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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

第1要件(本質的要件)

令和4(ワ)11025等  特許権侵害差止等請求本訴事件、不当利得返還請求反訴事件  特許権  民事訴訟 令和6年10月21日  大阪地方裁判所

 特許権侵害について、構成要件を充足しない、均等についても第1、第2要件を満たさないとして、非侵害認定されました。

上記本件明細書の記載によると、本件発明は、大きなダニ捕獲能力を発揮\nすることを目的として、その手段は、ダニ誘引物質を含浸させた織物シート からダニ誘引物質を拡散させることで広い範囲のダニを誘引した上で、マッ トの内部にダニ捕獲用の粘着テープと、これに対して千鳥状に被着させたダ ニ用食餌を入れた多孔質通気性袋を配することで、ダニ誘引物質で誘引され たダニを、マットの表裏両面からさらに内部に侵入させ、粘着テープに触れ\nさせ、そこで捕捉するようにするというものである。 そして、ダニを誘引させる物質として、「香料」を織物シートに含侵させた 上、「食餌」入りの多孔質通気性袋を配置させる位置を両面粘着テープの表\n裏両面に配置させることにより、多孔質通気性カバーの内側に誘い込み、混 ぜ物のない粘着層に触れさせて補足させる構成をとるものであるから、本件\n発明において「多孔質通気性袋」は、食餌が同位置にとどまり、粘着層の粘着 力を低減させない機能を備えるべきことが想定されているといえる。加えて、\n多孔質通気性袋の構造上、一袋でこれらが実現でき、構\成材料の数も減らす ことができるようになっている。
以上を踏まえると、構成要件A−3にいう「多孔質通気性袋」とは、辞書\n的にも、本件明細書の記載からも、少なくとも内包物を内部で保持し、拡散 を防止することができる構造を有することが必要であると解することが相当\nである。一方、販売被告製品では、ダニ誘引物質が2枚の不織布シートやガ ーゼ等で重ねて挟み込まれているのみであり、その周囲からダニ誘引物質が 零れ落ちるようなものであるから、誘引物質を内部で保持することができる 構造であるとは認められない。\n
この点、原告は、本件発明における「袋」の意義について、ダニ食餌を入れ ることができ、かつ、一つの袋のみで粘着テープの表裏両面に配置すること\nができればよく、口を閉塞している必要はないから、被告製品も、多孔質通 気性袋を有すると主張するが、上記説示に照らし、採用できない。
(5) よって、販売被告製品は、構成要件A−3を充足せず、同構\成要件を充足 することを前提とする構成要件C、D、F及びGも充足しない。\n
3 争点A3(均等侵害が成立するか)について
上記2のとおり、本件発明は、ダニ食餌を零れ落ちさせることなく保持する ことができる「多孔質通気性袋」に収納することで、粘着テープの高い粘着力 を実現するとともに、構成材料の数を減らすことを実現しており、そのために\n袋構造を有することが本質的要素となっているものと認められる。\nそうすると、多孔質通気性袋に代わり、挟み込んだ物が零れ落ち得る2枚の 不織布やガーゼでダニ誘引物質を挟み込む構造を有している販売被告製品は、\n本件発明の非本質的部分で相違点があるに過ぎないとはいえないし、これらを 置換したときの作用効果が同一であるともいえない。
よって、第1要件(非本質的部分)及び第2要件(置換可能性)がいずれも\n認められないことから、均等侵害は成立しない。
4 小括(特許権侵害について)
(1) 以上の次第であり、被告製品は、本件特許の技術的範囲に属しないので、 原告の本件特許権侵害に関する主張(争点A1ないしA6)は、その余の争 点について判断するまでもなく理由がない。
(2) なお、被告は、原告の均等侵害の主張について、時機に後れた攻撃防御方 法として却下することを求めているが、その審理のために訴訟が遅延するも のとは認められないから、採用しない。

◆判決本文

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令和4(ワ)70058  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和6年10月18日  東京地方裁判所

特許権及び意匠権侵害事件です。原告は均等主張をしましたが、東京地裁は、本質的要件(第1要件)の判断において、明細書に公知文献を考慮して、特徴部分を認定するとともに、被告装置はかかる本質部分を満たさないとして、均等侵害を否定しました。意匠権についても非類似と判断しました。

