遠隔監視システムについて、均等侵害が第1要件を満たさないと判断した1審の判断が維持されました。
なお,事案に鑑み,念のため,被告製品の均等論の第1要件の充足につい
て判断する。
本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件明細書の開示事
項を総合すれば,本件発明1は,従来の遠隔監視システムでは,施設の侵入
者があったり,施設において異常が発生した場合に,当該施設の所有者や管
理責任者が一次的に当該侵入や異常発生を知ることができず,また,警備会
社からの二次的な通報により上記所有者や責任者が侵入や異常発生を知るこ
とは可能であるが,これらの者が外出している場合等には警備会社が通報を\nすることができないといった課題があり,こうした課題を解決するために,
構成要件1Bないし1Gの構\成を採用し,施設の監視対象領域を監視する監
視装置からのメッセージと監視装置によって得られた画像の情報が当該施設
の所有者や管理責任者に対応する顧客の携帯端末に通知又は伝達されること
により,顧客が何れの場所においても施設の異常等を適切に把握することが
できるとともに,監視装置から受理された画像の略中央部分の画像からなる
コンテンツを携帯端末に伝達することにより,表示装置が小さい携帯端末で\nも顧客により十分に認識可能\な画像を表示することができ,さらに,カメラ\nの「パンニング」を含む携帯端末からの遠隔操作命令により「パンニング」
に従った領域を特定し,その領域の画像を携帯端末に伝達するステップを備
え,顧客が参照したい領域を特定して携帯端末に提示することができるよう
にしたことにより,施設の所有者や管理責任者が外部からの侵入や異常の発
生を知り,その内容を確認することができるという効果を奏するようにした
ことに技術的意義があるものと認められる(【0004】ないし【0007】)。
このような技術的意義に鑑みると,本件発明1の本質的部分は,1)何れの
場所においても顧客が携帯し得るものとして,監視装置からの異常検出によ
って監視装置により撮影された画像データの伝達を受ける端末を「携帯端末」
とし,2)「携帯端末」に伝達する画像は,略中央部分の画像領域から構成さ\nれ,3)携帯端末からの「パンニング」を含む遠隔操作命令を受理し,その領
域の画像を携帯端末に伝達するステップを含むことにより,4)表示装置が小\nさい携帯端末でも,顧客により十分に認識可能\な画像を表示することができ,\nさらに,携帯端末からの遠隔操作命令により,顧客が参照したい領域を特定
して携帯端末に提示することができるようにした点にあるものと認められる。
すなわち,単にセンサの情報伝達の宛先を警備会社の中央コンピュータから
施設の所有者等の携帯端末に切り替えたことのみに重きがあるわけではなく,
何れの場所においても顧客にとって携帯が容易で,操作等が迅速かつ簡便で
あるためには表示装置が小さい端末とならざるを得ない面があるところ,そ\nうであっても,外部からの侵入や異常の発生を知り,その内容を確認するこ
とが十分に可能\な構成を有することが本件発明1の本質的部分であるという\nべきである。なお,本件発明2及び3は本件発明1(請求項1)の従属項で
あり,また,本件発明5は,本件発明1の遠隔監視方法の発明を監視制御サ
ーバに関する発明としたものであるから,これらの発明の本質的部分もこれ
に同様である。
これに対し,被告製品は,監視装置からの異常検出によって監視装置によ
り撮影された画像データを伝達する端末は,携帯電話のような表示装置が小\nさい端末ではなく,また,端末からの遠隔操作命令により受理された画像の
うち他の領域の画像を参照すること示す命令である「パンニング」を含む遠
隔操作命令を受理し,その領域の画像を携帯端末に伝達するステップを含ま
ないため,顧客が何れの場所においても施設の異常等を適切に把握すること
ができ,表示装置が小さい「携帯端末」でも顧客は十\分に認識可能な画像を\n表示することができ,顧客が参照したい領域を特定して「携帯端末」に提示\nすることができるようにしたことにより,施設の所有者や管理責任者が外部
からの侵入や異常の発生を知り,その内容を確認することができるという本
件各発明の効果を奏するものと認めることはできない。
したがって,被告製品は, 本件各発明の本質的部分を備えているものと認
めることはできず,被告製品の相違部分は,本件各発明の本質的部分でない
ということはできないから,均等論の第1要件を充足しない。
よって,その余の点について判断するまでもなく,被告製品は,本件各発
明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとは認められない。\n
