したがって,被告ら各プログラムは,本件発明1−1及び1−2と同様に,「第1の表\
示欄」(構成要件1−9B,1−9E)及び「第2の表\示欄」(構成要件1−9E)を\n充足せず,本件発明1−9を引用している本件発明1−10の構成要件1−10Hも\n充足しないから,本件発明1−9及び1−10の技術的範囲に属するとは認められない。以上のとおりであるから,被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,文言上,本件
発明1の技術的範囲に属するとは認められない。
・・・
ア 特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なかっ
た技術的課題の解決を実現するための,従来技術に見られない特有の技術的思想に基
づく解決手段を,具体的な構成をもって社会に開示した点にあるから,特許発明にお\nける本質的部分とは,当該特許発明に係る特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に
見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきである。そして,\n上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて,
特許発明の課題及び解決手段とその作用効果を把握した上で,特許発明に係る特許請
求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部\n分が何であるかを確定することによって認定されるべきである(知財高裁平成27年
(ネ)第10014号同28年3月25日特別部判決・判時2306号87頁参照。)。
イ これを本件についてみると,前記2(3)で説示したとおり,本件発明2は,複数
のコメントが書き込まれても,コメントの読みにくさを低減させることができる表示\n装置,コメント表示方法及びプログラムを提供することを目的とするものであって,\nコメント表示部によって表\示されるコメントが他のコメントと重なるか否かを判定
し,コメントが重なると判定した場合に,コメント同士が重ならない位置にコメント
を表示させるようにし,複数のコメントが表\示される場合において,コメント同士が
動画上で重なってしまい,各コメントが判読できなくなってしまうことを防止するこ
とができるようにするとともに,動画の再生中に他の端末装置から入力されたコメン
トをリアルタイムに受信して当該動画上に表示し,そのコメントをダイナミックに変\n動させることにより,リアルタイムな双方向のコミュニケーションを可能にし,大人\n数でコメントを交換する面白みを増加させる発明である。上記の「動画の再生中に他
の端末装置から入力されたコメントをリアルタイムに受信して当該動画上に表示し,\nそのコメントをダイナミックに変動させることにより,リアルタイムな双方向のコミ
ュニケーションを可能にする」という作用効果は,コメント配信サーバが端末装置か\nらコメント情報を受信してそれを送信するタイミングがリアルタイムに行われるこ
と,すなわち,構成要件2−1Cに規定されているように「前記コメント配信サーバ\nが前記端末装置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信
されるコメント情報を受信」との構成によって実現されているのであり,本件特許2\nの出願経過においても,上記構成は,表\示すべき文字情報があらかじめ決定されてい
る従来技術との比較において,「ユーザの端末装置から送信されるコメントを受信し
て表示するものであり,コメントを受信する毎に,表\示するコメントがダイナミック
に変動する点」が相違すると説明されている。そうすると,構成要件2−1Cは,動\n画の再生中に他の端末装置から入力されたコメントをリアルタイムに受信して当該
動画上に表示し,そのコメントをダイナミックに変動させることにより,リアルタイ\nムな双方向のコミュニケーションを可能にする」という作用効果を奏する構\成を具体
的な構成として特定したものであり,この構\成が従来技術にみられない特有の技術的
思想を構成する特徴的部分であり,本件発明2における本質的部分であるというべき\nである。
ウ 他方,前記のとおり,被告ら各装置は構成要件2−1Cを充足せず,被告ら各\nプログラムは構成要件2−9Bを充足しないから,被告ら各装置及び被告ら各プログ\nラムが本件発明2の本質的部分を備えているということはできず,本件発明2と被告
ら各装置及び被告ら各プログラムは本質的部分において相違すると認められる。
(3) 第5要件(特段の事情)について
前記2(2)において認定したとおり,本件特許2の出願経過として,1)特許庁審査官
は,平成22年11月24日を起案日とする拒絶理由通知書(乙24)において,出
願当初の特許請求の範囲請求項1ないし6及び8ないし12に係る各発明について,
特許法29条2項の規定により特許を受けることができない旨を通知し,2)原告は,
平成23年1月31日付け手続補正書(乙25)において明細書を補正し,請求項1
に「前記コメント配信サーバが前記端末装置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメント情報を受信し,前記コメント情報記憶部に
記憶する受信部と,」との構成を,請求項9に「前記コメント配信サーバが前記端末装\n置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメン
ト情報を受信し,」との構成を付加して変更し,3)特許庁審査官はこれに対して特許
査定をしたものである。
上記の出願経過からすれば,原告は,拒絶理由を回避するために構成要件2−1C\n及び構成要件2−9Bを備えた発明に限定して特許を受けたものといえるから,上記\n構成要件の全部又は一部を備えない発明について,本件発明2の技術的範囲に属しな\nいことを承認したか,少なくとも外形的にそのように解される行動をとったものと理
解することができる。
したがって,均等の成立を妨げる特段の事情があるというべきであり,均等の第5
要件を充足しない。
◆判決本文
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2018.09.28
平成29(ワ)22417 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成30年8月29日 東京地方裁判所
CS関連発明の侵害事件です。裁判所(29部)は、技術的範囲に属しないと判断しました。均等侵害も第1要件を満たさないとしました。
(2)本件各発明の意義
上記(1)の本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件特許の特許請求の範囲請
求項1及び3の記載によれば,本件各発明は,より広範で深い人間関係を結ぶための,
人脈関係登録システム,人脈関係登録方法とサーバ,人脈関係登録プログラムと当該
プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体に関するものであり,より広\n範で深い人間関係を結ぶことを積極的にサポートするために,上記人脈関係登録シス
テム等を提供することを目的とするものであって,登録者相互間の合意によって人間
関係が結ばれたとき,記録手段を備えたサーバに,人間関係を結んだ登録者の個人情
報又は識別情報を関連付けて記憶することで,個人情報又は識別情報を含む検索キー
ワードによって第二の登録者と人間関係を結んでいる第三の登録者の個人情報又は
識別情報を検索することができるようにするという発明である,と認められる。
2 被告サーバの構成について\n証拠(甲16,乙4,7)及び弁論の全趣旨によれば,被告サーバにおいて,人間
関係を記憶する手順は,次のとおりであり,これを図示すると,別紙「被告サーバの
動作フロー」のとおりである(同別紙では,アカウント1号を甲,アカウント2号を
乙と表記している。)と認められる。すなわち,他のユーザと人間関係を結ぶ申\請をす
ることを意味する「友達申請」(以下,単に「友達申\請」という。)をするユーザを「アカウント1号」,友達申請をされるユーザを「アカウント2号」として説明すると,1)
アカウント1号が「友達申請をする」と示されたボタンをクリックする(画面08),\n2)被告サーバがアカウント1号に確認画面を送信する,3)アカウント1号が「送信す
る」と示されたボタンをクリックする(画面09),4)被告サーバが記憶手段に友達申\n請に係るデータを登録する,5)被告サーバが記憶手段にアカウント1号及びアカウン
ト2号の人間関係が結ばれた旨の友達リストの仮登録をする,6)被告サーバがアカウ
ント2号に友達申請がされたことを通知する(画面12),7)被告サーバがアカウン
ト1号に友達申請の完了画面を送信する(画面11),8)アカウント2号が被告サー
バにアカウント1号のプロフィールを要求する(画面13,14),9)被告サーバが記
憶手段からアカウント1号のプロフィールを取得する,10)被告サーバがアカウント2
号にアカウント1号のプロフィールを送信する,11)アカウント2号が「友達になる」
と示されたボタンをクリックする(画面15),12)被告サーバが記憶手段の友達リス
トを更新して本登録をし,友達として関連付けることが完了する,13)被告サーバがア
カウント1号に友達申請が承認されたことを示すメール(甲16)を送信する,とい\nうものである。
そうすると,被告サービスにおいては,被告サーバの記憶手段にアカウント1号と
アカウント2号の人間関係が結ばれたとして関連付けられた後に,アカウント1号に
対して友達申請が承認されたことを示すメールが送信されるという処理がされるの\nであり,アカウント1号とアカウント2号が友達として記憶された後に,仮にアカウ
ント1号に対し友達申請が承認された旨が通知されなかったとしても,被告サーバに\nおいては,アカウント1号とアカウント2号が友達であると記憶されているといえる。
3 争点1(被告サーバは,文言上,本件各発明の技術的範囲に属するか)について
事案に鑑み,まず,争点1−3(被告サーバは構成要件1D及び2Dを充足するか)\nについて判断する。
(1) 構成要件1Dは,「上記第二のメッセージを送信したとき,上記第一の登録者\nの個人情報と第二の登録者の個人情報とを関連付けて上記記憶手段に記憶する手段
と,」というものであり,本件発明1においては,サーバが,第二の登録者と人間関係
を結ぶことを希望する旨の第一の登録者からのメッセージである「第一のメッセージ」
を受信して同メッセージを第二の登録者の端末に送信し,第二の登録者からこれに合
意する旨のメッセージである「第二のメッセージ」を受信して,同メッセージを第一
の登録者に送信したことを条件として,又は送信した後で,第一の登録者の個人情報
と第二の登録者の個人情報とを関連付けて記憶手段に記憶するものとして規定して
いるということができる。
そして,構成要件1Dの「個人情報」が「識別情報」に置き換えられているほかは,\n構成要件1Dと文言を共通にする構\成要件2Dについても,サーバが第二のメッセー
ジを送信したことを条件として,又は送信した後で,第一の登録者の識別情報と第二
の登録者の識別情報とを関連付けて記憶手段に記憶するものとして規定していると
認められる。
(2) この点,原告は,構成要件1D及び2Dにおける「送信したとき」の「とき」\nは「ある幅をもって考えられた時間」という意味であるとして,構成要件1D又は2\nDは,第一の登録者の個人情報又は識別情報を第二の登録者の個人情報又は識別情報
とが関連付けられた後に第二のメッセージが送信される場合をも含む旨を主張する
が,「送信したとき」とは,送信したことを条件とする旨表す表\現であると解釈するの
が一般的かつ自然な解釈であるというべきであり,また,これが時を表す表\現である
と解釈したとしても,送信という動作が完了していることを表す表\現が用いられてい
ることからすると,送信することが関連付けることに先行すると解釈するのが一般的
かつ自然であって,本件明細書その他にも異なる解釈を導く説明は見当たらない。
したがって,構成要件1D及び2Dの記載は,送信の実行が先行し,その後に関連\n付ける旨の実行がされることを規定していると解され,原告の上記主張を採用するこ
とはできない。
(3)そこで,被告サービスについてみると,前記2において認定したとおり,被告
サービスにおいては,被告サーバの記憶手段に第一の登録者に相当するアカウント1
号と第二の登録者に相当するアカウント2号が友達として登録されて関連付けるこ
とが終了した後に,アカウント1号に対して友達申請が承認されたことを示すメール\nが送信されるという処理がされるのであるから,被告サーバは,「第二のメッセージ
を送信したとき」に,「上記第一の登録者の個人情報と第二の登録者の個人情報とを
関連付けて上記記憶手段に記憶する手段」又は「上記第一の登録者の識別情報と第二
の登録者の識別情報とを関連付けて上記記憶手段に記憶する手段」を有しているとい
うことはできない。したがって,その余の点について判断するまでもなく,被告サー
バは,構成要件1D及び2Dを充足しない。\nよって,被告サーバは,文言上,本件各発明の技術的範囲に属すると認めることは
できない。
・・・・
これを本件についてみると,前記1(2)で説示したとおり,本件各発明は,より
広範で深い人間関係を結ぶための,人脈関係登録システム,人脈関係登録方法とサー
バ,人脈関係登録プログラムと当該プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記\n録媒体に関するものであり,より広範で深い人間関係を結ぶことを積極的にサポート
するために,上記人脈関係登録システム等を提供することを目的とするものであって,
登録者相互間の合意によって人間関係が結ばれたとき,記録手段を備えたサーバに,
人間関係を結んだ登録者の個人情報又は識別情報を関連付けて記憶することで,個人
情報又は識別情報を含む検索キーワードによって第二の登録者と人間関係を結んで
いる第三の登録者の個人情報又は識別情報を検索することができるようにするとい
う発明である。そして,登録者相互間の合意は,メールの交換によって行われるもの
されている(段落【0011】,【0015】)。そうすると,本件各発明の構成要件1D及び2Dの「第二のメッセージを送信したとき,…関連付けて上記記憶手段に記憶\nする」という構成は,登録者相互間の合意(メッセージの交換)によって人間関係が\n結ばれたとき,記録手段を備えたサーバに,人間関係を結んだ登録者の個人情報又は
識別情報を関連付けて記憶するという課題解決手段を具体的な構成として特定した\nものであって,この構成が従来技術に見られない特有の技術的思想を構\成する特徴的
部分であり,本件各発明における本質的部分というべきである。
これに対し,原告は,より広範で深い人間関係を結ぶために共通の人間関係を結ん
でいる登録者の検索を容易にするということが本件各発明の本質であり,本件各発明
における友達申請メッセージ(第一のメッセージ)や承認メッセージ(第二のメッセ\nージ)のやり取りに係る構成は,人間関係を結ぶための「合意の手段」としての意味\nを有するにすぎず,本件各発明において非本質的な部分である旨主張する。
しかしながら,本件各発明の構成要件1D及び2Dの「第二のメッセージを送信し\nたとき,…関連付けて上記記憶手段に記憶する」という構成が,本件各発明の課題解\n決手段を具体的な構成として特定したものであることは前記のとおりであるから,個\n人情報又は識別情報を関連付けて記憶する過程のみを切り離して,それらの処理のタ
イミングを規定したものにすぎないということはできず,本件各発明の非本質的部分
であるということはできない。また,本件各発明は,個人情報又は識別情報を含む検
索キーワードによって第二の登録者と人間関係を結んでいる第三の登録者の個人情
報又は識別情報を検索することを内容とするものである(構成要件1Eないし1G,\n2E)が,それを超えて,共通の人間関係を結んでいる登録者の検索を容易にすると
いうことが,本件各発明の課題又は目的とされて本件各発明の構成として具体的に反\n映されているとはいえず,原告の主張を裏付けるに足る本件明細書の記載その他の証
拠はない。
したがって,原告の主張は採用することができない。
ウ そうすると,本件各発明の構成要件1D及び2Dの「第二のメッセージを送信\nしたとき,…関連付けて上記記憶手段に記憶する」という構成は,本件各発明におけ\nる本質的部分であると解されるところ,前記説示のとおり,被告サーバは,メッセー
ジを交換する前に,登録者相互間の関連付けが終了するのであって,上記構成を有し\nていないから,その相違部分が本件各発明の本質的部分ではないとはいえず,均等の
第1要件(非本質的部分)を充足しない。
◆判決本文
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2018.09.27
平成29(ネ)10064 特許権侵害行為差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成30年9月25日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
特許権侵害訴訟の控訴審です。知財高裁第1部は、被告装置1−2は本件訂正発明1の1の技術的範囲に属する、被告装置3は本件訂正発明4の技術的範囲に属し,かつ,無効理由無し、その他の被告装置は技術的範囲に属しない、とした1審判断を維持しました。均等侵害も第1、第2要件を満たさないとしました(1審と同じ)。損害額については変わりありませんが、「寄与率」という用語が「損害額の推定の覆滅」と変更されてます。
前記のとおり(引用に係る原判決「事実及び理由」第4の1(1)イ(原判決
65頁6行目〜21行目)),本件訂正発明1の1及び1の2の従来技術には,基
礎杭等の造成にあたって地盤を掘削する掘削装置として一般に使用されるアースオ
ーガ装置では,オーガマシンの駆動時の回転反力を受支するために必ずリーダが必
要となるが,リーダの長さが長くなると,傾斜地での地盤掘削にあっては,クロー
ラクレーンの接地面とリーダの接地面との段差が大きい場合にリーダの長さを長く
とれず,掘削深さが制限されるという課題等があった。そこで,本件訂正発明1の
1及び1の2は,これらの課題を解決するために,掘削装置について,掘削すべき
地盤上の所定箇所に水平に設置し,固定ケーシングを上下方向に自由に挿通させる
が,当該固定ケーシングの回転を阻止するケーシング挿通孔を形成してなるケーシ
ング回り止め部材を備えるものとして,リーダではなく,ケーシング回り止め部材
によって回転駆動装置の回転反力を受支するものとした発明と認められる。
ここで,回転駆動装置の回転反力を受支するには,1)回転駆動装置の回転反力が
固定ケーシングによって受支されるとともに,2)固定ケーシングの回転反力がケー
シング回り止め部材によって受支されなくてはならない。そうすると,1)を具体的
に実現する「固定ケーシングが,掘削軸部材に套嵌されると共に,回転駆動装置の
機枠に一体的に垂下連結される」構成及び2)を具体的に実現する「ケーシング回り
止め部材が,掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の
横向きH形鋼からなる一対の支持部材上に載設固定され,固定ケーシングを上下方
向に自由に挿通させるが該固定ケーシングの回転を阻止することができるケーシン
グ挿通孔を有する」構成により,ケーシング回り止め部材によってケーシング,ひ\nいては回転駆動装置の回転反力を受支するようにしたことが,従来技術には見られ
ない特有の技術的思想を有する本件訂正発明1の1の特徴的部分であり,その本質
的部分というべきである。
(ウ) したがって,固定ケーシングが回転駆動装置の機枠に一体的に垂下連結さ
れる構成を有しない被告装置1−3〜1−8は,本件訂正発明1の1と本質的部分\nを異にするものであり,第1要件を満たさない。
・・・
このことから,本件訂正発明1の1の「固定ケーシング5」は,「固定ケーシン
グ5が円筒状ケーシングからなるため,地盤への固定ケーシング5の打ち込み及び
引き抜きが容易となり」【0028】とも記載されているように,回転駆動装置1
の下部から垂下され,ケーシング回り止め部材7のケーシング挿通口8に挿入され,
掘削軸部材2及びダウンザホールハンマー4と共に地盤の掘削により地盤に打ち込
まれ,地盤を所定深度まで掘削したら,ダウンザホールハンマー4の作動を停止さ
せた後,昇降操作用ワイヤーWを巻取り操作して,掘削軸部材2及びダウンザホー
ルハンマー4と共に引き上げられることを前提としたものである。
そうすると,本件訂正発明1の1の掘削装置においては,掘削後に引き抜くこと
を前提にケーシングと回転駆動装置の機枠とを一体的に連結することによって,回
転駆動装置とケーシングを掘削後に引き抜く際に,地盤内でケーシングにかかる土
圧による抵抗に抗してこれを引き抜くことが可能になるものということができる。\nこれに対し,ケーシングと回転駆動装置との機枠とを一体的に連結するのでなく
着脱自在の構成にした場合,そもそも着脱自在の構\成はケーシングを掘削後に残置
させることができるという作用,効果を奏するものであるし,仮にこの構成でケー\nシングを引き上げるとすると,ケーシングと回転駆動装置の機枠との連結部の強度
が十分でないために,引き抜くことが不可能\ないし極めて困難となり,本件訂正発
明1の1の目的を達成することができない。
したがって,掘削後にケーシングを引き抜くことを前提とした本件訂正発明1の
1の掘削装置において,回転駆動装置にケーシングを着脱自在に連結する構成を採\n用すると,本件訂正発明1の1の目的を達成することが困難となり,同一の作用効
果を奏しなくなる。
そして,被告装置1−3〜1−8の構成につき,いずれも回転駆動装置の下部に\n連結された中空スリーブに設けられたスリット状の切り欠きとケーシング外周軸方
向に固設された角鉄とを係合させることにより,中空スリーブとケーシングとを着
脱自在に係合するものであるとする限りでは,当事者間に争いがない。
(イ) 以上によれば,被告装置1−3〜1−8は,第2要件を満たさない。
◆判決本文
1審判決はこちら。
◆平成25(ワ)10958
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◆平成29(行ケ)10193
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2018.06.25
平成29(ネ)10096 損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成30年6月19日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
均等侵害が成立するかが争われました。出願人は、拒絶理由通知に対して、拒絶理由のない従属請求項に限定する補正をおこないました。知財高裁4部は、1審と同様に、均等の第1、第5要件から、均等成立を否定しました。
本質的部分について、上位概念化できるかについての判断基準について言及しています。
特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なか
った技術的課題の解決を実現するための,従来技術に見られない特有の技術的思想
に基づく解決手段を,具体的な構成をもって社会に開示した点にある。したがって,\n特許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,
従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきで\nある。
そして,上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて,特許
発明の課題及び解決手段とその作用効果を把握した上で,特許発明の特許請求の範
囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が\n何であるかを確定することによって認定されるべきである。すなわち,特許発明の
実質的価値は,その技術分野における従来技術と比較した貢献の程度に応じて定め
られることからすれば,特許発明の本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記
載,特に明細書記載の従来技術との比較から認定されるべきである。そして,従来
技術と比較して特許発明の貢献の程度が大きいと評価される場合には,特許請求の
範囲の記載の一部について,これを上位概念化したものとして認定され,従来技術
と比較して特許発明の貢献の程度がそれ程大きくないと評価される場合には,特許
請求の範囲の記載とほぼ同義のものとして認定されると解される。
ただし,明細書に従来技術が解決できなかった課題として記載されているところ
が,出願時の従来技術に照らして客観的に見て不十分な場合には,明細書に記載さ\nれていない従来技術も参酌して,当該特許発明の従来技術に見られない特有の技術
的思想を構成する特徴的部分が認定されるべきである。そのような場合には,特許\n発明の本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載のみから認定される場合に
比べ,より特許請求の範囲の記載に近接したものとなり,均等が認められる範囲が
より狭いものとなると解される。
・・・・
本件特許出願日以前に,キャラクター画像情報に対する課金方法として,携帯端
末自体を改めて販売する態様ではないもの,すなわち,毎月100円を支払うこと
により携帯電話機へ毎日異なるキャラクタ画面データを配信するiモード上での上
記サービス「いつでもキャラっぱ!」が公知であったこと(乙6),及びiモード
においてはコンテンツプロバイダー(情報提供者)がコンテンツの情報料をNTT
ドコモから携帯電話の通信料と合わせて課金し得るシステムが採用されていたこと
(乙9)が認められる。このことに鑑みれば,本件特許出願日において,「サービ
ス提供者にとっても,…キャラクター画像情報を更新するには,携帯端末自体を改
めて販売するしかない」ため「キャラクター画像情報により効率良く利益を得るの
は困難であった。」(本件明細書【0003】)との課題が未解決のままであった
とは認められない。
d しかるに,本件明細書には,乙6,8及び9記載の上記技術についての記載
はない。したがって,本件明細書に従来技術が解決できなかった課題として記載さ
れているところは,本件特許出願日における従来技術に照らして客観的に見て不十分なものと認められる。\nそうすると,本件発明の本質的部分は,本件明細書の記載に加えて,乙6,8及
び9記載の前記技術も参酌して認定されるべきである。
(オ) そして,本件明細書の記載並びに乙6,8及び9記載の前記技術によれば,
キャラクター選択・変更等の態様に関する構成(前記1)並びに2)及び3)の組合せ)
について,本件明細書は,複数のパーツを組み合わせて気に入ったキャラクターを
創作決定すること(前記2)及び3))を携帯端末サービスシステムで提供する(前記
1))という発想自体を開示するにとどまり,このようなシステムの実装における未
解決の技術的困難性を具体的に指摘し,かつ,その困難性を克服するための具体的
手段を開示するものではないので,従来技術に対する本件発明の貢献の程度は小さ
いというべきである。
キャラクターの選択等に対する課金に関する構成(前記2)及び3)並びに4)の組合
せ)についても,本件明細書は,複数のパーツを組み合わせて気に入ったキャラク
ターを創作決定し(前記2)及び3)),当該決定したキャラクターに応じた情報提供
料を通信料に加算する(前記4))という発想自体を開示するにとどまり,このよう
な課金方法の実装における未解決の技術的困難性を具体的に指摘し,かつ,その困
難性を克服するための具体的手段を開示するものではないので,従来技術に対する
本件発明の貢献の程度は小さいというべきである。
そうすると,本件発明の本質的部分については,特許請求の範囲の記載とほぼ同
義のものとして認定するのが相当である。
・・・・