(ウ) 前記(イ)によれば、本件特許の出願時において、グラップルバケット装 置において、グラップルした木材が長尺である場合、所定以上の長さを 有する木材をチェーンソー等の切断装置を用いて作業員が所定の長さに\n切断しなければならないとの課題については、甲27文献において開示 された従来技術によって解決することが可能であったから、本件明細書\nにおいて従来技術が解決できなかった課題として記載されているところ は、出願時の従来技術に照らして客観的に不十分であると認められる。\nそうすると、本件発明の従来技術に見られない特有の技術的思想を構成\nする特徴的部分を認定するに当たり、甲27文献に記載されている技術 的事項も参酌することが許されるというべきである。
(エ) 前記(ウ)において検討したところによれば、本件特許の出願前に、甲2 7文献において、一方の側部に把持部、他方の側部に切断装置が装着さ れているバケットを備えた枝切り走行装置が開示されていたと認められ るから、本件発明と従来技術との相違は、当該切断装置の構成に係る部\n分にすぎず、グラップルした被グラップル材を切断できるようにしたグ ラップルバケット装置であること自体ではないと認められる。そうする と、従来技術と比較して本件発明の貢献の程度が大きいと評価すること はできないから、本件発明の本質的部分については、これを上位概念化 したものとして認定することはできず、特許請求の範囲の記載とほぼ同 義のものとして認定されるというべきである。
したがって、前記(ア)及び(イ)に照らし、本件発明における従来技術に 見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分は、グラップル装置\nに設けられた切断装置について、バケットの側壁の外側あるいは内側の 一方側に位置してバケットの開口縁から離れた位置からバケットの側壁 に沿う位置にわたって側壁に沿う方向に回動し、かつバケットの開口縁 側に対向する側の側縁に切刃を有してバケットの側壁に沿う位置にわたって側壁に沿う方向に回動し、かつバケットの開口縁側に対向する側の側縁に切刃を有してバケットの開口基端部に枢支された切断刃と、上記切断刃の回動基部に連結して上記切断刃を回動させる油圧シリンダとからなり、切断刃の切刃を、切断刃の回動中心と油圧シ リンダの連結点を結ぶ線に対して切断刃の切断方向側にずれた位置に設 けるとともに、この切刃の切断方向への回動方向に対して後方へ円弧状 に反らせたとの構成、すなわち構\成要件C及びDに係る構成を採用する\nことによって、回動中心から遠い部分でも、刃先が対象物に当たる傾き 角度θの値を大きく保つことで、引き切り作用を保ちスムーズな切断効 果を発揮できるようにしたことと認めるのが相当である。
イ 前記2のとおり、被告製品は構成要件D2を充足するとは認められない\nところ、前記アのとおり、本件発明の構成要件C及びDに係る構\成を採用 することによって、回動中心から遠い部分でも、刃先が対象物に当たる傾 き角度θの値を大きく保つことで、引き切り作用を保ちスムーズな切断効 果を発揮できるようにしたことが本件発明の本質的部分であるから、被告 製品が本件発明の本質的部分を備えているとは認められず、本件発明と被 告製品とが異なる部分が本件発明の本質的部分ではないとはいえない。 したがって、被告製品は第1要件を充足しない。

◆判決本文

以下に、イ号図面などがあります。

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令和5(ネ)10101  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和6年6月18日  知的財産高等裁判所 (原審・東京地方裁判所令和4年(ワ)24476