◆判決本文
1審はこちらです。
◆令和1(ワ)21597
CS関連発明について、均等侵害を認めた大阪地裁の判断を知財高裁も支持しました。
控訴人は,前記第2の3(2)エ(ア)のとおり,本件特許の出願過程の経
緯から客観的,外形的に見るならば,物又は方法の発明として特許出願
している被控訴人が,その補正として「逐次又は一斉に表示」という構\
成を削除したのであるから,画像選択手段を含むコンピューターにより
出力されるという構成においても「逐次又は一斉に表\示」という構成を\n意識的に除外したと主張する。
しかし,当該出願経過によれば,被控訴人は,明確性要件違反の拒絶
理由(甲8)に対し,本件補正により,コンピューターを構成に含む学\n習用具と記載し,また,被控訴人が甲第10号証と併せて提出した意見
書(甲9)3頁の「(4)記載不備の拒絶への対処」では「作業の主体を
「手段」とし,人が行う作業を示す部分を削除致しました。」としている
のであり,他の部分も削除したことを外形的に示す説明はない。
また,「一の組画の画像データを選択する画像選択手段」との構成を付\n加した点について,客観的には,組画を構成する複数の画のうち任意の\n1つの画像データ(ユニット画)を選択すること(例えば第一の関連画
のみを選択すること)が意識的に除外されているとはいい得るとしても,
二以上の組画の画像データを選択することが意識的に除外されたとは
いえない。また,「逐次」の文言が用いられている本件明細書【0037】,
【0038】及び【0052】 において,「逐次」及び「一斉」の両方
が用いられているのは特定の組画を構成するユニット画について記載\nしている【0038】に「特定の組画を構成するユニット画は,全て一\n斉に表示してもよいが,前述のように逐次表\示するほうが,学習効果が
増して好ましい。」とあるのみであるから,本件補正前の「それぞれの前
記記憶対象に対応する前記組画を逐次又は一斉に表示して前記記憶対\n象を記憶する」との記載は,特定の組画を構成するユニット画を逐次又\nは一斉に表示することを指していると解するべきであり,「逐次又は一\n斉に表示」という構\成を削除したからといって,複数の組画を選択する
構成を除外する意図であったと認めることはできない。\n
さらに,被控訴人が,上記意見書で進歩性に関して主張したところは,
本件発明が,1)対応する語句が存在する原画の形態を,その形態に対応
する語句と結びつけて記憶することを目的すること,2)関連画の輪郭が,
原画に類似等しており,一定の意味内容を有することから,学習対象者
が,意味内容と原画との関連付けにより,記憶することに苦痛を感じる
ことなく楽しみを感じながら,原画を記憶することができること,3)関
連画及び原画に対応する語句の音声データを再生し,関連画及び原画の
表示は対応する語句の再生と同期して行うこと,4)原画又は原画に対応
する語句を思い出すことを目的とするため,関連画の表示及び関連画に\n対応する語句の再生を行った後に,原画の表示及び原画に対応する語句\nの再生を行うこと,5)第一の関連画,第二の関連画,及び原画の順に表\n示し,しかも,前記第一の関連画,前記第二の関連画,及び前記原画を,
対応する語句の再生と同期して表示することにより,4通りのルートに\nよって原画及び対応する語句を思い出すことができることを挙げるもの
であるが(甲9),これらの特徴は,複数の組画を選択する構成と矛盾す\nるものではなく,これを意識的に除外する旨を表示したものとはいえな\nい。
(イ) 控訴人は,前記第2の3(2)エ(イ)のとおり,被控訴人が補正において,
構成要件B2の画像選択手段の構\成を加えた点について,複数の組画を
選択する構成を除外しない意図であるならば「一又は複数の組画」や単\nに「組画」等といった記載にすることは極めて容易であり,本件特許の
出願経過を客観的,外形的に見るならば,「一の組画の画像データを選択
する画像選択手段」を付加したことは,複数の組画を選択する構成を意\n識的に除外したことになると主張する。
しかし,仮に,他により容易な記載方法があったとしても,出願人が,
補正時に,これを特許請求の範囲に記載しなかったからといって,それ
だけでは,第三者に,対象製品等が特許請求の範囲から除外されるとの
信頼を生じさせるとはいえない。客観的にみて,「一の組画の画像データ
を選択する」との記載が,組画を構成する画が維持された状態で選択す\nる限りにおいては,二以上の組画の画像データを選択することを意識的
に除外するものとまでは認められないことは,前記(ア)のとおりである。
◆判決本文
1審はこちらです。
◆大阪地判 平成31年(ワ)第3273号)
