均等主張についても、第1、第5要件を満たさないとして非侵害と認定されました。
前記2(2)ア認定のとおり、本件発明は、非力な者であっても、危険な野生動物が
生息している場所において、簡単かつ確実に屠殺できるようにすることを解決すべ
き課題とし「(【0008】ないし「【0012】)、このような課題を解決するため、竿体を伸縮自在に構成することで、対象動物との距離を調整できるようにし、例え\nば、猛禽類に対しては距離を長く取ったり、安全性を確保できる場合には距離を短
く取って確実に電極を動物の体に接触させたりすることができるという効果が得ら
れるというものである。
一方、証拠(甲2、乙18)によれば、本件特許の出願時点で、野生動物を殺処
分する手段として、麻酔ガス等を用いることや電気スタナーを用いることなどが知
られていたことが認められる。これらの手段は、動物を殺害することはできるが、
即効性に欠けたり、即効性があっても動物に近づく必要があることから危険を伴っ
たりするものであった。
そうすると、本件発明は、従来技術である電流を用いた屠殺手段を踏まえ、簡単
かつ安全確実な屠殺手段を提供するものであり、本件発明の構成中の本質的部分は、\nこのような屠殺手段を提供する竿体の伸縮構造(構\成要件Aの「伸縮自在の所定長
さの竿体」)、バッテリ部、電源昇圧部及びインバーター部の背負い構造(構\成要
件F)、双方の手でそれぞれ電源スイッチと竿体を把持できる通電コードの並列構\n造(構成要件G)に認められるものというべきである。\n
イ 前記2で検討したとおり、被告製品は、少なくとも、構成要件Aの「伸縮自\n在の所定長さの竿体」の部分、構成要件F及びGを充足しないのであるから、本件\n発明の構成中、被告製品と異なる部分が本件発明の本質的部分ではないとの均等侵\n害の第1要件は認められない。
(2) 第5要件について
ア 証拠(乙8ないし17)によれば、本件特許の出願経緯について、以下の事
実が認められる。
・・・
イ 以上の審査経緯に鑑みれば、原告は、当初、竿体の伸縮構造については固定\n長の竿体も含むものとし、バッテリ部、電源昇圧部及びインバーター部の背負い状
態の構成については携行可能\であるとするのみで背負い構造に限られないものと\nし、双方の手でそれぞれ電源スイッチと竿体を把持できる並列構造については双方\nの手でそれぞれ把持することが明示的に記載されていないものとし、土中の接地電
極と同電位とする回路構造については土中を閉回路に含まない回路構\造も含むもの
として、特許請求の範囲を記載していたが、進歩性欠如及び明確性要件違反を指摘
されたことから、拒絶査定を回避するため、現在の特許請求の範囲の請求項1の記
載のとおりに限定したのであり、限定により除外された部分は、いずれも本件特許
の特許請求の範囲から意識的に除外したものであることが認められる。
そうすると、被告製品と本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載との相違点
は、いずれも原告が意識的に除外した部分に該当するから、均等侵害に関するその
余の原告の主張を前提としても、対象製品等が特許発明の特許出願手続において特
許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときと
の第5要件を満たさないというべきである。
◆判決本文