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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

第2要件(置換可能性)

平成27(ネ)10076  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年11月12日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 第2要件、さらには第1要件を満たさないとして均等侵害も否定されました。
 ア 前記1(2)によれば,円テーブル装置のクランプ機構においては,作業時にお\nける工具からの加圧又は振動に対して,確実に所定の回転角度の位置を保つことの できるクランプ力を得るために,油圧ピストンを使用して高い作動圧(油圧)でク ランプ部材を加圧していたが,油圧ピストンの使用には,部品コストが掛かり,メ ンテナンスにも手間が掛かるという課題があったことから,本件特許発明は,円テ ーブル装置において,空気圧のような低圧で使用する流体圧ピストンでも十分に回\n転軸をクランプすることができるクランプ機構の提供を目的としたものである。\nそして,本件特許発明は,クランプ機構を構\成する増力機構につき,第1段増力\n部及び第2段増力部を備えたものとし,流体圧ピストン(25)から可動側クラン プ部材(21)に働くクランプ方向の力を2段階にわたり増力することによって, 空圧ピストンのように低い作動圧のピストンでも十分に回転軸をクランプすること\nができるようにして,前記課題を解決するものである。
イ この点に関し,前記1(3)のとおり,本件明細書には,前記増力機構における\n2段階にわたる増力について,以下のとおり開示されている(別紙1【図2】参照)。 すなわち,1)流体圧ピストン(25)の第1段用テーパーカム面(28)とボー ル(26)との当接部P1において,F1(流体圧ピストン(25)のクランプ方 向の押圧力)が,ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面 (40)に対向している流体圧ピストン(25)の第1段用テーパーカム面(28) のカム作用により,F2(径方向の外方に向く力)に増力されてボール(26)に 伝達される(第1段の増力)。 次に,2)ボール(26)と可動側クランプ部材(21)との当接部P2において, F2が,ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40) に対向している可動側クランプ部材(21)の第2段用テーパーカム面(29)の カム作用により,F3(クランプ方向の押圧力)に増力されて可動側クランプ部材 (21)に伝達される(第2段の増力)。
ウ 第2段の増力に関し,前記2(3)ウ(ウ)のとおり,仮に,α3=0°,すなわ ち,第2段用テーパーカム面(29)が回転軸芯と直角を成すものとすると,径方 向の外方に向く力であるF2が,第2段用テーパーカム面(29)と完全に平行の 状態になることから,F2がクランプ方向の押圧力であるF3に増力されることは なく,「第2段増力部」が増力機構として機能\しなくなる。 したがって,第2段用テーパーカム面(29)が回転軸芯と直角,すなわち,傾 斜角度が「α3=0°」の場合を含まないという構成を,「α3=0°」の構\成に置 き換えれば,2段階にわたる増力により空圧ピストンのように低い作動圧のピスト ンでも十分に回転軸をクランプすることができるようにするという本件特許発明と\n同一の目的を達することも同一の作用効果を奏することもできなくなることは,明 らかというべきである。