2021.06. 6
均等侵害も第1要件を満たさないとして特許権侵害とはならないと判断されました。
本件各発明に係る特許請求の範囲及び本件訂正明細書の各記載によれば,本件各
発明の本質的部分については,以下のとおりと認められる。
すなわち,従来,硬貨の表面に描かれた模様は,硬貨を製造するプレス機に設置\nされるプレス金型に予め彫り込まれ,硬貨をプレス及び打ち抜きする際,硬貨の表\
面に金型の凹凸が反転して表現されていたところ,プレス金型に対して硬貨の表\面
に浮き出る部分は,平面彫刻機で彫り込んで行われていた。しかし,平面彫刻機の
ように厚み方向のみ切削する切削工具では,切削した部分及び切削を行わなかった
部分は平面仕上げであり,金属の地肌のままの色合いであるため,放電加工機で不
規則かつ微細に地金を削り取りいわゆるナシ地仕上げを行ったり,切削した部分を
細かく研磨して鏡面仕上げを行ったりし,また,立体彫刻機で人物や動物等立体的
な図形を彫り込み,得られた硬貨の表面の凸部に人物等を立体的に表\現して,硬貨
の装飾効果を高めていた。しかし,これらの方法によっても,図形等の部分を除い
た硬貨の地模様に対応する部分は,平面仕上げ,鏡面仕上げ,ナシ地仕上げのいず
れかであり変化に乏しく,また,メダル遊戯機で使用される硬貨は,コスト等の兼
ね合いがあり,高価な金属の使用が難しく,表面の輝きが鈍いものが多いという課\n題があった。本件各発明は,こうした課題に対し,硬貨の表面の地模様に立体彫り\nによる変化を起こし,硬貨の輝きを増し,硬貨の装飾価値等を高めることを目的と
するものである。具体的には,本件発明1は,切削深さを任意に変えられる同時三
軸制御 NC フライス機を,硬貨表面に描かれる人物や動植物等の図形に用いるので\nはなく,金型の表面に対して一定パターンで切削を繰り返すことにより硬貨の地金\n部分に立体的な幾何学的模様からなる新たな地模様を描き出し,硬貨の装飾価値を
高めるものである。本件発明2は,本件発明1と同様の方法で硬貨の地模様を描き
出すことに加え,同じく同時三軸制御 NC フライス機により地模様以外の模様に対
応する部分をV溝状に切削することで,当該模様部分の表面積の増加等により硬貨\nの表面の輝きを増加させ,硬貨の装飾価値等を高めるものである。\n以上を踏まえると,本件各発明に係る特許請求の範囲の記載のうち,少なくとも
「金型の厚み方向へ切削可能な」切削工具「を用い,金型に対して一定のパターン\nで切削深さと,水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら金型表面上を移動\nさせ,傾斜面を含む特定のパターンを金型上に描き,これを金型表面全体に繰り返\nすことにより繰り返し模様からなる地模様を形成すること」は,従来技術には見ら
れない特有の技術的思想を有する本件各発明の特徴的部分すなわち本質的部分であ
るといえる。さらに,本件発明2においては,これに加え,上記工具「により硬貨
の表面に浮き出る文字,図形等の模様に対応する部分をV溝状に切削すること」も,\n特徴的部分すなわち本質的部分ということができる。
(3) 前記のとおり,本件各発明における「金型」(構成要件B,C,E及びF)は\nプレス金型を意味し,また,被告製造方法の構成については当事者間に争いがある\nものの,被告製造方法が原金型に関する工程とプレス金型に関する工程という2つ
の工程を含むこと,被告機械を用いて原金型の表面に地模様及び地模様以外の模様\nに対応する部分を切削加工により作製することは,当事者間に争いがない。これを
踏まえると,本件各発明においては,プレス金型の厚み方向へ切削可能な切削工具\nを用い,プレス金型に対して一定のパターンで切削深さと,水平面に対するプレス
金型の切削角度と,を変えながらプレス金型表面全体に繰り返すことにより繰り返\nし模様からなる地模様を形成し,本件発明2においては,これに加えて,上記工具
により硬貨の表面に浮き出る地模様以外の模様に対応する部分をV溝上に切削して\nプレス金型を得るのに対し,被告製造方法においては,被告機械を用いて原金型の
表面に地模様及び地模様以外の模様に対応する部分を切削加工により作製し,こう\nして得られた原金型から(特定されない加工方法(被告方法1)又は放電加工(被
告方法2)により)プレス金型を得る点で相違する。そうすると,被告製造方法は,
本件各発明の本質的部分を共通に備えているとはいえない。
したがって,本件各発明と被告製造方法の相違部分は,本件各発明の本質的部分
に当たる。
(4) 原告らの主張について
これに対し,原告らは,本件各発明の本質的部分は,金型に対して一定のパター