前記認定の出願経過によれば,控訴人は,構成要件A〜C及びHからなる発明(出願当初の特許請求の範囲の請求項1に係る発明)及び構\成要件A〜E及びHからなる発明(出願当初の特許請求の範囲の請求項2に係る発明)については,特許
を受けることを諦め,これらに代えて構成要件A〜Hからなる発明(出願当初の特許請求の範囲の請求項1に同2及び5を統合した発明,すなわち本件発明)に限定\nして,特許を受けたものということができる。
そうすると,控訴人は,構成要件F及びGの全部又は一部を備えない発明について,本件発明の技術的範囲に属しないことを承認したか,少なくとも外形的にその\nように解されるような行動をとったものと理解することができる。
したがって,均等の成立を妨げる特段の事情があるというべきであり,均等の第
5要件を充足しない。
ウ 控訴人の主張について
この点につき,控訴人は,被告システムは「仮想モール」に相当する構成を有しているから,本件特許の出願経過を参酌したとしても,均等の成立を妨げる特段の\n事情があるとはいえない旨主張する。
しかし,前記のとおり,本件発明の「仮想モール」は「ショップ」というカテゴ
リーを選択することによってアイテムを購入する仕組みを包含するものではなく,
また,本件明細書【0045】は本件発明の「仮想モール」を説明するものと見る
ことができない以上,当該段落が当初から残存していたという本件特許の出願経過
も,本件発明の「仮想モール」の技術的意義を左右するものではない。
◆判決本文
1審はこちらです。
◆平成28年(ワ)第35182
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2018.05.23
平成29(ネ)10102 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成30年5月21日 知的財産高等裁判所 大阪地方裁判所
知財高裁でも、均等侵害が否定されました。
本件各発明の意義は,充填された液体に臭いが移ることがな
く,自立的に形状を維持でき,内部に空気を送り込むことなく,充填された液体の
ほぼ全量を排出可能なウォーターサーバー用ボトルを提供するという課題を達成す\nるために,本件各発明の構成を採用することにある。すなわち,本件各発明は,全\n体をPET樹脂によって形成することで,液体を充填した際でも自立的に形状を維
持でき,液体に臭いが移ることがないようにし,胴部に上下方向に伸縮自在な蛇腹
部を設けることで,潰れやすさを向上させ,さらに,蛇腹部と底部との間に裾絞り
部を形成することで,ボトルが大気圧で押し潰れていく際に,裾絞り部が蛇腹部の
方に引き込まれていき,蛇腹部の内部の容積を削減する機能を有するようにしたも\nのである。
このような,本件明細書に記載された,蛇腹部と底部との間に裾絞り部を形成す
ることの技術的意義に鑑みると,構成要件Hの「内部の液体の排出に伴って,前記\n裾絞り部がボトル内部に引き込まれること」とは,ウォーターサーバー用ボトル内
部の液体の排出に伴って,裾絞り部が蛇腹部の内部に引き込まれることを意味する
ものと解される。
また,かかる解釈は,本件各発明の実施の形態として本件明細書に記載されてい
る唯一の実施例において,内部の液体の排出に伴って【図4】(B),【図5】(A),
【図5】(B)と変化することが記載され,【図5】(B)において,裾絞り部が
蛇腹部の内部に引き込まれていることとも整合する。
ウ 以上のとおり,特許請求の範囲の記載,本件明細書の記載及び本件発明1に
おける裾絞り部の技術的意義を総合すれば,構成要件Hの「内部の液体の排出に伴\nって,前記裾絞り部がボトル内部に引き込まれること」とは,ウォーターサーバー
用ボトル内部の液体の排出に伴って,裾絞り部が蛇腹部の内部に引き込まれること
を意味するものと解される。
エ 控訴人の主張について
控訴人は,裾絞り部がボトル内部に引き込まれることの効果は,ボトル内の残水
を減らすことにあり,これを達するには,裾絞り部がボトル内部の方向に引き込ま
れれば足り,蛇腹内部に裾絞り部が引き込まれることまで要求されるものではない
から,構成要件Hの「裾絞り部がボトル内部に引き込まれる」とは,裾絞り部が蛇\n腹部の方向,つまり裾絞り部から見てボトル内部の方向に引き込まれることを意味
すると解される旨主張する。
しかし,前記イのとおり,蛇腹部と底部との間に裾絞り部を形成することの技術
的意義は,ボトルが大気圧で押し潰れていく際に,裾絞り部が蛇腹部の内部に引き
込まれていき,蛇腹部の内部の容積を削減する機能を有するようにしたことにある\nところ,単に裾絞り部がボトル内部の方向に引き込まれるというだけでは,本件明
細書に記載された本件各発明の上記効果を奏するものではなく,裾絞り部が蛇腹部
の内部まで引き込まれることによって,上記効果を奏するものである。
また,控訴人は,本件特許の出願時の請求項1を特許請求の範囲から削除し,出
願時の請求項2に構成要件Hを追加して請求項1とするなどの補正をした際に(乙\n6),審査官に対し,本件発明1は構成要件FないしHの構\成を備えることにより,
「ボトルが大気圧で押し潰れていく際,裾絞り部が蛇腹部の方に引き込まれていき,
蛇腹部の内部の容積を削減する機能があり(本件明細書【0020】),ボトル内\nの残水を減らす効果がある。」旨の意見を述べていたものであり(乙7),控訴人
の前記主張は,本件特許の出願経過における控訴人の主張とも異なるものである。
したがって,控訴人の上記主張は採用できない。
◆判決本文
原審はこちら。
◆平成28(ワ)7649
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2017.12.11
平成29(ネ)10038 損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成29年11月28日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
CS関連発明について、1審と同じ理由で、技術的範囲に属しない、均等侵害も否定されました。
前記イを踏まえて,構成要件Eの「入力手段を介してポインタの位置を\n移動させる命令を受信すると…操作メニュー情報を…出力手段に表示する」を検討\nすると,「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信する」とは,タ
ッチパネルを含む入力手段から,画面上におけるポインタの座標位置を移動させる
命令(電気信号)を処理手段が受信することである。そして,利用者がマウスにお
ける左ボタンや右ボタンを押す操作に対応する電気信号ではなく,マウスにおける
左ボタンや右ボタンを押したままマウスを移動させる操作(ドラッグ操作)に対応
する電気信号を,入力手段から処理手段が受信することを含むものである。また,
本件発明1は,利用者が入力手段を使用してデータ入力を行う際に実行される入力
支援コンピュータプログラムであり,利用者が間違ってマウスの右クリックを押し
てしまった場合等に利用者の意に反して画面上に操作コマンドのメニューが表示さ\nれてしまう等の従来技術の課題を踏まえて,システム利用者の入力を支援するため,
利用者が必要になった場合にすぐに操作コマンドのメニューを画面上に表示させる\n手段を提供することを目的とするものである。
そうすると,「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信する」と
は,タッチパネルを含む入力手段から,画面上におけるポインタの座標位置を,入
力支援が必要なデータ入力に係る座標位置(例えば,ドラッグ操作を開始する座標
位置)からこれとは異なる座標位置に移動させる操作に対応する電気信号を,処理
手段が受信することを意味すると解するのが相当である。
そして,前記第2の1(3)イのとおり,本件ホームアプリにおいて,控訴人が「操
作メニュー情報」に当たると主張する左右スクロールメニュー表示は,利用者がシ\nョートカットアイコンをロングタッチすることにより表示されるものであるが,ロ\nングタッチは,ドラッグ操作などとは異なり,画面上におけるポインタの座標位置
を移動させる操作ではないから,入力手段であるタッチパネルからロングタッチに
対応する電気信号を処理手段が受信することは,「入力手段を介してポインタの位置
を移動させる命令を受信する」とはいえない。
したがって,ロングタッチにより左右スクロールメニュー表示が表\示されるとい
う本件ホームアプリの構成は,構\成要件Eの「入力手段を介してポインタの位置を
移動させる命令を受信すると…操作メニュー情報を…出力手段に表示する」という\n構成を充足するとは認められない。\n
エ 控訴人は,本件ホームアプリでは,タッチパネルに指等が触れると,「ポ
インタの座標位置」の値が変化し,「カーソル画像」もこの位置を指し示すように移\n動するところ,ロングタッチは,タッチパネルに指等が触れるといった動作を含む
から,被控訴人製品の処理手段はロングタッチにより「『ポインティングデバイスに
よって最後に指示された画面上の座標』を移動させる命令」を受信するといえ,本
件ホームアプリは,「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信する」
という構成を有していると主張する。\nしかし,本件ホームアプリにおいて,ロングタッチに含まれるタッチパネルに指
等が触れることに対応して,ポインタの座標位置を,「ポインティングデバイスによ
って最後に指示された画面上の座標」位置から,指等がタッチパネルに触れた箇所
の座標位置に移動させることを内容とする電気信号が生じる(甲7の1・2)とし
ても,前記ウのとおり,ロングタッチは,画面上におけるポインタの座標位置を移
動させる操作ではないから,上記電気信号は,画面上におけるポインタの座標位置
を移動させる操作に対応する電気信号とはいえない。また,「ポインティングデバイ
スによって最後に指示された画面上の座標位置」は,ロングタッチの直前に行って
いた別の操作に係るものであり,入力支援が必要なデータ入力に係る座標位置では
ないから,上記電気信号は,画面上におけるポインタの座標位置を,入力支援が必
要なデータ入力に係る座標位置からこれとは異なる座標位置に移動させることを内
容とするものでもない。
そうすると,本件ホームアプリのロングタッチ又はこれに含まれるタッチパネル
に指等が触れることに対応して,ポインタの座標位置を,「ポインティングデバイス
によって最後に指示された画面上の座標」位置から,指等がタッチパネルに触れた
箇所の座標位置に移動させることを内容とする電気信号が生じることをもって,構\n成要件Eの「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信する」とい
う構成を充足するとはいえない。\n オ 控訴人は,タッチパネルでは,指等が触れていれば継続的に「ポインタ
の位置を移動させる命令」である「ポインタの位置を算出するためのデータ」を受
信し,「ポインタの位置」が一定時間,一定の範囲内に収まっている場合にはロング
タッチであると判断されるから,ロングタッチを識別するために入力されるデータ
群には「ポインタの位置を移動させる命令」が含まれると主張する。
しかし,前記第2の1(3)イのとおり,本件ホームアプリは,ロングタッチにより
左右スクロールメニュー表示がされる構\成であるところ,ロングタッチは,継続的
に複数回受信するデータにより算出された「ポインタの位置」が一定の範囲内で移
動している場合だけでなく,当初の「ポインタの位置」から全く移動しない場合を
含むことは明らかであり(甲8),ロングタッチであることを識別するまでの間に「ポ
インタの位置」を一定の範囲内で移動させることを内容とする電気信号は,前者に
おいては発生しても,後者においては発生しないのであるから,そのような電気信
号をもって,構成要件Eの「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を\n受信する」という構成を充足するとはいえない。\n カ 以上によると,本件ホームアプリが構成要件Eを充足すると認めること\nはできない。
(2) 均等侵害の成否
ア 控訴人は,本件ホームアプリにおける「利用者がタッチパネル上のショ
ートカットアイコンを指等でロングタッチする操作を行うことによって操作メニュ
ー情報が表示される」という構\成は,「利用者がタッチパネル上の指等の位置を動か
して当該ショートカットアイコンを移動させる操作を行うことによって操作メニュ
ー情報が表示される」という本件発明1の構\成と均等であると主張する。
そこで検討すると,前記(1)ア及びイによると,本件発明1は,コンピュータシス
テムにおけるシステム利用者の入力行為を支援する従来技術である「コンテキスト
メニュー」には,マウスの左クリックを行う等するまではずっとメニューが画面に
表示され続けたり,利用者が間違って右クリックを押してしまった場合等は,利用\n者の意に反して画面上に表示されてしまうので不便であるという課題があり,従来\n技術である「ドラッグ&ドロップ」には,例えば,移動させる位置を決めないで徐々
に画面をスクロールさせていくような継続的な動作には適用が困難であるという課
題があったことから,システム利用者の入力を支援するための,コンピュータシス
テムにおける簡易かつ便利な入力の手段を提供すること,特に,1)利用者が必要に
なった場合にすぐに操作コマンドのメニューを画面上に表示させ,2)必要である間
についてはコマンドのメニューを表示させ続けられる手段の提供を目的とするもの\nである。
そして,本件発明1は,上記課題を解決するために,本件特許の特許請求の範囲
請求項1の構成,すなわち,本件発明1の構\成としたものであるが,特に,上記1)
を達成するために,「入力手段における命令ボタンが利用者によって押されたことに
よる開始動作命令を受信した後…において」(構成要件D),「入力手段を介してポイ\nンタの位置を移動させる命令を受信すると…操作メニュー情報を…出力手段に表示\nする」(同E)という構成を採用し,上記2)を達成するために,「利用者によって当
該押されていた命令ボタンが離されたことによる終了動作命令を受信するまで」(同
D),「操作メニュー情報を…出力手段に表示すること」(同E,F)を「行う」(同\nD)という構成を採用した点に特徴を有するものと認められる。\nそうすると,入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信すること
によってではなく,タッチパネル上のショートカットアイコンをロングタッチする
ことによって操作メニュー情報を表示するという,本件ホームアプリの構\成は,本
件発明1と本質的部分において相違すると認められる。
イ 控訴人は,利用者がドラッグ&ドロップ操作を所望している場合に操作
メニュー情報を表示することが本質的部分であると主張する。\nしかし,前記(1)ア及びイのとおり,マウスが指し示している画面上のポインタ位
置に応じた操作コマンドのメニューを画面上に表示すること自体は,本件発明1以\n前から「コンテキストメニュー」という従来技術として知られていたところ,前記
(2)アのとおり,本件発明1は,この「コンテキストメニュー」がマウスを右クリッ
クすることにより上記メニューを表示することに伴う課題を解決することをも目的\nとして,利用者が必要になった場合にすぐに操作コマンドのメニューを画面上に表\n示させるために,「入力手段における命令ボタンが利用者によって押されたことによ
る開始動作命令を受信した後…において」(構成要件D),「入力手段を介してポイン\nタの位置を移動させる命令を受信すると…操作メニュー情報を…出力手段に表示す\nる」(同E)という構成を採用した点に特徴を有するものと認められる。したがって,\n本件発明1において,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部\n分は,利用者がドラッグ&ドロップ操作といった特定のデータ入力を所望している
場合にその入力を支援するための操作メニュー情報を表示すること自体ではなく,\n従来技術として知られていた操作コマンドのメニューを画面に表示することを,「入\n力手段における命令ボタンが利用者によって押されたことによる開始動作命令を受
信した後…において」(構成要件D),「入力手段を介してポインタの位置を移動させ\nる命令を受信する」(同E)ことに基づいて行うことにあるというべきである。
そうすると,入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信すること
によってではなく,タッチパネル上のショートカットアイコンをロングタッチする
ことによって操作メニュー情報を表示するという,本件ホームアプリの構\成は,既
に判示したとおり,本件発明1と本質的部分において相違するというべきである。
◆判決本文
◆1審はこちら。平成28(ワ)10834
◆関連事件はこちら。平成29(ネ)10037
◆1審はこちら。平成28(ワ)13033
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2017.12. 7
平成29(ネ)10066 特許権侵害行為の差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成29年12月5日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
知財高裁も、第1要件を満たさないとして均等侵害が否定されました。原審維持です。
ア 第1要件について
(ア) 控訴人は,本件発明1の本質的部分は,本件各作用効果を奏する上で重要
な部分であるピンの前方部が後方部から斜め前方向に方向づけられ,第2壁面の前
方部に向かって延在している点にあるところ,ピンの前方部7aが第2壁面9の前
方部9aに接触することの有無は,本件各作用効果を奏するための必須の構成では\nないから,ピンの前方部7aが第2壁面9の前方部9aに接触している否かという,
本件発明1と被告製品の相違点は,本件発明1の本質的部分ではなく,被告製品は
均等の第1要件を充足する旨主張する。
(イ) 特許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の記載
のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解\nすべきであり,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて,特許発明の課題及び
解決手段とその効果を把握した上で,特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従
来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定す\nることによって認定されるべきである。
・・・のとおり,本件発明1は,従来の固定手段では,
ピンが作動可能位置から移動してしまうことで側面開口部を通る出口を見つけられ\nずにスリーブ内部で変形する危険性や,周囲の骨物質に移動するピンの前端部の部
分が有利に曲がった状態へ変形しない危険性があったことを従来技術における課題
とし,これを解決することを目的として,特許請求の範囲請求項1記載の構成,具\n体的には,ピン7の前方部7aが,ピンの後方部7eから第2壁面9に向かって斜
め前方向に延びて湾曲前端部7fに至り,案内面12に近接する第2壁面9の前方
部9aに至るようにすることを定めており,この点は,従来技術には見られない特
有の技術的思想を有する本件発明1の特徴的部分であるといえる。
(エ) 被告製品は,前記2(2)のとおり,構成要件Fの「(前方部(7a)は,)\nピンの後方部(7e)から斜め前方向に方向づけられて前記湾曲前端部(7f)に
至り,前記案内面(12)に近接する前記第2壁面(9)の前方部(9a)まで延
在する」との文言を充足しないから,本件発明1とは,その本質的部分において相
違するものであり,均等の第1要件を充足しない。
(オ) 控訴人の主張について
控訴人は,本件発明1の本質的部分は,本件各作用効果を奏する上で重要な部分
であるピン7の前方部7aが後方部7eから斜め前方向に方向づけられ,第2壁面
9の前方部9aに向かって延在している点にあり,ピン7の前方部7aの第2壁面
9の前方部9aへの接触の有無は本件各作用効果を奏するための必須の構成ではな\nく,上記相違点は本件発明1の本質的部分ではないと主張する。
しかし,本件発明1において,本件各作用効果を奏するのは,ピン7の前方部7
aが,ピンの後方部7eから第2壁面9に向かって斜め前方向に延びて湾曲前端部
7fに至り,案内面12に近接する第2壁面9の前方部9aに至ることで,ピン7
の前方部7aと第2壁面9との間の遊びがなくなり,ピン7の第2壁面に向かう方
向の移動が抑制されることによるものであり,ピン7の前方部7aが前方部9aの
付近に位置しているだけでは,本件各作用効果を奏するものとは認められないこと
については,前記2(1)イ(イ)のとおりである。よって,ピン7の前方部7aが第2
壁面9の前方部9aに接触していることは,本件発明1の本質的部分であると解さ
れる。したがって,控訴人の上記主張は採用できない。
◆判決本文
◆原審はこちら。H27(ワ)11434号
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2017.11.10
平成28(ワ)35182 特許権 平成29年10月30日 東京地方裁判所(29部)
サイバーエージェントに対するCS関連特許侵害事件です。裁判所は文言・均等侵害を否定しました。均等の第1、第5要件を満たさないと判断されています。
これを本件について見ると,前記2で詳述したとおり,本件発明は,「その決定
したキャラクターに応じた情報提供料を通信料に加算する課金手段を備え」(構成\n要件C)ており,また,「表示部に仮想モールと,基本パーツを組み合わせてなる\n基本キャラクターとを表示させ」(構\成要件F),「基本キャラクターが,前記仮
想モール中に設けられた店にて前記パーツを購入する」(構成要件G)構\成を有し
ているのに対し(なお,「仮想モール」は,内部に複数の仮想店舗と遊歩のための
空間とが表示されるものをいい,「基本キャラクター」と同時に表\示される必要が
あると解すべきこと,「仮想モール中に設けられた店」で「パーツ」を購入する際
にも「基本キャラクター」が表示される必要があると解すべきことも,前記2のと\nおりである。),被告システムは,少なくとも,「キャラクターに応じた情報提供
料」を「通信料」に「加算」する構成を備えていない点,「仮想モール」に対応す\nる構成を有していない点において,それぞれ本件発明と相違するところ,以下のと\nおり,これらの相違部分は,本件発明の本質的部分に当たるというべきであるから,
被告システムは,均等の第1要件(非本質的部分)を満たさない。
イ 本件明細書の前記1(2)アないしエの各記載によれば,本件発明は,携帯端末
の表示部に気に入ったキャラクターを表\示させることができる携帯端末サービスシ
ステムに関するものであって(【0001】),あらかじめ携帯端末自体のメモリ
ーに保存してある複数のキャラクター画像情報から,気に入ったものを選択して,
その携帯端末の表示部に表\示するなどの従来技術では,携帯端末自体のメモリーに
保存できる情報量には限りがあるため,キャラクター選択にあまり選択の幅がなく,
ユーザーに十分な満足感を与え得るものではなく,サービス提供者にとっても,キ\nャラクター画像情報により効率良く利益を得るのは困難であったことから(【00
02】,【0003】),同問題点を解決し,「ユーザーが十分な満足感を得るこ\nとができ,且つ,サービス提供者は利益を得ることができる携帯端末サービスシス
テムを提供する」ため(【0004】),本件特許請求の範囲の請求項1記載の構\n成(構成要件Aないし同Hの構\成)を備えることにより,ユーザーにとっては,キ
ャラクター選択をより楽しむことができ,また,サービス提供者にとっては,キャ
ラクター画像情報の提供により効率良く利益を得ることができ(【0005】),
さらに,ユーザーは,種々のパーツを組み合わせてキャラクターを創作するという
ゲーム感覚の遊びをすることができ,十分な満足感を得ることができ,また,「仮\n想モールと,基本キャラクターとが表示された表\示部を見ながら,基本キャラクタ
ーを自分に見立て,さながら自分が仮想モール内を歩いているようなゲーム感覚で,
その仮想モール内に出店された店に入り,パーツという商品を購入することで,基
本キャラクターを気に入ったキャラクターに着せ替えて,楽しむことができ,新た
な楽しみ方ができて十分な満足感を得ることができる」(【0006】)というも\nのとされていることが理解できる。
そうすると,本件明細書では,本件発明は,サービス提供者がキャラクター画像
情報により効率良く利益を得るのは困難であったという従来技術の問題点を解決し
て,サービス提供者が画像情報の提供により効率良く利益を得ることができる携帯
端末サービスシステムを提供することを目的の一つとするものであって,構成要件\nCの「その決定したキャラクターに応じた情報提供料を通信料に加算する課金手段
を備え」るとの構成は,まさに,従来技術では達成し得なかった技術的課題の解決\n(サービス提供者がキャラクター画像情報により効率良く利益を得ることができる
携帯端末サービスシステムを提供すること)を実現するための,従来技術に見られ
ない特有の技術的思想に基づく解決手段(課金手段)としての具体的な構成として\n開示されているものいうべきである。また,本件発明は,ユーザーに十分な満足感\nを与え得るものではなかったという従来技術の問題点を解決して,ユーザーが十分\nな満足感を得ることができる携帯端末サービスシステムを提供することを他の目的
とするものであって,「表示部に仮想モールと,基本パーツを組み合わせてなる基\n本キャラクターとを表示させ」るとの構\成を含む構成要件F及び「基本キャラクタ\nーが,前記仮想モール中に設けられた店にて前記パーツを購入する」との構成を含\nむ構成要件Gは,さながら自分が仮想モール内を歩いているようなゲーム感覚で商\n品を購入するなどして十分な満足感を得ることができるという本件発明に特有な作\n用効果に係るものであって,構成要件A,同B,同D及び同Eとともに,まさに,\n従来技術では達成し得なかった技術的課題の解決(ユーザーが十分な満足感を得る\nことができる携帯端末サービスシステムを提供すること)を実現するための,従来
技術に見られない特有の技術的思想に基づく解決手段(ゲーム感覚の実現)として
の具体的な構成として開示されているものというべきである。\n他方で,後述する引用例1(乙6)の開示(iモード上に用意された複数のキャ
ラクタ画像を受信し,これを待受画面として利用することができる携帯電話機)及
び引用例2(乙7)の開示(画像情報の提供に係る対価の課金を通話料金に含ませ
るもの)に照らすと,本件明細書において従来技術が解決できなかった課題として
記載されているところは,客観的に見て不十分であるといい得るが,本件明細書の\n従来技術の記載に加えて,引用例1及び同2の開示を参酌したとしても,本件発明
は,ユーザーが十分な満足感を得ることができ,かつ,サービス提供者が利益を得\nることができる携帯端末サービスシステムを提供するものであり,従来技術では達
成し得なかった技術的課題の解決を実現するための具体的な構成として,構\成要件
AないしHを全て備えた構成を開示するものであるから,これら全てが従来技術に\n見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分に当たるというほかない。\n以上によれば,本件発明と被告システムとの相違部分は,いずれも本件発明の本
質的部分に係るものと認めるのが相当である(なお,上記認定判断は,後述する本
件特許の出願経過とも整合するところである。)。
・・・・
上記アの出願経過に照らせば,原告は,構成要件A,同B,同C及び同Hからな\nる発明(出願当初の特許請求の範囲の請求項1に係る発明)及び構成要件A,同B,\n同C,同D,同E及び同Hからなる発明(出願当初の特許請求の範囲の請求項2に
係る発明)については,特許を受けることを諦め,これらに代えて,構成要件A,\n同B,同C,同D,同E,同F,同G及び同Hからなる発明(出願当初の特許請求