 本人訴訟です。1審の非侵害が維持されました。控訴審では、均等主張もしましたが、第1要件を満たさないと判断されました。

オ 上記ウ及びエによれば、本件明細書に従来技術が解決できなかった課題 として記載されている従来技術(特許文献1)は、出願時の従来技術に照 らして客観的に不十分であるから、乙3に記載されている技術的事項を参\n酌することが許されるというべきである。 そうすると、本件発明は、上記課題を解決するために「覚醒度合生体情 報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて前記三つの 発光手段の発光量の総和を略一定にしたままそれぞれの発光手段の発光 量比を変化させるための調節部」との構成を採用したものであるが、他方、\n乙3には、上記エのとおり、「覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒 度合に関する生体情報に応じて複数(二つ)の発光手段の発光量の総和を 一定としたままそれぞれの発光手段の発光量比を変化させるための調節 部」が開示されており、その相違は「三つの発光手段の発光量の総和」か 「複数(二つ)の発光手段の発光量の総和」かの差でしかない。 したがって、従来技術と比較して特許発明の貢献の程度が大きいとはい えず、本件発明の本質的部分は、特許請求の範囲に近接したものとなると いうべきであり、具体的には、本件特許の課題を解決するために採用され た構成が構\成要件C/Dであることから、「覚醒度合生体情報取得部で取 得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて、赤色、青色及び緑色の三つの発光手段の発光量の総和を略一定としたままそれぞれの発光手段の 発光量比を変化させるための調節部」を有していることが本件発明の本質 的部分であると解するのが相当である。
これに対し、本件各照明装置は、「覚醒度合生体情報取得部で取得した人 の覚醒度合に関する生体情報に応じて、赤色、青色及び緑色の三つの発光 手段の発光量の総和を略一定としたままそれぞれの発光手段の発光量比 を変化させるための調節部」を有していないから、本件発明と本件各照明 装置とは本質的な部分において異なっているというべきである。
カ 上記アないしオによれば、本件各照明装置が本件発明の本質的部分を備 えているとはいえず、均等の第1要件を満たさない。
キ 控訴人は、前記第2の5(1)アのとおり、本件発明は、ヒト(人)の覚醒度 合に応じて照度を略一定にしつつ色温度を変化させる点がその本質的部 分であると主張する。 しかし、上記オに説示したとおり、特許発明の貢献の程度は従来技術と 比較して大きいとはいえないから、控訴人が主張するようにこれを上位概 念化することはできないというべきであり、控訴人の上記主張を採用することはできない。また、仮に、控訴人の主張するとおり、人の覚醒度合に応じて照度を略 一定にしつつ色温度を変化させる点が本件発明の本質的部分であると解 したとしても、本件各照明装置は、人の覚醒度合に応じて照度を略一定に しつつ色温度を変化させる構成を有していないから、均等の第1要件を満\nたさないとの結論を左右しない。
すなわち、本件マットレス(1)は、当該マットレスを使用する人の睡眠の 状態を計測する機能を備えており、本件発明の構\成要件B(「人の覚醒度合 に関する生体情報を取得する覚醒度合生体情報取得部と、」)を充足するも のであり、本件マットレス連携アプリは、本件マットレス(1)を使用した人 の睡眠深度、睡眠スコア、睡眠効率、寝つき時間、中途覚醒回数、目覚め の状態及び深い睡眠を表示する機能\を備えているが(原判決第2の2(6)ア 及びウ、同(7))、本件各照明装置は、本件マットレス(1)等により取得された 人の覚醒度合に関する生体情報に応じて照度を略一定にしつつ発光手段 の発光量比又は色・温度を変化させる機能を有していない。\n
本件各照明装置の使用者が、任意に本件各照明装置の発光手段の色・温 度を変化させる操作をすることが可能であるとしても、そのことをもって、\n本件各照明装置が人の覚醒度合に応じて照度を略一定にしつつ発光手段 の発光量比又は色・温度を変化させる構成を有していることにはならない。\nしたがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
ク 以上によれば、本件各照明装置は、均等の第1要件を充足しないから、 その余の要件について判断するまでもなく、本件発明と均等なものとして、 その技術的範囲に属するということはできない。

◆判決本文

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令和5(ネ)10078  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和6年3月28日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審と同じく、「包装容器」の発明について、被告製品は技術的範囲に属さないと判断されました。控訴審では、均等侵害の主張が追加されましたが、本質的要件(第1要件)を満たさないと判断されました。

これを本件において検討するに、前記(1)イのとおり、本件発明1は、「底部 に取り付けられた安定補助板により支えられてテーブルなどの上に立たせら れる」「折畳式コップ型容器」(段落【0003】)であって「安定補助板が例 えば紙や合成樹脂などから形成され、後から容器本体に取り付けられる構成」\n(段落【0005】)を採用した従来技術を前提とし、「成形が簡便な自立型 の包装容器の提供を目的とする」(段落【0006】)ことを発明が解決しよ うとする課題とし、当該課題を解決する手段として「前記包装容器を容器と して形成した状態において、前記底部を形成する底面片と同一面に連なる自 立片が載置面に沿って前記奥行の方向に突出し、前記自立片によって前記載 置面に自立させられる」(本件発明1の構成要件B)という構\成を採用するこ とにより、「包装容器を自立させる自立片が底面片に連なっているため、一体 的な成形が簡便である」(段落【0013】)という効果を奏するものである。 そうすると、本件発明1において従来技術に見られない特有の技術的思想 を構成する特徴的部分は、従来技術における安定補助板が、底部に一体的に\n成形された構成である、「前記包装容器を容器として形成した状態において、\n前記底部を形成する底面片と同一面に連なる自立片が載置面に沿って前記奥 行の方向に突出し、前記自立片によって前記載置面に自立させられる」こと にあると考えられる。
そして、本件発明1と被控訴人製品とは、包装容器を容器として形成した 状態において、本件発明1の「底面片」が筒状の底部を形成するのに対し、 被控訴人製品は、包装容器を自立させる舌状片が、包装容器の底部を形成す る六角片と同一面に連なっておらず別に構成されている点において相違する\nものと認められるところ、この相違に係る本件発明1の構成、すなわち「底\n部を形成する底面片」が「自立片」と同一面に連ねられていることは、これ までの検討によれば、本件発明1の本質的部分に当たるものということがで きる。
そうすると、上記相違点に係る本件発明1の構成については、本件発明1\nの本質的部分ではないということはできない。そして、前記(1)ウのとおり、 上記の点については、本件各発明について共通するものということができる。 したがって、被控訴人製品は均等侵害の第1要件を充足しないから、その 要件について検討するまでもなく、均等侵害は成立しない。
イ 控訴人は、前記第2の3(4)ウのとおり、本件各発明の本質的部分は、「自立 片」によって載置面に自立させられる構成を採用した点にあり、当該「自立\n片」が内容物に直接接触してこれを支える片という意味における「底面片」 と、同一面に連なることにあるのではないと主張する。 しかし、本件各発明の本質的部分については上記アのとおりと認められる から、本件各発明と被控訴人製品とは、その本質的部分において異なるもの というべきである。