ンで切削の深さと,水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら金型表面上を\n移動させ,傾斜面を含む特定のパターンを金型上に描くことと,地模様以外の模様
に対応する部分をV溝状に切削することであり,原金型とプレス金型の2つの金型
を用いるか否かは本件各発明の本質的部分ではないなどと主張する。
しかし,前記のとおり,原金型からプレス金型に対する転写等の工程につき,そ
の構成を特定しなくても,本件各発明の作用効果を奏し得るものが行われることが\n当業者にとって技術常識であるとは認められないことをも踏まえると,金型につき
原金型とプレス金型の2つを用いるか否かは,本件各発明の本質的部分に係る相違
部分というべきである。
したがって,この点に関する原告らの主張は採用できない。
◆判決本文
JR東海に対するCS関連発明の侵害事件です。1審では第1要件、第2要件を満たさないとして、均等侵害は否定されました。知財高裁(2部)も同じ判断です。
(1) 控訴人は,原判決は,特許法70条1項,2項等に反し,本件特許請求の
範囲に記載のある「問題のある実施例」を本件各発明の実施例とせず,「最善の実施
例」のみを本件各発明であるとした点に誤りがある旨主張する。
ア 本件特許請求の範囲の【請求項1】には,「ホストコンピュータが,前記
券情報と前記発券情報とを入力する入力手段と,該入力手段によって入力された前
記券情報と前記発券情報とに基づき,かつ,前記座席管理地に設置される指定座席
のレイアウトに基づいて表示する座席表\示情報を作成する作成手段と,該作成手段
によって作成された前記座席表示情報を記憶する記憶手段と,該記憶手段によって\n記憶された前記座席表示情報を伝送する伝送手段と,」と記載されており,「券情報」\nと「発券情報」とを統合して「座席表示情報」を作成し,これを記憶手段に記憶さ\nせることが記載されていると認められるから,控訴人の主張する「最善の実施例」
が本件特許請求の範囲に記載されていると認められ,控訴人の主張する「問題のあ
る実施例」が本件特許請求の範囲に記載されていると認めることはできない。
また,本件特許請求の範囲の【請求項2】には,「ホストコンピュータが,前記券
情報と前記発券情報とを入力する手段と,該入力手段によって入力された前記券情
報と前記発券情報とを,複数の前記座席管理地又は前記端末機を識別する座席管理
地識別情報又は端末機識別情報別に集計する集計手段と,該集計手段によって集計
された前記券情報と前記発券情報とに基づき,かつ,前記座席管理地に設置される
指定座席のレイアウトに基づいて表示する座席表\示情報を作成する作成手段と,該
作成手段によって作成された前記座席表示情報を記憶する記憶手段と,該記憶手段\nによって記憶された前記座席表示情報を伝送する伝送手段と,」と記載されており,\n「券情報」と「発券情報」とを統合して「座席表示情報」を作成し,これを記憶手\n段に記憶させることが記載されていると認められるから,控訴人の主張する「最善
の実施例」が本件特許請求の範囲に記載されていると認められ,控訴人の主張する
「問題のある実施例」が本件特許請求の範囲に記載されていると認めることはでき
ない。
イ 上記のことは,本件明細書(甲2)の記載からも明らかである。
本件明細書の「発明の詳細な説明」は,補正して引用した原判決「事実及び理由」
の第3,1(1)のとおりであり,段落【0002】には,【従来の技術】として,「従
来,指定座席を管理する座席管理システムとしては,カードリーダで読取られた座
席指定券の券情報及び券売機等で発券された座席指定券の発券(座席予約)情報等\nを,例えば列車車内において,端末機(コンピュータ)で受けて記憶し表示して,\n指定座席の利用状況を車掌が目視できるようにして車内検札を自動化する座席指定
席利用状況監視装置(特公H5−47880号公報)が発明されている。」との記載
があり,段落【0004】において,「券情報」及び「発券情報」を地上の管理セン
ターから受ける場合について,「伝送される情報は2種になるために通信回線の負
担を1種の場合と比べて2倍にするなどの問題がある。」ことが記載されている。
そして,本件明細書の段落【0005】には,【発明が解決しようとする課題】と
して,「上記発明の座席指定席利用状況監視装置は上記券情報と上記発券情報とに
基づいて各座席指定席の利用状況を表示するにはこれ等の両情報を地上の管理セン\nターから受ける場合,伝送される情報量が2倍になるために,該情報を伝送する通
信回線の負担を2倍にするとともに端末機の記憶容量と処理速度をともに2倍にす
るなどの点にある。」として,控訴人の主張する「問題のある実施例」の問題点が指