の範囲の請求項1に同2及び同5を統合した発明,すなわち本件発明)に限定して,
特許を受けたものといえる。
そうすると,原告は,構成要件F(「表\示部に仮想モールと,基本パーツを組み
合わせてなる基本キャラクターとを表示させ」)及び同G(「基本キャラクターが,\n前記仮想モール中に設けられた店にて前記パーツを購入する」)の全部又は一部を
備えない発明については,本件発明の技術的範囲に属しないことを承認したか,少
なくともそのように解されるような外形的行動をとったものといえる。
したがって,「仮想モール」に対応する構成を有していない被告システムについ\nては,均等の成立を妨げる特段の事情があるというべきであり,同システムは,均
等の第5要件(特段の事情)を充足しない。
◆判決本文
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2017.10.10
平成28(ワ)24175 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成29年9月21日 東京地方裁判所(46部)
技術的範囲に属しないと判断されました。均等侵害も否定されました。
前記1(2)で述べたとおり,本件明細書の記載によれば,従来技術には,
気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ,過飽和の状態を安定に維持して外
部に提供することが難しく,ウォーターサーバー等へ容易に取付けること
ができないという課題があった。本件発明1は,このような課題を解決す
るために,水に水素を溶解させる気体溶解装置において,水素水を循環さ
せるとともに,水素水にかかる圧力を調整することにより,水素を飽和状
態で水素水に溶解させ,その状態を安定的に維持し,水素水から水素を離
脱させずに外部に提供することを目的とするものである。
本件発明1では,水素を飽和状態で水に溶解させ,その状態を安定的に
維持するために,加圧型気体溶解手段で生成された水素水を循環させて,
加圧型気体溶解手段に繰り返し導いて水素を溶解させることとし,「前記
溶存槽に貯留された水素を飽和状態で含む前記水素水を加圧型気体溶解
手段に送出し加圧送水して循環させ」る(構成要件F)という構\成を採用
している。また,気体溶解装置において,気体が飽和状態で溶解した状態
を安定的に維持し,水素水から水素を離脱させずに外部に提供するために
は,水素を溶解させた状態の水素水が気体溶解装置の外部に排出されるま
での間に,水素水にかかる圧力の調整ができなくなることを避ける必要が
ある。このため,本件発明1では「前記溶存槽及び前記取出口を接続する
管状路」(構成要件E)という構\成を採用し,水素を溶解させた水素水が
導かれる溶存槽と水素水を気体溶解装置外に吐出する取出口との間を管
状路で直接接続し,水素水にかかる圧力の調整ができなくなることを避け
ているものと解される。
以上のような本件発明1の課題,解決方法及びその効果に照らすと,生
成した水素水を循環させるという構成のほか,管状路が溶存槽と取出口を\n直接接続するという構成も,本件発明1の本質的部分,すなわち従来技術\nに見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分に該当するというべ\nきである。
被告製品は,管状路が溶存槽と取出口を接続するという構成を採用して\nいないことは前記4のとおりであるから,被告製品の構成は,本件発明1\nと本質的部分において相違するものと認められる。
イ これに対し,原告は,本件発明1の本質的部分は,生成された水素水が
大気圧に急峻に戻るのを防ぐため,管状路を加圧状態から大気圧状態まで
の圧力変動があり得る構成と構\成の間に接続することであり,被告製品で
は,冷水タンクにおいて水素水にかかる圧力が大気圧となるから,カーボ
ンフィルタと冷水タンクを細管で接続する構成は本件発明1と本質的部分\nにおいて相違しない旨主張する。
しかし,被告製品のように,溶存槽から取出口までの間に水素水にかか
る圧力が大気圧となる構成を設けた場合には,被告製品の取出口から水素\n水が取り出される前に,生成された水素水に対する圧力の調整ができなく
なって水素が離脱し得ることになってしまい,「水素水から水素を離脱させ
ずに外部に提供する」という効果を奏することができない。したがって,
本件発明1において,溶存槽と大気圧状態までの圧力変動があり得る構成\nの間に管状路を接続することが本質的部分であると解することはできず,
原告の主張は採用することができない。
エ したがって,被告製品は,均等侵害の第一要件を満たさない。
第二要件及び第三要件
ア 原告は,第二要件につき,被告製品と本件発明1とは,管状路を通して
徐々に生成した水素水を大気圧に降圧することにより,水素濃度を維持す
る点が共通するから,「管状路に当たる細管が,カーボンフィルタの出口と
気体溶解装置内に設けられた冷水タンクの入口を接続する」という被告製
品の構成を,管状路が溶存槽と取出口を接続するという本件発明1の構\成
に置換することができると主張する。
しかし,前記 で判示したとおり,被告製品の上記構成では,装置の内\n部において水素水にかかる圧力の調整ができなくなり,「水素水から水素を
離脱させずに外部に提供する」という効果を奏することができず,被告製
品の構成と本件発明1の構\成は作用効果が同一であるとはいえない。した
がって,被告製品は,均等侵害の第二要件も満たさない。
イ 原告は,第三要件につき,取出口の前に冷水タンクを設け,この冷水タ
ンクに管状路を接続することは容易であると主張する。しかし,取出口の
前に大気圧となる冷水タンクを設けることは,「水素水から水素を離脱させ
ずに外部に提供する」という本件発明1の課題解決原理に反するものであ
るから,当業者としては,本件発明1に被告製品の上記構成を採用するこ\nとの動機付けを欠くものといえる。したがって,被告製品は,均等侵害の
第三要件も満たさない。
以上で述べたとおり,「管状路に当たる細管が,カーボンフィルタの出口と
気体溶解装置内に設けられた冷水タンクの入口を接続する」という被告製品
の構成は,均等侵害の第一要件,第二要件及び第三要件を満たさないから,\n被告製品の上記構成が本件発明1の構\成要件Eと均等であるとは認められ
ない。
◆判決本文
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>> 技術的範囲
>> 均等
>> 第1要件(本質的要件)
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>> 第3要件(置換容易性)
>> ピックアップ対象
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2017.09.12
平成29(ネ)10041 特許権侵害に基づく損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成29年8月29日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
知財高裁4部は、均等の第1要件を満たさないとして、技術的範囲に属しないと判断しました。1審では均等主張はされていませんでした。
本件発明では,近用アイポイントから近用中心までの距離を小さくしているため,
近用アイポイントから近用部にかけて発生する収差が比較的小さく,良好な視覚特
性が得られ,視線を大きく下げることなく中間視から近用視へ移行することができ
るとともに,近用部において広い明視域を確保することができる。
また,特定中心を基準とした近用アイポイントでの屈折力増加量(KE−KA)を
加入度(KB−KA)の60%〜90%に設定すると,近用アイポイントから近用部
に至る領域の側方領域における非点収差の集中が軽減され,像の揺れや歪みなどが
抑えられ,近用部及び中間部において広い明視域を実現することができ,さらに,
近用アイポイントから特定視部にかけて加入度の60%〜90%だけ屈折力を低下
させるとの構成により,近用アイポイントから特定視部にかけて視覚特性が改良さ\nれ,主子午線曲線の側方領域における収差集中が緩和される結果,像の揺れや歪み
を軽減することができ,広い明視域を確保することができ,また,屈折力の変化の
度合いが比較的小さいため,近用アイポイントと特定視部との接続が連続的で滑ら
かになるように構成することができ,特定視部の明視域を大きく確保することがで\nきる(【0018】【0019】)。
(エ) 以上によれば,本件発明は,「近用視矯正領域」と,「特定視距離矯正領
域」と,「近用視矯正領域と特定視距離矯正領域との間において両領域の面屈折力
を連続的に接続する累進領域」とを備えた累進多焦点レンズを前提に,目の調節力
の衰退が大きい人が長い時間にわたって快適に近方視を継続することを目的として,
近用アイポイントから近用中心までの距離を2mmから8mmと設定するとともに,
条件式(1)(2)の条件を満足することを特徴とする累進多焦点レンズを提供し
た結果,視線を大きく下げることなく中間視から近用視へ移行することができ,近
用部において広い明視域を確保するとともに,特定視部の明視域を大きく確保する
ことを実現したものであるから,本件発明の本質的部分は,近用アイポイントから
近用中心までの距離を2mmから8mmと設定したことと,条件式(1)(2)を
設定したことにあると認められる。
そして,条件式(1)(2)では,「近用視矯正領域の中心での屈折力」である
KBと「特定視距離矯正領域の中心での屈折力」であるKAとの差(KB−KA)が用
いられているところ,「特定視距離矯正領域」の範囲を特定できなくては,「特定
視距離矯正領域の中心」が特定できず,その屈折力KA を求めることができない上,
条件式(2)では,前記(2)イのとおり,「特定視距離矯正領域」の範囲を特定する
ことができなければ,「特定視距離矯正領域」の明視域の最大幅WFを特定すること
ができない。したがって,条件式(1)(2)を満足させるためには,「特定視距
離矯正領域」の範囲を特定できることが必要であるから,「特定視距離矯正領域」
が,屈折力が一定ないしほぼ一定の領域を有する,ある程度広がりを持った領域で
あることも,本件発明の技術的思想を構成する特徴的部分であり,本質に係る部分\nである。したがって,控訴人の主張は,採用できない。
(オ) 被告製品は,前記(1)(2)のとおり,いずれも「特定視距離矯正領域」,「特
定視距離矯正領域の中心」を充足せず,条件式(1)(2)を満足させるものでは
ないから,本件発明とは,その本質的部分において相違することが明らかであり,
均等の第1条件を充足しない。
◆判決本文
◆1審はこちらです。平成26(ワ)8134
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2017.08.11
平成28(ワ)35763 特許権侵害差止請求事件 特許権 民事訴訟 平成29年7月27日 東京地方裁判所(47部)
CS関連発明の特許侵害事件です。当事者は、FREEとマネーフォワードです。均等の主張もしましたが、第1、第5要件を満たさないと判断されました。
本件明細書の従来技術として上記ウの公知文献は記載されておらず,同記
載は不十分であるため,上記公知文献に記載された発明も踏まえて本件発明\nの本質的部分を検討すべきである。
そして,上記公知文献の内容を検討すると,上記ウ1),2)から,取引明細
情報は,取引ごとにマッチング処理が行われることからすれば,乙4に記載
されたSaaS型汎用会計処理システムにおいても,当該取引明細情報を取
引ごとに識別することは当然のことである。
また,上記ウ3)の「取得明細一覧画面上」の「各明細情報」は,マッチン
グ処理済みのデータであるから,「取得明細一覧画面」は「仕訳処理画面」
といえる。
さらに,上記ウ3)の「仕訳情報入力画面」は,従来から知られているデー
タ入力のための支援機能の一つに過ぎず(段落【0002】,【0057】),表示され\nた取引一覧画面上で各取引に係る情報を当該画面から直接入力を行うこと及
び該入力の際プルダウンメニューを使用することも普通に行われていること
(特開2004-326300号公報(乙5)段落【0066】-【0081】)から
すれば,「取引明細一覧画面」に仕訳情報である「相手勘定科目」等を表示\nし変更用のプルダウンメニューを配置することは当業者が適宜設計し得る程
度のことである。
以上によれば,本件発明1,13及び14のうち構成要件1E,13E及\nび14Eを除く部分の構成は,上記公知文献に記載された発明に基づき当業\n者が容易に発明をすることができたものと認められるから,本件発明1,1
3及び14のうち少なくとも構成要件1E,13E及び14Eの構\成は,い
ずれも本件発明の進歩性を基礎づける本質的部分であるというべきである。
このことは,上記イの本件特許に係る出願経過からも裏付けられる。
原告は,構成要件1E,13E及び14Eの構\成について均等侵害を主張
していないようにも見えるが,仮に上記各構成要件について均等侵害を主張\nしていると善解しても,これらの構成は本件発明1,13及び14の本質的\n部分に該当するから,上記各構成要件を充足しない被告製品1,2並びに被\n告方法については,均等侵害の第1要件を欠くものというべきである。
・・・
(なお,本件においては,原告から「被告が本件機能につき行った特許出願にか\nかる提出書類一式」を対象文書とする平成29年4月14日付け文書提出命令の
申立てがあったため,当裁判所は,被告に対し上記対象文書の提示を命じた上で,\n特許法105条1項但書所定の「正当な理由」の有無についてインカメラ手続を
行ったところ,上記対象文書には,被告製品及び被告方法が構成要件1C,1E,\n13C,13E,14C又は14Eに相当又は関連する構成を備えていることを\n窺わせる記載はなかったため,秘密としての保護の程度が証拠としての有用性を
上回るから上記「正当な理由」が認められるとして,上記文書提出命令の申立て\nを却下したものである。原告は,上記対象文書には重大な疑義があるなどとして,
口頭弁論再開申立書を提出したが,そのような疑義を窺わせる事情は見当たらな\nいから,当裁判所は,口頭弁論を再開しないこととした。)
◆判決本文
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2017.05.25
平成28(ネ)10096 損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成29年5月23日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
知財高裁(4部)も、1審と同じく均等侵害を否定しました(第1、第4要件不備)。
ア 均等の第1要件における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の
記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であり,\n上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて,特許発明の課題
及び解決手段(特許法36条4項,特許法施行規則24条の2参照)とその効果(目
的及び構成とその効果。平成6年法律第116号による改正前の特許法36条4項\n参照)を把握した上で,特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見ら
れない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定することによっ\nて認定されるべきである。ただし,明細書に従来技術が解決できなかった課題とし
て記載されているところが,出願時(又は優先権主張日)の従来技術に照らして客
観的に見て不十分な場合には,明細書に記載されていない従来技術も参酌して,当\n該特許発明の従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が認定\nされるべきである。
イ 本件明細書によれば,本件発明は,従来技術では経路探索の終了時にいくつ
かの経由地を既に通過した場合であっても,最初に通過すべき経由予定地点を目標\n経由地点としてメッセージが出力されること(【0008】)を課題とし,このよ
うな事態を解決するために,通過すべき経由予定地点の設定中に既に経由予\定地点
のいずれかを通過した場合でも,正しい経路誘導を行えるようなナビゲーション装
置及び方法を提供することを目的とし(【0011】),具体的には,車両が動く
ことにより,探索開始地点と誘導開始地点のずれが生じ,車両が,設定された経路
上にあるものの,経由予定地点を超えた地点にある場合に,正しく次の経由予\定地
点を表示する方法を提供するものである(【0018】【0038】)。また,前\n記2(1)エ(ア)のとおり,本件特許出願当時において,ナビゲーション装置が,距離
センサー,方位センサー及びGPSなどを使って現在位置を検出し,それを電子地
図データに含まれるリンクに対してマップマッチングさせ,出発地点に最も近い
ノード又はリンクを始点とし,目的地に最も近いノード又はリンクを終点とし,ダ
イクストラ法等を用いて経路を探索し,得られた経路に基づいて,マップマッチン
グによって特定されたリンク上の現在地から目的地まで経路誘導するものであった
ことは,技術常識であったと認められる。
このように,本件発明は,上記技術常識に基づく経路誘導において,車両が動く
ことにより探索開始地点と誘導開始地点の「ずれ」が生じ,車両等が経由予定地点\nを通過してしまうことを従来技術における課題とし,これを解決することを目的と
して,上記「ずれ」の有無を判断するために,探索開始地点と誘導開始地点とを比
較して両地点の異同を判断し,探索開始地点と誘導開始地点とが異なる場合には,
誘導開始地点から誘導を開始することを定めており,この点は,従来技術には見ら
れない特有の技術的思想を有する本件発明の特徴的部分であるといえる。
したがって,探索開始地点と誘導開始地点とを比較して両地点の異同を判断する
構成を有しない被控訴人装置が本件発明と本質的部分を異にすることは明らかであ\nる。
◆判決本文
◆1審はこちらです。平成26(ワ)25928
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2017.03. 7
平成27(ワ)4461 特許権侵害差止請求事件 特許権 民事訴訟 平成29年2月10日 東京地方裁判所
CS関連発明の特許権侵害訴訟です。東京地裁は、均等侵害も第1、第2、第3要件を満たさない、分割要件違反、および一部のクレームについてサポート要件違反があるとして請求棄却しました。
特許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の
記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的\n部分であると解すべきである。
そして,上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づ
いて,特許発明の課題及び解決手段とその効果を把握した上で,特許発
明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的
思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定することによって認定さ\nれるべきである。すなわち,特許発明の実質的価値は,その技術分野に
おける従来技術と比較した貢献の程度に応じて定められることからすれ
ば,特許発明の本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載,特に
明細書記載の従来技術との比較から認定されるべきである。
ただし,明細書に従来技術が解決できなかった課題として記載されて
いるところが,出願時の従来技術に照らして客観的に見て不十分な場合\nには,明細書に記載されていない従来技術も参酌して,当該特許発明の
従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が認定さ\nれるべきである。
また,第1要件の判断,すなわち対象製品等との相違部分が非本質的
部分であるかどうかを判断する際には,上記のとおり確定される特許発
明の本質的部分を対象製品等が共通に備えているかどうかを判断し,こ
れを備えていると認められる場合には,相違部分は本質的部分ではない
と判断すべきであり,対象製品等に,従来技術に見られない特有の技術
的思想を構成する特徴的部分以外で相違する部分があるとしても,その\nことは第1要件の充足を否定する理由とはならないと解すべきである
(知的財産高等裁判所平成28年3月25日(平成27年(ネ)第100
14号)特別部判決参照)。
イ 原告は,本件発明1の本質的部分は「一の注文手続で,同一種類の金
融商品について,複数の価格にわたって一度に注文を行うこと」及び
「その注文と約定を繰り返すようにしたこと」にとどまると主張する。
この点,確かに,本件明細書等1には,本件発明1の課題として,
「本発明は・・・システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うこと
なく指値注文による取引を効率的かつ円滑に行うことができる金融商品
取引管理方法を提供することを課題としている。」(段落【0006】)
との記載がある。この記載に,「請求項1・・・に記載の発明によれば,
・・・一の注文手続きを行うことで,同一種類の金融商品を複数の価格
にわたって一度に注文できる。」(段落【0017】),「請求項1・
・・に記載の発明によれば,・・・約定した第一注文と同じ第一注文価
格における第一注文の約定と,約定した第二注文と同じ前記第二注文価
格における前記第二注文の約定とを繰り返し行わせるように設定するこ
とにより,第一注文と第二注文とが約定した後も,当該約定した注文情
報群による指値注文のイフダンオーダーを繰り返し行うことが可能にな\nる。」(段落【0018】)との各記載も併せれば,原告の主張する
「一の注文手続で,同一種類の金融商品について,複数の価格にわたっ
て一度に注文を行うこと」及び「その注文と約定を繰り返すようにした
こと」との部分が本件発明1の本質的部分,すなわち従来技術に見られ
ない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であるように見えなくもな\nい。
しかし,本件発明1に係る特許(本件特許1)の出願時の従来技術に
照らせば,本件明細書等1に本件発明1の課題として記載された「シス
テムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく指値注文による取
引を効率的かつ円滑に行うことができる金融商品取引管理方法を提供す
ること」(段落【0006】)は,本件発明1の課題の上位概念を記載
したものにすぎず,客観的に見てなお不十分であるといわざるを得ない。\n以下,詳述する。
以上の各記載に,上記エのとおり,引用文献1には既に「一の注文手
続で,同一種類の金融商品について,複数の価格にわたって一度に注文
を行う」という技術が開示されていたことも併せれば,本件発明1は,
単に一の注文手続で複数の価格にわたって一度に注文を行うだけではな
く,「請求項1・・・の発明」による「売買注文申込情報」,すなわち,\n「金融商品の種類」(構成要件1B−1),「注文価格ごとの注文金額」\n(構成要件1B−2),「注文価格」(構\成要件1B−3),「利幅」
(構成要件1B−4)及び「値幅」(構\成要件1B−5)を示す各情報
に基づいて,同一種類の金融商品を複数の価格について指値注文する注
文情報からなる注文情報群を生成することにより,金融商品を売買する
際,一の注文手続きを行うことで,同一種類の金融商品を複数の価格に
わたって一度に注文できるという点にその本質的部分があるというべき
である。
カ これを被告サービス1についてみると,被告サービス1では「利幅」
(構成要件1B−4)及び「値幅」(構\成要件1B−5)を示す情報が
入力されないのであるから,本件発明1と被告サービス1の相違点が特
許発明の本質的部分ではないということはできない。
したがって,被告サービス1については,均等の要件のうち第1要件
を満たさない。
(4) 第2要件(置換可能性)について
次に,均等の第2要件について検討する。
原告は,本件発明1の課題は「専門的な知識がなく,必ずしも正確に相場
変動を予測することができなくても,また,常に相場に付ききりとならなく\nても,FX取引により所望の利益を得ること」にある旨主張している。
しかし,仮に本件発明1の課題が原告の主張するところにあるとしても,
本件発明1と被告サービス1とは,課題解決原理が全く異なる。
すなわち,本件発明1では,顧客に利幅(構成要件1B−4)及び値幅\n(構成要件1B−5)をはじめとして全ての注文を直接的かつ一義的に導き\n出すに足りる情報を入力させた上,これにより,買いの指値注文及び売りの
指値注文からなる注文のペアを複数生成させ,この複数の注文のペアからな
る注文を行うことで,上記課題を解決している。
一方,被告サービス1では,顧客が3)「参考期間」を選択しさえすれば,
4)「想定変動幅」を提案し,専門的な知識が必要である利幅(構成要件1B\n−4)及び値幅(構成要件1B−5)を顧客に入力させることなく,複数の\n注文のペアからなる注文を行うことで,上記課題を解決している。すなわち,
被告サービス1では,顧客に全ての注文を直接的かつ一義的に決定させるの
ではなく,顧客には専門的な知識が必要とされる情報を入力させないまま,
注文を行わせるものである。
このように,本件発明1と被告サービス1は,金融商品の相場変動を正確
に予測することができなくてもFX取引による所望の利益を得るという課題\nを,顧客に利幅(構成要件1B−4)及び値幅(構\成要件1B−5)という
専門的な知識が必要である情報を入力させることで解決するか(本件発明
1),それともこれらの情報を入力させないまま解決するか(被告サービス
1)という課題解決原理の違いがあり,そのため作用効果も異なってくるも
のといわざるを得ない。
したがって,均等の第2要件に関する原告の主張は理由がない。
(5) 第3要件(容易想到性)について
さらに,均等の第3要件について検討する。
ア 原告は,甲15公報及び甲17公報並びに他の証券会社の提供した
「クイック仕掛け(買いゲリラ100pips)」という機能に照らせば,値幅\nを直接入力せずに他の情報を入力してこれらの情報から値幅を算出して
決定するという構成や,あらかじめ設定された値を用いるという構\成は,
被告サービス1の提供開始時において既に公知の構成であったと主張す\nるので,以下検討する。
イ まず,甲15公報の「要約」欄には,以下の記載がある。
・「注文情報生成部は,取り引きの上限価格と,取り引きの下限価格と,
同時に生成される注文情報群の数とを取得し,取得された値に基づいて,
第一注文どうしの価格差が一定となり,第二注文どうしの価格差が一定
となり,かつ,同一の注文情報群に属する第一注文と第二注文との価格
差が一定となるように,第一注文及び第二注文の価格をそれぞれ演算す
る。」
また,甲17公報には,以下の記載がある。
・「前記表示手段における上側の接触位置に対応して表\示された前記価
格情報に基づいて上限価格を設定すると共に前記表示手段における下側\nの接触位置に対応して表示された前記価格情報に基づいて下限価格とを\n設定させると共に,前記注文発注手段に対し,前記上限価格と前記下限
価格との間に形成された前記発注価格帯において前記注文情報を発注さ
せることを特徴とする金融商品取引システム。」(【請求項1】)
・「前記注文発注手段は,前記任意の発注条件として,前記金融商品の
注文個数情報を備え,前記発注価格帯において,前記注文個数情報に基
づく複数の前記注文情報を,それぞれの価格差が均等な指値注文を発注
するように生成することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一つに記
載の金融商品取引システム。」(【請求項7】)