◆判決本文

1審はこちら。

◆令和4(ワ)2049

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令和5(ネ)10078  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和6年3月28日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

1審で文言侵害不成立と判断されましたので、控訴審で均等侵害の主張を追加しましたが、第1要件を満たさないと判断されました。

(4) 当審における控訴人による均等侵害の主張に対する判断
ア 控訴人は、仮に被控訴人製品が、本件各発明に文言上はその技術的範囲に 属しないものとしても、これと均等なものとして、特許権侵害に当たる旨を 主張する。
特許請求の範囲に記載された構成中に相手方が製造等をする製品又は用い\nる方法(以下「対象製品等」という。)と異なる部分が存する場合であっても、 1)同部分が特許発明の本質的部分ではなく、2)同部分を対象製品等における ものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果 を奏するものであって、3)上記のように置き換えることに、当該発明の属す る技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が、対象製品等の製 造等の時点において容易に想到することができたものであり、4)対象製品等 が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから同 出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、5)対象製品等が特許発明の 特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たる などの特段の事情もないときは、同対象製品等は、特許請求の範囲に記載さ れた構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解する\nのが相当である。
そして、上記1)の要件(第1要件)における特許発明における本質的部分 とは、当該特許発明の特許請求の範囲の記載のうち、従来技術に見られない 特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきであり、特許請求\nの範囲及び明細書の記載に基づいて、特許発明の課題及び解決手段とその効 果を把握した上で、特許発明の特許請求の範囲の記載のうち、従来技術に見 られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定するこ\nとによって認定されるべきである(最高裁平成6年(オ)第1083号同1 0年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁、最高裁平成28 年(受)第1242号同29年3月24日第二小法廷判決・民集71巻3号 359頁参照)。
これを本件において検討するに、前記(1)イのとおり、本件発明1は、「底部 に取り付けられた安定補助板により支えられてテーブルなどの上に立たせら れる」「折畳式コップ型容器」(段落【0003】)であって「安定補助板が例 えば紙や合成樹脂などから形成され、後から容器本体に取り付けられる構成」\n(段落【0005】)を採用した従来技術を前提とし、「成形が簡便な自立型 の包装容器の提供を目的とする」(段落【0006】)ことを発明が解決しよ うとする課題とし、当該課題を解決する手段として「前記包装容器を容器と して形成した状態において、前記底部を形成する底面片と同一面に連なる自 立片が載置面に沿って前記奥行の方向に突出し、前記自立片によって前記載 置面に自立させられる」(本件発明1の構成要件B)という構\成を採用するこ とにより、「包装容器を自立させる自立片が底面片に連なっているため、一体 的な成形が簡便である」(段落【0013】)という効果を奏するものである。
そうすると、本件発明1において従来技術に見られない特有の技術的思想 を構成する特徴的部分は、従来技術における安定補助板が、底部に一体的に\n成形された構成である、「前記包装容器を容器として形成した状態において、\n前記底部を形成する底面片と同一面に連なる自立片が載置面に沿って前記奥 行の方向に突出し、前記自立片によって前記載置面に自立させられる」こと にあると考えられる。
そして、本件発明1と被控訴人製品とは、包装容器を容器として形成した 状態において、本件発明1の「底面片」が筒状の底部を形成するのに対し、 被控訴人製品は、包装容器を自立させる舌状片が、包装容器の底部を形成す る六角片と同一面に連なっておらず別に構成されている点において相違する\nものと認められるところ、この相違に係る本件発明1の構成、すなわち「底\n部を形成する底面片」が「自立片」と同一面に連ねられていることは、これ までの検討によれば、本件発明1の本質的部分に当たるものということがで きる。
そうすると、上記相違点に係る本件発明1の構成については、本件発明1\nの本質的部分ではないということはできない。そして、前記(1)ウのとおり、 上記の点については、本件各発明について共通するものということができる。 したがって、被控訴人製品は均等侵害の第1要件を充足しないから、その 要件について検討するまでもなく、均等侵害は成立しない。 イ 控訴人は、前記第2の3(4)ウのとおり、本件各発明の本質的部分は、「自立 片」によって載置面に自立させられる構成を採用した点にあり、当該「自立\n片」が内容物に直接接触してこれを支える片という意味における「底面片」 と、同一面に連なることにあるのではないと主張する。 しかし、本件各発明の本質的部分については上記アのとおりと認められる から、本件各発明と被控訴人製品とは、その本質的部分において異なるもの というべきである。