エ 控訴人は,本件特許発明における2段式増力機構における増力の仕組みは,\n前記第3の2〔当審における控訴人の主張〕(5)のとおりであり,「α3=0°」の場 合に,F1からF3への増力は最大となるから,「第2段用テーパーカム面(29)」 の「30°以下の緩やかな傾斜角度」,すなわち,「0°<α3≦30°」を「α3 =0°」に置き換えても,増力を実現でき,かつ,低い作動圧下における高いクラ ンプ力の実現等の本件特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏す る旨主張する。 しかし,控訴人の主張は,第2段の増力につき,F2がシリンダ形成部材(31) のテーパー面(40)においてF3に増力され,この反作用として,テーパー面(4 0)からボール(26)を介して可動側クランプ部材(21)に対してF3と同等 の力が生じることを前提とするものであるところ,前記2(4)カ(イ)のとおり,特許 請求の範囲にも本件明細書の発明の詳細な説明にも,控訴人主張に係る増力の仕組 みは記載されておらず,したがって,同仕組みは,本件明細書の記載に基づかないものといわざるを得ない。
なお,控訴人の役員が作成した甲第15号証には,被告製品のクランプ機構の動\n作につき,「『クランプピストン』が正面部に動き,『鋼球』を『クランプシリン ダ』のテーパー面にそって動かし,『クランプシリンダ』のテーパー面に対向して いる『クランプピストン』のカム作用と,『鋼球』を介して,『クランプシリンダ』 のテーパー面に対向している『クランプリング』のカム作用による増力された力が 『クランプリング』に加わることになります。」と記載されているが,同記載によ っても,本件特許発明のように2段階の増力が行われているかは不明であり,増力 の測定値等の客観的な裏付けもない以上,被告製品において2段階にわたる増力が されていると認めるに足りないというべきである。
オ 以上によれば,被告製品は,前記(2)2)の要件を充たすものではない。
(4) 前記(2)1)の要件について
ア 前記(3)によれば,本件特許発明に係る円テーブル装置のクランプ機構が,2\n段階にわたり増力する増力機構を備えることは,前記課題解決に不可欠な構\成とい え,本件特許発明を特徴付けるものということができるところ,第2段用テーパー カム面(29)が回転軸芯と直角を成すものではないこと,すなわち,傾斜角度が 「α3=0°」の場合を含まないことは,上記増力機構を構\成する「第2段増力部」 における第2段の増力のために不可欠なものである。 この点に鑑みると,本件特許発明の構成要件E2の「第2段用テーパーカム面(2\n9)」は,傾斜角度が「α3=0°」の場合を含まないのに対し,被告製品の構成中,\n「クランプリング8の鋼球10と当接する面」は,回転軸芯と直角,すなわち,「α 3=0°」であるという相違部分が,本件特許発明の本質的部分でないということ はできない。
イ 控訴人は,F2からF3への増力において問題となる角度はα2であり,α 3ではないとして,「α3=0°」に係る相違部分は,本件特許発明の本質的部分で はない旨主張するが,控訴人の主張は,前記(3)のとおり,本件明細書の記載に基づ かない増力の仕組みを前提とするものであるから,採用できない。
ウ したがって,被告製品は,前記(2)1)の要件を充たすものともいえない。