・「ポジション・ペアの数は,第一形態注文入力画面33(図8)で注文個
数入力欄(図示せず)に入力された注文個数情報の数値,又は,発注価
格帯の数値を値幅入力欄(図示せず)に入力された数値で割った値のう
ちの整数値と同じ個数に等しく設定される。」(段落【0082】)
ウ 上記各記載を踏まえ,原告は,甲15公報にはトラップを仕掛ける範
囲(「取引の上限価格」と「取引の下限価格」)と,トラップの本数
(「同時に生成される注文情報群の数」)を入力し,これらの情報に基
づいて値幅及び利幅(「第一注文どうしの価格差」及び「同一の注文情
報群に属する第一注文価格と第二注文価格との差」)を一定となるよう
に演算して決定する構成が開示されており,また,甲17公報にも,ト\nラップを仕掛ける範囲(タッチパネルの上下の接触位置に対応する「発
注価格帯」)と,トラップの本数(「注文個数情報」)を入力し,これ
らの情報に基づいて,値幅が均等となるように演算して決定する構成が\n開示されていると主張する。
しかし,被告サービス1においては,そもそも注文情報群の数(原告
の主張する「トラップの本数」)を顧客が入力する構成とはなっていな\nい。すなわち,原告の主張によっても,被告サービス1では,顧客は6)
「対象資産(円)」欄に金額を入力するのみであり,被告サーバにおい
てその額の証拠金で生成可能な数の注文情報群を生成するというのであ\nる。
加えて,前述のとおり,本件発明1(構成要件1B)と被告サービス\n1の相違点は,本件発明1では構成要件1B−4(利幅を示す情報)及\nび構成要件1B−5(値幅を示す情報)を入力するのに対し,被告サー\nビス1では2)「注文種類」ないし6)「対象資産(円)」の五つの情報を
入力する点にあるところ,甲15公報及び甲17公報にはこれらの五つ
の情報の入力については何ら開示されていない。
エ さらに,他の証券会社の提供した「クイック仕掛け(買いゲリラ
100pips)」という機能についてみても,原告によれば,同機能\では利幅
及び値幅はあらかじめ設定されていて,顧客が入力するものではないと
いうのである。そうすると,利幅(構成要件1B−4)及び値幅(構\成
要件1B−5)が顧客の入力に係る本件発明1に対し,利幅(構成要件\n1B−4)及び値幅(構成要件1B−5)があらかじめ設定されている\n「クイック仕掛け(買いゲリラ100pips)」の技術を適用する基礎がそも
そも存在しないものといわざるを得ない。
オ 以上によれば,本件発明1の構成を被告サービス1のものに置換する\nことについて,当業者が被告サービス1の開始時点において容易に想到
することができたとはいえない。
したがって,均等の第3要件に関する原告の主張は理由がない。
・・・・
原出願である本件特許2に係る本件明細書等2の段落【0005】ないし
【0008】の記載によると,本件特許2は,従来技術の課題として,取引
開始直後の注文が成行注文のイフダンオーダーをすることができなかったこ
と及びイフダンオーダーを繰り返し行えなかったことを技術課題として設定
している。
この課題を解決する手段として,本件明細書等2では,取引開始直後に約
定する成行注文の約定価格を基準として,注文情報群を生成し,これに基づ
いて,決済注文である指値注文及び逆指値注文を行い,当該指値注文が約定
すると,新たな注文情報群を生成させ,これに基づいて,先行する成行注文
の約定価格と同一の価格の指値注文を行い,当該指値注文が約定すると,当
該新たな注文情報群に基づいて,当該指値注文の決済注文であって,先行す
る決済注文である指値注文及び逆指値注文と同一の価格の指値注文及び逆指
値注文を行うことが開示されている。
すなわち,本件明細書等2の段落【0044】では,「・・・成行リピー
トイフダンでは,一回目のイフダンでは,第一注文で買い注文または売り注
文の一方を成行で行ったのち,第二注文で買い注文または売り注文の他方を
指値で行う。・・・この第二注文の約定の後,指値の第一注文(このときの
指値価格は一回目の成行注文での約定価格とする)と指値の第二注文とから
なるイフダンが,複数回繰り返される。」とされ,段落【0062】では
「ここで,本実施形態の第一注文は,一回目は成行注文で行われるが,二回
目以降は指値注文で行われる。このため,約定情報生成部14は,当該成行
注文の約定価格を,二回目以降の第一注文の指値価格に設定する。」とされ
た上,【図7】においても,2回目以降の指値の第一注文の価格を1回目の
成行注文の約定価格とする旨の記載がある。そして,証拠(乙11,13)
及び弁論の全趣旨によれば,これらの段落【0044】及び【0062】並
びに【図7】は,出願当初の明細書等から補正がされていないものと認めら
れる。
(4) そこで,構成要件3F−2の「前記指値注文」の構\成と,本件明細書等2
の記載とを比較すると,本件明細書等2には2回目以降の指値の第一注文の
価格を1回目の成行注文の約定価格とすることしか開示されておらず,2回
目以降の指値の第一注文の価格を任意の価格にできるといった記載はない。
また,2回目以降の指値の第一注文の価格をどのような価格にするのか,言
い換えると,1回目の成行注文の約定価格以外のどのような価格に設定する
のか,そのための方法等は一切開示されていない。
そうすると,本件明細書等2の出願当初及び分割直前の明細書等には,そ
の技術課題及び課題を解決するための手段からみて,2回目以降の指値の第
一注文の価格を任意の価格に設定できることが形式的にも実質的にも記載さ
れていないものといわざるを得ない。
したがって,本件発明3の構成要件3F−2は,分割出願の出願日が原出\n
願の出願日へ遡及するための要件である,上記1)及び2)の要件のいずれも満
たさないから,本件発明3に係る特許出願には特許法44条2項の適用がな
く,分割要件違反となるものというべきである。
(5) 原告の主張に対する判断
この点に関して原告は,本件発明2及び3の技術思想は「顧客が煩雑な注
文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを繰り返し行うことができて,
システムを利用する顧客の利便性を高めると共にイフダンオーダーを行う際
に顧客が被るリスクを低減させることができる。」ことにあり,2回目以降
の第一注文の指値価格をどのようなものにするのかは,上記技術思想とは直
接の関係がないため,当業者において適宜選択・決定すれば足りる事項であ
ると主張する。
しかし,上記(3)において引用したところからすれば,本件発明2の技術
思想は,先行する成行注文の約定価格と同一の価格の指値注文を行うところ
にもあるということになる。そうすると,本件明細書等2に対し,システム
が2回目以降の指値の第一注文の指値価格を決定するという構成を追加する\nことは,新たな技術的事項を導入するものというべきであるから,原告の上
記主張はその前提を欠き,採用することができない。
(6) 以上によれば,本件発明3に係る特許出願の出願日は,原出願の出願日ま
で遡及せず,現実の出願日である平成26年11月13日となるところ,本
件発明2に係る特許出願の出願公開の公開日は平成25年7月11日である
から(甲4の2),本件発明3の新規性は,本件発明3を下位概念化した本
件発明2によって,否定されることになる。
したがって,本件発明3に係る特許は,特許法29条1項3号に違反して
されたものであるから,同法123条1項2号によって特許無効審判により
無効にされるべきものである。
・・・・
(1) 特許制度は,明細書に開示された発明を特許として保護するものであり,
明細書に開示されていない発明までも特許として保護することは特許制度の
趣旨に反することから,特許法36条6項1号のいわゆるサポート要件が定
められたものである。
したがって,同号の要件については,特許請求の範囲に記載された発明が,
発明の詳細な説明の欄の記載によって十分に裏付けられ,開示されているこ\nとが求められるものであり,同要件に適合するものであるかどうかは,特許
請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に
記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるか,すなわち,
発明の詳細な説明の記載と当業者の出願時の技術常識に照らし,当該発明に
おける課題とその解決手段その他当業者が当該発明を理解するために必要な
技術的事項が発明の詳細な説明に記載されているか否かを検討して判断すべ
きものと解される。
(2) これを本件についてみるに,原告の主張によれば,構成要件3F−2の\n「前記指値注文」とは,その価格については何の限定もなく,任意の指値価
格をその指値価格とする指値注文ということになる(前記10(3))。しかる
に,前記10(3)で引用した本件明細書等2の段落【0044】及び【006
2】並びに【図7】は,本件明細書等3の段落【0042】及び【0060】
並びに【図7】に相当するところ,これらの段落等にも,その技術課題及び
課題を解決するための手段からみて,2回目以降の指値の第一注文の価格を
任意の価格に設定できることが形式的にも実質的にも記載されているとはい
えない。
そうすると,当業者において,本件発明3の解決手段その他当業者が当該
発明を理解するために必要な技術的事項が,本件明細書等3の発明の詳細な
説明に記載されているものと認めることはできない。
(3) したがって,本件発明3は特許法36条6項1号に規定するサポート要件
を満たしていないことになるから,本件発明3に係る特許は同法123条1
項4号によって特許無効審判により無効にされるべきものである。
◆判決本文
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2016.10.11
平成27(ワ)7147 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成28年9月15日 大阪地方裁判所
文言は被侵害、均等侵害も第1要件を充足していないとして否定されました。メーカではなく販売店が被告というのも興味深いです。
すなわち均等侵害が認められるためには,本件発明と被告方法の構成に異な\nる部分が存在する場合であっても,その部分が本件発明の本質的部分ではないこと
が要件となるところ,ここでいう特許発明における本質的部分とは,当該特許発明
の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成す\nる特徴的部分であると解すべきであり,上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明
細書の記載に基づいて,特許発明の課題及び解決手段(特許法36条4項,特許法
施行規則24条の2参照)とその効果(目的及び構成とその効果。平成6年法律第\n116号による改正前の特許法36条4項参照)を把握した上で,特許発明の特許
請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴\n的部分が何であるかを確定することによって認定されるべきである(知財高裁平成
28年3月25日特別部判決)。
・・・
本件発明の上記課題及び解決手段とその効果に照らすと,本件発明は,本件
特許の特許請求の範囲請求項1の発明に係るおかゆ調理器を用いたおかゆの調理方
法として,「粉砕段階」,「加熱段階」を含む複数の動作段階を設定し,それら動
作段階の一部についてはその順序,時間,回数等を具体的に指定し,穀物の粉砕手
段及び加熱手段を一体化した組合せとすることにより,通常のおかゆの調理方法に
おいて時間を要していたふやかしの時間及び全体の調理時間の短縮を図り,また,
通常の調理方法においてはかきまぜの継続によって解消していたおかゆの焦げ付き
も防止するなど,より簡便,迅速に本来の風味を有するおかゆの調理ができるよう
にしたものであると認められる。
ところでおかゆの調理方法として,加熱や粉砕の動作を適宜組合せることは,周
知であるから(本件明細書の【0005】),本件特許の特許請求の範囲請求項1
の発明に係るおかゆ調理器を用いたおかゆの調理方法である本件発明における本質
的部分とは,調理方法を決定するところの「粉砕段階」,「加熱段階」,「待機段
階」という一連の動作段階の設定,及び各動作段階において具体的に規定された粉
砕及び加熱の動作並びに待機の順序,各動作及び待機の時間,各動作及び待機の回
数等を一体化した組合せそのものにあると認められる。
(6) これに対し,被告方法は,既述のとおり,少なくとも,その第1及び第2の
粉砕段階において,本件発明の構成要件として規定された粉砕と待機とは異なる時\n間,回数の粉砕と待機がなされるものであるから,動作等の組合せにおいて,本件
発明の一体化した組合せとは異なっており,この相違部分は本件発明の本質的部分
に存するものといわなければならない,
したがって,被告方法は,均等の第1要件を充足するとは認められない。
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2016.09. 8
平成26(ワ)25928 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成28年8月30日 東京地方裁判所
構成要件Gを満たさないと判断されました。均等侵害についても、第1要件を満たしていないとして、否定されました。
ウ さらに,本件特許の出願経過からも上記解釈は裏付けられる。すなわち,
原告は,本件特許の審査段階において,特許庁から平成15年1月21日
発送の拒絶理由通知(乙8)を受けたところ,そこには「…請求項1の記
載では本願発明の目的である通過すべき経由地点の設定中にすでにそれら
の経由地点のいずれかを通過してしまった場合でも,正しい経路誘導を行
うための構成である『設定指令が入力された時点での車両現在位置を探索\n開始地点として記憶し,この記憶された探索開始地点と,経路データが設
定され移動体の経路誘導が開始される時点での移動体の現在位置を比較す
る』点が明確に記載されていない。…よって,請求項1は,特許を受けよ
うとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものではな\nい。」とされていた。原告は,上記拒絶理由通知に対応して,同年2月5
日受付の意見書(乙9)を提出し,そこにおいて「審査官殿のご指摘の通
り,本願発明における探索開始地点と経路誘導地点に関する上述の点が不
明瞭であると考えますので,『設定指令が入力され,経路の探索を開始す
る時点の前記移動体の現在位置を探索開始地点として記憶する記憶手段』
と構成要件を加えることにより,探索開始地点が記憶されることを明確に\nするとともに,経路データ設定手段が『記憶した探索開始地点を基に経路
の探索を行い,当該経路を経路データとして設定する』と補正して探索開
始地点と経路データの関係を明確にし,制御手段おける記憶された探索開
始地点と誘導開始地点を比較する点を明確に致しました。」(1頁下9行
〜2行)と記載し,併せて,同日受付の手続補正書(乙10)を提出して
上記記載に沿った補正を行い,探索開始地点と誘導開始地点とを比較する
ことを明確にしたものである。以上の出願経過も,構成要件Gに係る上記\n解釈を裏付けるものである。
(2) しかるところ,被告装置において,「探索開始地点」と「誘導開始地点」
を比較して両地点が異なるかどうかを判断しているものと認めるに足りる証
拠はない。
かえって,証拠(乙16の1)によれば,被告装置においては,1)経路誘
導の計算が行われ,これが終了すると,出発地点P0から目的地Pnまでの
経路を示す経路リンクのリストがメモリに保存され,2)他方で,上記1)の経
路誘導とは独立して,継続的に,車両の現在位置Cと地図データの地図リン
クとのマッチングが行われ,その際,車両の現在位置Cと,地図データのノ
ード間を結ぶ地図リンクとを比較することで,車両の現在位置Cと一致する
地図リンクを特定し,3)上記2)のマップマッチングで特定されたリンクが上
記1)の経路リンクの一つと直接対応すると,道路境界領域の処理は行われず,
その代わりに地図リンクと一致する経路リンクに基づいて誘導が行われ,他
方で,現在位置Cが,マップマッチングによって特定された経路リンクに載
っていない場合,所定の方法で絞り込んだ道路境界領域内のリンクと現在位
置とを比較してリンク上に載っているか否かの判定をするとの作業が行われ
ていることが認められる。
なお,乙16の1は,補助参加人の関連会社所属のエンジニアが作成した
宣誓書であるが,同記載内容は,被告装置の制御に関する他の証拠とも矛盾
がなく,これを特段疑う理由もないから,信用できるものといえる。
以上からすれば,被告装置では,探索開始地点と誘導開始地点とを比較し
て両地点が異なるか否かを判断するという作業は行われず,あくまで,車両
の現在位置が所定の経路リンク上に載っているか否かが判定されているにす
ぎないから,被告装置は本件発明の構成要件Gを充足しないものというべき\nである。
・・・・
このように,本件発明が,車両が動くことにより探索開始地点と誘導開始
地点の「ずれ」が生じ,車両等が経由予定地点を通過してしまうことを従来\n技術における問題とし,これを解決することを目的として,上記「ずれ」の
有無を判断するために,探索開始地点と誘導開始地点とを比較して両地点の
異同を判断することを定めており,この点は,従来技術にはみられない特有
の技術的思想を有する本件特許の特徴的部分であるといえる。
そして,本件明細書(甲2)において,上記「ずれ」を判断する方法とし
て,上記両地点を直接比較する方法以外の方法は何ら記載されておらず,そ
れ以外の方法が想定されていたとは認められない。
また,前記2(1)ウ認定の本件特許に係る出願経過からも,探索開始地点
と誘導開始地点とを比較して両地点の異同を判断することが本件発明の本質
的部分であることは明らかである。
なお,原告自身も,本件発明においては「探索開始地点に関する情報」と
「誘導開始地点」とを比較する旨主張している(原告第9準備書面9頁参照)
ところ,上記「探索開始地点に関する情報」の中核は「探索開始地点」自体
であるから,原告の上記主張を前提としても,本件特許において,探索開始
地点と誘導開始地点との比較が本質的部分であるといえる。
以上からすれば,探索開始地点と誘導開始地点とを比較して両地点の異同
を判断することが本件発明の本質的部分というべきであり,かつその比較方
法としては,両地点を直接比較することが当然に予定されているものであっ\nて,これに反する原告の主張は採用できない。
なお,原告は,従来技術において,経由予定地点を超えた地点となったこ\nとを判断する必要性すら認識されていなかった以上,この点に関する下位概
念的な具体的な手段まで本質的部分であるとはいえないとも主張する。しか
し,前述のとおり,本件発明において探索開始地点と誘導開始地点の「ずれ」
を問題とし,その有無を判断するために,上記両地点を比較することが必須
であり,この点が本件発明を特徴付けているといえるものであって,その比
較の具体的手段が単なる下位概念であるとはいえないから,原告の上記主張
も採用できない。
◆判決本文
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2016.07. 5
平成28(ネ)10007 特許権侵害行為差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成28年6月29日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
第1,第5要件を充足しないとして均等侵害が否定されました。
前記イのとおり,控訴人は,本件特許の出願時,座席を連続して揺動させること
が可能な乳幼児用の椅子等であって,揺動制御手段としてソ\レノイドを有するもの
について,旧請求項1においては,座席支持機構を特段限定せず,旧請求項2にお\nいては,座席支持機構をロッド2点支持方式に限定し,旧請求項3においては,座\n席支持機構を,座席とベースとの間に,ベースに対して座席が「水平往復動可能\な
スライド手段を設けたことを特徴とする」ものに限定していたものである。そして,
控訴人は,本件補正により,旧請求項1を,本件特許の特許請求の範囲から削除し,
その範囲を旧請求項2及び旧請求項3に限定したものである。
このように,控訴人は,本件補正において,座席を連続して揺動させることが可
能な乳幼児用の椅子等であって,揺動制御手段としてソ\レノイドを有するものにつ
いて,拒絶理由通知に対応して,座席支持機構を特段限定していない旧請求項1を\n削除し,座席支持機構にロッド2点支持方式を採用する旧請求項2(本件発明)及\nび座席とベースとの間に,ベースに対して座席が「水平往復動可能なスライド手段\nを設けたことを特徴とする」方式を採用する旧請求項3に限定したものである。そ
して,本件発明の出願時には既に,座席を連続して揺動させることが可能な乳幼児\n用の椅子等の座席支持機構として,コロと湾曲レールを利用した方式が存在するこ\nとは周知であり(乙3〜5),コロと湾曲レールを利用する方式に係る座席支持機
構は,上記のとおり削除された旧請求項1に係る座席支持機構\の範囲内に客観的に
含まれるものである。
したがって,控訴人は,コロと湾曲レールを利用する方式に係る座席支持機構に\nついても,本件発明の技術的範囲に属しないことを承認したもの,又は外形的にそ
のように解されるような行動をとったものと評価することができる。
よって,均等の第5要件の充足は,これを認めることができない。
エ 控訴人の主張について
控訴人は,本件特許の出願当時,動力機構としてソ\レノイドを用い,座席支持機
構としてコロと湾曲レールを利用するという各構\成を組み合わせた乳幼児用の椅子
等は存在せず,また,動力機構としてソ\レノイドを用いることから生じる課題も公
知ではなかったから,本件特許の特許請求の範囲に,座席支持機構としてコロと湾\n曲レールを利用する方式も含めることは容易ではなく,さらに,拒絶理由を回避す
るために,座席支持機構についてロッドを利用した方式に限定したものでもないと\n主張する。
しかし,控訴人が,本件補正において,ロッド2点支持方式等を除く方式に係る
座席支持機構を包括的に削除したとの事実の評価は,客観的に判断されるべきもの\nである。
そうすると,このような控訴人の本件補正時における具体的な認識や本件補正の
目的は,均等の第5要件の充足に関する結論を左右するものではない。
(4) まとめ
よって,均等のその余の要件の成否について検討するまでもなく,各被告製品は,
均等の第1要件及び第5要件を充足しないから,各被告製品が本件発明と均等なも
のとしてその技術的範囲に属するということはできない。
◆判決本文
◆原審はこちらです。平成26年(ワ)第25196号
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2016.04. 1
平成27(ネ)10107 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成28年3月28日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
第1要件により均等侵害否定されました。1審では、文言解釈により技術的範囲に属しない、また進歩性なしとして特許104条の3により権利行使不能と判断されていました。\n
これらの記載によれば,本件特許発明1の特徴となる技術的意義の一
つは,弾性腕の接触部についての有効嵌合長が短くなるという課題を解決するため
に(【0005】【0008】),複数の弾性腕が,いずれも,端子の基部から接触線
に沿って平行に延びるという解決手段を採用することによって(【0013】,【00
25】,【0042】),端子の基部から延びる弾性腕が接触線を跨ぐことで相手端子
と当接することを防ぎ,その結果,各弾性腕を長く形成することができ(【0013】),
そのため,有効嵌合長を大きく確保することができるという効果を奏する(【001
9】)ものであるから,弾性腕が,端子の基部から接触線に沿って平行に延びること
は,本件特許発明1の効果を奏するために必要となる,特徴的な構成であると認め\nられる。
これに対し,本件特許発明1において,弾性腕の間に設けられた中央壁15は,
実施例で言及されているだけであるから,本件特許発明1において発明特定事項と
なる必須の構成ではなく,また,本件特許1の明細書に従来技術に関する文献とし\nて掲げられた特開平8−236187号公報(甲19)に加え,特開2003−1
68505号公報(乙12),特開平6−76896号公報(乙15),バーグエレ
クトロニクスジャパン株式会社カタログ(乙19。平成10年1月ころ発行)から
も明らかなとおり,本件特許1の出願日及び本件特許2の原出願日である平成20
年8月5日当時において,コネクタでは,2つの端子の接触部側の間に,相手端子
を当接して停止させる効果をもたらす中央壁が必ず設けられるという技術常識は存
在しないから,当業者にとって,上記中央壁の設置が当然の構成ということもでき\nない。そして,中央壁が存在しない場合には,弾性腕の根元部分が接触線を跨ぐと,
有効嵌合長が短くなるし,仮に,中央壁を設ける場合であっても,弾性腕の根元部
分が中央壁よりも常に高い位置に設けられるとは限らないから,例えば,弾性腕の
最も根元の部分が,中央壁よりも低い位置から開始し,かつ,接触線に対して端子
溝側にある場合であっても,弾性腕が屈曲形状を有していて,中央壁よりも高い位
置で接触線を跨ぐときには,有効嵌合長が短くなることも想定され,したがって,
有効嵌合長の長さは,常に中央壁よりも高い弾性腕部分の長さになるわけではなく,
弾性腕の根元部分の位置や弾性腕の形状等にも左右される。本件特許1の明細書に
記載された従来技術としては,特開平8−236187号公報(甲19)では,相
手端子が当接する中央壁が存在しないコネクタが実施例として,特開2002−1
75847号公報(甲20)では,相手端子が当接する中央壁が設けられたコネク
タが実施例として開示されているから,これらの従来技術を踏まえた本件特許発明
1は,相手端子が当接する中央壁の有無にかかわらず,有効嵌合長を長くすること
を確実にする効果を目指していた発明ということができる。
そうすると,本件特許発明1は,中央壁の有無にかかわらず,有効嵌合長を大き
く確保することを課題とする発明である以上,当該効果を確実に実現するためには,
弾性腕の一部だけが接触線に対して一方の側に位置すれば足りるわけではなく,そ
の全体が接触線に対して一方の側に位置することが不可欠であり,複数の弾性腕全
体が接触線の一方の側にあるという発明特定事項は,本件特許発明1の本質的部分
といえる。
(エ) これに対し,被控訴人製品1,2のいずれにおいても,内側接触子2
3(「上位に位置する弾性腕」)の内側湾曲部23Aの根元部分は,直線(接触線)
Xを跨っているから,弾性腕が,接触線に対して一方の側に位置しているとはいえ
ない。
したがって,被控訴人製品は,本件特許発明1の本質的部分である構成要件1B\nと相違するから,均等の第1要件を充足しない。
◆判決本文
◆原審はこちらです。平成26(ワ)18842
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2016.03.14
平成27(ネ)10104 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成28年3月9日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
控訴審で均等侵害を主張しましたが、第1要件、第5要件を満たしていないとして、否定されました。
ア 均等侵害の第1要件は,特許請求の範囲に記載された構成と相手方が製造等をする製品又は用いる方法との異なる部分が特許発明の本質的部分でないことであ\nる。そして,特許発明における本質的部分とは,特許請求の範囲に記載された構成のうち,当該特許発明特有の解決手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部\n分であると解すべきである。
イ 本件各発明は,前記1(4)イのとおり,HMG−CoA還元酵素阻害剤として
高脂血症の治療に有用な,結晶形態のピタバスタチンカルシウム塩及びそれを含む