摘されており,段落【0006】には,【課題を解決するための手段】として「本発
明は,上記管理センターに備えられるホストコンピュータが,カードリーダで読取
られた座席指定券の券情報と券売機等で発券された座席指定券の発券情報とを入力
して,これ等の両情報に基づいて表示する座席表\示情報を作成して,作成された前
記座席表示情報を,前記ホストコンピュータと通信回線で結ばれて,指定座席を設\n置管理する座席管理地に備えられる端末機へ伝送して,該端末機が,前記座席表示\n情報を入力して表示してするように構\成したことを主要な特徴とする。」と記載さ
れており,段落【0007】に,【作用】として,「上記ホストコンピュータから上
記端末機へ伝送される情報量が上記券情報と上記発券情報との両表示情報から1つ\nの表示情報となる上記座席表\示情報にすることで半減され,これによって通信回線
の負担と端末機の記憶容量と処理速度とを半減する。」と記載され,段落【0008】
〜【0019】に,【実施例】として,控訴人が主張する「最善の実施例」(「座席表\n示情報」は,券情報と発券情報という二つの情報を一つに統合した実施例)が記載
されていることが認められる。さらに,段落【0020】に,【発明の効果】として,
「該端末機がする各指定座席の利用状況の表示を前記券情報と前記発券情報との両\n表示情報から1つの表\示情報となる前記座席表示情報で実現できるようになり,こ\nれによって前記ホストコンピュータから前記端末機へ伝送する情報量が半減され,
通信回線の負担と端末機の記憶容量と処理速度等を軽減するとともに,端末機のコ
ストダウンが計られて,本発明のシステムの構築を容易にする。」と記載されている\nことが認められる。
これらの本件明細書の記載によると,本件各発明は,指定座席を管理する座席管
理システムに関して,地上の管理センターから券情報と発券情報の両情報を端末機
で受ける場合,伝送される情報が2種になることから,伝送される情報が1種の場
合と比べて,通信回線の負担が2倍となり,端末機の記憶容量と処理速度を2倍に
するなどの技術的課題があることに鑑み,地上の管理センターに備えられるコンピ
ュータが,カードリーダで読み取られた券情報と,券売機等で読み取られた発券情
報等を入力して,これらの情報から一つの座席表示情報を作成し,作成された座席\n表示情報を,コンピュータと通信回線で結ばれて,指定座席を設置管理する座席管\n理地に備えられた端末機に伝送して,端末機が座席レイアウトに基づき各指定座席
の利用状況を表示するという構\成を採用したものであって,この点に,本件各発明
の技術的意義があると認められる。
このような本件明細書の記載によると,控訴人の主張する「問題のある実施例」
は,本件各発明が解決すべき課題を示したものであり,その課題を解決したのが本
件各発明であるから,これが本件各発明の実施例であると認めることはできない。
・・・
また,控訴人は,被控訴人は,被告システム1の「OD情報」,「改札通過情報」
が,それぞれ,本件明細書の図2の「発券情報」,「券情報」に,被告システム1の
「マルスサーバ」及び「セキュリティサーバ」が,「地上の管理センター」に該当す
ることを認めているから,被告システム1は,本件明細書の図2の構成を備えるも\nのであり,本件特許権を侵害するものであると主張するが,本件明細書の図2は,
控訴人の主張する「問題のある実施例」に関するものであり,被告システム1が,
上記図2の構成を備えるからといって,本件各発明の構\成を備えるということには
ならない。
原判決(15頁〜24頁)が判示するとおり,被告システム 1 は,本件発明 1 の構\n成要件1−B及び1−C並びに本件発明2の構成要件2−B及び2−Cの文言を充\n足せず,被告システム2は,本件発明1の構成要件1−A,1−B及び1−C並び\nに本件発明2の構成要件2―\A,2−B及び2−Cの文言を充足しないから,被告
各システムが本件各発明の技術的範囲に属するものとは認められない。
(4) 控訴人は,被告システム1と本件各発明との間の本件相違点(被告システ
ム1は,本件各発明における,ホストコンピュータにおいて券情報と発券情報から
一つの「座席表示情報」を作成し,これを,指定座席を設置管理する座席管理地に\n備えられる端末機に伝送し,端末機において「座席表示情報」を表\示するという構\n成を有していないこと)は,本件各発明の本質的部分ではないと主張するが,控訴
人のこの主張を採用することができないことは,原判決(25頁〜26頁)が判示
するとおりである。
本件相違点は,本件各発明の本質的部分に係るものであるから,被告システム1
は,均等の第1要件を充足しない。
◆判決本文
1審はこちら。
◆平成30(ワ)31428