◆判決本文

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 >> 第1要件(本質的要件)
 >> 第2要件(置換可能性)

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平成26(ネ)10111  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年10月8日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 控訴状および控訴理由書でも主張しなかった均等侵害について、知財高裁は、時機に後れた抗弁であるが、被控訴人も反論したので・・として均等侵害か否かについても判断しました。結果は、均等の第1、第2要件を満たさないとのことです。
 被控訴人は,控訴人が,当審において,新たにイ号製品は本件各特許発明の均等 侵害を構成する旨の主張を予\備的に追加したのに対し,上記主張は,時機に後れた 攻撃方法の提出として,民訴法157条1項に基づき却下されるべきである旨主張 する。 控訴人は,平成25年6月3日に本件訴訟を提起し,平成26年9月25日に原 判決が言い渡されると,同年10月8日に控訴を提起したが,均等侵害に係る主張 は,控訴状にも,同年12月16日提出に係る控訴理由書にも記載されておらず, 平成27年2月14日提出に係る第1準備書面において初めて,その主張の骨子が 記載されたものである。 第1審における争点は,専ら構成要件2E及び1Bの充足性であったこと,控訴\n状には控訴理由の記載がなく,控訴理由書には,控訴理由は,前記第3の1(「横 向き管における最下面の延長線」,「延長線の近傍位置または該延長線より上方位 置」の意義),第3の2及び第3の6の4点である旨記載をしながら,均等侵害に 係る主張を記載せず,主張の予告もなかったこと,控訴人の第1準備書面が提出さ\nれたのは,同月19日の当審第1回口頭弁論期日のわずか5日前であったことなど, 本件審理の経過に照らせば,控訴人の均等侵害に係る主張は,時機に後れたものと いわざるを得ない。しかしながら,被控訴人も上記主張に対する認否,反論をした ことに鑑み,均等侵害の成否について以下において判断する。
(2) 本件特許発明2の均等侵害について
ア 本件特許発明2とイ号製品との相違点について
前記1において説示したとおり,イ号製品は,本件特許発明2の構成要件2Eを\n充足しないから,本件特許発明2とイ号製品とは,少なくとも構成要件2E,すな\nわち,本件特許発明2においては,レベル計が,供給管の横向き管における最下面 の延長線の近傍位置又は該延長線より上方位置に設けられているのに対し,イ号製 品においては,レベル計の位置を最も高い位置にしたとしても,横向き管が縦向き 管と接する出口の下端とレベル計の最上面との距離が28.2mm存し,レベル計 が,横向き管の最下面を形成する線を縦向き管に向けて延長した線のうち縦向き管 内の最も高い位置より下方が,その充填された混合済み材料によって満杯の状態に なる位置より少しばかり下に設けられているとは認められない点において相違する。
イ 均等侵害の成立要件について
(ア) 作用効果の同一性(第2要件)について
本件特許発明2は,前記1(1)ウのとおり,吸引輸送される材料が未混合のまま一 時貯留ホッパーへ直接に送られるのを防止することを目的として,流動ホッパーへ の材料の吸引輸送は,前回吸引輸送した混合済み材料が流動ホッパーから一時貯留 ホッパーへと降下する際に,前記混合済み材料の充填レベルが供給管の「横向き管 における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方」に降下する前に開始す るようにするため,供給管の「横向き管における最下面の延長線の近傍位置または 該延長線より上方位置」に,混合済み材料の充填レベルを検出するためのレベル計 を設けるようにしたものであり,これにより,吸引輸送される材料は,その充填さ れた混合済み材料によって,一時貯留ホッパーへの落下が阻止されるため,未混合 のまま一時貯留ホッパーへ落下することはないという作用効果を奏するものである。 これに対し,イ号製品においては,前記1(3)のとおり,レベル計の位置を最も高 い位置にしたとしても,横向き管が縦向き管と接する出口の下端とレベル計の最上 面との距離が28.2mmあって,横向き管が縦向き管と接する出口の下端とレベ ル計の最上面との間に相当の空間が存し,当該空間は,充填された混合済み材料に よって満たされた状態とはなっていないから,吸引輸送される材料が,充填された 混合済み材料によって,一時貯留ホッパーへの落下が阻止され,未混合のまま一時 貯留ホッパーへ落下することはないという作用効果を奏しない。 したがって,イ号製品は,均等の第2要件を充足しない。
(イ) 非本質的部分(第1要件)について
本件特許発明2の本質的部分,すなわち,技術思想の中核的部分は,前記1(1) ウによれば,構成要件2Eの「供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍位\n置または該延長線より上方位置に」レベル計を設けることにより,流動ホッパーへ の材料の吸引輸送は,前回吸引輸送した混合済み材料の充填レベルが供給管の「横 向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方」に降下する前に 開始されるため,吸引輸送される材料が,その充填された混合済み材料によって, 一時貯留ホッパーへの落下が阻止されるという作用効果を奏する点にあるものと認 められる。 これに対し,イ号製品は,構成要件2Eの「供給管の横向き管における最下面の\n延長線の近傍位置または該延長線より上方位置に」レベル計を設けたものではない から,レベル計の位置を最も高い位置にしたとしても,横向き管が縦向き管と接す る出口の下端とレベル計の最上面との距離が28.2mmあって,横向き管が縦向 き管と接する出口の下端とレベル計の最上面との間に相当の空間が存し,吸引輸送 される材料が,充填された混合済み材料によって,一時貯留ホッパーへの落下が阻 止されるという作用効果を奏せず,課題の解決手段を異にする。 そうすると,本件特許発明2とイ号製品との前記アの相違点が,本件特許発明2 の本質的部分でないということはできない。
したがって,イ号製品は,均等の第1要件も充足しない。

◆判決本文

◆一審はこちらです。平成25年(ワ)第5600号

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