医薬組成物に関し,特別な貯蔵条件でなくとも安定なピタバスタチンカルシウムの
結晶性原薬を提供すること,同原薬を安定的に保存する方法を提供することを課題
とし,ピタバスタチンカルシウムの結晶性原薬に含まれる水分量を特定の範囲にコ
ントロールすることでその安定性が格段に向上すること及び結晶形態AないしCの
中で結晶形態Aが医薬品の原薬として最も好ましいことを見いだしたというもので
ある。
そうすると,特別な貯蔵条件でなくとも安定なピタバスタチンカルシウムの結晶
性原薬を提供すること,同原薬を安定的に保存する方法を提供することを課題とす
る本件各発明において,特定の結晶形態をとることが,上記課題の特徴的な解決手
段であるといえる。
そして,本件各明細書には,結晶形態AないしCの3種類の結晶形態は,水分が
同等で結晶形態が異なる形態であり,結晶形態B及びCは,「いずれも結晶形態A
に特徴的な回折角10.40°,13.20°及び30.16°のピークが存在し
ないことから,結晶多形であることが明らかにされる。」(本件明細書1【001
4】,本件明細書2【0015】)とあるように,CuKα放射線を使用して測定
した粉末X線回折図において,結晶形態Aに存在する3本のピークの回折角が存在
しないことによって,結晶形態Aと区別されるものであることが記載されているの
みで,結晶形態B及びCに係る回折角(2θ)の数値,相対強度や粉末X線回折図
を含めその粉末X線回折パターンについての開示は一切なく,他方で,結晶形態A
については,CuKα放射線を使用して測定した粉末X線回折パターンとして,別
紙本件明細書1図表目録2記載のとおりの数値が記載され,同目録3記載の【図1】の記載があるのみで,それ以上の特定はされておらず,結晶形態Aに係る回折角に\nついて,その数値に一定範囲の誤差が許容されることや15本のピークのうちの一
部のみによって結晶形態Aを特定することができることをうかがわせる記載も一切
存しない。
以上によれば,本件各発明において,構成要件C・C’に規定された15本のピークの回折角の数値は,本件各明細書において,本件各発明の課題の特徴的な解決\n手段である特定の結晶形態を,他の結晶形態,すなわち本件各発明の課題の解決手
段とはなり得ない結晶形態と画する唯一の構成として開示されたものであるということができる。\nしたがって,本件各発明において,構成要件C・C’に規定された15本のピークの回折角の数値は,本件各発明の課題の解決手段を基礎付ける技術的思想の中核\nをなす特徴的部分であるというべきである。
ウ そうすると,控訴人が被控訴人製品に含まれるピタバスタチンカルシウム塩
における15本のピークの回折角であるとする数値は,前記1(5)のとおり,原判決
別紙物件目録(1)記載のとおりであり,控訴人の特定する数値によったとしても,1
5本の全てが構成要件C・C’の回折角の数値と相違するのであるから,被控訴人製品は,本件各発明と課題の解決手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的\n部分において相違していることになる。
以上によれば,被控訴人製品は,均等侵害の第1要件を充足しない。
(3) 均等侵害の第5要件について
ア 均等侵害の第5要件は,相手方が製造等をする製品又は用いる方法が特許発
明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるな
どの特段の事情がないことである。
イ 前記1(3)のとおり,控訴人は,本件特許1の出願経過において,拒絶理由通
知を受け,構成要件Cの15本のピークの回折角の数値を挿入する平成23年11月29日付けの補正を行い,この際,上記補正が特許請求の範囲の限定的減縮に相\n当するものであることを表明した。また,控訴人は,本件特許2の出願経過においても,拒絶理由通知を受け,構\成要件C’の15本のピークの回折角の数値を挿入する平成25年3月8日付けの補正を行い,この際,上記補正が特許請求の範囲の
限定的減縮に相当するものであることを表明した。控訴人は,本件特許1の出願経過における拒絶理由通知において,1本のみのピ\nーク強度でしか特定されず,他のピークの特定がないので,公知文献に記載された
結晶と出願に係る結晶が区別されているとは認められないなどと指摘されたのに対
して,上記補正を行ったのであるから,15本のピークの回折角の数値をもって本
件発明1の結晶を特定したというほかない。
そして,本件特許2は,結晶形態のピタバスタチンカルシウム塩及びそれを含む
医薬組成物に関し,特別な貯蔵条件でなくとも安定なピタバスタチンカルシウムの
結晶性原薬を提供することを課題とし,ピタバスタチンカルシウムの結晶性原薬に
含まれる水分量を特定の範囲にコントロールすることでその安定性が格段に向上す
ること及び結晶形態AないしCの中で結晶形態Aが医薬品の原薬として最も好まし
いことを見いだした本件特許1を原出願とする分割出願であって,本件特許1に係
る原薬を安定的に保存する方法を提供することを課題とする発明であり,その出願
当初の特許請求の範囲の請求項1には,上記補正後の本件発明1の結晶と同じ15
本のピークの回折角の数値をもって結晶が特定されていたものである。
以上によれば,本件各特許の出願経過においてされた上記各補正は,本件各発明
の技術的範囲を,回折角の数値が15本全て一致する結晶に限定するものであると
解されるから,構成要件C・C’の15本のピークの回折角の数値と,全部又は一部がその数値どおり一致しないピタバスタチンカルシウム塩の結晶は,本件各発明\nの特許請求の範囲から意識的に除外されたものであるといわざるを得ない。
したがって,被控訴人製品は,均等侵害の第5要件を充足しない。
◆判決本文
◆一審はこちらです。平成26(ワ)3344等
◆関連事件です。平成27(ネ)10108
◆この事件の一審はこちらです。平成26(ワ)688
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2015.12. 5
平成27(ネ)10038 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成27年11月26日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
控訴審で均等侵害を主張しましたが、均等侵害なしと判断されました。なお、時機に後れた攻撃防御であるとの主張は認められませんでした。
被控訴人は,控訴人の均等侵害の主張が時機に後れた攻撃防御方法に当たる旨を
主張するが,既に提出済みの証拠関係に基づき判断可能なものであるから,訴訟の\n完結を遅延させるものとはいえない。
したがって,上記主張を時機に後れた攻撃防御方法として却下はしない。
(2) 均等論その1について
控訴人は,被控訴人機器又は被控訴人運行管理方法が,本件各特許発明における
「第1記録領」域及び「第2記録領域」との構成を有せず,構\成要件1D又は構成\n要件2C若しくは2Dを充足しないとしても,被控訴人機器又は被控訴人運行管理
方法は,本件各特許発明の構成と均等なものである旨を主張する。\nそこで,以下,検討する。
ア 第1要件の充足について
本件特許発明の内容及び本件明細書の記載事項は,前記1及び同2(2)のとおりで
ある。
これらにかんがみると,本件特許発明は,1)従来技術においては,車両等の挙動
特徴に関する計測データを,危険な運転操作の検出等と日常的な運転中の挙動操作
の双方を解析するについては不十分なものであったことから,2)これらの解析に必
要なすべての計測データを効率的に記録媒体に記録する運行管理方法とシステムの
提供を課題とし,3)その解決方法として,[1]日常的な運転における挙動の特徴に関
するデータと,事故につながるような挙動の特徴に関するデータとを所定の条件に
より峻別し,[2]それぞれのデータを,記録媒体の別々の記録領域に記録し,4)これ
らのことにより,それぞれのデータが常に確保されるようにして,その確保された
データを解析することにより,きめ細やかな運行管理を可能としたものと認められ\nる。
このような本件各特許発明の課題,課題解決方法及び作用効果においては,限ら
れた容量の記録媒体に,どのようにして複数種の解析されるべきデータを記録する
かが,発明を構成する必須の要素であり,その重要な特徴点であるといえる。そう\nであれば,構成要件1D又は2C若しくは2Dの「第1記録領域」及び「第2記録\n領域」は,本件各特許発明の本質的部分に含まれると認められる。
したがって,被控訴人機器又は被控訴人運行管理方法は,いずれも,均等の第1
要件を充足しない。
イ 控訴人の主張に対して
控訴人の主張は,本件各特許発明の本質的部分は,定点観測のデータと危険挙動
のデータとをそれぞれ第1データと第2データとに分けて出力した点にあり,各デ
ータをどのように記録させるかの点にはないとの趣旨と解される。
しかしながら,上記アのとおり,本件各特許発明の特徴は,2種類のデータとそ
の記録領域とをそれぞれに関連させて別個に記録させたところにあるから,単にデ
ータが区別されている点のみがその本質的部分とはいえない。データの記録方法と
して,本件各特許発明の方法と作用効果に相違のない構成は,その出願当時におい\nても多々あり得たものといえるが,本件各特許発明は,その中において,あえて,
記録媒体の記録領域が「第1記録領域」と「第2記録領域」を有するとの構成に限\n定したのであり,他に作用効果が同一の構成があることや,当該他の構\成が容易に
想到できるものであるか否かは,発明の本質的部分の認定を左右するものではない。
◆判決本文
◆原審はこちらです。平成25(ワ)10396
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2015.11.15
平成27(ネ)10076 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成27年11月12日 知的財産高等裁判所 大阪地方裁判所
第2要件、さらには第1要件を満たさないとして均等侵害も否定されました。
ア 前記1(2)によれば,円テーブル装置のクランプ機構においては,作業時にお\nける工具からの加圧又は振動に対して,確実に所定の回転角度の位置を保つことの
できるクランプ力を得るために,油圧ピストンを使用して高い作動圧(油圧)でク
ランプ部材を加圧していたが,油圧ピストンの使用には,部品コストが掛かり,メ
ンテナンスにも手間が掛かるという課題があったことから,本件特許発明は,円テ
ーブル装置において,空気圧のような低圧で使用する流体圧ピストンでも十分に回\n転軸をクランプすることができるクランプ機構の提供を目的としたものである。\nそして,本件特許発明は,クランプ機構を構\成する増力機構につき,第1段増力\n部及び第2段増力部を備えたものとし,流体圧ピストン(25)から可動側クラン
プ部材(21)に働くクランプ方向の力を2段階にわたり増力することによって,
空圧ピストンのように低い作動圧のピストンでも十分に回転軸をクランプすること\nができるようにして,前記課題を解決するものである。
イ この点に関し,前記1(3)のとおり,本件明細書には,前記増力機構における\n2段階にわたる増力について,以下のとおり開示されている(別紙1【図2】参照)。
すなわち,1)流体圧ピストン(25)の第1段用テーパーカム面(28)とボー
ル(26)との当接部P1において,F1(流体圧ピストン(25)のクランプ方
向の押圧力)が,ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面
(40)に対向している流体圧ピストン(25)の第1段用テーパーカム面(28)
のカム作用により,F2(径方向の外方に向く力)に増力されてボール(26)に
伝達される(第1段の増力)。
次に,2)ボール(26)と可動側クランプ部材(21)との当接部P2において,
F2が,ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)
に対向している可動側クランプ部材(21)の第2段用テーパーカム面(29)の
カム作用により,F3(クランプ方向の押圧力)に増力されて可動側クランプ部材
(21)に伝達される(第2段の増力)。
ウ 第2段の増力に関し,前記2(3)ウ(ウ)のとおり,仮に,α3=0°,すなわ
ち,第2段用テーパーカム面(29)が回転軸芯と直角を成すものとすると,径方
向の外方に向く力であるF2が,第2段用テーパーカム面(29)と完全に平行の
状態になることから,F2がクランプ方向の押圧力であるF3に増力されることは
なく,「第2段増力部」が増力機構として機能\しなくなる。
したがって,第2段用テーパーカム面(29)が回転軸芯と直角,すなわち,傾
斜角度が「α3=0°」の場合を含まないという構成を,「α3=0°」の構\成に置
き換えれば,2段階にわたる増力により空圧ピストンのように低い作動圧のピスト
ンでも十分に回転軸をクランプすることができるようにするという本件特許発明と\n同一の目的を達することも同一の作用効果を奏することもできなくなることは,明
らかというべきである。
エ 控訴人は,本件特許発明における2段式増力機構における増力の仕組みは,\n前記第3の2〔当審における控訴人の主張〕(5)のとおりであり,「α3=0°」の場
合に,F1からF3への増力は最大となるから,「第2段用テーパーカム面(29)」
の「30°以下の緩やかな傾斜角度」,すなわち,「0°<α3≦30°」を「α3
=0°」に置き換えても,増力を実現でき,かつ,低い作動圧下における高いクラ
ンプ力の実現等の本件特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏す
る旨主張する。
しかし,控訴人の主張は,第2段の増力につき,F2がシリンダ形成部材(31)
のテーパー面(40)においてF3に増力され,この反作用として,テーパー面(4
0)からボール(26)を介して可動側クランプ部材(21)に対してF3と同等
の力が生じることを前提とするものであるところ,前記2(4)カ(イ)のとおり,特許
請求の範囲にも本件明細書の発明の詳細な説明にも,控訴人主張に係る増力の仕組
みは記載されておらず,したがって,同仕組みは,本件明細書の記載に基づかないものといわざるを得ない。
なお,控訴人の役員が作成した甲第15号証には,被告製品のクランプ機構の動\n作につき,「『クランプピストン』が正面部に動き,『鋼球』を『クランプシリン
ダ』のテーパー面にそって動かし,『クランプシリンダ』のテーパー面に対向して
いる『クランプピストン』のカム作用と,『鋼球』を介して,『クランプシリンダ』
のテーパー面に対向している『クランプリング』のカム作用による増力された力が
『クランプリング』に加わることになります。」と記載されているが,同記載によ
っても,本件特許発明のように2段階の増力が行われているかは不明であり,増力
の測定値等の客観的な裏付けもない以上,被告製品において2段階にわたる増力が
されていると認めるに足りないというべきである。
オ 以上によれば,被告製品は,前記(2)2)の要件を充たすものではない。
(4) 前記(2)1)の要件について
ア 前記(3)によれば,本件特許発明に係る円テーブル装置のクランプ機構が,2\n段階にわたり増力する増力機構を備えることは,前記課題解決に不可欠な構\成とい
え,本件特許発明を特徴付けるものということができるところ,第2段用テーパー
カム面(29)が回転軸芯と直角を成すものではないこと,すなわち,傾斜角度が
「α3=0°」の場合を含まないことは,上記増力機構を構\成する「第2段増力部」
における第2段の増力のために不可欠なものである。
この点に鑑みると,本件特許発明の構成要件E2の「第2段用テーパーカム面(2\n9)」は,傾斜角度が「α3=0°」の場合を含まないのに対し,被告製品の構成中,\n「クランプリング8の鋼球10と当接する面」は,回転軸芯と直角,すなわち,「α
3=0°」であるという相違部分が,本件特許発明の本質的部分でないということ
はできない。
イ 控訴人は,F2からF3への増力において問題となる角度はα2であり,α
3ではないとして,「α3=0°」に係る相違部分は,本件特許発明の本質的部分で
はない旨主張するが,控訴人の主張は,前記(3)のとおり,本件明細書の記載に基づ
かない増力の仕組みを前提とするものであるから,採用できない。
ウ したがって,被告製品は,前記(2)1)の要件を充たすものともいえない。
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2015.10.16
平成26(ネ)10111 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成27年10月8日 知的財産高等裁判所 大阪地方裁判所
控訴状および控訴理由書でも主張しなかった均等侵害について、知財高裁は、時機に後れた抗弁であるが、被控訴人も反論したので・・として均等侵害か否かについても判断しました。結果は、均等の第1、第2要件を満たさないとのことです。
被控訴人は,控訴人が,当審において,新たにイ号製品は本件各特許発明の均等
侵害を構成する旨の主張を予\備的に追加したのに対し,上記主張は,時機に後れた
攻撃方法の提出として,民訴法157条1項に基づき却下されるべきである旨主張
する。
控訴人は,平成25年6月3日に本件訴訟を提起し,平成26年9月25日に原
判決が言い渡されると,同年10月8日に控訴を提起したが,均等侵害に係る主張
は,控訴状にも,同年12月16日提出に係る控訴理由書にも記載されておらず,
平成27年2月14日提出に係る第1準備書面において初めて,その主張の骨子が
記載されたものである。
第1審における争点は,専ら構成要件2E及び1Bの充足性であったこと,控訴\n状には控訴理由の記載がなく,控訴理由書には,控訴理由は,前記第3の1(「横
向き管における最下面の延長線」,「延長線の近傍位置または該延長線より上方位
置」の意義),第3の2及び第3の6の4点である旨記載をしながら,均等侵害に
係る主張を記載せず,主張の予告もなかったこと,控訴人の第1準備書面が提出さ\nれたのは,同月19日の当審第1回口頭弁論期日のわずか5日前であったことなど,
本件審理の経過に照らせば,控訴人の均等侵害に係る主張は,時機に後れたものと
いわざるを得ない。しかしながら,被控訴人も上記主張に対する認否,反論をした
ことに鑑み,均等侵害の成否について以下において判断する。
(2) 本件特許発明2の均等侵害について
ア 本件特許発明2とイ号製品との相違点について
前記1において説示したとおり,イ号製品は,本件特許発明2の構成要件2Eを\n充足しないから,本件特許発明2とイ号製品とは,少なくとも構成要件2E,すな\nわち,本件特許発明2においては,レベル計が,供給管の横向き管における最下面
の延長線の近傍位置又は該延長線より上方位置に設けられているのに対し,イ号製
品においては,レベル計の位置を最も高い位置にしたとしても,横向き管が縦向き
管と接する出口の下端とレベル計の最上面との距離が28.2mm存し,レベル計
が,横向き管の最下面を形成する線を縦向き管に向けて延長した線のうち縦向き管
内の最も高い位置より下方が,その充填された混合済み材料によって満杯の状態に
なる位置より少しばかり下に設けられているとは認められない点において相違する。
イ 均等侵害の成立要件について
(ア) 作用効果の同一性(第2要件)について
本件特許発明2は,前記1(1)ウのとおり,吸引輸送される材料が未混合のまま一
時貯留ホッパーへ直接に送られるのを防止することを目的として,流動ホッパーへ
の材料の吸引輸送は,前回吸引輸送した混合済み材料が流動ホッパーから一時貯留
ホッパーへと降下する際に,前記混合済み材料の充填レベルが供給管の「横向き管
における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方」に降下する前に開始す
るようにするため,供給管の「横向き管における最下面の延長線の近傍位置または
該延長線より上方位置」に,混合済み材料の充填レベルを検出するためのレベル計
を設けるようにしたものであり,これにより,吸引輸送される材料は,その充填さ
れた混合済み材料によって,一時貯留ホッパーへの落下が阻止されるため,未混合
のまま一時貯留ホッパーへ落下することはないという作用効果を奏するものである。
これに対し,イ号製品においては,前記1(3)のとおり,レベル計の位置を最も高
い位置にしたとしても,横向き管が縦向き管と接する出口の下端とレベル計の最上
面との距離が28.2mmあって,横向き管が縦向き管と接する出口の下端とレベ
ル計の最上面との間に相当の空間が存し,当該空間は,充填された混合済み材料に
よって満たされた状態とはなっていないから,吸引輸送される材料が,充填された
混合済み材料によって,一時貯留ホッパーへの落下が阻止され,未混合のまま一時
貯留ホッパーへ落下することはないという作用効果を奏しない。
したがって,イ号製品は,均等の第2要件を充足しない。
(イ) 非本質的部分(第1要件)について
本件特許発明2の本質的部分,すなわち,技術思想の中核的部分は,前記1(1)
ウによれば,構成要件2Eの「供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍位\n置または該延長線より上方位置に」レベル計を設けることにより,流動ホッパーへ
の材料の吸引輸送は,前回吸引輸送した混合済み材料の充填レベルが供給管の「横
向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方」に降下する前に
開始されるため,吸引輸送される材料が,その充填された混合済み材料によって,
一時貯留ホッパーへの落下が阻止されるという作用効果を奏する点にあるものと認
められる。
これに対し,イ号製品は,構成要件2Eの「供給管の横向き管における最下面の\n延長線の近傍位置または該延長線より上方位置に」レベル計を設けたものではない
から,レベル計の位置を最も高い位置にしたとしても,横向き管が縦向き管と接す
る出口の下端とレベル計の最上面との距離が28.2mmあって,横向き管が縦向
き管と接する出口の下端とレベル計の最上面との間に相当の空間が存し,吸引輸送
される材料が,充填された混合済み材料によって,一時貯留ホッパーへの落下が阻
止されるという作用効果を奏せず,課題の解決手段を異にする。
そうすると,本件特許発明2とイ号製品との前記アの相違点が,本件特許発明2
の本質的部分でないということはできない。
したがって,イ号製品は,均等の第1要件も充足しない。
◆判決本文
◆一審はこちらです。平成25年(ワ)第5600号
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2015.09.10
平成26(ワ)25858 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成27年8月25日 東京地方裁判所
被告製品2については第1要件を満たさないとして、均等侵害が否定されました。なお、被告製品1は文言侵害が認められています。
以上の本件明細書の記載によれば,本件発明は,講演者の立ち位置によってはスクリーンに投影される画像に干渉するという従来技術の問題点を解決するために,自動車のフロントガラスの前に置かれた物(これがフロントガラスの下にあることは明らかである。)がフロントガラス(観測者である運転者から見て上端が手前に,下端が奥にあることは明らかである。)に映り,フロントガラスの背景に存在するように見えるという物理原理をステージ等の背景に映像を表示することに利用したものであって,ステージの床に反射面(上記フロントガラスの例において背景に存在するように見える物が置かれる場所に相当する。)を配置し,フィルム(フロントガラスに相当する。)の上端を観客席側から見て手前に,その下端を奥に保持するとともに,表\示される物を反射面に直接置くのではなく,これに対面する天井に画像源を配置するとの構成を採用した点に,本件発明の本質的部分があるものと解される。
ウ これに対し,原告は,フィルムを反射面に向かい合うように傾斜させて配置したこと及び反射面の反対側に画像源を配置したことが本件発明の本質的部分であり,画像源と反射面の上下その他具体的な保持・配置関係は本質的部分でないと主張する。
そこで判断するに,本件明細書においては,自動車のフロントガラスの手前にある「保管場所」と本件発明の「反射面」をそのままの位置関係で対応させて面が床(下)にあるものとして記載されているのであって(第1図についても,支持部材22の形の下部保持部と巻取パイプ24の形の上部保持部とを伴うフィルム20(5欄35〜37行),第1図の左にいる観客(同41行)との記載によれば,観客から見た上下及び前後を踏まえた上で作図されたものであると解される。),画像源と反射面の位置関係が任意に変更可能であることを示唆する記載はない。かえって,反射面を床に設け書の記載上,特許請求の範囲に規定された画像源と反射面の上下関係等が本件発明の本質的部分に当たらないとみることはできないと考えられる。したがって,原告の上記主張を採用することはできない。\n
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2015.06. 3
平成26(ネ)10112 特許専用実施権侵害行為差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成27年5月28日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
均等侵害について、知財高裁は、1審と同じく第1および第3要件を具備していないと判断しました。
控訴人は,本件相違点3に関し,1)本件発明の本質的部分は,「グリップベース」の上下方向の可動性であり,「スライドボルト」の上下方向の可動性ではない(第3の1【控訴人の主張】⑴ウ(ア)a),2)本件相違点3及び4に関し,「スライドベース」の固定用垂直面の縦長小判穴,「スライドボルト支持用垂直面」に形成され
た縦長穴,「スライドボルト」及び「スライドタップ」の構成(構\成要件D3及びD4)は,「スライドベース」にリベット固定されたベースレールが島上部枠構造の下面にネジ留め固定される機構\(構成要件D1及びD2)と,「グリップベース」と「グリップアーム」とにより台枠上板が挟持される機構\(構成要件D5及びD6)の係わり合わせ方の1つにすぎず,その構\成自体は,本件発明の本質的部分ではない旨主張する(第3の1【控訴人の主張】⑴ウ(ア)c)。
イ しかしながら,前記⑶エのとおり,本件発明は,上部取付装置30の自動高さ整機能によって,島枠構\造の高さと台枠の高さとの間に差があっても,自動的に調整できる構造を備えたパチンコ台取付装置の提供という,従来の技術の問題点に係る課題の1つを解決するものであるところ,上記機能\に必須の要件といえるグリップベース35の上下方向の可動性は,グリップベース35が固定されたスライドボルト33が,「上下方向に移動可能に保持されること」という構\成によって確保されている。
この点に鑑みると,本件発明においては,「グリップベース」の上下方向の可動性よりも,その必要不可欠な前提である「スライドボルト」の上下方向の可動性が,本質的部分を構成するものとみるべきである。
ウ また,前記⑶ウのとおり,本件発明において,「スライドボルト」の上下方向の可動性は,スライドボルト33が,スライドベース31の固定用垂直面31bの縦長小判穴31eの長径とスライドボルト33の縦方向の径の長さとの差の範囲内において,上下方向に移動の自由が与えられた状態で,取り付けられているという構成によって,確保されている。\nさらに,グリップベース35が,スライドボルト33に螺合されたスライドタップ34に溶接固定され,スライドベース31の底面中央開口31dに吊り下げられた状態で取り付けられているという構成によって,グリップベース35を,上下方向の可動性が確保されたスライドボルト33の動きに追随させ,パチンコ台アセンブリの取付前は,重力により下がり,同取付時において台枠よりも低いときは,その高さまで押し上げられるようにしている。
以上によれば,本件相違点3及び4に係る本件発明の「スライドベース」の固定用垂直面の縦長小判穴,「スライドボルト支持用垂直面」に形成された縦長穴,「スライドボルト」及び「スライドタップ」のこれらの構成は,本件発明の課題の1つである上部取付装置30の自動高さ調整機能\を実現するためのものといえるから,本件発明の本質的部分に関わるものというべきである。