◆判決本文

1審はこちらです。  

◆令和4(ワ)2049

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令和4(ワ)9521  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和6年2月26日  大阪地方裁判所

熱可塑性樹脂組成物について、構成要件1B「・・・分子量700以上・・」について、第1要件充足せずとして、均等侵害が否定されました。ちなみに、被告製品「分子量699」であり、「700」という数値に臨界的意義はありません。 該当特許はこちらです。◆特許4974971


ア 本件各発明は、耐熱性透明材料として好適な熱可塑性樹脂組成物と、当該 組成物からなる樹脂成形品ならびに樹脂成形品の具体的な一例である偏光 子保護フィルム、樹脂成形品の製造方法に関する発明である(【0001】)。 アクリル樹脂の透明度の低下を防止するためにUVAを添加する方法が 公知であったが、成形時の発泡やUVAのブリードアウト、UVAの蒸散に よる紫外線吸収能の低下との問題につき、従来技術として、アクリル樹脂に組み合わせるUVAとして、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物およびベンゾフェノン系化合物が用いられていた(【0003】、【00\n05】、【0006】)。しかし、これらの従来技術として例示されたアクリル 樹脂(【0006】記載の特許文献)には、いずれも分子量が700以上のU VAは開示されていなかった。
イ 本件各発明は、従来技術の化合物には、主鎖に環構造を有するアクリル樹脂との相溶性に課題があり、高温成形時の発泡やブリードアウトの発生の抑制が不十\分であったことから、これらの課題を克服するため(【0007】、【0008】)、樹脂組成物を構成要件1B記載の構\成とし、その製造方法を構成要件6B記載の構\成とし(【0009】、【0010】)、これにより11 0゜C)以上という高いTgに基づく優れた耐熱性や高温成形時における発泡 及びブリードアウトの抑制、UVAの蒸散による問題発生の減少との効果を 奏することとなった(【0015】)。
ウ したがって、本件各発明の本質的部分は、ヒドロキシフェニルトリアジン 骨格を有する、分子量が700以上のUVAが、主鎖に環構造を有する熱可塑性アクリル樹脂と相溶性を有することを見出したことにより、110゜C)以 上という高い優れた耐熱性や高温成形時における発泡及びブリードアウト の抑制、UVAの蒸散による問題発生の減少という効果を有する樹脂組成物 を提供することを可能にした点にあると認められる。
エ 数値をもって技術的範囲を限定し(数値限定発明)、その数値に設定する ことに意義がある発明は、その数値の範囲内の技術に限定することで、その 発明に対して特許が付与されたと考えられるから、特段の事情のない限り、 その数値による技術的範囲の限定は特許発明の本質的部分に当たると解す べきである。
上記検討によれば、分子量を「700以上」とすることには技術的意義が あるといえるうえ、本件において、上記特段の事情は何らうかがえない。 オ そうすると、被告UVAの分子量が「700以上」ではないとの相違点は、 本件各発明の本質的部分に係る差異であるというべきであるから、被告製品 及び被告方法について、均等の第1要件が成立すると認めることはできず、 均等侵害は成立しない。
カ 原告は、本件各発明におけるUVAの分子量である「700」に厳格な技 術的意義はなく、本件各発明の本質的部分は、分子量が十分に大きいという上位概念であると主張する。 しかし、このような上位概念化は、前述の数値限定発明の技術的意義に関 する考え方と相容れず権利範囲を不当に拡大するものである。また、本件証 拠上、本件各発明におけるUVAの分子量が十分に大きいということが当業者にとって自明であるとも認められないし、分子量が十\分に大きいことと、被告UVAの分子量との比較における本件各発明の数値の臨界的意義との 関係は何ら明らかにされていない。

◆判決本文

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