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◆原審はこちらです。平成25年(ワ)第31341号
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2015.01.20
平成25(ワ)4040 特許権侵害行為差止請求事件 特許権 平成26年12月24日 東京地方裁判所
薬の製造方法について均等侵害が認められました。
特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なかった技術的課題の解決を実現するための,従来技術に見られない特有の技術的思想に基づく解決手段を,具体的な構成をもって社会に開示した点にあるから,明細書の特許請求の範囲に記載された構\成のうち,当該特許発明特有の解決手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分が特許発明における本質的部分であると理解すべきである。
まず,訂正発明のうち,原告が被告方法と対比している場合(マキサカルシトールを目的物質とし,本件試薬を使用する場合)は,出発物質(構成要件B−1)と本件試薬を塩基の存在下で反応させて中間体のエポキシド化合物(構\成要件B−3)を製造し(以下「第1段階の反応」という。),同エポキシド化合物を還元剤で処理して(エポキシ環を開環して),マキサカルシトールを得る(構成要件C。以下「第2段階の反応」という。)ことからなるものである。\nそして,訂正明細書(甲15)には,訂正発明の解決すべき課題,訂正発明の目的,訂正発明の効果につき明確な記載はなく,「下記構造……を有す\n
る化合物の製造方法は新規であり……多様な生理学的活性を有することができるビタミンD誘導体の合成に有用である。」(訂正明細書25頁)と記載されているにすぎないが,訂正明細書の「発明の背景」の記載(訂正明細書15〜16頁)や実施例の記載(訂正明細書49〜57頁)を総合すると,訂正発明は,従来技術に比して,マキサカルシトールを含む訂正発明の目的物質を製造する工程を短縮できるという効果を奏するものと認められる(なお,ワンポット反応が可能であることは,訂正明細書に「工程(2)の反応は工程(1)の後に,より具体的にはシリカゲルクロマトグラフィーなどの適切な方法によって工程(1)の反応生成物を精製した後に実施することができ,あるいはまたそれは,工程(1)の反応生成物を精製することなくそれを含む混合物に還元剤を直接添加することによって実施することもできる。工程(2)を工程(1)の後に生成物を精製することなく実施する方法は「ワンポット反応」と称され,この方法は操作上の冗長さが少ないので好ましい。」〔訂正明細書41頁〕と記載されているとおり,訂正発明の一部の実施態様において得られる効果にすぎず,訂正発明の構成要件を充足する方法を使用すれば常にワンポット反応が可能\となるものではないから,訂正発明の奏する効果であるとは認められない。また,高い収率が得られることも,収率が必ずしも高くない結果を含む実施例8〜24も訂正発明の実施例として記載されており,訂正発明の構成要件を充足する方法を使用すれば常に高い収率が得られるというものではないから,訂正発明の奏する効果であるとは認められない。)。\nここで,訂正発明が工程を短縮できるという効果を奏するために採用した課題解決手段を基礎付ける重要な部分(訂正発明の本質的部分)は,ビタミンD構造又はステロイド環構\造を有する目的物質を得るために,かかる構造を有する出発物質に対して,構\成要件B−2の試薬(本件試薬を含む。)を塩基の存在下で反応させてエポキシド化合物を製造し(第1段階の反応),
同エポキシド化合物を還元剤で処理する(エポキシ環を開環する)(第2段
階の反応)という2段階の反応を利用することにより,所望の側鎖(マキサ
カルシトールの側鎖)を導入するところにあると認めるのが相当である。
(3) 被告らは,出発物質がビタミンD構造の場合,シス体を用いることと構\
成要件B−2の試薬(本件試薬を含む。)を用いることの組合せが訂正発
明の特徴であり,出発物質がシス体であることも,訂正発明の本質的部分
である旨主張する。
そこで,シス体とトランス体の意義についてみると,以下のとおりである。
ビタミンD類の基本的な骨格として,側鎖を除いた,
という構造を共に有している。\nこの基本骨格には上部の二環から繋がる3つの二重結合があり,これを通
常「トリエン」と呼ぶ。この「トリエン」は,二重結合部分では結合を軸と
して回転することができない。そのため,ビタミンD類には,このトリエン
構造に由来する幾何異性体が下図に示すように2つ存在する。\nこの左側のトリエンの並び方のものを「シス体」(5Z)といい,右側の
並び方のものを「トランス体」(5E)という。
ビタミンD構造の出発物質がシス体であっても,トランス体であっても,\n第1段階の反応で,出発物質の22位のOH基に塩基の存在下で本件試薬と
反応させてエポキシド化合物を合成する下図のような反応
に変わりはなく,第2段階の反応で,エポキシ環を開環してマキサカルシ
トールの側鎖を導入する下図のような反応
にも変わりはない。
被告方法は,ビタミンD構造の出発物質に本件試薬を使用し,第1段階\nの反応と第2段階の反応という2段階の反応を利用している点において,
訂正発明と課題解決手段の重要部分を共通にするものであり,出発物質及
び中間体がシス体であるかトランス体であるかは,課題解決手段において
重要な意味を持つものではない。
(4) 以上によれば,目的物質がビタミンD構造の場合において,出発物質及\nび中間体がシス体であるかトランス体であるかは,訂正発明の本質的部分
でないというべきである。
したがって,被告方法は,均等の第1要件を充足する。
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>> 第1要件(本質的要件)
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2014.11.20
平成25(ネ)10112 損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成26年10月30日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
チーズ製造方法についての特許権侵害控訴事件です。一審では、構成要件が不充足と判断され、控訴審では均等侵害を追加しました。裁判書は、均等の第2要件、さらに第1要件を満たさないと判断しました。製造方法ゆえに、かなりの部分が伏せ字になってます
。
本件各発明は,構成要件C及びFの「香辛料を内包」との構\成により,通常のカマンベールチーズ製品と比べて,外観上全く見分けがつかないとの作用効果を奏するものである。
これに対し,被控訴人製品等は,6ポーションカット切断面が白カビに覆われておらず香辛料が露出しているから,上記作用効果,すなわち,通常のカマンベールチーズ製品と比べて,外観上全く見分けがつかないとの作用効果を奏しないことは明らかである。
したがって,被控訴人製品等は,第2要件を充足しない。
イ 非本質的部分(第1要件)について
前記で認定した本件明細書の記載(【0001】〜【0005】)によれば,本件各発明の本質的部分すなわち技術思想の中核的部分は,構成要件A2及びD2の「チーズカードを結着するように熟成させ」て,「結着部分から引っ張ってもはがれない状態に一体化させ」,さらに,構\成要件B及びEの「その後,加熱」することにより,構成要件C及びFの「香辛料を内包」との構\成を得,これによって,通常のカマンベールチーズ製品と比べて,外観上全く見分けがつかず,また,加熱時に流動化したチーズが切断面から流れ出たり,香辛料が流出したり漏れたりすることがないという作用効果を奏する点にあるものと認められる。
これに対し,被控訴人製品等は,構成要件C及びFの「香辛料を内包」との構\成を具備しないから,通常のカマンベールチーズ製品と比べて,外観上全く見分けがつかないとの作用効果を奏するものではないし,「香辛料を内包」との構成によって,加熱時に流動化したチーズが切断面から流れ出たり,香辛料が流出したり漏れたりすることがないという作用効果を奏するものでもない。\nそうすると,本件各発明と被控訴人製品等との上記相違点は,本件各発明の本質的部分というべきである。したがって,被控訴人製品等は,第1要件も充たさないものである。
◆判決本文
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2014.08.13
平成25(ワ)7569 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年7月17日 東京地方裁判所
特許権侵害訴訟において、均等侵害も否定されました。また特104条の3の規定により権利行使できないとも判断されています。
本件特許の出願経過において,原告は,前記前提事実(2)エのとおり,引用文献1に基づく進歩性欠如等をいう本件拒絶理由通知に対し,特許請求の範囲の記載等を補正するとともに本件意見書を提出して,引用文献2及び同3はいずれもエジェクタを用いた技術であり,本件発明を示唆するものでない旨の意見を述べた。本件拒絶理由通知は,補正前の特許請求の範囲記載の発明と引用文献1記載の発明は,吸着具を上下動部材の先端に設けるか,正圧源からの正圧空気を着脱路と上下動部材を上下動させる空気圧シリンダに共用して供給するかの点で相違するが,これらの点は吸着搬送装置の技術分野において引例を示すまでもない周知技術であるとしつつ,括弧書きで「(不足であれば,例えば,引用文献2及び3等を参照されたい。)」と記載するものであった。原告は,本件意見書において,原告の特許出願に係る発明の構成,技術的意義等について説明し,引用文献1との比較をした後,引用文献2及び同3につき,これら文献に記載された技術内容や本件発明との具体的な相違点については何ら言及することなく,これ\nらが「エジェクタを用いた技術」であることのみを理由に,本件発明を示唆するものでないとの意見を述べた。(乙2〜5)
ウ 上記イ(ア)〜(ウ)の事実関係によれば,本件発明は,大気開放ポートがなく,真空破壊のための空気が出力ポートのみから着脱路に流入し,かつ,出力ポートから供給される正圧空気が全て着脱路の吸着面から排出される従来技術を前提に,ワークを迅速に離脱させるとともに吹き飛ばしを防止して正確な位置決めをするという課題の解決のため,大気開放ポートを設けてこれを着脱路及び出力ポートと連通させることにより,着脱路が大気圧に達するまでは大気開放ポートからも空気を流入させてワークの離脱を迅速にし,これが大気圧に達した後は正圧空気が大気開放ポートからも流出するものとしてワークの吹き飛ばしを防止したものであり,この点の構成が本件発明の課題解決のための本質的部分に当たると認められる。そうすると,大気開放ポートがなくても排気口から大気の流入及び正圧空気の排出が行われるエジェクタを備えた構\成は,上記の前提を欠くものであり,本件発明が解決すべき課題も存在しないことになるから,本件発明とは本質的部分において相違すると解するのが相当である。
上記イ(エ)の出願経過における原告の意見は,エジェクタを用いたものは本件発明とは基本的な技術思想が異なる旨をいうものと解され,本件発明の本質的部分についての上記解釈を裏付けるものということができる。
そうすると,前記のとおりエジェクタにより構成されたロ号製品は本件発明の本質的部分を備えていないものとみるべきであり,前記1)の要件を充足しないから,ロ号製品について均等による特許権侵害は認められないと判断するのが相当である。
◆判決本文
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2014.06.30
平成23(ワ)29178 損害賠償等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年06月06日 東京地方裁判所
CS関連発明について、均等論の主張も否定されました。無効主張に対して、訂正の抗弁をしていましたが、訂正後のクレームも技術的範囲に属しないと判断されました。
上記(1)に判示した均等侵害の成立要件のうち1)の要件に関し,特許発明の本質的部分とは,特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうち,公開された明細書や出願関係書類の記載から把握される当該特許発明特有の課題解決手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分をいうと解するのが相当である。これを本件発明についてみると,本件発明は,従来のネットワークゲームにあった課題,すなわち,くじ引きゲームのようなゲームでは,くじ引きという当たり又は外れによる偶然性に基盤が置かれるため,ユーザはゲームの進行度合いに応じて画像データの獲得率が向上する等の期待感が高まることがないため,ユーザに継続的にゲームを行わせることが困難である,という課題を解決するため,ユーザに「対価データ」の獲得を容易に行わせるとともに,ユーザに継続的にゲームを行わせるために,ユーザに対してゲームを行うことで直接に「対価データ」を付与するのではなく,「対価データ」を獲得するために必要な「ポイント」を付与するものとし,「対価データ」はその「ポイント」の対価としてユーザが獲得するものとした構\成が採用されたのであり,これが本件発明の課題解決手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分であるというべきである。そうすると,本件発明と被告サーバ装置との間において構成の異なる部分のうち,構\成要件A,D−1,E,F,G,D−2,C−2における「対価データ」を備える構成は,本件発明の本質的部分であるというべきである。他方,前記3のとおり,本件ゲームにおいては,「対価データ」に相当するものはなく,原告が主張する「強化された選手カード画像」は,強化ポイントによって新たにユーザに付与されるものではないから,本件発明の「対価データ」と本件ゲームの「強化された選手カード画像」の相違点は発明の非本質的部分と認めることはできない。したがって,均等侵害の成立要件の1)の要件を充たさないというべきである。
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2014.03.29
平成25(ネ)10017等 特許権侵害行為差止請求控訴,同附帯控訴事件 特許権 民事訴訟 平成26年03月26日 知的財産高等裁判所
1審では、発明1については技術的範囲に属する、発明2については技術的範囲に属しないと判断されました。控訴審にて、原告は、発明2について均等を追加主張しました。発明2については均等侵害が認められました。また、原告の均等の追加主張も時期に後れた抗弁には該当しないと判断されました。
ただ、発明1について無効と判断され、全体としての損害額が減額されました。
さらに,掬い上げ部材について,本件訂正明細書2には,「尚,該板状の掬い上げ部材5c1及び5c2の傾斜角度は,図示の例では,回転軸5aの中心軸線に対し20°傾斜せしめたものを示したが,一般に10°〜80°の範囲が採用できる。」(段落【0015】)と記載されているから,回転軸5aの中心軸線に対して10°〜80°の傾斜があれば足り,その傾斜角は一定でなければならないものではない。すなわち,回転軸5aの中心軸線に対する角度が小さくなればなるほど,走行方向に対し直交する長矩形の板状で構成される従来の掬い上げ部材に近いものとなり,掬い上げの効果は大きくなる一方,堆積物の外側への拡散が増大するが,回転軸5aの中心軸に対する角度が大きくなると,掬い上げの効果は小さくなるが外側への拡散を防止できることとなるものと推測されるところ,本件訂正発明2のV字型掬い上げ部材において,これらの角度は適宜選択できるものとなっているから,V字状のみに限定されず,より頂点への角度が緩やかな逆への字状のもの等も含まれる。また,段落【0006】には,「本発明のパドルの変形例として,図5に示すようなパドル5b″に構\成しても良い。すなわち,先の実施例のそのV字状の傾斜板5c1及び5c2の一端部を当接し,互いに直接溶接する代わりに,その両傾斜板5c1及び5c2の一端部間を適当な距離離隔し,そのスペース内に板状などの補強梁5jを介在させ,その両端部を傾斜板5c1及び5c2の一端部とを溶接し,その前後一対の板状の掬い上げ板部5c1及び5c2はハの字状に対称的に傾斜した傾斜板に構成しても良い。」との記載もあり,必ずしもV字状の掬い上げ部材に限られるものではないことが明らかである。さらに,段落【0009】には,「また,その本発明のパドル5b′の夫々の傾斜板5c1及び5C2は長矩形状とし,同一形状,寸法であることが一般であり好ましく,また,通常のパドル5bの板状掬い上げ部材5cと同一形状,寸法であることが一般であるが,これに限定する必要はない。また,その各傾斜板5c1及び5C2の長さ又は高さ寸法は所望に設定される。」と記載され,しかも,本件発明1の掬い上げ部材について,本件明細書1の段落【0005】に「その先端には堆積物を掬い上げる板状,爪状などの掬い上げ部材5cを有し,その回転により堆積物の撹拌とその正転,逆転による往復動撹拌を行う作用を有する。」と記載されているから,堆積物を掬い上げるための形状も,平面な「板状」に限られるものではない。\n
(ウ) 以上に照らせば,堆積物の外側への掬い上げ時の拡散,崩れなどの不都合を解消するために,前後一対の板状の掬い上げ部材が,それぞれ回転軸の軸方向に対し所定角度内側(オープン式発酵槽の長尺壁の方向)を向くようにし,掬い上げ部材の内側に向いて傾斜した部材の外側が,その前方に堆積する堆積物の長尺開放面側の外端堆積部に当接し,斜め内側に向けてこれを掬い上げるよう,傾斜板を所定角度内側に向けて配置したことが,本件訂正発明2を基礎付ける特徴的部分であると認められる。そして,本件訂正発明2の攪拌機は,往復動走行に伴って正又は逆回転するものであることから,掬い上げ部が外端堆積部に当接する場合は,回転軸に直交する前後方向のいずれの場合もあり得ることから,そのいずれの場合においても,堆積物を掬い上げる必要があり,そのために,掬い上げ部材を前後にかつ前後方向に対し傾斜させて配置し,その前側の傾斜板の外面は斜め1側前方を向き,その後側の傾斜板の外面は斜め1側後方を向くように配向させて配設されたものと認められる。そうすると,掬い上げ部材が前後の両方向に傾斜されて配置されるとの構成も,本件訂正発明2を基礎付ける特徴的部分であるといえる。これに対して,本件訂正明細書2には,掬い上げ部材が2枚であることの技術的意義は,何ら記載されておらず,前記のとおり,傾斜板の外面が正又は逆回転時のそれぞれにおいて,外端堆積部に当接することが重要であるから,本件発明2の掬い上げ部材が2枚で構\成されることに格別の技術的意義があるとはいえず,本件訂正明細書2に記載されるように2枚の部材を直接溶接してV字状を形成することと,1枚の部材を折曲してV字状を形成することとの間に技術的相違はないから,この点は本質的部分であるとはいえない。また,前記のとおり,前後に傾斜させる角度が,回転軸5aの中心軸線に対して10°〜80°の角度であればよく,逆への字状が含まれることや,掬い上げる部材としても,平面な板状に限定されず,外端堆積部に当接して内側に掬い上げることができればよいことに照らすと,掬い上げ部材が,平面な板状で構成されていることも,本質的部分であるとはいえない。そうすると,上記アで述べた,本件訂正発明2のV字型掬い上げ部材が「2枚の板状の部材を傾斜させて配置されるもの」に対し,ロ号装置の掬い上げ部材105dは,「半円弧状の形状を有する1枚の部材から構\成されたもの」であるとの相違点は,本質的部分に係るものであるということはできない。
・・・・
原告日環エンジニアリングによる均等侵害の主張は,原判決において本件発明2の文言侵害が認められなかったことを受けて,平成25年5月23日に行われた当審の第1回口頭弁論期日以前に提出された同年4月30日付けの附帯控訴状において均等侵害に該当する旨が記載され,同年5月16日付け準備書面において均等侵害の5要件に関する主張が記載されていたものであり,その内容は,新たな証拠調べを要することなく判断可能なものであり,訴訟の完結を遅延させるものとはいえない。したがって,上記主張を時機に後れた攻撃防御方法として却下はしない。なお,被告が,原告らが,原審において,請求原因を明確にせず,被告及び裁判所から1年間にわたり請求原因の補充を促され続けたことにより遅延した旨主張する部分については,仮にそのような事実があったとしても,上記判断を左右するものでない。\n
◆判決本文
◆原審:平成25年01月31日 東京地裁 平成21(ワ)23445
◆関連審取はこちら 平成25(行ケ)10105
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2014.02.10
平成21(ワ)32515 損害賠償等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年01月30日 東京地方裁判所
第1要件(本質的部分)および第5要件(意識的除外)により均等侵害が否定されました。
上記の補正にもかかわらず,上記拒絶理由通知の理由に
より拒絶査定(乙179の33)がされたため,原告は,拒絶査定不服審判の審判請求書(乙19)において,本件発明は「市外局番と市内局番と連続する予め電話番号が存在すると想定される番号の番号テーブルを作成しハードディスクに登録する手段」が中核的構\成要件であると述べるとともに,平成19年6月15日提出の補正書(乙179の37)により,上記部分を「市外局番と市内局番と連続する予め電話番号が存在すると想定される番号の番号テーブルを作成しハードディスクに登録する手段」と補正し,本件特許の特許登録がされるに至ったこと,以上の事実が認められる。ウ 上記事実関係によれば,本件発明の本質的部分は,実在する電話番号を収集しその利用状況を調査するために,実在すると想定される市外局番及び市内局番とこれに連続する4桁の番号からなる全ての電話番号の番号テーブルを作成してこれをハードディスクに登録するという構成を採用した点にあると解される。したがって,特許請求の範囲に記載された構\成と被告装置5の相違点は,本件発明の本質的部分に当たるということができる。さらに,上記出願経過に照らせば,原告は,拒絶理由を回避するために,特許請求の範囲を「ハードディスクに登録する手段」を有する構成に意識的に限定したものと認められる。したがって,均等の第1要件及び第5要件を欠くから,被告装置5は,本件発明と均等なものとはいえず,その技術的範囲に属しないというべきである。\n
(4) 以上のとおり,被告装置2〜4は,携帯電話の調査に係る構成を除き,本件発明の技術的範囲に属すると認められるのに対し,被告装置1及び5は本件発明の技術的範囲に属するとは認められないと判断することが相当である。\n
◆判決本文
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2013.12.20
平成23(ワ)30214 特許権侵害差止請求権不存在確認等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年12月19日 東京地方裁判所
第1要件に該当しないとして、均等侵害が否定されました。
特許権は,従来技術では達成し得なかった技術的課題を解決する手段を公開した代償として付与されるものであるから,このことを考慮すれば,特許発明の本質的部分とは,特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうち,公開された明細書や出願関係書類の記載から把握される当該特許発明特有の課題解決手段を基礎付ける特徴的部分をいうと解するのが相当である。証拠(甲2,20の7及び8)によれば,本件発明は,照度センサと点灯時間を調節するタイマーと赤外線センサとが光源としてのランプに一体に備えられるとともに,赤外線センサの感知範囲が最大化されて全体がコンパクトに構\成された自動制御省エネルギーランプを提供するという従来技術では達成し得なかった技術的課題を解決するために,照度センサ12をソケットボディ10に備えさせて,点灯時間を調節するタイマー13を備えさせるとともに,赤外線センサ31については,複数のランプ30の間に介在され,それらの上下方向に沿って延設され,それらの高さよりも高くかつ近い位置となるように所定の長さで形成されてなるセンサ支持台32の端部に設けさせたものであり,これが本件発明特有の課題解決手段を基礎付ける特徴的部分であると認められる。そうすると,本件発明と原告製品との間において構\成の異なる部分のうち,構成要件Bの照度センサ12がソ\ケットボディ10に備えられるとの構成,構\成要件Cの点灯時間を調節するタイマー13を有するとの構成,構\成要件Eのタイマー13の出力信号に基づいて点灯を制御するとの構成及び構\成要件F3のセンサ支持台32が近い位置となるように形成されるとの構成は,いずれも本件発明の本質的部分であるというべきである。\nb 2)の要件について
前記の点をおくとしても,証拠(甲2)によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明が,点灯時間を調節するタイマー13の構成を有することにより,使用者が周囲に合わせて点灯時間を適当に設定して,無駄なエネルギー消費が防止され,電気エネルギーが節約されるなどの作用効果を有する旨記載されていること(段落【0001】【0006】【0020】【0022】)が認められるところ,構\成要件Cの構成を「点灯時間を照度センサが所定の暗度を感知して人感センサが人間の存在を感知した時から人感センサが人間の存在を感知しなくなって約5分が経過した時までとする,回路支持板に設けられたマイクロコントローラに入力されたプログラム」に置き換えると,使用者が点灯時間を適当に設定することができないから,本件発明の目的を達することができず,同一の作用効果を奏しない。被告は,パソ\コンで点灯時間を変更するプログラムを作成して,パソコンと原告製品のマイクロコントローラをケーブルで接続し,このプログラムをダウンロードすることにより,点灯時間を調節することができるから,構\成要件Cの「タイマー13」という構成を回路支持板15に設けられたマイクロコントローラ内に入力されたプログラムという構\成に置き換えても,本件発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏すると主張する。しかしながら,上記プログラムにおいて点灯時間を調節するには,その都度,プログラムを別途作成する必要があるから,タイマーの操作と比較して,その容易さに大きな違いがあるのであって,同一の作用効果を奏するということはできない。被告の上記主張は,採用することができない。
◆判決本文
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2012.10.22
平成24(ネ)10018 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成24年10月11日 知的財産高等裁判所
均等侵害については1審と同様に否定されました。知財高裁は、一般論として不完全利用による均等があり得るが、本件では本質的部分だから認められないと判断しました。
控訴人は,被控訴人は一旦は本件発明1の構成要件の全てを充足する製品の製造販売を開始した後,本件特許権1の侵害を避けるために腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の「嵌合穴」に嵌合される「第一嵌入杆」との嵌合を「回動不能\」にしたことが明らかであるとして,不完全利用論による構成要件Jの充足を主張する。特許権侵害訴訟において,相手方が製造等をする製品が特許発明の構\成要件中の一部を欠く場合,文言上は全ての構成要件を充足しないことになるが,当該一部が特許発明の本質的部分ではなく,かつ均等の他の要件を充足するときは,均等侵害が成立し得るものと解される。しかしながら,本件発明1の4か所の連結構\造のうち,腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の「嵌合穴」に嵌合される「第一嵌入杆」との嵌合を「回動不能」とすることは,本件発明1の本質的な部分を変更するものであることは,上記イのとおりである。したがって,控訴人の不完全利用の主張も採用することができない。\n
◆判決本文
◆1審はこちら。平成20年(ワ)第27920号
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2012.07. 5
平成23(ネ)10060 特許権侵害差止等反訴請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成24年06月28日 知的財産高等裁判所
控訴審で、均等侵害を追加しましたが、置換可能性、本質的要件を満たしていないとして、否定されました。
詳しい物件目録がついてます。
そうすると,本件発明2の構成要件Aをイ号方法の「空所形成工程a,縦穴形成工程a1,埋め戻し工程a2」に置換した場合,「先に掘削・排土した土壌とセメント等の固化材と水とをそれぞれ所定割合づつ投入して,それらの材料を該空所内で混合・撹拌して固化材・土壌混同スラリーを固化させ(る)」という本件発明2の作用効果は得られず,「掘削した土壌と固化材とを均一に混合させることができるようにすることによって高強度で且つ信頼性の高い地盤改良を行うことができるようにする」という本件発明2の目的は達成されることはない。
これに対し,原告は,イ号方法について,i)実際には縦穴(12)は下部空所(13)に近い大きさとなり,空所の全面堀削による支持層の確認に限りなく近づく,ii)地層が同一施工場所で変化していたり,掘削した先に腐植土が現われた場合,地盤改良体の底面の全面を掘り下げないと有効に使える支持層を確認することはできず,本件発明2の空所(2)を堀削することと変わらなくなる,iii)縦穴(12)に掘削土を埋め戻すが,その土は,他の堀削土と共に撹拌され,固化材と水とで混練りされてスラリーとなるとして,実質的には本件発明2の作用効果と同一の作用効果を奏する旨主張する。しかし,原告の主張は,いずれも失当である。上記のとおり,イ号方法の「縦穴形成工程a1,埋め戻し工程a2」は,上部空所(11)の下方に,支持層まで到達する溝あるいは縦穴(12)を部分的に形成して,支持層の確認を行い,掘削土は排土せずに埋め戻すのであるから,その溝あるいは縦穴(12)の大きさにかかわらず,イ号方法において,一旦排土した土壌とセメント等の固化材と水とを所定割合ずつ投入して,空所内で混合・撹拌して固化材・土壌混同スラリーを固化させるという作用効果は得ることはできず,掘削した土壌と固化材とを均一に混合させることができるようにするとは考え難い。したがって,本件発明2の構成要件Aをイ号方法の「縦穴形成工程a1,埋め戻し工程a2」に置き換えることにより,本件発明2の目的を達することができるとはいえない。
イ 異なる構成が本質的部分に存在するか否か本件発明2は,構\成要件A(「建造物の基礎を構築すべき位置の地盤の土壌を掘削・排土して所定開口面積で且つ所定深さの空所(2)を形成し,」)を採用することによって,「掘削した土壌と固化材とを均一に混合させることができるようにすることによって高強度で且つ信頼性の高い地盤改良を行うことができるようにすること」及び「従来のラップル工法に比して,掘削土壌量を少なくし,掘削土を埋戻し土として有効利用できるようにし,生コンクリート費用を不要にすること等によって全体の地盤改良コストを低下させること」との課題を解決するものであるから,イ号方法における「上部空所(11)にさらに支持層まで到達する所定深さの溝あるいは縦穴(12)を部分的に形成して支持層の確認を行」った上で,掘削土を排土せずに,当該「溝あるいは溝穴(12)を埋め戻」す工程との異なる構成部分は,その本質的部分に存在するというべきである。\n
◆判決本文
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2012.04.26
平成23(ワ)4131 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年04月12日 大阪地方裁判所
本質的部分が異なるとして、均等侵害の主張も認められませんでした。
本件明細書【0004】及び【0010】の記載によれば,先行技術であるミッドロックには,コンテナの前方開口部にロック用留め具が係合して開口部をふさぐという欠点があること,先行技術である全自動デバイスには,可動ロック部材が特に汚れの影響をとても受けやすいという欠点があることが認められる。また,同【0005】の記載によれば,本件特許発明1は,上記各欠点(課題)の解決手段として,上下に載置したコンテナの連結片と配列,上下に載置したコンテナを連結させるための方法を創作したものであることが認められる。そして,同【0006】及び【0011】の記載によれば,上記解決手段の原理は,i) ロック用留め具が下側連結突起上にコンテナの長手方向視で横に配置されていること,ii) 連結片の形状のおかげで,上段コンテナが鉛直軸に対して旋回することにより,連結片の下側連結突起がロック用留め具によって下段コンテナのコーナーフィッティング内に係合するというものであることが認められる。そして,前記1(1)のとおり,上記ii)の「連結片の形状」は,構成要件Eの「導入面取り部」を意味するものと考えられる。そうすると,構\成要件Eの「導入面取り部」は,本件特許発明1の課題解決手段である上記ii)における基本的構成であり,特徴的原理を成すものであることが認められる。換言すれば,本件特許発明1において,全自動デバイスとして,上下のコンテナを連結する作用効果を奏させるには,構\成要件Eの「導入面取り部」によりロック用留め具をロック位置まで案内することが必要不可欠の構成であり,課題解決の原理そのものであるというべきである。これに対し,被告製品では,全自動デバイスとして,上下のコンテナを連結する作用効果を奏させるため,構\成要件Eの「導入面取り部」の構成によりロック用留め具を係合位置まで移動させる構\成ではなく,ロック用留め具そのものを可動突部とすることにより下段コンテナの溝穴と係合させる構成が採用されている。したがって,被告製品の課題解決手段は,本件特許発明1の解決手段の原理と実質的に同一の原理に属するものとはいえず,むしろ,異なる原理に属するものというべきである。
以上によれば,構成要件Eは,特許請求の範囲に記載された本件特許発明1の構\成のうちで,当該特許発明特有の課題解決手段を基礎づける特徴的な部分であり,特許発明の本質的部分に当たる。このことは,前記1(1)エ(イ)のとおり,原告が,本件特許の出願手続において,「本件発明では構成要件AないしDが有機的に結合することにより,荷役者を介することなくコンテナの連結および分離ができ,全自動デバイスとして使うことができるという引用文献にはない顕著な効果を奏する」旨の意見書を提出していることからも明らかである。
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2012.02. 9
平成20(ワ)27920 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年01月31日 東京地方裁判所
同時並行の無効審判にて、訂正は認められましたが、侵害訴訟では、構成要件該当性無し、均等侵害も否定されました。
そして,本件発明1の目的ないし作用効果のうち,人形を「所望箇所で屈曲動作ができる」とともに,「様々な姿態を一定時間維持できる」ものとするという点は,従来技術の問題点,すなわち,前記ビスクドールにおける「連結部位を屈曲させた状態のまま保持させておくことができないため,様々な動きのある姿態や人間的な動きを求める傾向のある需要者ニーズに十分対応し得なかった」との問題点や,前記マネキン人形における「頻繁に各箇所で屈曲作動を繰り返すと,その部分の針金が折損してしまう」との問題点の解決と直接結びつくものであって,本件発明1の目的ないし作用効果の重要部分に関わるものであることが認められる。してみると,本件発明1の構\成のうち,被告各製品との相違部分である「腰部骨格連結部」の「第一嵌入杆」と「胴部下端骨格連結部」の「嵌合穴」とを回動可能に連結する構\成は,本件発明1の目的ないし作用効果の重要部分を実現するために複合的に機能する構\成中の不可欠な部分をなすものということができるから,本件発明1の本質的部分に当たるものというべきである。
c これに対し,原告は,本件発明1の本質的部分は,人形全体を骨格構造(一連の骨格群)で支えることとしたという点にあり,人形の連結箇所の数箇所において揺動や回動をする構\成は付加的な作用効果にすぎない旨を主張する。しかしながら,平成11年2月1日発行の雑誌「月刊ホビージャパン1999年2月号」(乙105)に株式会社ツクダホビーが販売する商品として掲載されている女性型関節可動人形「フルアクションドール」の構成(乙105の113ページ記載の写真4参照)をみると,人形全体が硬質樹脂製の骨格構\造にソフトビニル製の外皮を被せて成るものであることが認められ,また,後記(イ)a及びbのとおり,平成9年11月ころから日本国内において販売されている第1商品においても,やはり硬質樹脂製の骨格構造にソ\フトビニル製の外皮を被せて全体が形成される人形の構成が採用されていることが認められる。してみると,原告の上記主張に係る「人形全体を骨格構\造(一連の骨格群)で支える」という構成は,人形玩具の技術分野において,本件出願1の出願前に周知技術となっていたものと認めるのが相当であり,そうである以上,このような構\成を採用したことをもって,本件発明1の本質的部分であるとすることはできない。他方,本件明細書1の「発明の詳細な説明」の記載を総合すれば,本件発明1における4箇所の揺動可能又は回動可能\な連結構造が本件発明1の目的ないし効果の重要部分を実現するための構\成とされているものと理解することができることは,前記bのとおりである。したがって,原告の上記主張は採用することができない。
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2012.02. 9
平成20(ワ)27920 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年01月31日 東京地方裁判所
同時並行の無効審判にて、訂正は認められましたが、侵害訴訟では、構成要件該当性無し、均等侵害も否定されました。
そして,本件発明1の目的ないし作用効果のうち,人形を「所望箇所で屈曲動作ができる」とともに,「様々な姿態を一定時間維持できる」ものとするという点は,従来技術の問題点,すなわち,前記ビスクドールにおける「連結部位を屈曲させた状態のまま保持させておくことができないため,様々な動きのある姿態や人間的な動きを求める傾向のある需要者ニーズに十分対応し得なかった」との問題点や,前記マネキン人形における「頻繁に各箇所で屈曲作動を繰り返すと,その部分の針金が折損してしまう」との問題点の解決と直接結びつくものであって,本件発明1の目的ないし作用効果の重要部分に関わるものであることが認められる。してみると,本件発明1の構\成のうち,被告各製品との相違部分である「腰部骨格連結部」の「第一嵌入杆」と「胴部下端骨格連結部」の「嵌合穴」とを回動可能に連結する構\成は,本件発明1の目的ないし作用効果の重要部分を実現するために複合的に機能する構\成中の不可欠な部分をなすものということができるから,本件発明1の本質的部分に当たるものというべきである。
c これに対し,原告は,本件発明1の本質的部分は,人形全体を骨格構造(一連の骨格群)で支えることとしたという点にあり,人形の連結箇所の数箇所において揺動や回動をする構\成は付加的な作用効果にすぎない旨を主張する。しかしながら,平成11年2月1日発行の雑誌「月刊ホビージャパン1999年2月号」(乙105)に株式会社ツクダホビーが販売する商品として掲載されている女性型関節可動人形「フルアクションドール」の構成(乙105の113ページ記載の写真4参照)をみると,人形全体が硬質樹脂製の骨格構\造にソフトビニル製の外皮を被せて成るものであることが認められ,また,後記(イ)a及びbのとおり,平成9年11月ころから日本国内において販売されている第1商品においても,やはり硬質樹脂製の骨格構造にソ\フトビニル製の外皮を被せて全体が形成される人形の構成が採用されていることが認められる。してみると,原告の上記主張に係る「人形全体を骨格構\造(一連の骨格群)で支える」という構成は,人形玩具の技術分野において,本件出願1の出願前に周知技術となっていたものと認めるのが相当であり,そうである以上,このような構\成を採用したことをもって,本件発明1の本質的部分であるとすることはできない。他方,本件明細書1の「発明の詳細な説明」の記載を総合すれば,本件発明1における4箇所の揺動可能又は回動可能\な連結構造が本件発明1の目的ないし効果の重要部分を実現するための構\成とされているものと理解することができることは,前記bのとおりである。したがって,原告の上記主張は採用することができない。
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2011.11. 4
平成22(ワ)3846 不当利得金返還請求事件 平成23年10月27日 大阪地方裁判所
均等について争われましたが、第1要件を満たさないとして、請求が棄却されました。
ア 特許発明の本質的部分とは,特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうちで,当該特許発明特有の課題解決手段を基礎づける特徴的な部分,言い換えれば,上記部分が他の構\成に置き換えられるならば,全体として当該特許発明の技術的思想とは別個のものと評価されるような部分をいうものと解される。そして,本質的部分に当たるかどうかを判断するに当たっては,特許発明を特許出願時における先行技術と対比して課題の解決手段における特徴的原理を確定した上で,対象製品の備える解決手段が特許発明における解決手段の原理と実質的に同一の原理に属するものか,それともこれとは異なる原理に属するものかという点から判断すべきものである。イ 本件特許発明の構成要件A及びB,すなわち「10BASE-T に準拠するツイストペア線においてリンクテストパルスが伝送されること」が周知技術であることは,当事者間で争いがない。そうすると,本件特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうちで本件特許発明特有の課題解決手段を基礎づける特徴的な部分は,本件特許発明の構\成要件Cであると解するよりほかない。そして,前記1のとおり,本件特許発明の課題の解決手段における特徴的原理は,「リンクテストパルス検出手段の検出結果から送信線か受信線かを判断」した後に「信号線を切り替える」というものである。これに対し,被告製品の備える解決手段は,「ストレート結線とクロス結線とをランダムな時間間隔で繰り返し遷移させた上,リンクテストパルスが検出された時点で,この遷移を停止させる構成」を採用したことにある。確かに,本件特許発明と被告製品とは,リンクテストパルスの検出結果を用いるという点では共通する。しかし,前記1(2)ウ(ウ)のとおり,本件特許発明では,ツイストペア線(リンクテストパルスが伝送されるもので,出願時周知であった。)を使用することが前提となっているのであるから,リンクテストパルスを使用すること自体は課題の前提条件にすぎず,課題解決手段における特徴的原理を共通するとはいえない。そして,これに基づく課題解決手段の原理は,本件特許発明が検査結果に基づいて信号線を自動的に切り替えるというものであるのに対し,被告製品は検査結果に基づいて信号線の切替えをやめるというものであって,原理として表裏の関係にある又は論理的に相反するものであり,異なる原理に属するものというほかない。\n
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2011.09. 5
平成22(ワ)10984 特許権侵害差止等請求反訴事件 平成23年08月30日 大阪地方裁判所
均等侵害が否定されました。
上記各記載によれば,本件発明1−1の技術分野である地盤改良機については,改良地盤をブロック状に築造し,流動化した状態で地盤改良をするためにはバケットに撹拌翼と液状固化材を噴出する噴出ロッドを取付けるという従来技術(段落【0004】)があるが,その従来技術では,土中の目視が不可能であるため混練りの程度や改良範囲をオペレータが勘で判断することとなり,地盤改良に不充分な部分が生じていたという問題点(段落【0005】)があり,一方,地盤改良の効果を確認するためには電気比抵抗検出方法という従来技術があるが,その従来技術では,バケットで掘削攪拌している施工中に電気比抵抗を同時検出できないため施工管理に時間と手間がかかるという問題点(段落【0006】)があったものと認められる。そして,これらの問題点を克服して,地盤改良工事の施工管理をオペレータの勘に頼ることなく客観的かつ正確に行える地盤改良機を提供するという課題(段落【0008】)を解決するために,本件発明1−1は,解決手法として,土塊をバケットで粉砕し,かつ攪拌翼で攪拌しながら固化材液吐出ノズルから固化材液を吐出して土と固化材液とを混練りしながら,バケットの先端位置移動軌跡や改良地盤内の電気比抵抗をモニター上で把握ないし監視できる構\成を採用したものであり,そして,このような解決手法を採用したことにより,バケットに固化材液吐出ノズルを取り付ける構成による施工効率を維持しつつ,さらに施工途中又は施工後の地盤検査を要しないため,効率よい地盤改良工事が行えるとともに,地盤改良工事の処理進捗状況が客観的に確認できるため,地盤改良を確実に遂行できるという作用効果を奏するものである(段落【0010】)と認められる。(ウ) しかしながら,被告物件においては,固化材液はプラントから直接ホースで掘削溝に導入するものとされており,バケットに固化材液吐出ノズルが取り付けられていないため,土塊をバケットで粉砕し,かつ攪拌翼で攪拌しながら固化材液吐出ノズルから固化材液を吐出して土と固化材液とを混練りすると同時に,バケットの先端位置移動軌跡や改良地盤内の電気比抵抗をモニター上で把握ないし監視できるわけではないから,上記本件発明1−1と同一の作用効果を奏するものとは認められず,この点において被告物件は,均等侵害の第2要件を充足するものとはいえない。また,土塊をバケットで粉砕し,かつ攪拌翼で攪拌しながら固化材液吐出ノズルから固化材液を吐出して土と固化材液とを混練りすると同時に,バケットの先端位置移動軌跡や改良地盤内の電気比抵抗をモニター上で把握ないし監視するという部分は,上記検討した本件発明1−1の解決すべき課題及びその解決手法によれば,本件発明1−1の本質的部分に係る特徴であるということができるから,この点についての相違点は,本件発明1−1の本質的部分に係る相違点というべきであって,均等侵害の第1要件も充足するものとはいえない。したがって,以上のとおり,被告物件は,本件特許1の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものであるとの原告の主張は採用できない。エ 原告は,均等侵害の第2要件について,被告物件のホースは,固化材液吐出ノズルと同じく固化材液を導入する機能を有するものであるから,被告物件は,本件発明1−1と同一の作用効果を奏する旨主張する。しかしながら,固化材液導入ノズルの機能\は固化材液を導入するにとどまらず,改良すべき地盤内の土塊をバケットで粉砕し,かつ攪拌翼で攪拌しながら固化材液吐出ノズルから固化材液を吐出することにより,土と固化材液を混練りするものであるから,被告物件のホースと同一の機能ということはできず,また,この相違点は土と固化材液とを混練りすることができる点や,モニター上での監視により隅々まで混練りができ,固化材液の過不足も生じないようにできる点といった施工効率(本件明細書1段落【0010】【発明の効果】)参照)に影響することは明らかであるから,本件発明1−1と同一の作用効果を奏するとは認められない。また,原告は,均等侵害の第1要件について,本件発明1−1の課題である地盤改良工事の施工管理をオペレータの勘に頼ることなく,客観的かつ正確に行うための解決手法は,上記解決手法にいうコントローラやモニターであって,バケットに固化材液吐出ノズルを取り付けることは,同課題の解決に関連するものではないため,その点に係る相違点は本件発明1−1の本質的部分に係るものでない旨主張する。しかしながら,上記(ア)fの本件明細書1の「【発明の効果】」欄の記載(段落【0010】)によれば,上記課題にいう地盤改良工事の施工管理を客観的かつ正確に行うという趣旨には,施工管理の効率を上げることが含まれていると解され,その作用効果を奏するについてはバケットに固化材液吐出ノズルを取り付けるという構成も寄与していると認められるから,バケットに固化材液吐出ノズルを取り付けることが,本件発明1−1の課題に関連しないということはできず,原告の主張には理由がない。\n
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2011.07. 7
平成20(ワ)19874 特許権侵害差止等請求事件 平成23年06月10日 東京地方裁判所
特殊な例ですが、間接侵害の主観的要件について、警告だけでは知ったことにならないと判断されました。また、変形イ号については均等の主張は認められませんでした。
均等論について
これに対し原告は,2本の穿刺針の「ほぼ平行」な位置関係を維持するために,指を併用するか,部材自体の構成のみによるかは,本件発明1の目的・効果を実現する上で本質的な相違ではない旨を主張する。しかし,本件発明1においては,2本の穿刺針を穿刺した上での縫合による前腹壁と内臓壁との固定を,「容易,かつ短時間に,さらに安全かつ確実に」行うという目的・効果を実現するべく,2本の穿刺針の「ほぼ平行」な位置関係を実現する具体的な手段として,専ら術者の指による保持によって実現される固定などではなく,「固定部材」を用いた固定という,より容易で,安全かつ確実な構\\成を採用したものであると考えられるから,原告の上記主張は失当というべきである。(エ) 以上によれば,構成要件Dの「固定部材」の構\\成は,本件発明1の本質的部分というべきであり,これを欠いている指による重ね保持状態にある被告製品は,本件発明1の構成と均等なものとはいえないから,均等侵害が成立する旨の原告の上記主張は理由がない。
間接侵害について
X1の代理人弁護士らが,平成18年12月22日に,被告らに対し,被告製品が一体化同時穿刺のできる構造であることを指摘し,本件特許に抵触する旨を警告する内容の本件通知書を送付したことといった諸事情を挙げるので,以下,これらの諸事情が,原告の上記主張の根拠となり得るか否かについて検討する。・・・以上で検討したとおり,原告が指摘する前記の諸事情は,いずれも,被告製品の添付文書の前記(イ)cの記載にもかかわらず,なお医師らが被告製品を一体化同時穿刺の方法で使用することがあり得ることを被告らにおいて認識していたことを推認させるに足りる事情とはいい難いものであり,この点は,これらの諸事情を総合してみても同様である。このほか,被告製品の販売開始の時点(平成19年4月)までに,被告らに上記の認識があったことを示す事情も見当たらない。したがって,被告製品の販売が開始された平成19年4月の時点において,被告らは被告製品が一体化同時穿刺の方法で使用されることを認識していたとする原告の主張は,これを認めることができない。
b 平成20年2月26日時点の被告らの認識について
・・・
しかるところ,原告アンケートは,一方当事者である原告が,原告製品の納入実績のある医療機関の医師の中から任意に選択した医師を対象として行ったアンケート調査であることなど,その結果の信頼性に限界があることを考慮しても,甲8の陳述書においては,被告製品を一体化同時穿刺の方法で使用したと回答した医師が存在したことが具体的な数字によって示されており,かつ,そのうちの1名の医師が作成した回答書の写しが現に裏付資料として添付されていることからすれば,甲8の陳述書の記載は,被告らからみても,被告製品を用いて一体化同時穿刺を行っている医師が存在することを疑わせる一つの証拠資料であることは否定できないことといえる。・・・以上によれば,被告らは,本件訴状及びこれとともに提出された書証の写しの送達を受けることによって,少なくとも被告製品を用いて一体化同時穿刺を行っている医師が存在することを疑わせるに足りる事実を認識したものということができる。(b) さらに,被告製品の使用態様に関する被告らの認識状況を検討するに当たっては,前記(イ)dのとおり,本件調査嘱託の結果から,被告製品を胃瘻造設のための胃壁固定術に使用する医師らの相当数の者が現に被告製品を使用して一体化同時穿刺を行っているという実態が認められることが重要である。すなわち,前記(イ)dで認定したとおり,相当数の医師らが被告製品を使用して一体化同時穿刺を行っているという実態は,被告製品の販売開始当時(平成19年4月)から継続的に存在しているものと考えられ,しかも,その規模については,本件調査嘱託の結果によれば,被告製品の使用経験がある58の医療機関のうちの約45%に当たる26の医療機関で一体化同時穿刺の実績があり,また,上記58の医療機関における被告製品の使用症例数合計2869の約27%に当たる785の症例で一体化同時穿刺が行われているという,広範囲にわたるものであることが認められることは,前記(1)イ(ウ)aのとおりである。しかるところ,このように多数の医療機関における多数の症例において,被告製品を使用した一体化同時穿刺が現に行われており,しかも,そのような実態が相当期間継続しているという事実を前提とすれば,被告製品を使用する多くの医師らと日常的に接触し,これらの医師から被告製品に関する質問や意見を聴取しているはずの被告オリンパスメディカルの営業担当者らが,このような被告製品の使用実態を認識することは,ごく自然な経過ということができる。むしろ,上記のような被告製品の使用実態が現に存在するにもかかわらず,被告オリンパスメディカルの営業担当者らの中に,被告製品を使用して一体化同時穿刺を行っている医師が相当程度存在するとの事実を認識している者が全く存在しないなどということは,およそ考え難いことというべきである。 この点,少なくとも,被告製品の販売が開始された平成19年4月から1年数か月が経過し,上記のような被告製品の使用実態が既に相当期間継続していたものといえる本件訴状の送達時点(被告秋田住友ベークにおいては平成20年8月1日,被告オリンパスメディカルにおいては同年7月31日)を基準とすれば,被告オリンパスメディカルの営業担当者らの中に,被告製品を使用して一体化同時穿刺を行っている医師が現に相当程度存在するとの事実を認識している者がいたことは,優にこれを推認することができる。
(c) 以上によれば,遅くとも本件訴状が被告らに送達された時点には,被告らにおいて,被告製品の添付文書の前記(イ)cの記載にかかわらず,医師らが被告製品を用いて胃壁固定術を行う際に一体化同時穿刺を行うことがあることを認識していたものと認めることができる。
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2011.05.20
平成22(ワ)8024 実用新案権侵害差止等請求事件 平成23年04月28日 大阪地方裁判所
文言侵害および均等侵害ともに否定されました。文言侵害判断において、従属クレームの存在を根拠に独立クレームの解釈を争いましたが否定されました。均等侵害も本質的要件を具備しないとして否定されました。
原告は,本件実用新案登録に係る請求項2の考案として,「横桟部材に掛合する掛合部が,靴収納用棚板の側面視においてフックもしくは下向きU字形に掛合部を形成されていることを特徴とする請求項1に記載の靴載置用棚板」が掲げられており,これからすると,請求項1における「掛合部」は,請求項2の掛合部以外の態様を広く含むものと理解することができるとも主張する。しかし,本件明細書の考案の詳細な説明欄に記載された掛合部は,前記ウのとおりであり,それ以外の掛合部の構成は記載されていない。請求項1における「掛合部」が,請求項2の「掛合部」以外の態様を含むものであるとしても,請求項2の考案は,掛合部の具体的な構\成として,「フックもしくは下向きU字形に掛合部を形成されていること」との構成を開示したにすぎず,請求項1における「掛合部」の解釈を,前記ウの解釈より広げる根拠とはならない。\n・・・
そこで,これを本件について見るに,前記1(2)ウで判示したとおり,本件考案の作用効果は,横桟部材を靴収納庫に設置したままの状態で,棚板を着脱可能に接合させることにより,既存の様々な靴収納庫や横桟部材に対応することができる点にあると解される。これに対し,被告棚板の円形の穴を横桟部材に取り付けるためには,いったん横桟部材を取り外して,上記穴に横桟部材を挿通させた上,棚板の付いた横桟部材を靴収納庫に取り付けなければならず,横桟部材を本来の取付位置にある状態のままで,被告棚板を接合させることはできない。そうすると,被告棚板の円形の穴では,本件考案の目的を達することができず,同一の作用効果を奏するものとは認められない。(3) また,前記1(2)ウで判示したところによると,上記接合部は,本件考案の本質的部分ということができる。
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2011.04.21
平成22(ネ)10014 各意匠権侵害差止等・特許権侵害差止等 意匠権 民事訴訟 平成23年03月28日 知的財産高等裁判所
控訴審で均等侵害が認められました。
以上を前提として,明細書のすべての記載や,その背後の本件発明の解決手段を基礎付ける技術的思想を考慮すると,本件発明が本件作用効果i)を奏する上で,蓋本体及び受枠の各凸曲面部が最も重要な役割を果たすことは明らかであって(段落【0009】【0020】等参照),『受枠には凹部が存在すれば足り,凹曲面部は不要である』との控訴人の主張は正当であると認められ,本件発明において,受枠の『凹曲面部』は本質的部分に含まれないというべきである。なお,明細書の段落【0020】には,『閉蓋状態において,受枠上傾斜面部と蓋上傾斜面部および受枠下傾斜面部と蓋下傾斜面部は嵌合し,蓋凸曲面部と受枠凹曲面部および蓋凹曲面部と受枠凸曲面部は接触しないようにする』という構成を採ることにより,本件作用効果ii)を奏する旨記載されており,ここでは受枠の凹部が『曲面部』であるかどうかは問題とされていないといえ,本件作用効果ii)を奏する上でも,受枠の凹部が『曲面部』であることは本質的部分には含まれないというべきである。
◆判決本文
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2010.12. 7
平成21(ワ)13824 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年11月25日 大阪地方裁判所
文言侵害、均等侵害ともに否定されました。
このように,原告は,出願時明細書の段落【0033】ないし段落【0037】に記載された「フラップ部周囲領域」を「一の領域」に該当するものとして上記の特許請求の範囲の補正をしたことが明らかであるから(なお,補正後の特許請求の範囲の記載によれば,一の領域はフラップ部を備えるとされているから,フラップ部周囲領域とフラップ部を併せたものが一の領域とする趣旨であると考えられる。),かかる出願の経緯にかんがみれば,特許請求の範囲に記載された「一の領域」の意義については,出願時明細書の上記各段落に対応する本件明細書の記載部分(段落【0033】ないし段落【0037】)における「フラップ部周囲領域」に関する記載を参酌して解釈するのが相当である。(ウ) そこで,本件明細書の段落【0033】ないし段落【0037】について見てみると,本件明細書の上記各段落には,フラップ部周囲領域は,フラップ部周囲を取り囲む領域であり,蓋体本体部の外周輪郭形状を定める周縁領域と中間領域によって接続されていること,フラップ部周囲領域は,中間領域に対して上方に隆起しているが,その隆起は周縁領域の隆起よりも低いこと,フラップ部周囲領域には,フラップ部に形成された突起部と嵌合する開口部,フラップ部を収容する下方に窪んだ凹領域と,凹領域に隣接して形成されるとともに凹領域よりも深く窪んだ凹部を備えていることが記載されている。本件明細書のかかる記載は,特許請求の範囲から理解される「一の領域」の上記意味内容と整合するものであり,とりわけ,フラップ部周囲領域が上面(最も高い面)から窪んだ領域として凹領域に加えて凹部を備えていると記載されていることからすれば,「一の領域」は凹領域以外に窪んだ領域を有する態様を含むものと理解するのが素直である。そして,本件明細書の他の記載を見ても,「一の領域」あるいは「フラップ部周囲領域」に関して,上記で検討した意味内容と異なるような説明をしている個所は見当たらない。(エ) したがって,本件特許発明にいう「一の領域」とは,周縁部により囲まれる領域内部において,周縁部から離間して隆起し,空気抜き穴と,空気抜き穴を閉塞可能な突起部を備えるフラップ部と,フラップ部を収容する凹領域を備える,周縁部の隆起よりも低い領域を意味し,凹領域のほかに一の領域の上面(最も高い面)から窪んだ領域を有する態様も含むものと解するのが相当である。(オ) そして,以上に基づいて「一の領域の縁部」の意義について検討すべきところ,「縁」とは字義的には「へり。ふち。」を意味し(広辞苑第6版),また本件明細書(段落【0034】,図1及び図2)においても,フラップ部の基端部がフラップ部周囲領域のへりの部分に接続している態様が記載されているから,「一の領域の縁部」とは要するに「一の領域」のへりの部分を指すものと解される。(カ) 以上の解釈を総合すると,構成要件Eにいう「前記フラップ部は,前記一の領域の縁部に一体的に接続する基端部を備える」とは,周縁部により囲まれる領域内部において,周縁部から離間して隆起し,空気抜き穴と,空気抜き穴を閉塞可能\な突起部を備えるフラップ部と,フラップ部を収容する凹領域を備える,周縁部の隆起よりも低い領域を意味し,凹領域のほかに一の領域の上面(最も高い面)から窪んだ領域を有する態様も含む「一の領域」のへりの部分にフラップ部が一体的に接続する基端部を備えていることを意味するものと解するのが相当である。
・・・・
以上を総合すると,本件各特許発明は,蓋体にフラップ部を設けるという公知の構成を前提に,煩雑な製造プロセスを要することなく製造可能\であり,蓋体からフラップ部が外れることのない蓋体を提供することを目的として,フラップ部が「一の領域の縁部」に一体的に接続する基端部を備えるという構成を採用したものであり,この点に本件各特許発明の課題解決のための手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分があると認められ,上記構\成が本件各特許発明の本質的部分であると解される。そうすると,被告各製品のフラップ部が「一の領域」の縁部ではなく,その内部に一体的に接続する基端部を備えているという相違点は,本件各特許発明の本質的部分に係る相違というべきであることになるから,被告各製品は,本件特許の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものという原告の主張は採用できないことになる。\n
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2010.05.24
平成21(ネ)10055 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成22年03月30日 知的財産高等裁判所
知財高裁は「本件訂正発明の構成要件gの「選択手段」を具備せず,また,被告製品は,本件訂正発明の均等物ではない」判断しました。
以上によれば,本件訂正発明は,従来の無線電話装置と,携帯型コンピュータとGPS利用者装置とをすべて携帯することができず,かつ相互を組み合わせてそれらを複合した機能を得ることができないとの課題を解決するために,複合した機能\を,実用的に得ることを目的とするものである。そうすると,本件訂正発明は,携帯型の情報装置がこれらの装置の機能を複合させた機能\を有することに特徴があり,機能の一部を他のサーバ等に置くことを想定したものということはできない。そして,前記認定の本件訂正明細書の発明の詳細な説明の記載によれば,「携帯型コミュニケータ」は,CPUを備えた携帯コンピュータと無線電話装置とGPS利用者装置とを備えるとともに,地図情報を備えた地図データROMが接続されており,CPUにより実行される最寄発信処理においては,まず,現在位置の座標と発信先の名称が入力され,次に,地図データROMから現在位置から最も近い発信先番号を選択する処理を行い,それは,現在位置の座標と地図データROMから読み込まれた地図情報とに基づいて選択しているものと認められる。したがって,「選択手段」による「発信先番号の選択」は,携帯コンピュータのCPUが,携帯型コミュニケータ自体で取得できるデータを用いて,発信先番号の選択に係る処理を実行することを指すと解するのが相当である。・・・,本件訂正発明における「携帯コンピュータ」が,「位置座標データ入力手段の位置座標データに従って,所定の業務を行う複数の個人,会社あるいは官庁の中から現在位置に最も近いものの発信先番号を選択する選択手段」との構\成を被告製品における上記処理手段に置換することは,解決課題及び解決原理が異なるから,置換可能性はないものというべきである。\n
◆判決本文
◆原審はこちらです。平成20年(ワ)第18866号
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2010.01.27
平成21(ネ)10052 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成22年01月25日 知的財産高等裁判所
控訴審で均等の主張を追加しましたが、否定されました。
控訴人は,被告製品1と本件特許発明とでは,被告製品1の掛止部材において,本件特許発明のアーム部に該当する把手部の下端において連続する部材が,補強片と連続しない舌状のかけら部材ではなく,舌状の部材(A部分6’)とその舌状の部材の上端において連続した逆U字形の最外周の縁(補強片9’)との一体構造体であって,かかる一体構\造体が把手部の内側のみに形成されているとはいえない点が構成の異なる部分であると主張する。なるほど控訴人の主張は,被告製品1においては,A部分6’と補強片9’とが一体構\造となっており,本件特許発明の「舌片部」を備えるものでないこと,及び,この一体構造がアーム部に相当する把手部の内側のみにあるとはいえないこと,すなわち舌片部がアーム部の内側にあるとはいえないこと,との2つの相違点があることを前提として,これら構\成が均等である旨主張するものと解される。これにつき検討すると,構成の異なる部分が発明の本質的部分であるとは,発明の課題解決のための特徴的な部分をいうと解されるところ,本件特許発明は,上記のとおり,既に知られたカップオン方式,カップイン方式のそれぞれの長所である,コーヒーの美味,セットや注湯のしやすさと簡略な構\成・抽出後の廃棄が容易で安全なことの双方を達成しようとするものである。そのため本件特許発明のドリップバッグは,上端部に開口部を有する袋本体と薄板状材料からなる対向する外表面に設けられる掛止部材とからなり(簡略で廃棄が容易である),その掛止部材は,周縁側に形成される周縁部,周縁部の内側にあり袋本体から引き起こし可能\に形成されるアーム部,アーム部の内側に形成される舌片部からなる。そして,周縁部とアーム部,アーム部と舌片部は,それぞれ端部で連続し,周縁部又は舌片部のいずれかが袋本体に貼着され,周縁部が袋本体に貼\着された場合には舌片部がカップ側壁にかけられ,アーム部によって反対方向に引っ張られて袋本体の上端が開口しカップの中央上部に吊されることになる(コーヒーが美味でセット・注湯がしやすく安全である)ものである。そうすると,本件特許発明において,周縁部を袋本体に貼着した場合には舌片部をアーム部と共に引き起こすことも可能\であること,舌片部がアーム部の内側に形成されていることは,いずれも本件特許発明の本質的部分であるということができる。そうすると,被告製品1においてA部分6’と補強片9’とが一体構造となっていて本件特許発明の舌片部を備えるものではなく,この一体構\造がアーム部に相当する把手部の内側のみにあるといえないとの相違点は,いずれも本件特許発明の本質的部分において相違するものである。そうすると,その余の点について判断するまでもなく,均等侵害についての控訴人の主張は理由がないことになる。」
◆判決本文
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2010.01.27
平成20(ワ)14302等 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年01月21日 大阪地方裁判所
均等侵害であると主張しましたが、本質的部分であるとして否定されました。
発明の本質的部分とは,明細書の特許請求の範囲に記載された構成のうち,当該発明特有の作用効果を生じさせる技術的思想の中核をなす特徴的部分である。・・・・・これらのことからすれば,本件発明は,受枠に凸曲面部と凹曲面部を連続して形成し,蓋本体にはこれに倣う形で凹曲面部と凸曲面部を連続して形成することをもって,本件作用効果を発生させる発明といえる。したがって,受枠凹曲面部の形状は,本件発明の主要な根拠となる部分であり,凹曲面部の形状が本件発明の技術的思想の中核をなす特徴的部分ではないということはできない。\n
◆判決本文
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2009.06.30
◆平成21(ネ)10006 補償金等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成21年06月29日 知的財産高等裁判所
地裁では技術的範囲に属しないと判断されましたが、高裁では、「均等侵害が成立し、かつ無効理由なし」と判断されました。
「以上のとおりであり,本件発明の構成要件(d)における「(繊維強化プラスチック製の)縫合材」と被告製品の構成〈d〉における「(炭素繊維からなる)短小な帯片8」とは,目的,作用効果(ないし課題解決原理)を共通にするものであるから,置換可能性がある。(2)置換容易性 本件発明においても,被告製品においても,金属製外殻部材に設けられた貫通穴に繊維強化プラスチック製の部材を通すことは共通であり,金属製外殻部材の複数の貫通穴に複数回通し,少なくとも2か所で繊維強化プラスチック製外殻部材と接合(接着)する部材を,一つの貫通穴に1回だけ通し,金属製外殻部材の上下において上部繊維強化プラスチック製外殻部材及び下部繊維強化プラスチック製外殻部材と各1か所で接着する部材に置き換えることは,被告製品の製造の時点において,当業者が容易に想到することができたものと認められる。したがって,置換容易性は認められる。(3)非本質的な部分か否かについて本件発明の目的,作用効果は,前記(1)ア(ア)の本件明細書の記載によれば,金属製の外殻部材と繊維強化プラスチック製の外殻部材との接合強度を高めることにある。特許請求の範囲及び本件明細書の発明の詳細な説明の記載に照らすと,本件発明は,金属製の外殻部材の接合部に貫通穴を設け,貫通穴に繊維強化プラスチック製の部材を通すことによって上記目的を達成しようとするものであり,本件発明の課題解決のための重要な部分は,「該貫通穴を介して」「前記金属製外殻部材の前記繊維強化プラスチック製外殻部材との接着界面側とその反対面側とに通して前記繊維強化プラスチック製の外殻部材と前記金属製の外殻部材とを結合した」との構成にあると認められる。本件発明の特許請求の範囲には,接合させる部材について,「縫合材」と表\現されている。しかし,既に詳細に述べたとおり,i)本件発明の課題解決のための重要な部分は,構成要件(d)中の「該貫通穴を介して」「前記金属製外殻部材の前記繊維強化プラスチック製外殻部材との接着界面側とその反対面側とに通して前記繊維強化プラスチック製の外殻部材と前記金属製の外殻部材とを結合した」との構成部分にあること,ii)本件発明の「縫合材」の語は,繊維強化プラスチック製の部材を金属製外殻部材に通す形状ないし態様から用いられたものであって,通常の意味とは明らかに異なる用いられ方をしているから,「縫合」の語義を重視するのは,妥当とはいえないこと,iii)前記のとおり,「縫合材」の意味は,技術的な観点を入れると,「金属製外殻部材の複数の(二つ以上の)貫通穴を通し,かつ,少なくとも2か所で繊維強化プラスチック製外殻部材と接合(接着)する部材」と解すべきであるが,当該要件中の「一つの貫通穴ではなく複数の(二つ以上の)貫通穴に」との要件部分,「少なくとも2か所で(接合(接着)する)」との要件部分は,本件発明を特徴付けるほどの重要な部分であるとはいえないこと等の事情を総合すれば,「縫合材であること」は,本件発明の課題解決のための手段を基礎づける技術的思想の中核的,特徴的な部分であると解することはできない。したがって,本件発明において貫通穴に通す部材が縫合材であることは,本件発明の本質的部分であるとは認められない。」
◆平成21(ネ)10006 補償金等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成21年06月29日 知的財産高等裁判所
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◆平成19(ワ)28614 平成20年12月09日 東京地裁
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2008.04.24
◆平成19(ネ)10096 不正競争行為差止等請求控訴事件 不正競争民事訴訟 平成20年04月23日 知的財産高等裁判所
予備的主張として、均等による特許権侵害を主張しましたが、「本質的要件」および「置換可能\性」を有していないとして、認められませんでした。
「以上を総合すると,?@上記cのとおり,本件特許明細書には,カキ殻を利用したことによる利点が具体的に記載されていること,?A本件特許出願前には,「プラスチック製筺体を枠状に組んで連結した人工漁礁」(乙17公報)や「カキ殻を利用した人工魚礁」(乙16公報)は知られていたものの,本件特許発明のようなものは知られていなかったこと,?Bそのため,控訴人は,上記eのとおり,本件特許の出願経過において,本件特許発明について,乙16公報記載の発明との関係では,枠体に通水性ケースを取り付ける形状に特徴があることを,乙17公報等記載の発明との関係では,カキ殻を利用したことに特徴があることを主張していたことが認められる。そうすると,本件特許発明については,通水性ケースを複数個集合して壁又は柱を構築するとともに,鋼製又はコンクリート製の枠体(3),板体又はブロック体の構造物で補強結合したという点のみならず,カキ殻を利用したという点についても,本件特許発明に特有の課題解決手段を基礎付ける特徴的な部分であるということができる。h 以上のとおり,被告製品21M型の「ホタテ貝殻」は,本件特許発明の構成要件Aの「カキ殻」とは,本件特許発明の本質的部分において相違しており,上記(ア)の均等が認められる要件のうち?@は認められない。・・・(エ) 以上のとおりであるから,その余の均等が認められる要件(上記(ア)?B〜?D)について判断するまでもなく,被告製品21M型の「ホタテ貝殻」は,本件特許発明の構成要件Aの「カキ殻」の均等物であるということはできない。」h 以上のとおり,被告製品21M型の「ホタテ貝殻」は,本件特許
発明の構成要件Aの「カキ殻」とは,本件特許発明の本質的部分において相違しており,上記(ア)の均等が認められる要件のうち?@は認められない。
・・・(エ) 以上のとおりであるから,その余の均等が認められる要件(上記
(ア)?B〜?D)について判断するまでもなく,被告製品21M型の「ホ
タテ貝殻」は,本件特許発明の構成要件Aの「カキ殻」の均等物であるということはできない。」
◆平成19(ネ)10096 不正競争行為差止等請求控訴事件 不正競争民事訴訟 平成20年04月23日 知的財産高等裁判所
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2008.04.14
◆平成19(ワ)12631 特許権侵害差止等請求事件 特許権民事訴訟 平成20年03月28日 東京地方裁判所
一部の発明について、均等侵害が争われました。裁判所は第1要件、第3要件を満たしていないとして
これを否定しました。
「(ア) 本件実用新案権2明細書の・・・の記載によれば,本件考案2は,リフト部材と支持部
材との間にリフト部材の高さを調節する調節手段を設け,この調節手段を調節する
ことにより,リフト部材の自由端側が支持部材に対する軸支個所を支点に上下して
その高さが変化し,リフト部材にその後部を取り付けた原稿圧着板の取付位置を変
化させ,もって,従来のような煩雑な手段によらずに原稿圧着板とコンタクトガラ
スとの間の浮きを調節することができるという作用効果を奏するものと認められる。
(イ) そうすると,本件考案2の本質的部分は,リフト部材と指示部材との間に
設けた調節手段によってリフト部材の高さを調節することにより,原稿圧着板とコ
ンタクトガラスの浮きを調節することができるようにした点にあると認められる。
(ウ) 原告は,高さ調節手段を取り付ける位置は本件考案2の本質的部分ではな
い旨主張するが「リフト部材の高さ, を調節する調節手段」というだけでは,従来
の調節作業に用いられていたとされる「調節プレート」(本件実用新案権2明細書
【0003】)との差異が明らかでなくなるから,その取付位置を除外しようとす
る原告の上記主張は,採用することができない。
・・・
(ア) 本件実用新案権2明細書には,リフト部材にくの字形状の取付板を固着し,
それに調節手段であるエキセンピンを設ける実施例(【0011】)や,リフト部材
又は支持部材の背板に調節手段を設ける実施例(【0013】)が記載されているが,
ヒンジピンに着目して,同所に高さ調節手段を設けることを示唆する記載は見いだ
せない。
(イ) 支持部材やリフト部材は,板状の材料で構成されていると認められるから,そこに高さ調節手段を設置するには,くの字形状の取付板のような取付手段を介在\nさせたり,雌ねじ部分の厚さを確保するために板状の材料を厚くするなどの工夫が
必要であると認められる。(ウ) これに対し,ヒンジピンに高さ調節手段を設けるとすれば,その直径の大
きさから,取付手段などを要することなく,雌ねじ部分の厚さを確保することは容
易ではある。
(エ) しかし,ヒンジピンは本来自由に回転するものであるから,ヒンジピンに
高さ調節手段を設けるとすれば,ヒンジピンの一端部側に角状部6aを設け,この
角状部6aを支持部材5の一方の側板5bに形成された角孔5dに係合させること
により,回転しないようにするなどの工夫が必要となる。
ウ まとめ
これらの事実によれば,高さ調節手段をヒンジピン6に設けた被告製品(3)及び
(4)は,本件考案2とは技術思想を異にし,均等の第1要件(本質的部分)を欠き,
しかも,均等の第3要件(置換容易性)を欠くと認められる。」
◆平成19(ワ)12631 特許権侵害差止等請求事件 特許権民事訴訟 平成20年03月28日 東京地方裁判所
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2006.05.10
◆平成17(ワ)14066 特許権侵害差止等請求事件 平成18年04月26日 東京地方裁判所
均等が争われた事件です。
裁判所は、「前記1で述べたとおり,本件各明細書の記載に照らせば,本件各発明においては,課題?Bを解決するための手段として,最下部の羽根を複数枚にする構成を採用したことが認められるのであって,この構\成を採用したことが,まさに本件各発明特有の課題解決のための手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分というべきものである。」と第1要件で排除しました。
◆平成17(ワ)14066 特許権侵害差止等請求事件 平成18年04月26日 東京地方裁判所
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2004.06.28
◆H16. 6.24 大阪地裁 平成15(ワ)4285 特許権 民事訴訟事件
1つの争点は均等の第1要件を満たすかでした。
裁判所は、「本件発明は、下型内方にカム溝を設けてこれに回転カムを回動自在に挿入し、回転カムが回転溝を前後に回動することができる構成とし、・・・・ように構\成したところに特徴があるというべきであり、このように、保持部、カム溝を含む下型、寄曲げ部を含む回転カム、パッド、寄曲げ刃を含む吊りカムの各構成を有機的に結合したことにより、保持部に切欠部を設けることを不要とし、プレス成形時にピラーを安定した状態で保持できるとともに、成形後の素材の下型からの取出しが容易にできるという本件発明特有の作用効果を奏するものである。以上によれば、カム溝の構\成は、本件発明の本質的部分であるというべきであり、そのような構造を有しないイ号物件は、本件発明とその本質的部分において異なっているというべきである。」として、均等ではないと判断しました。
以下は、被告が異なる事件ですが、対象特許は同じです。結論は同じく「技術的範囲に属さず」です。
◆H16. 6.24 大阪地裁 平成15(ワ)4287 特許権 民事訴訟事件
◆H16. 6.24 大阪地裁 平成15(ワ)4285 特許権 民事訴訟事件
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2003.07.22
◆H15. 7.17 大阪地裁 平成14(ワ)4565 特許権 民事訴訟事件
均等の第1要件を満たしていないとして均等が認められませんでした。
「 (2) 原告は、本件発明の技術的思想の中核をなす特徴的部分が、加圧ピストンロッドとガイドロッドを螺合連結固着させ、加圧ピストンロッドの移動に伴ってガイドロッドを移動させて拡管ゴムを変形させ、鋼管端部を拡管させる点にあり、その螺合連結固着手段にすぎない「連結管」は、本件発明の本質的部分ではない旨を主張する。
しかし、本件発明の前提とする拡管の原理は、・・・ (4) 上記事実によれば、本件発明は、上記のような本件発明特有の作用効果を生じさせるために、加圧ピストンロッド及びガイドロッドとは異なる構成要素として「連結管」を別体として設けることにより、着脱自在な連結固定を可能\としたのであると認められる。したがって、この「連結管」の構成は、本件発明特有の課題解決手段を具体的に基礎付け、かつ、本件発明特有の作用効果を生じさせる部分であり、本件発明の技術的思想の中核をなす特徴的部分の一部をなすものとして、本件発明の本質的部分であるというべきである。」
◆H15. 7.17 大阪地裁 平成14(ワ)4565 特許権 民事訴訟事件
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2003.02. 3
◆H15. 1.30 東京地裁 平成14(ワ)8839 特許権 民事訴訟事件
均等論の5要件を満たしているのかについて、「本質的部分であり、また、意識的に除外がされた」として、非侵害との判断がなされました。
◆H15. 1.30 東京地裁 平成14(ワ)8839 特許権 民事訴訟事件
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2002.11.17
◆H14.11.15 東京地裁 平成13(ワ)24120 特許権 民事訴訟事件
審査経過を参酌して均等要件である本質的要件についての認定がなされています。
「本件発明は,・・・という効果を有しているが,この効果は,請求項1及び同2の発明にはない,・・とした構成によるものと認められる。そうすると,本件発明は,吊り下げ荷重の上限を引き上げ,大きな荷重を吊り下げても,安全に使用可能\とするという技術課題を解決するために,補強曲板部を設け,補強曲板部を,「爪部とほぼ同じ長さで形成され,かつ,爪部と共にあり溝に嵌合するもの」としたものと認められ,この点が,本件発明に特有の解決手段であるということができるから,本件発明に係る構成要件Gは,本件発明の本質的部分であるということができる。 」と認定しました。
◆H14.11.15 東京地裁 平成13(ワ)24120 特許権 民事訴訟事件
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